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電気化学的手法を駆使した 天然抗酸化剤の作用機序へのアプローチ

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電気

気化

化学

学的

的手

手法

法を

を駆

駆使

使し

した

天然

然抗

抗酸

酸化

化剤

剤の

の作

作用

用機

機序

序へ

への

のア

アプ

プロ

ロー

ーチ

堀田 弘樹*

Approach to elucidate the reaction mechanism of natural antioxidants using electrochemical methods

Hiroki HOTTA*

Received March 29, 2021

The oxidation reaction mechanisms of chlorogenic acid and caffeic acid, were studied by various electrochemical studies. Cyclic voltammetry (CV) and its digital simulation analysis, flow coulometry, and analysis of electrolytic oxidation products by HPLC-UV, ECD, MS detection were performed. These measurements clarified the mechanism of dimer formation associated with oxidation and the resulting increase in reducing power of the polyphenols. The reaction between DPPH radical and several antioxidants were monitored by CV. Antioxidants were classified into three groups with different reaction mechanisms depending on the substitution position of the OH group. The linear correlation between the DPPH radical scavenging activity and the number of electrons involved in the oxidation, n value, was proved. Thus, it was revealed that the subsequent chemical reaction following the oxidation is a key reaction that influences the antioxidant activity. Through the development of the electron conductor separating oil water (ECSOW) system and digital simulation analysis of CV, it was clarified that the electron transfer at the oil-water interface between Fe(CN)63− and ferrocene is proceeding by the ion transfer mechanism. A novel analytical

method called liquid-liquid optical waveguide spectroscopy was developed, and fast electron transfer between ascorbic acid and DPPH radical at the miscible liquid/liquid interface was observed by the method. 1..ははじじめめにに 生体組織の酸化が、がんや老化をはじめ 様々な疾病の原因になると言われている。ス ーパーオキシドアニオンラジカル O2・−やヒ ドロキシラジカル HO・など活性酸素種の過 剰生成が、生体組織の酸化を引き起こすとさ れる。これらによる酸化を抑制するのが、抗 酸化物質(抗酸化剤)である。生体内では酵 素、タンパク質などの高分子化合物や、ビタ ミンC(アスコルビン酸)やビタミン E(α-トコフェロール)などの低分子化合物が抗酸 化剤として作用している。ポリフェノールも この低分子抗酸化剤として、酸化による傷害 から生体を守る働きをしている1)。ポリフェ ノールは複数のフェノール性水酸基をもつ 化合物の総称であるが、フラボノイド類、フ ェノール酸類などその種類は極めて多い。こ 図1 クロロゲン酸 (CHL) とカフェイン 酸 (CAF) の構造。 ––––––––––––––––––––––––––––––––––––– * 神戸大学大学院海事科学研究科(〒658-0022 兵庫県神戸市東灘区深江南町5-1-1)

Graduate School of Maritime Sciences, Kobe University, 5-1-1, Fukae-minami, Higashinada, Kobe, Hyogo, 658-0022, Japan.

E-mail: [email protected].

