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中学校社会科における多文化共生に関する公民シミュレーション教材の開発 : 定住外国人との共生を図る「希望が丘団地」を事例にして

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全文

(1)

『社

第16

号 2004

(pp.53-61)

中学校社会科における多文化共生に関する公民シミュ

一定住

との

「希

望が

を事

ーシ

して−

ョン教材の開発

Development of the Citizen Simulation Teaching Materials about the Numerous

Culture Symbiosis in the Junior High School Social Studies:

A Case of

'Kibougaokadanchi' to Attempt to Symbiose with the Settlement

Foreigner

L は

じめに一

問題の所在一

豊田市では

,厂

入管法」改正以来ニュー

カマー

と呼ばれる

日系ブラジル人

,日系ペルー

ら出稼

ぎ労働

者の流入が著

しく増加

してきた

。特に保見

団地では3000

人を超す

ブラジル

人が住居

をともに

してお

,日本全国を見ても稀な集住地域となっ

ている

。ところが

,日系ブラジル

人の

この集住に

よって

,保見団地では

日系ブラジル人と地域住

との間でさま

ざまな問題が起

こり確執が

じてい

。この

ようななか

,企業城下町と

しての性格

有する豊田市に

おいて

,今後生活の質を高め

,下

請企

業を支

える日系ブラジル人との共生は欠

くこ

とのできな

いものとな

っている

しか

,多文化共生社会の創造を図るうえで,

学習者が匚

内なる国際化

」を進め

「 ̄

同化と排除」

という隠された

文化システム

に気づき

,是正する

態度

を形成

,日本国内で生活する人々の行為,

考え方

,習慣などを共感的,実感的に理解す

るこ

とが

可能な教材が必要である。

そこで

,本研究では

,日系ブラジル

(外国人

労働者)に対す

る偏見や恐れの克服

,多面的な視

野の育成

(多文化社会のジ

レンマ構造の

認知)と

共生に

向けて公正な意思決定が可能な教材

を開発

する。

H。

多文

化共

に関

る教材

開発の

.現

代社

多文

共生

関す

る視

定住

との

生社

会の

図る

には

,次

3条件が成立

していることが

重要な観

点であ

る1)

。第

1に

異文

に対す

る相

互理

解が

され

いる

こと

。第

2に異

化の

人た

ちにマ

リテ

鈴 

村 

克 

(豊

益富

中学校)

と同等

生活

条件

が補償

され

こと

。第

3に

しての

参加

認め

られ

いる

こと

,オー

ドカマー

,ニ

ュー

カマー

マジ

リテ

ィ側

対応

,その

いずれ

条件

加味

いな

いの

ある

。そ

こで

,現

代社

ける

多文

生に

関す

る視

点と

して

,次の

2つ

を設定

視点①匚

内なる国際化

」をすすめ,匚

同化と

排除」という隠された文化システム

是正

していくこと。

点②

日本

国内で生活する人々に対

して

,平

等に人権を享

受す

る権

利が

ある

「 ̄

である

という認識

を育てること。

2。多文化共生の教育理論に関す

る視点

多文化共生の教育理論に関する視

点では

,他

・異文化間の

共存を課題と

した教育である

多文

化教育

,国際教育

,民族教育,異

文化間教育をそ

ぞれ検

した

。それによ

り,定住外国人との共

生を図る教材開発の視

点を育むには

,次の

2点か

ら多文化教

育が

最も適

して

いる

ことが

らか

とな

。第

1は

,領域

を一国内に

おき,統合とい

う視

点を有

,マイノ

リテ

ィとマジ

ョリティの共存,

共生を中心課題と

している点

。第2に

,教育を行

う際

,ひと

りひと

りの背景や生活基盤

を無視

して

は成

り立た

ないという根本原理

を重視

している点

また

,多文化教育における共生を図る教材開発

の視

点として

,次の

2つを設定す

る。

― 53

(2)

視 曵①教育を 行 う際, ひとり ひとり の背景 や

生 活基盤 を無 視し て は成 り立 だない 根

本 原理 に則り, 母語 教育, 母国 の文化

の教育を 重視 する こと。

視点 ② 教材 に盛 り込 んだ課題 (平 等 と差 異 の

統合) に対 し て,学習 者 が行う意 思決

定 場面を 設 けるこ と。

3。 シミ ュレ ーション教 材で 開発 する視点

シ ミュ レ ーショ ン教材 に は, シミュレ ー ション

の枠 組みを 用い ない一般 的な学 習方 法論 と比べ,

社会的 諸事象 の関 連・構 造 が簡 潔化, モデル化さ

れて いる ため, 社 会的事 象 の関 連・ 構造を 捉え や

すい。 ま た, 学習 者か おる役割 を もった人 間や組

織 の立場 に立 って 模擬的 に体験 や行動 をし てい く

た め,人 間 の行為 と社会 的事象 と の関わり が理解

しや すい。 とい う有 効性 かお る2)。

そ こで,共 生社 会 の創 造を学 ぶ には, 深刻 な対

立がっ き まとう ジレ ンマ構造を有 して い ることを

理解 し体 験で き, さ らに他者 の考 え方 や習 慣など

を共感 的,実 感的 に理解 す ることが可 能な シミュ

レ ー ショ ン教材を 開発す る必要 があ る。

4 。 多 文 化 共 生 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 教 材 開 発 の 視 点 多 文 化 共 生 の シ ミュ レ ー シ ョ ン教 材 開 発 の 視 点 と し て , 多 文 化 共 生 の シ ミュ レ ー シ ョ ン教 材 の 先 行 研 究 ((1 )「 モ ノ か ら ヒ ト の 国 際 化 一外 国 人 労 働 者 問 題 を 考 え る 」3)(2 )「 日 系 ブ ラ ジ ル 人 か ら 考 え る 外 国 人 労 働 問 題 」4)(3 )「 ひ ょ う た ん 島 問 題 」5)) を 批 判 的 に検 討 し た 。 そ の 結 果, (1) は 1 つ の 視 点 か ら し か 問 題 を と らえ て い な い 。(2)は 多 文 化 社 会 に お け る 社 会 問 題 の ジレ ンマ 構 造 が 配 慮 さ れ て い な い 。(3 )は 現 実 社 会 と か け 離 れ た 物 語 的 な場 面 構 成 に な って い る こ と と, 教 材 が 中 学 生 に と っ て 難 解 ( 抽 象 的 ) で あ る 。 と い う 問 題 を 見 出 し た 。 そ の こ と を 踏 ま え て , 次 の 4つ の 視 点 を 設 定 す る。

