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登校拒否児における尿中Na排泄リズムについての検討

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Academic year: 2021

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原 著

〔即座、4魏籍62翻言〕

登校拒否児における尿中Na排泄リズムについての検討

東京女子医科大学第二病院 小児科(部長:草川三治教授) ミハラ ァキラ タムラ コ ウメヅ リヨウジ

三原 章・田村まり子・梅津 論旨

ムラタ ミツノリ クサカワ サンジ

村田 光範・草川 三治

(受付 昭和62年6月18日)

Circadian Rhythm of Uri皿ary Sodium Excretion

in C}皇ildren with School Refusa1

Akira MIHARA, Mariko TAMURA, Ryoji UMEZU,

Mit呂unor韮MURATA and Sanji KUSAKAWA

Department of Pediatrics(Director:Prof. Sanli KUSAKAWA) Tokyo Women’s Medical College Daini Hospital

Circadian rhythm of urinary sodium excretion were studied in forty two cases of school phobia, Nine healthy volunteers were served as a control group. Urinary volume and sodium

excretional rhythm were classi且ed into丘ve groups according to Maruta−Kusakawa’s method.

Type I in this classification is evaluated as norlnal pattern. Furthermore correlogram of urinary

volume and sodium excretional rhythm, that reveals autocorrelation accounted by computer

(Apple II), was drawn up for each case in order to eliminate abnormal pattern of type I group.

Twenty four among forty two patients with school phobia showed signi丘cantly abnormal

pattern of urinary sodium excretional rhythm compared with one of nine control cases(p〈0.05).

緒 言 生体リズムの研究のなかでも尿中塩類排泄リズ ムに日内変動のあることは古くから研究されてき た.ManchesterらD, Dean&McCanceら2)はい ずれも日中は水分排泄,Na, K, Cl排泄量が多く, 夜になると減少すると報告した.本邦では丸田, 草川ら3)4>が起立性調節障害の小児で尿中水分,塩 類排泄リズムのパターンに異常が生ずることを報 告した. 一方,草川は登校拒否児の尿中水分ならびに塩 類の排泄の概日リズムにずれあるいは乱れがある という推察をしてきたが,今回はそれを立証すべ く登校拒否児の尿中水分ならびに塩類の排泄の概 日リズムの異常について検討した. 対象および方法 対象は昭和59年10月から61年!1月までに東京女 子医科大学付属第2病院小児科に入院した登校拒 否を主訴とする患児42例である(男児14例,女児 28例,年齢8歳から17歳まで平均14.0±3.9歳). また,コントロールとした症例は同時期に入院し て検査した健康小児である(9例:男児6例,女 児3例,年齢10歳から18歳,平均13.4±5.5歳). 各症例は入院下の状態で自然排尿の度に尿量を 測定するとともにその一部を保存し,その検体中 のNa濃度を測定した.検体は3∼5日間連続で 採取できたものを当院中央検査部にて自動分析器 で測定した.また,尿の保存にあたっては蒸発を 防ぐように蓋をして室温で保存し24時間以内に測 定を行なった. 尿量および尿中Na排泄量のリズムは:丸田一草 川らの分類に従い1∼V型に分類した(図1). 第1型:午前8時より午後4時までの間に最高

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mE9/h. 10 表1 自己相関係数 1 II 5 10 5 K. 12 0 12 0 12 0→A @K. 12 0 12 0 12 0→A @Y. 12 0 12 0 12 0→A ’ K. KK.(♂> 6才 KS,(♀) 9才 γk= Σ(Xrm1)(Xi+k−m2) i=1 ml= ΣXi i=1

蕩高

10 111 5 10 IV 5 V 10 5 12 0 12 0 12 YK.(♂) 14才 KK.(♂) 5才 0一・AM K.O.(♂) 8才 (n−k) ΣXl i=k十1 12 0 12 0 12 0→AM 図1 丸田一草川の分類4) m2= (n−k) S1=(ΣXi)2 i=1 S2=(ΣXl)2 i=k十1 値があり,中でも正午前後のものが多く,一方午 前0時前後に最低がみられる24時間リズムをもっ ているもの. 第II型:24時間リズムをもちながらピークのず れがみられ,午後4時から午前8時までのあいだ に最高がみられるもの. 第III型:リズムはあるが周期が24時間ではな く,36時間とか48時間とか延長を示すもの. 第IV型:昼夜の排泄量の差が少なく,平坦とな り,リズムらしいものがみられないもの. 第V型:1日のうちにピークが何回もあり,リ ズムが短縮しているか,また,別の見方をすれば 乱律と言うこともできるもの. リズム検索としては各時系列のもつ周期性を解・ 析する方法として,系列の自己相関係数(autocor− relation)を求め,それによって尿中水分および Naの排泄量を解析した(表1).表1において自 己相関係数γ。は常に1である.そして,1に近い γkをもつk(>0)が,もとの時系列データの周期 とみなされる.%,箔,……,雑を図示したものを コレログラム(COrrelOgram)という. 各症例についてコンピューター(Apple II)を 用いて尿量および尿中Naの排泄量を図示すると ともにコレログラムを作成し,周;期とその時の自 己相関係数γkを求めた(図2).さらに,Halberg 1 0 1 DATA:V SAMPLING RATE山1 L) DATA、NA 112.4 21.4 123〔H〕 一且 SAMPL【NG RATE凸1 図2 コレ・グラム(症例:S.W.15歳男児,主訴:登 校拒否,評価:A群II型) ら5)の提唱に従いコントロール群において周期が 24±4時間のものを選びその時の自己相関係数 強の標準偏差値とm−2SDを求めた.登校拒否児

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群のリズム検索は同様にして求めた周期とその時 の自己相関係数γkから次のように分類した.

