1102 日 本 化 学 雑 誌92巻12号(1971) (76) ア コ ペ ン タ ア ン ミ ン コ バ ル ト(III)錯 塩 に よ る ビ ニ ル 単 量 体 の 重 合*1,*2 (昭 和46年8月23日 受 理) 竹 村 富 久 男 ・松 山 礼 子 ・森 克 恵 ・永 井 丸 子*3 ア コ ペ ン タ ア ン ミ ン コバ ル ト(Ⅲ)錯 塩 を 腿 始 ・増 感 剤 と し て,ア ク リ ロ ニト リル 水 溶 液 の 熱 舞 合(60℃)と ア ク リ ナルアミ ド水 溶 液 の 光 重 合(30℃)を 行 な い,そ の 重 合 聞 始 機 構 を 検討 し た 。 ア ク リ ロ ニ ト リル の 熱 重 合 速 度 は 酸 性 領 域 でpHと と も に 増 大 し, 錯 塩 濃 度 の ほ ぼ0.5次 に,単 量 体 濃 度 の 一 次 に 比 例 す る 。 ま た 重 合 速 度 は イ オ ン 強度 の 増 大 と と も に 減 少 し,い わ ゆ る塩 効 果 を 受 け る 。 こ れ は 重 合 開 始 ラ ジ カ ル の 生 成 が 異 符 号 の イ オ ン間 の 反 応 に よ っ て 起 こ っ て い る こ と を 示 す 。 錨 塩 の 対 ア ニ オ ン の影響 も 認 め ら れ,重 念 開 始 に は イ オ ン対 よ り も 遊 離 の 錯 イ オ ン の 方 が 役割 の 大 き い こ とが わ か る。 つ ぎ に ア ク リ ル ア ミ ド水 溶 液 の 光 重 合 で は,470nm以 上 のd-d吸 収 帯 に 相 当す る可 視 光 に よ っ て も重 合 は 開 始 さ れ,Delzenneの 報告 と異 な る こ と が わ か った 。 重 合 速 度 は 光 源 強 度 お よ び 錯塩 濃 度 の 変 化 に と も な う 吸 収 光 量 に 関 し て ほ ぼ0.5次,単 量 体 濃 度 に 関 し て1.7次 で あ る が,イ オ ン 強 度 の 影 響 は ほ と ん ど 受 け な い 。 した が っ て 重 合開 始 は励 起 錯 イ オ ン と 中 性 分 子 の ア ク リル ア ナミドと の 反 応 で あ り,こ れ に よ っ て で き る単 量 体 ラ ジ カ ル が 生長 を 開 始 す る も の と 考 え ら れ る。 な お 錯 イ オ ン に よ る 生 長 ラ ジ カ ル の 停 止 反 応 は 認 め られ な い 。 1緒 言 ア ン ミン コ バ ル ト(Ⅲ)錯塩 の 多 く が ア ク リ ロ ニ ト リル の重合 を 開始 し,錯塩 の 配 位 子 の 種 類 に よ っ て 重 合 開 始 能 に か な りの 開 き の あ る こ と が わ か っ た が*2こ れ ら の 錯 塩 の 中 に は 配 位 子 置 換 反 応 や ア コ化 反 応 を と も な う も の も あ る の で,副 反 応 の 起 こ り に く い と考 え ら れ る ア コ ペ ン タ ア ン ミ ン コバ ル ト(Ⅲ)過 塩 素 酸 塩 を 選 ん で,こ の 錯 塩 に よ る ア クリ ロ ニ ト リル の 重 合 開 始 の 機 構 を 検 討 し た 。 ま た 無 機 塩 類 の 中 で は 重 合 の 光 増 感 剤 と し て 鉄(Ⅲ)塩,ウ ラ ニ ル塩 そ の 他 が 知 ら れ て い る が1),こ れ ら の 多 く は 紫 外 線 照 射 に よ る も の で あ っ て 可 視 光 線 に 対 す る 増 感 剤 と して 利 用 で き る も の は 少 な い 。 一 般 に コ バ ル ト錯 塩 は 可 視 部 に 級収 を もつ の で ア ク リル ア ミ ドを単 量 体 と し て こ れ ら の 錯 塩 に よ る 増 感 作 用 の 検 討 の 第 一 歩 と し て ア コ ペ ン タ ア ン ミ ン コバ ル ト(Ⅲ)錯塩 つ い て 実 験 を 行 な っ た 。Delzenne2)は こ の ア コ 錯塩 のd-d吸収 に 相 当 す る可 視 部 の 光(>430nm)の 照 射 に よ っ て は ア クリ ル ア ミ ドの重 合 は 開 始 さ れ ず,電 荷 移 動 吸 収 帯(CT帯)に 相当 す る紫 外 線 の照射 に よ らな け れ ば 重 合 しな い と述 べ て い る 。 しか し,著 者 らは 量 子 収 率 の 点 で はCT帯 よ り 小 さ い け れ ど もd-d帯 に 相 当 す る 可 視 光 (>470nm)で も ア コペ ン タ ア ンナミン コ バ ル ト(Ⅲ)錯塩 が ア ク リル ア ミ ドの 重 合 を 開 始 す る こ とを 確 認 し た 。 