視 点①現実 社会か ら教 材を開発 し, 社会構 造

を モデル化 する こと。

視点 ②現 実 の問題を 題材 にして, そ の解決策

を 模索 する学 習過 程を組 む こと。

視点 ③中 学生 が教 材に興 味・関心 を持 ち,主

体的 に学 習参 加が でき, 社会構 造や問

題 が理 解で きる内容 構成 にす ること。

視点 ④1つ の視点か らだ けでな く,い くつ か

の視点を 関連付 け る教材 にす ること。

Ⅲ 。 多 文 化 共 生 に 関 す る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 教 材 「 希 望 が 丘 団 地 」 の 開 発 と 構 成 1. 地 域 の共 生 問題 に 関 する 教 材 内 容 と シミ ュ レ ー シ ョ ン 教 材 「 希 望 が 丘 団 地 」 の 開 発 多 文 化 共 生 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン教 材 開 発 の 視 曵 ① よ り, シ ミュ レ ー シ ョ ン教 材 厂希 望 が 丘 団 地 」 は, 愛 知 県 豊 田 市 の 北 西 部 に 位 置 す る 保 見 団 地 を モ チ ーフ と し, 規 模 は, 保 見 団 地 と ほぼ 同 じ レ ベ ル で 設 定 を 行 って い る。 現 実 の 地 域 社 会 の 保 見 団 地 は, 下 の表 1 のよ う に, 団 地 住民 ( 日 本 人, オ ー ル ド カ マ ー, ニ ュ ー カ マ ー), 経 営 主 体 ( 公 団 , 県 営 ), 住 宅 ( 分 譲 , 賃 貸 ), 立 地 条 件, 規 範 ( 慣 習 や 法 ), 歴 史 な ど さ ま ざ ま な 構 成 要 素 を 含 ん で い る が, 仮 想 社 会 の 厂希 望 が丘 団 地 」 で は, こ れ ら の諸 要 素 の う ち, 団 地 住 民 ( 日 本 人 , ニ ュ ー カ マ ーで あ る 日 系 ブ ラ ジ ル人 ), 経 営 主 体 ( 公 団 ), 住 宅 ( 賃 貸 ) と い う よ う に 限 定 し , 簡 素 化 し て い る 。 表 1 保見団地 と希望が 丘団地 の構成要素 の比較 現 実 社 会 (保 見 団地) 仮 想 社 会 (希 望 が 丘団 地) 団 地 住 民 日本人、 オー ル ドカ マ ー、 ニ ュう マ ー 日本 人 、日系 ブ ラ ジ ル 人 と そ の家 族 経 営 公 団 、県 営 公 団 住 宅 分 譲 住 宅、 賃 貸 住 宅 賃 貸 住 宅

次 に, 保 見団地 にお ける定 住外国人 の問 題 の構

造を 匚

市内 産業及 び地域 社会 にお ける国 際化親展

影響調 査」6

)より見 ると,以 下 のとお りで ある。

54 −

(3)

○ 業 務 請 負 会 社 ・ 団 地 に 入 居 す る 前 に指 導 を 行 わ な か っ た ・ 生 活 面 の マ ナ ー の 指 導 を 怠 け て い た ○ 公 団 住 宅 問 題 ・ 公 団 が 企業 や 業 務 請 負 業 と 法人 契 約 を し た ・ ブ ラ ジ ル人 の集 住 地 が 形 成 さ れ た ○ 行 政 の 問 題 ・ 様 々 な 問 題 に す ぐ 取 り 組 ま な い ・ 業 務 請 負 業 者 に 対 し て 管 理 責 任 を 徹 底 し て 指 導 し て こ な か っ た ○ 自 治 会 の 問 題 ・ ブ ラ ジ ル 大 に と って 自 治 区 の 機 能 と 意 味 が 明 確 で な い ○ 保 見 団 地 の 問 題 ・ ご み 捨 て場 と 駐 車 場 数 が 少 な す ぎ る ・ 大 規 模 の団 地 で は ご み 収 集 の 回 数 が 少 な す ぎ る ○ ブ ラ ジ ル人 の問 題 ・ 地 域 社 会 ル ー ル の 違 反 − ご み の 分 別 を し な い , 粗 大 ご み の 指 定 日 を 守 ら な い ・ 夜 間 や 休 日 前 な ど のパ ー テ ィ な ど に よ る 騒 音 ・ ブ ラ ジ ル人 住 居 者 が 地 域 や 自 治 区 に 参 加 し な い ・ 犯 罪 の 発 生 と 青 少 年 の 非 行 一地 域 の 不 安 と 治 安 の 悪 化 ・ 日 本 語 が上 達 し な い ○ 共 通 の 問 題 ・ 生 活 リ ズ ムか ら 情 報 が 大 ら な い 構 造 に な っ て い る ・ 日 本 人 と ブ ラ ジ ル 大 の交 流 の な さ ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の パ イ プ が な い ○ 報 道 の 問 題 ・1999 年 の 「 事 件 」 に よ っ て 問 題 を 大 き く 取 り 上 げ , 特 別 扱 い さ れ た ・ 全 国 的 に イ メ ー ジ を 低 下 さ せ た そ こで , こ れ らを 踏 まえ て, 多 文 化 共 生 の シ ミュ レ ー ショ ン 教 材 開 発 の視 点 ④ よ り , 下 の表 2 の よ う に定 住 外 国 人 問 題 を 想 定 し て い る。 表 2  保 見 団 地 と 希 望 が 丘団 地 の 問 題 要 素 の比 較

現 実 社会( 保 見 団 地) 仮想 社会( 希 望

が 丘 団 地)

ご み 問題 、騒 音 問題 、

違 法 駐 車 ・ 放 置 車 両

問 題 、 自 治 会 活 動 へ

の 不 参加 、 教 育 問 題

( 日 本 語 と 母 語 、 進

路 )

、治 安 問 題( 犯 罪

の 発 生 と 青 少 年 の 非

行 )、 雇 用 に 伴 う 問

題 、 無 保 険 問 題 、 集

住 問題 な ど

騒 音 問題 、ご み

問 題 、自治 会 活

動 へ の 不 参加 、

教 育 問題( 日本

語 と 母 語 、 進

路 )

