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ドイツにおける地方公営企業の構造

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はじめに

 本稿は、ドイツの地方公営企業の構造を主に上下水道事業を事例 として概観することを目的とする。ドイツでは古くから生活に不可 欠な公共サービスを「生存配慮(Daseinsvorsorge)」のサービスと みなし、これらを地方公営企業によって市町村が供給してきた。も っともドイツの市町村は地方公営企業の経営形態として株式会社や 有限会社といった私法形態も選択できるために、1960年代から70年 代頃から、大都市を中心にそうした私法形態を選択する例が多くみ られるようになっていた(宇野2004)。さらに1990年代に入ると、 民間企業からの出資を受入れて、公私混合企業(第三セクター)と して地方公営企業を経営する例などパブリック・プライベート・パ ートナーシップを採用することも多くなった。しかし2000年代後半 に入る頃から民間企業からその出資分を買戻すなどして再び市町村 の手に取り戻そうという再公営化の動きが見られるようになって いった(Lenk et.al 2012; 人見2013; 宇野2017a; 2017b; 2017c; 2016a; 2016b; 2015)。しかも再公営化には単なる揺り戻しではないとい う見方もある(宇野2016a)。電力・ガスなどの分野ではグローバ

ドイツにおける地方公営企業の構造

宇 野 二 朗

はじめに 1 経営形態の概観 2 公営企業の事例 3 株式会社の事例 4 複合経営の実際 まとめ

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ル化や自由化が一方で進む経営環境の中でいまドイツの地方公営企 業はどのような経営形態を選択しているのだろうか。  こうしたドイツの地方公営企業の動きを明らかにすることは、パ ブリック・プライベート・パートナーシップに向けた動きが盛んとな っている日本の地方公営企業にとっても示唆に富むものであろう。  この調査研究では、主にドイツ連邦政府や各州政府の統計、各業 界団体による統計、法令、行政文書、各企業のWebページや営業 報告書、新聞、等の諸文献からドイツの地方公営企業に関する全体 像を掴むと同時に、以下の個別企業・行政機関、及び業界団体に対 して聴き取り調査を行い、それらを補完した(1)

1 経営形態の概観

1-1 経営形態の種類  ドイツの自治体はその事業に相応しい経営形態を自ら選択する。 それゆえ経営形態の選択それ自体が戦略的な意思決定と言える。ど のような経営形態が選択可能であるかは各州の地方自治法制に明 らかとなっている。私法上の経営形態は通常の民間企業と同様の 会社法制(株式法や有限会社法)に基づくものであり、また公法上 の経営形態は地方自治法制の規定に基づくものである(Cronauge/ Westermann 2006)。  他方、民営化の限界については、その事業が市町村に義務付けら れたものであるかどうかによる。上下水道事業についてはその実施 が市町村に義務づけられていることがほとんどであるため、コンセ ッション契約を含む民営化が行われることは少なく、民間企業が参 画する場合にも公私混合会社(第三セクター)方式や運営委託契約 (1)2015 年 11 月から 2016 年2月にかけて、地方公営企業連盟、ブランブルク省内 務省、バイエルン州内務省、ニーダーザクセン州内務省、ハノーファー市シュタッ トベルケ、ハノーファー市下水道事業、ミュンヘン市下水道事業、ハノーファー 市財務局、ベルリン市財務省、同経済・技術・研究省、同都市開発・環境省を訪 問し、調査した。

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によるものが多い。  さてドイツの市町村の上下水道事業でみられる経営形態は公法上 のものと、私法上のものに大別される。  公法上の経営形態の主なものには以下のものがある。 ・官庁企業(Regiebetrieb) ・公営企業(Eigenbetrieb)

・営造物法人(Anstalt des öffentlichen Rechts) ・目的組合(Zweckverband)  「官庁企業」が行政組織そのものであるのに対して、「公営企 業」は経済的には自立した経営形態である。「営造物法人」は1990 年代に入ってから各州で導入された経営形態であり(武田2003: 104-105)、独自の法人格を持つなど自立した経営形態となってい る。「目的組合」は複数の市町村が協力する際の公法上の経営形態 である。  これに対して私法上の経営形態には株式会社(AG)と有限会社 (GmbH)の外に有限合資会社(GmbH Co&KG)などが見られる。 さらに所有構造を基準として以下のように区別され得る。 ・市町村企業(Eigengesellschaft AG/GmbH) ・公共企業(öffentliche Gesellchaft AG/GmbH)

