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山梨県におけるNPO法人経営の持続性意識に関する研究 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 王 娜 博士の専攻分野の名称 博士(工学) 学 位 記 番 号 医工博甲第374号 学 位 授 与 年 月 日 平成28年3月23日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 環境社会創生工学専攻 学 位 論 文 題 目 山梨県における NPO 法人経営の持続性意識に関する研究 論 文 審 査 委 員 主査 教 授 大 山 勲 教 授 北 村 眞 一 教 授 佐々木 邦 明 准教授 金 基 成 准教授 高 橋 智 子 准教授 島 崎 洋 一 和歌山県立医科大学准教授 下 川 敏 雄

学位論文内容の要旨

NPO 法人の取り組みが社会的な影響力を持ち社会に定着していくには、活動を持続的に行ってい く必要がある。非営利でミッションの達成を目的とする NPO 法人の経営では財務の面のみならず意 識の面が大きな影響を与えている可能性がある。 本研究は、NPO 法人の良好な経営を促す知見を得るため、法人運営者の持続性意識(持続希望と 持続自信)が NPO 法人の良好な経営を促す重要な媒介要因と捉え、持続性意識と関連する経営行動 面の要素が何かを定量的・統計的な方法を用いて明らかにした研究である。 具体的な研究目的を次のように設定している。 (1)調査票調査による量的アプローチによって持続性意識と経営要素の関連を明らかにすること。 (2)ヒアリング調査による質的アプローチによって持続性意識と経営行動の関連を明らかにする こと。さらに、(1)で明らかにした持続性意識に強く影響する経営要素に関する行動と持続性意識 の関連を検証すること。 (3)得られた知見を整理し、既存の知見も踏まえながら、NPO 法人が良好な経営を持続させるた めの提案を行うこと。 研究方法は、従来の SD 法や計量心理学的手法に比べてより発展した統計的分析手法を適用し、よ り信頼性の高い成果を得ようとした。

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量的アプローチでは、多くの経営要素の中から特に持続性意識に強い影響を与える経営要素を探 索する必要からサンプル数に対して説明変数が多くなってしまう。また、意識を捉えたデータは離 散的であり母集団分布も確定できない。そこで、このような状況下でも、信頼性の高い探索結果が 得られる分類回帰樹木法および多変量回帰樹木法を用いた。 また、質的アプローチでは膨大なテキストデータの分析を、より客観的・統計的に行うために、 対応バブル分析を中心としてテキストマイニングの手法を用いた。 研究対象は山梨県の NPO 法人とした。地域再生の課題を抱える地方では NPO 法人に対する期待が 高まる一方で、地域の社会経済基盤が弱いことから NPO 法人の持続的で良好な経営が難しい。また NPO 法人の抱える課題や解決方法は寄付文化など地方の社会的背景によって異なると考えられる。 そこで、本研究では対象を山梨県に絞って詳細な分析を行った。 量的アプローチでは、次の結果を得た。 (1)持続性意識のある(持続希望と持続自信を同時に持つ)NPO 法人と持続性意識の無い NPO 法人を分ける経営要素は「外部変化への対応」「会員の継続的支持」であり、「会員の継続的支持」 が得られない場合は「企業からの支持」がやや持続性意識を高めることに影響していた。 (2)持続希望を持つが持続自信の無い NPO 法人(持続不安群)に影響を与える経営要素は「知名度」 であった。NPO 法人は非営利でありミッシヨンに基づいて事業展開を図るので、社会からの認知程 度が持続性意識に影響すると理解できる。 このように、従来の研究が NPO 法人の持続性に影響する要素と指摘する「多様な財源確保」や「会 費・寄付金の増資」といった財政面の要素とは異なる知見を得た。 質的アプローチでは、経営行動を『活動の目的を達成するために「苦労」を認識し、それを乗り 越える「工夫」をおこない、その結果「達成(良かったこと)」を果たすこと』と捉えて、この 3 点をヒアリング調査によって把握し、得られたテキストデータをテキストマイニングによって統計 的に分析した。結果は次の通りである。 (1)持続性意識がある NPO 法人は、苦労の内容を認識し、その課題を解決する工夫を行い、それが 良好な成果に結びついていた。持続性意識がない NPO 法人は苦労・工夫に対する認識や行動は漠然 としていた。持続性意識は NPO 法人の実際の経営活動に関係していることを示すことができた。さ らに、財政面の要素よりも意識や行動の具体性が、持続性意識のある/なしと関連していた。 (2)量的アプローチで示された4つの経営要素に関しては、持続性意識のある NPO 法人とない NPO 法人では、「外部の変化に対応する適応の必要性の認識と工夫の具体性」「会員の持続的な支持の必 要性の認識と工夫の具体性」「企業や行政からの支持や連携を得る必要性の認識と工夫の具体性」「知 名度を上げることの必要性の認識と工夫の具体性」において明らかな差が認められた。 (3)活動分野と持続性意識のある/なしの間に関連はみられなかった。このことから、持続性意識 は、NPO 法人の活動分野(活動目的や活動内容)の制約よりも、法人運営者の何らかの能力に関係

