小児の自転車走行中における顎顔面外傷の統計学的検討
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(2) 小児の自転車走行中における顎顔面外傷の統計学的検討. Vol. 21 No.1. 16 歳以上 54 人 (75.1%). 個々の症例に対し年齢,性別,受傷曜日,受傷時 間,受傷原因,外傷の種類,合併症について検討し た.受傷時間は 3 時間ごとに分類し,受傷原因は転 倒,自動車との衝突(交通事故) ,静止物との衝突 (衝突),転落の 4 つに分類した.外傷の種類は骨折, 打撲,皮膚軟組織損傷,口腔内損傷(軟組織損傷, 歯槽骨骨折,歯の損傷(破折,脱臼))に分類した. 合併症は(他院受診を含む)診断名で分類し,診断 名は便宜的に頭部外傷,四肢外傷に分類した. 本調査では student-t 検定を用い統計学的処理を 行い p<0.05 を有意差ありとした.. 小児 4 歳以上 16 歳未満 29 人 (34.9%). 図 1 対象. n=83. 女児 2人(7%). 結 果 対象の 16 歳未満の小児は 29 人で,自転車運転中の 外傷の総数 83 人の 34.9%を占めていた(図 1) .小 児 29 人の性別は男児 27 人,女児 2 人で,男女比は 13.5:1 で,圧倒的に男児に多かった(p<0.05) (図 2). 年齢は 9 歳が最も多く 5 例で,以下 11 歳 4 人,13 歳 3 人の順であったが有意差は見られなかった(図 3) . 受傷日は日曜日 11 人, 土曜日 6 人と週末が多かったが, 有意差は見られなかった(図 4) .受傷時間は 15:00 ~ 18:00 が最も多く 14 人で, 以下 18:00 ~ 21:00 が 7 人,12:00 ~ 15:00 が 6 人の順で,これら 3 つ の時間帯で 27 人を占めていた(p<0.05)(図 5).受. 男児 27人(93%). n=29. 図 2 小児の男女比. (人)5. (人)14 男児 女児. 4. 12 10. 3. 8 6. 2. 4. 1 0. 2. 4. 6. 8. 10. 12. 14 (歳). 0. 日. 月. 図 3 年齢分布. 火. 水. 木. 金. 土 (曜日). 図 4 受傷曜日. (人)14. 12 10 8 6 4 2 0. 0:00 ∼ 3:00. 3:00 ∼ 6:00. 6:00 ∼ 9:00. 9:00 ∼ 12:00. 12:00 ∼ 15:00. 15:00 ∼ 18:00. 18:00 ∼ 21:00. 21:00 ∼ 24:00 (時間). 図 5 受傷時間帯 65.
(3) 小. 児. 口. 腔. 外. 科. June 2011. (人)25 20 15 10 5 0. 転倒. 交通事故. 衝突. 転落. 図 6 合併症内容 (人)14 12 10 8 6 4 2 その他. 歯の損傷+. 軟組織損傷. 軟組織損傷. 歯の損傷. 0. 図 7 口腔内損傷内容 (人)4 3 2 1 破折4. 破折1. 脱臼+破折2. 脱臼+破折1. 脱臼8. 脱臼4. 脱臼3. 脱臼2. 脱臼1. 0. 図 8 歯の損傷内容. 傷原因は転倒が最も多く 21 人で(p<0.05)以下,交通 事故 4 人,衝突 3 人であった(図 6) .外傷の種類は 口腔内損傷が最も多く 23 人で(p<0.05)以下,口 腔内損傷及び皮膚損傷 2 人,打撲 3 人の順であった. 上下顎骨骨体部骨折はみられなかった.口腔内損傷 の内訳は歯の損傷 13 人,軟組織損傷 4 人,損傷及 び軟組織損傷 3 人,その他 9 人であり,その中には 66. 歯槽骨骨折に加え,歯の損傷及び,軟組織損傷を伴 う症例は,骨折と歯牙損傷及び軟組織損傷を伴う症 例が 1 人などであった(図 7) .歯の損傷の内訳は脱 臼 1 本が 4 人,以下脱臼 2 本が 3 人,破折 1 本が 3 人の順であった.歯の損傷は計 40 本で,上顎 28 本, 下顎 12 本であった(p<0.05)(図 8) .合併症は 10 人に認められた.内訳は頭部外傷 7 人,四肢外傷 4.