2020 年年志志方方メメダダルル受受賞賞記記念念総総説説

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れらの化合物は、ラジカル化合物を1 電子還 元し、非ラジカル化合物にすることからラジ カルスカベンジャーと呼ばれる。広義に抗酸 化剤と言えば、ラジカル化合物の発生を抑制 する予防的抗酸化剤、ラジカルスカベンジャ ー、さらに酸化された部位を排除、修復する 抗酸化剤があるが、狭義にはラジカルスカベ ンジャーを抗酸化剤と呼ぶ。著者はラジカル スカベンジャーについて研究を行ってきた。 抗酸化活性を評価・比較する手法がいくつ か報告されている2,3)。活性酸素種との反応を 評価する手法をはじめ、 DPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydradyl)ラジカルのような比較的安 定な有機ラジカルをモデル化合物として、そ の電子移動を観察する手法などが利用され てきた4)。比較的簡便な分光測定法から、大 型装置を必要とするESR などの測定まであ る。また、抗酸化剤自身の酸化還元電位など の物理化学的特性も重要な基礎パラメータ と考えられる。このような電子移動特性の評 価には、電気化学測定法が有効である。単に ラジカル化合物との反応量や反応速度を評 価するだけでなく、反応過程の追跡や反応生 成物の評価を行い、反応機構を理解すること が、真に生体に対して抗酸化剤を有効に作用 させるために重要である。著者は主として電 気化学測定法を用い、質量分析や分光測定法 を合わせて、ポリフェノール、中でも図1 の クロロゲン酸(CHL)やカフェイン酸(CAF) を中心に、その電子移動機構を解明すること に注力してきた。 2..ククロロロロゲゲンン酸酸((CHL))、、カカフフェェイインン酸酸((CAF)) の の酸酸化化機機構構のの研研究究 図2 に CHL のサイクリックボルタモグラ ムのpH 依存性(pH 5.8, 7.4, 8.7)を示す。酸 性下では、典型的な準可逆波が得られている。 pH が上がるに従い電位が負方向にシフトす ると同時に、還元方向の電流(負電流ピーク) が小さくなっていくことが観察された。負方 向にシフトするのは、この電子移動に H+移 動が関与しているためであり、還元電流の減 少は酸化に伴う不可逆な化学反応の影響を 示すものである。 そこでこの化学反応の詳細を検討するた め、サイクリックボルタモグラムのデジタル シミュレーション解析を行った。その結果、 濃度に二次の不可逆な後続化学反応を含む 電子移動反応EqC2i とした方が、濃度に一次 の分解反応 EqCiと仮定するよりも結果をよ く説明できた5,6)。このように後続化学反応が 二量化を含む多量化反応であることが支持 された。 また、酸化電子数n は、フローカラム全電 解セルを用いたクーロメトリー測定により 決定した。n の pH 依存性を図 3 に示す。CHLn は pH 7 までの酸性領域では、二電子移 動であるが中~塩基性領域においてpH の増 加に伴いn が増加する結果となった。CAF に ついても同様、pH 7 を超えたあたりから増 加傾向を示した。これはアスコルビン酸(n = 2 で pH に非依存)や、システイン(n = 1 で pH に非依存)とは異なる傾向であった。ま 図3 酸化電子数 n の pH 依存性。Asc:アス コルビン酸, Cys:システイン, 全て 50 mM 緩 衝液 + 50 mM KCl を含む水/EtOH 1:1(v/v)中, 流速0.20 mL min−1で全電解した。文献5 より 許可を得て転載。 4 6 8 10 0 1 2 3 4 pH n CHL CAF Asc Cys 図2 1.0 mM CHL のサイクリックボルタモグ ラムのpH 依存性。全て 50 mM 緩衝液 + 50 mM KCl を含む水/EtOH 1:1(v/v) 溶液, 掃引速 度0.02 V s−1, 作用電極はグラッシーカーボン。

