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“あがり”症状パターンごとにみられるパフォーマンス低下機序の特徴 : 競技不振に陥る学生アスリートの理解に向けて

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Academic year: 2021

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(1)Title. “あがり”症状パターンごとにみられるパフォーマンス低下機序の特徴 : 競技不振に陥る学生アスリートの理解に向けて. Author(s). 小谷, 克彦; 渡辺, 聖人. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 67(2): 285-296. Issue Date. 2017-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/8191. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第67巻 第₂号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 67, No.2. 平 成 29 年 ₂ 月 February, 2017. “あがり”症状パターンごとにみられるパフォーマンス低下機序の特徴 ― 競技不振に陥る学生アスリートの理解に向けて ―. 小谷 克彦・渡辺 聖人* 北海道教育大学旭川校体育心理学研究室 *. 帯広畜産大学. The relationship between mechanisms of sport performance degradation and symptom patterns of stage fright in college athlete: To understand college athlete falling into slump KOTANI Katsuhiko and WATANABE Shoto* Department of Sport & Exercise Psychology, Asahikawa Campus, Hokkaido University of Education *. Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine. 概 要 本研究の目的は,競技不振に陥る学生アスリートの身体体験とその背景にある内的体験との 関連を明らかにすることであった。そのために,本研究では競技不振の一つである“あがり” に焦点を当て,運動・心理・生理の3観点から“あがり”の症状パターンを同定し,各パター ンにみられるパフォーマンスの低下機序の特徴を検討した。大学において体育会系部活動に所 属している76名に質問紙調査を実施し,そのうち21名に最悪なパフォーマンス時に関するクラ スタリングの作成を行った。その結果,“あがり”の症状パターンとして,『高あがり型』『非 あがり型』 『生理あがり型』 『心理あがり型』 『運動あがり型』の5つが認められた。さらに, “あ がり” 症状パターンごとのクラスタリング作品からパフォーマンスの低下機序を検討した結果, 運動・心理・生理のどの側面で症状を感じやすいかによって競技不振に伴うアスリートの内的 体験が異なることが認められた。特に,「あきらめる」ことに関して,単に勝負から逃げてい るのではなく,自身の身体・心を守るための対応であるといった可能性を考慮する必要がある。 キーワード:競技不振,身体体験,内的体験,パフォーマンス低下機序. 285.

(3) 小谷 克彦・渡辺 聖人. Ⅰ.はじめに. デルを考案し,“あがり”によってパフォーマン スが低下するプロセスを明らかにしている。この. 競技場面において, 「できるはずなのにできな. モデルによると,“あがり”におけるパフォーマ. い」といった競技不振を経験しているアスリート. ンスの低下は,“知覚・運動制御の変化”,“安全. は少なくないだろう。こういった競技不振に対し. 性重視方略”,“身体的疲労”によって生じること. て,まず誤動作の修正・改善を試みるものの,症. が示され,“あがり”症状はパフォーマンスの低. 状の改善が認められない場合がある。こういった. 下によって,さらに促進されるという循環的特質. 場合,心理的側面に原因を求めることが多く,そ. を有することを明らかにしている。そして,パ. の原因解明に向けて様々な研究が行われてきてい. フォーマンスの低下に至るまでの“あがり”発現. る。しかしながら,これまでの先行研究の知見で. の症状や機序については個々によって違い,様々. は, 「できるはずなのにできない」といったアス. な体験があることも指摘している。村山ら(2009). リートの競技不振の理解に迫れているとは言いが. の指摘は,パフォーマンス低下機序の多様性を示. たい。その理由の一つとしては,様々である競技. しており,アスリートの理解に迫りうる知見とな. 不振の症状を一括りにして検討しているためであ. るが,具体的な症状については明示していない。. ると考えられる。例えば,“あがり”といった症. 一方, “あがり”と関連の深い性格特性として,. 状に対して, “あがり”という一言でまとめて,. 神経症傾向(有光,1999;麓・成田,1984)やシャ. その程度の差を検討している研究が多い。 “あが. イネスの高さ(有光,1999),自意識の高さ(有光,. り”でもその身体体験はアスリートによって様々. 1999;Wang et al., 2004),ならびに特性不安の. である。このような身体体験の多様性について,. 高さ(橋本・徳永,2000)がこれまでの研究にお. 中込(2013)は「パフォーマンス発揮に問題を抱. いて指摘されている。また,“あがり”の発現症. えた状況(競技不振)は,『自分が望んでいるパ. 状やメカニズムの多様性に着目し,アスリート自. フォーマンス』に届かず,それは十分に自分を表. 身が“あがり”の原因として帰属する認知(原因. 現できない内的体験ともなっている」と指摘して. 帰属)との関連を検討した研究もなされている。. いる。つまり, 競技不振に伴う様々な身体体験は,. 金本ら(2002)は,失敗不安,他者への意識,準. アスリートが内面で抱えている問題を代弁してい. 備不足感,性格の弱さ,責任感,状況の新奇性の. るとも考えられる。したがって,競技不振を抱え. 6つをあげ,その中で責任感,失敗不安,状況の. るアスリートに迫るためには,症状を一括りにす. 新奇性が中核になることを明らかにしている。さ. るのではなく,その症状の多様性に着目し,それ. らに,木村ら(2008)は,“あがり”の原因帰属. ぞれの症状の背景(内的体験)との関連から現象. と関係の深い性格特性として情緒安定性と外向性. を理解する必要がある。. を見出し,それらの特性から受ける“あがり”の. そこで本研究では,競技不振の一つである“あ. 原因帰属として,失敗不安,他者への意識,性格. がり”によるパフォーマンスの低下に焦点を当て. の弱さがあることを明らかにしている。これらの. る。競技場面において,「緊張して体がうまく動. 性格特性や原因帰属の特徴は,アスリートが内面. かなかった」 「頭が真っ白になってしまった」「心. で抱えている問題を捉える一つの観点であると考. 臓がドキドキした」といったいわゆる“あがり”. えられるが,“あがり”の多様な症状との関連は. によって実力を発揮できなかった経験をしたアス. 検討されておらず,アスリートの理解に迫れてい. リートは少なくないだろう。先行研究においても. るとは言いがたい。“あがり”の種々の症状を,. これまでに競技場面における“あがり”に関して. アスリートが内面で抱えている問題と捉えるなら. は,様々な観点から研究が進められてきている。. ば,“あがり”の症状に注目し,それぞれの症状. 特に,村山ら(2009)は,あがりの発現構造モ. とその背景にある特徴との関係を明らかにする必. 286.

