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新しい貧困尺度の理論と実際――Sen及びTakayamaの尺度を中心に――

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新しい貧困尺度の理論と実際――Sen及びTakayama

の尺度を中心に――

著者

前田 修也

雑誌名

経済研究年誌

5

ページ

65-90

発行年

1981-11-20

URL

http://id.nii.ac.jp/1204/00024454/

(2)

新しい貧困尺度の理論と実際

-Sen及びTakayam秘の尺度を中心に−

、少二 則

目 次 I. はじぬに I1. 貧困尺度の導出 11-1"nの尺度 11-2 flhkayamaの尺度 m. 両尺産の比較吟味 1V. 残された2 ・ 3の問題 IV-1貧困尺度の準順序 IV-2抗困線の設定に関する諸問題 V、 若干の計・算結果 VI@ おわりに 1. は じめに 周知のように,不平等尺度に関する研究やそれらの応用研究')は, 19世 紀末のパレート法則の発見以来, 多くの学者達の関心を集めてきた。とり わけAtkinson[3]が種々の不平等尺度と,それら尺度の背後に存在する 社会的厚生概念との関係を明らかにして以来,不平等尺度に関する研究は 実に大きな成果をおさめている2)。 ところが,不平等尺度に関する議論と同等に,或いはそれ以上に経済学 の主要な関心事の一つであるはずの,貧困をいかに客観的に把握すべきか の議論は不思議なことに1976年のSen[23]¥1979年のTakayama 〔25〕等の提案を待つまでまさしく貧困であったといわなければならない。 それまでになされてきた有名な貧困調査には, 例えばイギリスのB S. 11 1 2 ローレンツ尺産による企業染中尺度への応用例として拙稿〔16〕を参照されたい。 例えば寺崎〔30〕には最近までの代表的研究がほとんど要約されている。 −65−

(3)

新しい貧困尺度の理論と実際 2 Rowntree*P.Townsendによるもの,それにアメリカのM.Orshansky による貧困調査など,多数存在する3)。 しかし, これら調査の主な関心は,貧困層をどのように規定するか,或 いは峨低生活謎をどのように算出するかの研究であったといえる。換言す ればそれば貧困線(Povertyline)の設定方法についての研究であり,ひと たび貧困線が与えられた後の尺度は, 単に全人口に占める貧困者の比率 (head-countratio) :H¥, どれだけの所得があれば貧困者が全員貧困で なくなるかの程度を示す「貧困ギャップ比率」(poverty-gapratio) : Iと いった程度の指標の魂が用いられてきたにすぎない。 しかしながら,後に 明らかにされるように, これら二つの尺度のうちいづれか一つを貧困の客 観的・数趾:的測定の尺産とするにはいくつかの致命的欠陥が存在する。 木柵の目的は以下のとおりである。次のII章で上記の伝統的諸尺度に 内在する欠陥を克服するために, SenとTakayamaによって,それぞれ 提案された,新しい貧困尺庇PsとPTをできるだけ簡潔に紹介する。そ してIII章では,二つの尺度を比較吟味し, 「打ち切り所得分布」 (censored incomedistribution)4)を導入したPrがいくつかの点でPsに優ってい ることを明らかにする。続くIV章では, それら新しい貧困尺度に残され 3) 英米及びわが国の喰低生活費研究は,小沼〔6〕に詳しい。 4) 「打ち切り所得分布」ば, 或る所得以上の度数を,全てその点(truncaledImmt) 上の点分布と皐永す分布である。 (厳密な定義はII章(2)節を参照されたい)。 ところで, この打ち切り所得分布のように, ある点から分布を切りとったり (trunCaled),打ち切ったりすることは,経済統計学の分野では, 左じ熟のうすい概 念であるといわなければならない。しかし,品質管理や生物.医学銃計などの分野 では,大変実用的な意味をもっている。二・三例をあげると, i)工場で製造される 砿球の平均寿命を調べたい時,稲球によっては,その寿命が数年におよぶことがあ る。そこで,時間の浪撰を防ぐために,例えば1,000時間以内で寿命に達した標本 だけを用いて,母典団の平均寿命を推測する場合, ii)モルモット等を用し、て,或る 薬品の生体への効果を調べる際に,その反応が現われるまでの時間が,極端に長い ことが経験的に知られているような場合,である。 尚,経済統計以外の分野では,母集団自体が切りとられた分布である場合と’標 本が切りとられた分布(したがって母集団ば完全な分布)である場合とでその名称 を区別し,前者をtrunCaiedと呼び, 後者を特にcensoredと呼んでいる場合があ る。また,訳贈としては「中途打ち切り分布」等があるが, 本稿では,高山〔'3〕, 〔29〕に従い, 「打ち切り所得分布」を採用し, これに統一した。 −66−

(4)

新しい貧困尺産の理蕊と実際 3 た2. 3の問題点を探り,媛後にV章で,わが国についての若干のケー ス・スタディーを行なう。高山〔29〕にも,わが国に関する同じような計 算例がある。しかし,本稿でのそれば, これまで計測されたことのない貧 困尺度による平準化係数を求めるために,高山〔29〕とは異なるデータ・ ソースを用いている。 11. 貧困尺度の導出 I章でも述べたように, 伝統的貧困尺度であるH尺度とr尺度とはそ れぞれ,二つのうちただ一つだけを貧困尺度として用いるには致命的欠陥 を有している。 というのば, もしHのみ、を用いるとIがどれぼどかが明 らかにならず,逆にIの難を用いるならHが不明となるからである。そ して, もう一つ貧困尺度の重要な要素として,貧困層内の所得のバラツキ も忘れることができない。伝統的尺度の上のような欠陥を克服するために 考察されたPs及びPTを以下導出することにしよう。 II-1 Senの尺度 今, 邦人で構成されてい為社会を考え,各榊成員の有する所得(y)を小 さい順からならべると jノ,≦y2=・ ・ ・=y尭篁y4+1=・ ・ ・j'" (1) 次に貧困線(z)が与えられていて,それが(1)式のyA+1に等しいとする。 この場合,所得が妬以下の人の集合をS(")と表わすなら, S(z)は貧困層 (thepoOr)を表わしS(y")は全櫛成員,‘人に他ならない。次に「所得 ギャップ」(incomegaP)g;を定義する。 j番目の人のgjはzからの彼の 所得の較差である。すなわち, gj==z-yj (2) ’2-ベクトルZノ1)として表わされる所得分布パターン (income confhgura-tion)を考えると, 「総所得ギャップ」 (aggregategap)9(")IJL,S(")内 ') 以下本稿では,所得分配(ベクトル)ば肉太文字で表わすことする。 −67−

