72 オフ ィ ス
・
オー
トメー
シ ョ ン 2001 VbL 22,
No、
2■ 研 究 論
文
営 利
企
業
に お
け
る
オ
ープ
ン
ソ
ース
形 態
の
取 り込
み
一
〇
SS
コ ミュ ニ テ ィと
の関係
づけ
と
ライ
セ ン ス形態
一
The
Adoption
/
br
theOpen
Source
Fornz
by
Companies
:1
〜e9αt’
ions
ゆ
わ鉚 θ8η0
∫5
C
α 跏 醜妙
α屈 〃cε η ∫θ東京 大学 大学 院
木
村
誠
*
The
University of Tokyo.
Makoto KIMuRA
早
稲
田大学
根
来
龍
之
Waseda University Tatsuyuki NEGoRo
AbstracI:In this pape鶏autho1
・
sdefine
Open
Source
So秕 ware 〔OSS
)as もhe
so銑ware whichis
食ee!ydistHbu
七ed 輌 th its呂ource c
des
through theintemet.
Authorsdes
〔魎be
thehistor
症caldevelopment
DfOSS and its famous cases :Red
Hat
Linux
.
Netscape
Mozllla,
Apple Darwin.
As the results,
authorg.
describe three (3
)typesbe七ween community and user license;“
SpentaneousOSSeommuni
七y a皿d
open !icense
”
,
“
Guided OSS ¢ommunity and openlicellse
”,
.
“Guided
OSS
com−
muni 七y and open l亙eense ”
.
王nthe view uf rel乱tionship between a commercial company arld an
OSS
communit ¥ authors emphasize 七he
case in whieh modi 且eation of 酉ginaL souree codes are not shared,
and the fbrm in which the commun 重tyis
pesitioned
as a part of supply chain of the eommereia ] cornpany,
Key wor “s:
Open
source,
Software,
User
license,
OSS cDmmunit } Commereial company1
。
はじめ
に本 稿の 目的は, オ
ー
プ ン ソー
ス ソ フ トウ ェ ア (OSS
)をソ フ ト ウェ ア産 業が営利事 業の発 展の た めに活 用す る ようにな りつ つ ある状況をユー
ザ 発参 加 者 を含む)ライセ ン ス形 態に着 目 して 記 述 する こ と にある.
ライセ ン ス形 態は,OSS
コ ミュ ニ テ ィ参 加 者のインセ ンテ ィブとOSS
コ ミュ ニ テ ィ運営 者の利益 を 決 定し,
営 利企業とコ ミュ ニ テ ィの 関 係を規定
す る.
本 稿で は, 営 利企業とOSS
コ ミュ ニ ティ を 関 係づけるラ イセ ン ス形 態を 分類 し,
その 特 性 を示 す.
本 稿で は,
OSS
を 「ソ フ トウェ アが持つ 属性と ロ ジ ッ ク (プロ グ ラム )が ソー
ス コー
ドレベ ル で, イン タ…
ネッ トを通 じ て 無 償 公 開 さ れた ソ フ トウ ェ ア」と定 義す る.
OSS
に おい て は, 誰で もプロ *王 学 系 研.
究 科 博士課程グラム の 参 照
,
変 更,
内部
利 用 がで きる(
二 次 的配布が 可能な 場 合 もあ る
)
.
現在,有
名
なOSS
の例 として以下があ げられる.
ウェ ブサ
ー
バ 用ソ フ ト ウェ ア と して世界一
の シェァを持つ
Apache .
これはBrianBehlendorf
が開発リ
ー
ダー
であ り,1999
年にNPO
化さ れ た.
Larry
Wall
が開 発 したCGI
ス ク リプ ト言 語Perl
.
ドメイン ネ
ー
ム サー
バ 用BIND
は,後に開 発リー
ダー
であ る
Paul
Vixie
によっ て企 業 化さ れ た.
また, メー
ル サ
ー
バ用SendMail
は,
開 発リー
ダー
であるEr−
ic
A
ユlman
が会 社 化して い る.
そ して オベ レー
ティン グシ ス テム
(
OS )
であるLinux
は ,Linus
Ter−
valds を リ
ー
ダー
と して開発が進め ら れて い る.
本 稿で は
,OSS
コ ミュ ニ テ ィ との 関係づけ をは かるOSS
商 品 化の事
例 と して以 下 を取 り上げる.
・LinUX
:オペ レー
テ イン グシス テ ム の協 働 分 散 開 発・
皿 oZilla ;ウェ ブ ブラウ ザNetscape
Comrnuni −
cator のた めの協 働 分 散 開 発・Apple
Mae
OS
X (
Darwin
)
:Apple
社rV
OS
部 分公開
営 利企業の
OSS
取 込みの動 向は次の よう
に記述 で き る.
すな わ ち, 本 来は ボ ランテ ィ アが運 営 す る自
生的なOSS
コ ミュ ニ ティ活 動と し て行わ れて きたOSS
開 発が, 企業が設 置 するOSS
コ ミュ ニ テ ィ(
誘導
的コ ミュ ニ ティ〉 活 動と して活 用 を図 ら れ る よう
になっ た.
こ の動 向をライセ ン ス 形態 に着目 し て,
OSS
コ ミュ ニ テ ィ と自社 サプライチ ェー
ン の 関 連づ けの観 点か ら記 述 する のが本 稿の 目的である.
’
t・
tt
が まiiil
灘
誰 蕪覊 靉鼕離鬻
羈
自生 的OSSコミa ニティによるOSS開発 の成功 傍:Linux 一1
.闘
警
驍 本 来, 自主 的OSS コ ミュ ; テ ィ活 動 として 行 わ れ て きたOSS 開 発が企 業が設 置 するコミュニ ティ (誘 導 的OSS コ ミュ ニ テ ィ)活 動 と し て活 用 を 図られ 始め てい る. 図1 営利 企 業のOSS
取 り込み の動 き 営 利 企 業にお ける オー
プンソー
ス形 態の取り込み 732
.
Linux
の成
功
体
験
OSS
の オペ レー
ティ ングシ ス テムであるLinux
はウ ェ ブ サー
バ 市 場シ ェ アが28.
5
%であ り,
第2
位のMicrosoft
Wimdows
NT
の24
.
4
% よ り僅か な が ら多
い(
1999
年ln
七eTnetOS
Counter
Report
).
こ の両 者の差は
2000
年にな り, 拡 が りつ つ ある一
方であるv.
