原 著
嗜女医蕪,器61巻平謝即言〕
高血圧自然発症ラットにおける抗エソドセリン抗体
およびエソドセリンの効果
東京女子医科大学 第4内科学教室(主任:杉野信博教授) オオ ノ ァキ ヒロ大 野 晃 裕
(受付 平成3年6月11日)】Effects of Endothelin・specific Antibodies and Endothehn in
Spontaneously Hypertensive Rats
Akihiro OHNO
Department of Medicine W(Director:Prof, Nobuhiro SUGINO), Kidney Center,
Tokyo Wemen’s Medical College
The aim of th童s study is to determ圭ne whether endogenous endothelin(ET)has the pathophys一
孟ological significance in spontaneously hypertensive rats(SHR). ET・specific antibodies or ET−1 was
administered intravenously to anesthetized SHR and mean arterial pressure(MAP), glomerular
filtration rate(GFR)and renal plasma flow(RPF)were measured.
Infusion of ET・spec量fic ant量bodies into SHR(n=7)decreased MAP by 10.5±3.9%, and it三ncreased GFR and RPF by 46.0±17.9%and 62.2±28.2%above the base line values, respectively(mean±SEM). On the otherhand, in control study on Wistar Kyoto rats(n=6;WKY), ET−specific antibodies did not
induce any significant change. Intravenous administration of ET−1(10 ng/kg/min)did not show any
significant change of MAP in both strains. However, infusion of ET−1 into SHR(n=5)decreased GFR and RPF and increased renal vascular resistance. In WKY(11=3), ET・1 did not elicit any significant
change量n those parameters.
These results suggest that SHR is more sensitive to ET in comparison with WKY, and ET may
play a significant role in the maintenance of hypertension in SHR.
緒 言 エンドセリン(ET)はブタの培養内皮細胞上清 より分離同定された21個のアミノ酸よりなるペプ チドで,これまでに知られている血管収縮物質の
うちで最も強力な作用を有するものの一つであ
る1).このペプチドの静脈内投与は,麻酔下および 非麻酔下のラットに持続的な昇圧反応をもたらす ことが報告されている1)∼3).さらにETは,腎機 能3)やレニン4),アルドステロン5),心房性ナトリウ ム利尿ペプチド6)などに影響を及ぼすことが知ら れており,血圧調節機構における役割が注目されている.しかし,本態性高血圧の病因論にETが
関与しているか否かについては今のところ不明で ある.本研究は,高血圧自然発症ラット(SHR)に対し抗ET抗体を投与して内因性ETをブロッ
クした場合の反応,SHRに対し外因性にET・1を
投与した場合の反応についてそれぞれ調べることにより,内因性ETがSHRの高血圧に関与して
いるか否かを明らかにしょうとするものである.対象と方法
日本チャールズリバーより購入した12∼14週齢の雄性SHRおよびWistar Kyotoラット
(WKY)を対象とした.これらをチオブタ・ミルビタール・ナトリウム液(Inactin;Byk Gulden
一951一Pharmaceuticals, Konstantz, FRG;100mg/kg) にて腹腔麻酔後,両側大腿動,静脈にカテーテル (SP31,夏目製作所)を挿入し,0.6%イヌリン(半 井化学)と0.1%パラアミノ馬尿酸(関東化学)を 含む0.9%塩化ナトリウム液を15ml/kg/hで持続
