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中国の葬儀についての経済史的考察

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Academic year: 2021

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          中 国 の 葬 儀 に つ い て の 経 済 史 的 考 察                     ..    、      r          二 四       ヘ                                                                                        ヘ  ヘ  ヘ  ヘ  へ   本 稿 に お い て は 、 経 済 史 的 な 観 点 か ら 、 ま ず 、 中 国 が 新 し い 時 代 に 移 行 す る 画 期 的 な 時 点 に お け る ﹁ 葬 儀 ﹂ の 態 様 と 、                                                                                                   ヘ   ヘ    ヘ   へ そ れ に つ い て の 人 々 の 思 惟 と を さ ぐ り 、 つ い で 、 そ の 伝 統 の 淵 源 と 変 遷 と を 史 乗 に 追 求 し た う え で 、   ﹁ 葬 儀 ﹂ が 古 い 中 国 の 経 済 的 発 展 の 過 程 で 果 し て き た 役 割 な り 意 義 な り に つ い て 一 、 二 の 考 察 を こ こ ろ み よ う と 思 う 。   (1 )  .﹁ 孟 子 ﹂ 梁 恵 王 上 に 、 養 生 送 死 無 憾 、 王 道 之 始 也 と あ る 。         注 に 曰 く ( 祭 祀 棺 檸 、 所 以 送 死   と 。 9   清 朝 ( エ 八 四 西 -一 九 一 一 年 ) は 、 漢 民 族 統 治 の 文 化 政 策 と し て 凸 漢 学 復 興 の 旗 幟 を か か げ 、 考 証 学 の 奨 励 、 科 挙 の 制 度             ヘ   ヘ    ヘ   へ の 踏 襲 な ど 、 古 い 中 国 の 文 物 を 護 持 す る 方 向 に 傾 い た 。   一 九 一 一 年 中 華 民 国 が 成 立 す る と 、 伝 統 思 想 ・ 旧 文 化 を 全 面 的 に 否 定 し 、 新 思 想 ・ 新 文 化 を 樹 立 し よ う と す る 運 動 が 起 こ                                                                                           ヘ   ヘ                                                                                               ヘ   ヘ    へ さ れ た 。 民 国 初 代 の 大 総 統 に 就 任 し た 衰 世 凱 ( 一 八 六 〇 1 一 九 一 六 年 ) ・が 帝 制 運 動 の 第 一 着 手 と し て 発 し た 祭 天 祀 孔 令 ( 一 九 一 四 年 ) は 、 猛 烈 な 攻 撃 を 蒙 っ た ゆ 一 九 〒 九 年 の 五 四 運 動 を 契 機 と し て 高 ま っ た 新 文 化 運 動 に お い て は 、 ﹁ 儒 教 は 封 建 時 代 の 遺 物 に す ぎ ず 、 中 国 の 新 時 代 に お い て は 無 意 味 ﹂ と せ ら れ た 。 伝 統 的 思 想 か ら の 完 全 な 絶 縁 、 解 放 が 叫 ば れ 、 -各 地 の 孔 子 廟 が 殿 さ れ 、 家 族 制 度 の 排 斥 、 婦 人 の 解 放 が 主 張 せ ら れ た 。 ・      し -乏 こ ろ が 、 ヰ 国 国 民 党 の 成 立 、 国 共 の 分 裂 、 国 民 政 府 の 樹 立 と い っ た 、 目 ま ぐ る し い 動 き の 中 か ら 、 国 民 党 は 、 国 粋 的 、 儒 教 主 義 的 な 民 族 主 義 を 指 向 す る こ と と な り 、 こ こ に 再 び 尊 孔 運 動 が 起 る 。 一 九 三 四 年 に 始 ま る 新 生 活 運 動 は 、 尊 孔 、 国 粋 を 旗 幟 と し 、 古 典 の 礼 儀 廉 恥 を ス ロ ー ガ ン と し て 、 伝 統 文 化 、 固 有 道 徳 を 現 代 風 に ア レ ン ジ し て 、 国 民 の 日 常 生 活 に 適 用 さ せ よ う と し た も の で あ っ た 。