(5)

新しい貧困尺度の理誌と実際 4 のすべての人為の段の規準化された(noxmalized),加重和(weightedsum) であると定義される。 9(")=4(",") Zgi"f(z,") (3) JES(#) ここで,4は定数, Uj(z,")ば非負のウエイトである。そしてこの4とUf は以下述べる四つの公理によって特定化(specify) されることになる。求 めるWnの貧困尺度Psは,全ての灘に関してQ(")を最大化したもので あると定義される。すなわち, Ps=max9(") (4) 弄 りiが非負である故に, Ps=9(z) (5) さて, Senの四つの公理とは次のようなものである。 公理Es[相対的公正(relativeequity)] ベクトルzノの下ですべてのベアf,jに関して, もし個人jの厚生水準〃# (Zノ)が個人ノの厚生水準叫(") より常に小ならそれに付すべきウエート はりj(2,")>Ijj(z,ZJ)でなければならない。 この公正に関する比較的ゆるい条件は結局次に述べる公理Rsに組染入 れられることになる。 公理Rs[厚生の序数的順序づけ(ordinalrankwelfare)] 個人‘の所得ギャップgiに付すべきウエイトリf(z,") IX,貧困者間の厚 生の順序(ordinalrank)によってきまる。つまり, "i="+1-jである。 (舟は貧困者数。) この公理の本質的発想は,選挙等の投票の際に見ることができる。すな わち,被選挙者はその得票数そのものによってランク付けされるのではな くその順位によってきまるからであjる。 この公理はまた, 相対主義者 (relativist)の立場から貧困を扱おうとしているともいえる。つまり,所得 額が大きいとか小さいとかいっても,それは比較の問題であって絶対的韮 準でばないといえる。そのようなことからするとこの公理は,かなり説得 −68−

(6)

新しし、貧困尺度の理蓋と実際 Fー 回 的であるといえる。 公理ハfs[厚生の単調性(monOtonicwelfare)] もしyf>,'/なら"j(")>"/(")である。 この公理の意味するところは,所得分布全体に関する展望があって後に, 個人の厚生が彼の所得水準によっての悪きまるというものである。つまり 所得水準が高まれば,彼の厚生水準も高まり,逆の場合は厚生が低くなる。 したがってこの公理はかなり強い前提であるといわなければならない。 と いうのも現実の貧困層の柵成員にはいわゆる身体障害者や母子世帯等の比 率が他の階層よりはるかに大きいと予想される。つまり,所得以外の要因 が彼らの厚生に影響を与える程度の大きい人々が多い。にもかかわらず彼 らの厚生を単に所得だけに依存させようとするこの公理は,現実を反映す るには比較的強い条件であるといわなければならない。 公理Ⅳs[規準化(nonnativepovertyvalue)]

貧困者が全て同一の所得を得るならPs=H・Iである。ここでH=E

”j J=Zgj/克罵である。 jE.S(ヱ) 〔定理I]貧困者の数が充分大なら公理Ms,Rs,Nsを象たす貧臨尺度は, 一義的にPS=H[1-(1-1)GIF]である。 (G"は貧困層内(within)のGmi係数)。 <証明〉貧困層での個人jの1早生水準以上の人数ば弗十1−#であるので, Tjj(z,")="+1-j (6) 吹に全ての貧困者が同一の所得y・を得たとすると go=z-yo したがって Ps=4(z,")g・・た("+1)/2 (7) 一方.公理Ⅳsより

Ps=(÷)(¥)

(8) (7)式と(8)式より −69−

(7)

新しい貧困尺度の理鵠と実際 ri(2, zJ)=2/("+1)"z 6 (9) したがって

P$-(")"a(勇一yj)("+1-j)

一方,貧困層のGini係数G暉は次のような愛形が可能である2)。

‘"-亦善',‘-』シ’

‐‘÷÷一向皇"‘(脆÷1-#)

(似は相加平均) (10) (11) (10)式と(11)式より

["+')+"'(c"-SL)]

I Ps= ("+1)"2 或いは

rs-"[1-('-I)('-c。(TfT))]

(12) (12)式の虎を充分大きくすると Ps=H[Z+(1-1)GI"] (13) このようにして導出されたPsに対してSenはこれが虎を全人口剣に, さらにZを全人口の平均所得胸に置きかえることにより"=1, 1=0と なりGini係数という不平等尺度の貧困尺度への転用となっていると述べ ている。 II-2Takayamaの尺度 TakayamaがII-1で導かれたSenの結果に加えた批判点ば次の二点で ある。 i)厳密に言えばSenの尺度(12)式は貧困者の数が無限大でないと (13)式にはならない。 ii)規準化のための公理Ⅳsが窓意性を免れていな 2) この変形は'an[22]によって意味づけされている。

(8)