(4) “あがり”症状パターンごとにみられるパフォーマンス低下機序の特徴. 要がある。. すさ”の程度,そして市村(1986)が作成した“あ. “あがり”症状に関して,心理面・生理面・行. がり”症状に関する49の質問項目からなる質問紙. 動面といった3側面に焦点を当てて研究がなされ. 調査を実施した。市村(1986)は“あがり”の症. てきた。まず,心理面に関しては,不安感情の増. 状を,運動,心理,生理Ⅰ,生理Ⅱの4因子に分. 加や注意の変化,自我機能の混乱,自己不全感な. 類しているが,本研究では,生理Ⅰ(交換神経の. ど が 挙 げ ら れ て い る( 田 中・ 関 谷,2006;. 興奮)と生理Ⅱ(副交感神経の興奮)を合わせて. Baumeister, 1984; 市 村,1965; 有 光・ 今 田,. 「生理」とし,運動,心理を合わせて3つの観点. 1999) 。次に生理面に関しては,心拍数の増加,. で検討することにした。. 交感神経系の亢進が指摘されている(村山ほか,. その後,質問紙調査のデータを基に,クラスター. 2007;市村,1965)。そして,行動面では,運動. 分析を行い,そこで同定されたパターンごとに対. 変位の縮小や運動遂行時間の増加,運動変位の変. 象者(21名)を抽出し,「今までの試合の中で最. 動性の増加あるいは減少が報告されている(村山. も悪かったパフォーマンス」をテーマにクラスタ. ほ か,2007;Beuter & Duda, 1985; 田 中・ 関. リングを実施した。クラスタリング作業は以下の. 谷,2006) 。つまり,“あがり”の初期症状は,心. 通りである。①最も悪かったパフォーマンス当時. 理面・生理面・行動面のいずれかから発現してい. を想起する。②想起した内容を思いつくままに付. ると思える。市村(1986)は,生理・心理・運動. 箋に記入する。③記入した付箋を,共通性・順序. という観点から“あがり”の症状について明らか. 性・階層性などを考慮して,台紙に貼り付け,そ. にし, 質問紙を作成している。そこで本研究では,. れぞれの付箋を矢印や線で結ぶ。④最も悪かった. 市村(1986)が作成した質問紙を基に,多様な“あ. パフォーマンス当時の状況を短い文章(800字程. がり”の症状を捉えることを試みる。. 度)でまとめる。. 本研究では,競技不振に陥る学生アスリートの 体験に迫るために,競技不振の身体体験とその背. 3.分析方法:質問紙調査の“あがり”症状に関. 景にある内的体験との関連を明らかにすることを. する49項目のデータを基に76名をケースとして,. 目的とする。そこで,本研究では,競技不振の一. クラスター分析(K-means法)を実施し, “あがり”. つである“あがり”に焦点を当て,市村(1986). の症状パターンの分類を行った。次に,同定され. の用いた心理・生理・運動の3つの観点から“あ. たパターンごとに対象者を抽出し行ったクラスタ. がり”症状のパターンを同定し,各パターンにみ. リングでは,作成されたクラスタリングを本研究. られるパフォーマンスの低下機序の特徴を明らか. 者らが各付箋の内容をカテゴリーにまとめた。そ. にすることから,身体体験と内的体験の関連を検. の後,クラスタリング作品と対象者が記述した「最. 討する。. も悪かったパフォーマンス当時の状況」を参考に して事例を作成し,“あがり”症状の背景の検討. Ⅱ.方 法 1.調査対象者:大学において体育会系部活動に 所属している学生を対象に質問紙調査(76名:男. を試みた。. Ⅲ.結 果. 性41名,女性35名。平均年齢:20.4歳)とクラス. 1.“あがり”の症状パターンの分類. タリング(21名:男性8名,女性13名)を実施し. 質問紙調査のデータをもとに,“あがり”症状. た。. パターンの分類を行った。分類にあたっては, “あ がり”症状に関する質問項目における4因子のう. 2.調査内容: “あがり”経験の有無,“あがりや. ち,生理Ⅰと生理Ⅱを合わせて“生理”とした。. 287.