Li
皿ux を例 に し たOSS
の協 働 分 散 開発ス タイル は,Eric
S.
Raymond
(
1997)
}こよる論 文 「伽 藍 とバ ザー
ル(
Cathedral
andBa
臉 ar )」で有 名にな っ た.
これ まで の 大 規 模ソ フ トウェ アあるい は商 業ソ フ ト ウェ ア開発 形 態は伽藍方 式であっ た.
こ れ は,大
司 教 が大
工(
エ ン ジニ ア)を囲い 込み, 自分たちだ けで作 成 し た 設計図 に 基づい て 「伽 藍 (大 聖 堂)
」
を作 り上げる形態
を意 味して い る.一
方, バ ザー
ル 方 式で は,
明確
な方 針は な く , さ ま ざ ま な 立 場の人が訪れて, アイ デアを持ち寄 り,自
由な討 議の 中で設 計 図 を作 成 する.
そ して一
度, ひな 形となるソ フ ト ウェ アが与
えら れ れ ば,
ネ ッ ト ワー
ク(
イン ター
ネッ ト)
上で分 散して修 正 と改 良が行われる.
参 加 者の 数が多
け れ ば多
い ほ ど, 開発の ライフサ イ ク ル は早 くなる.
大 規 模ソ フ トウェ ア であるLinux
の 開発が イ ン ター
ネ ッ ト と電 子メー
ル, ニ ュー
ス グルー
プ,ftp
サ イ ト,
ウェ ブ サ イ1
・
を活 用 し たバ ザー
ル 方 式に よっ て行わ れてい る こと を,Raymond
は指 摘し た のである.
「伽藍 とバ ザ
ー
ル」 論 文が ソ フ トウェ ア業 界に もた ら し た影 響は大きく,OSS
の 試みを営
利 企業
が活用 し よう
とする きっ かけをつ くっ た.
その経 緯は以下である 2).
「ハ ッ カ
ー
大 辞典
」の編 者であるEric
S
.
Ray
−
mond がLinux
の 出来 栄の 良 さに驚 き, その秘密
を知るべ く ,Linux
コ ミュ ニ ティ に参
加 し た.
コ ミュ ニ テ ィ にお けるソ フ ト ウェ ア開 発 技 法を3
年 に渡 り観 察し,1
年かけて まと め た 論 文 「伽 藍 と バ ザー
ル 」 (1997
)を発 表 した.
この 論文
の魅力 的 な 物 語 性か ら,
イン ター
ネッ トを通 じてソ フ ト ウェ ア業 界は大 きな影
響を受 ける こ ど になっ た,
74 こ の論 文は
後
に 「オー
プン ソー
ス 宣言亅
と呼 ばれ るように なっ た.
1998
年
1
月22
日 に発 表 さ れ たNetscape
CQm
−
munieations 社 製ウェ ブブ ラ ウザの ソー
ス コー
ド 無 償 公開(
mozilla 誕生)
のきっ か けは,
文 字 通 りRayrnond
の 「伽 藍 とバザー
ル」であっ た (当 時のNetscape
Comrnunications
社CEO
で あ るJim
Barksdale
の声
明に よ る)
.
Netscape
Communica
−
tions 社は機 密 保 持 を条 件 に,
Raymond
の助 言を受
け て mozilla 運 営の準 備 を 行っ た.1998
年2
月3E
「に はRaymond
の 呼びか けによ り,Netseape
Communications
社 本 社 所 在 地で もある米 国Mountainview
にあるVA
Research (
現VA
Linux
Systems
) 社にLinus
Torvalds
を始め とするLin
−
ux コ ミュ ニ ティ の主 要 参 加 者が集まっ た.
この 場 で,
参 加 者 達は,1
、inux
を成 功事
例 と し て,
オー
プンソー
ス とい う言 葉 (従 来はフ リー
ソ フ トとい う言い 方 も類 似の趣 旨で使わ れてい た)
をソ フ ト ウェ ア産 業に定 着さ せ ようとするRaymond
の意 図に賛 同した と言わ れる.
さ ら に,
オー
ブン ソー
一
ス運 動の推 進 組 織 と して
Open
Source
Initiative
(
OSI
)が1998
年12
月に設立さ れた,
1999
年3
月16
日に開 始 し たAppleOSX
の カー
ネル を含むDa
躍in
コ ン ポー
ネ ン トの オー
プ ン ソー
ス に関して もRaymond
がApple
社に対 して相 談 役を無 償で引き受
け,大
きな役
割を陰で果た し てい る.1999
年には,
Linux
の派生 ビ ジネス を行 う営 利主体で あるRedHat ,
VA
Lunux
Sytems
社が
IPO
(株 式初期 公開)
を行い ,1
株200
ドル近 い 超 高 値をつ け た.
3
。
OSS
コミ
ュ ニテ
ィとサ
プ
ライ
チェー
ン概
念
OSS
とOSS
コ ミュ ニ テ ィの関 係は 切 っ て も切 れ ない もの とい わ れてい る.
つ ま り,
OSS
の 存 続 に は企業の 枠 を超 えた 世 界規 模で,
自発 的な無 償 を前 提と し た開 発 と サポー
トに参 加 するユー
ザ (プロ グラマ )によっ て 成り立つOSS
コ ミュ ニ テ ィの存 在が 不 可欠である.
こ の と きのOSS
コ ミュ ニ ティ は,OSS
の サプライ チェー
ン における価 値 付 加 活 動の た めの協 働組織としてイン ター
ネッ ト を通 じて成立する.
そも そ も,
イン ター
ネッ トは 個人あるい はコ ミコ.
ニ テ ィの 参 加と貢 献によっ て 大きく発 展・
成長し て き たの であり, 企業の営 利 活 動のた め に始 まっ たの で は ない の で あるか ら,
この活 動は イン タ…
ネッ トの本 質に親 和 的だ と言 え る か も し れ ない,
本 稿で は
,
OSS
コ ミュ ニ ティ を以 下の ような も の として考 える.
「OSS
の 開発と 運用に関心 を持 つ グルー
プ活 動で あ り,
参 加 者 間で は イン ター
ネ ッ トを 通 じ て, 公開性, 蓄 積 性, 発 信・
受 信の 自 発 性,
相互参 照 性を有 してい る」,
このた め,
OSS
コ ミュ ニ テ ィ参 加 者は共 有できる価 値 (文 脈 )を 持つ こと がで きる.
参 加 者間(
.
.
