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『経済学批判要綱』における資本一般 : 経済学批判体制と『経済学批判要綱』(3)

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「経 済 学 批 判 要 綱 』に お け る資 本 一 般

一 経済学批 判体系 と 『経 済学批判要綱』(3)一

山   田  鋭   夫

1  体系 諸 プ ラ ン と資 本 一 般   『経 済 学 批 判 要 綱 』 形成 史上 の一 齣 とし て遺 され た バ ス テ ィア評 注 が,ケ ア リー調 和 論 批 判 の な か か らす ぐれ て 〈市 民社 会 一 世 界 市 場 〉 視 角 を対 自化 して         の い た こ とは,『 要 綱』 そ の もの お よび 当時 の経 済 学 批 判 体 系 の 特 徴 的 性 格 を理 解 す る のに,ひ とつ の 手 が か りを あ た え る。 わ れ わ れ は そ れ を 何 よ りも次 第 以 下 で のr要 綱 』 的 論 理 へ の 内在 に お い て生 か し てみ た い と思 うので あ るが,し か した ん に 論 理 的 記 述 の み で な く,r要 綱 』 に盛 りこ まれ た い くつ か の 体 系 諸 プ ラン の検 討 を 怠 る こ とは,プ ラ ン論 とし て はや は り片 手 おち で あ ろ う。1850 年 代 の マル クス に お い て経 済学 批 判 が体 系 的 に生 成 した とい うこ とは,当 面 の 問 題 対 象 の 体 系 的 叙 述 の み で な く,何 とい っ て も全 体 系 的 構 想 の プ ラ ン表 と し て の成 立 に 象 徴 的 に 表 現 さ れ る もの で あ っ てみ れ ぽ,そ れ ら体 系 プ ラ ンの 諸 表 を 等 閑 視 す る こ とは 「プ ラ ン ・フ ェテ ィシズ ム」 とは逆 の一 面 的 誤 謬 に 陥 りか ね ない 。 そ こで 本 節 で は 前 後 の 議 論 の 参考 の た め に も,ま ず 当時 の諸 プ ラ ン を 掲 示 した うえで,そ こか ら読 み と られ るか ぎ りで の体 系 的 特 徴 点 を確 認 し,か つ そ の なか で の 『要 綱 』 の 本 来 の 叙 述対 象 を確 定 し て お こ う。   『要 綱 』 に は あわ せ て4つ の プ ラ ンが 記 録 され て い る(<表1>∼<表4> 参 照)。 そ れ ぞ れ,「 序 説 」(<表1>),「 貨 幣 に か んす る章 」(<表2>),「 資 本 に か ん す る章」 開 始 部(<表3>お よび く表4>)に 書 き と どめ られ た もの で あ り,こ れ らはす べ てr要 綱 』 執 筆 の 当初 期(1857年11月 以前)の 作 品 に 属 す る。 1)  前 編 「マ ル ク ス 『バ ス テ ィア と ケ ア リー』 の 世 界像 」  (本誌 前号)参 照 。

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26     <表1>「 序 説 」 中 のプ ラ ン(28-9)   篇別 は 明 らか に 次 の よ うに され る べ きで あ る。 1)一 般 的 ・抽 象 的諸 規定,し た が っ てそ れ らは 多 かれ 少 か れす べ て の社 会 形 態 に通   じ るが,そ れ も上 に説 明 した 意 味 で で あ る。 2)市 民 社 会 の 内 的 編 制 を な し,ま た 基本 的 諸 階 級 が存 立 す る基 礎 とな っ てい る諸範   疇 。 資 本,賃 労 働,土 地 所 有。 それ ら 相互 の関 連 。 都 市 と 農 村 。 三 大 社 会 的 諸 階   級6こ れ ら諸 階 級 間 の交 換 。 流 通 。 信 用制 度(私 的)。 3)  国 家 の形 態 に おけ る市民 社 会 の 総 括 。 そ れ 自身 との 関 連 で の考 察 。 「不 生 産 的 」   諸 階 級 。 租 税 。 国債 。 公 信 用。 人 口。 諸 植 民地 。 移 住 。 4)生 産 の 国 際 的 関係 。 国 際 的 分業 。 国 際 的 交換 。為 替 相 場 。 5)世 界 市 場 と 恐慌 。       <表2>  「貨 幣 にか んす る 章」 中 の プ ラン(138-9)   交 換 価値,貨 幣,価 格 が考 察 され る この第1篇 で は,諸 商 品 は つ ね に現 存 す る もの と して 現 れ る。 形 態 規 定 は単 純 で あ る。 わ れわ れ は 諸 商 品 が社 会 的 生 産 の諸 規 定 を 表 現 す る こ とを知 って い るが,し か し社会 的生 産 そ の もの は 前提 で あ る。 しか し諸 商 品 ・は こ うした規 定 で 〔つ ま り一 定 の社 会 的 生 産 を表 現 す る もの と して)措 定 され てい る ので は ない 。 … … しか しな が ら商 品世 界 は 自己 自身 を 通 じて,自 己を の り こえ て,生 産 諸 関係 と して措 定 され て い る経 済 的 諸 関 係 を指 ししめ す 。 した が って,   生 産 の内 的 編 制 が 第2篇 で あ り,   国 家 に おけ る総 括 が第3篇 で あ り,       2)   国 際 的関 係 が 第4篇 で あ り,   世 界 市場 が 終 篇 を なす 。 この 世 界 市場 の篇 で は,生 産 は総 体 性 と して措 定 され,ま た そ の 諸契 機 のい ず れ もが 同様 に 措 定 され てい る。 だ が 同時 に そ こで はす べ て の 矛盾 が 過 程 に登 場 す る。 世 界市 場 は この ば あ い も また 同 様 に 全 体 の前 提 を な し,そ の担 い 手 を な す 。そ の さい 恐 慌 は,前 提 をの りこえ る こ とへ の 一般 的 な指 示 で あ り,新 しい 姿 態 の受 容へ の促 迫 で あ る。 これ に対 してr要 綱』 執 筆 も終 ろ う とし てい た 頃(1858年2∼4月)に は,<表 5>に み る よ うな プ ラ ンが 成 立す る。 わ れ わ れ は これ を 『要 綱 』 そ の もの(い

2)  ,,die Zusammenfassung  im  Staat  der  dritte,  das  internationale  Verhaltnis  der

  "f碗o,… …"(Grundrisse,1953,  S.139)は,新 メ ガ 版 で は 。die Zusammenfassung   im  Staat  den  3Le",  das  internationale  VerhaltniB  den  4een,… …"。  MEGA,∬/1-1,   Berlin  1976,  Text,  S.151.

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      『経 済 学批 判 要 綱 』 に お け る資 本 一 般    27     <表3>「 資 本 にか ん す る 章 」 中 のプ ラン:そ の1(175) 1.  1)  資 本 の一 般 的 概 念 2)資 本 の特 殊 性:流 動資 本 。 固 定 資 本。  (生活 手 段 と しての,原 料 と して の,労   働 用 具 と しての 資 本 。) 3)  貨 幣 と し ての 資 本 ∬.  1)  資 本 の量 。 蓄 積 。 2)そ れ 自身 で 測 られ た資 本 。 利 潤 。利 子 。 資 本 の 価値=す な わ ち利 子 と利 潤 と し   て の それ 自身 か ら区 別 され た 資 本 。  3)  諸 資本 の流 通 。 α)資 本 と資 本 との交 換 。 資 本 と収 入 との 交換 。資 本 と諸 価 格 。   β)諸 資 本 の競 争 。 γ)諸 資 本 の 集積 。 皿.信 用 と して の資 本 IV.株 式 資本 と して の 資 本 V.金 融 市場 と して の 資 本 V,富 の 源泉 と して の 資 本。 資 本 家 。   資 本 の の ち につ づ い て土 地 所 有 を 取 扱 うべ きで あ ろ う。 そ の の ち に賃 労 働 。 この 三 つ が す べ て前 提 され て の ち,い まや そ の 内的 総 体 性 に お い て 規 定 され た 流 通 と して の,諸 価 格 の運 動 。 他 方 では,生 産 が そ の三 つ の 基 本 的形 態 と流通 の諸 前提 の か た ち で 措 定 された も の と して の,三 つ の 階 級。   次 に は,国 家 。  (国 家 と市 民 社会 。一 租 税,ま た は不 生 産 的 階 級 の存 在 。 一 国 償 。 一 人 口。一外側 にむか っての国家:諸 植民地。外国貿易。為替相場。国際的鋳貨 とし て の貨 幣 。最 後 に,世 界 市場 。 市 民 社 会が 国 家 を の りこ えて 拡 進 ず る こ と。 恐 慌 。交 換 価 値 に立 脚 す る生 産 様 式 と社 会 形 態 の解 体 。 個 体 的 労働 を 社会 的 労働 と して,ま た そ の反 対 に,実 在 的 に措 定 す る こ と。) わ ゆ る 「7冊 の ノー ト」)に は 見 出せ な い が,当 時 の マ ル ク ス の 書 簡 中に 見 る こ とが で き,し た が って これ も 『要綱 』 期 の一 し か もそ の最 後 期 の一 プ ラ ン の ひ とつ を なす もの と み て よい で あ ろ う。 この く表5>の6部 編 制 プ ラ ン は,以 後 の マル クス に お い て そ の 内 容理 解 に変 更が くわ え られ る もの の,基 本 的 枠 組 とし ては 『資 本 論 』 段 階 に 至 る まで保 持 され てい くも の と考 え られ るの で,わ れ わ れ は これ を 「標 準 的 プ ラ ン」 と よぶ こ とに し よ う。   さ て,そ の 包 括 範 囲 や 重 点項 目のみ な らず,細 部 的 配 列 に お い て も必 ず し も