(5) 小谷 克彦・渡辺 聖人. 表1 各あがり症状パターンにおける各因子の平均点と標準偏差 あがり症状パターン C-1 (N=6). C-2 (N=23). C-3(N=15). C-4(N=13). C-5(N=19). 高あがり型. 非あがり型. 生理あがり型. 心理あがり型. 運動あがり型. 生 理. 1.12. (0.68). -0.97. (0.41). 1.35. (0.45). 0.14. (0.56). -0.34. (0.45). 心 理. 1.72. (0.21). -1.01. (0.55). 0.67. (0.53). 0.85. (0.36). -0.42. (0.34). 運 動. 1.84. (0.20). -1.13. (0.27). 0.89. (0.59). 0.17. (0.40). -0.05. (0.44). そしてこの3因子を変数とし,各因子を構成する. C-1『高あがり型』. 項目の合計得点を標準化し修正された標準得点を. 事例A:5月の試合だったのですが,2月に手術. もとに,分析対象者となった76名をケースとする. を伴うケガをし,入院・通院生活が長く,練習. クラスター分析(K-means法)を行った。本研. もほとんどできず,また精神的にもかなり落ち. 究におけるクラスター分析の目的は,上述の3つ. 込んでいたため,試合にむけて身体的にも精神. の因子を手がかりとして,大学アスリートにおけ. 的にも追い込むことができなかった。当日には,. る“あがり”症状パターンを分類することと,そ. 応援してくれている周囲の人(チームメイト,. れぞれのパターンの特徴を考察することである。. 親,先生 etc)に,『ケガ明けだから,無理す. クラスター分析による“あがり”症状のパター. るな』と言われたこともあり,精神的に安心し. ン数の決定にあたり,クラスター数を3から5の. てしまったことで闘争心が欠けていた。対戦相. 範囲で試行したところ,5を指定した場合に最も. 手に日本一になった選手がいたが,絶対に勝て. 解釈可能な結果が得られたため,本研究では5つ. ないと思って,来年勝てれば良いという考え方. のクラスターを抽出した結果を採用した。抽出し. になってしまったのも良くなかったと思う。. たクラスターは『高あがり型』 (C-1) , 『非あが.  試合開始までかなり緊張していた。しかし最. り型』 (C-2) ,『生理あがり型』 (C-3) , 『心理あ. 初のプレイがあまりにも悪かったので,あきら. がり型』 (C-4) , 『運動あがり型』(C-5)である。. めの気持ちが生まれ,あとの時間を適当に流し. 同定された“あがり”症状パターンごとの各因子. てしまった。試合には,装具をつけて臨んだが,. における標準得点の平均値,標準偏差を表1に,. 他の学校の友達や先生に装具やケガのことにつ. 同定された“あがり”症状パターンの概略を表2. いて聞かれるたび,少しずつ嫌な気持ちになっ. に示す。それぞれの詳細については次章にて説明. てきて,試合中は周りの視線が気になってし. する。. まっていた。. 2.クラスタリングの検討. C-2『非あがり型』. クラスター分析によって得られた5つのクラス. 事例B:大会の1ヶ月前にねんざをした。走れる. ターをもとに,それぞれの対象者のクラスタリン. ようになったのが大会の2週間前で,体力や技. グ作品および事例の作成を行い, “あがり”時に. 術,スピードが低下してしまい不安になってい. みられるアスリートの体験の検討を行った。ここ. た。大会当日は,ケガをした部分が気になって. では,特徴的であった6事例を提示する。また,. しまい,集中ができていなかった。また,勝敗. クラスタリング作品例は,事例Dの作品のみを提. に拘らず,とりあえずやりきれれば良いと思っ. 示する(図1) 。. ていたため,明確な目標がなかった。思うよう に体が動かず, いつもできる動作ができなかった。. 288.