部)
に は自発的 な贈 与 競 争が行わ れ,
その成 果はOSS
コ ミュ ニ テ ィ に おい て共 有さ れ る.
ま た,
サ プライ チェー
ン は,
1
一
企 業 (法人) 間にお け る仕 掛品 またはサー
ビス の供 給連鎖 」と考 える.
サプラ イチェー
ンは,
営 利主体による最 終的 な製 品 またはサー
ビス を 実 現 するた めの価 値 付 加 活 動の 連鎖で ある.
4
.
OSS
:ミ
ュ ニティとライ
セ ン スの関係
づけ
OSS
コ ミュ ニ テ ィをサ プ ラ イチェー
ンの 中に含 ん だ08S
商品化の・
事 例 と して , 本 稿で はLinux
(GPL
:GNU
General
Publie
License),
mozilla(
MPL
:Mozilla
Publie
License
),
Dar
輌 n(
APSL
:Apple
Public
Source
License)
の3
つ の 事 例 を取り上 げる
.
各 事 例の詳 細につ い ては5
章で後
述す る.
この ときGPL
で は派生ソ フ トウェ ア もソー
ス コー
ド公 開が必 要と なるが,MPL
やAPSL
で は 必 要 と は な らない.
こ の差異 が重 要である.
つ ま り,
オ リ ジ ナル コL一
ド を変更 し た イン タフ ェー
ス プロ グラ ム公 開は 必要とな る が, イン タフ ェー
ス プロ グラム を 利 用する他プロ グラ ム (派生 プロ グ ラム )はソー
ス コー
ドとし て公 開す る必要は な く,
MPT 、
また はAPSL
は知的所有権
の あるプロ グ ラ ム との 組み合わ せ が 可能となる.
この3
つ の事 例 の ラ イセ ンス内 容の違い を 表1
の よ うに示 すこと がで きる3).
本 稿で は
,
ラ イセ ン ス規 定さ れ た 創 立 者へ の 優 先権の違い に着 目して,OSS
の ライセン ス を クロ営 利企業における オ
…
プン ソー
ス形態の取り込み 75一
ズ ドライセ ン ス と オー
プン ライ セン ス の2
つ に 分 けて考える.
両ライセ ン スの違い を表2
に示 す.
本 稿で採 用 し た クロー
ズ ド ラ イ セ ン ス と オー
プン ライセ ン ス の違い は,
創立者にお け る オ リ ジ ナル ソー
ス修正・
変 更 分と その商用 配布
に対 する クロー
ズ ド /オー
プン の 違い である.
これはコ ミュ ニ ティ運営者
に よ る自社利益 享受
の 利益 集中/利益 分散
の 違い を意 味してい る.
利 益集
中で は,
オ リ ジ ナル コー
ド提 供 者や 同者 と契 約し た 関連ビ ジネ ス展 開者
が 金銭的 利益を ほ ぼ独占
す る.
そ れ に対 して利 益 分 散で は,
オ リ ジ ナルコー
ド提 供 者だけ で は なく, その他のオー
プン ソー
ス提 供 者と独 立 した関 連ビジネス展 開者
も金銭
的利益 を得
ら れ る.
次に
,OSS
に関係づ け ら れるOSS
コ ミュ ニ テ ィ の一
般 化を行う.
まず, 自社が 関与せずに自然 発 生 的に形 成さ れ たOSS
コ ミュ ニ ティを自生的OSS
コ ミュ ニ ティと呼ぶ.
また,
自社サプライチェー
ン に関 連させ て能 動 的に形 成 を促したOSS
コ ミュ ニ テ ィを誘 導 的OSS
コ ミュ ニ テ ィ と呼ぶ.
つ ま り, 本稿は, サ プ ラ イチェー
ン(
SC )
とOSS
コ ミュ ニ ティ の関 係づ けにつ い て,
二種 類 を提 示 す る.
「自 生 的OSS
コ ミュ ニ ティ に自社SC
を 関 連 づ ける場 合 」と 「自社SC
に関 連 させ て誘 導 的OSS
コ ミュ ニ ティ の形 成 を促 す 場 合 」である4).
表10SS
商 品 化 事 例 に お け る ラ イセ ンス内 容 「F
し
r
LinUX (GNU
) mozilla (MPL
) Darwin (APSL
) 創 立 者に よ る オ リ ジ ナル (ソー
ス ) コー
ドの公 開 ○ ○ ○ オリジナル コー
ド修正・
変 更 分を公 開 し,
創立者に 還 元 ○ ○ ○ オリジナル コー
ド修 正・
変 更 分に対 する特 許 請 求 権の放 棄 ○ ○ △ 商品化をする 際のオ リ ジ ナル コー
ド 変 更 部 分の公 開 ○ ○ △ 派生 ソ フ ト ウェ ア に対 する コー
ド公 開義 務の伝搬 ○ X × (※)派 生ソ フ ト ウェ ア 1オ リ ジ ナルを 変 更・
修 正し たソ フ ト ウェ ア に基づい て,
稼 動す る ソフ トウェ ア.
こ の ときの コー
ドは,
オリ ジ ナルを 修 正・
変 更 した部 分ではない ソー
ス コー
ド.
△ :創立者の み,
独自の判 断で選 択 する こ とがで きる.
表 2 創 立 者 の優先 権 に関す る ラ イ セ ンス 創 立 者か ら公開 さ れ た オ リジナル コー
ドを 元 に したOSS
コ ミュ ニ テ ィに お け る 修 正・
変 更 分を利 用 した, さ らなる コー
ドの修正・
変 更 分 をクロー
ズ ド にする こ と によ り,
クロー
ズ ド 差 別 化 し た 商 品の 配 布 は 創 立 者であ るコ ミュ ニ テ ィ の運営 者 (による 自社サ プライ チ ラ イセ ン ス エー
ン を通じ て)のみ行なえる.
コ ミュ ニ テ ィ運営 者が白社の利 益 亨 受を優 先し, 利 益 集 中をは か る こ と がラ イセ ン ス 上認められ る.
創立者か ら公 開 さ れ た オ リ ジ ナル コー
一
ドを 元 に したOSS
コ ミュ ニ テ ィ における修正・
オー
プン 変 更 分を オー
プン にする こ と に よっ て, 創 立 者 を含め て,OSS
コ ミュ ニ テ ィ参 加 者は 誰でも商品の配布を (自社サ プライ チェー
ン を通じて) 行な え る,
コ ミュ ニ テ ィ運 営 ライセ ン ス 者は, コ ミュ ニ ティ参 加 者が そ れ ぞ れ 自社へ の利益 亨 受を優 先できる ように,
利 益分 散を は か ること がライ セン ス の意 図となる.
