Title
アブシジン酸8'-水酸化酵素の機能解明( 内容の要旨
(Summary) )
Author(s)
上野, 琴巳
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第482号
Issue Date
2008-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/23489
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本(国)籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 会 上 野 琴 巳 (岐阜県) 博士(農学) 農博甲第482号 平成20年3月13日 学位規則第3条第1項該当 連合農学研究科 生物資源科学専攻 静岡大学 アブシジン酸8'・水酸化酵素の機能解明 主査 静岡大学 准教授 轟 副査 静岡大学 教 授 渡 副査 岐阜大学 教 授 木 副査 信州大学 教 授 廣 司 治 真 満 泰 修 邁 曽 田 論 文 の 内 容 の 要 旨 アブシジン酸(ABA)は,植物の生活衆制御およびストレス耐性誘導に必須の植物ホルモン である。内生ABA量は,生合成及び代謝不活性化経路の制御を介して放射こ調節されてい る。主代謝不活性化経路(ABA8一一水酸化経路)の初発酵素であるABA8一・水酸化酵素遺伝 子(CアP7∂祝)が2004年に同定され,異種発現によってその活性が確認されたため,本研究 では,本酵素を療的とした特異的阻害剤一研究ツールとしても植物調節剤としても有用な ABAホメオスタシス制御物質-の開発を目的として以下の研究を行った。 ABA$●-水酸化酵素はシトクロムp450であり,活性部位にヘムを有する。P450を阻害する分 子の多くは,ヘム鉄に強く配任するアゾール衆を有したアゾール系化合物であり,抗真菌知と して広く用いられている。しかしながら,ヘムは全てのp450に共通の補因子であるため,アゾー ル系阻害剤の酵素特異性は低く,副作用の開場が常につきまとう。動物に比べてはるかに多 様なP450を有する植物の場合,副作用のある阻害剤は,研尭ツールとしても植物調節剤とし ても利用価値が低い。そこで本研究では,非アゾール系のABA g■一水酸化酵素選択的な阻害 剤を開発することにした。酵素一基質問の立体構造相補性に基づいて1天然基質であるABA を非アゾール系阻害剤開発のリードとして用いることにした。まず初めに,リード最適化の方向 性を探るため.多種多様なAl3Aアナログを用いてABA8一一水酸化酵素による基質の認識部位 及び阻害剤の構造要求性の詳細を探索した。バキュロウイルス一見虫細胞系を用いて発現した リコンビナントCYP707A3を用い,45種類のABAアナログについて酵素阻害試験及び水酸化 反応試験を行った。その結果,ABAの側鎖かレポン酸およびその方向性を固定する側鎖2位 のZ構造が必要不可欠であること,側鎖付け根の1一位水酸基は不要であること,環部4■位のカ ルポニル基は必ずしも必要ではないこと,凛上メチル基の伸長は活性を低下させること,などが 明らかになった。これらに加えて,ABAが生物活性を示すために必須の側鎖メチル基(6位)が 酵素との相互作用には全く不要である,という極めて重要な発見があった。これにより,ABAを
-84-リードとしているにも関わらず,ABA生物活性を有しないABAS'一水酸化酵素阻害剤の開発が 初めて可能となった。 上記の知見に基づき,本研究では,AHIl(6-nOr-2一,3l・dihydro-4一-deoxo・ABA)を非アゾール 系ABA g■-水酸化酵素阻害剤としてデザイン・合成し,酵素の括抗阻害剤として機能すること を明らかにした。さらに興味深いことに,AHIlの立体構造はABAのそれと酷似しているにも関 わらず,CYP707A3はABAのl,位不斉に基づく立体構造の差違は級別するが.AHIlのそれ は織別しないことが判明した。本研究では,巧みにデザインされた分子プロープを用いることに ょって.