(6) “あがり”症状パターンごとにみられるパフォーマンス低下機序の特徴. 表2 各あがり症状パターンにおける各因子の得点プロフィールおよびあがり症状の特徴 あがり症状パターン. 得点プロフィール 1.5. C-1. 高あがり型 (N=6). 特 徴 心理・運動が最も高く,生理も高い得点である。 あがりを非常に感じやすく,いつもあがりを感じ る者もいる。さまざまなあがり症状が発現しやす いパターンである。. 0.5 -0.5 -1.5. 生理. 心理. 運動. 1.5. C-2. 非あがり型 (N=23). 生理・心理・運動全ての得点が5群のなかで最も 低い。今までの経験で,あがりをほとんど感じた ことがないパターンである。. 0.5 -0.5 -1.5. 生理. 心理. 運動. 1.5. C-3. 生理あがり型 (N=15). 生理が最も高く,運動もC-1に次いで高い。生理 的あがりを感じやすく,のどの渇きや,胸のドキ ドキなどを感じやすいパターンである。. 0.5 -0.5 -1.5. 生理. 心理. 運動. 1.5. C-4. 心理あがり型 (N=13). 心理の得点がC-1に次いで高い。心理的あがりを 感じやすく,まわりが強そうに見えたりなど,不 安を感じやすいパターンである。. 0.5 -0.5 -1.5. 生理. 心理. 運動. 1.5. C-5. 運動あがり型 (N=19). 全項目比較的低い得点である。あがりを割りと感 じにくいが,あがると力が入りすぎたり,身体が 思うように動かなくなってしまうことがあるパ ターンである。. 0.5 -0.5 -1.5. 生理. 試合前に疲れていた. 心理. 運動. 設定したペースより少しでも落ちていると気付い たら一気に落ちた. レースの最初から 諦めていた. レース前に食べたり飲んだ りしすぎた. 最後に出し切ろうと,最初抑 えたらできなかった 当日は適温だった. 先頭で引っ張ってくれるチームメ イトについていけなかった. 高校3年 高体連地区大会. 3つレースがあって,1つ目の 予選で疲れ切っていた アップに全力を注いで身体がレー ス中に動かなかった. 人一倍緊張していた 緊張していた. 後輩から種目を奪ってまで3種目でた が,1つも結果がでなかった. 落ち着きがなかった. 試合前日の練習で疲れしかなかった 冬の練習で長い距離の対策をあ まりしていなかった. 他人のレースを覚えてない 試合1週間前に追い込みを始めた. 図1 事例Dのクラスタリング作品. 289.

(7) 小谷 克彦・渡辺 聖人. 事例C:練習不足であり,全国とのレベルの差を. ルに忘れ物をして,先生に取りに戻ってもらう. 感じていたため,自信を持つことができなかっ. というハプニングがあり,そのあせった気持ち,. た。気持ちもすべてマイナスに考えてしまい,. 落ち着かない気持ち,自己嫌悪感を持ったまま. 失敗イメージばかり頭に浮かんでしまい,気持. 試合に入ってしまった。競技では,中学の時と. ちも落ちていた。まわりの状況としては,みん. は雰囲気が違っていて,みんな強そうに見えた。. なが強く見えてしまい,自信にみちあふれてい. 友達がいたのでお互いに励まし合って競技に臨. て『No. 1は私だ』という雰囲気が一人一人の. んだ。結果,動揺していたこともあってか,雰. 選手からでていた。自分は周りの選手と反対. 囲気にのまれてしまい自分の力を発揮できずに. だった。自分ですでにあきらめていたし,消極. 負けてしまった。試合では,ここでやらなけれ. 的であった。競技をしていても楽しいと感じる. ばと思う反面,もう無理かも・・・とも思って. ことができない。全国の雰囲気にのまれてしま. しまった。絶対大丈夫だと思っていただけに,. い,自分のパフォーマンスができてなかった。. 悔しくてたまらなかった。プレイ中は手が震え た。心臓がうるさかった。. C-3『生理あがり型』 事例D:練習で追い込む時期に調子が悪かったの. C-4『心理あがり型』. で,追い込む時期を先延ばしにしまくっていた. 事例F:大学に入学してから初めての試合で不安. ら, 1週間前になり,慌てて追い込みを始めて,. でした。高校のシーズンが終わってから練習は. 前日までみっちり練習をしていたら当日はアッ. していたが,気持ちが入らず,ただやっている. プの時点で体がめちゃくちゃ重かった。しかし,. だけの練習になっていた。その間に,どんどん. そんなことも言っていられないので,そこでも. 体重も増えていき,体が思うように動かなくな. 全力で走っていたら試合前には疲労感だらけ. りました。大学入学後も,環境の変化などに戸. だった。しかも,もともと多くの試合を3日間. 惑い,生活のリズムも崩れていった。生活に慣. でこなすことができない体力だったのに,3試. れようとし必死だったため,競技に対する気持. 合も出たので,3試合目の時点で体力が底をつ. ちも少し薄れていきました。そのためインカレ. きた。そうして3日間,最初からあきらめたり,. の時は,集中力も緊張感も中途半端でした。ど. おさえたまま終わったり,相手についていけな. の試合もプレイが安定せず,恥ずかしい気持ち. いで試合が終わった。追い込みの時期も遅かっ. になった。練習もしっかりせず,気持ちも入り. たせいか,緊張もかなりしていた。自分のペー. きらなかったので,この大会が一番よくなかっ. スというよりも,相手より先にやらなきゃとい. た試合だった。. う気持ちですぐに力尽きた試合もあった。1週 間前の練習内容で緊張したり,疲れていたりし. C-5『運動あがり型』. ていたせいで散々な試合だった。. 事例G:高校2年生の夏から肘が痛くて3年生に. 事例E:高校に入って初めてのインターハイだっ. なって悪化し,投げ込みはもちろん,投げるこ. た。 全国大会は中学から出ていたので,インター. とすらあまりできない状態だった。インターハ. ハイでもできると思っていた。その年はチーム. イ当日,予選はギリギリ通過したが,決勝では. メイトに強い選手がいて,総合優勝できるので. 投げ込みができなかったから,全然投げられな. はないかと言われていたし,自分たちでも意識. かった。決勝に残ったのがチームの中で1人. していたので,自分の結果も大きく関わってく. だったので,歴代の先輩方が毎年1人は入賞し. ると思っていた。当日は,緊張と興奮が入り混. ていて,その記録を止めてはいけないというプ. じったような気持ちだった。緊張からか,ホテ. レッシャーがあって,そのことを考えすぎてし. 290.