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          中 国 の 葬 儀 に つ い て の 経 済 史 的 考 察                                                   二 六   .八 十 吊 文 を 下 さ る 。﹂ と 叫 ぶ と 、 棺 を か つ ぐ 人 足 た ち は 一 斉 に ﹁ へ え / ﹂ と 叫 ん だ 。 李 四 爺 は 白 い 喪 服 を 上 に 羽 織 っ て 、 威 勢 よ く 、 手   に 拍 子 木 を 持 っ て 、 胸 い っ ぱ い の 心 配 も 不 平 も す っ か り 忘 れ て し ま っ た よ う で あ る 。   か れ の 妻 は 、 夫 が 責 任 の 重 い 葬 列 の 宰 領 を し て ゆ く 威 風 堂 々 た る さ ま を か い ま 見 よ う と す る 。   祁 老 人 の 父 母 は 徳 勝 門 外 の 土 城 の 西 に 当 た る 乾 燥 し た 墓 地 に 葬 ら れ て い る 。 易 者 の 言 に よ れ ば 、 こ の 土 地 は 家 業 繁 昌 を も た ら す 良 い 暮 相 で あ っ た 。 こ の 墓 地 は や っ と 一 段 八 畝 足 ら ず の 広 さ し か な く 、 祁 老 人 は 最 初 は 借 り 受 け て い た の だ が 、 後 に な し く ず し に 金 を 支 払 っ て い っ て 、 永 い 間 に 買 い 取 っ た の で あ る 。                       ち ゃ ん あ る い え   郡 家 の 墓 地 の 小 作 人 、 常 二 爺 の 近 況 報 告 の 一 節 を か か げ て お こ う 。     城 外 じ ゃ こ の ご ろ め っ ぽ う 物 騒 に な っ て な あ 、 墓 場 荒 し の 泥 棒 が 増 え ま し た じ ゃ 。 親 王 様 の 墓 や 、 張 老 公 の 墓 ま で 誰 か に あ ば か れ ま   し た 。   こ の 話 を 聞 い て 祁 老 人 の 心 配 は 深 刻 に な る 。 も し も 不 幸 に し て 父 母 の 棺 が 人 に 掘 り 出 さ れ る よ う な こ と が あ っ た な ら 、 か れ の 一 生 の 苦 心 も 労 力 も 水 泡 に 帰 し て し ま う 。 父 母 の お 骨 が も し も 野 良 犬 に 勝 手 に く わ え 出 さ れ た と し た ら 、 か れ が こ の 七 十 何 才 ま で 生 き た こ と も 無 駄 に な っ て し ま い 、 他 人 に あ わ せ る 顔 も な い 、 ど い う わ け 。   愛 国 詩 人 銭 老 人 の 息 子 ち 鐵 露 乱 い が 死 ぬ と ・ 隣 人 た ち が 葬 式 の 世 話 を し て や る 。 そ の 胸 算 用 は   1   仏 の 着 物 、 経 か た び ら は 買 う に 及 ば ぬ 、 こ ん な 時 節 だ か ら 体 裁 か ま わ ず 、 何 か あ り あ わ せ の 物 を 着 せ る 。   2   棺   し っ か り し た の を 買 う 。   3   枢 は 五 日 間 家 に と め 、 出 棺 に は 十 六 人 の 人 夫 で か つ ぎ 出 す 。 一 組 の 楽 手 。 宰 領 は 李 四 爺 の サ ! ビ ス 。   4   五 人 の 僧 を 呼 ん で お 経 を あ げ る 。 た だ し 、 こ の こ と は 喪 主 代 理 の 銭 夫 人 ( 銭 老 人 は 反 日 の 容 疑 で 収 監 中 で あ る ) が 、 銭 先 生 も 息 子     た ち も 仏 教 を 信 ぜ ず 、 ど ん な 神 仏 も 祭 っ た こ と が な い か ら と 辞 退 す る 。   5   銭 夫 人 用 の 箱 馬 車 一 台 、 騾 馬 に 引 か せ る 。 (北 平 人 の し き た り と し て 、 喪 家 の 近 い 親 戚 の 者 は 必 ら ず 墓 地 ま で 送 る 。)

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  ﹁ 四 世 同 堂 ﹂ で 老 舎 は 、 日 本 軍 国 主 義 に 対 す る 怒 り と 憎 し み を こ め て 、 北 京 市 民 の 身 心 と も に 苦 痛 に 満 ち た 生 活 と 、 暗                                                     ヘ   ヘ    ヘ    ロ 躍 す る 漢 奸 た ち の 生 態 を 描 写 す る と 同 時 に 、 変 貌 し つ つ あ る 大 家 族 の 内 包 す る 矛 盾 ・ 葛 藤 を 美 事 に 描 き 上 げ て い る 。 そ の な か で 、 か れ は 、   ﹁ 葬 儀 ﹂ に 関 し て 、 そ の 実 態 、 人 々 の そ れ に つ い て の 心 情 や 思 惟 の 異 同 な ど を 克 明 に 描 写 し て い る 。 も ち ろ ん 、 老 舎 は ﹁ 葬 儀 ﹂ を 主 題 と し た わ け で は な い が 、 当 時 の 北 京 市 民 の 生 活 を 写 し 出 す た め に は 、  ﹁ 葬 儀 ﹂ に 関 連 す る                                                                                                     ヘ   ヘ    へ こ と を 、 こ れ ほ ど に も し ば し ば 織 り 込 ま ざ る を 得 な か っ た も の と 思 わ れ る 。 従 っ て 、 わ れ わ れ は こ の 作 品 を 通 じ て 古 い 中 、                         ・                      ( 5 )