・公私混合会社(gemischt-öffentlich-privatrechtliche Ge-sellschaft AG/GmbH)

・その他の私法会社(sonstige privatrehtliche Gesellschaft)  「市町村企業」は、市町村が100%の持分を所有する場合であ り、「公共企業」は複数の市町村が合計で100%の持分を所有する 場合である。これに対して「公私混合会社」(第三セクター)はそ の一部を民間企業が所有する場合であり、さらに市町村の影響力確

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保の程度を基準に市町村が過半数を所有する場合、市町村が50%以 下しか持たないが25.1%以上を所有する場合、市町村が25%以下し か所有しない場合に区別し得る。 1-2 経営形態の比較  ニーダーザクセン州の法令に基づきながら単独の市町村で用いら れる「公営企業」、「営造物法人」、「私法形態」の各経営形態の 違いを見てみよう。  第1に法人格の違いである。公営企業は独自の法人格を持たない が、営造物法人と私法形態は独自の法人格を持つ。  第2に経営組織の違いである。公営企業では経営理事(Betrieb-sleitung)が経営を担当し、経営委員会(Betriebsausschuss)が それを監督する。最終的な意思決定権限は市長と議員とからなる 評議会(Vertretung)に残されている。これに対して営造物法人 の場合には経営を担当するために取締役(Vorstand)が置かれる とともに、その監督と重要事項(取締役の選任、定款の発布、料 金の決定、子会社への出資、決算の認定)の決定のために、原則 として市長を議長とする管理評議会(Verwaltungsrat)が置かれ る。私法形態の場合には経営を担当するのは取締役(Vorstand又 はGeschäftsführung)であり、監査役会(Aufsichtsrat)がそれを 監視する。最終決定権は社員総会(Gesellschaftversammlung)又 は株主総会(Aktionärsversammlung)が持つ。  第3に料金の性格の違いである。公営企業と営造物法人の場合に は、州の市町村公租公課法(Kommunalabgabengesetz)に基づく 料金(Gebühren)とするか、私法上の対価(Preis)とするかを選 択できる。前者の場合にはその市町村による監督と行政裁判所によ る審理に服し、後者の場合にはカルテル庁による監視と私法裁判所 による審理に服することとなる(2)。これに対して私法形態である

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場合には私法上の対価となる(宇野2016a:9)。  第4に民間企業による出資の可能性の違いである。公営企業と営 造物法人では民間企業が出資をすることはできないが、私法形態の 場合には可能となる(宇野2016a:9)。  第5に市町村間の連携の可能性の違いである。公営企業の場合に は他の市町村の公営企業との協働はできない。ただしこの場合には 目的組合の仕組みが活用できるためそもそも問題とはならない。 営造物法人の場合には複数の市町村で共同営造物法人を設立する ことが可能である。これは私法形態の場合でも同様である(宇野 2016a:9)。  以下に公営企業形態と株式会社形態について詳細に見てみよう。

2 公営企業形態の事例

2-1 ハノーファー市下水道事業の経営形態 (1)事業概要  ハノーファー市は人口約52万人のドイツ北部ニーダーザクセ ン州の州都である。ハノーファー市の下水道事業(Eigenbetrieb Stadtentwässerung Hannover)は450㎢の面積に、2,500kmの管き ょ網を持ち、約450人の職員によって年間約6,066万㎥(一日約16万 ㎥)下水を処理している(3)   (2)機関の種類  ハノーファー市の下水道事業の経営形態は公営企業であり独自の 法人格を持たない。  ハノーファー市下水道事業の機関はニーダーザクセン州市町村基 本法(Niedersächsisches Kommunalverfassungsgesetz)第140条

(3)Landeshauptstadt Hannover, Geschäftsbericht 2011, Stadtentwässerung Hannover を参照。