76 自社
SC
と 関連させ た誘 導 的OSS
コ ミュ ニ ティ は さ らに, 「白社SC
の内 部にOSS
コ ミュ ニ ティ を閉じ込め る場 合 」と 」自社SC
の外 部にOSS
コ ミュ ニ ティ を 開 く場 合 」がある.
前 者にはクロー
ズ ド ラ イセ ン ス,
後 者は オー
プンライセ ン スが対 応 する。
一・
方,
自生 的OSS
コ ミュ ニ ティ に 自社SC
を関 連づけると きに は , 自社SC
の外 部にOSS
コ ミュ ニ テ ィが開か れて い る こ と は自 明で あ る.
とい う よ り, 自社SC
に自生的OSS
コ ミュ ニ テ ィを後か ら閉じ込める こ と は まず 不 可 能である.
この場合 には, オー
プン ライセ ン ス の みが対応する (正確 には, 自生的OSS
コ ミュ ニ ティが設 定し た オー
プ ンラ イセ ン スを受 け 入れる ことで自生 的OSS
コ ミ ュ ニ テ ィ に 自社SC
を関連づ けるこ と がで きると 言 うべ きか もしれ ない).
以 上 を まと め る と図
2
の よう
に コ ミュ ニ テ ィ と の関 係づ けを 三分 類で きる.
本 稿で は,
「自生 的OSS
コ ミュ ニ テ ィ と オー
プン ライセ ン ス」,
「誘 導 的OSS
コ ミュ ニ テ ィと オー
プン ラ イセ ンス」,
「誘 導 的OSS
コ ミュ ニ テ ィ とクロー
ズ ドラ イセ ン ス」
の三つ の関 係づ けが 区 分 さ れ ること になる,
5
。
OSS
商 品化
にお け る
OSS
コミ
ュ ニテ
ィと ビ ジ
ネ
ス の関係
の事
例
4
章で得ら れ たOSS
コ ミュ ニ ティ とラ イセ ン ス の関 係づ けの三分類 に 基づ き,
OSS
商 品 化に おけ る事 例 分 析 を行 う.
こ の と きにラ イ セ ン ス, ユー
ザ(
開 発 者 を 含 む)
を 集め る イン セ ン テ ィ ブ,
クロー
ズ ド ライセ ン ス オー
プン ライセン ス 自生 的OSSコミュ ニ テ ィ 誘導 的QSSコミュ ニティ (自生的oss⊇ミュ ニティ (自社SCに関 連 させ て に 自 社SCを関運づけ る ) OSSコミュ =ティを作る 〕 自社のSCの内部に 08Sコミュニティを 閉じ込 める 自社のS(:の外 部 に 〔〕SSコミュニティ が開か れ て い る 自 社のSCの外 部に OSSコミュニティを開く 図20SS コ ミュ ニ ティとラ イ セン ス の関 係 分 類OSS
コ ミュ ニ テ ィ運 営 者が得るもの (便益)
の 違 い に着目 して,
そ れ ぞ れの特 性を 明 ら か にする.
5.
1
Red
Hat
Linux
「自生的コ ミュ ニ テ ィと オ
ー
プン ライセン ス」の事
例 と してRed
Hat
Linux
を取 りE
げる5;.
Linux
は1991年
当時ヘ ル シ ンキ大 学 学 生であっ たLinus
Torvalds
個 入により,PC
上で稼 動 可 能 なUnix
ライ ク な オペ レー
ティ ングシ ステム (OS
) の た めの カー
ネル と し て最 初に 開発さ れ た.
彼は このOS
の存 在 を イン ター
ネッ トのニ ュー
ス グルー
プ に投 稿した.
ニ ュー
ス グ ルー
プの会 員が , 彼 にLinux
をダ ウン ロL一
ド可 能とするた めにヘ ル シ ン キ大 学 内サー
バ の空 き空 間 を提 供し たこ と か ら イン ター
ネッ トを利 用し た協 働 開発が始っ た.
以 降,
1
万 人 以 上の世 界 中の プロ グ ラマ とヘ ビー
ユー
ザが参 加 するニ ュー
スグルー
プや メー
一
リン グ リ ス トを通 じた協 働 開 発に至っ た,
Linux
は,
Free
Sof
七wareFoundation
が 規定
し たGPL
を採用 してい る
.GPL
はソ フ ト ウェ ア の著 作 権を 認め るが , 自由に複製, 変更,
配布,
共 有で きる ライセ ン ス で ある,
そ して,
モ ジュー
ル構 成 設 定 済みの商 用Linux
をデ ィ ス ト リビュー
ター
数 社がCD
に焼 き 付 けて販売す る ように なっ た.
1998
年 以 降 , 半 導 体ベ ン ダー
,PG
ベ ン ダー
,
そ して ア プ リケ・
一
・
一
シ ョ ン ベ ン ダー
が相 次い で プラッ トフ ォー
ム (OS
) と して のLinux
の採
用 を表 明してい る.
ディ ス ト リ ビュー
ター
のRed
Hat 社は1994
年よりRed
Hat
Linux
を販 売して い る.
こ の ソフ トウJ.
アは無 償 でイン ター
ネッ トで ダウ ン ロー
ドすることもできる
.
Red
Hat
Linux
は北 米で商用1
、inux
シェ ア の50
% 以上を 占め て い る.Intel社 ,
SAP
AG
が投資 を行っ てい る
.
/999
年7
月にRedHat
は株 式 初 期 公 開 (IPO
)を 彳’
f
い,
時 価 資 産は約 7 干 万 ド ル に達 して い る.
Red
Hat
Linux
の リセ ラー
プロ グ ラ ム には,
Compaq
,
Dell
,Gateway ,
IBM ,
HP
,
SGI
が 参 加 して い る.
ま た,
Red
Hat
は1999
年11
月に ソ フ トウ ェ ア開 発 用ツー
ル (コ ン パ イラ,
デバ ッ ガ)
開発 会社Cygnos
Solutions
を「自生的
OSS
コ ミュ ニ テ ィ と オー
プン ラ イセンス」 事 例 と して の
Red
Hat
Lilux
の特 性は 以下のように分 析で きる
.
