北 陸 大 学 紀要 第
14
号 (1990
) pp.
85〜100
1
〈 発 展 途
上
国
の
経 済 発 展
戦
略
に
関
す る
亠論 考
〉
叶
秋 男
*’
Akio
Kano
Received
October
20
,
1990
始 め
に20
世 紀末
の殆 どの人間
は,
屋 的にも質
的にも前
世紀末
とは比
較
にな ら ない ほ どグロー
バ ル化
し た資本主義
世界
シ ス テム の下に生
活
して い る。万
物 流転
の法
則に照 ら して, 目下の ところ, この経 済シ ス テ ムが消 滅まで の何 段階
目に あるか と か, ある い は弁 証 法で い うと こ ろの’
“ 反定 立”
の 実 在と “ 総 合” の現 実 的可能
性を証 明し て み せ よ うな ど とする学 問 的賭
博 行 為に走る者
は極 少 数で あろう。 果た して , ペ レ ス トロ イ カ下の ソ連で も,
資 本 主 義が先の 見え た経 済 シ ス ヴ ムである と言い切る学者
は確 実に少
数 派に転 落 している。資
本
主 義の経済
シ ス テム と して の強
み は, 人類
の文
明史
におい て歴 史貫通的
と もいえ る商
品=
貨 幣 関 係,
則ちの市 場メ カニ ズ ム の 最 も発 展 し た経 済 関 係で ある点にある。 同 時に そ れ は, 経 ノ済史
上, 決 して 贖いきれ ない最 も苦 汗コ スF
の高い経 済シ ス テム と い うこ どが で きる。 封 建体
制 下で の私 生 児 として生 成 した ヨ r ロ ッ パ の 資 本 主 義は,市民革命
に よっ て成 立し た国民 国家
によっ て法的
に リ ジティ メ イ トさ れる と,解放
さ れ た生産
力 をデ コに国 民 経 済と国際
経 済の 両 面で急 速な相 互 関 連 的 発 展 を 遂 げ, 世 界シス テムを形成
する に至っ たのだが, そ の プロ セ ス は 激 しい国家
盛衰
の歴史
で も あっ た。 それは資本
車
義経済
シ ス テムの根幹
をな す自由競争
が合
わ せ持
っ否 定 的 矛 盾の発 現で ある といえ る。 市民,
企 業, 国 民 経 済の社 会, 国 家, 世 界 経 済か ら の分 立 性 を前 提 とし た競争
原 理の貫徹
は, 場 合によっ て は従属
あるいは破痒
を伴
う貧富
の格
差 を発 生さ せ る。 それ故
利 害 関係
は し ば し ば離
対
性を帯びる。 国 家間
の それは今 世 紀 半 ば まで露
骨な “帝国
主義
” とな り,2 度
にわた る破滅
的な世界戦争
の主因
とさ えな っ た。こ の ような
資本
主義
の矛盾
の否定的現象
は,商
品=貨幣
関
係自
体
が生産力
と生産
関係
の矛 盾 の基 本 的な解
決 方 法で ある慮
を軽裡
するが故に資 本=
賃 労 働 関 係に非 妥 協 的な革 命 的 共 羞i
主
義 思 想を生み, そ して1917
年に はっ い にロ シ アでボ リシェ ビキが政権
を掌握
させ る事 態 を作
り出
した。 しか し, 革命
ロ シ ア は た ち まち 困 難な課 題に直面 する。 イ デ オロ ギー
に従っ て 商 品=貨
幣
関 係を廃 絶 する に も, 資 本主義 列 強の帝 国主義 政 策の脅 威 下にあっ て は何と して も急 速な資
本 蓄 積 を実現
して国
力増
進の経済競
争に勝 ち残ら ねばな ら な か っ た。 二の よ う な国際情勢
と共 産 主 義 思 想の結合
が新種
の 経済
シ ス テム形
成の 契機
を与え た。個
人や企業
の 自 由な経
済
活動
が *外国 語 学部NII-Electronic Library Service 2 口十 秋 男
否
定さ れ,
国 家が資 本 関 係における経 営 主 体と な っ て 企 業 を 指 令 的 管 理 下に置 く経 済 管 理 シ ス テ ムが造り上 げられたの で あ る。 そ れ は社 会 主義
を標榜
し な が ら も,
F その内実
は強
行 的 資 本 蓄積
の ために商
品=貨幣
関係
が政策的
かっ 主 意的
に歪め られ た体 制で あっ て , n一
リー ・
・
コ ビ シ チ ャ ノ ブ幽
(ソ連 科 学?
カ デ ミー
研 究 員 ).
の表 現 を 借 りるならば,奴隷
制 (収 容所群 島
)+農奴
制
(コ ル ボー
ズ)
+資本
主義
(市
場関係
の ある程度
の容 認 )にすぎなかっ たの で あ る(
『日刊ノー
ボ ス チ通 信』:1990
.
8
,
23
)。
その ため に資
源 浪費
的な外
延的成
長が頭打
ちになるや,体制
の 危 機 に向
か っ て低落
の一
途を辿っ て き た。 そ して 今や こ の ソ ぼエ ト型 経 済シ ス テ ム は,
技
術革新,
経 済 成 長,
福 祉,
1
環境
その他
の体 制 間競
争で “大いな る失敗
”(
Z
.
ブレ ジン スキー
)
を晒し,
20
世紀末
で歴史
の舞台
か ら去
ろうと して い るの で ある。これに対して資 本 主 義は
,国
内 的には “ 福 祉 国 家”,国際
的に はIMF
やGATT
のよ う な協
調 的利害調節機構
の創設
によっ て成長
の維持
に成功
して き た。 し か し な が ら, そのように世 界シ.
