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教師における業務上のストレッサーとワーカホリズムとの関連について―校種別の検討―

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教師における業務上のストレッサーと

ワーカホリズムとの関連について

―校種別の検討―

松 岡 伸 子

1)

 大 塚 泰 正

2)

 石 田  弓

1)

 川 人 潤 子

3) 【問題と目的】本研究の目的は,小・中・高等学校教師のストレッサーとワーカホリズムとの関連を検討することであった。 【方法】2014年8月に,A県の小中学校・高等学校教師78名(男性24名,女性53名,性別無回答1名; 平均年齢45.0歳, =8.4歳)を対象にストレッサーとワーカホリズムを測定した。 【結果】一元配置分散分析の結果,心理的な仕事の質的負担に関して小学校と高等学校との間に有意差が確認され,強迫的な 働き方に関して小学校と高等学校との間や中学校と高等学校との間に有意差が確認された。さらに,相関分析の結果,小学 校教師では働きすぎは心理的な仕事の量的負担と強い正の,心理的な仕事の質的負担と中程度の正の,強迫的な働き方は心 理的な仕事の量的負担と中程度の正の,心理的な仕事の質的負担や仕事のコントロールの低さと弱い正の関連を示した。中 学校教師では働きすぎは心理的な仕事の量的負担と中程度の正の関連を示した。高等学校教師では働きすぎは対人 藤と中 程度の正の関連を示した。 【考察】本研究結果から,校種によって教師のストレッサーとワーカリズムとの関連は異なる可能性が示唆された。今後は, より多くのサンプルを用いた検討が必要である。 【キーワード】ワーカホリズム,仕事のストレッサー,教師

Ⅰ.問題

精神疾患による教師の休職率が増加している1)。2014 年度では,全国公立学校教職員919,253名のうち,病気 休職者は8,277名であったが,そのうち精神疾患による 休職者は5,045名で,全病気休職者数の61.0%を占めて いた。全病気休職者に対して精神疾患により休職してい る教師の割合は,1992年度から2014年度に至るまで増 加し続けている1,2)。中学校教師を対象とした調査では, 軽度の抑うつ症状を呈する教師は約10%,中等度以上 の抑うつ症状を呈する教師は約60%存在することが明 らかになっている3) 先行研究では,このような精神面の不調を引き起こす 教師のストレッサーとして,仕事の量的負担2,4,5),仕事 の質的負担2,4,5),仕事の多忙さ6),成果のフィードバッ クの欠如2),児童・生徒や保護者との人間関係2),閉鎖 的な組織風土2),役割 藤や職場内の人間関係5,7)など が報告されている。また,海外では学校・教育評価が教 師にとってストレッサーとなっていることが示されてい る8)が,学校・教育評価は日本でも2007年度より実施 が始まり,日本の教師にとってもストレッサーとなって いる9)。こうした業務内容の変化や業務量の増加は,教 師が児童・生徒に必要とされているという認識や職務自 律性10)などを阻害する可能性が考えられ,教師が働き がいを感じにくい現状が推察される。 教師のメンタルヘルス状態に影響を及ぼす要因とし て,職場内外のストレッサーに加えて,近年,教師自身 の働き方にも注目が集まっている6, 8, 11-14)。第1に,教師 は学校内での労働時間が長いうえに自宅への持ち帰り仕 事を恒常的に行っている15-17)。この持ち帰り仕事が隠れ た労働時間になっており,仕事とプライベートの時間と を完全に分離することが難しくなっている6, 11)。第2に, 教 師 が ほ と ん ど 休 憩 を と る こ と な く 働 い て い る こ と11,12,17)が労働密度の高さとして問題視されている12) 第3に,教師は児童・生徒との関わりの時間を優先する 1) 広島大学大学院教育学研究科 〒730-0052 広島県広島市中区千田町 3 丁目 11-29-2F 松岡カウンセリングオフィス [email protected] 2) 筑波大学人間系 3) 比治山大学健康栄養学部