2実 験 2.1試 料 ア ク リ ロ ニ ト リル は 前 報 と同 様 に常法 に した が って 洗 浄 し 蒸 留 した。 ア ク リル ア ミ ド も常 法3)に よ って 精製 ベ ンゼン に_加 温 溶解 後 熱時 に 口過 して再結 晶 し,40℃ で減 圧下 に乾 燥 した。 ア コペ ン タアン ミン コバ ル ト(Ⅲ)錯塩 は塩 化 コバル トか ら合成L,こ の 塩化 物を 過塩 素酸塩 に 変 えた4).す な わ ち この 錯塩 の 塩化 物 をよ く精 製 した のち,冷 却 しなが らこの濃 水溶 液 に過塩 素 酸 を一挙 に 注 ぎこん で過塩 素 酸塩 を沈殿 させ た。 この 沈殿 を エ タノー ルで洗 浄後乾 燥 した。 とくに過塩 素酸 塩 を用 いた のは,過 塩素 酸 イオ ン が 配位 子置 換 反応 を起 こ しに くい イ オンで あ る とい われ て い るか らであ る5)。 そ の他 の試 薬 は和光 特 級 をそ のま ま用 い た。 2.2ア ク リロ ニ トリルの 熱重 合 試 料 や実 験方 法 はほぼ 前 報 と同様 で あ るが,ア ク リロニ トリル の 溶解度 を増す ため に溶 媒 の水 のほ か に第三 成分 と して アル コー ナル類 を加 える と重合速度 に影 響 のあ る こ とが わか ったの で,ア ル コール 類を加 えな いで ア ク リロニ トリル の水 溶液 を用 い た。 すな わ ち ア ク リロニ トリル の水 に対す る溶解 度6)を 考 慮 して ア ク リロ ニ トリルlmlに 対 して 水15mlの 混合 液 につ いて 実験 を行 な い,単 量 体 濃度 は約0.95mol/lで あ る。pHの 調 節 に緩衝 溶液 (塩酸・塩 化カ リウム混合 液,フ タル酸 塩 ・塩 酸混合 液,お よび フ タル酸塩 ・水酸 化 ナ トリウム混 合液)を 用 い る と,同 じ程度 の pHを 示 す もの で も緩 衝 溶液 の種 類 に よって 重合 速度 の異 な る こ とが わか ったの で,酸 性 領域 で は過塩 素酸 を,ア ル カ リ性 領域 で は水 酸 化ナ トリウ ムを 用 い てpHを 調 節 した。 イ オン強 度 の調 節 に は過 塩 素酸 ナ トリウムを使 った。 前 報 と同様 すべ て の実験 操 作は 暗室中 で行 ない,重 合 温 度 は60℃,重 合 率 は5∼10%の 範 囲に とどめ てジ ー定時 間 内で の平 均重合 速 度 を求 めた。 2.3ア ク リル ア ミ ドの 光重 合 ア ク リル ア ミドの 光重合 の 追跡 に は膨 脹計 を用 いた 。反 応用 セ ル に は普通 の可視・ 紫外分 光光 度 計用 の光 路 長10mmの 石 英 製 セ ル を利 用 し,こ れ と膨 脹計 毛細管 との接続 部 分は す り合わ せ と し た。試 料 は真 空下 に脱 気封 入す るので,こ のす り合 わ せ部 分 には 密 ロウーパ ラフ ィン-流 動 パ ラフ ィンの混 含 物(約3:2:1の 割 合 で混 合 融解 し,mp 55℃程度 の もの)を 少 し暖 め て塗付 し接合 の *1こ の 報 文 を“金 属 錯 塩 に よ る ピ ニ ル 単 量 休 の重 合(第2 報)"と す る. *2前 報(第1報) ,竹村富 久 男,大 森 皆 子,田 中晴 恵,日 化, 89,576(1968). *3 Fukuo TAKEMURA
, Reiko MATSUYAMA, Katsue MORI,
Maruko NACAI 祭 良 女 子 大 学 理 学部 化学 教 室,奈 良
市北 魚屋 西 町
1) G. Oster, N. Yang, Chem. Rev., 68, 125(1968); 青 木 修三,化 学,23,207(1968);西 島 安 員則, 山 本 雅 英, 工 化, 72,31(1969). 2) G.A.Delzenne, J. Polym.Sci.,Purt C,16,1027(1967). 3) 高 分 子 学 会 編,“ 高 分 子 実 験 学 講 座(第9巻)単 量 体 合 成 法",共 立 出 版(1959)P.168. 4)井 上 敏,“ 無 機 化 学 製 造 実 験",裳華 房(1949)p . 346. 5) W. E. Jones, T. W. Swaddle, Can. J. Chem .,45,2647
(1967).