ス テム と して一
段と規 模を拡 大しっ っ あ る資 本 主 義が, それ を構 成 する個 理の国 民 経 済に おい ち てば か りで なく,総体
と し ての資本
主
義世界
・
:一
ス テ ム の根幹
を揺
る がす
ような一
切
の危機
か ら解放
さ れ,持
続 的 安 定 的 発 展 経 路を確 保 し た か といえ ば,依然
と し て否 定 的に考えざるをえ な い。 第二次 世 界 大戦後
の45
年 閻 を とっ て もみて も,
一
向に縮
ま ら ない各国
間の経 済格
差 及 び対
外経済
不均衡
は,絶
えず 経 済ナソ ヨ ナ リズム の台 頭と厳 しL,
1経 済摩
擦の原 因を なし , 最 悪の場 合に は地 域 紛 争の火
種とな っ て きたq 果た し て,
現 在 最新
の統
計に よっ て確 認ざれるよ う に,
国 家 レ ベ ル とパ ラ レ ル に個
人レベ ル で も世 界 中で 貧 富の格
差が こ こ数十年聞
で最
も拡
大しっ っあ
り, ほ と ん どの発展 途 上国
が深 刻な政治
的経済
的 困難
を抱えて いるの が現状
で あ る。以 下の小 論で は
,
先 進諸
国 対 発 展 途 上 諸 国の 国 際 経 済関係
の 問 題 点を分析
す る と と もに, 今 後の途 土 国の経済
発 展と国家
間経済格
差縮小
の 可能性
にっ い て考察
してみ ることにす る。 可.発展 途 上国 経済
の発 展戦 略仁 関 す る諸 理論
既存
の国 際政治
経
済環境及
びそ の国 自
体
の初発
条件
を前
提にして, 発 展 途 上 国 経 済が高
度
成
長を持 続で きる発 展戦略
を 見出
だ すこ と は経 済 学を悩
ます 難 問の一ら
とい え る。結論
的にい え ば,
これ までの ところ万 能の発 展戦略
は な か っ た わ け だ が,そ
れ はと
れ までの経済学的
アプロー
チ に有 効 性が少 し もなかっ た とい うことではない。 そて で まず始め に,
今日まで め発 展 途上
国 経 済の発 展戦略
に関
する諸
理論
を振
り返っ てみ ること にす
る。い う まで も なく大 半の発 展 途上国は
,
第二次 大 戦 後の米ソ2
大 大国
によ る2
極対
立 の 国 際 政治経
済 環境
の 中で政 治 的独
立 を果た し た。 こ の時期
に主流で あっ た経 済学 的
ア プロー
チは,経
済 自
由 主 義 とソ ビ.
工 卜型 社 会 主義
の方 法であっ た。 とい っ て も,市場
メ カニ ズム に絶
大な信 を置
く前 者に特
別な経済
発 展理論
が あっ た わ けで は な く,
国 内 経 済の市場機構
を整えて世界経 済
と リン ク され れば, “ 発 展のパー
ト ナー
” を得て経 済を発展
軌 道に乗せる こ と がで きる (ピァ ソ ン報告
:1969
)
と楽 観 視さ れていた
。他方,後者
の 見解
では,
資 本主義的対外経済
関係
は本来的
に“
支 配と従 属の国 際関
係”
以 外の何 物で もなかっ た。 そこで発 展 途 上 国 が 経 済 的自
立体
・
制
を 実 現 する た めには ,社会
主義陣営
の “同権国家体制
” に加
わ り,計
画的
な 工業化
を推
進 す べ きで ある と強 力に ア ピ冖 ル した。 た だ両
者とも援 助 と共に貿 易の経 済 発 展に果たす 役 割 を 重視
し, 共に それ
は “商業
ベー
ス” で なけ れ ば な ら な い との立場
を取っ てい た(
ソ連共産党第21
86 N工 工一
Eleotronlo Llbrary〈 発 展 途 上 国の経 済 発 展 戦 略に関 する
一
論考 〉3
回 大 会での フ ル シ チ ョフ報告)
6
こ の奇 異に感 じる社会
主義者
と自由
主義
の見解
の一
致
は, 両者
の経済
擧
論炉
最 終 的に分 裂 する以 前li
D
.
リカー
ド によ っ て説か れ た有 力な貿 易 理 論に由 来 する の である。こ こ で リ カ
ー
ドの貿易
理論
にっ い て若干触
れてお くこ.
とにし
よ う。 そめ理論は,対
外経
済 関係
は国内
の 経 済 関 係と は別の カ テゴ リー
を必 要とする異 質 性を有 する との 認 識を 基礎に してい る。 その異質性
の要素
として挙
げら れ るの は,何
よりも先
ず,世 界が国益
の観
念に支
え
られ た 主権 国 家に分 割されてお り1 経 済 空 間と して の 二 様 性が ない こ とで ある。 こ の 分 割が資本,労
働等
の生 産要素
の自由
な移動
を困難
なもの に し,移動制約
め緩
い一
般商
品の交易
を対外経
済 関係
の主役
にす
る爭
である。 こ の制 約 性の仮 定か らリカー
ドは,
「一
国にお ける諸 商品
の相対
価値
を 左 右 するの と同じ規 則が,
二っ あ るL}
は そ れ 以 上 の国々 のあい だで交 換さ れ る諸 商 品 の輝
対
価 値を左 右 するわ けで は ない」 (p,
156
)と定 立 し,貿
易に関 する純 粋 理 論の必 要 を考
え た ※ 。 いわ ゆ る比較
生 産費説
であ る。 これ は自
由貿易論
を国 際 分業
の 視 点か ら展 開し たA
.