-70-新しい貧困尺度の理論と実際 7 い。それ故に,PsIXGini係数の貧困尺度への転用としては不自然である。 しかしながらこのii)の批判点はPsの導出に関するかぎりPsの拠ってた つ窮乏感がPTと異なるので当を得ていない。すなわち, このrakayama によるii)の批判点は結局のところSenとTakayamaの窮乏感のとらえ 方の粗違に帰着する。 さて, Takayamaは上に述べた二つの制約から自由であ為ような新し い貧困尺度を導出するために「貧困線で切られた打ち切り所得分布」y(r)* なる概念を導入した3)。そして, その結果明らかにされたことは, i)Takayamaの尺度PTは,Psに較べてその解釈が蠣純である。 ii)情報 が少なくて済む。 iii)Gini係数の貧眼尺度への転用としては,Takayama の窮乏感に立つかぎり自然である。 これらの他にもう一つ重要な成果があ 為。それはPTの導出に用いられた打ち切り所得分布によって,種々の不 平等尺度が,貧困尺度として, 統魏かえられるようになったということで ある。 すなわち,貧悶尺度の一般化(gcneralization)が成されたということが できる。 まずj'(x)*及び以下必要となる記号を説明しておく。 y(z)*=(y,*,y2*,・・・,yh*,y#*+,,yA*+2,…,y"*)

| “’

ここでyf<2の時yj*=yj yjzzの時yj*=z このような分布の下での貧困者の平均所得紗璽)は 脾難=Zyj*/" (15) jES(yと。) 貧困線で切られた打ち切り所得分布の平均所得い)は 〃=Zyj*/"=H・""+(1-H)Z (16) iES(J、串) 貧困者の累積所得比率(‘)は 3) 以後(*)印は,特にことわりのない限り,打ち切り所得分布に関する記号とする。 −71−

(9)

新しい貧困尺度の理論と実際 8 j=H"〃

}

。”

1-j=(1-H)Z/" (定義) 貧困は貧困線で切られた打ち切り所得分布の不平等度で計測され る。 PTは定競により次のように書かれる。 PT=BZ"j("-yi*)+C feS(yn。) ここで.B,Cば規準化のための定数であり, "jは「所得不足額」い-yj*) にかか為ウエートである。そしてこれらを特定化するためにTakayama が用いた公理ばSenのMSの他に以下の三つである。 公理NT2 貧困者が一人もいない時,貧困の尺度はゼロである。 公理RT 所得不足額にかかるウエートは,社会を櫛成する全メン バーの間の厚生の順序に等しい。つまりzfノj="+1-'であ る。 公理IVT1 貧困者の所得がすべてゼロの時, 貧困の尺度は全人口に占 める貧困者の割合に等しい。つまり, もしS(yh*)に属す るyj中がゼロならPT=H・ 〔定理1I] 公理Ms,Rr,ZVT1, IVr2を満す貧困の尺度は一義的に決まり, 貧困線で切られた打ち切り所得分布のGini係数になる。 <証明〉公理ⅣT2より C=0 (19) (19)式を(18)式に代入して PT=BZ"("-yi*) jES(ym*) =BZ"(2-yj*)+F (20) fES(』畦・) ここで F=Bい−z) Z "j (21) jES(J',a*) 公理Nrlより貧困者の所得がすべてゼロの時洪=z('1−肉)/脇でまた,

zj.yj*=z'.j,j*=""("f"+')

(22) fe(y凡.) ゴー々十1 2 −72−

(10)

新しい貧困尺度の理論と実際 9 (20)式と(22)式より, /“(舟+1)

+雪 ‘シ’*|

i巴S(y、申)

Pr=RI-

=B";"/2 (23) 2 また公理IVT,よりこのような時, PT=吋泌 (23)式と(24)式より B=2/("2) (25)式を(2O)式に代入して (24) (25)

F-(!一夫)('--f-)

(26) また, (26)式を(20)式の上式に代入して

PT=1+÷-:。g(''+1-')

.・. Pr=GP (27) yj*

111.

両尺度の比較吟味

両尺度の相違を明らかにするために, その公理体系を比較して象ること にしよう。まずSenのMsであるが, これはそのままTakayamaでも用 いられている。異るのばRである。Senでば所得ギャップに付されている ウエートがた+1-Zになっているの対して,Takayamaのそれは,"+1-4 となっていあ。それともう一つ,SenのIVsが一個なのに対して,Takayama のそれがNT1とⅣT2の二個になっている点である。 TakayamalXPsがGini係数の貧困尺度への自然な転用になっていな いことを示すために, Gini係数の背後に前提されている公理体系を明ら かにした。つまり,各人の所得と平均所得("o)との差,すなわち「所得 差」 (incomegap)をgjと書くと, 冗 gj=/40-yj, "0=Zj'j/" j=1 (29) −73−

(11)

新しい貧困尺度の理論と実際 10 このとき不平等度(M)を次のように定義する。 ルf=D・ 這"j・gj+E (30) jES(y凡) D,Eは規鵡化のための定数で,職はウエートである。この式をGini係数 とするためには,次のような前提が必要である。すなわち, 公理RG 所得差giにかかるウエートは社会を織成する全メンバー の間の経済的厚生の順序に等しし、。すなわちj Wj==〃十1-jである。 公理IVG1 すべての構成員の所得が同一であれば所得分布の不平等度 (M)は0である。 の二つが必要である。しかしながら,公理NG1で(30)式の定数Eは0に なるが, これ一つでばりを特定化することはできない。そこでDを特定 化するためにはも一つの公理が必要となる。そこで暇を[0,1]の範囲に おさめるために,次の公理が瞳かれる。 公理Ⅳ“ 社会の全所得を一人が独占的に嫁得して,他のすべての者 の所得がゼロである場合,所得分布の不平等度は1−1/” である。 公理Ⅳ“によって(30)式の右辺はD・"o"("-1)/2となりこれが(1-1/")に等しいから, D=2/(J"0"2) これを(30)式に代入して

‘;‘・ゞ誌》 ("+1-j)("0-弧』

M=

='+÷-"0"2 ie"")

2.

