• 検索結果がありません。

トポロジカル秩序と奇妙な励起状態

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "トポロジカル秩序と奇妙な励起状態"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

46

トポロジカル秩序と奇妙な励起状態

コーヒーカップを連続変形すれば,穴が 1 つあいた浮き 輪やドーナツ,つまりトーラスと同じだ,というのがトポ ロジーの見方である.連続変形しても変わらない穴の数は, トポロジカル不変量とよばれる.不思議なことに,トポロ ジーの概念は物理系の基底状態の構造と,それに付随する 励起状態のあり方にも大きく関わる.鍵となるのは状態が 生まれもつ電荷である.電子やニュートリノ,ハドロン, ゲージ粒子,ヒッグス粒子といった素粒子の電荷は,現在 のところすべて電気素量 e の 0 または±1 倍に量子化され た格好で自然界に現れる. ところが,である.固体中に棲息する膨大な数の電子か らなる系(多体系)の挙動を探求する凝縮系物理学におい ては,e の分数倍の電荷をもつ励起状態(粒子)が出現する. 分数量子ホール効果とよばれる現象で現れる励起状態がそ の代表だ.この分数化のメカニズムは,単なる要素分割と いう素朴な還元主義では汲みつくせない,多体系ならでは の豊かな構造を秘めている.励起状態は基底状態にエネル ギーを注入して生成される状態なので,基底状態の性質を 直接反映する.ここにいたって,表題の「トポロジカル秩 序」という概念が登場する.一般に,基底状態の縮重度が 系のトポロジー的な構造に依存する場合,そのような秩序 をトポロジカル秩序とよぶ.たとえば球面上の系とトーラ ス上の系は,トポロジーが異なるので連続的につながりよ うがなく,結果として縮重度が変わる.電子状態のトポロ ジーと電子相関が,この秩序形成の要である.そして励起 状態は分数電荷をもち,さらにはフェルミ統計でもボース 統計でもない分数統計(粒子交換の際に±1 以外の位相因 子が生ずる)にしたがうことが理論的に指摘されている. 分数電荷については実験的に確認されたが,分数統計性は いまだ観測されておらず,挑戦的課題である. このように,トポロジカル秩序自体は実験的に直視し難 いのだが,そこからの励起に特徴が表れるのである.トポ ロジカル秩序と奇妙な励起の関係は分数量子ホール系以外 にも,スピン液体やボース・アインシュタイン凝縮系で見 られる.さらに最近では,トポロジカル超伝導体の非アー ベル統計渦(粒子交換で非アーベル位相因子が現れる)の 研究へと発展を続けている.非アーベル渦を用いた量子計 算も脚光を浴びている.理論,実験,さらには工学的応用 が組み合わさった,大変豊かな研究分野となっている. 御領 潤(弘前大理工),会誌編集委員会 ©2016  日本物理学会

参照

関連したドキュメント

[形態コード P117~] [性状 P110~] [分化度 P112~]. 形態コード

線遷移をおこすだけでなく、中性子を一つ放出する場合がある。この中性子が遅発中性子で ある。励起状態の Kr-87

題が検出されると、トラブルシューティングを開始するために必要なシステム状態の情報が Dell に送 信されます。SupportAssist は、 Windows

注意事項 ■基板実装されていない状態での挿抜は、 破損、

「イランの宗教体制とリベラル秩序 ―― 異議申し立てと正当性」. 討論 山崎

北区で「子育てメッセ」を企画運営することが初めてで、誰も「完成

地震 L1 について、状態 A+α と状態 E の評価結果を比較すると、全 CDF は状態 A+α の 1.2×10 -5 /炉年から状態 E では 8.2×10 -6 /炉年まで低下し

地震 L1 について、状態 A+α と状態 E の評価結果を比較すると、全 CDF は状態 A+α の 1.2×10 -5 /炉年から状態 E では 8.2×10 -6 /炉年まで低下し