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ショスタコーヴィチ《ムツェンスク郡のマクベス夫人》(Op.29)と《カテリーナ・イズマイロヴァ》(Op.114) : 作品成立と声楽家の視点における二つの作品の比較

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Academic year: 2021

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氏 名 田 タ 口 グチ 智 トモ 子 コ 学 位 の 種 類 博 士 ( 音 楽 ) 学 位 記 番 号 博 音 第 1 4 5 号 学 位 授 与 年 月 日 平 成 2 1 年 3 月 2 5 日 学 位 論 文 等 題 目 〈 論 文 〉 シ ョ ス タ コ ー ヴ ィ チ 《 ム ツ ェ ン ス ク 郡 の マ ク ベ ス 夫 人 》( Op.29) と 《 カ テ リ ー ナ ・ イ ズ マ イ ロ ヴ ァ 》( Op.114) - 作 品 成 立 と 声 楽 家 の 視 点 に お け る 二 つ の 作 品 の 比 較 - 論 文 等 審 査 委 員 ( 総 合 主 査 ) 東 京 芸 術 大 学 教 授 ( 音 楽 学 部 ) 朝 倉 蒼 生 ( 演 奏 審 査 主 査 ) 〃 〃 ( 〃 ) 朝 倉 蒼 生 ( 演 奏 審 査 副 査 ) 〃 〃 ( 〃 ) 伊 原 直 子 ( 〃 ) 〃 〃 ( 〃 ) 成 田 英 明 ( 〃 ) 〃 准 教 授 ( 〃 ) 佐 々 木 典 子 ( 〃 ) 〃 非常勤講師 ( 〃 ) 一 柳 富 美 子 ( 〃 ) 〃 非常勤講師 ( 〃 ) マルチェラ・レアーレ ( 論 文 審 査 主 査 ) 〃 教 授 ( 〃 ) 朝 倉 蒼 生 ( 論 文 審 査 副 査 ) 〃 〃 ( 〃 ) 伊 原 直 子 ( 〃 ) 〃 〃 ( 〃 ) 成 田 英 明 ( 〃 ) 〃 准 教 授 ( 〃 ) 佐 々 木 典 子 ( 〃 ) 〃 非常勤講師 ( 〃 ) 一 柳 富 美 子 ( 論 文 内 容 の 要 旨 ) ド ミ ー ト リ イ ・ ド ミ ー ト リ エ ヴ ィ チ ・ シ ョ ス タ コ ー ヴ ィ チ ( 1906- 75) が ス タ ー リ ン 政 権 の ソ ヴ ィ エ ト を 代 表 す る 作 曲 家 と し て 生 き 抜 き 、 後 世 に 名 を 残 す 活 躍 し た こ と は 有 名 な 事 実 で あ る 。 彼 は 交 響 曲 や 弦 楽 四 重 奏 な ど で 名 が 知 ら れ て い る が 、 ソ ヴ ィ エ ト で 上 演 禁 止 を 受 け 、 あ ま り 世 に 出 る 機 会 の な か っ た オ ペ ラ《 ム ツ ェ ン ス ク 郡 の マ ク ベ ス 夫 人 》が あ る 。そ の 上 演 禁 止 令 は 、シ ョ ス タ コ ー ヴ ィ チ の 音 楽 を「 形 式 主 義 」 と 批 判 し 、 ス タ ー リ ン の 大 粛 清 が 始 ま る 前 に 、 他 の ソ ヴ ィ エ ト 作 曲 家 へ の 見 せ し め の 意 味 も あ っ た 。 こ う し て 、 そ れ ま で ソ ヴ ィ エ ト 連 邦 だ け に 留 ま ら ず 世 界 各 地 で 人 気 を 博 し て い た オ ペ ラ 《 ム ツ ェ ン ス ク 郡 の マ ク ベ ス 夫 人 》( Op.29) は 闇 へ 葬 り 去 ら れ た 。 そ れ か ら 20年 近 く 経 っ て 、 シ ョ ス タ コ ー ヴ ィ チ は こ の オ ペ ラ の 改 訂 版《 カ テ リ ー ナ・イ ズ マ イ ロ ヴ ァ 》( Op.114)を 作 曲 し 、作 品 番 号 も 変 え て 発 表 し た の で あ る 。 