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(8)

、           中 国 の 葬 儀 に つ い て の 経 済 史 的 考 察                                                 三 〇   こ こ で 、 ﹁ 四 世 同 堂 ﹂ に 登 場 す る 人 々 の 葬 儀 観 を 整 理 す る と 、 つ ぎ の よ う に な る 。   1   老 人 た ち ⋮ ⋮ 保 守 的 、 安 心 立 命 型       家 族 制 度 に 立 脚 し 、 子 孫 繁 栄 を 至 福 と み る 。 自 分 の 死 後 は 、 上 質 の 棺 に 納 め ら れ 、 喪 服 の 子 孫 や 親 類 縁 者 に 送 ら れ 、 墓 地 に 埋 葬 さ     れ 、 線 香 を 絶 え ず 供 え て ほ し い 。 ﹂ ふ だ ん は 節 約 し て 、 で き れ ば 棺 桶 購 入 の 資 金 を 貯 え て お く 。   2   青 年 ( 一 ) ⋮ ⋮ 革 新 的 ・ 理 性 型     .          、                      、 、       .家 庭 お よ び 社 会 の 圧 迫 を 排 除 し 、 自 由 な 生 活 を め ざ し 、. 新 し い 国 家 の 建 設 に 挺 身 す る つ 旧 道 徳 、 葬 儀 な ど に は 無 関 心 、 否 定 的   3   青 年 (二 ) ⋮ ⋮ 頽 廃 的 ・ 浪 費 型       冠 婚 葬 祭 を 一 種 の 社 交 の 場 と 考 え 、 そ れ に 参 加 す る こ と を 楽 し む 。 親 の 葬 式 で も 派 手 に 催 し て 陽 気 に 騒 ぎ た い 。   4   青 年 (三 ) ⋮ ⋮ 現 実 的 ・ 妥 協 型       祖 先 の 墳 墓 と 文 化 の 保 存 に 協 力 的 。 形 式 的 な 儀 礼 は 無 意 味 と 感 じ て い る が 、 老 人 に 対 す る 思 い や り か ら 、 妥 協 的 な 態 度 を と る 。   5   北 平 人 一 般       シ ョ ウ 化 し た 葬 儀 に 対 し 無 感 動 。 隣 人 間 に 相 互 扶 助 の 精 神 が 強 く 、 貧 困 者 に 対 し て は 、 最 低 限 の 葬 い が で き る よ う に 協 力 し 合 う 。、       ﹁ 自 由 ﹂ と ﹁礼 儀 ﹂ の 両 立 を 理 想 と す る が 、 二 者 択 一 を 迫 ら れ た ら む し ろ ﹁ 礼 儀 ﹂ を と る 。         ヘ    ヘ     ヘ    ヘ               ヘ    ヘ     ヘ    ヘ     へ   以 上 、 古 い 中 国 か ら 新 し い 時 代 へ の 転 換 期 に お け る 葬 儀 の 態 様 お よ び 思 惟 に つ い て う か が っ た の で あ る が 、 中 国 人 の 葬 儀 に つ い て の 異 常 な 関 心 は 、 ま こ と に 瞠 目 す べ き も の あ る を 覚 え る 。 と く に 経 済 的 な 視 点 か ら み る の に 、 か れ ら の 日 常 生 活 に お け る つ つ ま し さ と 、 肉 親 者 の 葬 儀 に お け る 浪 費 と の 矛 盾 は 、 ど う 理 解 す れ ば よ い の で あ ろ う か 。 こ の 点 に 関 し 、 ・ い ろ い ろ な 見 解 が 成 り 立 つ で あ ろ う が 、 最 も 中 国 人 の 精 神 構 造 の 本 質 に 迫 り 、 明 快 な 教 示 を 得 る も の と し て 、 大 谷 孝 太 郎 教           (6 ) 授 の 業 績 の 一 端 を 左 に 紹 介 す る 。 い わ く 、     現 代 支 那 人 が 自 己 保 存 の 精 神 作 用 、 就 中 経 済 的 精 神 作 用 に 生 き る や 、 之 に 没 入 し て 全 幅 的 に 生 き 、 目 的 合 理 主 義 に 徹 す る 。 経 済 原 則   に 徹 す る 。 彼 の 生 活 は 経 済 原 則 の 十 全 な る 支 配 下 の 経 済 行 為 の 独 壇 場 と な る 。 利 あ る 所 即 ち 就 き 、 零 細 の 財 を む だ に し な い 。 利 慾 は 何