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第1項に基づき市議会により議決されたハノーファー市下水道経営 条例(Betriebssatzung für die Stadtentwässerung Hannover)に よって定められている。  州地方自治基本法及び市下水道経営条例によれば下水道事業には 管理者と管理委員会が置かれる。   (3)管理者  まず管理者(Betriebsleiter)は下水道事業経営を担う。この外 に技術部門と経営部門に部門別管理者を別に置くこともできる。た だし経営に関する事項について責任を持つのは部門別管理者ではな く管理者のみである(第4条第4項)。  この管理者は市長によって任命される(第4条第1項)。市長は 後述する下水道経営委員会の同意によりこの管理者の権限を定め る。これに対して内部組織は管理者によって決定される(第4条第 2項)。  この条例では管理者が自主的に経営することを規定しているが、 ここでいう経営には例えばビジネスプロセスに関連する措置、予 算、財政計画、決算の作成や一定金額以下の支出・契約決定などが 含まれる(第4条第5項)。一方で管理者は利益や費用等について 市長と経営管理委員会に対して半年に一度は文書により報告しなけ ればならず、また会計年度終了から原則として3カ月以内に決算と 営業報告を提出しなければならない(第4条第8項)。  なお予算は管理者が作成した後に市長を通じて経営管理委員会に 提出される。その後、経営管理委員会の意見が付され市議会に回付 される(第7条第1項)。同時に管理者は財政計画を作成し、市長 を通じて経営管理委員会に提出する。議会へは参考資料として提出 される(第7条第2項)。  管理者の下には経営部門、計画・建設部門、運転管理部門、監督 業務部門の4部門と法律顧問及び広報官が置かれている。このうち 経営部門の長が経営部門における管理者の代理を務め、また計画・

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建設部門の長が技術部門の管理者の代理を務める(4) (4)経営管理委員会  これに対して経営管理委員会(Betriebsauschuss)は市議会での 議決が必要とされるものや市長又は管理者の権限とされるものでは ないすべての事項を決定し、また市議会での議決に向けた準備をす るために置かれる(第5条第2項)。この経営管理委員会は10名の 市議会議員と5名の従業員代表から構成される(第5条第1項)、 とりわけ契約・支出権限の基準を設け、また予算、財政計画、決算 に関する見解を決定する(第5条第2項)。例えば経営管理委員会 は更新投資の基礎となる「管きょ再構築2013」を公表し(5)、今後 の投資規模の概算を示している。 (5)市長  市長も重要な役割を演じる。市長は管理者の意見を聞いた上で管 理者に対して指示することができる。しかも以下の事項についての 決定権は市長に常に留保されている(第6条第1項)。 ・組織・人事制度における基本的な規準 ・部門長や特別な職務を担う職員の採用や罷免 ・官吏の人事事項 ・社会施設の創設と変更 ・投資と立地計画のための規準の開発と確定 ・サービス範囲の規準 ・物的・人的資源の利用に関する枠組規準 ・規準遵守の監督、並びに、不履行の場合の修正・リコール権

(4)Organigramm, Stand: April 2014.

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 市長は管理者や従業員の職務上の上役であり、法令に適合し、ま た経済的な経営が行われるように専門監督(Fachaufsicht)を行う (公営企業を所管する部門の官吏あるいは管理者に委任することが できる)(第6条第2項)。  なお管理者は投資プロジェクトに著しい支出超過が生じた場合な ど経営悪化の原因が生じたときにはすべての重要事項について公営 企業を所管する部門の官吏に報告しなければならない(第6条第3 項)。また市長は管理者と協議の上で組織、ビジネスプロセス、管 理者の代理についての職務命令を発布する(第6条第4項)。  市長は緊急時に経営管理委員会に代わって必要な措置を講じるこ とができる(第5条第3項)。

3 株式会社形態の事例

3-1 地方自治基本法上の位置づけ (1)経営形態の選択に関する規定  私法形態をとろうとする場合についてそもそも州の地方自治法制 において規制が設けられている。ここではニーダーザクセン州の地 方自治基本法に基づきそれを見てみよう(宇野2016a:5)。  まず市町村の経済活動に関する制限が設けられている(6)。すな わち市町村が企業を設立するには次の三要件を満たす必要がある。 第1に公共目的によって企業が正当化されること、第2に企業がそ の種類と範囲について市町村の給付能力及び予想される需要に対し て適切な関係にあること、第3にその活動に際して公共目的が民間 の第三者によって同様に適切かつ経済的に充足され、あるいは充足 されえないことである(ニーダーザクセン州地方自治基本法第136 条第1項)。  特に三番目の要件は「補完性条項」と呼ばれ、同様の事業分野で (6)こうした規制については成田(1963)に詳しい。また人見(2013)も参照。