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た、n の増大傾向は図 2 で示したサイクリッ クボルタモグラムのデジタルシミュレーシ ョンにより得られた二次の後続化学反応の 速度定数kc2の pH 依存性とよく一致してい ることから、後続化学反応を起こした結果n の増大につながっていることが示唆された5)。 すなわち、後続化学反応によって生成した物 質は、さらに電極にて酸化されることを示唆 している。そこで、後続化学反応の効果をさ らに確認するため、CHL のフロー全電解酸 化生成物のサイクリックボルタンメトリー 測定を行った。電解酸化直後と1 分静置後に 測定したサイクリックボルタモグラムを図4 に示す。0.2 V より正側に掃引を行ったとき、 電解直後(図4a)では酸化電流がほとんど観 察されず、還元電流のみ観察された。これは 試料溶液中にCHL 酸化体のみが存在してい たことを示しており、このときは電解酸化に 伴う後続化学反応が、ほとんど起こっていな かったことを示している。一方、電解酸化後 1 分経過時に CV 測定を行った場合、図 4b に 示すように酸化電流が観察されるとともに 還元電流がより小さく検出された。この結果 は、後続化学反応により酸化される化学種が 生成したことを示している。ただし、全体的 に電流値が小さくなっていることから、酸化 還元不活性な化学種も多く生成しているこ とを示唆している。 酸化生成物の構造を明らかにするために、 質量分析法(エレクトロスプレーイオン化質 量分析法、ESI-MS)を用いて分析を進めた。 質量分析は、簡単のため構造がより単純な CAF を用いて行った7)。フローカラム電解生 成物を直接、質量分析にかけた結果、二量体 さらには三量体の存在が確認され、溶液の pH が高くなるほどその生成量が増加するこ とが明らかとなった。また、重水素置換実験 により生成物中に複数のフェノール性水酸 基の存在を確認することもできた。 CAF の電解生成物を HPLC にて分離・検 出した。図5 に電解酸化前の試料(CAF 還元 体、図5a)、酸化直後(図 5b)、さらに電解 酸化後 60 分経った試料のクロマトグラム (図5c)を示す。電解酸化直後には還元体(R) のピークが減少し、酸化体(O)のピークが 現れている。全電解されているためR 体は完 全に酸化され、無くなっていることが期待さ れるが、元の1 割程度のピーク面積で検出さ れている。これは、電解セルからループイン ジェクターを通過し、分離検出されるまでの 時間で後続反応を起こし、R 体が再生成され ているためと考えられる。分離カラムを通さ ずに即座に測定した吸収スペクトルから、ほ ぼ完全に R 体が消失していることが確認さ れている。すなわち、全電解により一度は完 全に酸化された試料が、後続化学反応により 再度還元体に戻っていることが示された。さ らに電解酸化60 分後には、O 体のピークは ほぼ消滅し、R 体のピークがさらに増加して いた。このとき、溶出時間2 分付近の X と表 示したピークが大きく増えていることが分 かった。X の分析を現在進めているところで ある。O 体の減少とともに R 体の再生成が起 こり、元の4 割程度まで還元体が再生成した。 また、図5 の 15 分以降のクロマトグラムに5 CAF の全電解生成物時間経過によるク ロマトグラムの変化。(a) 電解前, (b) 電解直, (c) 電解 60 分後に分離・検出。 4 CHL の全電解生成物のサイクリックボ ルタモグラム。流速1.5 mL min−1で全電解。(a) 電解直後に測定, (b) 電解 1 分後に測定。掃引 速度は0.1 V s−1。文献5 より許可を得て転載。

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おいて、小さいながらも多くのピークが検出 されていることがわかる。これらはR 体の再 生成、O 体の減少とともに増加していた。図 5c を拡大したものを図 6 破線で示す。18 分 以降に現れているピークは全て二量体また は、三量体に相当することがLC-MS の結果 から明らかとなっている。図6 には、フロー 全電解セルを検出器として用いた時(電解電 位1.0 V)の電解クロマトグラムも実線で示 している。UV 吸収により検出されたすべて のピークが正の電流(酸化電流)を流してい る。すなわちここで生成している二、三量体 は全て酸化されることを示している。これら のピーク面積から元のCAF 1 分子あたり、 再生成されたR 体から 0.50 電子、二、三量 体から 0.82 電子分に相当することが分かっ た。すなわち酸化に伴う還元体の再生成、二 量化などの後続化学反応により n が増大し ていることが示され、図3 の n が 2 電子以上 になった結果を説明することができた。また、 得られたマススペクトルから、図7 のような 二量体の生成が推測された。これらはともに 全電解により一度酸化したはずの o-ヒドロ キノン部位がもとに戻っており、なおも還元 剤として作用することが分かる。 このように酸化された R 体が再生成する 反応は、1,2-ベンゼンジオール骨格(o-置換体) であるCHL やカテコールで観察されている。 一方、p-ヒドロキノン(1,4-ベンゼンジオール、 p-置換体)やレゾルシノール(1,3-ベンゼンジ オール、m-置換体)では、R 体の再生成はわ ずかしか観察されなかった。フェノール性水 酸基の置換位置により、反応機構が変わるこ とを明らかにした。置換位置により反応機構 が大きく異なことは、ラジカル化合物との反 応においても観察された。 活性酸素種のモデル化合物としてしばし ば用いられる DPPH ラジカルと各抗酸化剤 との反応を、サイクリックボルタンメトリー により追跡することを試みた。図8 に CAF とDPPH の反応過程を観察した結果を示す。 反応はTris 緩衝液にて pH 7.4 に調製したエ タノール水混合溶液中で行った。図8a は、 DPPH のみの CV である。350 mV 付近に中 点を持つ可逆な酸化還元対が明瞭に観察さ れる。この溶液に0.10 mM となるよう CAF 溶液を少量注入した。注入後10 s 経過時のボ ルタモグラム(図8b)では、正電流ピークが 大きく現れ、0 mV 付近に還元波が観察され ている。これはCAF の酸化波、還元波に相 当する。未反応のCAF によるものと考えら れる。その後さらに時間が経過すると、カフ ェイン酸の還元波が小さくなり、900 s まで 経過すると、図8c に示すように CAF の還元 図6 CAF 電解生成物の UV クロマトグラ ム(280 nm, 破線)と電解クロマトグラム(1.0 V で酸化, 実線)。 0 10 20 30 40 50