注入した.平均動脈圧(MAP)は右大腿動脈に挿
入したカテーテルをトランスデューサー(model
P231D, Gould−Stathem, California, USA)に接 続して測定し,心拍数(HR)は動脈圧の拍動を記 録して求めた.採尿は膀胱カテーテルにて行い, 60分の安定時問をおいて実験を開始した.血清お
よび尿中イヌリンの測定はアンスロソ法にて行
い,パラアミノ馬尿酸の測定は1一β一ジエチルアミ ノエチルーα一ナフチルアミン蔭酸による比色法を 用いた.実験1 ET−1を家兎に免疫して作製された抗
血清(ペプチド研究所;IC50=1.3pmol/ml)を抗ET抗体として用いたが,その交叉反応性はET−
2,一3,big ET・1にそれぞれ100%,100%,<0.1% であった.プロトコール1(図1)に示すように抗ET抗
体を希釈せずに10μ1/kg/hで60分間経静脈的に投 与し,MAP, HR,イヌリン・クリアランス(Gn), パラアミノ馬尿酸・クリアランス(Cpah)を測定し た.腎血管抵抗(RVR)は,以下の式より求めた.RVR=MAP(1一ヘマトクリット)/Cpah
実験2 プロトコール2(図1)に示すように
ET−1(ペプチド研究所)を10,100ng/kg/min(4, 40pmo1/kg/min)で60分聞経静脈的に投与し,実 験1と同様の測定を行った. プロトコール 1 antトET Ab IOμ1/kg/h ヨむ ロ ロ ヨ ヨむ ロ 採血採尿 棄 桑 争 楽 1 楽 プロトコール 2 ET 1100r 100n話/kg/mln30min 30 min 30 min 30 min 30 min 30 min
採血・採尿 桑 李 千 牛 李 阜
図1 実験プロトコール
結果はmean±SEMで示した.統計解析はStu・
dent’s t testおよび2元配置分散分析(two−way analysis of variance;two−way ANOVA)を適 宜用いて行い,p<0.05をもって有意とした.
結 果
実験1 抗ET抗体の静脈内投与によりSHR
(n=7)のMAPは投与開始60分後より低下傾向
を示し,投与中止後60分にて有意差を認めた(図2)(前162.9±3.5mmHg,30分192.9±3.3
mmHg,60分157.9±3,2mmHg,90分153.6±
4.5mmHg,120分145.7±6.3mmHg).一方,対
照群のWKY(n=6)ではMAPは有意な変化を
示さなかった(前105.8±L8mmHg,30分
106.7±2.3mmHg,60分107.5±2.6mmHg,90分 106.7±2.8mmHg,120分105.0±3.5mmHg).HRについてはSHR, WKYともに有意な変化を
認めなかった.抗ET抗体投与によりSHRおよびWKYの尿
量(V)は投与下値より増加したが両福間に有意差 は認めなかった.尿中ナトリウム排泄量(UN。V) も同様に増加したが,両群間に有意差は認められ なかった(表1).図3に抗ET抗体がSHRおよびWKYの腎機
能に与える影響について示す.SHRにおいては,
抗ET抗体投与によりG。およびCpahは投与開始
後それぞれ60分,30分後より有意に上昇し,その効果は投与中止後少なくとも60分間持続した
(Ci。:前1.92±0.10ml/min,30分2.34±0.25 ml/min,60分2.59±0.28ml/min,90分2.65± 0.27ml/min,120分2.80±0,34ml/min;Cpah: 前5.93±0.44ml/min,30分8.11±L14ml/min, 60分8.38±:1.10ml/min,90分9.56±1.59ml/ min,120分9.62±1.67ml/min).これに対して, WKYではCi。, Cp。hいずれも有意な変化を認めな かった(Ci。:前2.00±0.13ml/min,30分1.80±0.12ml/min,60分2.02±0.16ml/min,90分
2.03±0.19ml/min,120分2.11±0.18m1/min; Cp。h前8.38±0.39ml/min,30分7.73±0.69ml/ min,60分8.20±0.92ml/min,90分8.54±0.59 ml/min,120分8.01±0.71ml/min).濾過率(FF) については,両群ともに有意な変化を認めなかっ6
工 ∈ ε 匙 Σ 200 100 antl−ET Ab SHRm=7) 一〇一 WKYfn=6) 一ロー δ ア○\δ一δ縄
ロー里一里一型∼里