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活動する民間企業を保護する役割を担っている。  ただし水道事業の分野はその他の「生存配慮」の公共サービス (エネルギー供給、近隣公共共通、電気通信の分野)とともに、こ の「補完性条項」の適用除外となっている。このため、市が水道会 社を設立しようとする場合に民間企業の第三者との競合について配 慮する必要はない(同法第136条第1項第3号)。  そしてこうした要件を満たした市町村の企業(もちろん水道事 業がそこに含まれる)には、公営企業、営造物法人、私法形態の いずれかの経営形態をとることが許されている(同法第136条第2 項)。  一方で下水道事業の経営形態には制約がある。まず、①法律によ って設置が義務付けられている施設、②教育、スポーツ、保養、保 健・社会福祉、環境保全などの分野の施設、③専ら市町村自らの必 要を充たすための施設はそもそもここでいう「企業」にあたらない とし(同法第136条第3項)、その経営形態に制限が設けられてい るのである(同法136条第4項)。  下水道事業(7)については、原則として公営企業又は営造物法人 として経営されるべきことが明記されている。私法形態の採用は、 市町村が単独で、あるいは他の市町村又は目的組合と共同で持分の 過半数を持つ場合に限られる(同法第136条第4項)。このような 経営形態上の制約が設けられているのは、下水道事業の場合には住 民の接続義務等が法律上認められているためである。 (2)私法上の経営形態を採用することができる場合  このようにとりわけ水道事業の場合には市町村の選択によって (7)ニーダーザクセン州において下水道事業は法律によって実施が義務付けられ ている(ニーダーザクセン州水法 Niedersächsisches Wassergesetz(Vom 19. Februar 2010)第 96 条)。一方で水道事業は任意的自治事務として位置づけられ ている。下水道事業とは異なり、水道事業の場合にはそれを義務的自治事務とす るかどうかは各州の水法制や地方自治法制による。ただし義務的自治事務とされ ていない場合でも水道事業は伝統的に市町村の自治事務として認識されている。

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自由に私法形態の会社を設立できるが、その設立・出資に際して は次の8の制約条件が課されている(同法第137条第1項)(宇野 2016a:6)。なおこれは私法形態の会社がさらに子会社を設立・ 出資しようとする場合にも適用される(同法第137条第2項)。 ① 前述の三要件が満たされていること(水道事業の場合には 「補完性条項」は適用除外) ② 市町村の責任が一定金額に限定される法的形態(有限責任) を選ぶこと ③ 払い込み義務が市町村の給付能力と適切な関係にあること ④ 市町村が、無制限又は不適当に高い損失の引き受け義務を負 わないこと ⑤ 定款等によって、企業の公共目的が実現されることが確実と なっていること ⑥ 市町村が、とりわけ監査役会において、適切な影響力を保 ち、それが、定款等によって保障されていること ⑦ 第136条第3項の施設において、市町村が持分の過半数を有 するとき、市町村は、自らのために、すべての重要事項の最 終意思決定権を確保すること ⑧ 定款等において、市町村の連結決算に必要となる書類が、会 計年度終了時から6カ月以内に作成しうるように、適時に提 出されることが保障されていること  以上に見たように私法形態による場合にはあくまでも有限責任が 原則となっているが、他方、監査役会や定款等を通じて公共目的の 実現や市町村の影響力の確保が保障されていることが求められてい る。 (3)市町村代表に関する規定  さらに私法形態の地方公営企業に対する市町村の代表者に関する