Retention time / min

Ab s, C ur ren t 1 mAbs 0.5 μA X R体 図8 CAF と DPPH の反応過程の CV によ る観察(pH 7.4 緩衝液中)。(a) 0.25 mM DPPH のみ, (b) 0.25 mM DPPH + 0.10 mM CAF, CAF 注入後 10 s, (c) 0.25 mM DPPH + 0.10 mM CAF, CAF 注入後900 s, (d) 0.10 mM CAF のみ。掃引速度0.1 V s−1, 作用電極はグラッ

シーカーボン。

7 CAF の電解酸化により生成した二量体

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波はほとんど見られなくなった。一方で、 DPPH の酸化還元波は共にきれいに観察さ れ、CAF との反応を経ても分解や付加などの 化学反応は起こらず、熱力学的に可逆な電子 移動のみであることが分かる。この結果から、 CAF は DPPH を還元する過程で、不可逆な 後続化学反応が進行し、最終的に電極不活性 な生成物を生じるが、一方のDPPH は単純な 電子移動のみが進行していることが分かっ た。以上の実験をいくつかの抗酸化剤につい て行った結果、p-ヒドロキノンやゲンチジン 酸(2,5-dihydroxybenzoic acid)のように p-ジ ヒドロキシベンゼン骨格を持つ物質では、抗 酸化剤、DPPH ともに可逆な電子移動を起こ す(すなわち単純な酸化還元平衡となる)の に対して、CAF や CHL、エラグ酸のような o-ジヒドロキシベンゼンをもつ化合物では、 抗酸化剤がDPPH を還元したあと、後続化学 反応により最終的に電極不活性な化学種が 生成した一方で、DPPH との付加反応は観察 されなかった。このグループと同じ反応形式 には、アスコルビン酸やシステインも含まれ る8)。また、カテキン、レゾルシノールなど m-ジヒドロキシベンゼン骨格を持つ抗酸化 剤では、DPPH への電子移動とともに、DPPH との付加反応が進行し、抗酸化剤、DPPH と もに不可逆な化学反応を起こすことが分か った。カテキンはo-ジヒドロキシベンゼン、 m-ジヒドロキシベンゼン骨格の両方を持つ が、その両方がDPPH と反応しているものと 考えられる。 以上のように後続化学反応が、その化合物 の抗酸化活性を評価するうえで重要である ことを示したが、後続化学反応の効果を含め た活性評価法の一つとして、フロー全電解に より得られる酸化電子数n を提唱した9)。34 種類のポリフェノール、非ポリフェノール性 抗酸化剤について、DPPH ラジカルの E°にお いて測定されたn は、それらの DPPH ラジカ ル捕捉活性(一定濃度のDPPH を半減させる のに必要な抗酸化剤濃度として定義される EC50の逆数を DPPH 捕捉活性として評価し た)と高い相関があった(図9)9)。酸化還元 電位と各種抗酸化活性との相関は、以前から 議論されてきたが、必ずしも高い相関は得ら れていなかった。本研究は、DPPH ラジカル 捕捉活性が、電気化学測定によって評価でき ることを示した注目すべき結果である。 DPPH 捕捉活性は、均一溶液中でかつ比較的 長い時間かけて進行する反応を評価したも のであるため、このように酸化電子数と相関 が取れたものと考えている。 3..液液液液((油油水水))界界面面電電子子移移動動機機構構のの研研究究 様々な抗酸化活性を評価するには、不均一 反応場である混じり合わない液体間の界面 (液液界面・油水界面)での電子移動を明ら かにすることが重要であると考えた。液液界 面反応は、電気化学測定が最も威力を発揮す る観察対象である。液液界面電子移動のモデ ル反応として、水相に溶解したフェリシアン Fe(CN)63−と、ニトロベンゼンなどの油相に溶 解したフェロセンFc との間の反応がよく知 られていた10)。しかし、その反応機構につい ては十分に理解されておらず、検出される電 流が、不均一反応場である液液界面での分子 衝突に伴う電子移動によるもの(ET 機構と 名付けた)であるのか、反応物の他相への分 配に伴い均一溶液中で電子移動が起こり、そ れにより生成したイオンの移動によるもの (IT 機構と名付けた)であるのか、明らかに されずにいた。このような反応機構を明らか にするためには、反応物の濃度を低くし、よ り反応速度の遅い系での実験結果を評価す る必要がある。そこで著者は、導電体分離油 水(ECSOW)系の開発11)、サイクリックボ ルタモグラムのデジタルシミュレーション による解析などを行うことで、Fe(CN)63−とFc 図9 DPPH の E° (340 mV vs. Ag/AgCl)で のクーロメトリーにより測定された酸化 電子数 n と DPPH ラジカル捕捉活性 (1/EC50)との相関。文献9 より許可を得 て転載。 0 1 2 3 4 5 0 2 4 6 8 10 n 1/E C50 1/EC50= 1.67 n + 0.50 r = 0.94