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している可能性を指摘した。 考察では、持続性意識と関連する4つの経営要素を充実させる具体的な方策を検討した。この4 つの要素に関する従来の知見を整理すると①外部環境の情報収集と分析、②ミッションと一致する 連携先の絞り込み、③会員の期待の把握、④広報内容による媒体の使い分け等が指摘されている。 まず、この努力を行い、持続性意識を醸成し、持続性意識がさらに経営努力に繋がって良好な経営 を実現する好循環を生み出す方策を提案した。ただし、①②④には専門性と広範な営業が求められ る。山梨県の NPO 法人は小規模で人材不足であり、行政の支援として従来の補助金だけでなく、コ ンサルティング(専門知識の提供)やマッチング(企業と NPO 法人を繋ぐ場づくり)の重要性を指 摘した。 以上のように、従来の研究は持続性意識が良好な経営に与える影響を主観的・経験的には指摘し ていたが、本研究は定量的・統計的な分析手法によって、持続性意識と経営要素・経営行動との関 連を明らかにし、それに基づいた提案を行った。

論文審査結果の要旨

NPO 法人の活動は利潤ではなくミッションの達成を目的としている。したがって、NPO 法人の経営 を持続的に良好にするためには、財務だけでなく意識・行動の面にも着目する必要がある。 本研究は、山梨県を対象として、NPO 法人の良好な経営を促す知見を得るため、法人運営者の持 続性意識(持続希望と持続自信)が NPO 法人の良好な経営を促す重要な媒介要因と捉え、持続性意 識と経営行動の関連を定量的・統計的な方法を用いて明らかにしようとする研究である。具体的に は以下の項目を明らかにすることを目的としている。 (1) 持続性意識と経営要素の関連を明らかにする。 (2) 持続性意識と経営行動の関連を明らかにする。さらに、(1)で明らかにした持続性意識に強 く影響する経営要素に関する行動と持続性意識の関連を検証する。 (3) 得られた知見を整理し、既存の知見も踏まえながら、NPO 法人が良好な経営を持続させるた めの提案をおこなう。 本論文の成果としては以下の点があげられる。 目的 (1) に対しては、調査票調査を行い、分類回帰樹木法など最新の分析手法を用いて、持続性 意識のある NPO 法人と持続性意識の無い NPO 法人を分ける4つの経営要素「外部変化への対応」「会 員の継続的支持」「企業からの支持」「知名度」を抽出することができた。また、持続性意識の確率 の異なる4つの群と活動内容の関係では確率の高い群は特定の活動分野に偏ってはいないこと、持 続性意識の確率が高い群は事業収入と受託事業の占める割合が高く寄付金が少なく、持続性意識の 確率の低い群は会費と寄付に頼っている傾向がみられること、ミッション達成に満足している NPO

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法人ほど自主事業に成功していること、を明らかにした。これらは、従来の研究が NPO 法人の持続 性に影響する要素と指摘する「多様な財源確保」や「会費・寄付金の増資」といった財政面の要素 とは異なる新たな知見であり、意識面・行動面についても従来様々な持続影響要素が定性的に指摘 されていたが、その中でも特に影響の強い要素を定量的に明らかにした。 目的 (2) に対しては、ヒアリング調査によって得た膨大な文章情報をテキストマイニングによっ て統計的に分析した。その結果、持続性意識のあり/なしによって、「苦労の認識」「工夫の努力」 「成果の達成」という一連の経営行動が異なることを明らかにした。すなわち持続性意識のある法 人には「苦労」「工夫」「成果」のいずれの点においても具体的な認識と行動があった。さらに (1) で 抽出された4つの経営要素と良好な経営行動との関連も示され、持続性意識のある NPO 法人はいず れの経営要素に対しても具体的な認識をして具体的な行動を行っていたことを検証できた。財政面 の工夫の努力は持続性意識のあり/なしに関わらず行っていたが、持続性意識のある NPO 法人では、 課題の具体的な認識、人材育成や知名度向上の具体的な工夫の実行、その結果、意識面での充実感 を得てモチベーションが上がり、さらに努力するという好循環があることを指摘した。 目的 (3) に対しては、以上の成果を踏まえ、既存知見も整理した上で、持続性意識を媒介として NPO 法人を良好な経営に導く具体策を提案した。 以上のように、本論文は従来検討されてこなかった NPO 法人の意識と経営の関連を定量的・統計的 に明らかにし、山梨県において地域を支える新たな担い手である NPO 法人の経営を良好に導くため の新たな知見を提示している。本論文の成果は地域経営分野・地域計画分野で有用な知見となるも のであり、本論文が博士(工学)の学位論文として適格なものであると判断した。

参照

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