国 ("+1-j) ・yj

(32) すなわちM=Gとなる。 ここでGini係数の公理体系とPTの公理体系との対応関係をみ、ると, まず所得差にかかるウエートの公理RTと,所得不足額にかかるウエート の公理RGとが対応する。またPTの公理体系がすべて打ち切り所得分布 −74−

(12)

新しい貧困尺度の理論と実際 11 y*を対象にしていることを考慮に入れるなら, IVT,にばⅣG1がIVi,2には ZVG2がそれぞれ対応することが容易に理解されるだろう。 このようにし て, PTがPsに比してGini係数の貧困尺度へのより自然な転用となって いることが明らかとなった。 また,PTでばん→COという操作をすること なく,貧困尺震が作られ, よりスッキリした形になっている。 もう一つ,PTがPsに優れている点は,PTがRTにおいてウエートを 玲十1−‘ではなく邦+1-jを用いたことにより,相対主義の立場をより完 全な形で表現できたことである。つまり貧困を社会全体との関連でとらえ ることができるようになった')。次に,PTとPsを比較するためにPTを Psの(13)式のような形に変形して馨る。つまり,貧困尺度に欠かせない 三つの要素H,0,Gmに分解してみることにする。

Gini係数は,グループ間Gini係数G6と,グループ内Gm係数G"ノと

に分解可能であることが知られている2)。すなわち, G=G6+Z]Wノ・G"

ここでi"ノはウエートで, グループjの所得シェアに人口シェアを乗じた

ものである。同様に,

Gj=GD*+W・G"

G5*は打ち切り所得分布に満ける貧困者と貧困でない者との間のGim係 数,Gmは貧困層内部のGini係数,"はウエートである。 これらはそれ ぞれ次のように表わされる。 G5*=H-j

l

“,

w=H・j であるから GP=H-f+H・j・Gw" (34) ところで(17)式より 1) Psは貧困閣内の順位だけをウエートとしているので, CaISOreddiStributiOnで はなくてむしろ, 「切りとられた分布」 (trurrateddistribution) を対象にしている といえる。 2) Rao[20]を参照のこと。 −75−

(13)

新しい貧困尺度の理識と実際 12 (1-4)Q=1−牌〃 (35) すなわち, (34)式のGfは

Pr=Gp=H[(1-')Q+"m]

(36)

と雷ける3)。 これを('3)式のPsと比較して象よう。するとPs/Hのウエートが, 1と

(1-1)でその和が一般に’にならないのに対して, Pr/"は(1-#)と‘

になっているので,G画と@の加重平均となっており,解釈が容易である。 以上みてきたように,PTはPsをrefineした形になっていて, いくつ かの点でPsに優っているとL、わなければならない4)。ところが, (2)節で も述べたようにPrにはもう一つ大きな成果がある。すなわちそれは.打 切り所得分布を用いることによって, 様点な不平等尺度を貧困の尺度とし て転用することができるようになったということである。例えば,期待効 用型の尺度を用いるとすると,所得分布yの功利主義的貧困尺度Pとし て,

P(y)=-:堂測(y*)

(37) "Ei このff(y*)を次のように特定化する。

-耀帆-l'-("L:/('-:'l :>0. :‐‘

‐−1.霞(接)

‘-]

“}

この脚を次のようにすることによって,貧鴎についてのアトキンソン尺度 (4P)が得られる5)o 3) このような分解をすることによって伝統的尺度と貧困閣内のバラツキが一つの式 に包含されていることが明らかとなる。 4) とはいうものの,初めてGini係数の背後に存在する公理体系を明らかにしたan のオリジナリティーは評価に価する。 5) このパラメータどは,社会的厚生が不平等度と平均所得水遡との積であらわされ る場合の個人の所得の社会的代替の不変弾性値をあらわす。 どが0に近づくと,高 所得者から低所得者への所得移転はそれが, いかに大きい所得格差をもつ人,々の間 −76−

(14)

新しい貧困尺度の理論と実際 13 4P=1-[1-(1-ど)P(y)]'/'-f =1-exp[-P(y)] 次に, "(>'j*)を次のように特定化する, ど>0, E牛1

ど=1 (39)

(IF)'・g(f)

-"(y*)= (40) これによって貧困についてのタイル尺度(TP)が得られる6)。 TP=P (41) また,

‐"㈹-(筈)°−1

(42) とすることによって,貧困尺度としての変動係数(CP)の二乗が得られる。 CP=P1/2 (43) 鰻後にGini係数と密接な関係にあるローレンッ図で, Senの貧困尺度 Psを図解してみることにする。Sen[23]にも同様の図解があるが, 直観 的ではないので,式と図をそれぞれ吹のように変形すると,容易に理解さ れるだろう7)。 Ps=H[I+(1-1)Gtp]

[附璽(:-"/2+"'y'-yj'/4]

i j 2 (44) = "職 の移転であっても, その社会厚生的効果はoに近づく。すなわち, どの値を0から しだいに埴大させてゆくということは,社会的厚生評価における低所得者に対する 比璽を徐点に高めていくということを意味する。 [1],[3],[4],[22],[28],[30]を参 照のこと。 6) この尺産は, タイル(H.Theil)が梢細里證において用L、られるエントロピー概 念iこもとづいて提案したものである。 7) Prも当然ローレソツ図による図解力3可能であるが,本稿では割愛した。 −77−

(15)