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規定も市町村法制に設けられている(同法第138条)(宇野2016a: 6)。  市町村企業や市町村が出資する企業の社員総会(あるいは、それ に相当する機関)における市町村の代表は評議会(Vertretung) によって選ばれる。代表者は市町村の利益を追求しなければならな いとされ、評議会やその総務委員会(Hauptausschuss)の決定に 拘束される。いついかなるときでも、代表者への委任は取り消され 得る(同法第138条第1項)。  代表者選定の際に市長は特別の扱いを受ける。例えば市長はそれ を放棄し、あるいは取締役に任命される場合を除き代表者となるこ ととされる。一方で自らの提案によって代役として職員を充てるこ ともできる(同法第138条第2項)。  株式会社形態をとる場合、市町村はその定款に市町村が監査役会 への構成員の派遣する権利を盛り込むように努めなければならな い。その派遣は評議会が決定する(同法第138条第3項)。  代表者や監査役会へ派遣される者には重要事項に関して早期に報 告することが義務付けられる(同法第138条第4項)。  また市町村が単独で、あるいは他の市町村又は目的組合と共同で 過半数以上を有する企業の社員総会(又はそれに類する機関)の代 表者は、企業の起債、または一時借入に対して、市町村の評議会の 許可がなければ同意してはならない(同法第138条第5項)。 (4)出資法人の管理に関する規定  加えてニーダーザクセン州の市町村基本法には、市町村がその出 資企業の管理、すなわちその監視と調整を行うことが規定されてい る(同法第150条)(宇野2016a:6-7)。  対象となるのは市町村の企業、下水道事業のように条件付きで私 法形態が許されていた施設(同法第136条第4項の施設)、経済活 動の規制の適用除外とはなっているが経済性に留意した自立的経営 が求められている施設(同法第139条の施設)、並びに公共目的の

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追求のための出資である。市町村はこれらの企業等において情報を 得ることができる。これらは市町村の企業等による子会社(同法13 7条第2項の意味での間接的な出資)にも適用される。ただしこれ らの規定は会社法の強行規定に矛盾する場合には適用されない(同 法第150条)。  これに関連して市町村は「出資企業報告書(Beteiligungs-bericht)」を作成し、これを毎年更新しなければならない(同法 第151条)。  その対象となるのは私法形態の企業等、出資、及び営造物法人で あり、内容面では次の事項を含んだものである。 ① 企業等の対象、出資関係、機関の構成、その企業等のよる出 資 ② 企業等による公共目的の履行状況 ③ 事業発展の基本的な特質、企業等が置かれた状況、市町村に よる資本注入・取り崩し、予算・資金に対する影響 ④ 経済活動の三要件(同法第136条第1項)が満たされている こと  この「出資企業報告書」の閲覧は誰にでも許され、閲覧が可能 であることについて適切に示されることとされている(同法第151 条)。 3-2 ハノーファー市シュタットベルケ(enercity株式会社) (1)企業概要  以上に見た法制度の下での実際の経営形態をハノーファー市の水 道事業を担うシュタットベルケ(enercity株式会社)を事例として 見ていこう。  さてこの会社は古くから電力事業等の供給事業を統合するシュタ ットベルケの形態により経営されてきた。1878年の近代水道建設 後、1922年には、ガス事業(1826年から)、電力事業(1891年か

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ら)、並びに下水道事業(ただし1930年まで)を統合した市町村 固有の企業として設立された。その後、1938年に地方公営企業令 (Eigenbetriebsverordnung)が制定されるとそれに従って公営企 業として新設された。1952年からシュタットベルケ・ハノーファー と名乗るようになり、1970年には株式会社となった。  民営化に向けた新しい歴史が始まったのは1990年代であった。 1993年にはそれまでの部門別縦割りの組織構造を統合し、機関も一 本化し(一つの監査役会、一つの経営会議)、さらに1994年には Ruhrgas社にその株式の一部を売却した(その後はThüga社に)。 1996年からはenercityという名称を用いている。ハノーファー市は 2008年にThüga社を他の都市のシュタットベルケと共同で購入した ため、現在では公共所有となったThüga社と株式を持ち合う形とな っている。 (2)機関の構成  enercity社は、株式会社としての独立した法人格を持つ。その経 営形態は通常の民間企業としての株式会社と全く同様に、株式法 (Aktiengesetz)に基づく。株主は出資額の範囲で有限責任を負う のは当然である。すでに見たように機関として業務執行を担う取締 役会(Vorstand)、取締役会構成員を選任し、また業務執行を監 督する監査役会(Aufsichtrat)、そして最高意思決定機関である 株主総会がある。 (3)取締役会  調査時点(2016年1月)のenercity社の取締役の構成について見 てみよう(宇野2016a:8)。取締役は3名であり、そのうち2名 は外部からの登用であることからもわかるとおり、専門的な人事が 行われている。  取締役会議長であり経営部門の長は2004年4月から現職にある が、それ以前は主に国際的な民間公益事業会社(Esso Deutschland

