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IRUCAA@TDC : 歯周組織再生療法の現在とこれから

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,

Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

歯周組織再生療法の現在とこれから

Author(s)

齋藤, 淳

Journal

歯科学報, 114(5): 419-424

URL

http://hdl.handle.net/10130/3448

Right

(2)

はじめに

現在においても歯周病は人々の健康を脅かし続け

ている。歯周病原細菌を含むバイオフィルムのコン

トロールは,単に歯周局所の感染や炎症の予防・抑

制という見地からだけではなく,全身の健康維持の

面でも重要である。歯周炎が発症し中等度以上に進

行した場合,歯周外科治療を検討するが,なかでも

歯周組織再生療法は治療の可能性を広げている。組

織再生誘導(GTR)法は,従来の歯周治療の概念を

変えるものであり,わが国では1980年代後半に導入

された。前任の山田 了教授は,その先駆者の一人

である。以降,歯周病学講座は一丸となって GTR

法を中心とした歯周組織再生の研究および臨床に取

り組んできた。その後,エナメルマトリックスデリ

バティブ(EMD)が開発され臨床応用されると,再

生療法はより身近なものとなり,予知性はさらに向

上した。今後,新たな治療法の臨床応用が期待され

ている。

本稿では歯周組織再生に焦点をあてて,臨床の現

状と研究展開について概説する。

1.歯周病の治療とリスクファクター

歯周病の予防・治療を効果的に行うためには,リ

スクファクターへの対応が重要となる。歯周病のリ

スクファクターには,細菌(病因関連)因子,宿主因

子,環境因子があり,なかでも細菌因子である特定

細菌の感染は,歯周病の発症と進展に深く関わっ

ている。Socransky と Haffajee は歯肉縁下 細 菌 叢

を細菌間の関係に基づき,いくつかの Complex に

分類した

1,2)

。いわゆる「Socransky のピラミッド」

の頂点に位置づけられたのが,

Porphyromonas

gin-givalis,Tannerella forsythia,Treponema denticola か

ら成る Red complex 細菌である。これまで我々は

微生物学講座と共同で一連の研究を実施し,これら

歯周病原細菌の検出や宿主免疫応答について明らか

にしてきた

3−6)

。本学千葉病院保存科に来院した患

者を対象とした最近の研究結果

7)

でも,慢性歯周炎

患 者 の 歯 周 ポ ケ ッ ト か ら は

P. gingivalis と T.

for-sythia は高頻度で検出されている(表1)。歯周病原

細菌を含むデンタルプラーク細菌はバイオフィルム

の状態で歯周局所に存在することが,臨床的には大

きな問題となる。浮遊(プランクトニック)状態と比

較すると,バイオフィルムでは抗菌薬の濃度を1000

倍から1500倍以上にしないと,内部まで浸透し効果

を発揮することができない

8)

。従って,ブラッシン

グやスケーリング・ルートプレーニングでバイオ

フィルムに機械的にアプローチしたうえで,必要に

応じて抗菌薬を補助的に使用する必要がある。

歯周病原細菌は宿主との相互作用のなかでその病

原性を発揮するので,歯周病の治療においては全身

状態をはじめとする宿主因子についても配慮が必要

キーワード:歯周組織再生,GTR 法,Enamel matrix de-rivative,ウシ骨ミネラル,FGF-2 東京歯科大学歯周病学講座 (2014年8月4日受付) (2014年9月5日受理) 別刷請求先:〒101‐0061 東京都千代田区三崎町2−9−18 東京歯科大学歯周病学講座 齋藤 淳

Atsushi SAITO: Periodontal Regenerative Therapy : Cu-rrent Status and Future Prospects(Department of Peri-odontology, Tokyo Dental College)

歯学の進歩・現状

歯周組織再生療法の現在とこれから

齋藤 淳

419

(3)