500 倉塁…
工 300 0 30 60 90 120 0 30 60 90 120 Time(mi・) Time(mi・) 図2 抗ET抗体投与が平均動脈圧(MAP),および心拍数(HR)に与える影響 *p<0.05vs. basal values た(SHR:前0.33±0.02,30分0.30±0.01,60 分0.32±0.02,90分0.30±0.02,120分0.31± 0.03;WKY:前0.24±0.02,30分0.24±0.01, 60分0.25±0.01,90分0.24±0.01,120分0.26± 0.00).また抗ET抗体投与によりSHRのRVRは有
意、に低下したが,WKYでは変化しなかった(図
4)(SHR:前14,4±1,3mmHg/min/ml,30分
11.3±1.4mmHg/min/m1,60分10.7±1.5
mmHg/min/m1,90分9.4±1.3mmHg/min/ml,120分9.2±1.6mmHg/min/ml;WKY:前
6.4±0.4mmHg/min/ml,30分7.24±0.7
mmHg/mi/min/ml,60分7,06±0.8mmHg/
表1 抗ET抗体投与が尿:量(V)および尿中ナトリ ウム排泄量(UNaV)に与える影響 StrainSHR
WKY
n 7 6 BW(9) .299.7±8.9 310.0±6.3 V(μ1/min) 0, 10.9±1.7. 9.4±1.1 60, 14,3±1.5 11.8±1.3 120, 寧16.4±2.6 *17.4±1.7 U。。V(μ1/min) 0, 1ユ±G.3 1.0±0.2 60’ 噛1.8±0.3 1.8±0.3 120’ 勅23±0.2 串拳 R.4±0.4 BW:体重,*:p<0.05 vs. basal values,**:p<0.01 vs. basal values. 宣 量 君 誉Q
書 ミ 唇 と 区o
10 5b
ELI
⊥醐缶
SHRIn=7)WKYm=6) 一(ンー 一ロー 0 30 60 90 i20 0 30 60 90 120 Time(min) Time(min) 図3 抗ET抗体投与がイヌリン・クリアランス(Ci。)およびパラアミノ馬尿酸・ク リアランス(Cp。h)に与える影響*:p〈0.05vs. basal values,十:p<0.05 vs. WKY(two−way ANOVA),#:
p<0.05vs. WKY(unpaired Student’s t test).
min/ml,90分6.41±0.4mmHg/min/m1,120分 6,9±0.7mmHg/min/ml).
ここには示さなかったが,抗ET抗体に対する
SHRとWKYの反応性の差が異種血清に対する
反応の違いでないことを確かめるために,SHR
(n=6)およびWKY(n=2)に対して正常家兎
血清をそれぞれ投与したが,両群ともに血圧,心 拍数,腎機能に変化を認めなかった.実験2 10ng/kg/minのET・1はSHR(n=5)
およびWKY(n=3)のMAPに変化を与えな
かった(図5−1)(SHR:前174.5±4.9mmHg,3Q分176.5±2.4mmHg,60分175.5±2.3
mmHg,90分173.0±2.3mmHg,12q分170.0±
2.4mmHg;WKY:前123.3±2.7mmHg,30分
至15
蚤量10
窪 5 antl−ET Ab\馬Lよ
百/薔一百\己_召
S胆よ7)W掌6) 0 30 60 90 120 Time(min) 図4 抗ET抗体投与が腎血管抵抗(RVR)に与える 影響 * :p<0.05 vs. basal values, #:p〈0.05 vs.WKY(unpaired student’s t test)
6
工 ∈ ε 匙 Σ 200 100 ET 10ng/kg/mrn SH[難5) w箪=3) ひδ一δ一石巧一トδ_蕊’r里一里㌔四ら里一里
500 ε 量400 壬 300 ET 10ng/kg/mln SHB住5) w噂=3)奄フ吟弊蚕、逼幸臣
0 30 60 90. 120 Time(min) 0 30 60 90 120 Time(min)図5−1
6
工 ∈ ε 匙 Σ 200 100 500 君§400
岳 300 SH[讐需6) w堕警4) ET 100ng/kg/mnδンL↓一蹴
r冊』
0 30・ 60 0 30 60 Time(min> Time(min) 図5−2 図5 ET−1(10,100ng/kg/min)投与が平均動脈圧(MAP),および心拍数(HR) に与える影響133,3±与.4mmHg,60分136.7±6.8mmHg,90分 133.3±7.6mmHg,120分131.7±7.2mmHg).