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28     <表4>「 資 本 に かん す る章 」 中 のプ ラン;そ の2(186-7)   資 本 1.一 般 性:   1)  ⊂資 本 の 一 般性:〕    a)貨 幣 か らの資 本 の生 成 。  b)資 本 と労 働(他 人 の労 働 に よ って媒 介 され て      い る)。c)労 働 に たい す る関 係 に よ って 分解 され た 資 本 の 諸要 素(生 産物 。      原 材料 。 労 働 用 具)。   2)資 本 の特 殊 化:    a)  流 動 資 本 。 固定 資 本 。 資 本 の通 流 。  3)資 本 の個 別 性:      資 本 と利 潤 。資 本 と利 子 。 利子 と利 潤 と して それ 自身 か ら区 別 され た,価 値 と     して の資 本 。 五.特 殊 性:   1)諸 資 本 の 蓄 積   2)  諸 資 本 の 競 争   3)  諸 資 本 の 集 積(同 時 に質 的 な 区別 として の,資 本 の大 き さ と作 用 の尺 度 と して    の,資 本 の 量 的 な区 別)。 皿.個 別 性:   1)  信 用 と して の 資本   2)株 式 資 本 と して の資 本   3)金 融 市 場 と して の資 本 。 金融 市 場 で は,資 本 はそ の総 体 性 に お いて 措 定 され て    い る。 そ こで は 資本 は,価 格 を規 定 す る もの,労 働 を雇 用 す る もの,生 産 を 規 制    す る も の,一 言 で い えば 生 産 源泉 で あ る。 相 互 に ひ と し く な い これ ら諸 プ ラ ン は,し か し 相 互 に 変 移 しつ つ も,そ こ か ら あ る 共 通 の 傾 向 的 特 徴 を 読 み と る こ とが で き る 。

  (1)  「一 般 的 ・抽 象 的 諸 規 定(die  allgemeinen  abstrakten  Bestimmungen)」

(<表1>)な い し は 「交 換 価 値,貨 幣,価 格 」  (<表2>)は 漸 次,独 立 の 大 項       3) 目 とし て は 消滅 し てゆ く。 3)  この 「一般 的 ・抽 象 的 諸規 定 」 が 超 歴 史的=「 生 産 一 般 」論 的 な もの か特 殊 歴 史 的   =「 商 品 ・貨 幣 」 論 的 な もの か につ い ては,論 争 の あ る とこ ろ であ る。 次 を参 照 。 佐   藤 金 三 郎 「『経 済 学 批 判』 体 系 と 『生 産一 般 』」(『経 済 学雑 誌 』 第39巻6号,1958年12   月)。 石 垣 博 美 「『経 済 学批 判 要 綱』 に おけ る方 法 論上 の一 考 察 」(玉 城 ・末 永 ・鈴 木

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『経済学批判要綱』 におけ る資本一般   29       の     く表5>標 準 的 プ ラ ン 1  資 本 a)資 本 一 般   1)価 値  2)貨 幣   3)資 木(資 本 の生 産 過 程,資 本 の 流通 過 程,両 者 の統 一   また は 資 本 お よび 利 潤 ・利 子)   b)競 争,す なわ ち 多 数 の諸 資 本 の 対 相互 行 動   c)  信 用。 こ こで は 資 本 が個 別 的 諸 資 本 に対 立 して一 般 的 な要 素 と して現 れ る   d)株 式 資 本。 最 も完 成 した形 態(共 産主 義 に移 るた め の)で あ る と同時 に 資 本 の   あ らゆ る矛 盾 を 具 え た も の と して の それ II土 地 所有 皿 賃 労 働 IV国 家 V  国際 貿易 VI世 界 市 場   (2)の ち の 資 本 ・土 地 所 有 ・賃 労 働 の 諸 独 立 部 篇(<表3>お よ び く表5>)

は,元 来,「 市 民 社 会 の 内 的 編 制(die  innere  Gliederung  der burgerlichen

Gesellschaft)」(<表1>)な い し は 「生 産 の 内 的 編 制(die  innere Gliederung  der

Produktion)」(<表2>)を な す 諸 範 疇 と し て 設 定 さ れ た も の で あ り,こ の い       5) わ ゆ る前 半体 系 一 「本 来 の経 済 学 の基 礎 展 開 を ふ くむ は じめ の3部 」 一 は 「市 民 社 会 」 論 あ るい は 「内 的 市 民 社 会」 論 と して統 一 的 に把 握 され るべ き も   編 『マ ル ク ス経 済学 体 系 』 上,岩 波書 店,1957年,所 収)。 同 「『経 済学 批 判 要綱 』 に   お け る 『生 産 一 般』 につ い て の 一考 察 」  (北大 『経 済 学 研 究』 第16号,1959年11月)。   深 町 郁 弥 『所有 と信 用 』 日本 評論 社,1971年,3-11頁 。 4)<表1>か ら く表5>に お い て ゴチ ックは 引用 者 。 重:要項 目 を 一 覧 に供 しやす くす   るた め,適 宜 改 行 した ケー ス も多 い。<表5>は1858年2月22日 付 お よび 同年3月11   日付 の マル クス の ラサ ー ル宛,そ れ に 同年4月2日 付 の'マル ク スの エ ンゲ ル●ス宛 の 手 紙(岡 崎 次郎 訳 『資 本 論書 簡 』1,国 民文 庫,所 収)か ら合 成 した 。 5)  「全 体 が 分割 され る6部 をす べ て一 様 に仕 上 げ よ うとい うつ も りは さ らさ らな い 。   そ うで は な く,あ との3部 〔国 家 ・国 際 貿易 ・世 界 市 場〕 で はむ しろ た だ基 本 線 だ け   が あた え られ るが,本 来 の 経 済 学 の 基 礎展 開 を ふ くむ は じめ の3部 〔資 本 ・土 地 所   布 ・賃 労 働〕 で は,い た る と こ ろで 詳 論 が さけ られ な い 。」(1858年3月11日 付 の マル   ク スの ラサ ール 宛 の手紙,『 資 本 論 書 簡』1,前 掲,所 収 。)

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30 の で あ った 。   ㈲  そ の 「(内的)市 民 社 会 」 論 とは,上 の 三 大 基 本 カテ ゴ リー の個 別 的列 挙 に と どま らず,「 そ れ ら相 互 の 関 連 。 都 市 と農 村 。 三 大社 会 的 諸 階 級。 これ ら 諸 階 級 間 の交 換 。 流 通 。 信 用 制 度(私 的)」(<表1>)を 含 む もの で あ った 。 こ れ は の ち に,「 そ の 内 的総 体 性 に お い て規 定 され た 流 通 と して の,諸 価 格 の 運 動 」 お よび 「生 産 がそ の三 つ の基 本 的 諸 形 態 と流 通 の諸 前 提 の か た ちで 措 定 さ             コ     れ た もの と して の,三 つ の階 級 」  (<表3>)の 理 論 的 構 想 へ と集 約 され る。   (4)い わ ゆ る後 半体 系 が 国家 ・国際 貿 易 ・世 界 市 場(と 恐 慌)か ら成 る こ と は 基 本 的 に は 不 変 で あ るけ れ ど も,こ れ ら三 項 目を さ らに 「国 家 」 の名 の も と に総 括 す る こと も あ り(<表3》),ま た そ の 各 々が ふ くむ べ き内 的亜 項 目につ い       の て も 必 ず し も 一 定 し て い な い 。   ㈲   し か し 後 半 体 系 に つ い て 説 明 的 指 示 が あ た え られ る か ぎ り で は,例 え ば,国 家=「 国 家 の 形 態 で の 市 民 社 会 の 総 括(Zusammenfassung  der burger.