となる。さらに近年,環境因子の重要性が注目され

るようになった。喫煙は環境因子の代表的なもので

あり,歯周組織に様々な影響を及ぼす。我々はタバ

コ煙がヒト歯肉上皮細胞の機能に及ぼす影響につい

て検討を行っている

9)

。これまでの結果では,タバ

コ 煙 濃 縮 物(cigarette smoke condensate ; CSC)は

濃度により異なる作用を示し,低濃度では細胞遊走

能を促進し,高濃度では抑制することを確認した

(図1)。さらに

P. gingivalis を感染させると,遊走

能は全 体 的 に 抑 制 さ れ た。こ の よ う な 現 象 に は

CSC の細胞骨格への影響や

P. gingivalis の細胞内侵

入が関与している可能性も示された。以上の結果

は,歯周組織の治癒には喫煙や歯周病原細菌などの

リスクファクターが複雑な相互作用を介して関わる

ことを示唆するものであり,現在,シグナル伝達を

含めた詳細なメカニズムの解析を行っている。

2.歯周組織再生療法の臨床

歯周組織再生療法は,GTR や骨移植術などの第

1世代を経て,EMD や増殖因子の使用という第2

世代に入っている。2013年に日本歯周病学会は,再

生療法のガイドライン

10)

を発表しており,エビデン

スに基づいた治療を提供する環境が整いつつある。

本学水道橋病院および千葉病院では,EMD を使

用した再生療法が主流となっており,先進医療とし

て実施されている(図2)。EMD を単独で使用した

場合の臨床成績は長期のもの含めて多く報告されて

いるが,水道橋病院ほかで行った我々の治療でも良

好な成果が得られている(表2)。その一方で,歯槽

骨の欠損状態によっては EMD 単独応用では限界が

あり,骨移植との併用も検討が必要となる

17)

(図3)。

そこで問題となるのは,わが国では EMD との併

用が正式に認められている骨補填材はないという事

である。一方,GTR 法に関しては異種骨であるウ

シ骨ミネラルとコラーゲン膜の併用が可能である。

これまで歯周病学講座では1990代後半からウシ骨ミ

ネラル(Bio-Oss

)とコラーゲン膜(Bio-Gide

)を使

用した GTR 法の研究に取り組んできた

18,19)

。昭和

大学歯学部と共同で行った臨床研究

19)

では,術後6

か月の時点でのプロービングデプス減少量,アタッ

チメントゲインにおいて良好な結果が得られている

(表3)。その後,本治療法が薬事承認を得るまで想

像以上の年月を要したが,ようやく2013年に日本で

発売されるに至った。これを受けて,我々は歯周病

表1 東京歯科大学千葉病院保存科に来院した歯周炎患者および健常ボランティアの歯肉縁下プラー クにおける3菌種の検出結果(リアルタイム PCR 法)7) 細 菌 侵襲性歯周炎 (n=20) 慢性歯周炎 (n=20) 健常 (n=10) A. actinomycetemcomitans 7/20(35%) 5/20(25%) 0/10(0%) P. gingivalis 12/20(60%) 15/20(75%) 0/10(0%) T. forsythia 15/20(75%) 17/20(85%) 0/10(0%) Aa+Pg 0/20(0%) 1/20(5%) 0/10(0%) Aa+Tf 2/20(10%) 0/20(0%) 0/10(0%) Pg+Tf 7/20(35%) 10/20(50%) 0/10(0%) Aa+Pg+Tf 4/20(20%) 5/20(25%) 0/10(0%) Aa ;Aggregatibacter actinomycetemcomitans, Pg ; Porphyromonas gingivalis, Tf ; Tannerella forsythia (Elsevier から許可を得て Tomita S et al., Microb Pathog 61−62:11−15,2013より一部改変して転

載)