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GmbHやDeutschen Essent GmbHなど)でマネジメント業務を経 験してきた。もっとも前取締役会議長は市財務局の出身者であった そうだ。  この取締役議長の他に労務部門長である取締役(弁護士)と技術 部門長である取締役(工学ディプロム)がいる。技術部門長は大学 卒業後にシュタットベルケ・ハノーファーに入社し、様々な職務を 経験しながら内部から取締役となっている。 (4)監査役会の実際  次に監査役会について見てみよう(宇野2016a:8)。  enercity社における監査役会の議席数は20である。監査役会議長 には市収入役が就いている。市側の議席は議長を含めて8であり、 その中には2名の助役、及び4名の議員が含まれる。またもう一つ の株主であるThüga社の議席は2であり、Thüga社の取締役会長及 びその代理である取締役が選任されている。  なお共同決定法が適用されるため労働者代表が総議席数20の半数 である10の議席を持つ。  このように二重構造となっているドイツの株式会社の構造を活か して業務執行は専門家に委ねる一方で、その選任や監督にあたる監 査役会には株主である市役所(あるいは出資者である民間企業)の 幹部及び市議会議員が構成員として加わることで経営の自主性・専 門性と公的コントロールとのバランスが図られている。

4 事業複合の実際

 ここまで上下水道事業に用いられる地方公営企業の経営形態につ いて見てきた。次にドイツの地方公営企業の特徴である事業複合の 実際について見てみよう(神尾2015; Gottschalk 2012)。  ドイツでは都市インフラを担う地方公営企業はその経営形態に関 わらず複数の事業分野を複合的に担っているものが多く、それらは

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「シュタットベルケ(Stadtwerke)」、あるいはそれに類似する 名称を冠することが通例である。かつては「都市施設局」と訳すこ ともあったが、最近では「都市公社」と訳す例も見られる。いずれ にせよ、この地方公営企業としてのシュタットベルケは自治団体で ある市町村と強く結びつきつつ、電力、ガス、熱供給、水道、下水 道、廃棄物処理、近距離交通などを複合的に担っている。

 表1は地方公営企業連盟(Verband kommunaler Unterneh-men)の加盟団体の事業部門をまとめたものである。新たに下水道 事業団体の加盟が増えていることもあり「廃棄物(下水を含む)」 を単独で担う団体が多くなっているが、二つ以上の事業部門を複合 的に担っている団体も多い。特に電気、ガス、地域暖房、水道の四 部門を担うものが全体の18.3%を占めている。熱電併給を中心に事 業部門間のシナジー効果が追求されている様子がわかるだろう。  もっとも各事業の位置づけは完全に対等なものではない。例えば 収益構造という点では事業部門の複合化は電力事業が明らかに中心 である。図1はハノーファー市のシュタットベルケであるenercity 社の組織図と収益構造をまとめたものである(Thüga社との株式持 ち合いについては上述した)。  図1によれば、enercity社は、電力事業、ガス事業、地域暖房事 業、水道事業、環境保護・節電サービス、電気通信インフラ事業を 事業領域としている。このうち水道事業は、電力事業やガス事業と 比べると収益の規模ははるかに小さい。売上額で比較すると総売上 高が2,367百万ユーロ、そのうち電力事業が1,340百万ユーロ(約57 %)、ガス事業が697百万ユーロ(約29%)であるところ、水道事 業は81百万ユーロ(3%)に過ぎない(2014年)(8)   (8)enercity, Report2014, 2015, S. 22 を参照。