lichen Gesellschaft  in der Form  des Staats)」(<表1>),世 界 市 場=「 市 民 社

会 が 国 家 を の り こ え て 拡 進 ず る こ と(Ubergreifen  der burgerlichen  Gesellschaft

caber den Staat)」   (<表3>)と い う よ うに,こ こ で も 「(外 的)市 民 社 会 」 論 と し て,あ る い は 市 民 社 会 と 国 家 の 関 連 を 問 う も の と し て,統 一 的 性 格 を あ た え られ て い る 。 ま た,他 の 二 項 目 に く らべ て 世 界 市 場 項 目の 説 明 が 詳 し い(<表 2>お よ び く表3>)の も,注 意 し て お い て よ か ろ う。 くわ え て そ の 世 界 市 場 が 「生 産 の 総 体 性 」 を 表 現 す る 場 と し て の み な らず,そ う で あ るが ゆ え に 「す べ て の 矛 盾 が 過 程 に 登 場 す る 」 場 と し て 意 味 づ け ら れ て い る こ と に は(<表 2>),最 大 限 の 注 目 を し て お くべ き で あ ろ う。   ⑥   資 本 の 項 目 を 構 成 す る 内 的 亜 項 目 は く表3>以 降 に 登 場 す る の で あ る   6)例 え ば 「諸 植 民 地 」 の取 扱 い に か んす る く表1>と く表3>の 相違 。 これ を め ぐっ    て は,吉 信 粛 「帝 国 主 義 と世 界 の 領 土的 分 割 」  (島 ・宇 高 ・大橋 ・宇 佐 美 編 『新 マ ル     ク ス経 済学 講 座 』2,有 斐閣,1972年,所 収),同 「『外 側 にむ か って の 国家 』 と外 国   貿 易 」(原 田三 郎 編 『資 本主 義 と国 家』 ミネル ヴ ァ書房,1975年,所 収),游 仲 勲 「マ    ル クス の労 働 力 国 際 移 動論 一 と くに 『資 本 論 』 に お け る一 」(『海 多事 情 研 究 』 第     1巻2号,1973年11月),参 照 。

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      『経済学批判要綱』におけ る資本一般  31 が,当 初 は一 般 性 ・特 殊 性 ・個 別 性 の ヘ ー ゲル 的 トリア ーデ に お い て構 想 され てい た(と くに く表4>)。 これ は や が て,資 本 一 般 ・競 争 ・信 用 ・株 式 資 本 (<表5>)と い う周 知 の4篇 編 制 に発 展 し て い く。 ただ し,こ の発 展 した 篇 別 に お い て も元 の 構成 が 生 きて い る と考 え る な らば,資 本 一 般(一 般 性)・ 競 争       の (特 殊 性)・ 信 用 と株 式 資 本(個 別 性)と い う ト リ ア ー デ が 成 立 し う る で あ ろ う。   (7)資 本 項 目 の プ ラ ン に か ん す る か ぎ り,<表4>は く表3>の 発 展 形 態 と 考 え られ る が,こ の く表4>中 のr1.一 般 性 」 を 構 成 す る 「1)〔 資 本 の 一 般 性 〕」 「2)資 本 の 特 殊 化 」 「3)資 本 の 個 別 性 」 の 諸 篇 名 は,少 く と もr要 綱 』 の 実 際 的 記 述 中 に は 採 用 され て い な い 。 の み な らず,そ れ ら 「1)」 ∼ 「3)」 を そ れ ぞ れ 構 成 す べ き 細 部 的 諸 論 点(「a)」 .「b)」 な ど)も,『 要 綱 』 の 実 際 の 叙       おう 述 を カ ヴ ァー し き って い る もの とは看 な しが た い 。   大 略 以上 の よ うな特 徴 点 を 指 摘 す る こ とが で き よ う。 全 体 的 に み た場 合,市 民 社 会 ・国 家 ・世 界 市 場 が や は り結 節 環 を な して お り,そ れ らの相 互 関 係 が プ ラン の骨 格 を 形 成 して い る こ とは,ほ ぼ確 認 で き よ う。 そ れ と同 時 に一 こ こ で 『要 綱 』 の 実 際 的叙 述 に 即 す るな らば 一 ,この 〈市 民 社 会 一 国 家一 世 界 市 場 〉 体 系 の 認 識=批 判 に と って の決 定 的重 要 環 は,い うまで もな く 「資 本」 で あ る。     資 本 は 市 民 社 会 の い っ さい を 支 配 す る 経 済 力 で あ る。 そ れ は 出発 点 とな     り,ま た終 結 点 とな らな け れ ぽ な らず,そ して 土 地所 有 に 先 だ って展 開 さ    れ な け れば な らな い。(27)    資 本 概 念 の厳 密 な 展 開 が 必 要 で あ るの は,資 本 自体 一 そ れ の抽 象 的 模 写 7)事 実,の ち の プ ラン的 発 言 に お い て も マル クス は,「 信 用 」 な い し 「信 用制 度 」 な   る名称 を も って,時 に 「株 式 資 本」 論 をふ くむ広 義 のそ れ を 指 して いた ふ しが あ る。   1862年12月28日 付 の マ ル ク スの ク ー ゲル マ ン宛 の 手 紙(『 資 本論 書 簡 』1,前 掲,所   収),『 剰 余 価 値学 説 史 』 ∬(『全 集 』 第26巻 第2分 冊)693頁 な どを参 照 。 8)拙 稿 「マル クス に おけ る 『経 済学 批 判 要綱 』」(『講 座 マル ク ス経 済 学』第6巻 一 コ   メ ン タール 『経 済学 批 判 要 綱 』 上一,日 本 評論 社,1974年,所 収)20頁,参 照 。

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  32     が そ の概 念 で あ る一 が 市 民 社 会 の 基礎 で あ るの と同 様 に,資 本概 念 が 近     代 の経 済 学 の基 本 概 念 で あ るか らで あ る。 関 係 の 基本 前 提 のす る どい把 握     か ら,市 民 的 生 産 の い っ さい の 矛 盾 が 明 らか に な らな けれ ば な らな い し,       の     資 本 が 自分 自身 を の りこえ てす す み で るそ の限 界 も明 らか に な らな け れ ば     な らな い。(237)   こ うして マル ク スの 経 済 学 批 判 体 系 は 資 本 の項 目を も って 始 ま るの で あ る が,し か し 『要 綱 』 は そ のす べ て を包 括 す る も ので は な い 。 『要 綱 』 の 「資 本 」 プ ラ ンを も って して は そ の実 際 的叙 述 体 系 のす べ てを 必 ず し も裁 断 し きれ る も の で な い こ とは,前 述 した と こ ろで は あ るが,し か し大 き く対 質 させ てみ る と き,r要 綱 』 の 固 有 の 叙 述 対 象 が 資本 の部 の な か で もそ の最 初 のrI.一 般 性 」 (<表4>)=ra)資 本 一 般 」(<表5>)に 限 定 され て い た とい う こ とは,ま ず 異 論 の な い と ころ で あ ろ う。 事 実,『 要綱 』 自身,そ れ を何 度 も 明記 して い る。 例 え ば こ うで あ る。             くう くコ    む        む  くう     こ こ で わ れ わ れ が 取 りあ げ て い る の は そ の も の と し て の 賀 春(das  Kapital     als solches)  〔資 本 一 般 の こ と 〕 … … で あ る 。 諸 資 本 の 多 様 性 等 〔競 争 等     の こ と〕 は ま だ 関 係 が な い 。(∠52)           コ   コ   リ          重 要 な こ とは,こ こで は な に よ り も まず 第 一 に,そ の もの と し ての 資 本 だ    け を 注 目す る と い う ことで あ る。 とい うの は,こ こで 展 開 され る 諸 規 定    は,価 値 一般 を 資本 にす る とこ ろ の諸 規 定,そ の もの と し ての 資本 の種 差    を 構 成 す る と ころ の諸 規 定 だか らで あ る。(554) 豆  『要 綱』 資本 一般 の狭 さ と広 さ   資 本 一般 とはす ぐ上 にみ た よ うに,ま ず,「 価 値 一 般 を 資 本 に す る と ころ の 諸 規 定,そ の もの と して の資 本 の種 差 を構 成 す る と こ ろの 諸 規 定 」(554)で あ り,あ るい は また 「資 本 と して の価 値 を た ん な る価 値 また は貨 幣 と して の 自己

g)  ,,… …die  Grenze,  an  der  es  uber  sich  selbst  hinaustreibt"(Grundrisse,  S.237)

  は,新 メ ガ 版 で は,,… …die  Grenze,  an  der  es  uber  sich  selbst  hinaus  treibt"。   MEGA,∬/1-1,  Text,  S.246.