ス ミスの朱
駆的業績
を受 け継い で,t
本 来 労 働 価値
説に立 脚して考 え出
され た理 論で あっ た。 リカー
ド に よれ ば,’
自 由 貿 易を行お うとする国々r ここが肝心 な点で あ’
る が , あ らゆ る財の 生 産に おい て生 産力
の劣
る国
の場合
にも一
ー が,自国内
で生産性
の比
較
的
高
い財
の生産
に特
化
する こ とで富
及び富の生 産 力の増 加を もた らすこと ができる こと,
また一
こ の点 に関 して は細部
はJ
.
S
,
ミル の功績
に帰
せ ら れ るの で ある が二 そ う して増
加し た富
1
さ
貿易
国 双方
の交 換財
の国
内
交 換 比率
の範 囲 内で需 給 関 係にt
(
E
っ て分 配 (取 引 )される時 , 両 国に等しく国 際 貿 易の利 益が も た ら さ れるの で ある。 そう
で あるが故に,
“
見え ざる手” (A .
ス ミス〉による調 和 的分 業が経済
的厚
生の最 適化 ・極
大化
をもた らすとの自
由 主義
的信条
に導
か れ た リ カー
ドたとっ て,貿易
理論
はま さに その 主 義の 普 遍 価 値を示 す 恰 好の場で あっ た。 彼は,自
説を要 約 する段 落の 中で,
自’
由 貿 易は調 和の理 念の実
現につ な がると次の よ うに力説
している。 「完 全な自
由貿
易制度
の も とで は,各国
は当
然その資本
と労働
を自国
に とっ て もb と も有 利と な る ような用途 に向け る。 この個
別 的利
益の 追 及は,
全体
の普
遍 的 利益と み ご とに結びっ い て い る。勤勉
を刺 激 し,
工夫 力に報い , また自然に よっ て賦 与された特 殊の諸 能 力をもっ とも有 効にかっ もっ とも経 済 的に 配 分 する一
方,諸
生 産物
の 全 般 的数
量を増 加させるこ とによっ て,
そ れ は全般
の利
益を普
及さ せ,
そ して利益
と交
通とい う「
L っ め紐帯
に よ っ て,文
明世界
をっ う じて諸国民
の普遍的社会
を結
成 する」 (p.
156
)
と。
※
自 由主 義 経 済 思 想は, 世 界の国 民 国 家 的 分 立か ら発 生 する
一
切の経 済 的 制 約が廃絶
さ’
れ
資 本
と労働
が自
由に移動
さ れて こそ消費者
の利 益が最 大 化さ れ る との信 条を持つ 。従
っ て こ の制 約 的 仮定
を坪
古にする ような資 本の脱 国 家 性 こそ歓 迎 する。 社 会 主義
舉
想は,
自由
主義
が所与
とする、
国
民 国 家 的分
立 を資
本=賃
労働
関 係に根
差 す もの として 両 者の克 服 を
目標
とする。 従っ て後者
には独自
の貿易
理論
は ない の であ る。リ カL ドの “
貿
易によ る利 益” の論
証自
体を社
会 主 義 者マ ル クス が意 義を唱え た形跡は ない。 マ ル ク『
ス はむ しろ国際貿易
が資
本 主 義の本
性に由来
するこ と,
そ してその通商
は必
ずし も両当
事者
《
国)
の釣
り合い の取れ た利益
配 分を保 障 する もの で は ない こと を指 摘 する。 彼 曰 く,
「市 場一
交 換 者一
と資 本と の あいだの不 比 例,一
定の 国の 生 産Q
不 比例
こ そ は,
ま さ に世界
市 場へ ま た一
市場
か ら他
の市場
へ お し ひ ろ が っ て ゆ く。 比 例 的生 産一
もちろん ブル ジ ョ ア 的 隈 界 内の もの で あるが一
は, 生 産に よ っ て対 応 する生 産 を, し た が っ て ま た能動
的需
要をNII-Electronic Library Service
4
口十 秋 男 呼び おごすた めに嫡
近 代 産 業の ばあい まさ に地 球 圏 域を必要 と す る。
」 (p.
942
) そ して 貿 易 取 引で は 「一
方
の諸国
民は他方
の諸国民
の剰余労働
の一
部 分を, これにたい して交
換で な ん ら対
価を支
払わずに ひきっ づ き領 有 することがで きる……
」 (p,
842
)
と。 因み に,
後の引用
箇所
のマ ルク スの手稿
に ソ連
の イ デ オロー
グが,〈
二つ の国
民は利
潤の法
則に し た が っ て交換
し , 両者
とも利 得を得る,
しか し2 方はっ ねにだ ま さ れて U;る〉 (p.
843
) とい っ た具 合の 簡 潔な表
現の小
見出
し を与 えてお り, 資本
主義 的国
際貿
易に対
するソ ビエ ト的認識
を窺
わせ る。 っ ま り,
マ ル クス の “可能性
” は ソビ エ ト・
イデオロー
グに よっ て “ 必 然 性” に変え ら れて し まっ て い るの であ る。、
経 済 学 説 史 的にい う と
,
労働
価値
説が資 本 主 義 批 判の 理論
的武
器に利
用さ れ るよう に なっ た ために,
比較
生産費説
自体は まずJ
.
S
,
ミル によ っ て国 際 価 値 論 ,即
ち交易条件
の決定
を論
じ る際
に, 更に ヘ ク シ ャー
,
オ リー
ン等
によ.
っ て生 産 要 素の賦 存状
態による貿 易パ ター
ン決 定 を論
じる際
に,脱労働
価値説
の修
正 を受
け た。 そ れで も/
そ れ故,
「デー
ビッ、
ド・
ヒ ュー
ム に始
ま ト る貨幣
数 量 説 やジ ョ ン ・ ス チュ ァー
ト・
ミル に始 まる例のセー
の法 則の現 代 版と ともに依 然と して 自由貿易
理論の 基 礎をな して い る」(
R .