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VOL. 20 2017 ことによって生徒の自主性を育てるための教師間での話 し合いなどの業務を行えなくなったり,自分の休憩時間 を減らしたりする傾向がある6, 12)。多くの教師の働きが いは,児童・生徒との関わりに重点が置かれているた め,教師はこのような行動をとりやすいことが指摘され ている12)。また,校種によりストレスが異なることが明 らかにされており18),労働時間も校種で違いが存在する 15, 16)。こうした点からも教師を対象とした研究では校種 別の分析が必要である。 ところで,労働者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす 要因の1つにワーカホリズムがある19)。ワーカホリズム は,「過度に一生懸命働き,働くことに強迫的である傾 向」20)と定義される。ワーカホリズムは,働きすぎ

(working excessively)と強迫的な働き方(working com-pulsively)から構成される20)。働きすぎは,通常では考 えられないほどの時間を仕事に割り当て,組織や経済的 ニーズの合理的な範疇を超えて仕事をする行動的なもの と定義されている。一方,強迫的な働き方は勤務時間外 でも仕事のことを考え,期待以上の仕事をしようとする 抗しがたい内的衝動を特徴とする認知的なものと定義さ れている19,21,22) ワーカホリズムはメンタルヘルスに悪影響を及ぼすこ とが報告されている。ワーカホリックな人はワーカホ リックでない人よりも,ストレッサーやストレス反応が 悪い状態にあることが確認されている19)。ワーカホリズ ムに陥っている労働者は,ストレッサーに関しては仕事 の要求度との正の関連を示し,ストレス反応に関しては 疲労困憊や身体愁訴との正の関連を示した19)。ワーカホ リズムの下位因子別にみると,健康に及ぼす影響につい て様々な研究結果が認められる。たとえば,ウェルビー イングとワーカホリズムとの関連についての研究が存在 する。世界保健機構は健康について「健康とは,病気で はないとか,弱っていないということではなく,肉体的 にも,精神的にも,そして社会的にも,すべてが満たさ れた状態(well-being)にあること」と定義している23, 24) 強迫的な働き方はウェルビーイングの悪さと正の関連が確 認されているが,働きすぎはウェルビーイングのよさとの 関連が確認されている22)。また,Shimazu & Schaufeli 25) 研究では,労働時間が長く健康状態が悪い労働者は,強 迫的な働き方を示していた。さらに,看護師を対象とし た研究では,仕事をしていない時も仕事について考える という強迫的な働き方は,朝の起床の困難や起床時の疲 労感と関連した26)。この理由について,Kubota et al.26) は,強迫的な働き方が看護師の覚醒水準や情動的苦痛を 増大させるため,強迫的な働き方と起床時の困難との間 に関連が認められたのではないかと考察している。 一方,働きすぎと強迫的な働き方の両者が労働者の健 康を考える際に重要であるとする報告もある。Schaufeli, Bakker, Heijden, & Prins 27)の研修医を対象とした調査で は,働きすぎと強迫的な働き方のいずれもが高い群は, 働きすぎと強迫的な働き方のどちらか一方のみが高い群 や両方ともに低い群よりも仕事の要求度,仕事の資源, 組織的行動,ウェルビーイングが好ましくない状態にあ ることが明らかになっている27) 教師のワーカホリズムについていえば,教師は恒常的 に学校内で長時間労働を行っており,それに加えて自宅 に仕事を持ち帰ることも多い14-16)。このような状態は ワーカホリズムの下位因子である働きすぎが高い状態で あると考えられる。また,休憩すると仕事が先延ばしに なり,たまった仕事を後で行うことが苦痛であると考え て休憩をとらずに働いている点6)は,強迫的な働き方と 類似している。このように,教師はワーカホリズムの特 徴を有しやすいといえる。 そして,ストレッサーとワーカホリズムとの関連につ いては,オランダ人労働者を対象とした先行研究におい て,仕事に関する不合理な認知とワーカホリズムとの間 で正の関連が示された28)。仕事に関する不合理な認知の うち,特にパフォーマンスの要求度に関する不合理な認 知とワーカホリズムとの間に正の関連が認められた28) さらに,フランス人病院職員を対象とした先行研究にお いても,仕事の要求度とワーカホリズムとの間に正の関 連が認められた29)。つまり,ワーカホリズムに陥ってい る労働者は仕事の要求度を実際以上に高いものとして知 覚する可能性がある。 以上の議論を踏まえると,ワーカホリズムは,教師の メンタルヘルス状態のさらなる悪化を招き,休職等につ ながる可能性を持つといえる。教師のメンタルヘルス状 態を改善するためには,ワーカホリズムにどのようなス トレッサーが関連しているのかを明らかにすることが重 要である。すでにストレッサーとの関連は検討されてい るが,対象とするストレッサーの幅を広げさらに検証を 行うことが求められる。そこで,本研究では,小・中・ 高等学校教師を対象として,ストレッサーとワーカホリ ズムとの関連を検討することを目的とする。

