124―806 2021 〔専門医スキルアップ講座〕 は じ め に 声帯結節は声帯膜様部の中央付近に形成される炎症性 の隆起性病変である(図1).学童期の嗄声の原因とし て最も多く,小児嗄声または学童嗄声という用語は主に 本疾患を指し示す.一般の耳鼻咽喉科外来を受診するこ とが多いが,成人の声帯結節とは対応法が異なることを 知っておく必要がある.本稿では,小児にみられる声帯 結節の診断と治療について解説する. 図 1 小児声帯結節(6歳・男児) Ⅰ.疫 学 学童期にみられる嗄声の頻度は報告によりさまざまで あるが,前川らは健診を行った学童4,138名の6.3%に嗄 声が認められ,その大多数が声帯結節および近似した病 態であったと報告している1).近年は,少子化や生活様 式の変化などもあり,頻度が減っている可能性もある. 声帯結節の発症は幼児期から学童期までさまざまであ るが,就学前後の5∼7歳が多く,小学校高学年になる と急速に減少する2)3)4) .男児は女児の2∼4倍多く1)∼4) , 野球やサッカー,剣道などスポーツをしている学童も多 い.受診動機は,嗄声が改善せず家族が心配した場合, 健診で指摘された場合などであり,発症から数カ月∼数 年後に受診している. Ⅱ.原因と病態 主要な原因は声の濫用や不適切な発声による機械的な 刺激であり,粘膜固有層の浮腫や上皮の肥厚を来す.小 児においては声帯の組織学的脆弱性の関与も指摘されて いる.ただし,声の濫用が明らかでない場合もあり2), アレルギーや後鼻漏などが増悪因子となっている可能性 もある. 結節は声帯膜様部のほぼ中央に広基性の隆起性病変と して形成され,周囲に軽度の浮腫を伴うことも多い.ほ とんどが両側性に生じるが,形態が非対称な場合もあ る.典型的な病変(結節型)のほか,膜様部全体が浮腫 状であったり(浮腫型),発赤や腫脹を呈する(腫脹型) こともあり,これらも声帯結節に含めて考える場合が多 い5) .症状は主に気息性嗄声を呈するが,重症度は結節 の硬さや周囲の浮腫の程度による. Ⅲ.診断方法と鑑別診断 喉頭疾患の診断には喉頭内視鏡検査が必須である.小 児では鼻腔が狭いことから極細のスコープを使用しがち であるが,得られる画像が小さく適切に診断が下せない おそれがあるため,少しでも太いスコープを使用するこ とが望ましい.一般に喉頭が小さく,検査の協力が得ら れにくい小児では,あとで繰り返し評価ができるように 必ずビデオで記録しながら検査を行う.画像を用いた丁 寧な説明により,保護者との信頼関係を築くことができ る.安静にしていられる小児では,ストロボスコピーも 実施する.典型例では結節の前後に隙間が生じる,砂時 計様の声門閉鎖不全が認められる. 鑑別疾患としては声帯ポリープ,声帯嚢胞,喉頭乳頭 腫などがある.小児の声帯ポリープや声帯嚢胞は滅多に みられないが,通常片側に限局性病変として生じるた め,声帯結節との鑑別は比較的容易である.喉頭乳頭腫 はピンク色のカリフラワー状腫瘤を呈し,喉頭内に多発 することが多い.狭帯域光観察(NBI)を用いると毛細 血管が強調されて観察されるため,より診断精度が高ま る.
小児の喉頭疾患
―声帯結節症―
埼玉医科大学総合医療センター耳鼻咽喉科 二 藤 隆 春日耳鼻 124―807 〔専門医スキルアップ講座〕 Ⅳ.治療と予後 多くが変声期に自然治癒するため(図2),“一定以上 悪化させない”ことを目的に適度な声の衛生指導のみ行 い,経過観察とする6) .だだし,女児では自然治癒しに くい傾向がある2)3) .問診で家族構成や日常の遊び,習い 事,スポーツなどの生活環境を聴取し,叫び声や金切り 声など,不適切な発声をしている場合は注意するよう保 護者に話す.過度な注意は小児の精神発達上問題がある ので避けるべきであるが,「風邪をひいたときはあまり おしゃべりしない」,「声を出しにくいときは無理に出さ ない」程度は本人にも伝えてもよい.アレルギー性鼻炎 や慢性副鼻腔炎があれば,その治療を行う. 嗄声が高度で学業や習い事に影響がある場合は,音声 治療やステロイド吸入,外科的治療などを行う.一般的 に小児では音声治療が困難であるが,遊びを取り入れな がら,不適切な発声法を認識させたり,リラクセーショ ン法を行う.ステロイド吸入は運動会のようなイベント の後などに限定し,漫然と使用させないようにする.外 科的治療は再発率20%という報告もあり7),術後に声の 安静を保てないようならば極力避ける. 参 考 文 献 1)前川彦右ヱ門, 伊藤督夫, 渡辺とし子, 他 : 学童嗄声に ついての観察. 日耳鼻 1973; 76: 1459―1471. 2)古川政樹, 金子まどか, 柊 光一, 他 : 小児声帯結節症 例の検討. 耳鼻 1988; 34: 250―257. 3)蓼原東紅, 福田宏之, 川井田政弘, 他 : 当院における小 児 声 帯 結 節 に つ い て の 統 計 的 観 察. 耳 鼻 1989; 35: 646―649. 4)早坂 修, 山本 裕, 佐藤克郎, 他 : 小児声帯結節の臨 床経過. 耳喉頭頸 2005; 77: 845―849. 5)石井末之助 : 小児嗄声の臨床 その喉頭所見の多様性. 日気食会報 1972;23: 29―35. 6)二藤隆春 : 小児の音声・言語障害の診断と治療. 日耳鼻 2018; 121: 1430―1432. 7)楠山敏行, 福田宏之 : 小児声帯結節に対する外科的治療 の適応と実際. JOHNS 2003 ; 19 : 1610―1613.