ギ ル ピン :p183)
の で あ り,今
日 もなお 「経済学
ヤ
で 唯
一
最 も強
力なアイデ ァ」CThe
Economist
’:Sept
,
22
;1990
)
との称賛
が絶
え ない ので声
る。<
れ というの も 「国 際 的特
化のパ ター
ン を説
明 する充 けで な く, リカT
ド の モ デル は, それ が極めて単
純化
された言 葉で 表 現されて い るIC
もかか わ らず,
我々に多 くの 政 策 的結
論 を引出
さ せて くれ る」(
p.
29
)か らで あ る とGIM
.
マ イ ヤー
は説 明 して い る が,自由主義
派が発 展 途 上 国の発 展 戦略
にっ い て持
ち 出 すの も正に こ の伝
統 的貿易
理論
で ある。“
自
由貿 易= 成 長の エ ンジン” の定 式に自 由 貿 易 論者
の発展途 上 国の経
済 発 展に関 する見 解 が凝 縮さ れて い る。 果た して よ くリカー
ド・
モ デル は先 進 国の工業 製 品と発 展 途 上 国の一
次 産 品の交 易の例に た と え られる。
その見 解によれ
ば,
発 展 途上 国経済
はテ イ ク・
廿 フ 期 (W
,
W
,
ロ ス トー
)の資本
の 不足 と労働
の過剰
は援助
と投 資
によっ て補いっ っ 自由貿易体 制
を維持
し,
自
国の生
産 要 素の賦 存 状 態に見 合っ た特 化に基づい て交 易を行え ば , 最 も高い成 長が実 現され ることに なり,
そ れ は取
りも な喧
さず
最も急 速な資本蓄積
の道
とい うこと になる。.
し か し な が ち, リ カー
ドL
モ デル に して も, それ を拡 張し た ヘ ク シ ャー
= オ リー
ン ・ モ デル を引 き 合い に 出した自
由 主義的
ア プロー
チ は十分説得
的とLS
えるで あ ろ う か。答
え は否
で ある。 問 題は, そ うし たモ デル は静
学 的 貿 易 利 益(
効率
的な国際
的資
源 配 分に基づ い た各国
の実質
所得
の 増 大)
を明らかにするギ
けで ジ交 易 条 件 決 定メカニ零
ム に扣
ける通 商 国 双 方の 内部
的作
角
要
因 と それ による資本蓄積
過理
へ の影響
にっ いて何 も語 らない が,
比較
生 産費
説の継 承・
発 展 に努めtc
J.
S
.
ミル自身
が既に語 っ て い る よ う に, “ 需 要の 量お よ び強度
の 大きい輸出品
” を 持つ国
が “貿易
の利益
の最 大の分 け前を獲る
”:(
第18
章)
可能
性があること なのだ。 ミル の 言説
は確
か に先
進 国対発
展 途 上 国 貿 易にも敷衍
可能
である, もっ ともミル の場
含
は ,富裕
国は外
国産諸商
品に対 する需要
が大きい ことが多
く,
こ の ため交 易 条件
が不利化
し易い と先 進 国 対 発 展 途 上 国貿
易に は当て嵌め難い状 況を考えて いたの であ る が。 そ こ で 次に, マ ル クス主義
と構造
主義
に よ る批 判 を踏ま えて,
こ れまでみ て きた 自由
貿 易 論の問 題 点 を 考 究 してみよ う。資
本
主 義世界
シ ステム に組み込 まれ た 途上
国 経済
が 自由 貿 易を行 う場 合を考えて み よう。 こ の場合,
その国
が,
タ イのよ
うに孤高
の独
立国
であ り続
けて きた
か,
やっ と植 民 地の軛 か ら脱 け出
た国
で あ る かの政 治 的 条 件は一
応脇
に置
く と して,
発 展 途 上 国経済
は共
通に第
一
次産業部
88
N工 工一
Eleotronlo Llbrary〈 発 展 途 上 国の経 済 発 展 戦 略に関 する
一
論 考 〉5
門が国 民 経 済 構 造の圧 倒 的 部 分を な してお り,そ
の他の産 業 部 門は,
あ る程度
存在
する場合
に も,先
進国
に比べ労働集約度
が高
く なっ て い ると考え ら れる
。 そ こでこれ らを基 本 的 初 発 条件
と して発 展 途 上 国が自 由 貿易
を行 うもの と す る。次
に世
界市場
価格
に従
っ て幾
つ かの輸 出
品一
通常
は一
次
産 品 生産部
門一
へ の特化
が生 じ る プロセ ス を考え る と,当
然の こ と な が ら輸 出 品 及び その関連部
門 以外
の産業部門
一
経
済
史的
に は繊
維
を始
め とす
る家内手
工業=
一
の衰
退 を.
.
考 慮に入 れねばな ら ない。 こ のと
き発 展 途 上 国で は,一
般に それ らの産 業 部 門か ら解 放される資本
に対
して労 働の割 合が大
きい ため,顕在
的・潜在的失業率
が高
ま る事
態が発 生し よう。 こ れ が背
景と なっ て輸出
産業部
門での低賃
金 雇用 の継続
が可能
になる。従
っ て,
W
.
A ,
ル イス が 指 摘したよ うに,
この よ うな労 働 供 給の長期
にわ たる無 制 限 な弾
力 性に起 因 ずる低い労 働 コ ス トは,輸
出
商
品の生 産 性 上 昇さ え価格引
き下
げ圧力
と化
し,
絶えず 途 上国側
の交易条件
が不利
化
する原因
とな るのである (p,
17)
。因
み に, こ う した事 態は歴史
的経 験一
典型 的な最 悪のケー
ス と してはス ター
リン時
代の ソ連の場合
一
が示す よ うに,
一
国 経済
の内部
で急 速 な工業化
の プロ セ ス が進 行 する場 合に, 政 府の課 税 政策
によっ て第一
次 産 業 部 門の 経済
余 剰が吸 収さ れ る 以外
に, そ こ で の相対
的過剰 労働
力を背 景に成 立 する 工業製品
に対 する一
次 産品
の不 利な交 換比率
の成
立に よっ て も工業部門
・〉
の不
等
な価値
柊
転
を発
生さ
せ, 急 速 な手
業化
原資
の供
給源
と なる。 か か るメ カ =.