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の反応がIT 機構で進行していることを明ら かにした12)。 ECSOW 系は、図 10 に示すように水相と 油相の間を白金電極などの導電体で隔てた 測定系で、理想的なET 機構による界面電子 移動を観察できる測定法である。図 11a は Fe(CN)63−(水相中0.5 mM)と、Fc(ニトロベ ンゼン相中1~100 mM)との間の電子移動を ECSOW系で測定したサイクリックボルタモ グラムである。通常の液液(水/ニトロベン ゼン)界面で測定された図11b 実線の結果と の違いが明確に区別できる。図11b をデジタ ルシミュレーションによりフィッティング したところ、図11c に示した反応機構を仮定 したときに実験結果が非常によく再現でき た(図11b の ● がシミュレーションによる 計算値)。図11a,b は Fc がより高い濃度条件 での結果であるが、反対に Fe(CN)63−濃度が より高い条件においても、同じ反応機構で説 明できた12)。 この反応系のほか、水相のアスコルビン酸 とニトロベンゼン相中のクロラニル(テトラ クロロ-1,4-ベンゾキノン)の間の電子移動も クロラニルの水相への分配に伴うIT 機構で あることを報告した13)。1,1'-ジメチルフェロ セン(DiMFc)の水相への分配を利用した、 水/ニトロベンゼン界面でのグルコース酸 化酵素(GOD)によるグルコースの触媒酸化 反応14)も見出すことができた。一方、水/ニ トロベンゼン界面でのテトラフェニルポル フィリン亜鉛錯体とFe(CN)63−の電子移動が、 ET 機構にて進行していることを示した15) ECSOW 系による測定、ボルタモグラムのデ ジタルシミュレーション解析によりET 機構 であることを裏付けた。また、DiMFc と Fe(CN)63−の電子移動は、DiMFc がより高濃度 の 条 件 で は IT 機 構 で 進 行 し 、 反 対 に Fe(CN)63−がより高濃度の条件ではET 機構で 進行することもわかった。 4..液液液液界界面面ででのの化化学学反反応応をを観観察察すするるたためめのの 新 新たたななツツーールルのの開開発発 液液界面での化学反応を追跡する新たな ツールとして液液光導波路分光測定法の開 図10 導電体分離油水(ECSOW)系の実 験装置。(a) 油相, (b) 水相, (c,d) Pt ディスク 電極, (e,f) ルギン管参照電極; g,h, Pt 線; i,j, 除酸素用ガス注入口。文献 11 より許可を 得て転載。 図11 0.5 mM Fe(CN)63−と1~100 mM Fc と の間の電子移動。(a) ECSOW 系で測定, (b) 液 液界面で測定, (c) デジタルシミュレーショ ンによるフィッティングから得られた反応 機構。a,b は文献 12 より許可を得て転載(b は一部改変した)。 -0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3 -100 0 100 WO / V i /  A cm 2 [Fc] =100 20 101 mM (a) -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0 100 OW / V i / A c m 2 [Fc] 100 mM 1 20 10 ・計算値 -実測値 (b) Fc+ Fc Fe(CN)63− Fe(CN)64− Fc Fc+ KD (6000) Δ w o (96 mV) k2 k1 k1= 2××107M−1s−1 ~200 m  (ニトロベンゼン) (⽔) (c)