1
)ライセ ン ス に よ る制 御 :OSS
の代 表 的なライ セ ン ス 規 定と して知られ てい るGPL
(
GNU
Gen −
eralPublic
License)
を採 用 し, 利 益 分 散が行
われてい る
.GPL
は,Free
So
丘wareFoundation
が掲 げる 理念に基づい て 明 文 化さ れ た ソ フ ト ウェ ア ライ セ ン ス規 約である
.
オリジナル(
ソー
ス)
コー
ドは全て公 開 される こ と,
公開さ れ たコー
ドは 複 製,
配布,
変 更が可 能で あ るこ と を 明 示 し てい る.
ただ し, オ リ ジナル コー
ドの 著 作 権は作 者に 帰 属 する.
た だ し,
オ リ ジ ナル コー
ドへ の追 加 , 変 更を行っ た場 合にその 公 開 が義 務づけら れる.
また,
ソ フ トウ ェ ア の使
用 条件 と して自 由 (コー
ドを含めた再 配 布な ど)
を妨
げない こ と を使 用 者 に要 求し てい る.
2
)ユー
ザ (開 発 者 を含
む)
を集め る イ ン セ ン テ ィ ブ :ユー
ザ ラ イセンス料 金を支 払 う必要が ない.
OSS
コ ミュ ニ テ ィに参 加 する こ と によ り, 世 界 中 で利用 さ れて い るOS
の 開 発に参 加で き る.
Lin −
ux ソー
ス コー
ドを 自社 製 品に組み込むこ と がで き る.
自社 製 品に1、
inUX
を搭 載し,多
くのユー
ザ に 利 用 させること がで きる,Linux
対 応 して い る 他 社 製品 との接 続・
互換 性を確 保で きる,
3
)
OSS
コ ミュ ニ ティ に自社サ プラ イ チェー
ン を 結びつ ける営 利 企 業の便益 :すで に成功を収めて図
3
自生 的OSS
コ ミュ ニテ ィとRed
Hat Linux コ ミュ ニ 7 イ 営利企 業に おける オ
ー
プン ソー
ス 形 態の取 り込み77
い るLinux
コ ミュ ニ テ ィか らの成 果 を取 り込んで さ ら に商 品 価 値を高め る た めの 関連ビ ジネス を展 開で きる.
自生 的OSS
コ ミュ ニ ティ の参 加 者を自
社の潜 在 顧 客にするこ とがで きる.
開発 費用 を劇 的に削 減で きる.
現 時 点 (
2
σ00
年7
月)
の状 況 として, 最 大 手ディ ス ト リビュ
ー
タRed
Hat
Linux
を元に販 売地 域に合せ た改 良 を 加 えたフラン ス の
Mandrake
,
ブ ラ ジル のCoectiva,
日本のLASER
5
Linux
のBetter
Red
Hat
と自称 する ディ ス トリビュー
ショ ン が台 頭 して き た.
GPI
、
の伝 搬 性に よ り,GPL
を採用 し たソ フ ト ウェ アを前 提 とする派生 ソ フ ト ウェ アもGPL
に基づ き, 常にソー
スコー
ドが 公 開 さ れ る.
こ の た め に,
商 用Linux
を販 売 する会 杜 は技 術的優位
を 図 る一一
方で,LinUX
の単 純な イン ス トー
ルサー
ビス 以 上の サー
ビス提 供 (例 :シス テ ム稼 動ま での コ ンサルティ ング) まで事 業 範 囲 を拡 大 する 傾向が ある.
他 祉との差 別 化が しにく い か ら である.
5.
2
mozilla「
誘導
的OSS
コ ミュ ニ テ ィ と オー
プ ン ライセ ン ス」の事 例 とし てmozilla を取 り上げる.
/
998
年 ユ月22
日,Netscape
Communications
社は
,
Netscape
Com
エnunicator5.
0
開 発のた めの百 万 コ
ー
ド以 上に及ぶ ソー
スコー
ド群の 公開を 発 表した.
実 際には, 発 表か ら2
ヶ 月 半後
の4
月⊥ 日 に オ リ ジ ナル コー
ドの公 開を行い,
ユー
ザの自 由な複 製, 配 布, 変 更ができる よう
になっ た.
ユー
ザに よっ て変 更,
改 良さ れ た ソー
ス コー
ド群 を 総 括 し て mozilla と愛称
をつ けて 呼 び,
東 映 映 画 怪 獣の ゴジラに似た キャ ラ ク ター
ま で 用意さ れた.
mozillaの 運 営 組 織は mozilla.
org であ り,
基 本 的 にNetscape
Co
unications韻
が担 当 をしている
.
mozilla は,
mozilla.
org ウェ ブサ イ トか ら無 償で ダウン ロ
ー
ドで きる.
オ リ ジ ナルソー
ス の一
一
元 管 理は mozilla.
org が行 う.
mozilla の 公開 に よ る 開発 者の 反響は良 く, 公 開 初日に4,
500
人 以 上 がmozilla のソ
ー
ス コー
ドを ダウ ン ロー
ド し た.
従来 の レイア ウ トエ ン ジン(
HTML
コー
ドを解 析 し78 ブ ラヴ ザに表 示させる機 構
)
を葬
り去 り,
新 規に ユ年が か りで小型軽量かつ 高 速な次世代 レ イア ウ トエ ンジン で あるGecko
の共同 開発を 行っ たt
と が mozilla の 日 立 っ た 成果 と して 有 名で あ る.
Netseape
自体で も継 続 してCommunicator
の 開 発 を 行 うが同 時に世 界 申の ボ ランテ ィ ア に よっ て 改 良さ れ たソー
ス コー
ド群で ある mozilla の 中 か ら良い もの で ある とNetscape
側で 判 断し た機 能 を取 り入れて,
新たにCommUnicator
の 製 品 版と して イン ター
ネッ ト上で無 償 配 布 する.
電 子 商 取 引な ど を実 現 する サー
バ 用ソ フ ト ウェ ア は有 償で 販 売 する。
mozilla 発 足 当 時は, 暗 合 技 術ア ル ゴリズムな どの
API
〔Applications
Programming
ln
−
terface
)ご とに公 開と非 公 開を規 定で きるNPL
(
Ne
七scapePublic
License
) をラ イセ ンス と して設 定してい た が,
後にAPI
の非公開の規 定を削 除し たMPL
(M
幅lla
Public
Lieense
)に改め ら れ た、
「
誘導
的OSS
コ ミュ ニ ティ と オー
プン ライセ ン ス1
事 例 と して の mozilla の特 性は 以下の よ うに 分 析で きる.