100ng/kg/minのET−1投与によりWKY(n=4)
のMAPは上昇傾向を示したが, SHR(n=6)で
はむしろ低下傾向を示した(図5−2)(SHR:前
160.0±3.9mmHg,30分156.0±4.6mmHg,60分148.0±6.4mmHg;WKY:前.113.8±3.2
mmHg,30分120.0±2.5mmHg,60分125.0±
2.5mmHg). HRについては,いずれの用量の
ET−1も変化を及ぼさなかった(図5). ET−1投与(10,100ng/kg/min)によりSHRの尿量(V)は変化を認めなかったが,WKYでは
ET−1投与により増加傾向を示した.尿中ナトリウ ム排泄量(UN。V)は両群ともに, ET−1投与により 増加傾向を認めた(表2). 10ng/kg/minのET−1はSHRのCin, Cpahを有 意に低下させ,RVRを有意に上昇させた. ET−1の この作用は可逆的で,ET−1の投与中止により消失 した(図6)(Ci。:前2.07±0.09ml/min,30分 2。01±0.17ml/min,60分1.59±0.14ml/min,90 分1.87±0,03ml/min,120分2.07土0.08m1/ min;Cpah:前6.61士0.23ml/min,30分6.15±0,34ml/min,60分4.65±0.38ml/min,90分
5.89±0.46ml/min,120分5.69±0.17ml/min;RVR:前13.3±0.7mmHg/min/ml,30分
14.1±0.5mmHg/min/ml,60分19.7±2.1
mmHg/min/ml,90分15.4±1.4mmHg/min/
ml,120分15.3±0.4mmHg/min/ml).一方,WKYではこの用量のET−1はそれらに変化を与
えなかった(図6)(Ci。:前2.40±0.06m1/min, 30分2.47±0.13ml/min,60分2.48±0.15ml/ min,90分2.51±0.07ml/min,120分2.43±0.13m1/min;Cpah:前7.64±0.59ml/min,30分
7.19±0.53ml/min,60分6.77±0.82m1/min,90 .分6.74±0.82ml/min,120分6.73±0.84m1/min;RVR:前8.2±0.6mmHg/min/ml,30分
9.2±0.8mmHg/min/ml,60分10.7±1.7
mmHg/min/ml,90分10.4±1。7mmHg/min/
ml,120分10.3±1.6mmHg/min/ml). ET・1を 100ng/kg/minで投与した場合には, SHRおよび WKYのCi。, Cp。hは両者ともに有意に低下し,RVRも両群ともに上昇した(図7)(Ci. SHR:
前2.04±0.30ml/min,30分1.64±0.43ml/min,60分L34±0.37ml/min;WKY:前2.21±
0.18ml/min,30分2.08±0.16ml/min,60分
1.82±0.01m1/m量nz;Cpah SHR:前5。91±0.84 ml/min,30分4.82±1.16ml/min,60分4.11± 1.03ml/min;WKY:前8.63±1.01m1/min,30 分6.78±0.99m1/min,60分4.84±0.47ml/min.RVR SHR:前14.9±2.OmmHg/min/ml,30分
24.9±7.2mmHg/min/ml,60分36.8±17.4
mmHg/min/m1;WKY:前6.9±0.8mmHg/
min/ml,30分9.4±1.6mmHg/min/ml,60分
4.8±0.5mmHg/min/ml). 表2 ET・1(10,100ng/kg/min)投与が尿量(V)および尿中ナトリウム排泄:量 (UN。V)に与える影響Strain
