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IRUCAA@TDC : 千葉病院の取り組み

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

千葉病院の取り組み

Author(s)

髙野, 伸夫

Journal

歯科学報, 109(2): 139-143

URL

http://hdl.handle.net/10130/1866

Right

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はじめに 現在,がん医療においては化学療法,放射線療 法,外科療法など種々の治療法を用いた治療がおこ なわれているが,口腔癌に対する治療の主体は外科 療法であるといっても過言ではない。近年の再建外 科の発展により,顎顔面に変形をきたす切除後欠損 に対する対応が可能となったため,充分な安全域を 確保した切除が施行されるようになり,治療成績も 向上したと考えられる。しかし,治療が遅れた進展 症例の中には,手術が不可能なものや手術を施行し てもその制御が困難で,放射線治療に頼らざるを得 ないものがある。また背景因子に高齢や高いリスク の全身疾患を伴っている場合には,手術侵襲を制限 せざるを得ないため,予定した切除手術が施行でき ず,満足すべき結果が得られないことも多い。さら に,このような進展症例の治療は,患者に精神的, 肉体的および経済的に重い負担が課せられる。した がって,今後,私たちが力を注ぐべき方向性は,口 腔癌治療に対する治療技術向上のための努力はもと より,予後を大きく左右する進展症例を少しでも減 少させるための検診活動や社会に対する啓蒙に努め ることであろう。 ⑴ 東京歯科大学千葉病院におけるがん検診およ び口腔癌治療の現状 a.口腔がん検診 ⒜ 集団検診 胃癌,子宮癌,乳癌,肺癌,大腸癌についてはす でにかなり以前から集団検診が行われている。これ は早期に発見し治療することによりその疾患による 死亡率を減少させることを目的としており,これら のがん検診の有効性も確認されている。しかし,最 も観察しやすく早期発見,早期治療を行いやすい口 腔癌については,ほとんどこれが行われていない。 画像診断が発展し,腫瘍の範囲,転移様相はかなり の精度で診断できるようになった。残念ながら,画 像診断で明らかになるような場合には,すでにある 程度進行した腫瘍であり,頸部リンパ節転移や遠隔 転移の可能性も否定できない。しかし,早期に診断 が可能であればその危険性も少なくなり,さらに患 者の精神身体的苦痛や医療費の増大を少しでも軽減 させることが可能である。東京歯科大学は先人の努 力により周囲医療機関や千葉県の各歯科医師会と図 り,各種の医療連携事業につながる様々なアプロー チを行い,かなり充実したものになってきている。 この医療連携の基本方針の中に口腔がん検診が組み 入れられ,医療連携室の中には口腔がん検診部門が 設置され,口腔外科が担当している。 ⒝ 個人検診 日本歯科医学会誌に口腔がん検診のガイドライン が発表された。口腔癌の早期発見には個人検診も重 要な位置を占める。癌に罹患しやすい50歳以上,喫 煙や飲酒を習慣とする者は一般に歯周炎,齲歯,あ るいは歯の欠損などを伴っており,歯科を受診する ことが多い。また口腔癌ではないかと強く疑う者は その診断を希望し,歯科を受診する。これら癌高危 険群の歯科診療に携わっている歯科医は,常に口腔 がん検診を念頭に置きながら日常診療を行っていく 必要がある。そのためには歯科医全体が口腔癌につ いて充分な知識を持ち,口腔がん検診のガイドライ