、 集 住 問 題

2。 シ ミ ュレ ー シ ョ ン 教 材 「 希 望 が 丘 団 地 」 の 構 成 匚希 望 が 丘 団 地 」 で は, ホ ス ト 社 会 の な か で ゲ ス ト ・ グ ル ー プ で あ る 日 系 ブ ラ ジ ル人 が 引 き 起 こ す 社 会 問 題 ( 文 化 的 摩 擦 や 社 会 的 緊 張 ) が 段 階 的 に 深 刻 化 ・ 高 度 化 し て い く 5つ の ス テ ッ プ を 設 定 し, そ の 問 題 を 生 徒 に 直 面 さ せ る よ う に し て い る。 具 体的 に は, マ ナー ・習 慣 な ど の 文化 摩 擦 を 扱 っ た ス テ ッ プ 1 , 2 の 異 文 化 理 解 か ら ス テ ップ 3∼ 5の多 文 化 理 解 (美 化 活 動 ( 自 治 会 活動 ) ・ 勤 労 ・ 家 族 , 教 育 ・ 学 校 , 居 住 ・ 経 済 負 担 な ど, 民 族 ・ 文 化 集 団 の 相 互 作 用 に よ っ て 問 題 が 深 刻 化 す る 局 面 を 設 け て い る) へ 至 る過 程 を 設 定 し て い る。 ス テ ップ 1 か ら ス テ ップ 4 まで は , ロ ベ ル ト さ ん一 家 が希 望 が 丘 団 地 にや っ て き た こ と か ら 起 こ る文 化 摩 擦 を 共 生 と い う 視 点 で 解 決 策 を 考 察 し て い く も ので あ る。 ス テ ップ エは, 日 系 ブ ラ ジ ル人 が 団 地 内 で く つ ろ ぐ 時 , ブ ラ ジ ル で の 習 慣 ( バ ー ベ キ ュ ーを し て 騷 ぐ , い か な る 時 間 で も音 楽 を 大 き な 音 で 楽 し む, 広 場 で 男 が 集 ま っ て 酒 を 飲 み 騷 ぐ な ど ) を 団 地 に 持 ち 込 ん だ こ と か ら起 こ る問 題 を 設 定 し, ロ ー ル プ レ イ を 通 し て 異 文 化 理 解 ( 生 活 習 慣 の違 い や マ ナフ ) と問 題 解 決 の 方 法 を 探 る も の で あ る。 ス テ ップ 2 は, ご み に 関 す る 考 え 方 の違 い や 日 本 語 ( 漢 字 ) が わ か ら な い こ と, ご み の分 別 の習 慣 の有 無 な ど が 原 因 で 生 じ て い る ご み 問 題 を 設 定 し , ロ ー ル プ レ イ を 通 し て 異 文 化 理 解 ( 生 活 習 慣 の 違 い や マ ナ ー) と 問 題 解 決 の 方 法 を 探 る も ので 55 −

(4)

あ る。 ス テ ッ プ 3 は, ス テ ッ プ 2を 深 化 さ せ , 環 境 美 化 の 日 に , 日 系 ブ ラ ジ ル 人 が 美 化 活 動 に 参 加 し な い ( ご み 拾 い や 草 取 り に 対 す る考 え 方 の 違 い, 家 族 へ の行 動 の 違 い , シ ス テ ム の不 理 解) こ と で , 差 別 視 さ れ, 排 除 さ れ る 傾 向 に あ る 日系 ブ ラ ジ ル 人 を 問 題 と し て 設 定 し , ロ ー ルプ レ イ を し て 話 し 合 う こ と で , 文 化 の 相 互 作 用 と し て の対 立 を 体 験 的 に理 解 す る も ので , こ こ で は 美 化 活 動 ・ 勤 労 ・ 家 族 ・ コ ミ ュ ニ テ ィ に つ い て の考 え 方 に よ る 文 化 対 立 を 体 験 し, 問 題 解 決 の 方 法 を 探 る もの で あ る。 ス テ ッ プ 4 は , 日 本 語 が 理 解 で き な い , い じ め に あ う な ど で , 不 登 校 に な っ た 日 系 ブ ラ ジ ル人 子 女 が 増 加 す る と と も に, 彼 ( 彼 女 ) ら が 非 行 に は し る問 題 や 子 女 が 母 語 を 忘 れて し ま い, 両 親 と の 間 で コ ミュ ニ ケ ー ショ ンが と れ な い と い う 問 題 を , ロ ー ルプ レ イ に よ る ラ ン キ ン グ を 行 い, 一 定 の 政 策決 定 の困 難 さ を 認 識 す る もので , こ こ で は 教育 ・ 学 校 に よ る文 化 対 立 を 体 験 し , 問 題 解 決 の方 法 を 探 る も の で あ る 。 一 方 , ス テ ップ 5 は, 定 住 化 傾 向 に あ る 日 系 ブ ラ ジ ル人 が, そ の地 区 の 住 み よ さ ( 日 系 ブ ラ ジ ル 人 が 集 住 して い る こ と で 言 葉 の 心 配 を し な く て も よ い, 施 設 の充 実 な ど ), 治 安 の よ さ や 仕 事 が あ る こ と な ど か ら,家 族 を 呼 び寄 せ たり , ネ ッ ト ワ ー ク情 報 を も と に集 ま る な ど , よ り 大 き な 集 住 地 区 に な り つ つ あ る。 し か し, こ の こ と に よ っ て 自 治 会 活 動 が 危 機 に瀕 す る と い う問 題 が 起 き て い る。 そ こで 地 域 社会 と し て , 地 域 文 化 を 保 持 す る立 場 , 外 国 人 街 を 作 り 共 存 す る 立 場 , さ ら に 日 本 人 と 日 系 ブ ラ ジ ル人 が 共 生 す る ( ①人 権 の 立 場 か ら集 住 を 認 め る立 場 , ② 共 に 住 みっ つ も入 居 制 限 を す る 立 場 ) の 4 つ の立 場 か ら 集 住 問 題 を 考 察 し, 多 文 化 共 生 の有 意 性 , 重 要 性 を 認 識 さ せ る構 成 に し て い る。 -表 3  「 希 望 が 丘 団 地 」 の 枠 組 み ( 内 容 構 成 ) 異 文 化 理解 多文化主 義聯 賜 ス テ ッ プ 1 生 活 習 慣 が 違 う ? マ ナ − ● 習 慣 意 志 伝 達 ス テ ッ プ 2 ご み の 始 末 の 仕 方 が わ か ら な い マ ナ − ● 習 慣 ス テ ッ プ 3 環 境 美 化 の 日 な ん て 勤 労 家 族 「 民 族 と 文 化」 「 個 人 と 集 団」 「 普 遍 と 差 異」 の 葛 藤 ス テ ッ プ 4 ど う す れ ば い い の か 日 本 の 教 育 教 育 学 校 ス テ ッ プ 5 希 望 が 丘 団 地 で 共 生 は 可 能 か ? 居 住 共 生 3 。 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 教 材 の 構 成 原 理 多 文 化 社 会 に お け る 社 会 問 題 は , 多 文 化 主 義 の み で は 問 題 解 決 に 限 界 が あ る た め , 学 習 者 は 錯 綜 し た人 種 ・ 民 族 問 題 を 正 し く理 解 し , 問 題 解 決 に 向 け公 正 な判 断 を下 す能 力 を 培 う こと が必 要 に な っ て く る。 そ の た め に, 社 会 的 事 象 の 関 連 ・ 構 造 を 捉 え る こ と が で き, 同 時 に , 人 間 の 行 為 と 社 会 的 事 象 と の 関 わ り が理 解 し や す い 教 材 が 必 要 不 可 欠 で あ る。 こ こ で い う 錯 綜 し た人 種 ・ 民 族 問 題 の 構 造 と は , フ ラ ン ス の 社 会 学 者 P=A ・ タ ギ ェ フ 『 偏 見 の 力 』1987 年 の 考 え 方 で あ る。