WKY
SHR
WKY
SHR
Dose of ET・1 10ng/kg/min 10ng/kg/min 100ng/kg/min 100ng/kg/min
n 3 5 4 6 BW(9) 3043±7,9 293.0±5.9 292.0±16.1 280.0±11.5 V(μ1/min) 0’ 8.9±1.2 10.0±1,0 20.2±5.2 8.3±1.4 60’ 19。3±4.9 13.5±2.0 31.6±10.8 9.0±2.6 120’ 15.5±4,0 12.2±0.7 一 一 U。。V(μ1/min) 0’ 0.5±0.2 1.2±0.2 2.2±0.9 0,5±0.2 60’ 2.3±0.9 2,6±0.7 4.3±1.6 0.9±0.4 120’ 2.0±0.5 2.1±0.4 一 一 BW:体重 一955一
3 雀 ξ
ε2
5
ET 10ng/kg/m【n百_百一己一』
\/
]++ S肇‘)W恥3) 0 30 60 90 120 Time(min) 室 塁 ε 焉8
図6−1 10 0 30 60 90 120 丁ime〈min) 窟 ξ ε δ 貧 § ε 焉8
10 0 30 60 0 Time(min) 図6−2 図6 ミノ馬尿酸・クリアランス(Gpah)に与える影響 *:pく0.05vs. basal values,十:pく0.GI vs。 WKY(twG−way ANOVA).
30 60 Time(min) ET・1(10,100ng/kg/min)投与がイヌリン・クリアランス(Ci。)およびパラア p<0.05vs. WKY(two−way ANOVA),什:
FFについては,いずれの用量も両群に変化を
与えなかった(SHR 10ng/kg/min:前0.32±
0.02,30分0.33±0.01,60分0.34±0.01;SHR100ng/kg/min:前0.35±0.03づ30分0.33±
0.03,60分0.32±0.04;WKY 10ng/kg/min:前 0.32±0.02,30分0.35±0.02,60分0.38±0.03;WHY 100ng/kg/min:前0.32±0.01,30分
0.32±0.3,60分0.39±0.04). 考 察.抗ET抗体を経静端的に投与し内因性ETを阻
害することにより,SHRでは有意なMAP, RVR
の低下,およびCi。, Cp。hの上昇が認められた.一方対照群のWKYでは,これらに有意な変化を認
めなかった.このことは,ETがSHRの高血圧維
持に関与している可能性を示唆するものと考えられるが,血清ET−1濃度をSHRとWKYで比較し
た報告では,ET−1濃度はSHRでむしろ低値とさ
れている7).したがって,SHRにおいてETの作
用がなんらかの機序によって増強している可能性が推測され,次に外因性に投与したET−1に対す
る反応性をSHRとWKYで比較した.
外因性に低濃度(10ng/kg/min)のET−1を投与した場合には,SHR, WKY両群ともにMAP,
HRに変化を来さなかった.腎機能については,
SHRにおいてCm, Cp。hの低下が認められ,.その変化はET−1投与中止により消失した.一方WKY
においては,この濃度のET4はその腎機能に影
響を及ぼさなかった.MAPに変化を来さないよ
奮
ξ20
ξ 呈 ∈ε10
蟹 匡 40 雪ξ30
ξ 望 E 20 ε 蟹 江 10 0 0 30 60 90 120 0 30 60 Time(min) Time(min) 図7 ET・1(10,100ng/kg/min)投与が腎血管抵抗(RVR)に与える影響*:p〈0,05vs. basal values,十:p<0.05 vs. WKY(two.way ANOVA).