6) 小 竹 無 二 雄 監 修 , “大有 機 化 学(第22巻)合 成 高 分 子 化 学1",朝 倉 書 店(1958)P.338.
の ち放 冷固 化 させ た 。 この 場合 ピセイ ンを用 い ると試料 を膨脹 計 に 流 入 した と き,す り合 わせ 部の 内壁 に はみ 出 した ピセイ ンの 表 面 に わず か な気 泡が 残 って膨脹 計 の読 み が不 安定 に な り,不 都 合 で ある。 試料 の 封入 は 図1の 装 置 を 真 空系(10-mmHg)に つ な い で,ア ン プル(F)に 試料 を いれ て ドライ アイ ス-エ タ ノー ル寒 剤 で凍 結 ・脱 気 ・融 解 を3回 く り返 して十 分排 気 した の ち,A点, で封 じ切 った。 切 りと った 膨脹 計 を傾 け て アン プル 中の 試料 を毛 細管(C)を 通 して反応 用 セル(E)に移 し,毛 細 管上 部 まで試 料 を 満 た してB点 で封 じアンナプル を切 り取 った。 図1光 重 合 用試料 封 入装 置 膨脹計 付 反 応 セル は30℃ の二 重恒温 槽 の中 の セル ホール ダー に 固定 して光 の照 射 を行 な った。 可 視部 光源 と しては ス ライ ドブ ロジェ クター(100V 750W,定 電 圧 装置 で 安定 化 した 電源 に よ り85Vで 点 灯)を 用 い,東 芝色 グラス フ ィル ターVY47で470 nm以 下 の光 を遮 断 した.,紫 外部光 源 と して は東 芝超 高圧 水銀 灯 (SHL-100UV-2)に 紫 外線用 フイ ル ターUVD2を つけて365 nmの 光 を用 い た。 膨 脹計 の メニス カ スは カ セ トメー タ ーで読 み,反 応 セルを恒 温 槽 にいれ て か ら 温度 平 衡に達 す る まで 待 ち,そ の後暗反 応 を30 分以 上観 側 した の ち光 源 を点灯 して光 反 応 を追跡 した。。 膨脹 計の メニス カ スの降 下 速度 は 使用 した膨 脹計 ご とに 毛細 管の 内径 が異 な るの で,内 径1mmの毛細管 と した と きの降 下 速度 に換 算 ・規 格化 して]cm/minの 降下 速 度 が ア ク リル ア ミドの 重合 速度 0.50×10-3mol/minに 相 当す る7)もの と して 計算 した。暗 反 応 が無 視 で きな い場 合 に は光 重 合速 度 はRP=(RL2-RD2)1/2と し て計 算 した.た だ しRLは 光照射の ときの重合速度,RDは 暗 反 応の 重合 速度 で あ る。 反応 系 に吸 収 され た光 量 は可 視部 長 波長 域 につ いて はRein ecke塩 光量計8)を,紫 外 部 につ いては トリオ キサ ラ ト鉄(Ⅲ)酸 カ リウ ム光量 計9)を用い た。Reineck塩 の場合 は暗 反応が 相 当起 こる ので,必 ず 暗反 応の 対照 実験 との差 と して光 量測 定 を行 な つた。 なお 光量 計用 セル は反応 セルの す ぐう しろの定位 置 にお き,セ ル ホール ダー の窓面 積に つい ては 補正 を施 した。 なお 光源 強度 は中 性 フ ィル ター(透 過率26,48%)を 用 いて 変 化させ た。 3結 果 3.1ア ク リロニ トリル の熱重 合 3.1.1 pHの 影 響:ア コぺ ンタ アン ミン コバル ト(Ⅲ)過塩素 酸塩 を開 始剤 とす る ア ク リロニ トリルの重合 に対 してpHの 影響を 調べ る と,図2に 示 す よ うにpHの 小 さい酸性 領域 で は 重 合速 度(Rp)は 小 さ く,pHの増加 とともに重 合 速度 は増 大す る が,ア ル カ リ性領 域で は減 少す る。 アル カ リ性 領域 では錯塩 が 不 安定 でpHの 大 きいほ どい ち じる しく分解 し,黒 色微 粒子の 金 属コ バルト を析 出す るほ どであ る。 したが って この 領域 で重 念 速度 に 対す るpHの影響 を 詳 しく評価 で きな い。 図2の 酸性 領 域 にお け る直 線 の傾斜 は0.34で ある。 図2ア ク リ ロ ニ ト リル の 熱 重 合 に 対 す るpHの 影 響 図3ア ク リ ロ ニ トリ ル の 熱 重 合 に 対 す る錯 塩 濃 度 の影響 7) E.A.S.Cavell,A.G.Meeks,Polymer,8,79(1967) . 8) E.E.Wegner,A.W.Adamson,J.Amer.Chem.Soc., 88,394(1966). 9) C.G.Hatchard,G.A.Parker,Psnc.Roy.Soc.,A235, 532(1956). 3.1.2錯 塩濃 度の 影響:図3に は重 合速 度 に対す る錯 塩濃度 の影 響 を示す 。 重合速度 は錯 塩濃度 の0.58乗に比 例 し,この範 囲 の錯塩濃度では錯塩 体 に よる重合 反応 の抑制は 認 め られ な い。