個人 一普 遍 主義    伝 統 一共 同 体主 義

人 種 主義 I    人 種 主義 H

人種主義I:同化 (疎外)    告発   → 人胆 釧 :隨 誚 ) 反人種主義I:個人 間の権 利の平等  無関心  ぴ 込 反人種幸義H:共同体のアイデンティティへの権利

図1 人種主義と反人種主義7)

こ のP=A・ タ ギェ フ の考 えを わか り や す く し

た のが, 下 の表 4共 生 を めぐ る対 立 と和 合 の類

型8)で あ る。

56 −

(5)

表 4  共 生 を め ぐ る 対 立 と 和 合 の類 型 人 種 主 義 ・ 自 民 族 中 心 主 義 普 遍 志 向 個 人 主 義 平 等 志 向 [I]人 種 主 義 I 自 民 族 中 心 の 普 遍 主 義 で 、 マ ジ ョ リ テ ィ へ 、 同 化 を 要 求 す る 。 [H]人 種 主 義 H マ ジ ョ リ テ ィ と マ イ ノリ テ ィ の 異 質 性 を 強 調 し 、 排 除 ・ 隔 離 の論 理 に た ち 、 マ ジ ョ リ テ ィ へ の 同 化 を 拒 否 す る 。 差 異 志 向 共 同 体 重 視 伝 統 回 帰 [m ]反 人 種 主 義亅 差 異 を 超 え た 人 類 の 普 遍 性 ( 平 等 、 人 権 ) を 志 向 し 、 そ の 理 念 の も と に 差 異 を 解 消 し よ う とす るoイ 固 人 間 の 権 利 の 平 等 を 基 本 論 理 と す る。 [IV]反 人 種 主 義 n マ イ ノ リ テ ィ 固 有 の 文 化 を 擁 護 し 、 「 相 違 へ の権 利」 を 主 張 す るo 個 人 の 権 利 よ り も 民 族 や 集 団 の 権 利 を 重 視 す る。 反 人 種 主 義 ・ 文 化 相 対 主 義 表 4で 示 し た諳 類 型 の 相 互 作 用 が 議 論 に 反 映 さ れ な け れ ば, 学 習 者 は 錯 綜 し た 人 種 ・ 民 族 問 題 を 正 し く 理 解 し , 問 題 解 決 に向 け 公 正 な 判 断 を 下 す 能 力 を 培 う こ と に は な ら ない 。 そ こで , そ れを ロ ー ルプ レ イ に 反 映 さ せ る の が 役 割 カ ー ド で あ る ( 資 料 ③ )。 こ の 役 割 カ ー ド が , 多 文 化 共 生 の シ ミ ュ レ ー ショ ン 教 材 開 発 の 視点 ③ か ら開 発 し た も ので あ る。 次 頁 で 詳 し く 述 べ る ス テ ップ 4で み て い く と , 日 本 の 教 育 へ の 同 化 を 求 め る人 種 主 義 I が 鈴 木 花 子, 日 本 の教 育 へ の 同 化 を 拒 否 す る人 種 主 義 n が ロ ベ ル ト , 教 育 の 機 会 均 等 の立 場 の反 人 種 主 義 I が平 伸 之 , 相 違 へ の 権 利 の 立 場 の 反 人 種 主 義 H が 今 井 共 子 で あ る 。 こ の 関 係 を 表 に ま と め た も の が 下 の 表 5で あ る 。 こ の こ と で , 多 文 化 社 会 に お け る 教 育 問 題 の議 論 の 構 造 と 各 立 場 の相 互 作 用 が も た らす 価値 葛 藤 を 体 験で き る よ う に し て い る。 -表 5  ス テ ッ プ 4 の 登 場 人 物 の 主 な 意 見 [I ]人 種 主 義 I 「 日 本 文 化 を 尊 重 す る 会 」 の 鈴 木 花 子 ① 日本 文 化 優 先 の学 習 ② ブ ラ ジ ル 人 学 校 不 可 [n]人 種 主 義 H 「 日系 ブ ラ ジ ル 人 会」 の 口 ベ ル ト ③ ブ ラ ジ ル 人 学 校 へ の 支援 [Ⅲ]反 人 種 主義 I 教 育 委 員 会 の 平 伸 之 ④ 外 国 人 補 助 教 員 配 置 [Ⅳ]反 人 種 主 義H F希 望 が 丘 を 考 え る 会」 の 今 井 共 子 ⑤ 放 課 後 の「 国 際 理 解」 教 室設 置 ⑥ 学 校 の カ リ キ ュ ラ ム 改 革 4。 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 教 材 「 希 望 が 丘 団 地 」 の 展 開 方 法 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン教 材 「 ̄希 望 が 丘 団 地 」 の 展 開 につ い て は, 多 文 化 共 生 の シ ミュ レ ー シ ョ ン教 材 開 発 の 視 点,② を 取 り 入 れ て い る。 そ こ で , ス テ ッ プ 4 を 例 に し て シ ミ ュ レ ー シ ョ ン教 材 匚希 望 が 丘 団 地 」 の展 開 方 法 を 述 べ る。 ス テ ップ 4 の 指 導 過 程 は 表 6 の と お り で あ る。 表 6 ステップ 4の指導過 程 段階 学  習  活  動 学 習 者 へ の 支 援 導 入 50 分 1 ) 資 料 ① を 配 布 し 、「 ど う す れ ば い い の か 日 本 の 教 育 」 に つ い て 説 明 す る 2 ) 資 料 ② を 配 布 し 、 問 題 解 決 の た め の 6 つ の 政 策 項 目 に つ い て 説 明 す る 資 料 ① を 配 布 し 、 ゆ っ く り と 範 読 し 、 補 足 説 明す る 3 ) 6 つ の 政 策 に つ い て 、 自 ら の 考 え に よ っ て ラ ン キン グ を す る 優 先 順 位 を つ け さ せ る が 、 同 順 を 認 める 4 ) 4 人 1 組 の グル ープ に な っ て 、 役 割 を 決 め る 5 ) 配 布 さ れ た 役 割 カ ー ド ( 資 料 ③ ) を 読 む 役 割 カ ー ド を 配 布 す る( 資 料 ③ ) 6 ) 同 じ 役 割 の 生 徒 同 士 が 集 ま っ て 、 該 当 人 物 が 妥 当 と す る ラ ン キ ン グ を 行 う 同 順 を 認 め 、 優 先 順 位 を つ け さ せ る が 、 該 当 人 物 と 妥 当 で な い ラ ン キ ン グ に は 支 援 を 行 う 57 −