し か し 、 ソ ヴ ィ エ ト 政 府 が こ の 才 能 溢 れ る 、 ソ ヴ ィ エ ト の ホ ー プ の 作 品 を 非 難 し た の に は 、 そ の 作 品 自 体 に そ れ な り の 原 因 が あ っ た 。 そ の オ ペ ラ の 内 容 は 当 時 に す れ ば き わ ど い も の を 含 ん で い た の だ 。 レ ス コ ー フ 原 作 の 小 説 は 、 商 人 の 妻 カ テ リ ー ナ ・ イ ズ マ イ ロ ヴ ァ を 主 人 公 と す る 殺 人 劇 だ っ た だ け で は な く 、 性 的 描 写 を 多 く 含 む も の で あ っ た 。 し か し 、 シ ョ ス タ コ ー ヴ ィ チ は オ ペ ラ と し て 生 ま れ 変 わ っ た カ テ リ ー ナ を 、 た だ の 殺 人 鬼 で は な く 、 人 の 同 情 を 集 め 、 そ の 罪 を 犯 し た こ と に 対 し て さ え 正 当 性 を 与 え る よ う に キ ャ ラ ク タ ー を 変 え て 描 い た 。 そ の 作 曲 家 の 意 図 す る と こ ろ は 何 だ っ た の だ ろ う か 。 一 体 シ ョ ス タ コ ー ヴ ィ チ が 求 め た 主 役 の カ テ リ ー ナ 像 は ど う で あ っ た の か 。 そ し て 、 そ れ を 守 る た め に 《 カ テ リ ー ナ ・ イ ズ マ イ ロ ヴ ァ 》 で は ど の よ う な 修 正 を 行 な っ た の か 。 歌 手 と し て ど の よ う に カ テ リ ー ナ 像 を 探 れ る の か を 考 え た 。

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そ こ で 本 論 で は 、 ま ず 第 1 章 で 《 ム ツ ェ ン ス ク 郡 の マ ク ベ ス 夫 人 》 お よ び 《 カ テ リ ー ナ ・ イ ズ マ イ ロ ヴ ァ 》 成 立 の 背 景 を 調 べ 、 第 2 章 で は シ ョ ス タ コ ー ヴ ィ チ が 主 役 の カ テ リ ー ナ に ど の よ う な 女 性 像 を 求 め て い た の か 、 シ ョ ス タ コ ー ヴ ィ チ が レ ス コ ー フ 原 作 の 小 説 を 変 え て 独 自 の カ テ リ ー ナ を 生 み 出 し た 理 由 を 調 べ た 。 ま た 、 最 終 章 で は 表 現 者 に と っ て 重 要 な 歌 詞 、 音 楽 の 変 化 の 経 過 を 観 察 し て 、 声 楽 家 の 視 点 か ら の 二 つ の 作 品 の 相 違 点 、 声 楽 的 問 題 点 に つ い て 考 察 し た 。 シ ョ ス タ コ ー ヴ ィ チ を 政 治 的 な 側 面 か ら 、 ま た は 学 術 的 な 側 面 か ら 研 究 し た も の は 数 多 い が 、 本 論 は あ く ま で も 声 楽 家 が 役 の キ ャ ラ ク タ ー を 探 る と き 、 そ し て 修 正 が 加 え ら れ た 歌 詞 や 音 楽 に は ど の よ う な 経 過 が あ っ た の か を 知 り 演 奏 の 際 に 役 立 て れ ば と 思 っ て 書 い た 。 ( 博 士 論 文 審 査 結 果 の 要 旨 ) 本 論 文 の 題 目 は 『 シ ョ ス タ コ ー ヴ ィ チ《 ム ツ ェ ン ス ク 郡 の マ ク ベ ス 夫 人 》Op.29と《 カ テ リ ー ナ・イ ズ マ イ ロ ヴ ァ 》 Op.114- 作 品 成 立 と 声 楽 家 の 視 点 に お け る 二 つ の 作 品 の 比 較 - 』 で あ る 。 声 楽 家 の 視 点 で み た 両 作 品 の 比 較 を 試 み て い る 。 