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      『経済学批判要綱』におけ る資本一般  33 か ら区 別 す る諸 規 定 の 総 括 」(217)と 概 念 され る。 これ は と くに,論 理 的 ・プ ラ ン的 先 行者 と して の 「価 値 」 「貨 幣 」 と区 別 した 資 本 一 般 の 規 定 で あ る。 こ ん どは これ を 後方 との 関 連 で規 定 す れ ぽ,こ うで あ る。          む  む  む      くコ  む  む  くコ  くコ  こコ     特殊 な諸 資本 とは 区別 され た 資 本 一 般 は,な るほ ど1)ひ とつ の抽 象 と し     て だ け現 れ る。 す なわ ち,悠 意 的 抽 象 で は な くて,他 の あ らゆ る富 の形 態     一 な い しは 生 産(社 会 的)が 展 開 され る も ろ も ろの 様式 一 か ら区 別 さ     れ た 資本 の種 差 を 把 握 す る抽 象 で あ る。 そ の もの と して の各 種 資本 に共 通     し,ま た そ れ ぞ れ の一 定 の 価 値 額 を 資 本 にす る もの は,こ う した諸 規 定 で     あ る。 … …2)だ が 特 殊 な 現 実 的 諸 資本 か ら区別 され た資 本 一 般 は,そ れ       む   くコ     自身 ひ とつ の現 実 的 実 存 で あ る。 … … だ か ら一 般 的 な もの は,一 方 で は た          くコ  くコ           だ 思 惟 され た 種 差 で あ るが,そ れ は 同時 に,特 殊 な も のや 個 別 的 な もの の     形 態 と な らん で,ひ とつ の 特 殊 的 な現 実 的形 態 で あ る。(353)   価 値 一 般 を資 本 た ら しめ る と ころ の諸 規 定 で あ る と同時 に,し か も現 実 の 特 殊 的 諸 資 本 か らの 「抽 象 」 で あ りつ つ な おそ れ 自身 ひ とつ の 「現 実 的 実 存」 を' なす 諸 規 定,一 この よ うに前 後 を 限定 され たか ぎ りで の資 本 の諸 規 定 が,資 本 一 般 な ので あ る。 とい うと き,そ の積 極 的 か つ 根 底 的 な 内 容 を な す もの は, い うまで もな く資 本 と労働 との 関係 で あ り,資 本 に よ る他 人 労 働 の 領有 の 関 係 で あ る。 資 本 に よ る他 人 労働 の領 有 こそ,資 本 の 「本 質 的 関 係 」 で あ り,「 資       ユの 本 の 概 念 」 を 構 成 す る も の だ か らで あ る(236,322,584)。 そ し て こ の よ うな 資 本 一 般 認 識 に か ん す る か ぎ り,r要 綱 』 と 『資 本 論 』 と の 間 に は 決 定 的 な 相 違 は な い 。   決 定 的 に 相 違 す る の は,『 資 本 論 』 に 比 べ て 『要 綱 』 で は,資 本 一 般 の 枠 取 りが き わ め て 狭 く 限 定 され て い る と い う こ と で あ る 。 す な わ ち よ く 指 摘 さ れ る     1D よ うに,『 要 綱 』 資 本 一 般 論 は あ く ま で も 「ひ と つ の 資 本(ein  Kapital)」 論 と 10)  佐 藤 金 三 郎 「『経 済学 批 判 』体 系 と 『資 本 論』 一 『経 済 学批 判 綱 要 』 を 中心 と し   て一 」  (『経 済学 雑 誌 』第31巻5・6号,1954年12月)27-8頁,参 照 。 11)佐 藤 金 三 郎,同 上 論 文,29-31頁,を は じめ と して,こ の 点 は 諸家 の ひ と し く認 め   る と ころ で あ ろ う。

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  34               の         し て方 法 的 に 限 界 づ け られ て い るの で あ る。 い わ く,「 わ れ わ れ はそ の もの と して の資 本 な る もの 〔資 本 一般 〕 を考 察 す る ので あ るか ら,こ こで は や は りな             お,ひ とつ の 資 本 が 活 動 して い る とい う形 態 を 仮 定 すれ ば よい 。」(613-4)別 言 す れ ぽ,「 多 数 の 諸 資 本」  (競 争)に か んす る諸 規 定 が 資 本 一 般 の うちか ら 厳 し く排 除 され て い るの で あ る。例 えば,  「こ こで はわ れ わ れ は まだ 多 数 の諸 資 本 に は か か わ りあ わ な い」(417),「 多 数 の 諸 資 本 は まだ わ れ わ れ に と って 現 存 しな い 」(617),と 。 も ち ろん そ の よ うな 「ひ とつ の資 本 」 とは,任 意 の 個 別 具 体 的 な一 資 本 を直 接 に意 味 す る ので は な く,  「わ れ わ れ が こ こで 取 りあ げ て い るの は,そ の もの と して の資 本,す な わ ち 全 社 会 の 資 本(the  capital of the whole s㏄iety)で あ る」(252)と 語 られ て い る よ うに,  「全 社 会 の 資本 」 を 内 包 し代 表 す る概 念 で あ る。 「全 社 会 の資 本 」 が あ た か も 「ひ とつ の 資本 」 か ら 成 るか の よ うな方 法 的 前 提 の も とで,各 種 資 本 に 共 通 す る資本 の 種差 を摘 出 し 論 理 展 開す る こ とが,課 題 と され て い るの で あ る。 この 〈一=全 〉 な る方 法 視 点 は,そ れ を 突 破 す る論 理 的 萌 芽 を 宿 しつ つ も結 局 は,『 要 綱 』 資 本 一 般 論 で 一 「第3篇 果 実 を もた らす も の と して の 資 本 」 に お い て さ え 一 実 に厳 密 に 遵 守 され て い る ので あ り,し た が って多 数 の諸 資本(い わば 〈多=全 〉 の視 点)を 前 提 とす る理 論 諸 領 域 は 固有 の考 察 対 象 か ら頑 と して排 斥 され て い る。 この点,〈 一=全 〉 か ら く多=全 〉 へ の 視 点 転 回 の うち に 資本 の一 般 的 概 念 が        ラ 捕 捉 され る と こ ろ の 『資 本 論 』 と,顕 著 な相 違 を なす 。   こ の よ うに 厳 密 な る単 数 資 本 論 と して狭 く境 界 づ け られ た 『要 綱 』 資 本 一 般 論 で は あ るが,し か し一 そ して 重 要 な 点 で あ る が一 こ の資 本 一 般 論 は あ る 意 味 では 非 常 に 広 い 。r要 綱 』 を資 本一 般 の論 理 と して読 む と き,わ れ わ れ は た だ ちに,夥 しい 数 の,多 数 の 諸資 本 ・競 争 か ら世 界 市 場 ・恐 慌 まで に か ん す る プ ラン上 お よび 理 論 上 の 諸 論 及 に遭 遇 す る。 そ れ らはい わ ば,『 要 綱 』 的 資 本 一 般 が もつ 後 方 理 論 へ の 開 口部 で あ る。 そ の よ うな開 口部 と し て競 争 や 信 用 12)拙 稿 「資 本 流 通論 の生 成 と再 生産 認 識 一 『経 済 学 批 判 要 綱』 に 内在 して一(上)」   (『彦 根論 叢 』x;155号,1972年:4月)参 照 。