2.臨床の観点から

3)千葉病院の取り組み

髙 野 伸 夫

千葉病院口腔外科部長 139 ― 37 ―

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ンにそった検診を診療の中に取り込む必要がある。 現在,大学の口腔がん検診部門は近隣の千葉市歯科 医師会と「口腔がん検診モデル事業」を起ち上げて いる。事業内容は歯科医師会会員に対する口腔がん 検診のための定期的な講習会の開催,地域住民に対 する広報活動,口腔がん検診希望者に対する対応な どから成っている。また本事業による効果として は,地域住民の口腔癌に対する関心度の上昇と歯科 医の口腔癌に関する知識と診断能力の向上などがあ げられる。 口腔がん検診の詳細については4.「研究と社会 貢献の観点から」の項で記述されているので参照さ れたい。 b.口腔癌(扁平上皮癌)治療 当院口腔外科において口腔癌の治療は最も重点を 置いているものの1つで,一次症例および二次症例 を併せると年間手術例数は60例以上になる。今回, 最近5年間に当院で治療を行った口腔扁平上皮癌の 一次症例についての検討を行ってみた。 ⒜ 最近5年間の口腔癌一次症例 2003年から2007年の最近5年間に,東京歯科大学 千葉病院において手術を施行した口腔癌(扁平上皮 癌)一次症例患者は男性80例,女性52例の計132例 (図1)で,平均年齢は61.2歳であった。口腔癌の部 位別症例数は舌が64例(48%)と最も多く,歯肉の39 例(30%)がこれに次いでいた(図2)。 受診時における病期は口腔扁平上皮癌患者の予後 を左右する大きな因子であることはいうまでもな い。最近5年間の口腔癌患者132例の stage 分類(図 3)では stage Ⅰが50例(38%)で最も多かったが, stage Ⅲ と stage Ⅳ の い わ ゆ る 進 行 癌 症 例 が42例 (32%)であった。他の部位と異なり,口腔という比 較的観察が容易な部位ではあるが,受診時の病期分 類をみれば,決して早い時期に来院しているという 傾向はみられなかった。また紹介医において口腔癌 が診断できず,進行癌となって来院する症例も稀で はなかった。なお,ハイリスク症例は本学市川総合 病院内に設置された東京歯科大学口腔がんセンター で治療を行っていることを付記しておく。 ⒝ 手術 口腔癌の治療の主体は手術であるが,進行癌にお いては充分な安全域をとったものでもその予後は決 して良好とはいえない。また手術による大きな組織 欠損が生じ,遠隔部からの皮弁を利用するような再 建術も必要となる。一方,T1,earlyT2などの比較 的早期症例では確実な切除がなされればその予後も 比較的良好である。この様な比較的早期症例では再 発させないための切除範囲の設定がきわめて重要で ある。当院においては,これまでも手術時の切除範 囲の設定に際し,ヨード染色法やトルイジンブルー 染色法を用い,扁平上皮癌周囲に広がる上皮異形成 部を描出し,切除域決定時の重要な指標としてき 図1 口腔癌(扁平上皮癌)一次症例(2003−2007年) 図2 原発部位の分類 図3 病期(Stage)分類 本学におけるがん治療の取り組みに関する現状と将来 140 ― 38 ―