1104 日 本 化 学 雑 誌92巻12号(1971) (78) 3.1.3イ オ ン 強 度 の 影 響:重 合開 始 に あ ず か る 一 次 ラ ジ カ ル の 生成 が 錯 イ オ ン に 由 来 す る も の と す れ ば,反 応 系 の イ オ ン 強 度 が そ の 生 成 速 度 に影響 を お よ ぼ す こ と が期待 さ れ る。 二 つ の pH(pH=1.6,4.7)に お い て重合速度 に 対 す る イ オ ン 強 度(μ)の 影 響 を 盛 っ た の が 図4で あ る 。 第 一 塩 効 果 に 関 す るBrφnsted-Bjer rumの 取 り扱 い の に し た が い,縦 軸 に は 重 合 速 度 の 対 数 を,横 軸 に は μ1/2/(1+μ1/2)を と っ て あ る。 二 つ のpHに つ い て こ の 直 線 の 傾 斜 は-0.58(pH=1.6)と-0.79(pH=4.7)で あ る。 図4ア ク リ ロ ニ 卜 リル の 熱 重 合 に 対 す る イ オ ン 強 度 の 影 響 3.1.4単 量 体濃 度の 影響:重 合開 始反 応 に 単 量 体が 関与 す る か どうかは 単量 体濃度 に対す る重合 速度 の依 存性 か ら推測 され る はずで あ るが,図5に 示 す よ うに重合 速 度 は単量 体 濃度 のほ ぼ一 乗 に比 例 し,開 始反 応 に1単量体 が関 与 してい ない ことを示 してい る。 図5ア ク リ ロ ニ ト リル の 熱 重 合 に 対 す る単量 体 濃 度 の影響 3.1.5ア コ 錯 塩 の 対 ア ニ オ ン の 影 響:以 上 の 実 験 で は ア コペ ン タ ア ン ミン コバ ル ト(Ⅲ)錯塩 は 過 塩 素 酸 塩 を 用 い た が,陰 イ オ ン の 異 な る 錯 塩[CoOH2(NH3)5]X3の い く つ か に つ い て,同 じ 条 件 下 で ア ク リ ロ ニ ト リル の 重 合 を 行 な う と,表1に 示 す よ う に 対 ア ニ オ ン に よ っ て そ の 重 合 開 始 能 は 相 当 異 な っ て い る 。 い ま の 表1対 ア ユ オ ン の 異 な る ア コペ ン タ ア ン ミ ン コ バ ル ト(Ⅲ) 錯塩 に よ る ア ク リ ロ ニ ト リ ル の 重 合 注 α)Archerら10)が[Co(NH3)5Cl]X2に 対 し て 溶 解 度 測 定 に よ り与 え て い る 解 離 定 数 で あ る. b)シ ュ ウ 酸 に つ い て は 報 告 さ れ て い な い の で,参 考 の た め に マ ロ ン酸 塩 に つ い て の 値 を あ げ た. 場 合Cl->NO3->ClO4->C2O42-の 順 にな ってい る。 これ は ア コ錯塩 とこれ らの陰イ オ ン との間の イ オン対 生 成 と関係 が あ る もの と思 われ る10)。 3.2ア ク リルア ミ ドの光重 合 そ もそ も コバル ト錯塩 を 重合 開始 剤 と して取 り上 げ たの は,こ れ らの 錯塩 が可視 部 に吸 収 を もつの で可視 光 線 に よる光重 合 の増 感 剤 と して 役立 つの では な いか と考 えた か らで あ る。 光 重合 反応 を定 量的 に 追跡す るため に は反応 系 が均一 な溶 液 状態 で あ るこ と が望 ま しい ので,ア ク リル ア ミ ドを単 量体 と して 水溶 液 系で 紫外 線 との比 較実 験以 外 はすべ て470nm以 上 の可 視光 を照 射 した。 3、2.1光 強度 の影 響:光 源 の強 度 の変化 に よ る 重 合 速度 の変 化 を 二つ の単量体濃度 お よび1.5mol/1)に つい て 図6に 示 す。 重合 速度 は光 源強 度 に関 しそ れぞ れ0.39,0.43次 とな り, ほぼ0.5次 と見 なす ことがで きるか ら停 止 反応 は 生長 ラ ジカル 同志 の二 分子 反応 であ る。 図6ア ク リ ル ア ミ ドの 光 重 合 に 対 す る 光 源 強 度 の影響. 3.2.2単 量体 濃度 の影 響:光 強 度 と錯 塩濃度 を 一 定 に して単 量体nu.濃度の 重合 速度 にお よぼ す影 響 は図7に 示す よ うに重合 速度 が単 量体 濃度 の1.7乗 に比例 す る。 これ は さきの 光 強度 に関す る依 存性 と合 わ せて 重合 開始 過程 に単量 体 が関 与 してい る こ とを 示 唆す る。 10)D.W.Archer,D.A.East,C.B.Monk,J.Chem. Soc.,1965,720.