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      『経済学批判要綱』 におけ る資 本一般   35 の 規定 が 多 い の は,同 じ 「資 本 」 の部 を構 成 す る も の と して い ってみ れ ば 当 然 で あ るが,し か し こ こに注 目す べ きは,土 地所 有 ・賃 労働 な どに くらべ て,ま た 国家 な どの項 に く らべ て,世 界 市 場 お よび 恐 慌 へ の展 望 が きわ め て豊 富 に存 在 し,か つ 光 彩 を 放 って い る とい うこ とで あ る。 つ ま り体 系 プ ランに 即 し てい え ば,冒 頭=資 本 一般 と終 篇=世 界 市 場(恐 慌)と の連 関性 が一 土 地 所 有 や 賃 労働 との連 関 性 に く らべ て一 非 常 に強 い とい う特 徴 が 浮 び あ が って くるの で あ る。 か の 「バ ス テ ィア と ケ ア リー」 論 に お け る く市 民 社 会 一 世 界 市 場〉 視 角 を,ま た 体 系 諸 プ ラ ンに お け る 「世 界 市 場 と恐 慌 」 の説 明 の豊 富 さ を想 起 す れ ば,こ れ は あ る程 度 推 察 の つ く こ とか も しれ な い。   この 特 徴 点 は しか し,た ん に世 界 市場 ・恐 慌 へ の プ ラ ン的 留 保 文 言 が 多 出 す る との み 理解 さ れ るべ きで は な い。 問題 はそ の よ うな量 的 頻 度 とい う点 に あ る の で は な く,お よそ資 本一 般 な る ものが 何 を イ メ ー ジ し何 に 重 点 を お い て 展 開 され よ うと して い た の か,否 さ らに は,資 本 一 般 が い か な る理 論 的 な質 に お い て展 開 され よ う とし て いた のか とい う,資 本 一 般 そ の もの の 独 自な射 程 と論 理 性 の 問題 とし て理 解 され るべ きで あ ろ う。 つ ま り,世 界 市 場 と恐 慌 の規 定 が 重 き を なす とい うこ とは,『 要 綱 』 執 筆 期 の マ ル クス の表 象 の広 さ(世 界 大 的 性 格)を 示 す も の と して,ま た表 象 に と ど ま らず に,資 本 一 般 の理 論 と して の 射 程 の 広 さを 語 る もの と して,受 け と るべ きで あ ろ う。 や や 先 取 りして い うな ら ば,資 本 一般 の実 際 的 叙述 が,か の プ ラン(<表1>∼<表3>)に い う 「市 民 社 会 の 内 的編 制」 論(〈 資本 一 土 地 所 有 一 賃 労 働 〉 体 系)に まず 集約 され て い く方 向性 に お い て で な く,む し ろ体 系 の 最 終 項(理 論 と表 象 の接 点)た る 「世 界 市 場 と恐 慌 」  (資 本 制 生 産 とそ の 矛 盾 が 総 体 性 に お い て措 定 され る場)に 向 け て ス トレー トに直 結 す る よ うな,そ うい う理 論 質 に お い て展 開 され て い る と い う こと であ る。 こ こに 『資 本 論』 と対 比 した 『要 綱 』 の一 特 徴 が あ り,か つ 『要 綱 』 資 本 一 般 の 独 特 の広 さが あ る。 『要 綱 』 はた しか に,表 象 と理 論 の 双 方 に おけ る緻 密 さで は 『資 本 論』 に席 を譲 るか も しれ ない が,し か しか か る理 論 的 射 程 の宏 大 さに お い て は決 して劣 る もの では ない 。   事 実,  r要 綱 』 の 世界 市 場 規 定 を め ぐっ ては,す で に 少 な か らず 注 口の あ る

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 36 と こ ろで あ る。 例 え ば 森 田桐 郎 氏 は,「 こ の草 稿 〔r要綱 』〕 が 基 本 的 に は 『資 本 一 般 』 の範 囲 を 出 る もの で は な い に もか か わ らず,上 向 的 叙 述 の か な た に理                                  論 的 に再 生 産 さ るべ き世 界市 場 に か んす る表 象 が 論 理 段 階 を とび こえ て 随 所 に 生 々 と展 開 され て い る」 と述 べ,さ らに は表 象 に尽 き ない 世 界 市 場 形 成 の 論 理       13) を統 一 的 に捕 捉 して い る。 また,こ れ よ りさ き平 田清 明氏 は,「 『経 済 学 批 判 要 綱 』 の理 論 的 特 徴 」 の 筆 頭 に そ の 世 界市 場叙 述 を挙 げ,こ れ を 「世 界 市 場 の 抽 象 的 規 定 」 とと らえた うえ で,資 本 一般 論 に と って の そ の不 可 欠 性 を こ う強 調 す る。          コ  コ  コ   くコ くう     最 終 篇 〔世 界市 場 篇 〕 以 前 にお い て,「 国家 」 篇 以 前 に おい て さえ,世 界 市 場 の抽 象 的   規 定 は,叙 述 の なか に と りいれ られ うる の であ り,ま た,と りい れ られ ねば な らな い の   で あ る。 … …言 いか えれ ば,経 済 学 体 系 の 各篇 別 領 域 に お い て,ま た 「資本 一 般 」 の 各   論 理 次 元 に お い て さえ,そ の論 理 展 開 の 前 提 と して 「世 界市 場 」=「 世 界市 場 と恐 慌 」   が 措 定 され て い る ので あ り,各 篇 各 車 の 論 理段 階 の許 容 す るか ぎ りで,「 世 界 市 場 と恐   慌 」 の抽 象 的 一般 的 側 面 が,規 定 と して 叙 述 の前 面 に の ぼ り うるの で あ り,ま た,の ぼ   .  ●  ●  ●  ・  ●        14)   らね ば な らぬ の で あ る。   資 本 一 般 論 に お け る 「世 界 市 場 の 抽 象 的 規 定 」 の 必 然 性 とは,裏 を か え せ ぽ 資 本 一 般 そ れ 自身 の 世 界 市 場 的 規 定 性 と い う 性 格 に 通 じ る。 そ し て こ れ は, r資 本 論 』 で 否 定 さ れ る の で は な い と し て も,『 要 綱 』 に こ そ 鮮 烈 な 資 本 一 般 の 世 界 市 場 的 射 程 を 物 語 る も の で あ ろ う。 と い う こ と はr要 綱 』 中 の 世 界 市 場 記 述 が,い わ ゆ る プ ラ ン 的 先 取 りな る も の に の み 解 消 され て 理 解 さ れ て は な ら な い とい う こ と で も あ る 。 そ うで は な く,す ぐれ て 世 界 市 場 規 定 を 内 包 す る 『要 綱 』 資 本 一 般 の 独 自 な 理 論 質 と 論 理 性 格 が,ま さ に こ こ で 問 わ れ ね ば な ら な い の で あ る。 こ れ を 尖 鋭 に 提 起 した の が 本 山 美 彦 氏 で あ る 。 氏 は 問 う。   R界 市 場 規 定が 資 本 一 般 の 論理 を補 完 す る もの として,単 な る例 証 と して必 要 に応 じて   叙 述 され て い る の にす ぎぬ の か,あ るい は そ の次 元 で 展 開 され るべ き必 須 の論 理 的 要 素   で あ るの か … …。 確 か に,マ ル ク スは 体 系移 行 の各 論 理 次 元 で必 ず 世 界 市 場 を登 場 させ   て い る。 しか し,こ の こ とにつ い て,こ れ まで は留 保 条 件 を付 け て 叙 述 され てい る とい 13)  森 田桐 郎 「『経 済 学 批 判 要綱 』 に お け る世 界 市 場 論 」(関 西 大 『経 済 論 集』 第26巻2   号,1976年9月)。 14)平 田清 明 『経 済 学 と歴 史認 識』 岩 波 書 店,1971年,8-9頁 。