ズム が国 際 貿 易にも作 用 する訳で ある。 それはっ ま り, 国 際分業
の利
益の 分 配 上, ミル の予 想に反 して途 上 国 側が不 利 化 する こ とを 意 味し,
とど のつ まり資 本 蓄積
テ ン ポ の点で先 進国
に遅 れ るこ とを 意 味 する。 それが延い て は国 際 間の所 得 格 差, ある いは賃 金 率格
差 を広げ る原 因と も な る訳
であ る。交易条件
の 不利
化は途
上国産
品の属性
に由来
する
面 も見 逃せない。 そ もそ も農
産物
の よ うな一
次
産 品は輸出
市 場における需
要が非弾力
的で, しか も市場
で の競争度
の強
さ か ら生産
過剰
を招
き 易い。 バ ナナ , コー
ヒー
,
砂糖,
茶 といっ た一
次 産品
価格
が国
際 市 場で 相 対 的に不 安 定 か つ 低落的
に推
移 して き た は よ く知
ら れ た事 実で あ る。 そ して鉱物資
源の よ うな途 上 国 産品
が先 進 国の技術
に従属
的である点
も交 易 条 件の不 利 化に作 用 する こと を留 意 する必 要が ある。 勿 論 の こ とな が ら,静
態 的な リカー
ド・
モ デル も , ヘ クシ ャー
=牙
リー
ン・
モ
デル も , 資 本 主 義 的 市 場経
済における激しい 国 内的 ・国際的競争
が引き起
こす技術革新
が絶
えず経済的
にみ た要素
賦存
状
態に変更
を加
え なが ら, プロ ダク ト・
ライフ・
サ イ ク ル を作
り出
して い く現実
の経
済動
態を取り 込 んでい ない。高
成長 ・高
滴
費 的 先準
国
経 済で次
々 に目
ま ぐ る しく新製
品
が作め
串
さ れてい くプロ セ ス は, 例え ば天 然繊維
か ら人造繊維
岱,天然
ゴムか ら合成
ゴムへ,
あるい は真
空管
か らIC
へ といっ た無数
の工業 製 品 史の例が示 すよ う に原 材料
需 要 構 造の 根 本 的 変 化を引 き起こ してきた。 先 進諸
国間
の “ テ クノヘ ゲモ ニー
”(
薬師
堂泰
蔵)
を巡 る熾 烈な競
争に よ り 日 々既成
工業製 品が陳 腐 化さ れる今
日,益
々要素賦存
の比較
優 位は極
めて限定的
かつ移
ろい易
い もめ と なっ てい る。こうした事
情
が, 現代
テ クノロ ジー
の相 当な部
分が石 油エ ネル ギー
に基づ いてい る現状
にも 拘 わらず,石油
産出資
源の 豊富
な途 上国
がOPEC
=
石 油カ ル テ ル結成
に よ っ て も価 格 コ ン ト ロー
ル に成功
しな かっ た根本的
原因
で あ る。 よく知
ら れて い る よ う に,
1970
年代
に石油価 格
が・
OPEC
の戦 略によっ て急 上 昇 させ られた結 果 , 先 進 国 産 業で は代 替エネ
ルギー
化が進 み , 産 油国
側の 現存
生 産能
力は供給
過剰状
態に な り,1980
年 代末
に・
はOPEC
内 部の供給
を 巡る利害対
立
を激
化さ せた。199D
年に1
バ レ ル20
ドルを割
る事態
は, 負 債 返 済のた めに20
ドル以 上の 価 格 LNII-Electronic Library Service
6
叶 秋 男維持
を必 要 とする石 油 産出
国の危 機 感を募 らせ, っ い1
こはイラクに よる協 定 破 りの ク 干一
トへ の武 力 侵攻
と なっ て現わ れ た が,
そ れ に よ る価格
の 暴 騰も,
一
方で原 油価
格
30
ドル 以上で採
算 ライン に乗る オ イ ル・
シ;一
ド の市 場 参 入, 他 方で先 進 国の一
層の脱 石 油エ ネル ギー
化を促 す 可 能 性に制約
されており, 決 して石 油 産 出 国の交 易 条件
を長期
に亙り有
利 化 するものと は な ら ない はずセ
ある。 こ の例に み る よ うに, 急 速な技 術 進歩
は一
次
産品
の価格
弾 力 性 自体
を変 化さ せ, 価 格 を極めて狭い レ ン ジで変 動せ ざるをえ ない もの に して きて い る とい え る。従
っ て,
こ う し た状
況 下で国 際 市 場に参 入せ ざるを え ない発 展 途 上 国 側の一
自 由 貿 易, 管理貿 易を閤わ ず一
交
易 条 件の不 利 化は不 可 避 性を帯びて い る といわざるをえ ない。とこ ろで
,途
上国経済
が国際貿易
を通 じで資本
主義世界
シ ス テ ム に組み込 ま れ る プロ セ スで 最も深 刻な問 題は, 労 働 集 約 的部 門の低 所 得の従 事 者に は働 き手の数を増やすことで家 計 収 入 を 上 げよ うとす る動機
づ け が作
用 するこ とであ る。 そ して実際第
二次世界大戦後
に拍車
のか かっ た途上国の人口増 加は依 然と して高 率 で推移 してい る。851− 90
年の先 進 地域
で の年 平 均 人口増 L 加率
が0.