Ⅱ.方法

1.調査参加者・調査時期・調査方法 A県の公立と私立の小・中・高等学校教師105名を対 象として,2014年8月に質問紙調査をA県の大学構内で の教員免許講習後に実施し,その場で回収した。A県に

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ることが予測される。質問紙には同意書を添付し,本調 査の主旨,目的,個人情報の保護,参加者の権利などに ついて説明した。そして,インフォームド・コンセント を取った上で調査を開始した。回収は,質問紙への記入 後の直接回収によって行った。 回収数は95名(男性24名,女性53名,性別無回答18 名; 平均年齢45.5歳,SD=8.7)であり,回収率は90.5% であった。この95名から,無回答の10名と分析に使用 した変数となる質問項目への回答に1問以上欠損のあっ た7名を除外した78名(男性24名,女性53名,性別無 回答1名; 平均年齢45.0歳,SD=8.4,小学校37名,中 学校17名,高校24名)を分析対象者とした。有効回答 率は82.1%であった。 2.調査票 1)ワーカホリズム ワーカホリズムを測定するために,短縮版仕事とウェ ルビーイング(満足度)に関する調査票(Dutch Work Addiction Scale)21, 30)を用いた。本尺度は10項目2因子 で構成される。下位尺度は,強迫的な働き方(5項目; α=.77,項目例: 一生懸命働くように自分を駆り立てて いる何かを,自分の中に感じることがある),働きすぎ (5項目;α=.75,項目例: 急いでいて,時間と競争して いるようだと感じる)であった。教示文は,「次の10の 質問文は,仕事に関してどう感じているかを記述したも のです。各文をよく読んで,あなたが仕事に関して,今 までそのように感じたことがどのくらいあるかを判断し てください。各文について,あなたが感じている頻度に 最も合う選択肢に○をつけてください」であった。回答 は「(ほとんど)感じない」(1点)∼「(ほとんど)いつも 感じる」(4点)の4件法であった。この尺度はSchaufeli, Shimazu, & Taris 21)によって信頼性と妥当性の検証が行

われている。なお,Sussman31)によると,ワーカホリズ ムは個人の特性に由来する部分があることが指摘されて いる。そのため,ワーカホリズムは業務上の負荷などに よって引き起こされる仕事上のストレッサーとは異なる 概念であるといえる。 2)ストレッサー ストレッサーを測定するため,職業性ストレス簡易調 査票32)の仕事のストレッサー尺度を使用した。本尺度 は17項目9因子で構成されるが,本研究では,1因子 心理的な仕事の質的負担(3項目;α=.73,項目例: か なり注意を集中する必要がある),仕事のコントロール の低さ(3項目;α=.59,項目例: 自分で仕事の順番・ や り 方 を 決 め る こ と が で き る), 対 人 藤(3項 目; α=.76,項目例: 私の部署内部で意見のくい違いがあ る)であった。教示文は,「あなたの仕事についてうか がいます。最もあてはまるものに〇をしてください」で あった。回答は「ちがう」(1点)∼「そうだ」(4点)の 4件法であった。各ストレッサーが高いほど,得点が高 くなるように集計した。仕事のコントロールの低さを構 成する「自分のペースで仕事ができる」,「自分で仕事の 順番・やり方を決めることができる」,「職場の仕事の方 針に自分の意見を反映できる」と対人 藤を構成する 「私の職場の雰囲気は友好的である」は逆転項目である ため反転処理を施した。 3)週当たりの実質的な労働時間 週当たりの実質的な労働時間は,仕事とウェルビーイ ング(満足度)に関する調査21,30)の「一週間当たりの 『実質的な』労働時間は,何時間ぐらいですか?(残業 時間を含む)」という項目への回答によって測定した。 4)片道の通勤時間 片道の通勤時間は,仕事とウェルビーイング(満足 度)に関する調査21,30)の「通勤時間はどのくらいです か?(片道)」を分単位で問う項目によって測定した。 3.分析方法 はじめに,独立変数として校種,従属変数としてワー カホリズム(強迫的な働き方,働きすぎ)とストレッ サー(心理的な仕事の量的負担,心理的な仕事の質的負 担,仕事のコントロールの低さ,対人 藤)を投入した 分散分析を実施した。さらに,校種ごとにワーカホリズ ムとストレッサーの相関分析を実施した。分析には SPSS21.0(SPSS Inc., Chicago, IL)を用いた。