1932年 に 作 曲 さ れ 、 1934年 に 初 演 さ れ た オ ペ ラ 《 ム ツ ェ ン ス ク 郡 の マ ク ベ ス 夫 人 》 は 当 時 の 聴 衆 か ら 非 常 に 好 意 的 に 受 け 入 れ ら れ て い た に も か か わ ら ず 、 ス タ ー リ ン 時 代 の 粛 正 に よ る 政 治 的 な 理 由 で 上 演 禁 止 と な っ た 。 ス タ ー リ ン の 死 後 、 か な り の 年 月 を 経 て 作 品 番 号 も タ イ ト ル も 変 え て 出 版 さ れ た 改 訂 版 《 カ テ リ ー ナ ・ イ ズ マ イ ロ ヴ ァ 》 で は 粗 野 で 下 品 な 台 詞 や 音 楽 的 に 猥 雑 な 部 分 を 書 き 換 え 柔 ら か い 表 現 に 直 し た 。 ま た バ ス の パ ー ト ( ボ リ ス 役 ) と カ テ リ ー ナ の パ ー ト に 現 れ る 発 声 的 負 担 の 多 い 高 音 の 連 続 す る 部 分 も 改 善 さ れ た こ と な ど 、 2 つ の 作 品 の 異 な る 箇 所 を 譜 例 で 示 し な が ら 比 較 し 、 演 奏 家 と し て の 演 奏 解 釈 を 加 え て 述 べ ら れ て い る 。 改 訂 版 《 カ テ リ ー ナ ・ イ ズ マ イ ロ ヴ ァ 》 で は 声 の 負 担 は 軽 く な っ た も の の 、 そ の 感 動 や 喜 び も 修 正 さ れ て 幾 分 少 な く な っ て し ま っ た と 申 請 者 は 述 べ て い る 。 「 現 代 の オ ペ ラ 、 特 に ヨ ー ロ ッ パ に お い て は 伝 統 的 な 物 よ り 斬 新 な 演 出 や 表 現 が 優 遇 さ れ る 傾 向 に あ る 。 初 版 で は 初 演 当 時 か ら 性 的 で 猥 雑 な 部 分 ば か り が 注 目 さ れ た が 、 こ れ は 作 曲 家 が 望 む も の で は な か っ た 。彼 が 求 め た カ テ リ ー ナ 像 を 探 っ て い く 事 は 歌 い 手 と し て 終 わ り の 無 い 探 求 で あ る 。」と 諦 め く く っ て い る 。 作 曲 家 の 真 に 意 図 し た 物 を 再 現 し 演 奏 し て い く 事 こ そ 演 奏 家 の あ る べ き 姿 で あ ろ う 。 今 回 の 演 奏 も 初 演 版 で 行 わ れ た が 下 品 で 猥 雑 な 部 分 は 的 確 に 表 現 さ れ 、 カ テ リ ー ナ の 心 情 が よ く 表 現 さ れ 秀 逸 で あ っ た 。 オ ペ ラ 《 ム ツ ェ ン ス ク 郡 の マ ク ベ ス 夫 人 》 は 以 下 の 4 つ の 版 が 存 在 す る が 、 2007年 に 出 版 さ れ た ス コ ア に つ い て 言 及 し て い な い の で 、 新 し い 楽 譜 を も と に 今 後 、 よ り 踏 み 込 ん だ 研 究 が 望 ま れ る 。 1932年 版 シ コ ル ス キ 版 ( 初 版 ム ツ ェ ン ス ク 郡 の マ ク ベ ス 夫 人 ) 1935年 版 ム ズ ギ ズ 版 ( シ ョ ス タ コ ー ヴ ィ チ に よ る ピ ア ノ 編 曲 譜 ) 1963年 版 ム ズ ィ ー カ 版 ( カ テ リ ー ナ ・ イ ズ マ イ ロ ヴ ァ と し て 出 版 さ れ た 改 訂 版 ) 2007年 版 が 存 在 す る 。 巻 末 に 初 演 版 の ス コ ア の 申 請 者 に よ る 訳 詞 と 改 訂 版 の 訳 詞( 初 演 版 と の 相 違 部 分 )が 載 せ ら れ て い て 、 こ の オ ペ ラ を こ れ か ら 演 じ る 人 た ち に と っ て 大 き な 助 け に な る で あ ろ う 。 以 上 演 奏 家 の 論 文 と し て 後 に 続 く 人 た ち に そ の 道 を 示 す 事 が で き る も の で 学 位 を 授 与 す る に ふ さ わ し い と 考 え 合 格 と す る 。 ( 演 奏 審 査 結 果 の 要 旨 ) シ ョ ス タ コ ー ヴ ィ チ 作 曲 《 ム ツ ェ ン ス ク 郡 の マ ク ベ ス 夫 人 》 作 品 29が 、 次 の 場 面 を カ ッ ト し て 全 幕 上 演 さ れ た 。 1 幕 2 場 の ア ク シ ー ニ ャ の 輪 姦 、 2 幕 5 場 の 司 祭 登 場 、 3 幕 7 場 の 警 察 署 の 場 面 、 3 幕 8 場