うな低濃度のET−1が腎機能に影響を与えること はこれまでにも報告3)8)されているが,低濃度の
ETに対してSHRの腎血管のみが反応を示した
ことは,SHRの腎血管がETに対して高い感受
性を有することをin vivoで明らかにしたもので ある.そしてこの成績は,in vitroでSHRの単離 血管がETに対して強い反応性を示した9)∼11)とい う報告に一致するものである. 高濃度(100ng/kg/min)のET−1を投与した場合には,WKYのMAPは上昇傾向を示したのに
対して,SHRではむしろ低下傾向を示した.腎機
能についてはSHR, WKYともにG。, Cp。hの低下を認め,RVRも両群ともに上昇した. WKYの
MAPが上昇傾向を示したにもかかわらず, SHR
のMAPがなぜ上昇しなかったのかは問題となる
ところであるが,ET4の静脈内1回投与に対する
反応をSHRとWKYで比較したこれまでの報告
でもSHRにおける昇圧反応の充進は認められて
いない10)12). 他方,ETは心房性ナトリウム利尿ペプチド6), 内皮由来血管弛緩因子(EDRF)13),プロスタサイ クリンエ3)などの血管拡張物質の分泌を促進することが知られている.SHRにおいてET4投与初期
の一過性降圧反応が増強していたという報告はこ れまでにもあり14)15),ETによるこうした血管拡張物質放出がSHRで充進していることも考えら
れる16).さらに,ETはレニン分泌抑制作用4)や冠 動脈収縮作用1)17)および心拍出量低下17》18)を来すことが知られており,SHRにおいてETによる
昇圧反応の連々が認められなかったことにはこれ らの機序が関与しているのかも知れない1外因性に静脈内に1回投与されたETは肺循環
を通過するとその50%以上が除去され13),循環血 漿中から急激に消失する19)20)がETによる昇圧反 応は長時間持続するが知られている1)∼3).したがって,ETは主に局所で作用している可能性が
高く,外因性のETへの反応がETの生体内での
意義を必ずしも反映していないとも考えられる.本研究では,抗ET抗体投与により内因性ETを
ブロックすることによりSHRのMAP, RVRの
低下とCi。, Cp。hの上昇を得たが,これらはSHRの高血圧維持と腎機能調節へのETの関与を示唆
するものと考えられる.なお,ET投与によって尿量,尿中ナトリウム排
泄は減少するとされている18⑳が今回の実験では 増加傾向を示した.この点については,腎機能の 測定を正確に行うため輸液により体液量維持を計 り適正な尿量を保持したことによると推測され,ET本来の作用ではない可能性が大である.ET投
与によるFFへの影響については,これまでの報
告では一定の結論に達していない21)22)が,今回の 実験では変化しなかった. 結 論SHRにたいして抗ET抗体,またはETを投
与して血圧,腎機能に与える影響について検討し た. 一957一1)抗ET抗体はSHRのMAP, RVRを低下
させCi。, Cp。hを上昇させたが, WKYではそれら に変化を与えなかった. 12)SHRにおいてはRAPに影響を与えないよ
うな低濃度のETで.もCi。, Cp。hを低下させたが,WKYではこれらを変化させなかった.
3)これらの結果から,SHRはETに対して高
い感受性を有することおよびSHRの高血圧維持
にETが関与していることが示唆された.
稿を終わるにあたり,御懇切な御指導と御校閲.を賜 り. ワした.恩師杉野信博教授に深甚なる感謝の意を表 するとともに,直接御指導頂いた.東京女子医科大学第 2内科成瀬光栄.講師,同時4内科加藤貞春講師に深謝 いたします.また,.終始研究に御協力して頂いた第4 内科学教室の諸兄.諸姉,第4内科研究室,第2内科成 瀬研究室,実験動物中央施設,総合研究所共同利用実 験室の諸氏に感謝いたします. なお本論文の要旨は,第32回日本腎臓学会総会(浜 松,1989),第2回エンドセリン研究会(筑波,1990), 第13回国際高血圧学会(モントリオール,1990)にお いて発表した. 文 献1)Yanagisawa M, K:uruhara H, Kimura S et al: Anovel potent vasoconstrictor peptide produced by vascular endothelial cells. Nature 332:411−415, 1988
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