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      『経 済学 批 判 燗 綱 』 に:おけ る資 本 一般    37   う認 識 以上 に つ き進 んで 考 え られ て きた で あ ろ うか 。 そ れ は後 に展 開 す べ き論 理 次 元 の   先取 りと して 単純 に理 解 され るべ き もの で あ ろ うか 。 結 論 先取 的 に言 え ば,資 本 の 各 論   理 次元 に おけ る制 限設 定 と,そ の克 服 の論 理 な らび に姿 態 とが展 開 され るべ く設 定 され   た部 面,こ れ が マル クス の 前 半 体系 の 叙 述 に 見 られ る世 界市 場 だ った の で は なか ろ う  15)  か。   本 山 氏 は こ こで,世 界市 場規 定 を 「単 な る例 証 」 あ るい は 「後 に 展 開 す べ き 論 理 次 元 の先 取 り」 とみ る見解 を し りぞ け,原 理 論 に とっ て 「必 須 の論 理 的 要 素 」 とお さえ た うえ で,資 本 の もつ 制 限性 の可 能 的克 服 の場 と して これ を 意 義 づ け る。 す な わ ち,資 本 は そ の 運動 の各 契 機 に お い て さ ま ざ ま な制 限 に 出 くわ す ので あ るが,原 理 論 は 「制 限 が可 能 的 に克 服 され た も の と想 定 した 上 で 究 極 の制 限 た る資 本 の 矛 盾 を摘 出す る論 理 」 と して体 系 展 開 され ね ば な らず,そ の た め には 「可 能 性 が 現 実 性 に転 化す るか ど うか は別 に して,と にか く体 系 の進 展 のた め には,可 能 的 克 服 の契 機 が 必須 の コ ブ と して原 理 論 内 に設 定 され て い な けれ ば な らない ので あ る。」 そ の よ うな可 能 的克 服 の場 が マ ル クスに あ っ て は世 界 市 場 規 定 な の で あ り,「 世 界 市場 の原 理 論 内 に おけ る規 定 は,従 って 体       16) 系 進 展 を保 証 す る必 然 的 な コ ブで あ る。」 こ の本 山 説 の うち に わ れ われ は,『 要 綱 』 に お け る世 界 市 場 規 定 の 必 然 性 と同 時 に,原 理 論 そ の もの の質 が 問 わ れ て い る の を見 い だ す 。 原 理 論 に と って 世 界 市場 規 定 を一 そ れ を ど う位 置 づ け る か は ひ と まず 別 に して一 不 可 欠 な もの とし て包 摂 し てゆ くこ の観 点 が 示 唆 す る と ころ は大 きい 。 た だ し本 山 氏 に お い て は,原 理 論=プ ラン前 半 体 系 とい う       17) 箸 置 が 証 明ぬ きで 前 提 され て お り,ま た これ に関 連 してr資 本 論 』 とは 区 別 さ れ た 『要 綱 』 の独 自的 論 理 を 問 う意 識 が うす い。 とはい え,総 じて こ こに 浮 彫 り とな る のは,『 要 綱 』 資 本 一般 が す ぐれ て世 界 市 場 ・恐 慌 規 定 を 必 須 の 論 理 的 要 素 と して い る こ と一 少 く と もそれ を鮮 明 に語 ってい る こ と一 で あ り, そ の よ うな もの と して の 『要 綱 』 資 本一 般 の射 程 の広 さで あ る。 この 点,節 を 15)  本 山美 彦 『世 界経 済 論 』 同:文館,1976年,37-8頁 。 16)  以上,同 上 書,39,43頁 。 17)宮 崎犀 一 「世 界経 済 論 の 方 法 一 本 山美 彦 著 『世 界経 済 論 』 を 読 ん で」(『 経 済 評   論 』 第25巻13号,1976年11月)105頁,参 照。

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38 あ ら た め て わ れ わ れ の 眼 で 追 っ て み よ う。 皿:  r要 綱 』 資 本 一 般 の論 理 性 と位 相   r要 綱 』 で 世 界 市 場 が 積 極 的 に 論 じ られ る の は,(1)「 貨 幣 に か ん す る 章 」 中 の 依 存 関 係 史 論=三 段 階 世 界 史 論(74-82)お よ び 貨 幣 の 第 三 規 定 論(136-8), (2)「資 本 に か ん す る 章 」 で の 生 産 過 程 か ら 流 通 過 程 へ の 移 行(実 現)の 理 論 (305-25),お よ び(3)回 章 中 の 流 通 時 間 論(436-47)な ど で あ る。 ほ か に も 関 連 す る諸 命 題 は 随 所 に 登 場 し,な か で も 「対 外 貿 易 の 文 明 化 作 用 」(167-8,426

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詩1搬

い て で あ り,し か も(2>の移 行=実 現 論 は 『要 綱 』 に こそ 独 自な 理 論 で あ り,ま .た③ を ふ くむ 資 本 流 通 論 は,『 要 綱』 で は 『資 本 論 』 よ りもは るか に 大 きな 比 重 を あ た え られ て い るの で あ る。 わ れ われ も こ こに焦 点 を定 め よ う。

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介 ・諏 もあ ・磁 ここで・そ・各 ・を弓1用す ・煩 ・さけ ・《動言す鳳 資 本 に よ っ て 生 産 さ れ た 絶 対 的 剰 余 価 値 を 実 現 す べ き対 価 の 必 要 性,し た が っ て 流 通 圏 域 拡 大 の 必 要 性 とい う論 理 の チ ャ ン ネ ル か ら,資 本 の 「世 界 市 場 を 創

造 し よ う とす る 傾 向(die  Tendenz  den Weltmarkt  zu schaffen)」 を 導 出 し つ

つ,他 方,相 対 的 剰 余 価 値 の 生 産 に と も な う生 産 諸 力 の 増 大(剰 余 労 働 の 量 的 増 大 の み な らず,剰 余 労 働 の 質 的 な 区 別 の 多 様 化,分 業 の 多 様 化,使 用 価 値 の 多 様 化)が 条 件 と し 結 果 とす る も の と し て の,消 費 圏 域 拡 大(新 し い 欲 望 の 生 産 を ふ くむ)の 必 要 性 と い う理 路 か ら,「 資 本 の 偉 大 な 文 明 化 作 用(the  great civilising influence  of capital)」 が 説 か れ る(311-3)。 そ れ の み で な い 。 こ の あ と資 本 流 通 論 に い た っ てr要 綱 』 は,流 通 時 間 の 価 値 増 殖 制 限 性 → 流 通 時 間 18)平 田清 明,前 掲 書,第1章;森 田桐 郎,前 掲 論文;森 沢 恵 子 「資 本 の世 界 化 傾 向 と   本 源 的 蓄積 一 『経 済学 批 判 要 綱 』 を 中心 と して一 」(『経 済 学雑 誌 』 第77巻3号,   1977年9月),等 々。

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『経 済学 批 判 要 綱』 に おけ る資 本一 般    39

繍 慧

説 辮 箋繋:駕 課 灘1織驚認 雪

の よ うな 世界 市場(文 明 化)規 定 が,た んな る表 象 記 述,次 元 飛躍,論 点先 取 りと して 残 され た も ので は な く,資 本 一般 に と って の 必 須 の 内 的 テ ー マ と し て,  『要 綱』 の マ ル クス に よ って 自覚 的 に意 義 づ け られ て い た とい うこ とで あ              る。 「世 界 市 場 を 創 造 し よ うとす る傾 向 は,直 接 に 資 本 自体 の概 念 〔資 木 一 般 〕 の うち に あ た え られ て い る」(311)の であ り,ま た 文 明 化 に つ い て も,こ れ を 資 本 の 本 質 的概 念 に と って 「た んに 外 的 な諸 結 果 」 とみ な す従 来 の考 え方 を き          コ  む        コ     ロ        む  ごコ     む び し く戒 め て,「 資 本 の 単 純 な 概 念 〔資 本 一 般 〕 の うち に は,即 自的 に,資 本 の 文 明 化 傾 向(zivilisierende  Tendenzen)な どが ふ く ま れ て い な け れ ば な ら な い 」(317)と 確 言 す る の で あ る。   同 じ く恐 慌 に か ん す る 規 定 も,そ の 恐 慌 規 定 と し て の 完 成 度 と性 格 は 別 と し   て,わ れ わ れ が 『要 綱 』 で しば しば 出 会 うと ころ で あ る。 と くに移 行=実 現 論 の次 元 に おい ては,世 界 市 場 創 造 ・文 明 化 を は じめ て本 格 的 に論 じた 如 上 の 筆 に 直 続 して,過 剰生 産 ・価 値 喪 失 か ら恐 慌 へ と紙 幅 を と って 論 じ お よん で い る。 そ の 内容 に つ い て の 深 入 りは避 け るが,当 面 のわ れ わ れ が 見 定 め て お か ね ば な らぬ のは 燈 要 綱 』 で 資本 搬 娠 μ目し よ う とす る マ ル ク スに と 。て ,そ の よ うな 恐 慌 論 的 関 説 が け っ して備 忘録 や余 録 で は な く,こ れ また 資 本 一 般 の うち に 内 包 さ るべ き必 然 的 テ ー マ で あ った とい う こ とで あ 癒 ・わ く,「 価 値 喪 失 に つ いて こ こで 注 釈 を して お くの は,た だ の ち に な っ て述 べ るべ き こ とが           の   コ       ゆ       コ す で に資 本 の 一 般 的 概 念 〔資 本 一般 〕 の うち にふ くまれ て い る こ とを 示 して お く必 要 が あ るか らで あ る。」(306)「 こ こで は,い うま で も な く過 剰 生 産 を 明 確 に展 開 す る こ とは まだ 問題 で は な く,そ れ 自身 が 資 本 自身 と の関 係 で は,も と も と どん なふ うに 措 定 され て い るか とい う こ とへ の略 解 図 だ け が 問 題 で あ る。」 (321)も ち ろん 一 般 に,資 本 一 般 が い っそ う具 体 的 な諸 範 疇 の抽 象 的 規 定 を 内 19)  伊 藤 誠 『信 用 と恐 慌 』東 大 出版 会,1973年,第1章;大 内秀 明 「『経 済学 批 判 要 綱 』   に お け る恐 慌 論 の不 在 」  (『現 代 思 想 』 第3巻13号,1975年12月);岡 田光 正 「マ ル ク   ス恐 慌論 の性 格 に つ い て」  (「千里 山 経 済学 』 第10号,1976年10月),等 々,参 照 。