(8) “あがり”症状パターンごとにみられるパフォーマンス低下機序の特徴. まった。助走のスピードはあったけど,最後の. と言える。心理面・運動面でも“あがり”の症状. 局面にはいってから投げるまでの際に,スピー. を感じるが,その中でものどの渇き,呼吸の乱れ,. ドが止まってしまっていた。体が後ろに残って. 胸のドキドキなどの生理的な側面で“あがり”を. しまい,最後まで押しきれなかった。勝ちたい. 最も感じやすいと考えられる。. という気持ちが強く,そればかり気になってし. ④『心理あがり型』(C-4)の特徴は,心理の. まい,リラックスできなかった部分があった。. 得点が①『高あがり型』に次いで高い値を示して. 試合日まで待っているときにもっとリラックス. いることである。このタイプは,「まわりの人が. して過ごせていたらよかった。. 強そうにみえる」,「気がそわそわする」,「不安を 感じる」などの心理的な側面で感じやすい傾向が. Ⅳ.考 察. あると言える。 ⑤『運動あがり型』(C-5)の特徴は,生理・. 1. “あがり”症状パターンの特徴. 心理・運動のいずれにおいても比較的低い得点を. 本研究では, “あがり”症状の質的差異を心理・. 示していることである。このタイプは, “あがり”. 運動・生理といった3側面の症状によって分類し. を感じることはあまり多くないが,あがってしま. た結果,5つの“あがり”症状パターンが認めら. うと,力が入りすぎてしまったり,身体が思うよ. れ,それぞれを①『高あがり型』 (C-1) ,②『非. うに動かなくなったりしてしまうなど,運動に関. あがり型』 (C-2) ,③『生理あがり型』 (C-3),. する側面で“あがり”が発現すると言える。. ④ 『心理あがり型』 (C-4),⑤『運動あがり型』 (C-5). . と命名した。以下,各型の特徴である。. 2.各症状パターンのパフォーマンス低下の特徴. ①『高あがり型』(C-1)の特徴は,心理・運. 各“あがり”症状パターンにおけるアスリート. 動が5群の中で最も高く,そして,生理において. のパフォーマンス低下機序の特徴をアスリートが. も他の型に比べて高い得点を示していることであ. 作成したクラスタリングと事例から明らかにする. る。このタイプは,“あがり”を非常に感じやす. ことを試みた。それぞれの“あがり”症状パター. いだけでなく,生理・心理・運動と様々な側面で. ンにおけるクラスタリングのカテゴリー図は,図. “あがり” を感じやすいと言える。その感じ方も,. 2から図6の通りである。以下,各“あがり”症. 生理・心理・運動の様々な症状が同時または連鎖. 状パターンに認められた特徴である。. 的に発現してしまうと考えられる。①『高あがり. ①『高あがり型』 (C-1)は, 「動きへの不安」 「動. 型』は,後述する③『生理あがり型』 ,④『心理. きの不安定さ」「状況の変化」「極端な精神状態」. あがり型』 ,⑤『運動あがり型』のそれぞれの特. 「あきらめ・気持ちの低下」というカテゴリーを. 徴を持つ複雑な症状であると言える。. 得た(図2)。事例Aでのパフォーマンス低下機. ②『非あがり型』 (C-2)の特徴は,生理・心理・. 序は,怪我や絶対に勝てない対戦相手であること. 運動の全ての項目において,5群の中で最も低い. などから,ネガティブ感情や知覚・運動制御の変. 得点を示していることである。このタイプは, “あ がり”を感じにくい群であると言え, “あがり” とは別の要因でパフォーマンスが低下すると考え. あきらめ 気持ちの低下. 動きへの不安. 動きの不安定さ. られる。 ③『生理あがり型』 (C-3)の特徴は,生理の 得点が5群の中で最も高いこと,そして運動が① 『高あがり型』に次いで高い得点を示しているこ とである。このタイプも“あがり”を感じやすい. パフォーマンスの低下. 極端な精神状態. 状況の変化. 図2 高あがり型のカテゴリー図. 291.