図1 タバコ煙抽出物(CSC)への暴露とP. gingivalis 感染 が,歯肉上皮細胞の遊走能に及ぼす影響

ヒト歯肉上皮細胞(Ca9-22)に,CSC を24時間暴露 後,wound healing assay を行った。P. gingivalis 感染 の系では,MOI(multiplicity of infection)100の条件 で,P. gingivalis ATCC33277を2時間感染後,評価し た(今村健太郎大学院生) 齋藤:再生療法の現在とこれから 420 ― 10 ―

(4)

表2 EMD(単独)応用による歯周組織再生療法の治療成果 研 究 症 例 期間(年) 平均 CAL ゲイン(mm) Kalpidis et al., 200211) 垂直性骨欠損(n=317) (メタアナリシス) 1 3.2 Saito et al., 200812) 垂直性骨欠損(n=18) 2(2−7) 3.2 Fujinami et al., 201113) 垂直性骨欠損(n=25) (本学水道橋病院) 2 3.2 Heden and Wennström,

200614) 垂直性骨欠損(n=102) 5 5.3 Sculean et al., 200815) 垂直性骨欠損(n=38) 10 2.9 Silvestri et al., 201116) 垂直性骨欠損(n=47) (n=21) 10−12 12−14 3.7 4.1 CAL, clinical attachment level

図2 エムドゲインⓇ ゲルを使用した歯周組織再生療法(64歳,女性)(文献13より許可を得て転載) a 術中 b 初診(PD9mm) c 術後2年(PD3mm) 歯科学報 Vol.114,No.5(2014) 421 ― 11 ―

(5)

治療に専門性を有する開業医の先生方と,ウシ骨ミ

ネラルとコラーゲン膜を使用した再生療法の多施設

検証的臨床研究に着手した(図4)。現在,症例のエ

ントリーはすべて終了し,臨床成績評価の準備中で

ある。

3.研究展開と将来展望

「細胞」,

「足場」および「生理活性物質」はティッ

シュエンジニアリングの3要素とされている。この

うち「生理活性物質」について,国内では大阪大学

の村上伸也教授を中心に線維芽細胞成長因子

(Fibro-blast Growth Factor ; FGF)-2の臨床応用に向けた

研究が進んでおり

20)

,第Ⅲ相試験の追加試験の段階

まで来ている。我々も FGF-2が歯周組織の治癒に

及ぼす影響について多様なモデルを使用して研究を

行い,その有用性を確認した

21−23)

。日本歯周病学会

としても,FGF-2が歯周組織再生薬として承認さ

れ,正式に臨床応用できる日が来ることを切望して

いる。

「足場」に関しては,我々は自己組織化ペプチド

の再生療法への応用について基礎研究を開始した。

「細胞」と「生理活性物質」関連では,生化学講座

と共同で骨芽細胞の分化における増殖因子の役割と

そのシグナル伝達系の解析に取り組んでいる。国内

では第3世代の各種細胞シートの応用について基

礎・臨床研究が行われており,さらに世界的には第

4世代である遺伝子治療の研究も始まり,新しい概

念の治療法が登場する可能性もある。

既に述べたように,歯周組織の治癒においては宿

主因子も大きく影響する。歯周病と糖尿病は双方向

性の関係にあるが,糖尿病患者への再生療法の有効

性については未だ明らかにされていない

24)

。そこで

備前島大学院生らは,糖尿病ラットの歯周組織欠損

モデルを使用し,糖尿病が歯周組織の治癒に及ぼす

影響,そして FGF-2局所応用の効果について検討

表3 ウシ骨ミネラル(Bio-OssⓇ )とコラーゲン膜 (Bio-GideⓇ)を使用した歯周組織再生療法の臨床成績19) 術前 術後 6M 変化量 PD(mm) 6.7 3.1 3.6 CAL(mm) 8.4 5.6 2.8 図3 歯周組織再生療法の選択基準17) 齋藤:再生療法の現在とこれから 422 ― 12 ―

(6)