(4) Vol. 21 No.1. 小児の自転車走行中における顎顔面外傷の統計学的検討 (人)7 6 5 4 3 2 1 0. 頭部外傷. 四肢外傷 (1例重複を含む ). 図 9 合併症. 人であった(1 人の重複を含む) (図 9) . . 考 察 小児の外傷のうち自転車によるものは比較的多 く,原因の第 2 ~ 4 位で,顎顔面領域に限定したも のでも第 2 ~ 4 位とされる 3, 4).また小児の自転車 外傷では口腔内損傷が比較的多いとされている 1, 5). 自転車外傷の報告は以前より認められているが,し かしながら本報告のように 16 歳未満の小児に限定 して詳細に調査しているものは少ない 5). 自転車外傷による性差は 35 歳未満では大半が男 性である,または,25 歳以下では 3:1 で男性に多 いなど報告者により違いがあるが,基本的に男性に 多く,年齢の上昇に伴い女性の割合が増加する 6, 7). 本調査でも,有意に男児に多く認めた.一般的な外 傷の統計で男児が多いことと同様に,男児のほうが 活動的であることや自転車を使って遠乗りをする機 会が多いためと思われた. 年齢分布は自転車に乗り始める幼稚園頃の 4 歳以 降から中学生まで幅広く認められ,このことは自転 車が年齢にかかわらず乗り物として小児に広く普及 していることを示している.自転車による外傷は顎 顔面外傷を対象にした報告で,7 歳~ 12 歳では原因 として最も多く,本調査でも小児の中でも年齢の高 い小学校中学年から中学生にかけて,やや多い傾向 を認めた 4). 曜日は日曜が最も多く,次いで土曜日で休日に多 い傾向を認めた.また受傷時間は午後から夜間にか けて多く,午前中の発生はきわめて少なかった.成 人においても休日の午後から夜間にかけての発生が 多く認められるが 2, 8),小児の発生について勘案す ると,身体機能が未熟であるが故の疲労による注意. 力の散漫,遊戯時間が多くなることなどの因子が関 連していると示唆される. 受傷原因は転倒が最も多かった.転倒は小児に限 らず成人を含め自転車外傷の原因の第 1 位である 9). 自転車事故は自損の単独事故が多く,またその要因 としては環境因子およびスピードの出し過ぎ,不注 意,交通規則の不履行などの運転者側の因子があげ られている 5). 外傷の種類は口腔内損傷が最も多かった.自転車 による顎顔面外傷の中では皮膚の損傷が最も多いと する報告もあるが,口腔内損傷のない皮膚の損傷は 形成外科等他科を受診していたと推察される 10).本 報告では骨折は認められず,また歯槽骨骨折も 1 例 を見たのみであった.小児の顎顔面骨折の原因のう ち自転車は第 1 ~ 2 位を占めており,その集積した 報告例も見られるが 11, 12),骨折の頻度は 0.05% 程度 で 9)ある.成人の症例では骨折が比較的多く認めら れていることから,骨折の頻度が少ないことは小児 の自転車外傷の特徴とも推察される 13). 本調査で口腔内損傷は歯の損傷,軟組織損傷共に ほぼ同数であったが,小児の自転車外傷では口腔軟 組織外傷が多いとされる 9).歯の損傷に関し,一般 的な小児の歯の損傷は乳歯,永久歯を問わず 1 ~ 2 本のことが最も多く,乳歯列では脱臼が多く,永久 歯列では破折が多い 14).また自転車事故は入院治 療を受けた歯牙損傷を持つ小児の原因として最も多 く,中でも脱臼が多いとされている 15).本調査でも 歯の損傷は 1 ~ 2 本が最も多く,また永久歯損傷のほ うが多かったが,破折より,脱臼が多い傾向を認め, 部位別では本調査でも上顎に有意に多く認めた 8). 上顎に損傷が多いのは,運転時に両手でハンドルを 握っているので直接顔面を強打することが多いため と推察される. 67.