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    40   包 す る もので あ る とい うこ とは,『 要 綱』 も 『資本 論 』 も変 りは ない 。 しか し ひ ・ま問題 な のは,  『要 綱 』 で は一 例 え ば 土地 所 有 ・賃 労働 な る項 目と く らべ   て一 す ぐれ て世 界 市 場 ・恐 慌 へ の 関 説 が 豊 富 で あ るだ け で な く,そ れ らへ の   論 及 が資 本 一 般 に とっ て の必 須 の課 題 と して 反 復 力 説 さ れ て い る とい う点 で あ   る。 この 点 に か ん が み て,わ れ わ れ は 『要 綱 』 資 本 一 般 の 基 本 性格=論 理 性   を,資 本 一般 の 〈世 界 市 場 一 恐 慌 〉 論 的 構 成 と まず 特 徴づ け る ことが で き よ う.㊦     と こ ろで,そ の よ うな 〈世 界 市 場 一 恐 慌〉 論 的 構 成 を 成 立 させ て い る 奥 底   の論 理 な い しは 視 座 は 何 な の か。 こ う問 うと きわ れ わ れ は,『 要 綱 』 に お け る   資 本 の 「傾 向(Tendenz)」 と 「限 界(Grenze)」 「制 限(Schranke)」,あ るい   は 「資 本 の普 遍 的 傾 向(universelle  Tendenz)」 と 「特 殊 的 制 限 性(besondre   Beschr伽ktheit)」 な る概 念 に 注 目 した い。 実 際,『 要 綱 』 で世 界 市 場 ・恐 慌 が   論 じ られ ると き,そ の論 脈 は 必 ず とい って よい ほ ど この傾 向一 制 限 な る双 対 的   カテ ゴ リー を下 敷 き と してい る ので あ る。 マ ル クス は,資 本 の世 界 市 場 創 造 傾   向 お よび 文 明化 傾 向 の根 底 に 「資 本 の普 遍 的 傾 向 」 を,ま た価 値 喪 失 ・恐 慌 の   深 底 に 「資 本 の特 殊 的 制 限 性 」 を,そ れ ぞ れ 見 据 え て い るわ け で あ る。 そ し て   この よ うに資 本 一 般 を一 〈資 本 一 労 働 〉 基 軸 は もち ろ ん の こ と,い ま ひ とつ   一 この く傾 向一 制 限 〉 な る基 軸 を 前 面 に お し出 して 論理 展 開 す る と ころ に,        の   r資 本 論 』 と対 比 した 『要 綱 』 の独 自性 が 存 す る とい え よ う。       お ラ     この 概 念 に つ い て の 詳細 はす で に あ る諸 研 究 に ゆ だ ね る。 こ こで 「資 本 の 普   遍 的 傾 向 」 の 概 念 に よ って含 意 され て い る こ とは,価 値 の 絶 対 的 増 殖 を も とめ   るが ゆ えに 生 産 諸 力 と交 通 形態 の普 遍 的発 展 につ とめ,か くし て資 本 を して 先 20)念 のた め に 言 え ば,『 資 本 論』 で く傾 向 一 制 限〉 論 的 視 角 が 消 滅す るわ け で は な い 。   例 えば 利 潤 率 低 下 講 中 の1章(第3部 第15章)を み よ。 『資 本論 』 では 全 体 と して,   この基 軸 が 最 後 の認 識 として の 位置 を 占め る よ うに な り,叙 述 の 前面 に登 場 す る 言葉   と して はむ しろ 抑 制 され てい くの で あ る。 21)  大 島清 「資 本 主 義的 生 産 の 制 限 と恐 慌 」  (森 戸 ・大 内編 『経 済学 の諸 問 題 』 法 政 大   学 出版 局,1957年,所 収);花 崎呆 平 『増 補 改 訂 マ ル クス に お け る科 学 と哲 学』 社 会   思 想社,1972年,参 照 。

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      『経済学批判要綱』 に:おけ る資本一般  41 行 ず るす べ て の生 産 諸 段 階 か ら班別 す る と ころ の,資 本 のい わ ば 積 極 的 本 質 で あ る。 対 す るに 「資 本 の 特殊 的 制 限性 」 とは,そ の 同 じ資 本 が ほ か な らぬ 価 値 に立 脚 し価 値 の 増 殖 を こそ志 向す るが ゆ え に招 来 す る と こ ろ の,生 産 諸 力 の 発 展 を抑 止 す る否 定 的 一面 性 を さす 。 マ ル ク スは こ の両 者 を 平 面 的 に 並 立 さ せ る の で な く,傾 向 と限 界 ・制 限 との過 程 的 矛 盾 とい う動 的 構 造 の うち に,資 本 一           コ       コ        般 を 定 位 して い るの で あ る。 「資 本 は生 産 の特 殊 な 制 限 作用 を 含 ん で い る。 こ              れ は 生 産 の あ らゆ る 制 限 を の りこえ て 前 進 す る 資 本 の 一 般 的 な 傾 向 と矛 盾 す る。」(318)「 資 本 は そ の本 性 の うえか ら労 働 と価 値 創 造 に た い す る制 限 を措 定 す るが,こ の制 限 は それ らを 無 際 限 に 拡 大 して い こ うとす るそ の傾 向 と矛 盾 す る。こ うして 資 本 は,み ず か らに特 有 な制 限 を 措 定 す る と と もに,他 方 で は どん な制 限 を も の りこえ て い くか ら こそ,そ れ は 生 きて い る矛盾 な の で あ る。」(324) 資 本 一 般 のか か る特 殊 『要 綱 』 的 基 本 性 格=論 理 性 を,わ れ わ れ は 資 本 一 般 の 〈傾 向一 制 限 〉 論 的 構 成 と よぶ こ とが ゆ る され よ う。   この よ うな 〈世 界 市 場一 恐 慌 〉論 的 な,よ り根 底 的 に 〈傾 向 一 制 限〉 論 的 な 認 識 装 置 を 前 面 に お し立 て る と ころ で は,資 本 一 般 は どの よ うな 独 自的 位相 に お い て 把 握 され て く るか。 ひ と し く資 本 一・般 とい って も,そ れ が捕 捉 され る位       なま 相 が 次 な る問 題 で あ る。言 う まで もな く<傾 向一 制 限 〉 的 認 識 の 生 の表 出 は, 資 本 自身 の 積 極 的 本 質=普 遍 性 の ス トレー トな 強 調 と,他 方 で 同 じ く資 本 自身 の 否 定 的 一面 性=制 限 性 の ス トレー トな強 調 とを もた らす 。資 本 自体 を め ぐ っ て,そ の 普遍 性 を最 大 限 に 力 説 す るか ら こそ,逆 に そ の制 限性 も白 日の もと に 露 呈 され て くる の で あ っ て,両 者 は い わ ば 裏 腹 の 関 係 に あ る。 お さ え て お くべ きは,そ の よ うな普 遍 性 と制 限 性 とが 他 の何 もの(例 えば 「土 地 所 有 が 設 け る 制 限」 とい うよ うな)に つ い て で もな く,つ ね に資 本 自身 にか ん し て立 言 され る とい う論 脈 傾 斜 を も って い る と こ ろに,r要 綱 』 の ポ イ ン トが あ るの だ とい う こ とで あ る。 こ こか ら,普 遍 的 傾 向 を もつ 資本 に と って最 大 の制 限 は 他 な ら ぬ資 本 自身 で あ る,資 本 に と って の 制 限 は資 本 そ の も ので あ る,と い う資本 一 般 認 識 のす ぐれ て 『要 綱』 的 な構 図 が うまれ る。 少 くと もそ れ が主 調 を なす の