している。まず,コントロールされていない高血糖

状態における FGF-2の局所応用について病理組織

学的に検討したうえで研究を拡大し,血糖コント

ロール状態に応じた最適な治療法の提案につなげて

いきたい。糖尿病との関係は一つのモデルであり,

得られた知見を基に様々な全身状態における再生療

法の効果についても検討する必要がある。

以上のような臨床と研究の取り組みは,医療者側

が主体の生物医学的アウトカムだけではなく,患者

の生活の質(QOL)を念頭に置いたものでなければ

ならない。我々は慶應義塾大学医学部と共同で日本

歯周病学会の助成を受け,歯周病患者の口腔関連

QOL に関する研究を行ってきた

25,26)

。これまでの

研究では,歯周基本治療は歯周炎患者の口腔関連

QOL の向上に寄与することを明らかにした。どの

ような治療が,口腔関連 QOL の維持・向上につな

がるのかについて,さらに明らかにすべく研究を継

続している。

おわりに

「歯周組織再生はもはやチャレンジではない」と,

ある海外の高名な臨床家は述べている。確かに歯周

病とその治療法に関する研究の積み重ねにより,症

例によっては当初判定された予後が大きく変わるよ

うな再生療法の提供も可能になった

27)

。しかし,重

度の水平性骨吸収や根分岐部病変への対応はまだ不

十分であり,個々の患者や歯周組織破壊の状態に応

じたオーダーメイドの治療法も確立していない。よ

り確実で効果的な歯周組織再生へ向けて,さらなる

研究がもたらす成果が待たれる。

最後まで自分の歯で食事をし,人生を楽しみたい

という人々の思いに寄り添い,1本でも多くの歯を

適切な状態で保存することを目指していくが,再生

療法はその一助となると確信している。

謝 辞

歯周病学講座の取り組みを温かく見守り,激励してくださ る山田 了名誉教授に御礼を申し上げます。アカデミックな 世界に誘ってくださった高添一郎名誉教授,奥田克爾名誉教 授そしてニューヨーク州立大学バッフ ァ ロ ー 校 の Robert Genco 教授に深謝いたします。共同研究でご指導をいただい ている本学微生物学講座 石原和幸教授,生化学講座 東 俊 文教授,慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学講座 中川種 昭教授に深謝いたします。そして常に全力で臨床・研究・教 育に取り組んでいる歯周病学講座の医局員に心より感謝いた します。 本論文の要旨は,第297回東京歯科大学学会例会(2014年6 月7日,東京都千代田区)特別講演で発表した。 文 献

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プロービングについて測定者間の誤差を確認し,ト レーニングを行っている

歯科学報 Vol.114,No.5(2014) 423

(7)

9)Imamura K, Kokubu E, Kita D, Ota K, Ishihara K, Saito A : Cigarette smoke condensate modulates migration of human gingival epithelial cells and their interactions with Porphyromonas gingivalis. J Periodontal Res, in press(doi: 10.1111/jre.12222).

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Sakagami R, Hirofuji T, Hamachi T, Maeda K, Yokota M, Kido J, Nagata T, Kurihara H, Takashiba S, Sibutani T, Fukuda M, Noguchi T, Yamazaki K, Yoshie H, Ioroi K, Arai T, Nakagawa T, Ito K, Oda S, Izumi Y, Ogata Y, Yamada S, Shimauchi H, Kunimatsu K, Kawanami M, Fujii T, Furuichi Y, Furuuchi T, Sasano T, Imai E, Omae M, Yamada S, Watanuki M, Murakami S : FGF-2 stimu-lates periodontal regeneration : results of a multi-center randomized clinical trial. J Dent Res, 90:35−40.2011. 21)Seshima F, Ota M, Kinumatsu T, Shibukawa Y,

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5) Uemura O, Nagai T, Ishikura K, Ito S, Hataya H, Gotoh Y, Fujita N, Akioka Y, Kaneko T, Honda M: Creatinine-based equation to esti- mate the glomerular filtration rate in