1
)ライセ ン ス による制 御lMPL
(MoziHa
Public
License)
で は, mozilla コ ミュ ニ テ ィか ら参 加 者 へ の利益分 散が行わ れてい る.
2
)ユー
ザ (開 発 者を含む)を集め る イン セ ンテ ィ ブ :ユー
一
ザライ セン ス料金 を 支 払う
必要が ない.
コ ミュ ニ テ ィ に参 加 するこ とにより,
世界 中で利 用 さ れてい る ウェ ブ ブラウ ザの開発 に参加
で きる,
次 期Netscape
社 ウェ ブ ブラ ウ ザの試作
品 を 利 用 で きる.
mozilla ソー
ス コー
ドを自社 製 品に組み込 むこ とがで きる.
3
)自
社サ プライ チェー
ン に結びつ け たコ ミュ ニ テ ィ運営 者の 便 益 :Netscape
社の親 会 社であるAOL
(Arnerica
Online
) で は , mozilla そ してNe
七seape 社で開 発さ れ た成 果,
新 機 能を利 用 す る こ とができる.Mozi
!la
コ ミュ ニ テ ィの成 果を取 り込んで,
さ ら に商 品価値を高め る た めの関 連ビ ジネス を展開で きる.
mozi 工la
コ ミュ ニ テ ィ の参加
者を自社の 潜 在顧客に す るこ と がで き る.
開発機 能の一
部を コ ミュ ニ テ ィ に依存
で き る,
[.
誘 導 的OSS
コ ミュ ニ ティ と オー
プン ラ イ セン ス」事
例 の現状は,
以 下の ように評 価で き る.
公開 さ れた mozilla は
,
百 万 コー
ドを超 える 巨 大なソー
ス コー
ド群であり , mozilla 自体
が決して 品 質が良い もの で はな く, 大 幅 な 仕 様 変 更 を行 う こ と になっ た.
mozi ]1a
で開 発さ れ た新 型レイ ア ウ トエ ン ジンGecko
を取 り入れ たデ ス ク トップアプ リ ケー
シ ョ ン をNeoplanet
社が 開 発 で きた.
Netscape
社はAmeriea
Online
(
AOL
)に ユ998
年11
月24
日に買 収さ れ た.
その結 果,Netscape
社 の 親 会 社 と し てAOL
で は, mozilla そ し てNetscape
Co
王nmunications 社におい て 開発さ れ た 成 果や新 機 能を利 用で きる ように なっ た.
だ が,
Netscape
Cornmunicator
5.
0
は大 幅に リ リー
スが 遅れて し まい,2000 年 4
月に な っ てNetscape
Communicator
6
.
O
と して バー
ジョ ン番一
号を /つ 繰 り越 してベー
タ版 がリ リー
ス さ れ た.
En ・・ n 〔torv.
図4Netscape
Communications
社 とmozilla.
org5.
3
Apple
Mac
OS
X
(
Darwin
)
「誘
導
的OSS
コ ミコ.
ニ テ ィと クロー
ズ ド ラ イセ ン スー
1
の事例 とし てDarwin
を取 り上げる.
1999
年4
月よ り,Apple 社
は 次期Apple
OS
X
の カー
ネル であるMach
マ イクロ カー
ネル とOS
機 能の一
部 分 (AppleTalk
ネッ ト ワー
ク フ ァ イル シ ス テム,HFS
ファ イル シ ス テ ム,
デ ィ レク ト リ サー
ビス ソ フ ト ウェ ア,
BSD
Unix
イン タフェー
ス,
Apaehe
ウェ ブ サー
バ)
の ソー
一
スコー
ドをDarwin
コ ンポー
ネン トとし てApple
社 ウェ ブ上で公開し , 無 償ダウン ロー
ドを可能と し た.
グラ フィ カル ユ一
ザイン タフェー
スの部
分 な ど は オー
プン に さ れ て い ない.
オー
プン ソー
ス の 部 分につ い て は参照 と変 更が可 能である.
し か し, その変 更部
分につ い てはApple
社に通 知し なけれ ばならない,
また,
Apple
社が知 的所 有 権 侵 害の告 訴 を受け た ときに,
裁判所 また は 政府
に よっ て解 決さ れる まで ソー
ス の 利 用 を停止 さ せ ることがで きる.
ライセ ン ス はAPSL
(
Apple
Pubhc
Source
License
)
で ある.
この とき,
創立者
であるApple
社による オリ ジ ナ ル ソー
ス の 変 更 分につ い て はApple
社 が 所 宥 権 を 持 ち,
APSL
を採
用 す る か否か を選 択 する こ と が で きる.Apple
社は,
Darwin
の 成 果を取 り入 れ て, 派生 ソ フ ト ウェ アの 開放,
Mac
OS
X
次 期バ・
一
ジ ョ ンへ の反映 を 行う.
Mac
OS
X
Server
本 体は,
GUI
を含む全機能
を実 行 可 能フ ァ イル と し て提 供 する有
償
販売
が行わ れ る(
Mac
OS
X
Client
正式 開 放は2001
年予定)
.
「
誘導
的OSS
コ ミュ ニ テ ィ と クロー
ズ ド ラ イセ ン ス」事
例 と して のDarwin
の特 性は以 下の よう
に分析
で き る.
1)
ラ イセ ン ス に よ る 制 御 :設 定さ れ たAPSL
(
Apple
Public
Source License
)で は,
Darwin コミュ ニ テ ィ運営 者と
Apple
社と契 約した関連ビジ ネス事 業 者へ の利益 集 中を は かる.
2)
ユー
ザ(
開発者を含む)
を集めるイン セ ンティ ブ : ユー
ザラ イセ ン ス 料 金を支払う
必要が ない.
コ ミュ ニ テ ィに参 加 するこ と に よ り,D
跚 win コ ン rVlotorola (Power PC )[
〉
Applε MacOSX Deve且opment一
APPlePubhcSO ロrce 趣・盛剄
AppleOSXProductio AP乱 (Appb 随bIicSourceLicens9 ) 図5Apple 社と Darwin コ ミュ ニティ 営 利企業におけるオー
プンソー
ス形 態の取 り込 み 79 ポー
ネン トの ソー
ス コー
ド参 照と内 部 利 用が で き る.常
にApple
Mac
OS
の最 新 情 報を入 手で きる.