53
%で あ っ た の に対し て , 発 展 途 上 諸国
で は ほ ぼ4 倍
の2.
10
%一
ア フ リカ で は3
.
00
%一
(『日本経済新
聞 』:1990
年
9
月17
日付
け)
と “ 爆発” し続
けてお り,
死 亡率
の 大幅低下
も加
わっ て過 剰 労 働 人口 の圧 力を相 当
な もの に.
して い る の である。経 済 発 展の実 例 どして
,
たいじた
人口の圧 力 もな
く,経済
的,社会
的,文
化 的 蓄積
の 上で産業革命期
に入っ た イ ギ リス の例
を持
ち出
すこと が無 益で ある の と同 様に, この 国 発祥
の自
由 貿 易 論は発 展 途 上 国 経 済の発 展 戦 略の要になり えな か っ たの も道 理である。 こ の ため時代
が発 展 途 上国
の ため に用 意 した もう一
っ の発 展戦
略は,
急 速 な:L
業 化の ため に徹底
して非資
本主義的
な手 段に訴え るソ ビエ ト型 社 会 主 義の 方 法 で あっ た。 ソ連の政 治 的 影 響が入り込んだ発 展塗
上 国では,
“社会
主義
志 向的” 経済 自
立戦略
が採用
さ れ,
生 産手 段の社
会 化や経 済の計
画化,
経済
の中
央集権的管
理 が進め ら れ た。 そ して “ 重 工業 (
生
産 手 段 生 産 ) 部 門の優 先的
発 展法
則” に従
うことで加 速 的 経 済 成 長が実 現でき る との ソ ビエ ト・
イデ オロー
グの ド グマ に従 っ て , 同 様 に資 本 蓄 積 率の過 度の引
き上 げ と工業へ の優 先 投資
が実 施された。 こ の戦 略で は, 生 産される 製 品が消 費 者 志向
で ない ため に貿 易は国 内 産業
の誘 発要因
に は な りえず, 規 模の拡 大 も見 込め なかっ たの はい う まで も ない 。 しか も,資
源,
技 術,需
要等
に関
する
産 業 間の有
機 的 連関
をほ と ん ど把握
で
きないま まの主 意 的な土業
化の推 進は,扇
内 資 源の大
量 浪 費と消費財
不 足を招
き, 国 民 経 済は忽ち破 綻の憂 目にあ わ ざるをえなか っ た。 こ うし た社 会 主 義的
経 済 実 験の中で も最 大 規模
の失敗例を中国
の “大躍
進政策
”(
1956
年)
に見
ること がで き る が, その他社会
主義
志向
国家
で も遅かれ早かれソ ビエF
型 発 展 戦略
は放
棄された。 そ して何よりも1960
年代
に はソ連
自体
の変 質が進 行したため に, マ ル クス主
義 派は市 場 経 済化
(ユー
ゴス ラビ ア)
か,文 化 革 命= 思 想 改 造の推
準
(
中国)
かの両極分化
を契機
に衰
退の 道 をた どっ たの で ある。自
由主義
と社
会主義の両 極の 間で グンナー ・.
ミュ ル ダー、
ル 等の構
造 主義者
は,自
由
貿易
論批
判の 上でマ ル ク ス主 義 派と見 解を一
致さ せ な が らも, 資 本 主 義 体 制の変 革の可能
性を認め , 発 展 途 上 国 がそれ を利
用して工業 化が可能
な “ 改 善された国 際 市 場メ カ予
ズ
ム” の摸 索 を行っ た。1964
年に発 展 途上諸
国の イニ シ アチ ブで設 立さ れ た国
連 貿易 開発会議 (
UNCTAD
)
を利
用し て の一
次 産品
の国際商品協定
, 途 上国
の製 品 ・半 製
品に対 する一
般特
恵 , 対GNP
比1
%の経済協力実施,
定 期 船 同 盟 条 約の採択
によっ て交易条件
を途
上
国
側に有利
にす
る戦略
も構造
主義
的
ア プ ロー
チ に由来
する。 そ の一
=me
の 運動
が1974
年
に “ 新国
際
経済秩序
”(
NIEO ) 樹
立 宣言
L 90 Nエ ヱー
Eleotronlo Llbrary〈発 展 途
.
上国の経 済発展 戦 略に関 する一
論 考 〉7
として結 実 したこ と はよ く知 られた事 柄である。
こ う し た国際
貿 易メ カニ ズムの改 善 を 目差 す一
方
で ,構
造 主 義が発 展 途 上 国の経 済 発 展 戦 略と して提 示したの は “ 輸 入 代 替 戦 略!! で あっ た。 そ れ は,
マ ル クズ主義同様
に先 進 国 経 済へ の従 属 的体質
を改善
す る鍵 を工業 化に求め る一
方で,
そ れ を非
社会
主 義的
方法
に基づい て行
部
う とす
る折衷的
思考
の中
か ら出
た もの で,
工業化
の 重 点を輸 入工業 製 品あ
国 産 化に置き,一
次 産 品 輸 出か ら 工業 製 品 輸 出へ.
O 転換を図ろ うとす る戦略
で あっ た。 発 展 途 上国
に とっ て魅
力的
に見え たこ の戦 略 も,70
年代
前 半まで に は国
内市
場の 制 約,
使 用 原料 ・半
製 品海 外 依 存に よ る貿
易
赤 字,
国 内地 場 産 業へ の波 及 効 果の小
さ さ な ど か ら放棄
する国が相 次ぎ,
現 在も継続
して い るの は イ ン ドな ど広い国内
市場
を持
つ小数
の 国だ け となっ て しまっ た。 ただし,
これはア ジアNIEs
の よ う な場 合に は,
次の “ 輸 出主 導 型 成 長” へ の橋
渡 しの 役割
と なっ た こ と は確
実であ る。こう
.
