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IRUCAA@TDC : 人間を対象とする歯学・医学研究と医の倫理の狭間にて

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

人間を対象とする歯学・医学研究と医の倫理の狭間にて

Author(s)

眞木, 吉信

Journal

歯科学報, 113(4): 4i-4i

URL

http://hdl.handle.net/10130/3176

(2)

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人間を対象とする歯学・

医学研究と医の倫理の狭間にて

眞 木 吉 信

平成25年8月から9月にかけて,医師に患者を紹介して診療報酬の一部を得る「患者紹介ビジネ ス」や「架空の歯科診療所を設け訪問診療」など,「高血圧薬研究の捏造問題」と「国立大学の科学 研究費の流用問題」など,医の倫理に関わる問題が毎週のように報道された。 医療は人の生命を預かる行為であるため,医療に携わる者には昔から『ヒポクラテスの誓い』に代 表される高度な倫理性が求められてきた。しかしながら,古代ギリシャの伝統的な医の倫理は,主に 「医師の職業倫理」に限定されたものであり,第2次世界大戦の反省とその後の医療の高度化に適応 したものではなかったといえる。最近の国際規範としての医の倫理は,ヒポクラテスの誓いやジュ ネーブ宣言のような「医師の職業倫理」に加えて,インフォームドコンセントに代表されるリスボン 宣言に示された「患者の権利」,さらには,第2次世界大戦の人を対象とした医学研究(人体実験)の 反省から生まれたニュルンベルグ綱領とプライバシーへの配慮を規定したヘルシンキ宣言に代表され る「人間を対象とする医学研究の倫理」の3つに統合される。 特に,「人間を対象とした医学研究」に関しては,「骨髄液無断で採取」慶応大学病院2012年3月20 日,「アイヌ研究で持ち去った遺骨,返還を」北海道大学医学部2012年3月26日,「鎮痛剤や鎮静剤の 効果比較研究を同意無しに実施」宮崎大学病院2012年7月10日など,新聞の報道で大きく報じられた ため,厚生労働省は国の倫理指針の徹底を図った。しかしながら,今年になってからも上記のような 医の倫理に関わる問題が毎月のように報道されたため,患者を含む人間を対象とした治療法などの研 究計画が妥当かどうかチェックする大学や病院の倫理審査委員会の質を確保する必要が生じ,厚生労 働省は認定制度づくりに乗り出すこととなった。 歯学研究においても,Vipeholm Study(1954年)などは,う蝕病因の確立とその後の砂糖代用糖の 開発につながった貴重な研究として絶大な評価を受けてきたが,研究対象が全員精神障害者で,研究 参加の同意もう蝕発病に対する警告説明も予防処置すら全くなかったため,近年になって非難の的に されてきたところである。 「人間を対象とする歯学・医学研究」には,平成13年以降,①臨床研究,②疫学研究,③ヒトゲノ ム・遺伝子解析に関するそれぞれの倫理指針が設けられている。しかし,臨床研究と疫学研究の境界 領域や観察研究と介入研究時のインフォームドコンセントや個人情報に関する倫理上の問題点など不 明瞭な部分が多い。また,疫学研究では同意の取れない過去のデータの使用なども手続き上の問題が 生じてくる。いずれにしても明確でない部分は倫理審査委員会で判断してもらうという原則は変わら ないのだが,その提出書類の作成や,コメントに対する回答などの手続きにも時間を要するため,大 学や研究施設に所属する者はもちろん,それ以外の研究者にとっては研究開始までの手続きに時間 的・精神的な消耗が大きいため,研究報告や研究論文の数自体が減少傾向にあることは事実であろ う。 以上述べてきたように,高度に先進化し専門化・細分化した歯学・医学の中で,医の倫理は時代と ともに新たな問題が出てきては,研究と倫理の狭間で,これに対処するという作業の繰り返しであ る。あいまいな部分を杓子定規的に一刀両断することによって,患者と主治医の信頼関係など研究の 中に本来備わっている人間性の多くが失われることを危惧するものである。歯学・医学研究の倫理審 査には研究と倫理の狭間にあるという観点からの十分な配慮を望みたい。 (東京歯科大学社会歯科学研究室 教授)

参照

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