新しい貧困尺度の理識と実際 14 −−−−−ー一一一一 −−−−−ー一一一一− Z Z Z Z 111 Z(z一)'j) 涙(z一〕'j) - 、Z]y 一 、Zy

0,kit INIリー〆尹贈

睡勿

厩罰

☆Z(ご一y!)/2 1凸l 図I 画一レソ図による貧困尺度Ps 上 上 ZZJI)' -y,│/4 1 .F IV.残された2.3の問題 本章でば,前章で取り上げられはしなかったが, 貧困尺度をとりまく話 題としては最も重要であると思われるもののうち二つを扱う。一つばII章 で導出された二つの尺度によって得られる貧困度は「完全順序」 (complete ordering)をもたらすものではなく,いわゆる「準順序」(quasiordering) といわれる順序づけであることである')。そしてもう一つは, 実際に貧困 1) 完全順序づけは,反射性,完鯛性,推移性を満す準願序づけをし、うが,準顕序づ けはその中で,反射性と推移性だけを満たすものをいう。 −78−

(16)

新しい貧困尺度の理論と実際 15 度を測定する際におそらく妓も重要な情報であろう, 貧困線の設定をめぐ る問題である。 IV−1貧困尺度の準順序 Sen[22],Dasgupta-Sen-Starrett [11],Rothchnd-Stiglitz[21]が述 べているように, 不平等測定の際のローレンツ優越による順序づけは準順 序をもたらす2)。すなわち, 任意の所得分布ベクトルについて定義される 社会的厚生関数が対称(symmetric)3)で,準凹(quasi-concave)4)な増加 関数であるならば, どのような社会的厚生関数もローレンツ鯉越と等しい 順序づけが可能なのである。 したがって, もし任意の二つのローレンツ曲 線が互いに交わるような場合には, 上の二つの条件を満たす釉為の尺度に よって異なる順序づけがなされる可能性がある。 前章でも述べたように,打ち切り所得分布を各不平等尺度に適用するこ とによって我々は, 数多くの貧困尺度を得ることに成功した。そこで, こ の不平等尺度としてのローレンッ尺度の準順序という性格を, 貧困線に よって切られた打ち切り所得分布に適用してみることにする。 いま,所得ベクトルHのもとで,社会的厚生関数F(y,, ・ ・ ・,y")を対称 で,強い意味の準凹な増加関数であるとしよう。 このとき貧困線が与えら れているとすれば,貧困の準順序RQは,次のように定義される。 (定義) もし, あらゆるFに関して, F("*)二F("*)であるならば, 2) ",i, ghJBという任意の所得分配データの対にたL、して, それぞれのローレンツ曲線 を同一の平面上に描き, 罪』のローレンツ曲線がXHのローレンツ曲線を決して下廻 ることがないなら, xB話L泥』と書き「分配弾Bは分配エ』にローレンツ優越され る」あるいは「分配Xf1は分配xBにローレンツ優越する」という。なおj ghFBJSL 弾』でかつ難』急LXBでないときxB-くL工』と書き」 「分配死4は分配弾Bに強くロ ーレンツ優越する」という。 3) 対称性とは, 八郷(熊1, ・ ・ ・,矛蝿)の全要素を並べかえたものを入"(キオ‘,…,好”)とす ると, 入"(罪1,…,淳耀)=入"(好'1,…,奉憾)なることをいう。 4) 厚生関数Fが準凹であるためには,分配正』と工Bのそれぞれに対応する厚生水 鵡のうち小さい値が,二つの分布の加重平均に対応する社会的厚生水準よりも小で あるか, または等しいことが必要である。すなわち,任意のj(0<z<1)に対して, Min[F(x』) ,F("E)]=F("A+(1-#)xB)をいう。強い意味での準凹というとき には等号を取りさる。 −79−

(17)

新しい貧困尺度の理輪と実際 16

zノ*RQnf*である。

この二項関係〃*RQJr*は, Zノ*が罪*にローレンツ優越しているか,或いは 難*とzノ*が等しい分布であるかを示している。そしてRQはSen(22]に よって反射性(reaexivity) と推移性(transitivity)を満たすことが明ら かにされている。 B B (B) 』 E A O E 図II ローレソツ図による,打ち切り所得分布のローレンツ優越 0 A 次に,打ち切り所得分布による二つのローレンツ曲線が交叉するような 場合でも,その交点がzの前にある場合と後にある場合とで, ローレンツ 優越がいえたり,いえなかったりすることを図で示す。すなわち図1Iの (A)で,打ち切り所得分布によるローレンツ優越を示すとすれば, それは b曲線のようなa曲線の内部の曲線を意味する。そして,貧困線上の点, すなわち, JE以上の点で曲線が交叉するようなこと力:あっても, それは 貧困の順序づけには影響を与えないことになる。一方, (B)図のように貧 困線以下で曲線が交叉する場合には. ローレンツ優越はいえないことにな る。 IV-2貧困線の設定に関する諸問題 これまで我々は, 貧困度を測定する際に貧困線ば所与のものであると仮 定してきた。 しかしながら,貧困線の決定は,貧困度の測定上,最も重要 −80−

(18)