図7ア ク リ ル ア ミ ドの 光 重 合 に 対 す る 単 量 体 濃 度 の 影響 3.2.3錯 塩濃 度 の影 響:一 定 強度 の 光照 射 の も とで 錯 塩 の濃 度 を変 え ると,当 然 及応 系 の 吸収 す る光 量 は変 化 す る。い ま錯 塩 に よる光 の 吸収 がLambert-Beerの 法 則 に したが うとすれ ば,錯 塩の 濃度 の変 化 に と もな う光 の吸 収量 は極 大吸収 波 長(490nm)に お け る モル吸 光 係数 を45l/mo1・cmと して求 め る ことが で きる。 吸 収光 量 と重 合速 度 との関 係 を表2に 示 し,そ れ ぞれ の対数 を 図 8に 盛 ってそ の傾 斜 を求 め る と,そ の次 数 は0.49で あ る。 す な わ ち これ は光 源強 度 に対 す る重 合速 度 の依存 性 と同 じであ り,ラ ジ カルニ 分 子停 止 反応 を 支持 す る と ともに,錯 塩 自身が 重合 の抑 制剤 と して働 いて い ない ことを示 す もの で あ る。 表2錯 塩 濃 度 の重 合速 度 にお よぼ す影 響 注 α)吸 光 度(D)は ε490=45l/mol・cm,d=1cmと し てD= εcdに よ り計 算 し た. b)吸 収 光 量(Iabs)は 次 式 で 計 算 し 照 射 光 強 度(I0)に 対 す る 相 対 値 で 表 わ し た.Iabs=I0(1-10-D). 図8ア ク リルア ミ ドの 光重 合 に対す る吸収 光 量の 影響 3.2.4.イ オ ン 強 度 とpHの 影 響:ア ク リル ア ミ ドの 光 増 感 重 合 に 対 して そ の 重 合 速 度 は単 量 体 濃 度 の1.7次 に 関 係 し,開 始反 応 に 単 量 体 が 関 与 して い る こ と を 述 べ た が,そ れ な ら ば 関 始 反 応 は 錯 イ オ ン と 中 性 分 子 と の 反 応 で あ る か らBrφnsted-Bjer rumに よ れ ば イ オ ン 強 度 の 影 響 を 受 け な い は ず で あ る11)。 図9 は こ の こ と を 示 し て い る 。 図9ア ク リ ル ア ミ ドの 光 重 合 に 対 す る イ オ ン 強 度 の 影 響 な おpHの 影響 につ いて も 調 べ よ うと した が,酸 性 領域 で は 多分 ア ク リル ア ミ ドの加水 分解 に よ って アク リル 酸を生 じこれが 自然重 合す るため に,ま た アル カ リ性領 域 では錯 堰の分 解が い ち じる しい ため に,光 重合 を定量 的 に観測 で きなか った。 3.3ア ク リルア ミ ドの 増感 光重合 の量 子収 率 ア コペ ン タアン ミン コバル ト(Ⅲ)錯塩 は 第1吸収 帯(d-d 帯 λ max=490nm)の ほか に 第2吸 収帯(GT帯 λmax=342nm)を も つ ので,こ の両 者 の吸収 帯に おけ る重合 開始 効率 を比較 す るため にそれ ぞれ の 条件下 で量 子収 率を測 定 した。470nm以 上 の可視 光 の照 射 の場合 と主 として365nmの 紫 外線 照射 の場合 とで は, 吸収光 量 が 前 者で 大 きい に もかか わ らず 重合速 度 は 小 さい(表 3)。 これ を重合 の量 子収 率 と して比 較す ると 紫 外線照 射 の方が 約8倍 大 き く,重 合開 始 とい う 点で は 紫 外線 の方 が 効 果的 で あ る。 しか し,Delzenneら2)の 結 果 と違 ってd-d吸 収帯 の可 視光 に よって も重合 の開始 され る ことは間違 い ない。 表3ア コぺ ンタア ン ミン コバ ル ト(Ⅲ)錯塩 によ る ア ク リル ア ミ ドの増 感重 合の 量子 収率 4考 察 ア ン ミン コバル ト(Ⅲ)錯塩 が ビニル 単量 体の ラジカル重 合開 始 剤 として作用 す る のは,中 心金 属 の コバル ト(Ⅲ)と 配位 子(NH 3)以 外の 配位 子)ま た は 反応 系内 に存在 す る 適 当な基質 との 間で 酸
11) W.J.Moore,“Physical Chemistry", Prentice-Hall, Inc.,N.J.(1962)p.368.