(6)

展 開 1 30 分 7 ) ロ ー ル プ レ イ を し な が ら ラ ン キ ン グ を 発 表 す る ・ 自 己 紹 介 、 主 張 と ラ ン キ ン グ 司 会 役 の 教 師 は 、 ラ ン キン グ が で き る よ う に 調 整 す る ( ま と ま ら な い 場 合 は 、 無 理 に 調 整 し な い ) 8 ) ロ ー ル プ レ イ を 離 れ て 、 全 員 で 理 想 的 な ラ ン キ ン グ に 就 い て 話 し 合 う 展 開 2 15 分 9 ) 3 回 行 っ た ラ ン キ ン グ の 結 果 を 比 較 し 、 ど ん な 変 化 か お り 、 そ の 変 化 し た 理 由 を 考 え る 10 ) ロ ー ル プ レ イ を し て い る と き の 気 持 ち に つ い て も ふ り か え る プ レ イ の な か で 、 感 情 的 な こ だ わ り を も っ た 生 徒 がい た ら 、 フ ォ ロ ー す る ま と め 5 分 n ) 発 言 や 価 値 観 に つ い て ど の よ う な 考 え 方 が 必 要 か ま と め る 同 化 や 排 除 に と ら わ れ る こ と な く 、 人 権 を も と に 考 え る 視 点 を 発 表 さ せ る 資 料 ① ( シ ナ リ オ) は, ス テ ッ プ 4 の 仮 想 的 な 問 題 状 況 と し て , ホ ス ト 社 会 の な か で ゲ ス ト ・ グ ル ープ で あ る 日 系 ブ ラ ジ ル人 が 引 き 起 こ す 社 会 問 題 ( 文 化 的 摩 擦 や 社 会 的 緊 張 ) の う ち, 日 本 語 が 理 解で き ない , い じ め にあ うな ど で, 不 登 校 にな っ た 日 系 ブ ラ ジ ル 人 子 女 が 増 加 す る と と も に , 彼 ( 彼 女 ) ら が 非 行 に は し る 問 題 や 子 女 が 母 語 を 忘 れ て し ま い , 両 親 と の 間 で コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンが と れ な い と い う 問 題 を シ ナ リ オ化 し て い る 。 資料 ①  匚ど うす れば いい のか 日本 の教育 」 の シ ナリ オ 日系 ブ ラ ジ ル 人 が 多 く 住 む よ う に な っ た 希 望 が 丘 団 地 に あ る 学 校 で は 、 日 本 語 を 理 解 で き な い 子 ど も が 入 っ て く る よ う に な りま し た 。 日 系 ブ ラ ジ ル 人 の 親 の多 く は 、 目 標 の 金 額 が た ま れ ば 本 国 の ブ ラ ジ ル に 帰 る の で 、 子 ど も が 苦 労 し て ま で 日 本 語 を 覚 え 、 日 本 で の授 業 を 受 け な く て も い い と 考 え て い ま す 。 そ の た め、 子 ど も も 親 の 考 え に 従 い 、 学 校 に 行 かず 、 ぶ ら ぶ ら 遊 ん で 過 ご し て い る 子 が 増 え てい ま す 。 ま た 、 た と え 一 生 懸 命 勉 強 し て 上 級 学 校 に 進 学 し て も 、 日 本 で 就 職 を す る 際 に 、 国 籍 条 項 で 希 望 す る 就 職 先 に 就 け な か っ た り 、 雇 用 者 の人 種 ・ 民 族 差 別 に よ っ て 就 職 で き な か っ た り し て お り 、 日 本 で 将 来 の 夢 が も て な い 状 況 に な っ -て い ま す 。 ま た 、 幼 少 時 に 来 日 し た 日 系 ブ ラ ジ ル 大 子 女 は 、 日 本 語 の 習 得 が す す む 一 方 母 語 で あ る ポ ル ト ガ ル 語 を 忘 れ て し ま い 、 ポ ル ト ガ ル 語 し か 話 せ ない 親 と の 間 で コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が と れ な い 事 態 に も 陥っ て い ま すo 希 望 が 丘 団 地 に や っ て き た ロ ベ ル ト さ ん 一 家 の 長 男 カ ル ロ ス 君 ( 中 学 1 年 ) は 日 本 語 が 理 解 で き な い た め に 、 授 業 に つ い て い く こ と が で き ず 、 学 校 に 行 か ず に 家 で ご ろ ご ろ す る 日 が 増 え て き ま し た 。 隣 人 の 加 藤 さ ん は 、 家 で ご ろ ご ろ し て い る カ ル ロ ス 君 を 快 く 思 わ ず 、団 地 内 で 物 がな く な る と 、 近 年 増 加 傾 向 に あ る 外 国 人 犯 罪 と 絡 め て カ ル ロ ス 君 が 盗 ん で い る の で は な い か と 考 え 始 め て い ま す 。 ま た 、 長 女 の リ タ さ ん (保 育 園 年 長 ) は 、 保 育 園 で 日 本 語 の 習 得 が 進 む 一 方 、 母 語 で あ る ポ ル ト ガ ル 語 を 忘 れ 始 め て い ま す 。 こ の ま まい け ば 両 親 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 支 障 が き た し 、 家 庭 崩 壊 に な る か も し れ ま せ ん 。 こ れ は 大 変 な 問 題 で す。 こ の よ うな 日 系ブ ラジ ル 人 家 族 が 抱 え る 問 題 の 対 応 につ い て 、 松 衣 市 議 会 で 話 し 合 い が 始 め ら れ ま し た 。 ロ ベ ル ト さ ん ら は 、 自 分 た ち の 文 化 ( 母 語 を 含 む ) を 保 持 す る た め のブ ラ ジ ル 人 学 校 の 施 設 の 充 実 、 授 業 料 の 軽 減 の た め の 補 助 を 自 治 体 と 本 国 に 要 求 し よ う と 考 え て い ま す。 一 方 N Po r希 望 が 丘 を 考 え る 会 」 の 今 井 共 子 さ ん は 、 母 語 と 日 、本 語 、 ブ ラ ジ ル の 文 化 や 歴 史 を 学 ぶ こ と が で き る よ う に 学 校 の カ リ キュ ラ ム の改 善 を 教 育 委 員 会 に 要 求 し よ う と し てい ま す 。 教 育 委 員 会 で は 、 ポ ル ト ガ ル 語 が 話 せ る 大 を 補 助 教 員 と し て 学 校 に 配 属 し た り 、 教 師 に 研 修 を 積 ま せ て 対 応 し よ う とし て い ま す 。 ま た 、「 日 本 文 化 を 尊 重 す る 会 」 の鈴 木 花 子 さ ん は 、 日 系 ブ ラ ジ ル 人 の子 女 に 日 本 語 を 学 ば せ 、 日 本 で の 生 活 が で き る よ う に す る こ と が 何 よ り も 大 切 で あ る と 主 張 し て い ま す 。 さ て 、 あ な た な ら ど の 解 決 策 を 支 持 し ま す か 。

