• 検索結果がありません。

学習都市・岡山におけるESD活動と教育実践 ―グローバル社会で考え・行動する生徒の育成を目指して―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学習都市・岡山におけるESD活動と教育実践 ―グローバル社会で考え・行動する生徒の育成を目指して―"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

28 ―  ― 本報告では、学習都市・岡山市の国公立中学校 教 育 現 場 で 取 り 組 ん で き た、 地 域 や NPO 活 動 (ESD 活動) と連携した実践を報告することで、 教育現場における ESD 実践の可能性について論 じる。 1.はじめに 岡山市では、以前から保・幼・小・中学校の縦 軸で一貫した教育実践をすること(岡山型一貫教 育)、またそれを支える学校・保護者・地域など が協力する横軸を大切すること (地域協働学校) を柱とした教育に取り組んできた。例えば、中学 校区を単位とした「いきいき学校園づくり事業」 では、目指すべき子ども像を共有して各学校で教 育実践に取り組んできた。しかし、この縦軸と横 軸をクロスさせた取り組みを効果的におこなうに は、少なからず課題もあったように思う。そうし た中、岡山市において環境問題の解決を目指すと ころから ESD (持続可能な開発のための教育) が 広まり、 ESD に関する世界会議を開催するまでに なった。この時流において、教育現場でも ESD を取り入れていくこととなった。 私は岡山市内の中学校現場で 16 年間、教育実 践を続けている。勤務校はいずれも中規模から大 規模の学校である。初任校は岡山市立西大寺中学 校であった。はだか祭りこと西大寺会陽は 500 年 以 上 続 く 勇 壮 な 祭 り で あ り、2 月 の 寒 空 に 約 10,000 人のふんどし姿のはだか衆が宝木争奪をお こなう、日本三大奇祭である。この地元で、私は 20 代を過ごし、地域と熱くかかわることを体で学 ばせていただいた。当時、総合的な学習の時間に 地域を散策し、そのよさを発信していこうという 取り組みもあった。しかし、地域課題や地球規模 の課題とのつながり、多様なセクターの連携など ESD 視点は弱かった。ESD という言葉や考え方 についても、担当する国際教育の講演会で、当時 ユネスコ協会から池田満之氏にお越しいただき、 「ゆでガエル」のお話を聞いたことのみ強く印象 に残っている。その後、地域をあげた ESD 実践 に取り組む、岡山市立京山中学校にてユネスコス クール加盟やその後の活動、さらに文部科学省課 題研究 (ESD) に取り組ませていただき、教育現 場における ESD 実践に理解も関心も深まった。 前任校の岡山市立旭東中学校では、その成果を生 徒指導や部活動が中心となりがちな公立中学校 で、生徒の学びと成長を目指したさまざまな取り 組みにより、ESD の効果や意義を確認すること ができた。そして、この 4 月からは国立大学法人 岡山大学教育学部附属中学校において、岡山大学 が推進する SDGs を位置付けた教育実践をすすめ るべき状況にある。 幸 い な こ と に、 岡 山 市 で は ESD 世 界 会 議 を きっかけに、「岡山 ESD プロジェクト」に基づく 取り組みを推進しており、(4) 学校の ESD 推進、 (6) ESD 活動の拡大においてご支援いただいてい る。岡山市で教職員として、市民として生活する ことで、ESD 視点を学ぶ機会に恵まれた。多様 な方々とさまざまなトピックについて意見交換や ネットワーク構築できる「ESD カフェ」(毎月 1 回)、「岡山 ESD プロジェクト」による支援、各 学校の ESD や地域連携を担当する教員のための 「ユネスコスクール研修会」、海外の関係者とつな がることのできる各種世界会議 (SDGs・ESD・ RCE など) である。この他、個人的にも社会教育 主事講習や内閣府・文科省の関連事業に参加させ ていただき、いずれにおいても ESD の視点を学 ぶ機会となった。こうした機会を通じて得られた 知見が、今の取り組みに活きている。 日本学習社会学会年報 第15号 2019年9月 課題研究Ϩ 学習都市の可能性