新しい貧困尺度の理論と実際 17 な要素であるといわなければならない。したがってこの節ではもっぱらこ の貧悶線の決定にかかわる話題を, とりあげることにする。 Takayamaは,貧困線を「貧困のランクづけに関するかぎり,人為が それ以上の所得では所得の褒動についての人々の判断を保留するような所 得水準である5)」と定義している。そして,貧困の意識は少なくても先進 国にあっては究極において相対的窮乏感(relativedeprivation)に支配さ れているだろうという見解に立っている。 ところで,過去の貧困研究にあってば,適切な貧困線の設定には,二つ の大きな方向があったように思われる。すなわち,絶対的尺度への方向と, 相対的尺度への方向である。以下これらを,順を為って考察して難ること にする。 絶対的尺度とは, 身体と精神を維持するのに必要な,客観的なある目標 となる基本的生活水準以下の生活水準を, 栄養学等の生活科学上の知識に 基づいて,合理的に算定し, これを物価に換算しそれらをすべて積魏重ね て算出する方法である。理論生計費方式とも呼ばれ, マーケット ・バス ケット方式が最も代表的な算定方法である。マーケット ・バスケット方式 は, ある一定の生活水準を営むのに必要な財やサービスをバスケットに取 り入れ物量として示したもので, この用語は1923年英国の労働党が, こ の方式を用いてから唱えられたと言われている。 ところで, この方法にはやはり,大きな問題点があるように思われる。 それば第一に, 「目標とする一定の生活水準」であって, 食費については, 生理的な必要通から理論的に目標とする量および金額を算出することがで きるが,食料品以外の品目については, 目標を決定する根拠を見出すこと ができないことである。衣生活・住生活その他の生活面には.文化的・社 会的背景によって左右されるところが大きく,単に生理的必要の悪でこれ を決定しては実生活にそぐわない。 第二の問題点は,科学によって定められた茎準の内容が,現実の生活か 5) Takayama[27]より引用。 −81−

(19)

新しい貧困尺度の理論と実際 18 ら遊離した実行不可能なものであっては, 自然科学の成果が無に等しいと いうことである。 第三の問題点は,積算された基準額における各費目間の比率の問題であ 患。つまり. この算定方式ば, 各費目ごとについてば合理的であるとして も,それぞれの費目はバラバラに計算され, それを合算したものであるか ら, この方式によって算定された各費目額の比率が,現実の比率と合致し ないおそれがある。 次の相対的尺度は, また実態生計費方式ともよばれ,一定の生活水準を 提示しようとする場合に,世帯を単位とした収入と支出という実態資料に 基づき,職業・世帯人員数・年齢といった一定の条件下にある世帯の家計 内容を分析し,他方生活水準を理念的に定め, この理念的に定められた生 活水準に合致した家計内容を家計調査結果の中から見出し, これを家計費 の形で提示する方法である。現実の家計現象そのものから,社会的に定め られる一定の生活水準を裁定する方法である故に,実態生活費方式という。 第V章で用いる生活保護基準はこの実態生活費方式である。 また,理論生計費と実態生計費の折衷ともいうべきものに,エンケル方 式がある。この方式は, 一定の生活水準の算定においてまず食料費を栄養 学の成果をもとにして算出する。 これは栄養学の必要な食料摂取量に基づ いて積算しているので, ここまでは理論生計費方式といえる。次にこれを, 実態調査の結果から見出されたエンケル係数で除して生活費総額を算出す るのである。 さて,本稿では孜章で, 過去に政策当局が貧困層に対して行なってきた 再分配政策を概観するために, 貧困尺麗による再分配効果の平準化係数を 算出するが, その際に用いた貧困線は, 高山〔29〕が用いたものと同じ厚 生省の生活保護法による保謹基準額を用いた。というのは,Takayamaが 述べているように,少なくても先進国にあっては, 貧困感は相対的なもの であろうという認識と,その相対的窮乏感に相異はあるものの, Sen及び Takayamaの貧困尺度の背後にある公理にこのような相対主義の考え方 −82−

(20)

新しし、貧困尺度の理論と実際 が反映しているからである。 ユ9 V. 若干の計算結果 税制にどの程度の所得再分配機能があるかを調べるために, よく用いら れている方法として,課税前後の不平等度を比較してその相対的な愛化の 割合を算出する方法がある。 これは通常,平蹴化係数1) と呼ばれるが,い ま所得分配の不平等度を測定する尺度としてGini係数を使用するとする と,課税前および課税後のGini係数をおのおのG6,G"とすれば平準化係 数‘は, G6-G" j= G6 で求ぬられる。この‘が大きいほど,税制の再分配効果が高まったことに なる。したがって,ある期間にわたってこの‘を算定し,その疫化の状況 を調べることによって所得再分配政策の効果を観察することができる。 本章では, この‘を再分配前後の貧困尺度Psに適照することによって, 政策当局の貧隈層に対する所得再分配効果を観察して象る。 ところで, これまでPs¥PTを用いた計算例は,Anand[2]によるマ レイシアについての例と, Takayama-Hamada[27]による日本のケー ス.スタディーがあるの糸である。しかもAnandのそれは, 1970年だけ のものであり,Takayama=Hamadaのそれば, そのデータ・ソースを 「被保護者全国一斉調査」もとめていて, この特殊な調査からば,再分配 前後の分布統計は得られない。実際, わが国の分布統計は先進国のそれに くらべて,その整備はかなり立ち遅れているという指適があるが2)特に低 所得層のそれは,得られたとしてもラフなものになっている。Takayama= Hamadaが「被保護者全国一斉調査」を用いたのは,おそらくこの低所 得者層のキメのこまかい分布統計の必要からであると推測される。 しかし 1) 再分配率という用語を用L、たり〔24〕,単に変化率といったり〔8〕〔9〕もする。 2) 石崎〔14〕参照。 −83−

(21)