資料 ②③ は, こ の問題状 況を 解決 するた めの話

し合いを す るロ ールプ レ イ上 の人 物で, この問題

状 況 に対 して の考え 方が示 して あり,学 習者 は,

プ ロフ ィ ール集 と この役割 カ ード を もとに演 じ る

役 割 の立 場 になって 解決策 を考え る ことに なる。

58 −

(7)

資 料 ② 6 つ の 政 策 項 目 登場 人 物 6っ の ラ ン キン グ 項 目 「 日本 文 化 を 尊 重 す る 会 」の 鈴 木 花 子 ① 日本 文 化 優 先 の学 習 ②ブ ラ ジ ル 人 学 校 不 可 「 日系 ブ ラ ジ ル 人 会 」 の ロ ベ ル ト ③ブ ラ ジ ル 人 学 校 へ の 支 援 教 育 委 員 会 の 平 伸 之 ④ 外 国 人 補 助 教 員 配 置 「希 望 が 丘 を 考 え る 会 」 の 今 井 共 子 ⑤ 放 課 後 の 「国 際 理 解 」教 室 設 置 ⑥ 学 校 の カ リ キ ュ ラ ム 改 革 資 料 ③  役 割 カ ード ( 登 場 人 物 と主 張 内 容 ) 日 本 文 化 を 尊 重 す る 会 の 鈴 木 花 子( 日本人 女 哇38 歳) 今 あ る 豊 か な 生 活 は 、 日 本 古 来 か ら の 習 慣 や 、 教 育 の成 果 だ と 考 え て お り 、 こ の 生 活 習 慣 や 教 育 方 針 を 維 持 す る こ と が 、 将 来 の 日 本 を よ り 発 展 さ せ る 礎 に な る と 考 え てい る。 日 本 は 戦後 驚 異 と も 思 わ れ る 復 興 を な し と げ、 先 進 工 業 大 国 と な り ま し た 。こ の 復 興 を 支 え た の が 今 の 日 本 の 教 育 制 度 で す 。 日 本 国 民 は 、日 本 中 ど こ の 場 所 で も 同 一 内 容 で 高 い 水 準 の公 教 育 を受 け る こ と が で き ま し た 。そ し て 、学 ん だ 知 識 や 技 術 や 礼 節 等 を 土 台 に 、人 々 を 国 民 とし て 一 致 団 結 させ 、戦 後 の 復 興 に ま い 進 させ た と言 え ま す。 そ の 意 味 で 日 本 の 教 育 の 目標 は 、日 本 国 民 の 育 成 と い っ て 過 言 で は あ り ませ ん。ま た、 そ こ で 行 わ れ て い た 学 習 内 容 は 、 日本 語 と 日本 の 文 化 そ の も の で し たO 近 年 、不 況 下 に お け る さま ざ ま な 問 題 が 生 じ て お り 、日 本 の 将 来 は 不 透 明 で す 。こ れ を 打 開 す る に は 、 日 本 の 教 育 レ ベ ル( よ り 確 か な 日 本 語 と 日 本 文 化 の学 習) を 上 げ 、 優 秀 な 日 本 国 民 の 育 成 に あ る と考 え ま す 。 そ の よ うに 考 え る と 、ブ ラジ ル 人 学 校 に 資 金 や 設 備 を 援 助 す る こ とや 日 系 ブ ラ ジ ル 人 の た め に カ リ キ ュ ラ ム を 改 革 し 、日 本 人 も含 めて ポ ル ト ガ ル 語 や ブ ラ ジ ル の 文 化 や 習 慣 を 学 ば す こ と は 、日 本 国 民 の 育 成 とい う視 点 で 疑 問 が 残 り ま すO ま た 、財 政 負 担 も 大 き く な り 、 と て も 賛 成 す る こ と は で き ま せ ん。 日 本 に き た な ら、 今 ま で ど お り の 日 本 の 教 育 を す べ て の 外 国 人 に 行 うこ と が 日本 の 発 展 に つ な が り 、最 も 良 い 方 法 だ と 考 え ま す 。 日 系 ブ ラ ジ ル 人 会 の ロ ベ ル ト ( 家族 でや っ てき た 日系 ブ ラ ジ ル 人 男 性 45 歳 ) 企 業 で 事 務 職 につ い て い た イ ン テ リ の 日系 二 世 。 日 々 の努 力 の かい が あっ て 、 日 本 語 を 話 す こ とが で き る よ うに な っ た 。 多 く の 日 系 ブ ラ ジ ル 人 子 女 は、 来 日後 、短 期 間 の う ち に 日 常 会 話 と し て の 日 本 語 を 習 得 し て い っ て い ま す 。し か し 、日本 の 授 業 で 用 い ら れ て い る 用 語 は 難 解 で 、 日 常 会 話 とし て の 日本 語 を 習 得 し て も 、 59 ― 理 解 で き な い の が 現 状 で す 。そ の た め 、日 本 の公 立 学 校 に 編 入 学 し て も、 授 業 に つ い てい く こ と が で き ず、 不 登 校 に な っ て い る 子 女 が 多 く い ま す。 こ れ は 、 日 本 の公 立 学 校 の 厳 しい カ リ キ ュ ラ ム と 、日本 語 に よ る 授 業 し かな さ れ てい な い か らだ と考 え ま す 。 ま た 、 私 た ち 日 系 ブ ラ ジ ル 大 は 、 本 国 ブ ラ ジ ル で は 日 本 人 と し て み ら れ て い ま し た 。 そ れ ゆ え 自 分 は 日 本 人 だ と し て 信 じ て き ま し た 。 し か し 、 日 本 に 来 て こ の こ と が 間 違 っ て い た とす ぐ に 気 づ か さ れ ま し た 。 日本 人 は 私 た ち を 外 国 人 と し て み て い ま す 。 そ の た め に 、 私 た ち に 差 別 的 な 態 度 で 接 し て き ま す 。 こ の こ と がい じ め と し て 学 校 内 で 表 出 し てい る の で す 。 こ の よ う な 状 況 は 、 危 機 的 状 況 で す 。 こ の 危 機 的 状 況 か ら 脱 す る に は 、 ポ ル ト ガ ル 語 で 授 業 を 行 い 、 ブ ラ ジ ル の 文 化 ・ 歴 史 を 学 ぶブ ラ ジ ル 人 学 校 に 通 う こ と以 外 ほ か に あ り ま せ ん。 し か し 、 今 あ る ブ ラ ジ ル 人 学 校 の 施 設 は 不 十 分 で 、 授 業 料 も 高 額 で 子 ど も を 通 わす こ と が で き る 日 系 大 は 限 ら れ て い ま す 。 私 た ち 日系 大 も人 間 で す 。 教 育 を 受 け る 権 利 を 有 し て い ま す 。 子 女 の 学 力 保 障 、 教 育 の 機 会 均 等 を 実 現 さ せ る た め に 、ブ ラ ジ ル 人 学 校 へ の 教 育 支 教 育 委 員 会 の 平 伸 之 ( 松 衣 市 教 育 委 員 会 次 長56 歳 ) 日系 ブ ラ ジ ル 大 子 女 に 、 日本 人 同 様 に 教 育 を 受 け る 権利 を 認 め た が 、 言 葉 の 壁 に よ る 問 題 を ど の よ う に 克 服 す る か で 頭 を 悩 ま せ てい る 。 日 本 人 の 子 ど も が 、 ブ ラ ジ ル の 文 化 を 学 ぶ こ と は 、 次 の 2 点 で と て も よい こ と だ と 考 え て い ま す 。 第 1 に 、日本 文 化 を 絶 対 視 す る こ と な く 、文 化 を 相 対 的 に 見 る 視 点( 相 手 文 化 と 日本 文 化 を 、同 じ 価 値 のあ る も の と し て位 置 付 け 、 対 等 な も の と み な す 。 や が て こ の こ と が 、民 族 的 偏 見 な ど を 抑 制 す る )が 養 わ れ る 点。 第 2 に 、身 近 にい る 日 系ブ ラ ジ ル 大 と の交 流 を 通 じ て 、異 文 化 理 解 が で き 、国 際化 に 対 応 す る 能力 が 養 え る と い う 点 で す 。 そ こ で 、 教 育 委 員 会 で は ブ ラ ジ ル 人 学 校 の 設 置 に つ い て 異 議 は な い も の の 、 日 本 の 公 立 学 校 で 、 日 本 人 と 日 系 ブ ラ ジ ル 大 が 、 共 に 学 べ る 環 境 作 り に力 を 注 ぎ た い と考 え て い ま す 。 そ の た め に 、 公 立 学 校 に ポ ル ト ガ ル 語 が で き る 補 助 教員 ( 日 系 ブ ラ ジ ル 大 も し く は 日 本 人 ) を 配 属 も し く は 、 巡 回 指 導 す る シ ス テ ム を 作 り ま す 。 ま た 、 教 員 に 対 し て 異 文 化 理 解 を 勧 め る研 修 を 受 講 させ 、 教 師 の 意 識 改 革 を は か り 、 学 校 、 学 級 内 で の民 族 的 偏 見 の 是 正 を す す め ま す 。 さ ら に 公 立 学 校 に 、 カ リ キ ュ ラ ム 外 の補 習 教 室 を 設 け て 、 日 系ブ ラ ジ ル 人 の た め に 言 葉 や 文 化 を 学 ぶ 機 会 を 保 障 し よ う と 考 え て い ま す 。