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42 が 『要 綱』 で あ る。 純 粋 な る資 本 そ の もの の ポ ジ と ネ ガ とが 生 の 状 態 で露 出 さ せ られ て い る の で あ る。 事 実,『 要 綱 』 を 繙 くわ れ わ れ は,資 本 の 普 遍性 を極 限 的 に 力 説 した か と思 う間 もな く,そ の ま ま一 挙 に 資 本 の絶 対 的 制 限 性 の 力 説 へ と向 って い く運筆 に,し ば しば 出会 うの で あ る。               コ       の          資 本 は や す み な く普 遍 性 を も とめ て い るが,こ の普 遍 性 は,資 本 自身 の本                  性 に 制 限 を 見 い だ す 。 この 制 限 は,資 本 の 発展 の あ る一 定 の段 階 で 資 本 自    体 が この 傾 向 の最 大 の 制 限 とな る こ とを認 識 さ せ,そ してそ のた め に 資 本                   自体 に よ る 資 本 の 止 揚 に む か っ て お しす す め る こ と に な る 。(313-4)                          流 通 時 間=0と 措 定 す る こ と,す な わ ち 自己 自身 を止 揚 す る こ と に努 力 す     る こ とは,資 本 の必 然 的 傾 向 で あ る。 とい うの は,生 産 時 間 を規 定 す る契    機 と して の流 通 時 間 は,資 本 に よ って だ け 措 定 され る もの だ か らで あ る。     それ は,交 換 の,貨 幣 の,お よび そ れ に も とつ く分 業 の,必 然 性 を止 揚 す             コ       コ   コ         る こ と,し た が って資 本 そ れ 自体 を 止 揚 す る こ と と同 じで あ る。(522)   普 遍 性 に つ い て も制 限性 につ い て、も,そ の 途 中 の媒 介 項 や 収 束 点 を顧 慮 す る こ とな く,少 く と もそ れへ の配 慮 を後 景 に 退 か せ た ま ま,い わ ば ス トレ ー トに そ の 究 極 点 に まで 視 線 を延 長 す る。 究 極 点 と はい うまで もな く,資 本 の 矛 盾 が 発 展 して 総 体 的 に 措 定 され る 場 で あ り,つ ま りは そ の 「究 極 の 適 切 な 表 現 」 (847=「バステ ィァ とヶア リー」)た る と ころ の,な い しは 「生 産 が 総 体 性 と して 措 定 され … … す べ て の 矛 盾 が過 程 に登 場 す る」(139=《 表2>)と ころ の,世 界 市 場 と恐 慌 の場 で あ る。 そ の さい の鍵 とな って い る のが 普 遍 的傾 向 と特 殊 的 制 限 な る概 念 であ る こ とは,繰 返 す 必 要 は あ る まい。 か く して 『要 綱 』 で は資 本 一 般 が,途 中 「市 民 社 会 の内 的 編 制 」  (資 本 ・土地 所 有 ・賃 労働)や 「国家 」 と い う理 論 的結 節 点 をむ し ろ素 通 りして,終 極 の 「世 界市 場 と恐 慌 」 へ と直 線 的 に志 向 し,こ の終 篇 とス トレー トに 結 合 す るか た ち で 冒頭=資 本 一 般 の質 的 構 造 が あた え られ る。 か か る究 極 点 へ の論理 的 直 行 に よ って,い わば 広 射 程 の資 本 一 般 が,〈 世 界 市 場 一 恐 慌 〉 論 的 構 成 に お け る資 本 一般 が,帰 結 す る。 射 程 が広 い に もか かわ らず,否,広 い か らこそ,そ の 中 味 はつ め が甘 い。 少 くと も 『資 本論 』 と比 し て,甘 い 。

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      『経済学批判要綱』における資本一般  43   そ の よ うな代 償 を 払 って 『要綱 』 が 獲 得 した もの,そ れ は 資 本 そ の もの の コ   コ       コ       の 絶対 的 ・原理 的本 性(絶 対 的 傾 向 と絶 対 的 制 限)の 認 識 で あ る。資 本 は普 遍 性 を極 限 に まで お しす す め,で あ るか ら こそ 資 本 は 自 らの制 限 を 自己 自身 の うち に見 いだ す,一 これ を 中 核 と しか つ 前面 に据 え るの は,資 本 認 識 の位 相 と し て豊 富 で はな い け れ ど も,き わ め て 原 理 的 ・本質 的 で あ る。 これ に よっ て資 本 一般 が,む き だ し の姿 で解 剖 され た ので あ る。 い わ ば,は だ か の資 本 一 般 で あ る。 こ こか ら遠 望 す れ ば,『 資 本 論 』 のそ れ は 衣 裳 を ま と って い る。 予 断 も ま じえ て あ え て比 喩 を もとめ るな らば,『 要 綱 』 資 本 一般 と 『資 本論 』 資 本 一 般 との 関 係 は,ち ょう ど絶 対 的 剰 余 価 値 論 と相 対 的 剰 余 価値 論 との 関係 に比 定 で き るか も しれ な い。 絶 対 的 剰 余 価 値 論 は 相 対 的 剰 余 価 値論 に く らべ て,剰 余価 値 認 識 と して豊 富 で は ない(一 面 的 であ る)け れ ど も,そ の 原 理 的 ・本 質 的 な ・       22) 位 相 を 占め て い る ので あ る。 もち ろ ん 資 本 一 般 とは 総 じて 「資 本主 義 的生 産        ラ 様 式 の本 質 分 析 」 で あ る と す る な らば,『 要 綱 』 的 資 本 一 般 とは そ の また 本 質,い うな らば,原 理 的 本 質 な い しは 本質 的 原理 の 分析 だ とい う ことで あ る。 資 本 一 般 をそ の 原 理 的 本 性,絶 対 的 本質 の レ ヴ ェル で解 い た のが,『 要 綱 』 な ので あ る。 資 本 一 般 の 広 さ とは つ ま る と ころ,そ の絶 対 的 本 性 とい う位 相 に お け る分 析 の所 産 で あ り,そ して この広 さは一 逆 説 的 か も しれ な い が一 『要 綱 』 資 本 一般 が 「ひ とつ の資 本 」 と して狭 く方 法 的 自己 限 定 を した か ら こそ, もた ら され た と言 い うる。 「ひ とつ の 資 本(ein  Kapital)」 とは 同 時 に 「資本 な る もの(ein  Kapital)」 と して,す ぐれ て 究 極 的 本 性 を 問 う視 座 で もあ った の で あ る。   か く して わ れわ れ は,『 要 綱 』 資 本 一 般 の 論理 性 を そ の 〈世 界市 場 一 恐 慌 〉 論 的 構 成,〈 傾 向一 制 限〉 論 的 構 成 の うち に,ま た そ の位 相 を 資本 一 般 の絶 対 的 本 性(は だ か の資 本 一 般)の 分 析 とい う点 に,そ れ ぞれ 見 て きた 。 わ れ わ れ の この論 点 は,山 之 内 靖 氏 の す ぐれ た マ ル クス世 界 史 像 の研 究 に,ひ とつ の傍 証 を も とめ る こ とが で き よ う。 氏 は 時 事諸 論 文 の検 討 の なか か ら1850年 代 まで 22)  内 田 義 彦 『経 済 学 の 生 誕 』 未 来 社,1953年,255頁,参 照 。 23)  佐 藤 金 三 郎,前 掲 論 文(注10)),28頁 。

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 44 の マ ル ク ス世 界 史 像 を 特 徴 づ け て,「 世 界 市 場 論 的 観 点 」 ない しは 「恐 慌 論 の 次 元 」 と規 定 す る。 あ るい は よ り詳 し くは,  「世 界 市 場 論 的 見 地 を ふ まえ た 恐 慌 分 析 の次 元 」 とい う。 とい うこ との含 意 は,  r資 本 論 』 時 代 に おけ る農 業 ・ 土 地 問 題 の 重 視 と関連 す る国 民経 済 的視 点,個 性 分 析 の視 点 とは対 比 的 に,50 年 代 マル ク スに あ って は,「 世 界 市 場 を通 じて の資 本 主 義 の普 遍 化 作用 を あ ま りに も過 大 視 し」,国 民 経 済 論視 点 を この 世 界 市 場 恐 慌 の 視 点 の うち に 一 面 的       24) に 埋 没 させ てい た とい うこ とで あ る。つ ま り山之 内氏 は,世 界 史 像 の問 題 と し て,50年 代 マ ル クスを く世 界 市 場 一 恐 慌 〉 論 的 構 成 に お い て特 徴 づ け て い る わ け で あ る。 そ れ が 以 上 にみ たr要 綱 』 資 本 一 般 の 論 理 性 お よび 位 相 と強 い牽 連       25) 関 係 に あ る こ と,も は や 明 ら か で あ ろ う。   〈付 記〉  この一 連 の論 稿 は この あ と(4・ 完)と し て,『 要 綱』 的 資 本 一 般 の 『資 本 論 』     へ の転 回 を賄 鰍 す る予 定 で あ る。 24)  山 之 内靖 『マル クス ・エ ン ゲル ス の世 界 史像 』 未来 社,1969年,107,375,101,   137頁 。 25)  『要 綱』 の資 本 一 般 を扱 った もの に,や や 問 題 視 角 を異 にす るが,高 倉 泰夫 「『経   済 学 批 判要 綱 』 に お け る 『資 本 一 般 』一 そ の 方 法 と限 界一 」(九 大 『経 済 論究 』   第39号,1977年3月)が あ る。

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