新しい貧困尺度の理論と実際 20 ながら,低所得層の分布統計として被保護者の分布のみによることには, やはり問題があるのではなかろうか。つまり,それは被保護世帯のなかに は, 身体障害者世帯・母子世帯・老人世帯等の世帯が多く含まれていると 予想され,その結果分布に大きな偏りが予想されること。また, この章で 求めようとしている平準化係数等の重要な情報が得られないこと等が考え られるからである。 そこで,本稿でば,多少の粗さを覚悟のうえで, 分布統計を厚生省の 「所得再分配調査報告」に求めた。 この「所得再分配調査報告」は昭和37 年以来3),昭和42,47,50,53年と,現在まで5回調査,報告されていて, 社会保障制度及び,租税による所得再分配の実態を所得階層別に明らかに し,社会保障制度による所得再分配効果の現状を把握することを目的とし ている。したがって,平準化係数を求めるにば適しているが, 貧困線が与 えられた時,低所得層の階眉分けが, いかにも粗く,三∼六階級にとど まっている。それで, ここでは,低所得層のGini係数を求める際には,実 際にローレンツ図を描き,不足する部分を補間的に求めることにした4)。 次に貧困線の設定をめ<・る問題であるが, これは前章でも述べたように Ps,PTが相対的貧困を前提にしている故に, その概念に最も近く入手可 能なデータはTakayama-Hamadaのケース.スタディーでも用いられ ている厚生省生活保謹法による「生活保護基準」を用いた。そして所得再 分配調査が年額で書かれているので,基準額を12倍して貧困線とした。 生活保謹法の保護基準は, 1945年11月の「生活困窮者緊急生活援護対 策要綱」から出発し,第一∼第七次までは民生委員の主観的判断に委ねら れていたが,第八次(1948年8月から第十六次(1980年)までは理論生計 費方式(マーケット ・バスケット方式)が採用された。 しかし,上述の理 論生計費方式に内在する欠陥ば,やがて解決されねばならなくなり,第十 七次(1961年4月)からはエンケル方式による算定が, そして1965年以 昭和37年の鋲「社会保障水準基礎調査』というタイトルである。 フリー'、ソドで補間し,求積器(planimeter)で面積をもとめた。 −84− 1 日 J 1 J 3 4

(22)

新しい貧困尺度の理論と実際 表I貧困線の例 21

* ゞ│墓蝋額'円’

雛││『”│遮軸

対前年 増加率 (円) 1960 ,61 ,62 ’63 ’64 ,65 ,66 '67 ’68 ,69 8,914 10,344 12,213 14,289 16,147 18,084 20,662 23,451 26,500 29,945 n U 1 土 、 凸 q J 川 強 E J 侭 U ワ ー Q U 庁 r J 庁 f J ワ ﹄ 岸 J J 庁 J j 門 J r R f l 句 ″ ﹄ 旬 J j n u ︺ j 夕 J j J か 3 7 ﹁1土 34, 137 38,916 44,364 50,575 60,690 74,952 84,321 95,114 105,577 14.0 14.0 14.0 14.0 20.0 23.5 12.5 12.8 11-0 16.0 18.0 17.0 13.0 12.0 13.5 13.5 13.0 14.0 | ’ 資料厚生省「被保護者全国一斉調査」より作成 後は,保護基準を一般勤労者世帯などの生活の向上に対応させて,その格 差を縮少させるという配慮を加えて(非公式ではあるが,一般勤労者世帯 の平均支出総額の約六割)算定されている。 標準世帯(35才男, 30才女, 9才男, 4才女,一級地)の基準額の年次 推移は表Iのようになっている。われわれの分析結果は以下のように要約 される。 ①表11と表111を対比して観察すると,比較年次は参少異なるが,表 表II Ps,PTの計算例 (日本と-マレーシアの例)

年次│H(%) │ II%) │Fi%!

Gw l P, │Gb*/G,i%) │ P.

1960 ’67 ’71 ’75 8 8 3 5 8 0 2 5 1 孔 乳 ス ー 55.4 68.8 73.7 73.7 1.32 1.19 0.80 1.24 0.311 0,524 0.535 0-789 0.0642 0.0484 0.0530 0.0551 96.8 98.2 98.8 98.3 0.082 0.060 0.064 0.071 ’

'970蝶│ 』0 2 1 Ⅱ4 5 1 3 ヨ | , 213 1

−’

’ ",

Notest l970*はAnaITJによるマレイシアの例 Gb*=H(1−中)I,分布y*iこおける貧困世帯と非貧困世帯間の Glni係数 F:貧困解消に要する讃用の非貧困者の稼得してい為所得への 比率 出所: 高山憩之署『不平等の経済分析」東洋経済新報社〔29〕より −85−

(23)

新しい貧困尺度の理論と実際 表、厚生省「所得再分配調査報告」を用いた計算例 22

(罰│感│織鹿, │", │"│"│ "" │ '愚』灘識

年次

12.9

13.1 12.7 17.9 15.0 12.2 11.2 11.8 17.5 13.0 8 7 7 5 3 由q■。■ 7 1 9 3 1 5 4 3 4 4 56.4 33,9 qワウ 坪曹由曹 38_0 34.5 1962 ’67 ,72 J月P J・ ’78 15 28 53 90 127 0,38 0.31 0.29 0,37 0.27 0.25 0.20

暗’

0.21 I

0.096 0・078 0.073 0.115 0.086 0.080 0.053 0.053 0・093 0.063 7 1 5 1 7 4?■■由 6 2 7 9 6 1 3 2 1 2