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発 を 行 っ た 16-18)。Liquid Liquid optical waveguide も し く は 、 Liquid-core Liquid- cladding optical waveguide から LLW と名付け た。これは、図12 に示すように、内径 1.2 mm のガラス角柱に液を流し、その内側上方に固 定した内径0.13 mm(外径 0.31 mm)のステ ンレス細管中に別の液を流すことで、液体の 二重管構造(さや流れ、シースフロー)を形 成させたものである。このとき内側の流れ (コア)を外側の流れ(クラッド)よりも高 屈折率にしておけば、光の全反射を利用して コア内に光を閉じ込めることができる。いわ ば光ファイバーの液体版のような構造であ る。光はステンレス管内に光ファイバーを固 定することで、コア内に入射している。コア、 クラッド両溶液中にローダミンB(RhB)の ような蛍光色素を溶解しておくと、コア溶液 のみが光っていることがよくわかる。コアを 通る光は液液界面で全反射を繰り返すため、 クラッドのみに蛍光色素を溶解した場合は、 界面でのみ蛍光が観察されることになる。こ の実験システムでは、混じり合わない溶媒間 では長距離の界面は形成されず、水/トルエ ンなどではせいぜい数 mm 程度の長さでし か界面を保てない(トルエンをコア、水をク ラッドとした場合、トルエンが水より低密度 であるため、下から上方へ送液を行う)。こ れまで水/食塩水、水/エタノール、水/テ トラヒドロフランなどのよく混じり合う液 体間での界面が、200 mm 以上の長さで安定 に形成されることが確認できている。 この実験システムを用いて、DPPH とアス コルビン酸の間の電子移動を観察した。コア にRhB を含む DPPH エタノール溶液、クラ ッドに同じくRhB を含むアスコルビン酸水 溶液を送液した。コア内にグリーンレーザー (532 nm)を入射し、RhB からの蛍光(580 nm)を流れの垂直横方向から検出した。コア 中のDPPH は入射光の一部を吸収するため、 RhB が吸収できる光が弱くなり、その蛍光強 度は減少する。しかし、アスコルビン酸によ りDPPH が還元されれば、DPPH による光吸 収が弱くなることならRhB の蛍光強度はよ り強くなる。このようにRhB をプローブと して DPPH とアスコルビン酸の間の界面電 子移動が追跡できる。DPPH 濃度を 3.6 μM と 固定して、アスコルビン酸の濃度を 0~10 mM まで変化させたときの結果を図 13 に示 す。縦軸は、DPPHが入っていないときのRhB の蛍光強度を対照として、各条件での蛍光強 度の比から計算したDPPH の吸光度である。 横軸は、シースフローの合流部(ステンレス 管の下端)を0 cm としたときの検出位置で ある。本実験では、平均線流速が1 cm/s であ るため、おおよそ1 s ごとに反応を観察して いることになる。アスコルビン酸濃度が高く なるほどDPPH の還元が進行し、DPPH の吸 光度が小さくなることが分かる。この結果か 図 12 液液光導波路分光測定装置。コア溶 液はシリンジポンプから送液し、クラッド溶 液は落差法など脈流が極めて小さな方法に より送液する。 光源 ステンレス管 内径: 0.13 mm 外径: 0.31 mm ガラス⾓柱セル 内幅 : 1.2 mm   外幅 : 1.7 mm ⻑さ : 200 mm コア クラッド 整流フィルター 光ファイバー コア径 : 50 m クラッド径 : 60 m 被覆径 : 70 m  分光器 図 13 液液光導波路分光測定装置により観 察されたアスコルビン酸(水溶液)による DPPH(3.6 μM エタノール溶液)の還元反応 の追跡。アスコルビン酸濃度はグラフの上か ら0, 0.5, 1.0, 3.0, 5.0, 10.0 mM。