Ⅲ.結果

1.調査参加者の属性

調査参加者の属性とその人数をTable 1に示した。調 査参加者の多くは,年齢層51∼60歳,女性,校種は小 学校,勤務形態は常勤,週当たりの実質的な労働時間は

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VOL. 20 2017 50∼59時間,片道の通勤時間は30∼59分であった(Ta-ble 1)。 2.各変数間の分散分析の結果 校種ごとに各変数の得点の違いについて検討するた め, 3つの校種を独立変数,ストレッサーとワーカホリ ズムを従属変数とする分散分析を行った。分析の結果, ストレッサーにおいては心理的な仕事の質的負担に, ワーカホリズムにおいては強迫的な働き方に有意な群間 差が認められた(心理的な質的負担: F(2, 75)=3.35, p<.05; 強迫的な働き方; F(2, 75)=6.94, p<.01)。Fig-ure 1に校種ごとの各ストレッサー得点を,Figp<.01)。Fig-ure 2に校 種ごとの各ワーカホリズム得点を示す。TukeyのHSD法 (5%水準)による多重比較を行ったところ,ストレッ サーについては心理的な仕事の質的負担が高等学校より も小学校で高く(Figure 1),ワーカホリズムについては 強迫的な働き方が高等学校よりも小学校,中学校で高い という結果が得られた(Figure 2)。その他の変数におけ る校種間での群間差に有意差は認められなかった。 3.各変数間の相関分析の結果 各変数間の関連について検討するため,Pearsonの相 関係数を算出しTable 2に示した。分析の結果,小学校 教師では働きすぎと心理的な仕事の量的負担との間に強 い正の相関係数が認められ,働きすぎと心理的な仕事の Table 1. 調査参加者の属性 ( =78) 小学校(n=37) 中学校(n=17) 高等学校(n=24) n (%) n (%) n (%) 年齢(歳) 31-40 10(27.0) 7(41.2) 9(37.5) 41-50 11(29.7) 5(29.4) 5(20.8) 51-60 16(43.2) 5(29.4) 10(41.7) 性別 男性 12(32.4) 5(29.4) 7(29.2) 女性 24(64.9) 12(70.6) 17(70.8) 無回答 1(2.7) 0(0.0) 0(0.0) 勤務形態 常勤 35(94.6) 17(100.0) 21(87.5) 臨時 1(2.7) 0(0.0) 2(8.3) 非常勤 1(2.7) 0(0.0) 1(4.2) 週当たりの実質的な労働時間 -39 2(5.4) 1(5.9) 1(4.2) 40-49 3(8.1) 1(5.9) 2(8.3) 50-59 15(40.5) 8(47.1) 11(45.8) 60-69 7(18.9) 5(29.4) 5(20.8) 70- 10(27.0) 2(11.8) 5(20.8) 片道の通勤時間(分) -29 13(35.1) 7(41.2) 7(29.2) 30-59 23(62.2) 8(47.1) 10(41.7) 60- 1(2.7) 2(11.8) 7(29.2) Figure 1. ストレッサーの校種間の比較 Figure 2. ワーカホリズムの校種間の比較