学習都市・岡山における ESD 活動と教育実践

―グローバル社会で考え・行動する生徒の育成を目指して―

竹島 潤

(岡山大学教育学部附属中学校)

(2)

29 ―  ― 3.岡山市立旭東中学校での取り組み 旭東中学校は 1 学年 9 クラスを擁する大規模校 であり、総合的な学習の時間をはじめとした学年 や学校としての取り組みを活性化することで、多 くの学校課題のみならず地域課題を解決する可能 性をもっていた。赴任当時の第 1 ミッションは 「地域に愛され信頼ある学校」であった。言い方 を変えれば、地域との愛着や信頼性に課題が大き かったということである。そこで、総合的な学習 の時間の活性化と地元の旭東公民館との連携強化 に着手した。まず、地域フィールドワーク「学区 のお宝を探そう!」を職員研修で取り組んだ後、 さらに第 1 学年の地域学習として計画、実施し た。教職員と地域の人との距離感が近くなるとと もに、学区のよさを通じて、教職員が教材の種を 見つけるだけでなく、自分の職場近隣の魅力を見 つけることで学校と学区をより大切にできるよう になることを狙った。第 1 学年でグループ別の地 域フィールドワークを計画し、その事前や事後の 学習で地域の方に講師をしていただくことで、中 学生と地域の方々との接点をつくった。地域の 方々からも好評をいただいた。さらに、地元岡山 で キ ャ リ ア 教 育 に 取 り 組 ま れ て い る NPO 法 人 だっぴと連携して、大規模校における多世代交流 授業「旭東中学生だっぴ」を初開催し、地域やい ろいろな職業の大人、大学生あわせて約 100 名の 方々にご参加いただいて、生き方について考え た。地元で 500 年以上続く、天下の奇祭・西大寺 会陽こと はだか祭り を教材とした郷土学習で は、それがきっかけとなり祭り行事に参加する中 学生が増えた。 次に公民館との連携強化として、先に述べた総 合的な学習の時間で地元の方を講師にご紹介いた だいたり、生徒が学習の成果発表や地元小学生に むけた講座を開催したり、教職員が地域の方々に 備前焼、合気道、国際協力などについての講座で 講師を務めたりした。これまで開催されていた公 民館文化祭や夏休みフリー塾への中学生参加者も 倍増し、公民館の方々や地域の方々にも喜ばれる こととなった。そして、自分の地域に愛着と関心 をもつ言葉や行事への参加が、生徒の間に促され た。 2.岡山市立京山中学校での取り組み 京山地区 ESD 推進協議会のもと、公民館や市 民を中心とした ESD 活動が根付いており、そこ に学校の教育活動も参画することとなった。ユネ スコスクールに加盟し、文科省・国立教育政策研 究所からの「ESD の視点に立った学習指導」の 枠組みを柱に、本校独自の研究を進めた。それは 持続可能な社会とはどのような社会なのか (構成 概念の明示)、そうした社会を作るにはどのよう な力をつければいいのか (重視する能力・態度)、 その手立てとして授業や教育活動をどう改善する のか (教材/人/能力・態度のつながり) を、学 習指導案や単元計画で明確に設定しながら、授業 改善、総合的な学習の時間の活性化、さらに教科 横断型学習プログラムを提案、実施していくもの であった。総合的な学習の時間については、第 3 学年で取り組む個人テーマの探究にむけて、第 1 学年から探究活動の基礎を学び、スパイラルにそ の質を高められるように W 型問題解決型学習を 取り入れた。教科横断型学習プログラムにおいて は、コアとなる教科のもと、関連のある教科や外 部・専門機関などと連携した取り組みをおこなっ た。例えば、英語科のリーディング教材に「ハゲ タカと少女」がある。英語長文読解における内容 把握や意見交換を豊かにするため、写真が撮影さ れたスーダンの様子を学ぶために、現地活動され ている青年海外協力隊員との交流やライブ資料活 用ととりいれた。豊かさにあふれる日本社会で、 少しでも食べ物のありがたみを考えられるよう、 地元農家の方々 (海外農業研修既参加者) と英語 によるワークショップに取り組んだ。また、砂漠 や水資源の争奪など貧困や飢餓の国際問題につい ては、環境学習センター・アスエコ、栄養教諭と ともにフードマイレージの英語ワークショップを おこなった。こうしたインプットをもとに、最終 段階でもとの題材 (記事) への意見を英文で書く ライティング活動、さらに地元留学生や関係者に プレゼンするスピーキング活動へとつなげた。生 徒は高い動機づけのもと、さまざまな知識や意見 を得て、視野を広げるとともに多面的総合的、批 判的に物事を見る力を高めることができた。そし て、何よりこうした学びは、生徒にとって楽しい ものであった。 日本学習社会学会年報 第15号 2019年9月