(9)

  も の に も 勝 り て 欲 せ ら れ る 。 自 信 力 な く 因 襲 主 義 的 な る 彼 は 得 む 所 の 大 な る よ り も 先 づ 失 は む 所 の 小 な る を 追 求 す る 。 か く て 、 彼 は 極   度 の 節 倹 家 と な る 。 然 る に 、 彼 が 社 会 意 識 の 拘 束 に 身 を 委 ね 、 自 己 保 存 を 逸 脱 す る 精 神 作 用 、 就 中 ﹁ 面 子 ﹂ の 登 場 す る 精 神 作 用 、 例 へ 、       も    ヘ    ヘ    へ   ば 祖 先 崇 拝 や 慈 善 に 生 き る や 、 之 に 没 入 し て 全 幅 的 に 生 き る 。 自 己 保 存 や 経 済 は 深 き 睡 眠 に 陥 り 、 祖 先 崇 拝 、 慈 善 の 独 り 舞 台 と な り 、   そ れ に 於 け る 合 理 的 動 機 決 定 聯 関 に 生 き る 。 自 ら 合 理 的 に 利 慾 は 棄 て ら れ 、 財 は 顧 み ら れ ぬ 。 か く て 、 彼 は 浪 費 者 と な る 。 彼 の 節 倹 と   浪 費 と の 矛 盾 、 利 慾 と ﹁ 面 子 ﹂ と の 矛 盾 は こ う し て 彼 の 顕 現 す る 所 で あ る 。 た だ 、 此 の 矛 盾 の 間 に も 合 理 主 義 は 、 目 的 合 理 主 義 で あ れ   否 ら ざ れ 、 財 に 関 し て 不 断 に 保 た れ る 。 浪 費 は 断 じ て 自 己 目 的 の 浪 費 に 非 ず 、 零 細 な る 財 と 難 も 無 目 的 に 棄 て ら れ る こ と は な い 。 一 定   の 目 的 の た め の 最 も 適 合 的 な る 手 段 で あ る 時 に は じ め て 莫 大 な る 財 が 浪 費 せ ら れ る 。 此 の 意 義 に 於 て 、 節 倹 と 浪 費 と の 矛 盾 、 利 慾 と     ﹁面 子 ﹂ と の 矛 盾 を 貫 い て 合 理 主 義 の 横 流 す る を 見 る 。                                                                   (7 )   と 。 ま さ に 問 題 の 核 心 を 衝 い た 明 快 な 解 釈 で あ っ て 、 凡 百 の 東 西 諸 家 の 見 る 所 か ら 卓 絶 し て い る よ う に 覚 え る の は 独 り 筆 者 の み で は あ る ま い 。

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西

( 1 ) ( 2 ) ( 3 ) ( 4 ) 一 九 四 五 年 執 筆 開 始 、 第 一 部 ﹁ 憧 惑 ﹂ を 刊 行 、 四 六 年 に 第 二 部 ﹁ 愉 生 ﹁ 五 〇 年 に 第 三 部 ﹁肌 荒 ﹂ を 刊 行 。 穂 積 文 雄 ﹁支 那 貨 幣 考 ﹂ 一 九 四 四 年 、 軟 貨 考 、 紙 銭 の 項 ( 六 四 -六 九 頁 ) 参 照 。 嚢 頭 銀 元 と も い う 。  一 圓 銀 貨 。 民 国 三 年 ご ろ か ら 鋳 造 さ れ た 。 日 本 で は 自 分 用 の 棺 桶 を ど う こ う と い う こ と は 余 り 耳 に し な い が 、 そ れ は 主 と し て 土 葬 と 火 葬 の 違 い に よ る の で は な か ろ う か 。 石 田 武 夫 教 授 に よ     中 国 の 葬 儀 に つ い て の 経 済 史 的 考 察                                                 一一 =

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