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質的負担,強迫的な働き方と心理的な仕事の量的負担と の間に中程度の正の相関係数が認められた。また,強迫 的な働き方と心理的な仕事の質的負担,仕事のコント ロールの低さとの間には弱い正の相関係数が認められ た。中学校教師では働きすぎと心理的な仕事の量的負担 との間に中程度の正の相関係数が認められた。高等学校 教師では働きすぎと対人 藤との間に中程度の正の相関 係数が認められた(Table 2)。

Ⅳ.考察

1.小学校教師における業務上のストレッサーとワーカ ホリズムとの関連 小学校教師において,心理的な仕事の量的負担は強迫 的な働き方および働きすぎと中∼強程度の正の関連を有 することが明らかになった。また,強迫的な働き方は小 学校教師が高等学校教師よりも高いことが確認された。 小学校教師の具体的な心理的な仕事の量的負担として は,中学校教師や高等学校教師と異なり,ほぼすべての 小学校教師が担任を担当しており,さらに担任がすべて といってよいほどの授業を自分のクラスの児童に対して 行っているため,授業の空き時間があまりないこと,空き 時間があったとしても,その時間に授業準備以外の担任と しての業務を行っていることなどが挙げられる11, 33, 34)。こ のような背景から,小学校教師は他の教師と業務を分担 しにくい状況となり,心理的な仕事の量的負担に対して 一生懸命働かなくてはならないという衝動を感じやすい のかもしれない。また,小学校教師は,心理的な仕事の 量的負担が高いと,それらの仕事をこなすために,通常 では考えられないほどの時間を仕事に割り当て,組織や 経済的ニーズの合理的な範疇を超えて仕事をするという 働きすぎ19,21,22)に陥りやすいことも示唆される。 さらに,小学校教師においては,心理的な仕事の質的 負担の重さも強迫的な働き方および働きすぎと弱∼中程 度の正の関連を持つことが示された。この関連は小学校 教師にのみ認められた。小学校教師の具体的な心理的な 仕事の質的負担としては,小学校では,体育,音楽,図 工といった体験型の授業を担任教師が行うことがあり授 業の実施形態が複雑であること,児童期から思春期まで の幅広い発達段階にある者を対象とする小学校教育の特 質上,学年によって児童への対応を変更することが必要 であること33)や,小学校に英語教育が導入されたこ と33)などが考えられる。このように心理的な仕事の質 的負担が高いと,教師はかなりの注意を必要としたり, 高度な技術を必要としたり,さらには仕事中は仕事のこ とを終始考えざるを得ない状況となりうるため,強迫的 な働き方や働きすぎの状態に陥りやすい可能性が考えら れる。 また,小学校教師において,仕事のコントロールの低 さは強迫的な働き方と弱い正の関連を持つことが示され た。ほぼすべての小学校教師がクラス担任やすべてと いってよいほどの授業を担当しているため,児童が下校 するまであまり職員室に戻れないという特徴が背景にあ る11, 33, 34)。こうした状況は小学校教師の仕事のコント ロールの低さの一因となっている可能性が考えられる。 つまり,小学校教師は児童の下校後の限られた時間の中 で蓄積した業務を処理しようとする11)ために強迫的な 働き方に陥りやすい可能性が示唆される。 2.中学校教師における業務上のストレッサーとワーカ ホリズムとの関連 中学校教師では,心理的な仕事の量的負担は働きすぎ と中程度の正の関連を持つことが明らかになった。中学 心理的な仕事の質的負担 .39* .25 −.04 仕事のコントロールの低さ .37* .32 .16 対人葛藤 .25 .30 .15 働きすぎ 心理的な仕事の量的負担 .70*** .49* .22 心理的な仕事の質的負担 .47** .41 .16 仕事のコントロールの低さ .25 .22 .30 対人 藤 .07 .06 .53** *p<.05, **p<.01, ***p<.001