(3)

30 ―  ― り」である。会員の出身国および活動経験のある 国や地域は北米、中南米、アジア、アフリカ、 ヨーロッパに及ぶ。 学 校 教 育 と NPO 活 動 を 連 携 さ せ る 利 点 と し て、資金調達、研究実践の充実、青少年と社会課 題の接点、連携や発信、異業種交流、若手育成な どが挙げられる。学校現場は、資金や外部ネット ワークなどに課題があるので、NPO と連携して それを補完することで、生徒たちにより実りある 学習プログラムや活動を提供することができる。 岡山 ESD プロジェクトの元で、学校現場と連携 した協働学習プログラムを提案、実施すること で、子どもたちが社会や地域の課題にかかわる機 会をつくっている。 例えば、岡山市の姉妹都市である米国サンノゼ 市から高校生親善大使を受け入れる事業では、同 世代の交流やホストファミリーの確保において、 NPO メンバーの所属校を中心として中学生が貴 重な国際交流体験をすることができる。また、私 がアフリカのモザンビークで現地ボランティア活 動をした経験をもとにした国際学習、当 NPO が 参加する事業からウガンダの聖歌隊 Watoto の歌 とダンスの鑑賞・交流、ネパールの大衆歌謡歌手 の講演会と演奏会、地元大学や日本語学校に在籍 する留学生との交流なども実施してきた。近年 は、東日本大震災被災地の福島県浪江町における 現地ボランティア活動を生かして、中学生が地 震・津波・原発事故の三重苦にある福島の現状 を、福島からお越しいただいた講師の方による講 演会、地元中学生たちとのテレビ会議、福島を テーマに創作活動をされている芸術家の方の作品 鑑賞などを通して学んでいる。前任校では、もと もと取り組んでいた赤ちゃんとの交流を含む「い のちを育む授業」と関連付けた「いのちの大切さ プロジェクト」に、岡山 ESD プロジェクト活動 助成事業として取り組むことができた。 先日の西日本豪雨では、地元岡山においても大 きな被害が出た。私たちは現地で泥のかき出し、 家屋の撤去などの現地ボランティア活動と並行し て、中学生をつなぐ被災地支援「そうきんプロ ジェクト」を岡山市内の当 NPO とつながりのあ る中学校 6 校で協働実施した。これにより、短期 間で約 2,000 枚のぞうきんを被災地に届け、清掃 4.岡山大学教育学部附属中学校での取り組み 岡大附属中は国立大学法人岡山大学が全学を挙 げて SDGs 推進に取り組んでいる。総合的な学習 の時間は ER (Earth Rise) と名付けられ、多様な テーマの講座制を導入している。ESD や SDGs の 視点を共通講座で学んだ生徒が、国際・人権・環 境・情報・平和などについて、フィールドワーク や外部・専門機関との連携による講座で学びなが ら、広い視野、豊かな思考力や高い行動力を培 い、最終的に個人テーマの探究をおこなう中で、 社会に参画・寄与できる生徒を育成することを目 指している。 今年度第 1 学年の生徒たちは、共通講座で学ん だ要点を、「グローバルなこととローカルなこと はつながっている」「自分がまずやってみる、行 動が大切」「問いをもちながら学ぶ」の 3 点にま とめた。現在、ユネスコ協会で取り組んでいる ESD パスポートを導入し、地域や社会活動の機会 をより積極的に活かそうとしている。 国立大学附属の本校は、教員養成の責務を担っ ており、教科指導や授業研究に重きをおいてい る。共通研究主題「深い学びを引き出し、これか らの時代に求められる資質・能力を育むカリキュ ラム・デザイン」のもと、各教科で研究主題を設 定して、日々授業実践に努めている。これを大切 にしつつも、広く先まで見ての青少年育成の中に ある教科指導や授業研究でないといけないと考え ている。本校の強みを生かしながら、今後は総合 的な学習の時間や教科授業を活かした ESD 実践 に取り組んでいきたい。私が所属する NPO では、 本校を中学校連携モデル校に設定し、外部連携を 生かしながらさまざまな学習プログラムに取り組 んでいきたいと考えている。 5.