不斉静弛の原因がABA東部a,P一不飽和カルポニル基にあることを明らかにした。ABA の銃像異性体は天然には存在しないにも関わらず,様々なABA様生物活性を示すことが明ら かにされているが,そのメカニズムは未だによくわかっていない。本研究成果がこの謎を解き明 かす端緒になるかもしれない。 ABA g●_水酸化酵素の基質認識について,その動的メカニズムを暗示させる知見も得られた。 ここでも巧みにデザインされた分子を利用し,ABAの側鎖基本構造である2Z,4E-Pentadienoic acidの5位に,分岐差を含む炭素数7程度の飽和炭化水素鎖があれば,ABAのような衆構 造をもたなくても,ABA8一・水酸化酵素に結合できることを明らかにした。これにより,ABA8l一水 酸化酵素はABA側鎖カルポン酸を足掛かりにしてABAを基質ポケットに誘い込み,環部の 疎水領域を触媒部位近傍に取り込むとともに,環部カルポニル基との特異的な静電相互作用 によって水酸化部位を正しくヘム鉄に近づける-という基質認識機構を想定するに至った。 次に酵素側からのアプローチとして,部位特異的変異を導入した酵素を作製し,これを利用 して,基質との相互作用に重要なアミノ酸残基を探索する研究も行った。その結果,E109と N207をアラニンに置換した変異酵素は,p450として機能しているにも関わらずABA巷●位水酸 化活性が大きく低下することがわかった。このことは,A8A`の1位かレポン酸を認識しているの は,RlO9とN207の2つの塩基性アミノ酸側鎖であることを強く示唆しており,今後の阻害剤デ ザインに極めて有用な情報を得ることができた。 審 査 結 果 の 要 旨 申請者は本研究において,植物の生活費制御およびストレス耐性誘導に必須の植物ホ ルモンであるアブシジン酸(ABA)のホメオスタシス制御に重要な役割を果たしているABA $・一水酸化酵素について,そのリガンド(基質および阻害剤)認識機構を生物有機化学およ び分子生物学的手法を駆使して詳細に解析し,非アゾール系ABAg--水酸化酵素阻害剤 の開発に成功した。以下,本給文の内容とそれに対する審査結果について記す。 まず緒論は,ABAに関する研究成果が直近のものを含めて記述されており,本給文の研 究背景を把握するのに十分な内容を含んでいる。続く本論概要では,内生ABA圭は生合 成及び代謝不活性化経路の制御を介して厳密に調節されていること,主代謝不活性化経 路(ABA8一一水酸化経路)の初発酵素であるABA8一一水酸化酵素遺伝子(C】ア70u)が2004 年に同定され,異種発現によってその活性が確認されたこと,そしてこれを契機として,本
酵素を標的とした特異的阻害剤を生物有機化学的手法を駆使して開発す争ことに至った
経線がわかりやすくまとめられている。 本給第1章では,阻害剤開発のリード化合物を如何にしてデザインしたのか,その根拠となる瘍造活性相関研究について述べられている。ABAg-・水酸化酵素はP450であるので,
ヘム鉄に強く配位するアゾール系阻害剤が有効であることは既にわかっていたが,このタイ プの阻害剤は酵素特異性が低く,副作用の問題が常につきまい,ABA暮し水酸化酵素の場ー85-合もその例外ではない。本章では,酵素選択性が高い非アゾール系阻害剤の開発を目指 し,ABA8.・水酸化酵素による基質の認識部位及び阻害剤の構造要求性を45種類のABA アナログを用いて探求し,ABAをリードとした非アゾール系阻害剤の設計の基礎となる極め て重要な知見を待ることに成功している。(論文1) 第2章では,前章の知見を基にした新規阻害剤AⅢ1の設計と合成,およびその効果に ついて述べられている。〟Ⅲ1が期待通りの機能を有することが酵素反応のレベルで解明ざ れている。(論文2) 第3章では,ABA8-・水酸化酵素の不斉基質認馳について非常に興味深い知見が述べ られている。AHIlの立体構造はABAのそれと酷似しているにも関わらず,ABA8.・水酸化 酵素はABAの1一位不斉に基づく立体構造の差違は識別するが,AIⅡ1のそれは識別しな い。本章では,その理由が環部α,β・不飽和かレポニル基にあることが,巧みにデザイン・合