• 検索結果がありません。

あれも見たい!これもとりたい!~私の昆虫撮影記~(その5 青い昆虫たち)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "あれも見たい!これもとりたい!~私の昆虫撮影記~(その5 青い昆虫たち)"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

あれも見たい!これも撮りたい!∼私の昆虫撮影記∼ ― 81 ― 359 私たちにとって特別な色はあるのだろうか。例えば花 が本来持っていない色を,育種などにより作り出そうと するのは,バラで有名なように「青色」が多い。いにし えのころ,聖徳太子の定めた冠位十二階でも,紫に次い で高い位置にあるのは青であった。空や海の色のよう に,私たちの身近にありながらも,青は私たちにとって 特別な意味を持つ色なのかもしれない…。 では昆虫の中で,青い色を持つもの,となると意外に 少ない気がする。和名に「アオ」と付いていても,アオ バセセリやアオスジアゲハなどのように,信号の青のよ うに緑がかった色のものが多いので,純粋に青い昆虫は 少ないように感じる。 そんななかで青い昆虫というと,まず浮かぶのはルリ ボシカミキリだろうか。青ではなく瑠璃色の和名をもつ このカミキリムシは,青色の斑紋を持ち,私にとっても 子供のころから見たいと思っていた昆虫であった。しか しこのカミキリムシも,なぜか出会う機会がなく,長く 会えないままであった。それが数年前に宿泊した山梨の 宿に隣接した貯木場で,あっさりと見つけることができ た(図―1)。これまでも貯木場があると毎回探していた のに見つけることができず,最近はあまり期待していな かった。夕方の薄暗い貯木場に現れた個体は,ゆっくり 歩き回りたくさん写真を撮らせてくれた。そして翅に浮 かび上がるブルーの斑紋はなんとも幻想的であった。 チョウで青い種といえば,南西諸島にいるアオタテハ モドキが思い浮かぶ。このチョウは,明るい芝地のよう な場所があれば,たいていは見ることができるので,探 すのに苦労することは少ないが,翅を広げて休んでいる オスを見つけると,ついつい時間を忘れて撮影してしま う(図―2)。珍しい種ではないものの,後翅の吸い込ま れるような青い色が,このチョウのポイントを高くして いるのではないだろうか。 でも青いチョウ,といえばモルフォチョウの輝きは圧 倒的である。15 年以上も前にブラジル南部の植物調査 に同行した私は,林縁を飛ぶ青い輝きに目を奪われた。 そしてすべてを投げ出し網だけ持って「モルフォだ」と 叫んで森に消えた私を見て,同行した人たちは,もう森 から戻ってこないのではと思ったそうである。その後網 に入ったチョウを手に満面の笑みで興奮気味で戻ってき た私を,皆は半分呆れ顔で出迎えてくれた。捕まえたの はエガーモルフォという小型種だったが,飛んでいたチ ョウは実際の何倍にも大きく感じた。後にも先にも,こ んなに「採集したい」と思った昆虫はこのチョウだけで ある。そして私の主義に反し,写真は残らず個体が標本 箱に収まっている。 ノーベル賞に輝いた青色発光ダイオードは画期的な発 見だが,「青」という神秘的な輝きがさらに賞に重みを 与えている気がしてならない。青は人間の奥底の感情を 呼び覚ます色なのではないだろうか…だから青い昆虫を 見つけると心がときめき,いっそう印象に残るような気 がする。

千葉大学大学院 准教授

野村 昌史

(のむら まさし)

エッセイ

あれも見たい!これも撮りたい!

∼私の昆虫撮影記∼

(その 5 青い昆虫たち)

図−1 ルリボシカミキリ 図−2 アオタテハモドキ

参照

関連したドキュメント

子どもが、例えば、あるものを作りたい、という願いを形成し実現しようとする。子どもは、そ

○○でございます。私どもはもともと工場協会という形で活動していたのですけれども、要

それで、最後、これはちょっと希望的観念というか、私の意見なんですけども、女性

私たちは、私たちの先人たちにより幾世代 にわたって、受け継ぎ、伝え残されてきた伝

○菊地会長 ありがとうござ います。. 私も見ましたけれども、 黒沼先生の感想ど おり、授業科目と してはより分かり

高さについてお伺いしたいのですけれども、4 ページ、5 ページ、6 ページのあたりの記 述ですが、まず 4 ページ、5

下山にはいり、ABさんの名案でロープでつ ながれた子供たちには笑ってしまいました。つ

大村 その場合に、なぜ成り立たなくなったのか ということ、つまりあの図式でいうと基本的には S1 という 場