3
) 自
社サ プライ チェー
ン に結びつ けた コ ミュ ニ テ ィ運営 者の便
益 : ソー
ス の一
元 管理 はApple
社 自 体が行う.
コ ミュ ニ テ ィ の方 向 性はApple
社が主導権
を もっ て決
め ること がで きる.Apple
社は現 在,
サー
ドパー
ティにMac
OS
をラ イ セ ン ス供 与してお ら
ず,
Motorola
社 製Power
PC
(CPU
) を搭 載 し た
PC
は 現在,
Apple
社
製PC
が ほ と ん ど である.
そのた め,
Apple
社は,
DarWin
コ ミュ ニ テ ィの 成 果 をほ ぼ独占
で きる.Darwin
コ ミュ ニ ティ の参 加 者を自社の潜
在 顧 客にするこ とがで き る.
開 発 機 能の一
部 をコ ミュ ニ テ ィ に依存
で きる.
「誘 導 的OSS
コ ミュ ニ ティ と クロー
ズ ドライ セ ンス」 事 例の現状は, 以 下の ように評 価で きる.
Apple
Mac
OS
X
のオー
プン ソー
ス は部 分公開 で ある.
結 果 的にDarwin
コ ン ポー
ネ ン ト稼 動ハー
ド ウェ アが多 数 派ではないApple
社 製PC
(
ま た は 互換 製 品 )に限 定され
る.
Motorola
製Pow −
erPC 採 用に よるマ シ ン機 種 限 定に もか か わ らず,
一
部の根 強いApple
PC
人気に よ り,Darwin
の ダ ウン ロー
ドア ク セ ス 回 数は1999
年4
月公開後1
ヶ 月 間で16
万 回を超 えた と記 者 発 表さ れ てい る.
1999
年12
月13
日 に4
人のDarwin
プロ ジェ ク ト 開発 者を専任
さ せ,
改めてApple
社が オー
プン ソー
ス プロ ジ ェ ク トに コ ミッ トする声
明を出してい る.
Darw
血 プロ ジェ ク トによっ て開 発さ れ た ウ ェ ブ サー
バ 用 アプ リ ケー
シ ョ ン (Openpla
: ,Ne
七一
Sprocket
等)
が続々 と ワ リー
ス さ れてい る.
6
コミ
ュ ニテ
ィと自社
SC
の関係
づ け の一般
化
4
章で示 した 「OSS
コ ミュ ニ テ ィとライセ ン ス の 関 係 分 類 」の枠 組み に, さ らに5
章で示 し た事
例 分 析か ら得 ら れ た自社サプラ イ チェー
ン (SC
)との 結びつ け方
を…
般 化し, 三種 類のOSS
コ ミュ ニ テ ィとライセ ン ス の関 係づけ一
般 化の記 述 を試みる.
6
.
f
自生 的OSS
= ミュニ ティと オー
プンラ イ セン ス1
)ライセ ン ス による制 御1
オー
プン ラ イ セ ン ス.
コ ミュ ニ テ ィ参 加 者へ の 利益分散.
80
2
)ユー
ザ欄
発 者 を 含む) を 集め る イ ンセ ンテ ィブ :ユー
ザライセ ン ス料金 を支 払 う必 要が ない.
オ リ ジナル コー
ド を元に し たOSS
コ ミュ ニ テ ィ に おける修正・
変更分を 利 用 でき る,
コ ミュ ニ テ ィ に参 加 する こ とに より, 世 界 中で利 用さ れるOSS
の開 発に参
加で きる,
OSS
の一
部を白
社製品に組 み込むこと がで きる,
自社 製 品にOSS
を搭 載 し,
多
くのユー
ザ に利 用 させ る こ と ができる.OSS
対 応の他 社 製 品と接 続・
互換 性を確 保しやすい.
3
)OSS
コ ミュ ニ テ ィ に 自社SC
を結びつ ける営 利 企業の便 益 :オ リ ジ ナル コー
ド を 元に し たOSS
コ ミュ ニ テ ィ における修正・
変 更 分を取 り込んで さ ら に商 品 価 値 を 高め る た めの 関連ビジネスを展 開 で き る,
自生 的OSS
コ ミュ ニ テ ィの 参 加 者 を 自社 の潜 在 顧 客にで きる.
開 発 費 用の 大 部 分をコ ミュ ニ テ ィに依存
で きる.
6
.
2
誘導
的OSS
コ ミュ ニティとオー
プンライセン ス1)
ライセ ン ス によ る制 御 :オー
プン ラ イ セ ンス。
コ ミュ ニ テ ィ参 加 者へ の利 益 分 散.
2)
ユー
ザ(
開発 者を含む)を集め る イ ン セ ン テ ィブ :ユー
ザライセ ン ス料 金を支 払 う必要がない.
オ リジナル コー
ドを元 に したOSS
コ ミュ ニ テ ィに おける修正・
変 更 分を利 用で きる.OSS
コ ミュ ニ ティ運 営 者SC
における製 品 開 発に参 加して貢 献 で きる.
オ リジ ナル コー
ドを 元にし たOSS
コ ミュ ニ テ ィ における修正・
変 更 分を半 完 成 品と して能 動 的に利 用し, 自社SC
に取 り込 むこ と がで きる.
3
) 自社サ プライ チェー
ン に結びつ け たOSS
コ ミ ュ ニ テ ィ運営
者の便 益 :自社SC
の 方 向 性 を優 先 し な が らOSS
コ ミュ ニ テ ィを 運営できる.
半 完 成 品を オ リ ジ ナル コー
ドとしてOSS
コ ミュ ニ テ ィ に 公 開し,
修正・
変更分 を得て商 業 利 用で きる.
開 発費用の一
部 をコ ミュ ニ ティに依 存で きる.
6。
3
誘 導 的OSS
コ ミュ ニ ティと クロー
ズ ド ラ イ セ ンス1
)ライセ ン ス に よる制 御1
クロー
ズ ド ライセ ン ス.
OSS
コ ミュ ニ ティ参 加 者へ の利 益 集 中.
2
)ユー
ザ(
開 発 者 を含む) を集め るイ ンセ ンテ イブ :ユー
ザライセ ン ス料 金を支 払 う必 要がない,
OSS
コ ミュ ニ テ ィで の み得ら れるオ リ ジ ナル コー
ドとその 変 更・
修正分 を受
動 的に利 用で き る.