(9) 小谷 克彦・渡辺 聖人. 化が読み取れ,極端な緊張状態(緊張したりしな. れ,そこから運動制御の変化が起こり,パフォー. かったりするなど)や生理的覚醒水準の上昇が相. マンスが低下してしまった。この事例での状況と. 互に連関した結果であると考えられる。さらに,. しては,「初めて出場した全国大会」であったこ. この型はクラスターの得点プロフィールからもわ. とから考えると,あがらない群である②『非あが. かるように,非常にあがりやすく,様々な症状を. り型』においても,初めての場や全国大会など新. 発現しやすい。そのため,これら様々な症状を自. 奇性の高い状況において“あがり”症状が発現す. 己のなかで抑えきれず,その結果として「あきら. る可能性が考えられる。. め」という気持ちが生まれてしまうのではないか. ③『生理あがり型』(C-3)においては,3つ. と考えられる。このように①『高あがり型』にお. のパフォーマンス低下のパターンがみられた(図. いては,元々のあがりやすさも加え,様々な症状. 4)。1つ目のパターンは,「油断」というカテゴ. が発現した際に,それらを抑えきることができず. リーが共通している。競技前には,「勝てる気が. に崩れてしまい,それを強制的に抑えるために「あ. する」,「予選では落ちないだろう」などの油断を. きらめる」ことによって,パフォーマンスが低下. しているがために,本番になるとプレッシャーを. してしまうという特徴を持つことが考えられる。. 感じたり,相手を過度に意識してしまったりする. ②『非あがり型』 (C-2)において特徴的であっ. ことで,生理的覚醒水準が上昇し,動きが重く(運. たのは, 「怪我」のカテゴリーが多く含まれてい. 動制御の変化)なり,パフォーマンスが低下して. たことである(図3)。この型はクラスターの得. しまうパターンである。. 点プロフィールをみると,生理・心理・運動の全 ての項目において最も低いという特徴を持ち, “あ. 不可解な動き. がり”をほとんど感じることがない。そのため, クラスタリングによる最悪な試合の想起において は,ケガをしてしまった試合や,怪我が気になっ. あきらめ. パフォーマンスの低下. てしまって十分にパフォーマンスを発揮できな かった試合が多いと考えられる。具体的には,怪 我をした部分が気になって,またはかばうことに よって,全体の動きが不安定になってしまうこと. 疲 労. 不 安. 図4 生理あがり型のカテゴリー図. で,良いパフォーマンスに結びつかないケースで あると考えられる。. 2つ目のパターンは,「疲れ」「あきらめ」 「プ レッシャー」のカテゴリーが共通している。この 気持ちの低下. 怪 我. パターンでは,試合前から体のだるさなどの身体 的疲労を感じることで,改めてプレッシャーを感 じ,さらに動きの重さ(運動制御の変化)や身体. パフォーマンスの低下. 的疲労を感じるという悪循環を生じ,その悪循環 不 安. 図3 非あがり型のカテゴリー図. から抜け出すことができなくなり,あきらめの気 持ちが芽生え,パフォーマンスの低下が導かれて いると考えられる。 3つ目のパターンは,「動きの重さ・固さ」に. しかし, ②『非あがり型』においても“あがり”. 特徴がみられた。このパターンでは,動きが固い. を感じた事例(事例C)があった。事例Cでは,. という症状がはじめに現れ,それによるプレッ. 生理的覚醒水準の上昇やネガティブ感情がみら. シャーがさらなる動きの重さ・固さ(運動制御の. 292.

(10) “あがり”症状パターンごとにみられるパフォーマンス低下機序の特徴. 変化)を誘発し,パフォーマンスの低下が導かれ. てしまったり,不安感情を高めたりするが,それ. ると考えられる。. だけでなく動きの重さや固さ(運動制御の変化). さらに,③『生理あがり型』で特徴であったの. に過度に焦点が当てられるのが特徴的である。動. は, 「あきらめ」というカテゴリーである。「あき. きが固いといった動きから症状が現れ,そしてそ. らめ」は『高あがり型』にもみられた。この「あ. こに気づくことでさらにプレッシャーを感じ,さ. きらめ」に関する考察は後述する。. らなる動きの重さ・固さを誘発し,パフォーマン. ④『心理あがり型』 (C-4)は, 「環境の変化」 「モ. スの低下に繋がっていると言える。. チベーションの低さ」「動きの不安定さ」「身体の 変化」という共通カテゴリーがみられた(図5)。. 3.競技不振とその背景にある内的体験との関連. このパターンは,心理的な“あがり”を特性的に. 競技不振に陥る学生アスリートの体験に迫るた. 感じやすく,僅かな環境の変化に対しても,不安. めに,様々な“あがり”症状が代弁していると思. などのネガティブな感情を抱きやすいため,順応. われるアスリートの内的体験に焦点を当てて検討. していない環境下ではモチベーションが低下しや. する。. すい。その結果,集中力や緊張感の欠如により,. ④『心理あがり型』は,環境の変化が“あがり”. 動きが不安定(運動制御の変化)になり,パフォー. 症状のきっかけとなっている。つまり,心理的側. マンスの低下に繋がっていると考えられる。. 面で“あがり”を抱きやすい者は,僅かな環境の 変化に対して敏感であり,さらに環境の変化に適. 身体の変化. 動きの不安定さ. 応できないことが,結果として競技不振をもたら していると言える。環境の変化に適応できない背 景には,神経症傾向やシャイネスの高さといった. パフォーマンスの低下. 性格特性(有光,1999)に加え,“あがり”の原 因を他者に帰属する(村山ら,2008)といったこ. モチベーショ ンの低さ. 環境の変化. とが関係していると考えられる。つまり,心理的 側面で“あがり”を抱きやすい者は,自身の情緒. 図5 心理あがり型のカテゴリー図. の不安定さを環境や他者といった外的状況とのつ ながりで補完しようと試みているのかもしれな. ⑤『運動あがり型』 (C-5)は, 「周囲への意識」. い。そしてその結果,外的な状況に過度に注意が. 「動きへの不安」「動きの崩れ」「プレッシャー」. 向いてしまい,課題遂行に必要な処理資源が奪わ. という共通カテゴリーがみられた(図6)。この. れるという処理資源不足(Eysenck, 1979)に陥っ. パターンは,対戦する相手に勝ちたい・勝たなけ. てしまっていると考えられる。. ればという意識が働きすぎてプレッシャーを感じ. ⑤『運動あがり型』は,動きの重さ・固さがきっ かけとなっているだけでなく,さらに動きの重. 周囲への意識. さ・固さへの意識に留まり,さらなる動きの不全 動きへの不安. 感を導いてしまっている。まさに意識的処理仮説 (Willingham, 1998)で指摘されているように, 自身の身体を過剰に意識するあまりに,これまで. パフォーマンスの低下. 自動化されていたスキルの脱自動化が起こり,そ プレッシャー. 動きの崩れ. 図6 運動あがり型のカテゴリー図. の結果,競技不振をもたらしていると言える。つ まり,運動的側面で“あがり”を感じやすい者は, 自身の身体への信頼感が高く,“あがり”はその. 293.