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VOL. 20 2017 校教師にとっての心理的な仕事の量的負担の一部は,部 活動についての負担であることが挙げられる。中学校教 師の勤務実態調査において,勤務日の平均残業時間の業 務内訳で最も時間の長い業務は成績処理の28分であっ たが,次に長い業務時間は部活動・クラブ活動の26分 であった16)。この調査では勤務の記録用紙に出退時刻の 記入があった時間から契約上の労働時間を除外した時間 を残業時間とみなし,記録された出退時刻前後の時間帯 の仕事を持ち帰り仕事とみなした16)。さらに,休日の平 均残業時間の業務内訳では最も長い業務は部活動・クラ ブ活動の78分であり,休日の平均持ち帰り仕事の業務 内訳で最も時間の長い業務は部活動・クラブ活動の45 分であった16)。また,時間的な負担だけではなく,多く の教師が経験したことがなかったり自信のない内容の部 活動顧問を担当しており,それを負担に感じている35, 36) 不慣れな内容の部活動の顧問を務めるために部活動中も 自信が十分ではない中で生徒の様子を見たり技術自体に ついても指導をしたりと複数の業務を一度にこなそうと している可能性も否定できない。さらに,顧問をしてい る部活動の経験がない教師がその競技を学ぶために,競 技についての書籍を自費で購入して学んだり,チームに 所属して競技体験を持つといった報告もある35)。こうし た報告から,教員は,部活動の時間外に,指導のための 知識や技能を獲得するために多くの時間を割いており, 業務の量的負担が増える一因となっていると予想され る。心理的な仕事の量的負担が,働きすぎにつながる一 例ともいえる。 このように,中学校教師は平日,さらには休日の多く の時間を部活動に費やしており,さらに不慣れな内容の 部活動を担当している教師も少なくないことから様々な 複数の業務を負担を感じながら同時に行ったり,未経験 の部活動内容を学ぶために時間を費やしている可能性が ある。このことが心理的な仕事の量的負担を増加させ, 労働時間数の増加のみではなく同時に複数の仕事をする という働きすぎを加速させている可能性が示唆される。 3.高等学校教師における業務上のストレッサーとワー カホリズムとの関連 高等学校教師では対人 藤は働きすぎと中程度の正の 関連を持つことが示された。藤原・古市・松岡18)は, 高等学校は他の校種と比べて普通科・商業科・工業科な ど専門の異なる学校や男子校・女子校,進学やスポーツ に力を入れる学校など様々な特色を持ち,各教師が求め る教育目標と勤務校の教育目標が異なる場合があること を指摘している。各教師が求める教育目標と勤務校の教 育目標とが異なる場合,その教師は他の教師と共通の目 標を持って協働しにくいため,他の教師に相談すること ができず,自身で一生懸命働かなければならなくなり, 働きすぎに陥りやすくなる可能性がある。 4.本研究の限界 本研究の限界として,以下4点を挙げる。第1に,本 研究は横断調査であったため,ストレッサーとワーカホ リズムの因果関係については明確に議論することができ ない。今後はストレッサーとワーカホリズムとの因果関 係について縦断的に検討することが必要である。具体的 には,Time1(以後,T1)とTime2(以後,T2)の2回質 問紙調査を実施し,パネル分析等の手法を用いて,T1 のストレッサーを独立変数,T2のワーカホリズムを従 属変数として,両変数間の因果関係を明らかにすること が求められる。 第2に,全校種において教師の回答数が少なかったた め,本研究で得られた結果を一般化するためには,より 多くの教師を対象にすることができる調査方法について 検討することが必要である。 第3に,校種にかかわらず,本研究における調査は教 員免許講習で実施されたため調査協力者の学校規模が特 定不可能である。このため,結果についてはこの点を考 慮して理解する必要がある。今後,学校規模や特色を特 定した調査を実施することが必要とされる。 第4に,本研究では30歳以下の教師が存在しなかった 点が挙げられる。教師の年齢構成において若年層の教師 は人数が少ないため,この偏りは教師の年齢構成の実態 をある程度反映したものであるともいえる。しかしなが ら,教師になってから1年以内に退職する教師の離職理 由の約90%が精神疾患等によるものである2)ことを考慮 すると,30歳以下の若年層の教師に焦点を当てた検討 も今後必要であるといえる。 【文献】 1) 文部科学省(2014).平成26年度公立学校教職員の人事行政 状況調査について 文部科学省 Retrieved from http://www. mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1365310.htm(2016 年 8 月 15 日) 2) 文部科学省(2013).教職員のメンタルヘルス対策について (最終まとめ) 文部科学省 Retrieved from http://www.mext. go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/ 2013/03/29/1332655_03.pdf(2014年2月12日)

3) 藤本 昌樹・鎌倉 利光(2000).中学校教員の精神的健康に 関する研究 学校メンタルヘルス,3, 74-79

4) 文部科学省(2012). 教職員のメンタルヘルス対策について (中間まとめ)文部科学省 Retrieved from http://www.mext. go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/088/houkoku/__icsFiles/ afieldfile/2012/10/03/1326385_1.pdf (2014年10月14日)

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する研究―教師の職業ストレッサーとバーンアウトの関係 を中心に― 教育心理学研究,51(2),165-174.