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の 挙 式 中 の 逮 捕 シ ー ン 。 学 位 申 請 者 は 主 演 の 他 に 、 演 出 、 装 置 デ ザ イ ン 、 衣 装 製 作 、 他 の 5 人 の キ ャ ス ト の ロ シ ア 語 コ ー チ ま で を 一 人 で こ な し た 。 ピ ア ノ 伴 奏 に よ り 簡 素 な ス テ ー ジ で 演 奏 さ れ た 。 白 い 大 き な 布 を 舞 台 奥 か ら 前 へ 張 り 、 舞 台 奥 に 階 段 を 5 段 置 い た だ け の 装 置 で 全 幕 上 演 さ れ 、 見 事 な 場 面 状 況 を 作 り 出 し て い た 。 白 い 布 が 部 屋 の し き り や 、家 の 壁 、時 に は ベ ッ ド( シ ー ツ )、最 後 の 幕 で は 湖( 波 )と し て 使 わ れ 、象 徴 的 で 優 れ た ア イ デ ア で あ る 。 第 1 回 、 第 2 回 の 博 士 リ サ イ タ ル で 演 奏 し て き た シ ョ ス タ コ ー ヴ ィ チ の 作 品 の 集 大 成 と も い え る 演 奏 で 、 音 楽 、 演 技 と も に 役 の キ ャ ラ ク タ ー 全 て が 自 分 の も の と し て 表 現 さ れ て お り 、 叙 情 性 と ド ラ マ テ ィ ッ ク な 部 分 を 余 す と こ ろ 無 く 発 揮 さ れ 、 す ば ら し い 歌 唱 と 演 技 で あ っ た 。 中 低 音 の 声 の 艶 と 情 感 の 表 現 は 特 筆 に 値 す る 。 ロ シ ア 語 の 歌 曲 と オ ペ ラ は 学 位 申 請 者 の 声 に 合 っ て お り 、 特 に カ テ リ ー ナ 役 は 日 本 で は こ れ 以 上 の 歌 手 は 望 め な い で あ ろ う と 思 わ せ る 程 で あ る 。 短 い 日 本 滞 在 で 大 道 具 、 小 道 具 の 調 達 、 衣 装 製 作 、 演 出 等 で コ ン デ ィ シ ョ ン を 維 持 す る の が 困 難 な の で は と 懸 念 さ れ た が 疲 れ を 感 じ さ せ な い 力 強 い 歌 唱 で あ っ た 。 感 情 的 に な り す ぎ て 高 音 域 で の コ ン ト ロ ー ル が 難 し い と 感 じ ら れ た 部 分 が 僅 か に 見 ら れ た が 、 今 後 は 発 声 の テ ク ニ ッ ク と 感 情 の コ ン ト ロ ー ル の バ ラ ン ス を 考 え る こ と も 必 要 で あ ろ う 。 ロ シ ア 語 の 台 詞 は 外 国 人 と し て は 突 出 し て い る 。 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル の 歌 い 手 と し て ヨ ー ロ ッ パ で 多 く の 舞 台 を 経 験 し て い る 事 が う な ず け る 非 常 に 高 い レ ベ ル の 演 奏 で あ っ た 。 以 上 の 理 由 に よ り 博 士 の 学 位 を 授 与 す る の に 十 分 と 考 え 合 格 と す る 。

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