して70
年 代には積 極 的な発 展理論
は陰
を潜
め, 発 展 途 上 国の “ 低 開 発” は資本
主義 世
界
シ ス テム下の支 配と従 属 関 係の再生産
に基
pi
くもの で ある から
, 世 界 資本
主義
を揚棄
する以 外 にないとする新
マ ル クス主義
派 (A
.
G
.
フ ラン タが 代 表 的な理論
家 ) の 主 張 や, 経 済 成 長 優 先 の 西欧型 近代
化を.
“
ゆ が ん だ発展”(
maldevelopment)
と して否定
し,
その代
わ りlc
地域
分権
と生 態 系 重 視に基づ く “ 内 発 的 発 展” を対 置させ る協同型 社 会 主 義の思 想 (ダ グ・
ハ マー
シ ョ ル ド財
団リ ポー
ト ;1975
年)
な ど が 現 わ れ た。 両者
の共
通点
は近 代世
界で の国際貿易
の負
の効
果一
特に後 者は そ れの生 態 系へ の影 響一
を強
調す る とこ ろ にある 。 例え ば,
M
.
レッ ド ク リ フ ト は, 国 際 貿 易によっ て発 展 途 上 国の天 然 資 源が短 期 的 利 潤 追 及のたあに乱 開 発されて熱帯
雨 林が喪 失 する「
之と, 国 際 収支
の慢 性 的 赤 字の中で石 油エ ネ ル ギー
が利 用できず 薪 燃 料へ の 過 剰 依 存も森 林 破 壊の原 因になるこ と, 更には商 品 作物
価 格の 相 対 的 低 落に よっ てか えっ て それ の作 付け面 積が増 大す る一
方,
食料
作 物の自給が減 少 し,
逆に輸
入に頼らざるをえな く な る事 態を招く と指摘
して い る。彼
は ま た発 展 途 上国
が高 金利
かつ 交易条件
の 悪化
の 時 期に輸 出指向
型発 展戦
略を採 用 する こ とで重 債務
に落
ち込む危 険が自 由 貿 易の推 進を計 る世界銀行
やIMF
に よ っ、
て も与
え ら れ るこ と,経済
成長
の埠
及は取 り返しのっ かな い環境問
題を引き起こ空
ばか りでなく
,当初
の経済目的
の達成
に繋
が らない(
第
4
章)
と主張
して い る。今
日の国際
政治
に おいて か かるエ コ ロ ジス トの 主 張も軽 視で き ない重みを持ちっ っ あるの は確かで ある。 という
の も,
環境
破 壊は地 球 規模
の危 険 を 伴 う もの に成 りっ っ あるからだ。
勿 論, 環 境 保 護 論の高 ま りは,
かつ て先 進 国が公 害の克 服に一
定
程度
購
功
し た よ うに新 技 術.
・
商 品開
発の経済
的刺
激に な ることで資 本 主 義の内 部で解 決さ れ る可 能性
が ない訳で はない。 しか し,’
発 展途
上 諸 国が成最
と環境の 間で直面
しっ っ 問 題の解 決に当た っ て も グロー
バ ル な経済
成 長に よっ て解 決で きる と楽観
で き る もの か大い に疑
問が あろ う。・
こ こ に至っ て発
展 途 土国経済
の 発 展戦
略は, 先 進国
経済
の有様
と も絡
んで資本
主義
世界
シ ス テ ム自体
の在
り方
を問
うべ き問 題になっ てい る訳
だが , エ コ ロ ジス トの議論
は発
展 途 上国
経 済の 発 展と結 び付 かないために,
発 展 途 上 諸 国は依 然と し て旧来
通 りの経 済 成 長主義の摸索
を行
な っ て い るの が実情
であ る。NII-Electronic Library Service
8
叶・
秋’
男2
、対外 経
済
関係
か ら み た 発 展途上 国 経済
の現状
我々は次に近
年
の発 展 途 上国経済
の動 態につ い て考究
しでみ るこ とに し よ う。我
が国
の 行 政機
関が,
発 展 途上国(
Less
developed
countries )の カテ ゴ.
リー
を使 う場 合に は, これ まで のところソ連t■
東 欧 諸 国 を 別 格と し て 日本 を除
くアジア諸 国,
ラ テン・
ア メ リカ諸
国そ して ア フ リガ諸国
を 意味
してい る。 ただし, そ う し た カテゴ リー
国
の中
に も戦後
45
年
間 に経
済 発 展の実 績に相 当な格 差が生 じ たこと,
特に ア ジア地 域の経 済 発 展が目覚ま い ・た めに ,韓
国
, 台 湾,香
港, シ ンガポー
ル の先 進4
ケ国
を “亨
ジアNIEs
”,
タイ, イ ン ド ネシ ア , マ レー
シ ア ,’
フ ィ’
1丿ピン の中
進4
ケ国
を “ ア セ ア ン” と呼
んで 区 別 してい る。第
1
表
の 過去
5
ケ年
(1984
−
1988
年)
の世
界の実
質 成 長率
と世界貿易
の実
績が示 すように,
発 展 途 上 国が先 進工業 国とほぼパ ラレルな成 長 率 を維 持 しているのはア ジア の高 さ
が中東
とラ テン・
ア メ リカ の低
さ をカバー
してい る か らに他
な ら ない。特
にア ジアNIEs
の 平 均10
%近い際
立っ た成
長率
め影響
5 が大きい 。 とこ ろ で, 発 展 途上国 闇の不 均等
発 展に関して世 界 銀 行 発 行の世 界 開 発 報 告に基 づ い て分 析を行っ た広 野 良 吉 既に よれ ば ,1965
二87
年の長 期に耳
っ て平 均4
% 以 上の成 長を維 持 した国が12.