(8)

N P o r希 望 が 丘 を 考 え る 会 」 の今 井 共 子 ( 日本 人 女 性40 歳 ) 日系 ブ ラ ジ ル 人 を 、 労 働 力 不 足 を 補 う も の と し か と ら え て い な い 日 本 政 府 の 対 応 に 憤 り を 感 じ て お り 、 人 権 尊 重 の立 場 で 外 国 人 労働 者 問 題 を 扱 う こ とを 主 張 す る 。 幼 少 時 に 日 本 に き た 日系 ブ ラ ジ ル 人 は 、 滞 在 期 間 が 長 く な る に つ れ て 、 日 本 語 の 会 話 能 力 は 高 ま り ま す が 、 一 方 母 語 で あ る ポ ル ト ガ ル 語 は 、 使 用 す る 頻 度 が 少 な く な り 、 や が て 母 語 が 話 せ な く な り ま す 。 こ の た め母 語 し か話 せ な い 親 と の 間 で 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が とれ ない とい う 問 題 が 起 き て い ま す 。 ま た 、 授 業 で 使 わ れ て い る 用 語 が 難 し く 理 解 で き な い で い ま す が 、 そ の 用 語 の 意 味 を 母 語 で あ る ポ ル ト ガ ル 語 で 説 明 し て も ら え ば 、 授 業 に つ い てい く こ とで き ま す 。 つ ま り 、 母 語 を 使 用 す る 授 業 や ブ ラ ジ ル の 文 化 を 学 ぶ 授 業 が 、 カ リ キ ュ ラ ム に 加 え ら れ た ら 、 ま た は 、 放 課 後 に 国 際 理 解 教 室 と し て 教 育 活 動 を 行 っ て い た だ け る のな ら 、 日 系ブ ラ ジ ル 人 子 女 が 抱 え る 教 育 問 題 は 解 決 す る 方 向 に 必 ず 向 か うは ず で す 。 私 の 主 張 し た い 点 は 、 現 在 の 日 本 の 教 育 は 日 本 文 化 の み を 尊 重 す る も ので 、 他 の 文 化 ( 日 系 人 を 含 む 在 日外 国 人 の文 化 、 ア イ ヌ 民 族 の文 化 な ど ) を さげ す ん でい ま す 。 さげ す む の で は な く 同 等 に 扱 い 、 カ リ キ ュ ラ ム の な か に 組 み 込 み 、 学 ぶ べ き と 考 え て い ま す 。 し かし 、 カ リ キ ュ ラ ム の 改 善 に 伴 う諸 問 題 (財 政 上 の も の、 制 度 上 の も の 、 生 徒 ・ 教 師 へ の 負 担 な ど ) が 当 然 起 こ っ て く る で し ょ う。 ま た 、 現 在 問 題 に な っ て い る 日 本 人 の 学力 低 下 とい う こ と か ら 、 日 系 ブ ラ ジ ル 人 子 女 を 優 遇 す る よ り も 、 日 本 人 に そ の 目 を 向 け る べ き だ とい う声 も で て く る と 思 い ま す 。 し か し 、 今 後 ま す ま す 外 国 人 が 日 本 に や っ て き て 定 住 す る 傾 向 が 予 想 さ れ る 今 、 何 か 大 切 な の か 考 え る 必 要 が あ る と思 い ま す 。 全 体 と し て , 問 題 状 況 の 把 握 と ロ ー ル プ レ イ に よ る 価 値 葛 藤 ( ジ レ ン マ の 体 験 ), 話 し 合 い の 中 で の 意 思 決 定 と い う 問 題 に 対 応 し た 学 習 活 動 と 問 題 解 決 の 方 法 を 取 り 入 れ た 生 徒 参 加 型 学 習 の 授 業 を 構 成 し て い る。( 台 詞 に つ い て は 紙 面 の 関 係 上 省 い て い る。) 参 加 型 学 習 の 授 業 ( シ ミ ュレ ー ショ ンや ゲ ー ム, ロ ー ル プ レ イ, デ ィ ベ ー ト な ど) で は, 自 分 の意 見 と 比 較 し て 考 え る こ と が 少 な く な る た め, 自 己 の 考 え 方 の変 容 がっ か め な か っ た り , 最 終 的 な 意 思 決 定 が 一 方 の立 場 に 偏 る 場 合 が 考 え ら れ る 。 そ こ で , 事 前 の 意 思 決 定 → シ ミ ュ レ ー シ ョ ンに よ る 意 思 決 定 → ふ り か え り 時 の 意 思 決 定 と い う よ う に