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た。これにより追加切除の防止や局所再発率の低下 につながっている。勿論,術中には臨床検査学教室 および病理学教室の援助を得て,迅速診断を施行 し,浅部および深部の切除断端に腫瘍の近接が無い ことを確認している。 口腔癌患者の頸部リンパ節転移例に関しては,全 頸部のリンパ節を郭清する確実な方法として,古く より根治的頸部郭清術が行われてきた。現在でも頸 部リンパ節転移があり,固着性のものや節外浸潤が 疑われる進展例に対しては根治的頸部郭清術を適用 しているが,副神経,胸鎖乳突筋,内頸静脈などを 郭清組織に含めるため,術後に機能障害が残存す る。近年,CT,MR,Echo などの画像診断の発展 に伴い,リンパ節転移の有無,リンパ節への転移様 相あるいは周囲組織との癒着状況などの病態が術前 にある程度把握できるようになった。そこで,予防 的な郭清の場合や,強く疑われる症例であってもリ ンパ節の状態に応じて,頸部形態や機能を温存した 手術が選択され,副神経,胸鎖乳突筋,内頸静脈の うち一部あるいは全部を温存する頸部郭清術が行わ れるようになった。当院においては以前より,節外 浸潤の疑われる症例を除いた頸部の郭清に,これら の全部を温存する機能的頸部郭清術を積極的に用い て い る。さ ら に,再 建 の た め の N0症 例 や level Ⅰ,Ⅱに限局したリンパ節転移を疑う症例に対し, 上頸部領域のみを選択的に郭清する肩甲舌骨筋上頸 部郭清術も施行している。今回の調査では132例中 72例にいずれかの頸部郭清術が行われていた(表 1)。 術後の組織欠損に対する再建は,遠隔皮弁では腹 直筋皮弁や前腕皮弁などの遊離皮弁移植術と大胸筋 皮弁,広背筋皮弁,DP 皮弁などの有茎皮弁移植術 が施行されていた。また近接組織を利用した再建術 としては頸部皮弁,舌弁,粘膜筋弁あるいは頬脂肪 体などが利用されていた(表2)。 ⒞ 放射線療法 口腔癌では身体他部と異なり,周囲に顎骨が存在 するため,外部照射による放射線治療を施行しても 充分な効果が得られず,顎骨に放射線障害が生ずる 可能性がある。この5年間に放射線治療を施行した 患者は9例で,そのほとんどが進行癌症例のため, 一期的な切除が不可能であり,術前照射として用い ているか,あるいは切除後の制御が困難なため術後 照射を行ったものであった。術前照射を行ったのは 抗癌剤の選択的動注を併用し,腫瘍の縮小化を試み た2症例のみで,残りの7例には術後照射として用 いていた。このような放射線治療を併用する症例は 東京歯科大学口腔がんセンター放射線治療部門およ び独立行政法人放射線医学総合研究所病院部の協力 を得ている。 ⒟ 化学療法 腫瘍に対しての根治治療として適応するのは手術 療法と放射線療法で,化学療法はあくまでも補助療 法として用いられている。最近,抗癌剤の超選択的 動注療法が注目されている。当院では,手術までの 待機期間中における進展防止や腫瘍活性低下のため に用いたり,術後における微少転移に対する対策を 目的として用いている。使用薬剤としてはペプロマ イシン(PEP)が neoadjuvant chemotherapy として 用いられ,術後にはシスプラチン(CDDP)やネダプ ラチン(CDGP)と5−フルオロウラシル(5−FU) の併用あるいはテガフール・ギメラシル・オテラシ ルカリウム(TS−1)が使用される傾向にあった。 84例に対していずれかの化学療法が施行されてい た。 表1 腫瘍切除術および頸部郭清術 腫瘍切除のみ 60例 腫瘍切除+頸部郭清 72例(内 両側頸部郭清10例) 計 132例 表2 再建に用いた移植術 遠隔組織を利 用した再建 遊離移植 腹直筋皮弁 3例 前腕皮弁 25例 有茎移植 広背筋皮弁 1例 大胸筋皮弁 2例 DP 皮弁 3例 近接組織を利 用した再建 有茎移植 頸部皮弁 3例 隣接粘膜筋弁 6例 頬脂肪体 8例 舌弁 9例 計 60例 歯科学報 Vol.109,No.2(2009) 141 ― 39 ―