(11) 小谷 克彦・渡辺 聖人. 信頼が裏切られた結果,もしくは身体とのつなが. が不可能だと心からわかり絶望や無力感に陥った. りが切れた結果であるかもしれない。ただ,これ. りする中で,その苦い感傷を抱きつつも折り合い. ほどまでに自身の身体に執着する背景には何があ. をつけようとしている状態である。つまり,現実. るのか。有光(1999)が指摘している自意識の高. から回避するための「あきらめ」と受容に向かう. さといった性格特性が関係しているかもしれない. 「あきらめ」があるということである。このよう. が,この疑問について本研究のデータでは言及す. に考えると,本研究での“あがり”を体験したア. ることができない。しかしながら,運動的側面で. スリートが抱いた「あきらめる」はどちらのあき. “あがり”を抱きやすい者が自身の身体体験に執. らめであるのだろうか。後者の受容に向かう「あ. 着するということは,言い換えると,自身の身体. きらめ」であるならば,様々なことを良い意味で. 体験以外に安心できる柱や基盤となるものを築け. 吹っ切れ,現状を受容することでパフォーマンス. ていないということなのかもしれない。この点も. が下がることはないのかもしれない。そう考える. 推測にすぎないため,今後,身体体験に執着する. と,“あがり”の背景に生じる「あきらめ」は,. 背景について検討する必要がある。. 対象と離れるためのもがきであるのかもしれな. ③『生理あがり型』は,“あがり”のきっかけ. い。北山(2001)は, “あきらめた”と言う人は“あ. が油断や疲れ,そして動きの重さ・固さといった. きらめていない”し,“あきらめないぞ”という. ように様々である。しかしながら,生理的側面で. 人も半分“あきらめている”こと,半分あきらめ. “あがり”を抱きやすい者の特徴として, 「あき. 半分あきらめていないという“半分あきらめ”が. らめる」ことの多さがあげられる。生理的側面で. あることを指摘している。そして,「あきらめ」. の“あがり”は心理的側面や運動的側面と比べ,. に肯定的感情・否定的感情といった相反する感情. 対応が難しい。つまり,呼吸の乱れや胸のドキド. が存在することに注目した大橋(2009)は,心境. キ,さらには疲れなどの生理的側面での症状は意. として肯定的感情のみが残っている場合は,“あ. 識的に制御することが難しいからである。さらに,. きらめることができた”状態と考えることができ,. これらの生理的側面での症状がさらに高まると身. 一方,否定的感情のみであれば,“あきらめきれ. 体に異常をきたす場合がある。そこで,生理的側. ていない”状態と考えることができると指摘して. 面で“あがり”を感じやすい者は, 「あきらめる」. いる。このような考え方に基づくと,“あがり”. ことで,生理的症状がさらに高まることを抑えて. の背景で生じる「あきらめる」はおそらく“あき. いるのかもしれない。つまり,自身の身体を守る. らめきれていない”の「あきらめる」である可能. ために「あきらめる」気持ちが生じているという. 性も考えられる。つまり,意識的には「あきらめ. ことである。スポーツ場面では“あきらめるな!”. た」と表現してはいるが,無意識ではあきらめる. という言葉をよく聞くことがある。この際の「あ. ことができず,もがいている状態であり,生理的. きらめる」という言葉については,望ましくない. な症状はそのもがきのメッセージ,もしくは無意. ことといった意味合いで用いられていることが多. 識からの反抗ではないだろうか。つまり,アスリー. い。しかし, 身体を守るという観点をふまえると,. トの本心を守るためのメッセージを生理的症状と. 「あきらめる」には肯定的な意味合いも持ってい. して表しているのではないかと考えられる。ス. ると考えられる。. ポーツ場面において「あきらめる」という表現は,. 大橋(2008)は,「あきらめる」に関して2つ. 否定的な意味合いでとられてしまうことが多い。. の様相があると指摘している。一つは,怒り,恨. しかしながら,身体を守るメッセージ,本心を守. み,悩み,放棄,挫折,徒労,敗北の感情,内省. るメッセージという意味合いを含めると,アス. しないなどが出現している状態(対象と離れるた. リートの表す「あきらめる」という態度について. めのもがき)と,もう一つは対象を取り戻すこと. これまでとは違った見方ができる。今一度「あき. 294.