-3回 の意思 決定 の場 を設 定( 次頁 図 2) し, そ

の場面 ごとにお ける意思 決定 の変化 を体 験す るこ

とで, 公正 な判断 を下 すた めの意思 決定 のあり方

を学 ぶ ことがで きるよ うに工夫 して いる。 こ こで

は,表 6の指導過 程 の3), 6), 8)

の部分 が 3

回 の意思決 定 の場で あり, 9) の部分 が公正 な判

断を下 す ため の意思 決定 のあ り方を学 ぶ場 とな っ

てい る。

ま た, ロ ールプ レ イを して い るときの感 情を ふ

りかえ ることで,学 習者 個々 が相手 の立場 や感情

を共 感し, 共有で き るように工 夫し てあ る。 ここ

で は, 表 6の指導 過程 の10) の部分 が これに該当

す る。

事 前 の記 入 表6 指導 過程 は じ め の意 思 決 定 、 自 己 決 定 3) ↓ ロ ー ル プ レ イ 、 ラ ン キ ン グ、 議 論 表6 指導 過程 立場 性 の 体 験 、 価 値 判 断 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ る 意 思 決 定 6) ↓ ふ り か え り 表 6指導 過程 感 情 の 明 確 化 、 価 値 の 明 確 化 、 あ と の 意 思 決 定 8 ) 9 ) 図 2 学 習 過 程

Ⅳ。 終わ りに

本 論文 で は, 日系 ブ ラジル人(外 国人労 働者)

に対 す る偏見 や恐 れの克服,多 面的 な視野 の育 成

(多 文 化 社会 の ジレ ンマ 構造 の認 知) と共生 に向

けて公正 な意思 決定 が可能 な シ ミュレ ー ショ ン教

材 の開発 につ いて述 べて きた。

こ こで 本教 材の活 用実験 の結果 を付加 してお く

と, ①定 住外国 人問題 を 構造9)

的に理 解で き るか

とい う点 につ いて は, 被 験者全員 が「 相手 の考え

方 が実 感で き多 面的 な みかた がで き た」 と答え て

いる。 ま た, 問題解 決 の方 法を話 し合 いで探 って

いっ たが, ど れもすっ きりと した解決 策に なって

お らず, 被験 者 が ジレ ンマ構造 を体 験し, 理 解で

き たと考え る。 以上 の ことか ら, 定住 外国人 問題

を構造 的 に理 解 しやすい 構成で あ ったこ とが明 ら

か となっ た。 次 に, ②学 習者 が意欲的 に参加 で き

た かとい う点 で は, 思考 レ ベルにお いて,説 明 資

60 −

(9)

料の改善の余地かおる

とい

う課題が明らかとなっ

たが

,十分な成果が得

られた

。③公正な判断力の

育成という点については

,匚

自分の考え方や見方

が狭

くそれ

を改める必要を感

じた

」と7名中4名

が答

えていることか

,一定の成果が得

られ

,教

材の構成

内容

,授業の展開方法が有効

であった

とが明らかになった

こで

,シ

ミュ

レー

ョン教材匚

望が丘

団地」

の活用意義に

ついて

,次の3点を指摘

できる。①

生徒の

主体的な活動

・思考

を促進できる

点。②

会的事象の

関連

・構造

を理解できるとともに

,人

間の行為における理解もできる点

。③客観性の

る批判力が育つとともに公正な判断を下

しうる能

力を養

ことができる点。

今後の課題

しては

,以下の

3点てある。①シ

ミュ

ョン教材匚

希望が丘団地」の構成にお

いて

,学習者の実態や思考

レベルに合致

した説明

資料の修正

・改

良を行

う。②シ

ミュ

レーシ

ョン教

「希望が丘

団地

」を大単元

「多文化共生のまち

づくり

」の

一小単元に位置づけ,大単元の

全体構

想の作成

を行

。③学習評価に

どの

ように結びつ

けていくのか

よいか

を考える。

[注]

1)今津

孝次

「多文化

共生の

ちづ

りに

けて基

調

www.

educa.nagoya-u.ac.

jp

/

soci/member/imazu

/

tabunka/teian

.html, 2004

2)

山口幸

男編

『新シ

ミュ

ョン教

材の

開発

と実

今書

院,

1999

年.

P-24

3)藤

原孝

『外

人労働

問題

う教

える

か』

店,

1994

4)高橋

「日系

ブラ

ジル

人か

ら考

える外

国人

労働

」藤

原孝章

『外

人労働

問題

多文化教

育』

店,

1995

年,

pp.15-117

5)藤

原孝

「多文

・共

生の

レン

マ 

ミュ

レー

ョン

教材

「ひ

うたん

問題

」の

を中心

に」

帝塚

山学院

学国際

理解

究所

「国際

理解

」29

1998

年,

pp.

109-123

原孝

「グ

バル

育に

おけ

多文化

学習の授

方略 

レー

ョン

教材

「ひ

うた

ん島

を事例

して

」全

国社会

科教

学会

『社

科研

究』

― 61

47

号,

1997

年,

pp.41-50

6)豊

影響

田市匚

調査

」豊

内産

田市,

業及び

2001

域社会

り筆

者が

ける

要約

国際

してい

化親

7)梶

田孝

『統

と分

裂の

ヨー

ロッパ』

波新書

1993

年,

p.160

8)

同上,

p.l55-1620

原孝

章匚

育に

ける

多文

化学習の授

業方略」全

国社会科教

育学会

『社

究』47

号,

1997

年,

P-42

り筆

作成

9)

ここで

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表 4  共 生 を め ぐ る 対 立 と 和 合 の類 型 人 種 主 義 ・ 自 民 族 中 心 主 義 普 遍 志 向 個 人 主 義 平 等 志 向 [I]人 種 主 義 I 自 民 族 中 心 の 普遍 主 義 で 、 マ ジ ョリ テ ィ へ 、 同 化 を要 求 す る 。 [H]人 種 主 義 H マ ジ ョ リ テ ィ と マイ ノリ テ ィ の 異 質性 を 強 調 し 、 排除 ・ 隔 離 の論 理 にた ち 、 マ ジ ョ リ ティ へ の 同 化 を 拒 否す る 。 差異志向共

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