NPO

活動を活かして 私が学校現場と連携している NPO は特定非営 利活動法人国際協力研究所・岡山といい、設立 7 年目の組織である。おもに中南米諸国で JICA を 含む現地活動に従事した池田時夫代表が設立し、 現在は多国籍な会員がそのバックグラウンドを活 かして、青少年育成や被災地支援なども含む事業 に取り組んでいる。活動の 3 本柱は、「国際協力」 「考え・行動する人づくり」「持続可能な環境づく 日本学習社会学会年報 第15号 2019年9月

(4)

31 ―  ― 果」を考えると、持続可能な社会づくりをおこな う上で、学校教育の可能性は大変大きい。実践あ りき、行動ありき、教育は人なり、こうした考え にまさに ESD は合致する。ESD は教育活動に生 き血を注ぎ込むものだ。今後とも、私は NPO を はじめ ESD 活動を通して、学校を外部・専門機 関ともつなぎながら、学習都市・岡山の強み、リ ソースを活かした教育実践による人づくりを続け ていきたいと考えている。 参考文献 国立教育政策研究所 「学校における持続可能な開発のための教育 (ESD) に関する研究 (最終報告書)」 や復旧作業でお使いいただくことができた。各参 加校では、現地報告レポートや展示コーナー、生 徒会を通しての全体報告などを通して、生徒が社 会とのつながりや関心を高める機会となったこと と期待している。 6.おわりに ESD は豊かな経験と人とのよき出会いをもた らしてくれる。教育現場が忙しい、中学校は部活 動や生徒指導で大変だ、外部連携は手間がかか る、(狭義の) 仕事が一番で他は次……いろいろ な声を聞くが、人のせいにしないこと、ネガティ ブにならないことが大切ではないか。セクターを 超えて強みを持ち寄って連携すること、そして学 校教育の強みである「青少年の可塑性」「波及効 日本学習社会学会年報 第15号 2019年9月

参照

関連したドキュメント

  「教育とは,発達しつつある個人のなかに  主観的な文化を展開させようとする文化活動

大学教員養成プログラム(PFFP)に関する動向として、名古屋大学では、高等教育研究センターの

「職業指導(キャリアガイダンス)」を適切に大学の教育活動に位置づける

ら。 自信がついたのと、新しい発見があった 空欄 あんまり… 近いから。

一貫教育ならではの ビッグブラ ザーシステム 。大学生が学生 コーチとして高等部や中学部の

小・中学校における環境教育を通して、子供 たちに省エネなど環境に配慮した行動の実践 をさせることにより、CO 2

小学校における環境教育の中で、子供たちに家庭 における省エネなど環境に配慮した行動の実践を させることにより、CO 2

● 生徒のキリスト教に関する理解の向上を目的とした活動を今年度も引き続き