1106 日 本 化 学 雑 誌92巻12号(1971) (80) 化 還元 反応 が起 こ り,コ バル トが2価 に還元 され る と同時 に配位 子 ま たは基 質 の ラジ カル を生ず るためで あ る と考 え られ る。 この 場 合 の酸化 還元,す な わ ち ラジ カル生成 反応 が どの よ うな機 構 で 行 な われ るか をまず ア クリ ロニ トリル の熱 重合 につ い て,つ ぎに ア ク リル ア ミ ドの光 重 合 につ いて考 察 す る。 4.1ア ク リロニ トリル の熱 重合 す で に緒君 で述 べ た よ うに 配位 子置 換反 応 な どの副 反応 の少 な い ア コペン タ アン ミン コバル ト(Ⅲ)過塩 素酸 塩を 開始 剤 と して 選 ん だが,こ れ に よ るア ク リロニ トリル 水溶 液 での 重合 反応 はpH の 影響 を相 当 うけて 酸 性領 域(pH1.6∼6.2)で はpHの 大 きい ほ ど重 合速度 は大 きい。 こ うい うこ とは クロ ロペ ンタ アン ミン コ バ ル ト(Ⅲ)錯塩 な どの ア シ ドペ ン タア ン ミン コバル ト(Ⅲ)錯塩で は 認 め られ な い12)ので,ア コ錯 塩に特 徴的 で あ り配位 子 の水分 子 の酸解 離 と開係 が あ るも の と考 え られ る。 この 解 離 平 衡 のPKaは6.613)でpHが 大 き い ほ ど ヒ ドロ オ キ ソ ペ ン タ ア ン ミン コ バ ル ト(Ⅲ)錯 塩 が 多 い 。 これ が 重 合 開 始 活 性 の 増 大 を も た ら す も の と す れ ば,ヒ ドロ オ キ ソ 錯 塩 の 方 が ア コ 錯 塩 よ りも 中 心 金 属 と 配 位 子 との 間 の 酸 化 還 元 反 応 が 起 こ りや す い こ と に な る 。 ま た この重 合 反 応 が イ オ ン 強 度 の 影 響 を 受 け る の で, Brφnsted-Bjerrumの 式 か ら 考 え る と異 符 号 イ オ ン 間 の 反 応 が 存 在 し て い る こ と に な る11)。 し た が ってpHの 影 響 は た だ 単 に(1) 式 の 平 衡 移 動 だ け に で は な く, Co(Ⅲ)-錯 塩n++OH-→Co(Ⅱ)-錯 塩(n-1)++・OH (2) (nは2ま た は3) の 形 式 の ラ ジ カ ル 生 成 に も お よん で い る も の と考 え ら れ る 。 ク ロ ロ ペ ン タ ア ン ミ ン コバ ル ト(Ⅲ)錯塩 で は ア ク リロ二 ト リル の 熱 重 合 に 対 して イ オ ン 強 度 の 影 響 は ほ と ん ど 認 め られ ず,pHの 影 響 の 場 合 と類 似 して い る12)。 ア ク リロ ニ ト リル の 水 溶 液 重 合 で は重合 物 が 生 成 と 同 時 に 沈 殿 し て 不 均 一 系 に な る の で,定 量 的 な 速 度 論 的 解 析 を 詳細 に 行 な う こ と は で き な い が,こ の 重 合 反 応 に 対 す る 錯 塩 濃 度 の 影 響 が0.58 次 で,単 量 体 濃 度 に 対 す る 依 存 性 が 一 次 で あ る こ と は,形 式 的 に は 錯 塩 か らの ラ ジ カル 生 成 に つ づ い て 単 量 体 と の 反 応 で 高 分 子 ラ ジ カ ル が 生 長 し,高 分 子 ラ ジ カ ル同志 の 二 分 子 停 止 反 応 で 終 結 す る も の と考 え られ る。 一 般 に こ の よ う な 形 式 の 重 合 反 応 で は 重 合 速 度 は Rp=kRi1/2k[M] (3) (RP:重 合 速度,Ri:開 始 速 度,k:全 重 合 速 度 定 数) で示 され る か ら,重 合 速 度 に 対 す るpHと イ オ ン 強 度 の 影 響 が 基 本 的 に は 開 始 反 応 に 対 す る効 果 で あ る と す る と,開 始 過 程 に 対 す るpHお よ び イ オ ン強 度 関 数 の 影 響 は そ れ ぞ れ0.7次 お よ び -1.1(pH=1.6)次 と-1 .6(pH4.7)次 と み な す こ とが で き る。 こ れ らの 値 は た だ ち に 的 確 な 結 論 を 導 く ほ ど 明 確 な 数値 で は な い が,Brφnsted-Bjerrumの 式 に よ る と2価 の 陽 イ オ ン と1価 の 陰 イ オ ン との 反 応 の 場 合-2次 に な る は ず で あ る。