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⒠ 生存率 生存率に関しては最近5年間の検討であり,まだ 正確な結果をだすまでには到っていない。したがっ て,ここでは死亡した予後不良例が9例であったこ とを報告するにとどめる。 ⑵ 東京歯科大学千葉病院におけるがん検診およ び口腔癌治療の将来 a.早期発見早期治療のための口腔がん検診事業の 推進 T1や earlyT2などの早期癌における治療結果 は比較的良好である。口腔がん検診は早期の癌をい ち早くスクリーニングするためのものであり,その 普及発展は極めて重要と考えられる。前述のごと く,口腔がん検診には集団検診と個人検診がある。 自治体は他のがん検診事業と同様に,口腔がん集団 検診についても広く広報活動を行い,検診の場を提 供し,地域住民の積極的受診を促す様な努力が必要 である。つまり口腔がん集団検診は東京歯科大学千 葉病院のごとき中核となる病院および地域歯科医師 会はもとより自治体を含めた連携事業として施行さ れはじめるべきである。しかしながら,未だ,当病 院と各歯科医師会のボランテイア事業の域を脱しき れない。そのため,当院が住民の集団検診を行って いるのは千葉県を中心に,まだ一部の地域にすぎな い。さらに自治体に強く働きかけ,集団検診事業の 確立と検診地域の拡大を目指す必要がある。 個人検診を充実させるためには,日常の歯科診療 に携わっている全歯科医師が,口腔癌検診のガイド ラインに沿った口腔全体の検診を行えるようでなけ ればならない。また癌の早期発見,早期治療,ひい ては死亡率の減少を図るため,口腔癌は勿論,これ に先だって生ずる口腔粘膜上皮の変化や口腔粘膜疾 患も見落とさないような知識を持ってもらわなけれ ばならない。口腔がん個人検診の発展のため,現在 行っている口腔がん検診モデル事業を一部の地域の みならず広域に展開し,さらに推進する必要があ る。そのためには,定期的講習会の開催とその継続 が重要であるが,一人でも多くの歯科医に講習会の 参加を呼びかけるための歯科医師会の積極的な協力 も必要である。東京歯科大学千葉病院としてはさら に個人検診の充実にも充分な力を注ぐ必要があろ う。 b.東京歯科大学口腔ガンセンターの有効利用 進行癌においては頸部リンパ節や遠隔転移の可能 性が高くなり,決して予後良好とはいえない。また 進行癌においては手術での対応が困難な場合があ り,もし手術が可能であったとしても手術侵襲が大 きく,全身的な背景がある程度良好でなければ治療 に耐えられない。重度の基礎疾患を持つ患者や他臓 器への転移患者に対応するには他の臨床科専門医の 協力が重要であるため,東京歯科大学市川総合病院 に口腔がんセンターが開設された。これによりハイ リスク患者や進展した症例の対応も可能となった。 残念ながら,千葉病院との距離があり利便性や医員 数の不足などの問題はあるが,より緊密な連携をと り,これら症例に対しこれまで以上に充分なしかも 満足いくような治療ができるよう努力したい。 c.術後の機能改善をめざして 口腔は発音,咀嚼の要であり,術後におけるこれ ら 機 能 の 改 善 を 目 指 す こ と は,患 者 の 満 足 度 (QOL)を高めることになる。そのためには手術後 の機能回復に対し,更なる努力が必要である。今回 の調査でもわかるが,口腔癌の原発部は舌や歯肉の 場合が多く,切除後には咀嚼や嚥下,発語の機能が 低下する。舌腫瘍に関しては積極的に遊離皮弁を用 いて再建を行い,術後には摂食・嚥下,言語訓練を 行っているが,まだ改善の余地は残る。最近,当病 院に摂食・嚥下リハビリテーション科が開設され た。リハビリテーションに際し,専門医の協力を得 て,術後の訓練や指導がこれまで以上に積極的に行 えると考えている。 また,顎骨に腫瘍が進展した場合や歯肉癌の場合 には顎骨の切除が余儀なくされる。当院において は,まず腫瘍の制御が確認できた後,顎骨の再建を 図ることを基本としている。特に下顎骨では,経過 観察の期間は再建用プレートで顎の固定を行い,残 存骨の変位の防止を図っているが,治癒と判断され た後も顎の欠損が存在する場合があり,これら症例 に対しては咀嚼能力改善のため,積極的に骨移植に よる再建を図るべきである。当院の補綴科や口腔イ ンプラント科の助力を得ることにより,義歯やイン プラントを応用した顎補綴治療が可能となるため, 本学におけるがん治療の取り組みに関する現状と将来 142 ― 40 ―

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QOL の向上に繋がると考えられる。しかし,癌の 手術を経験した患者は,手術に対して拒否的になる 場合も多く,担当医が患者に対し顎骨再建の有利性 に対する充分な説明を行い,同意を得る努力が必要 となろう。 d.口腔癌治療歯科医の育成 文部科学省が「がん対策基本法」への対応策とし て,「がん治療」体制の構築に向けて,医療現場で 直接役立つ人材の養成を目指した「がんプロフェ ショナル養成プラン」をスタートさせた。東京歯科 大学は北里大学を主幹とした9大学による「南関東 圏における先端的がん専門家の育成―患者中心の チーム医療を牽引する人材養成拠点づくりー」のプ ロジェクトの一員として採択された。東京歯科大学 における臨床の教育の拠点は東京歯科大学口腔がん センターにおかれ,歯科医師のための「口腔がん専 門医養成コース」とインテンシブコースとしての 「口腔がん治療・リハビリテーションコース」が設 けられている。これを期に一人でも多く口腔癌治療 に精通した若手医局員を育てたいと切望している。 中堅の医局員には,これまで以上に治療技術の向上 を図ることに励んでもらうことは言うまでもない。 「がんプロフェショナル養成プラン」の詳細につ いては3−1),2)教育の観点から 文部科学省 「がんプロフェッショナル養成プラン」による人材 育成の項で記述されているので参照されたい。 歯科学報 Vol.109,No.2(2009) 143 ― 41 ―

参照

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