8) Kyriacou, C.(2001). Teacher stress: Directions for future research.

Educational Review, 53(1), 27-35. 9) 高木 亮・淵上 克義・田中 宏二(2008).教師の職務 藤と キャリア適応力が教師のストレスに与える影響の検討―年 代ごとの影響の比較を中心に― 教育心理学研究,56(2), 230-252. 10) 玉置 千歳・高原 龍二(2012).「教員の働きがいに関する意 識調査」報告Int’lecowk 国際経済労働研究,67(1),34-39. 11) 酒井 朗(1998).多忙問題をめぐる教師文化の今日的様相  清水宏吉 (編)教育のエスノグラフィー―学校現場のい ま― (pp. 61-78) 嵯峨野書院 12) 新谷 康子(2012).教員の多忙と労働の特質―観察調査を 通して― 公教育システム研究,11, 1-36. 13) 斉藤 浩一(2004).中学校教師ストレスの構造的循環に関す る実証的研究 東京情報大学研究論集,8(1),21-28. 14) 岡田 一秀(2010).教師の多忙化と時間外勤務についての調 査研究 学校メンタルヘルス,13(1),59-62. 15) ベネッセ総合教育研究所(2006).平成19年度文部科学省委 託調査「教員勤務実態調査」(高等学校)報告書 ベネッセ総 合教育研究所 Retrieved from http://berd.benesse.jp/berd/cen-ter/open/report/kyouinjittai/2006/index_kou.html(2014年4月 4日)

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(8)

J

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S

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M

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H

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VOL. 20 2017

Original Research〉

Examining the Relations between Job Stressors and

Workaholism among School Teachers

Nobuko MATSUOKA

1)

 Yasumasa OTSUKA

2)

 

Yumi ISHIDA

1)

 Junko KAWAHITO

3)

Abstract

[Purpose]

This study examines the relations between job stressors and workaholism among Japanese elementary,

ju-nior high, and high school teachers.

[Methods]

For the purpose of this study, 78 elementary, junior-high, and high school teachers (male 24, female 53,

gender unknown 1; average age 45.0,

SD=8.4) answered the Brief Job Stress Questionnaire and the shorter

Japanese version of the Dutch Work Addiction Scale in August 2014.

[Results]

A one-way ANOVA revealed that there was a significant difference in the mean values of psychological

qual-itative workloads for elementary and high school teachers. Significant differences also existed in the mean values of

the element “working compulsively” (WC); the value was different for elementary and high school teachers as well

as junior-high school and high school teachers. Correlation analyses also revealed that element “working

excessive-ly” (WE) was strongly and positively correlated to psychological quantitative workloads and moderately and

posi-tively correlated to psychological qualitative workloads among elementary school teachers. On the contrary, WC

was moderately and positively correlated to psychological quantitative workloads and weakly and positively

corre-lated to psychological qualitative workloads and low job control among elementary school teachers. WE was found

to be moderately and positively correlated to psychological quantitative workloads among junior-high school

teachers. WE was moderately and positively correlated to interpersonal conflicts among high school teachers.

[Discussion]

This study suggests that the associations between job stressors and workaholism vary depending on the

school level—elementary, junior high, or high school. Further research is required to confirm this suggestion,

and it is important for studies to use larger samples in order to examine the associations between job stressors

and workaholism.

Key words: workaholism, job stressors, school teachers

Journal of School Mental Health 2017, Vol.20, No.2 pp. 180-187

1) Graduate School of Education, Hiroshima University 2) Faculty of Human Sciences, Univeristy of Tsukuba 3) Department of Health and Nutrition, Hijiyama University

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