OSS
コ ミュ ニ テ ィ運営
者SC
に おける製品開発 に 参 加して貢 献で き る,
3)
自社SC
に結びつ け たOSS
コ ミュ ニ テ ィ運 営 者の便 益 : クロー
ズ ドラ イセ ン ス に より,
OSS
コ ミュ ニ テ ィ に よ るオ リ ジ ナル ソー
ス変更・
修 正分 を 元 に して さ ら な るコー
ドの 修正・
変更 を 公 開 せ ずに差 別化 した商 品の 配布
は創立者である コ ミュ ニ テ ィ運 営 者の み行 な える.
自社SC
の方 向 性 を 優先しな が らOSS
コ ミュ ニ ティ を 運営で きる,
開 発 費 用の.
一
部 をコ ミュ ニ テ ィ に依 存で きる.
7
ま
と
め と今後
の課題
本 研 究はOSS
を扱 う営 利企業 とOSS
コ ミュ ニ テ ィ との 関 係の視 点か ら,OSS
のユー
ザ ライ セン ス の規 定に よっ て ,OSS
コ ミュ ニ ティ におい てオ リジ ナルソー
一
ス修正・
変 更分 が 共有さ れず, 営 利 企業のサ プライ チェー
ンにOSS
コ ミュ ニ テ ィが組
み こ まれ る形態が あ りえるこ と を 強 調する もの で あ る.
まず,
営 利企業
が設立 し たOSS
コ ミュ ニ テ ィ を誘 導 的OSS
コ ミュ ニ テ ィ と呼
び , 自生 的OSS
コ ミュ ニ テ ィ と区 別した.
そ して営 利 企 業とOSS
コ ミュ ニ テ ィ との 関係 をユー
ザラ イセ ン ス の 内 容 に着 目 して分 析 し た.
本 稿で は, 商 品と して のOSS
を規 定 するユー
ザライセ ンス に着 目し, 「オ リ ジ ナル ソー
ス の創立者で ある 企業が優 先 的に利 用するクロー
ズ ドライセ ン ス 」と 「オ リジ ナル ソー
ス の創立者とOSS
コ ミュ ニ ティの参加
者が対等
に利 用で きるオー
プン ライ セ ンス」の二 分類を 行 っ た.
自生的OSS
コ ミュ ニ ティ と自社SC
を関係 づ ける場 合には,
企業は オー
プン ラ イセ ン スを受 け 入 れ た 企業活 動 を行 う.
誘 導 的OSS
コ ミュ ニ テ ィを企 業が主 導 的に設 置し た場 合には,
オー
プン ラ イ セ ンス を採 用 する場 合 とク ロー
ズ ドライセ ン スが採 用さ れる事 例が存 在 する.
後者の場 合 も,
参 加 者は創立者と 同等な条 件で営利 目的に使 うこ と はで き な くて も自己 利 用 は無償で行 うことが で きる.
また , ある製 品の 開 発 に参 加 し た とい う営 利 企 業に おける オ
ー
プン ソー
ス形 態の取 り込み81
「名誉
」は獲
得で きる.実
際, コ ミュ ニ テ ィ参
加 者のイ ンセン テ ィブ が低い と 思 わ れる 「オリジナ ル ソー
ス の創 立 者である 企業が 優先的に利 用する クロー
ズ ド ラ イセ ン ス 」の 場 合 も,
一
定
の成果を あ げつ つ あ る事
例 が存在
する (Apple
Mac
OS
X
(DarWin
)
).
すな わ ち,
OSS
の商品化
に おけるOSS
コ ミュ ニ テ ィ と ライセ ン ス 形 態には,「自
生 的OSS
コ ミュ ニ ティ と オー
プンラ イセン ス」,
「誘 導 的OSS
コ ミュ ニ テ ィ とオー
プ ン ライセ ン ス 」,
「誘 導 的OSS
コ ミュ ニ ティ と クロー
ズ ドライセ ン ス」の3
つ が 分 類で きる.
現 状で は,
自生的OSS
コ ミュ ニ テ ィ主導に よるOSS
の商 品 化が まず 成 功 しつ つ ある.1、
inux
は,
そ の最も華
々 しい事
例 である.
しか し,誘 導 的OSS
コ ミュ ニ テ ィ で も,ぎ
らに観 察は必 要であるがOSS
の商品化を行う
こ と が可 能であ り, その事 例 が見ら れて きた.
すな わ ち,OSS
の純 粋 型とい え るであろう
GPL
(
Linux
で採 用さ れ た ラ イセ ン ス 内 容 )で な け れば,
OSS
の商品化が 成功し ない と い うことは ない.
む し ろ,
営利 企業には誘 導 的OSS
コ ミュ ニ ティと関係づ け たOSS
の商 品化
に おい て 多 様 な選 択 肢 を 試 行 する余地 がある とい える.
注 :本 稿 は,
連 名 著 者2
人 が 数 度の ディ ス カッシ ョ ンに よっ て練 り上げたもの である.
謝 辞 :本 稿に対し, 貴重 な ご助 言をい た だ き ました査 読 者の方々 に深 く感 謝い た し ます.
参 考 文 献1
)Eric
S,
Raymond ,
山 形浩生 訳,
「伽 藍 とバ ザー
ル』,
光 芒 社,1999.
2) 川 崎和 哉 編,
「オー
プン ソー
スワー
ル ド』,
翔 泳 社,
1999.
3
) 木 村 誠・
根 来 龍之,
「オー
プンソ フ トウェ ア を核 とする ビジ ネス の可能 性 」,
r
情 報研究 第22
号 』,
文教大 学, 1999,
4
) 木 村 誠・
根 来龍之,
“
ビジ ネスモ デ ルと して のオー
プン ソー
シングの可能 性”
,
第40
回全 国大会 予 稿 集, 「オフィス オー
トメー
シ ョ ン 」,November ,
1999.
5
)Ch
虹sDibona,
Manrk
Stone,
Sam
Ock
lam.
“Open
Sources
:Voice
曲℃mthe
Open
SDuree
Revolution
”,
O
’
ReillyOpen
Souree
,1999
(ク リス・
ディボ ナ,
サ ム
・
オッ クマ ン,
マー
ク・
ス トー
ン編,
倉 骨 彰訳
,
「オー
プン ソー
ス ソ フ トウェ ア』,
オライ リー ・
ジヤ パ ン
,1999.
)6
>JDsh M[cHugh
,
“
For the love of hackingρ,,
Forbs,