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ら DPPH とアスコルビン酸の反応速度定数 として数十 M−1s−1という値が得られた 19)。 今後、流体力学計算などを利用して、コアと クラッドの流れを評価し、この速度定数の比 較評価、妥当性の検証を行う。 5..謝謝辞辞 本研究を進めるにあたり懇切丁寧なご指導・ご 助言を賜りました神戸大学大堺利行先生、群馬大 学角田欣一先生に感謝します。大変自由に実験を させて頂きましたこと、感謝に堪えません。また、 デジタルシミュレーションの導入時には京都大 学加納健司先生に多くのご助言いただきました。 この場をお借りして感謝申し上げます。 6..参参考考文文献献 1) 河野雅弘, 小澤俊彦, 大倉一郎編, “抗酸化の 科学ˮ, 化学同人, pp.1−7 (2019).

2) J. Moon, T. Shibamoto, J. Agric. Food Chem., 57,

1655 (2009).

3) J. B. L. Tan, Y. Y. Lim, Food Chem., 172, 814 (2015).

4) M. S. Blois, Nature, 181, 1199 (1958).

5) H. Hotta, H. Sakamoto, S. Nagano, T. Osakai, Y. Tsujino, Biochim. Biophys. Acta, 1526, 159

(2001).

6) H. Hotta, M. Ueda, S. Nagano, Y. Tsujino, J. Koyama, T. Osakai, Anal. Biochem., 303, 66

(2002).

7) R. Arakawa, M. Yamaguchi, H. Hotta, T. Osakai, T. Kimoto, J. Am. Soc. Mass Spectrom., 15, 1228

(2004).

8) アスコルビン酸は 2 電子酸化後、加水分解反

応により2,3-ジケトグロン酸を生成し、酸化

還元不活性となる。システインは1 電子酸化

後、二量体(シスチン)を形成する。 9) H. Hotta, S. Nagano, M. Ueda, Y. Tsujino, J.

Koyama, T. Osakai, Biochim. Biophys. Acta, 1572,

123 (2002).

10) Z. Samec, V. Mareček, J. Weber, J. Electroanal. Chem., 103, 11 (1979).

11) H. Hotta, N. Akagi, T. Sugihara, S. Ichikawa, T. Osakai, Electrochem. Commun., 4, 472 (2002).

12) H. Hotta, S. Ichikawa, T. Sugihara, T. Osakai, J. Phys. Chem. B, 107, 9717 (2003).

13) T. Osakai, N. Akagi, H. Hotta, J. Ding, S. Sawada, J. Electroanal. Chem., 490, 85 (2000).

14) T. Sugihara, H. Hotta, T. Osakai, Phys. Chem. Chem. Phys., 6, 3563 (2004).

15) T. Osakai, S. Ichikawa, H. Hotta, H. Nagatani, Anal. Sci., 20, 1567 (2004).

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67, 1479 (2013).

18) H. Takiguchi, S. Asanuma, J. Kamiyama, H. Murata, Y. Hasegawa, S. Yoshizawa, H. Hotta, T. Odake, T. Umemura, K. Sato, K. Tsunoda, Anal. Sci., 33, 449 (2017). 19) 本来は界面での電子移動反応速度定数とし て評価すべきであるが、界面面積が十分に見 積もられていないため、液柱全体のDPPH の 濃度変化と考えて、一般的な均一系での二次 反応として速度定数を見積もった。

図 7 CAF の電解酸化により生成した二量体 の推定構造。

参照

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