(12) “あがり”症状パターンごとにみられるパフォーマンス低下機序の特徴. らめる」という表現に含まれるメッセージ,そし. がっているアスリートが表す「あきらめる」とい. て身体が伝えてくれるメッセージについて考える. う態度に関して,単に勝負から逃げているのでは. 必要がある。. なく,自身の身体・心を守るための対応であると いった可能性も考慮する必要がある。. Ⅴ.結 論 引用文献. 本研究では,競技不振に陥る学生アスリートの 身体体験とその背景にある内的体験との関連を検 討するために, “あがり”に焦点を当て,心理・ 生理・運動の3つの観点から“あがり”症状のパ ターンを同定し,各パターンにみられるパフォー マンスの低下機序の特徴を明らかにすることを目 的とした。 その結果, “あがり”の症状パターンとして, 『高. 有光興記(1999) “あがり”とその対処法.川島書店:東 京. 有光興記・今田寛(1999)状況と状況認知から見た“あ がり”経験-情動経験の特徴による分析-.心理学研 究,70:30-37. Baumeister, R.F.(1984)Choking under pressure: Selfconsciousness and paradoxical effects of incentives on skillful performance. Journal of Personality and Social Psychology, 46: 610-620.. あがり型』 , 『非あがり型』,『生理あがり型』,『心. Beuter, A. and Duda, J.O.(1985)Analysis of the arousal. 理あがり型』 , 『運動あがり型』の5つが認められ. / motor performance relationship in children using. た。つまり,普段の競技場面において“あがり”. movement kinematics. Journal of Sport Psychology, 7:. と呼んでいる現象には,様々な症状があり,個々 によって異なることを改めて確認することができ た。 さらに,それぞれの“あがり”症状によってパ フォーマンスの低下機序に伴うアスリートの内的 体験が異なることも明らかにすることができた。 心理的側面で“あがり”を抱きやすい者は,僅か な環境の変化に対して不安を抱きやすく,運動的 側面で動きの重さ・固さなどから“あがり”を感 じやすい者は,動きの不安定さや不全感を過度に 意識しすぎるため,さらなる動きの重さ・固さを 誘発してしまう。最後に,生理的側面で“あがり” を感じやすい者は,意識的な制御が難しい生理面 での症状を抑えるために, 「あきらめる」といっ た気持ちが芽生え,それがパフォーマンスの低下 に繋がっている。そして,最もあがりやすい『高 あがり型』は,心理・運動・生理の様々な症状が 同時にまたは連鎖的に発現し,複雑な症状を呈し ている。 このように,心理・運動・生理の各側面からの “あがり”症状によってパフォーマンスの低下機 序が異なる。そのため,“あがり”へのアプロー チは多様性を持って関わる必要がある。特に,あ. 229-243. Eysenck, M.K.(1979)Anxiety, learning and memory: A reconceptualization. Journal of Research in Personality, 13: 363-385. 麓信義・成田和香子(1984)陸上競技におけるあがりの 意識と性格.スポーツ心理学研究,11:66-68. 橋本公雄・徳永幹雄(2000)スポーツ競技におけるパ フォーマンスを予測するための分析的枠組みの検討. 健康科学,22:121-128. 市村操一(1965)スポーツにおけるあがりの特性の因子 分析的研究Ⅰ.体育学研究,9:18-22. 市村操一(1986)スポーツにおけるあがりの心理・生理 学的症候の2次元モデル.筑波大学体育科学系紀要, 9:15-20. 金本めぐみ・横沢民男・金本益男(2002) 「あがり」の原 因帰属に関する研究.上智大学体育,3:33-40. 木村展久・村山孝之・田中美吏・関矢寛史(2008)スポー ツにおける“あがり”の原因帰属と性格の関係.人間 科学研究,3:1-9. 北山修(2001)幻滅論.みすず書房. 村山孝之・田中美吏・菅井若菜・関矢寛史(2007)時間 切迫が運動スキルの遂行に及ぼす影響.体育学研究, 52:443-451. 村山孝之・田中美吏・関矢寛史(2009) 「あがり」の発現 機序の質的研究.体育学研究,54:263-277. 中込四郎(2013)臨床スポーツ心理学.道和書院. 大橋明(2008)あきらめに関する心理学的考察-その意 味と概念について-.中部学院大学・中部学院短期大 学部研究紀要,9:23-34.. 295.

(13) 小谷 克彦・渡辺 聖人. 大橋明(2009)あきらめに関する心理学的考察-自由記 述法による探索的検討-.中部学院大学・中部学院短 期大学部研究紀要,10:17-28. 田中美吏・関矢寛史(2006)一過性心理的ストレスがゴ ルフパッティングに及ぼす影響.スポーツ心理学研究, 33⑵:1-18. Wnag, J., Marchant, D., and Morris, T.(2004)Selfconsciousness and trait anxiety as predictors of choking in sport. Journal of Science and Medicine in Sport, 7 : 174-185. Willingham, D.B.(1998)A neuropsychological theory of motor skill learning. Psychological Review, 105 : 558584.. 【付 記】 本稿は,JSPS科研費15K12624の助成を受けた ものである。 (小谷 克彦 旭川校准教授) (渡辺 聖人 事務職) . 296.

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参照

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