pH4.7の 場 合 に は この値 に近 く反応(2)が 優 勢で あ ろ う。pH1.6で は ア コペ ン タア ン ミン コバル ト(Ⅲ)錯塩 は事実 上 酸解 離 は してい な いので 反 応(2)の 形 式 に のみ よ って ラジ カル がで き る もの とすれ ば, -3次 にな るはず で あ る。 事 実 はそ うで ない か ら錯塩 内 での 中心 金 属 と配 位 子 との酸化 還元 反 応 に よる ラジ カル生 成が 多 い もの と 考 え られ る。 [CoOH2(NH3)5]3+→ Co2++4NH3+NH4++ ・OH (4) ア コ錯塩 の対 ア ニオ ンの影 響 が相 当顕 著に 認 め られ る ことは興 味深 く,錯 塩 によ る ラジ カル生成 の機構 を複 雑 な もの とす る一因 とな るであ ろ う。種 々の 対 ア ニオ ンを もつ ア コ錯 塩 の重合 開 始能 がArcherら10)の 測 定 した クロ ロペ ン タア ン ミン コバル ト(Ⅲ)錯 塩 の対 ア ニオ ン との イ オ ン対 解 離定 数 とよい 相関 関 係 を もって い る(表1)こ とは単 に偶然 の 一致 とい うもので は ない と思 われ る。 ア コ錯塩 とクロ ロ錯塩 の違 い はあ って も解離 定数 の 大 きい対 ア 二オ ンを もつ錯 塩ほ ど重合 開 始能 の大 きい理由 は イ オン対より も遊 離 の 錯 イオ ンの方 が ラ ジカル生 成機 能 が大 きい か らで あ ろ う。 以 上の考 察 か らア コペ ン タアナン ミンコバ ル ト(Ⅲ)錯塩に よ るア ク リロニ トリルの 熱重 合は 遊 離の 錯 イオ ン自身 の配 位圏 内 酸化 還元 反応 に よ る配位 子 ラ ジカル の生成 か,あ るい は錯 イオ ン と反 応 系 内 の陰 イ オン(多 分OH-)と の間 の酸化 還元 に よ る ラジ カル生 成 に よ って開 始 され る もの と考 え られ る。 4.2ア ク リル ア ミ ドの 光重 合 ア ク リル ア ミ ドの ア コペ ン タアン ミン コバ ル ト(Ⅲ)錯塩 に よ る 増感 光 重合 の速度 式 は実 験結 果 よ りほぼ つ ぎの よ うに表 わす こ と が で きる。 RP=k{I0(1-10- ?? cd)}1/21 [M]3/2 (5) す なわ ち重 合速度RPは 照 射光 源強度I0の0.5次 に,錯 塩 濃度 の変 化 に ともな う吸 収 の割 合(1-10- ?? cd)の0.5次 に,そ して単 量体 濃度 の1.5次 に比 例す る。 この ことに 高 分 子 ラジ カル の二 分子 停止 を示す とと もに,開 始 過程 が励 起錯 イ オ ン と単 量体 との 反応 で あ る ことを示 す もの で ある。 [CoOH2(NH3)5]3+*+CH2=CH-CONH2→ Co2++4NH3+NH4++HOCH2-CH-CONH2 (6) これ は イオ ンと中性 分子 との反 応 であ るか ら反 応系 の イ オン強 度 の影 響を 受け ない はず で事 実 その とお りで あ る(図9)。 重 合開 始 過 程 に単 量体 が関 与 して い る とい う点 で はDelzenne2)の 考察 と 一致 す るが,ア コペ ン タア ン ミン コパル ト錯 塩水 溶液 に ア ク リル ア ミ ドを添加 して もその 吸 収ス ペ ク トル に はなん らの変 化 も認 め られ ない ので,Delzenneの 示 す ア ク リル ア ミ ドの 配位 した 中間 錯体 の 生成 は考 え に くい。 む しろ(6)式 に示 す よ うに光 励起 した 錯イ オン と単 量体 との 反応 に よる ラジ カル生 成 を考 え る方が 妥 当 で あ ろ う。 また 重合 ラジ カルの停止 反応 に関 してDelzenneは 重合 速度 を 錯塩 濃 度 に直接 盛 って その 曲線図 形 か ら錯塩 に よる生長 ラジ カル の停止 反応 を結 論 してい るが,光 重 合反 応 に対 す る錯塩 濃 度 の影 響 を調 べ る ときに はそ の錯 塩 に よって 吸収 され る光 量 に関 して考 察 す ベ きであ る。 表2お よび 図8に 示す よ うに相 当広 い錯 塩 濃度 範囲 にわ た って吸 収光量 の平方 根 則が成 立 し, アコ錯 塩 に よる重 合抑 制は 認 め られ な い。 一 般に 錯塩 の第1吸 収 帯が配 位子場 吸収 帯(d-d帯)で,第2吸 12) 竹 村 富 久 男,森 田 え り 子,日 化,92,1107(1971).