~

Notesエ添字BjA朧それぞれ再分配前後を示す。 :再分配所得=当初所得一(租税十社会保障拠出保険料(税))+社会保障給付 :社会保障給付朧, 各制度による給付金品についてば調査日前,年間の状況が 調査された。 また医療の現物給付については各年,力月間の受療状況を調査 し’ これにもとづき給付額が推計されている。 資料:浮生省「所得再分配調査報告」 111の1978年を別とすれば,両者の比較年次はほぼ一致している。そこで, 貧困世帯の全世帯に対する比率,すなわち, head-countratio,Hを比較 すると,表111の1962年は, 12.2%と表I1の1960年の11.88%にほぼ 近い値を示しているが,それ以後は表I1に較べて4∼10ポイント大きい。 ②次に,貧困ギャップZの値を観てみると,表11の値が, 55.4%か ら73.3%へと急激に増加しているのに対して,表111では1962年の56.4 %を別とすればぼとんど30%台である。しかし, この数値の相違ばデー タの性質上当然の結果ではないだろうか。すなわち表1Iのそれば貧困層 を被保護世帯で代表させているからである。そして,被保護世帯の構成を み、てみると, 1975年でば,身障者・錫病者が被保護世帯の約半分を占め, 高齢者と母子世帯をあわせると三割を越している5)。したがって被保護世 帯中「働いている者がいない世帯」の比率は1975年には約80%であり, その結果, この表I1のrの値が過大評価されていると思われる。 ③したがって表11のG"の値も当然相当に大きく, 0.31から0.79ま で急激に上昇している。 これも上に述べた「働いている者がいなL,世帯」 の被保護世帯に占める割合が急上昇している結果であろう。 5) 高山〔29〕参照。 −86−

(24)

新しい貧困尺度の理論と実際 23 ④表111の貧困指数Ps"1962年の高い数値からはじまり1975年に もう一度かなり高い数値を示している。この1975年のPs値の急激な上昇 は,表Iの'74, '75年がそれぞれ20.0%,23.5%と他の年より高い伸び率 を示していることからも明らかなように, 保護基準の大幅な引き上げが反 映しているように思われる。すなわち,昭和48年秋の石油危機以後の消 費者物価の高騰は,特に低所得世帯, 中でも被保護世帯の生活に大きな影 響を与え, 48年, 49年にばそれぞれ数度にわたる保護基準の改定がなされ ている6)。 L,ずれにせよ, この時期の経済状態が貧困指数に与えた影響を 考察することは今後の研究にとって重要な課題であると思われる。 ⑤最後に平準化係数を詮てみよう。数値は1962年の16.7%を最低と して'67年に急激に上昇し,以後は振幅が大きいが, 20%前後で推移して いる。これを全世帯における平準化係数と比較して象よう。すると,昭和 37年からそれぞれ11.8%,12,6%, 11.4%,6.5%,5,7%となっていて7), 貧困者に対する所得再分配効果は, 全世帯におけるそれよりも大きかった といえよう。そして, このような所得再分配効果をもたらした, より具体 的な政策については,経済学的な考察を待たなければならない。 6) 昭和48年産以後の生活保護基準の改定状況を次表に掲げておく.

‐___│基馳額対前年度当初改定率

∼ 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 4 0 2 3 4 6 0 2 4 9 4 9 1 1 1 1 年 年 年 年 8 9 0 1 4 4 5 5 14% 19% (特別一時金) ( 〃 ) 20% 26% (米価改定) 29.1% (特別一時金) 23.5% (米価改定) 25.3% 12.5% (米価改定) 13.4% 50,575円 52,796 8,000 8,000 60,690 63,725 65,295 10,600 74,952 76,042 84,321 84,961 出所 「浮生の指標」厚生 統計協会, 1976年, 第23巻・14号 7) それぞれ「所得再分配鯛査」より作成。 −87−

(25)

新しい貧困尺度の理識と実際 24 V1. おわ り に 本章では本稿の全般にわたる考察の結果判明したことがらを述べ, 貧困 測定研究の今後に残された問題点に関して若干のコメントをつけ加えた い。 まずIII章でばSen,Takayama両氏により提案された新しL,尺度を比 較吟味した。その結果Gini係数の公理体系を明らかにし,伝統的尺度に 内在する欠陥を克服する新しい尺度をilj出したというSenのオリジナリ ティーは評価に価するものの, 貧困線で切られた打ち切り所得分布を導入 することにより,PTがPsにいくつかの点で催っていることが判明した。 すなわちPTはPsに較べて, i)情報趾が少なくてすむ, ii)Psと異なる公 理体系を前提することにより,Gini係数の貧困尺度へのより自然な転用が 可能となった, iii)打ち切り所得分布を導入することにより, 豊富な不平 等尺度が貧困尺度として用いられるようになった,の三点であった。 また III章の終りでは,Psのより容易に理解できる図解例を示した。 次にV章では,高山〔29〕とは異なる資料を用いた若干の計算結果を示 した。その結果, i)高山[29]のように,被保護老の象を貧困層として代 表させることには問題があるのではないだろうか。 ii) 『所得再分配調査報 告』を用いた結果, Pの分解された尺度",1,Gのうち特にG,Iが高山 〔29〕の結果と大きく異なり相対的に後進国のそれ[Anand]に近づいた。 iii)Psそのものには大きな運いばみられなかった。 iv)平準化係数は,その 振幅が大きいにもかかわらず全世帯のそれよりも常に相当大きく, 貧困層 に対する再分配効果が大きいことが判明した。 最後に,貧困測定に残された今後の課題を整理すると次のようになる。 i)貧困線の設定や,分布統計の入手可能性等の困難雑あるものの,新しい 貧困尺度を用いての国際比較は大いに意味のある結果が期待される。 誼)『所得再分配調査報告』を用いることによって, 各穐の社会保障給付別 の貧困尺度の再分配効果が計測可能となる。通)打ち切り所得分布による −88−

(26)

新しい貧困尺度の理論と実際 25 他の不平等尺度を用いることで, より広汎な実証研究が可能となるであろ う。例えば,貧困線以下でローレンツ曲線が交叉するような場合には,貧 困尺度としてのアトキンソン尺度を利用することも可能であろう。 参考文献 [1] 〔2〕 青木昌彦(1979) 「分配理論」筑摩罫房

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(27)

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