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表1 地方公営企業連盟加盟団体の事業部門 部門数 事業部門 企業数 構成比率 (%) 5 部門 電気 ガス 地域暖房 水道 廃棄物(下水含む) 69 5 4 部門 電気 ガス 地域暖房 水道 251 18.3 電気 ガス 水道 廃棄物(下水含む) 8 0.6 電気 地域暖房 水道 廃棄物(下水含む) 16 1.2 ガス 地域暖房 水道 廃棄物(下水含む) 8 0.6 3 部門 電気 ガス 水道 57 4.2 電気 ガス 地域暖房 76 5.5 電気 地域暖房 水道 31 2.3 ガス 地域暖房 水道 31 2.3 電気 水道 廃棄物(下水含む) 8 0.6 ガス 水道 廃棄物(下水含む) 9 0.7 地域暖房 水道 廃棄物(下水含む) 8 0.6 2 部門 電気 ガス 26 1.9 電気 水道 32 2.3 電気 地域暖房 12 0.9 ガス 水道 19 1.4 ガス 地域暖房 9 0.7 地域暖房 水道 5 0.4 水道 廃棄物(下水含む) 42 3.1 1 部門 電気 16 1.2 ガス 17 1.2 地域暖房 6 0.4 水道 102 7.4 廃棄物(下水含む) 461 33.6 その他 52 3.8 合計 1,371 100

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75.09% ←0.01% ←24% * 数値は売上高の構成比(2014年) 20.53% 38.41% 81.10% 80.49% 98.38% 100% フランク フルトSW 市町村 コンソー シアム ニュルン ベルクSW 20.53% ハノーファー圏 インフラ 有限会社 ハノーファー市 (レギオン・ハノーファー)ハノーファー圏 Thüga株式会社 Thüga Holding株式会社 シュタットベルケ・ ハノーファー株式会社 20.53%→ ハノーファー 交通株式会社 19.51% 電力 57% ガス29% 水道3% 地域 暖房 3% サービス 7% ハノーファー供給・ 交通会有限会社 図1 シュタットベルケ企業グループ構造の例 (注)SW はシュタットベルケの略。

[出典]Landeshauptstadt Hannover, Beteiligungsbericht 2014, enerciy, Report 2014 に基づき作成。    この図1からわかるとおり、もう一つの特徴はシュタットベルケ がより大きな持株会社グループに組み込まれていることである。ハ ノーファー市の場合、ハノーファー市も含まれる広域圏団体であ るレギオン・ハノーファーが共同出資する「ハノーファー供給・ 交通会社」が持株会社となり、シュタットベルケ・ハノーファー (enercity社)とハノーファー交通株式会社を結び付けている。こ れによりシュタットベルケ・ハノーファーで生み出される利益を赤 字部門である交通事業で活用することが可能となっている。

まとめ

 本稿ではドイツの地方公営企業の構造として経営形態、及び事業

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複合について見てきた。  まず地方公営企業がとりえる経営形態の選択肢が多様であるのが 特徴と言えるだろう。日本の地方公営企業制度に類似するのが「公 営企業」であろう。これに対して、より柔軟な経営を可能とするた めに有限会社や株式会社などの「私法形態」も採用されてきた点が ドイツの特徴となっている。  もっとも、この「私法形態」の場合には、法人格も別となり、自 由な経営が可能となる一方で、市町村の影響力の低下が危惧される ため、市町村法制において条例や定款によって公共目的の実現を担 保することや、総会や監査役会等へ派遣される代理人のあり方、ま た市町村側による出資企業管理に関する事項が規定されていた点に 注意が必要だろう。  こうした規定を十分に機能させるためには代理人として派遣され る議員や市町村職員の質が問題となるであろう。こうした問題に対 しては例えばハノーファー市の出資企業管理では、情報収集・分 析・公表という手法をとるだけでなく、企業の取締役会との日常的 な接触と事前調整、代理人の総会や監査役会での意思決定のための 意見書や提案書の作成、代理人への研修、など様々な形で、市町村 の影響力確保のための取組みが試みられている(宇野2016a)。  私法形態の利用は、民間企業の出資を受けた「第三セクター」化 を可能としてきた。例えば宇野(2015)では、人口が約25万人を超 える主要都市の上下水道事業の経営形態について見たが、特に水道 事業では確かに「第三セクター」化が見られたが、それは少数派で あり、また出資を受けている民間企業もその地域の電力会社が中心 であった(こうした場合、水道事業は電力事業に統合されて実施さ れている)。上下水道事業を企業の成長の源泉と捉える「第三セク ター」は管見の限り少なく、むしろ「生活に不可欠な公共サービ ス」の提供が強調されていた。  実際に、本稿で見た通り事業を複合している場合にも収益の中心 は電力事業であり、水道事業の収益が占める割合は大きくなかっ