13) F.Basolo, R.G.Pearson,“Mechanisms of Inorganic
Reactions”,2nd Ed.,John Wiley and Sons, Inc., New York(1967)p.32.
収帯 が 電 荷移 動 吸 収帯(CT帯)に 相 当 し,d-d帯 に相 当 す る長波 長 の光 で は配位 子置 換 反応 が,CT帯 に 相 当す る短波 長 の光 で は 酸化 還元 反 応 の起 こ りやす い ことは す でに 知 られ て い る14).錯 塩 に よ る ビニル 重合 の開 始 は酸 化 還元 に よ る ラジ カル生成に基 つ く と考 え られ るので,酸 化 還 元 の起 こ りやす いCT帯 に 相 当す る 紫 外線 に よ って重 合 が効 率 よ く開始 され るのは 当然 で あ る。 しか しd-d帯 に 相 当す る 可視 光 が重 合開 始 に 全然 無効 で あ る とはい えない は 。Delzenneは430nm以 上の 光 では ア コペ ンタ アン ミ ン コバル ト(Ⅲ)錯塩 に よ るア ク リル ア ミ ドの 重合 は起 こ らな い と 報 告 して い るが,こ れ は重合 反応系 内 の脱気 が十 分 行な われ て い な い ので 空 気中 の酸 素 に よ る重 合 抑 制 のた めで あ る。完 全 に脱 気 され た反 応系 で は470nm以 上 の長 波長 の光 で も重 合開 始 が 可能で あ る こ とは 実験 の示 す とお りで あ る。 た だCT吸 収 帯の す そ が470nm以 上に もわ た って い て,ラ ジ カル 生成 に 役立 つの は d-d帯 の励 起 では な くて その 波 長領域 に までの び てい るCT帯 の 励 起 で あ る との 議 論 もな され る こ とが あ る。 しか し この 錯塩 の 342お よび490nmの 吸 収極大 に お け るモル 吸光 係数 は ともに50 l/mol・cmた らず15)で非常 に小 さ く,CT帯 のすそ が470nm以 上に も広 が って い るとは事 実上考え られ ない。 それ に もか かわ ら ず表3に 示す よ うに470nm以上 の 光 によ る重 合の 量子 収率 は CT帯 のそれ に く らべ て1/9程 度 で 比較的 大 き く,こ の ことは 錯塩 のd-d帯 の励 起 に よって も酸化 還元 反応 に よる ラ ジカル生 成 が可能 で あ る ことを示 す もの であ る。 4.3結 び 同 じア コぺ ン タアン ミン コバル ト(Ⅲ)錯塩 に よ る重 合開始 で あ って もア ク リロニ トリル の熱 重合 と アク リル ア ミ ドの光 重合 とで は必ず しも重合 開始 機構 は同 じで はな い。 こ とに この錯 塩 の よ う に配位 子 の酸 解離 が起 こる場合,pHや イオ ン強 度 の影響 は簡単 では ない。 また錯 塩 と単 量体 との 相互作 用 もい ちよ うに論ず るこ とは で きな くて,ア ク リロニ トリルの 熱重合 の よ うに錯塩 か ら直 接一 次 ラ ジカルが 生成 して これが 単量 体の 重合 を開始 す る ことも あれ ば,ア ク リルア ミ ドの光 重合 の場 合の ように励起 した 錯 イオ ン と単量 体 との相 互作 用で 単量体 ラジ カルの生成 が直 接起 こ り, しか もその励 起 はd-d帯 の)吸収 に よる もの で も可 能 であ る。 14) A. W, Adamson, Discuss. Faraday Soc.,29,163(1960);
L. Moggi, V. Balzani, V. Carassiti, Ber. Bunsenges. Physik. Chem., 72, 293(1968).
15) A. W. Adamson, W. L. Waltz, E. Zinato, D. W. Watts, P. D. Fleischauer, R. D. Lindholm, Chem. Rev.,