(5) 小. 児. 口. 本調査では合併症を有する症例は有意に少なかっ た.しかしながら,小児の自転車外傷では重篤な症状 も見られること 9),また本調査のなかでも合併症の中 では頭部外傷が最も多かったことから,関係他科特に 脳神経外科対診を躊躇しないこと,頭部外傷後の注意 事項を十分に説明しておくことが必要であろう 16). 小児の自転車外傷を減らすためには近年普及して いるヘルメットの着用徹底がある.さらに今後の課 題として口腔外傷を減らすためのヘルメットの改良 が望まれている 16).同時に小児に対する自転車の安全 教育や自転車の構造知識の教育は必須であろうと考え られるが特に圧倒的に男児に多く見られることは,男 児により指導強化する必要があると示唆された.. 結 語 自転車走行中の顎顔面外傷総数 83 人中,16 歳未 満の小児の受傷者は 29 人で, 全体の 34,9%を示した. 性別は男児 27 人,女児 2 人と男児が多く,9 ~ 13 歳における割合が多かった.発生頻度は土~日曜日 の午後から夜間にかけて多く見られた.受傷原因は 転倒によるものが多く認められた.外傷の種類は口 腔内損傷が最も多く,歯の損傷を伴うものが多かっ た.歯の損傷は脱臼を多く認め,下顎よりも上顎に 好発していた.合併症は頭部外傷を多く認めた.. 引 用 文 献 1)K ontio, R., Suuronen, R., et al.: Have the causes of maxillofacial fractures changed over the last 16 years in Finland? An epidemiological study of 725 fractures. Dent Traumatol. 21 :14-19 2005 . 2)田 中徳昭,吉岡秀朗,他:当科における顎顔面骨骨折 の臨床統計的検討.日本職業・災害医学会会誌 50: 283-288 2002. 3)曽 我卓也,岩田雅裕:当科における過去 11 年間の小児. 腔. 外. 科. June 2011. 顎顔面口腔外傷の臨床統計的観察.小児口外 9:7-11 1999. 4)Stewart, G.B., Shields, B.J., et al.: Consumer products and activities associated with dental injuries to children treated in United States emergency departments, 1990-2003. Dent Traumatol. 25: 399-405 2009. 5)Eilert-Petersson, E.and Schelp, L. : An epidemiological study of bicycle-related injuries. Accid Anal Prev. 29: 363-372 1997. 6)Sikic, M., Mikocka-Walus, A.A., et al.: Bicycling injuries and mortality in Victoria, 2001-2006. Med J Aust. 190: 353-356 2009. 7)額田純一郎,松本理基,他:小児顎顔面口腔外傷 172 例 の臨床統計的観察.小児口外 2:110-118 1992. 8)今井 裕,豊橋 真成,他:顎顔面骨骨折の臨床的研究(1). 口科誌 40:826-839 1991 9)井手進策,加納康行,他:自転車事故による顎顔面外傷 149 例の臨床的検討(抄).日口科誌 47:462-463 1998. 10)Acton C.H., Nixon J.W., et al.: Bicycle riding and oral/ maxillofacial trauma in young children. Med J Aust. 165:249-251 1996. 11)I ida, S.and Matsuya, T.: Paediatric maxillofacial fractures: their aetiological characters and fracture patterns. J Craniomaxillofac Surg. 30 :237-241 2002. 12)T horhén, H., Iizuka, T., et al.: Different patterns of mandibular fractures in children. An analysis of 220 fractures in 157 patients. J Craniomaxillofac Surg. 20: 292-296 1992. 13)大川内雅哉,鹿嶋光司,他:小児における顎顔面骨骨折 の臨床的検討 . 小児口外 19:20-27 2009. 14)O netto, J.E., Flores, M.T., et al.: Dental trauma in children and adolescents in Valparaiso, Chile. Endod Dent Traumatol. 10: 223-227 1994. 15)G ulinelli, J.L., Saito, C.T., et al.: Occurrence of tooth injuries in patients treated in hospital environment in the region of Araçatuba, Brazil during a 6-year period. Dent Traumatol. 24: 640-644 2008. 16)Sosin, D.M., Sacks, J.J., et al.: Pediatric head injuries and deaths from bicycling in the United States. Pediatrics. 98:868-870 1996.. 別刷り請求先: 昭和大学歯学部地域連携歯科学講座 近 藤 圭 祐 〒 145―8515 東京都大田区北千束 2 丁目 1 番 1 号 68.
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