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た。収益力が高く、また市場自由化されている電力事業が中心とな っていることで、現在でも、そこで生み出された利益による内部補 助が正当化されているだろうことには留意は必要だろう。  本稿は上下水道事業体を中心にドイツの地方公営企業の構造に関 する基礎情報をまとめたものに過ぎない。こうした構造の下でドイ ツの地方公営企業が現代社会においてどのような機能を発揮してい るのかを明らかにするとともに、自由化やグローバル化が進む中で その機能と構造とがどのように変容してきたのかを明らかにするこ とが今後の課題である。その際、上下水道事業とその他の事業領域 の地方公営企業との比較も有益であろう。 付記  本稿は2015年度札幌大学留学研修による研究成果の一部であ る(9) 引用文献 宇野二朗(2017a)「汚水処理システムの最適化と地方自治」『月刊下水道』第40 巻第11号、2-5頁。 宇野二朗(2017b)「公私連携の推進は水道事業をどう変えるか-ドイツの経験に 学ぶ」『都市問題』第108号、71-80頁。 宇野二朗(2017c)「再公営化の動向と議論の内容」『地方自治職員研修』第698 号、15-17頁。 宇野二朗(2016a)「ドイツにおける地方公営企業の経営形態と再公営化」『公営 企業』第48巻第7号、4-16頁。 宇野二朗(2016b)「再公営化の動向からみる地方公営企業の展望-ドイツの事例 から-」『都市とガバナンス』第25号、16-34頁。 宇野二朗(2016c)「ドイツにおける地方公営企業の経営戦略」地方公営企業連絡 協議会編『公営企業の経営改革、経営戦略の策定、法適用化の取り組み等に関 (9)本稿は平成 27 年度の地方公営企業連絡協議会調査研究事業助成の成果である 「ドイツにおける地方公営企業の経営戦略」(地方公営企業連絡協議会編『公営 企業の経営改革、経営戦略の策定、法適用化の取り組み等に関する調査報告書』 109-136 頁)の一部を加筆・修正したものである。またその一部は宇野(2016a) として公刊した。この調査研究は 2015 年度札幌大学留学研修の期間に行われた ものであるため、加筆・修正の上でその報告書として本誌に掲載する。

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する調査報告書』109-136頁。 宇野二朗(2015)「地方公営企業の展望:ドイツの経験を手がかりに」『公営企 業』第47巻第3号、4-17頁、2015年。 宇野二朗(2004)「地方公企業の組織改革-ベルリン水道公社を事例として」『早 稲田政治公法研究』第75号、171-198頁。 人見剛(2013)「ドイツにおける市町村生活基盤配慮行政の(再)公営化」広渡 清吾、朝倉むつ子、今村与一編『日本社会と市民法学』日本評論社、399-415 頁。 神尾文彦(2015)「地方公営企業の地域複合経営に関する考察」『公営企業』第47 巻第12号、4-14頁。 武田公子(2013)『ドイツ自治体の行財政改革-分権化と経営主義化』日本評論 社。 成田頼明(1963)「地方公共団体の経済活動とその法的限界(二)」『自治研究』 第38巻第7号、63-74頁。

Cronauge, Ulrich, Georg Westermann(2006)Kommunale Untenehmen. Eigenbetiebe–Kapitalgesellschaften–Zweckverbände, 5. Auflage, Berlin:Erich Schmidt Verlag.

Gottschalk, Wolf(2012)Strukturen und Organisation von Stadtwerken, in: Dietmar Bräunig, Wolf Gottschalk(eds)Stadtwerke: Grundlagen, Rahmenbedingungen, Führung und Betrieb. Baden-Baden: Nomos, 53-72. Lenk, Thomas, Oliver Rottmann, Mario Hesse(2012)Finazwissenschaftliche

Dimension von Rekommunalisierungen am Beispiel der deutschen Trinkwasserversorgung, in: Christina Schaefer, Ludwig Theuvsen(eds) Renaissance öffentlicher Wirtschaft. Baden-Baden: Nomos, 163-178.

参照

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