ケ国 (
台
湾を含めず )あ り, そ の中に はア ジァ 地域
で は ア ジア・
NIEs
3
ケ国
, 中国
, マ レー
シ ア,
宮
ン ドネシ ア,中
東
地 域ではオマー
ン,
サう
ジ ァ ラ ビ ア,
ラ テ.
ン・
ア メ リカ地域
でブラ ジル , そ してア フ リカ地域
で レ ツ ト, コ ン ゴ, ボッ ワナといつ
た国が入 る とい う。 因 み に,
広野
氏は4
%の年平
均 成 長 率 を “ 発 展のめざま
しか っ た国
” の資 格 基 準と し てい多
。 氏 に よれ ば, その根拠
は先
進国
にも長期
間4
%
以上の成
長率
を維 持 し え た国が ま れであ る た めで あ・
る と い う。「
私 見で は,
こ の4
%の 数 値に積 極 的な意 味 合い を被るの は錯誤であ ると思 う。 そ も そも
資本
主義世
界シ ス テ ム におい て は“
後 発の利
益” が働 くの に, 発 展 途上国が先 進 国 とほ ぼ1
司率
の成長
しか得 られ ないならば, 永 遠に先 進 国の経
済 水 準に追い付 けない ことにな ろう。 そ れを
認識
してい るから
こそ,
70
年代
に は大
半
の発 展 途 上国
が基本的
な戦
略
目標
と しで6
〜
7
% の経済成長率
を定め,
その原動
力と して工業
開発
に重
点を置いたの であ る。 結 果は,
今日ア ジ アNIEs
, ア セァ ンだ け が 先 進 国に キ ャ ッチ・
ア ッ プ でき、
るよう な経 済 成 長 率 を 確 保 して い る にす ぎず, 過半数
の発
展途上 国は人口増加率程度
も しくは それ ずら及ば ない厳
しい状
況にあ る ので あ る。第
1
表
を経済成
長率
と貿
易増
加 率を対
照 してみ ると極めて 密な連 関を認める こと ができよう。 つ ま り,
そ の こ と は各 国 経 済が貿 易に よ っ て世 界 経 済 と リン ク さ れて お り,貿 易 実 績が そ の 国 の経 済 成 長に深く関
わっ ていることを意味
する。70
年代
か ら輸入代替
から輸出指向
へ と政策転
換
し たア ジ ァNIEs
は, ア メ リカ;日本
とい っ た大消
費 市 場を との連
関を
深め ,積極
的に国際
貿易
拡 大に努
め て きたが, 第1
表はその成 功 を 如 実に物 語っ てい る。.
1988
年に?
いてだ け みて も,肇
展 途 上 国全体
は貿易収支
が157
億 ドル の入 超なの に対 して , ア ジ アNIEs
は143
億 ドル の出
超 となっ て い る。 ア セ ア ン も , 貿易収支
で は タ イ が赤
字
, マ レー
シ アが黒字
とい っ た具合
で あるが,
全体
に貿易総額
は好
調に推移
して い る。注 目す
べ きは, こ のよ うに拡大
基 調の ア ジ ァ 途 上諸 国の貿 易が, 第2
表が示 すように, 北 米を含む “ 域 内分 業 体 制” を実 質 的に作り上 げっ っ ある こ とである。 こ の.
ことは60
年代
か ら地 域 協 力機構
を創設
し,目
的 意識
的に域内 自
由貿易
と域内分業
の推 進 を 図丁 っ て きた ラ テ ン・
ア メ リカ が域 内 市 場の拡 大に失 敗 し, 依 然と して ア メ リカ経済
へ の依
存を
深
めっ っ あ るのと は際
立っ た相
違であ る。,
92
N工 工 IEleotronlo Llbrary〈発 展 途 上国の経 済発展 戦 略1と関
す
る一
論考 〉9
第
1
表世界
の実
質
成 長 率と世 界貿
易名
目GNP
(
億
ドル,
88
年 )1984L
19951986198719881889
見 通し世
界計
℃
199
,
632
4
.
3
3
.
2
a1
3 .
3
4.
0
3
.
1
実 先 進工業
国138
β
88
・
4
.
9
.
3
.
4
:2
.
6
3
.
5
4
.
4
、
3.
5
ア メ リカ1
48
β06
6
,
8
3
.
4
2
.
7
3
.
7
4
.
4
2
.
9
質 日本28,
641
5.
1
4.
9
2.
5
4 .
5
5.
7
4.
9
EC
47
β
42
2.
5
2.
4
2
.
6
2
.
7
3
.
7
3
.
4
成 発展途上国』
26
,654
「
4.
0
3
,
9
4
.
2
3L6
4.
2
3
.
2
ア ジァ10
,
930
(
87
)
8
.
3
6
.
9
6
.
7
7
,
9
9
.
2
6
.
1
長 ア ジアNIEs
3
,680
9
.
6
4
.
5
、、
11
.
312
.
2
9
.
8
615
、
中国
3
,
765 ・
.
14
.
5
.
13
.
0
」
8
.
3
・
10
.
611
.
2
7
.
5
率 中 東4,
362
(
87
)
△0.
9
△0.
2
0.
6
△1.
5
3.
5
3.
5
ラ テ ンア メ リカ7
,294
(87
)3
.
4
3
.
5
4
.
0
3
.
0
0
.
7 .
’
『 ソ連・
東 欧34
,
290
(
87
)
2
.
1
1.
5
3
,
9
2 .
0
2
.
2
.
1
.
7
世 界 貿易
(
数量).
8.
6
2
.
9
4.
5
’
6 .
6
9,
0
6
.
9
輸出
名 目世界
輸 出 額(
億 ドル,
88
年)
世界計
・
28
,4QO
先 進 工業
国19
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