A群:周期が24±4時間以内に認められ自己

相関係数がコントロール群のm−2SD以上のも

の,すなわち正常群とする. B群:周期が24±4時間以内に認められるが自

己相関係数がコントロール群のm−2SD以下の

もの,すなわち境界群とする. C群:周期が24±4時間以内に認められないも の,すなおち異常群とする. さらに二つの判定方法を用いて評価して,A群 でありかつ1型であるもの(=A−1)を正常とした. 結 果 コントロール群9例のうち周期が24±4時間以 内のものは尿量については6例,Na排泄量につ いては8例であった.それぞれの自己相関係数の 標準偏差値は尿量=0.521,Na排泄量0.556であ り,m−2SDは尿量=0.301, Na排泄量=0.224で あった.この値に基づきコントロール群と登校拒 否児群をA,B, Cの3群に分類した結果は次のと 表2 コントロール群の尿リズム 症 例 尿 量 Na排泄量 H.K. A−1 A−1 K.K. A−1 A−1 K.S. A−1 A−1 T.N. A−1 (C−1) K.S. (C−1) A−1 S.0. A−1 A−1 J.H. (C−IV) A−1 K.0. A−1 A−1 1.Y. (C−D A−1 n 6 8 平均 0,521 0,556 m−2sd 0,301 0,224 A−A A−CまたはC−A C−C 5例 4例 ⑪例 尿量 Na 1 8 9 IV型 1 0 尿量 Na A−1 6 8 C−1 2 1 C−IV 1 0 おりであった(表2).

コントロール群:尿量はA群6例,C群3例で

あり,Na排泄量はA群8例, C群1例であった. また,尿量とNa排泄量の組み合わせばA−A群5 例,A−CまたはC−A群4例であった(表2). 登校拒否児群:42例中,尿量はA群17例,B群 9例,C群16例であり,Na排泄量はA群25例, B 群4例,C群13例であった.尿量とNa排泄量の組 み合わせではA−A群15例,C−C群11例,その他16 例であった(表3). 尿量がA群すなわち正常群はコントロール群, 登校拒否群の間に有意差を認めなかった.Na排 泄量:においても正常である特性には有意差を認め なかったが,登校拒否群では正常でない傾向を示 した(20%>p>10%).また,尿量,Na排泄量と もにA−A群である特性には有意差を認めなかっ た. また,:丸田一草川らの方法に従い分類した結果 は次のとおりであった. コントロール群:尿量は1型8例,IV型!例で あった.Na排泄量は9窮すべてが1型であった (表2). 登校拒否児群:尿量は1型20例,II型8例, III 表3 登校拒否児における尿リズム (症例数:42例) 尿 量 Na排泄量 A群 17 25 B群 9 4 C群 16 13 A−A A−C C−C その他 15例 6例 !1例 10例 尿 量 Na 1型 hI型 hII型 hV型 u型 20 W491 21 W381 尿 量 Na A−I `−II 13 T 玉8 U

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型4例,IV型9例, V型1例であった. Na排泄量 は1型21例,II型8例, III型3例, IV型8例, V 型1例であった(表3). 尿量が1型すなわち正常群はコントロール群, 登校拒否群の間に有意差を認めなかったが,登校

拒否群においては正常でな山通向を示した

(10%>p>5%).Na排泄量においても1型は有 意差を認めなかったが,正常ではない傾向を認め た(10%>p>5%). 次に自己相関係数と丸田一草川らの方法を用い A−1パターンを示したものを検索した.コント ロール群において尿量については6例,Na排泄 量については8例を占めたが,登校拒否児群にお いてA−1パターンを示したものは尿量で13例,Na 排潅量では18例であった.尿量には有意差が認め られなかったが(20%>p>ユ0%),Na排泄量には 有意の差が認められた(p〈5%). 考 察 生体リズムの研究のなかでも尿量について日内 変動があることは既に1924年Simpso喚6)が報告, さらに尿中塩類排泄リズムに日内変動のあること はManchesterら1>, Dean&McCanceら2>その他 古くからの報告がある.いずれも日中は水分,Na, K,Cl排泄量が多く,夜になると減少するとされ ている.本邦では古くは千谷7),末田8)はこのリズ ムの異常がそう欝病に認められることを発見し, 丸田一草川ら3>4)は小児期の起立性調節障害,周期 性嘔吐症,気管支喘息発作時に尿リズムのパター ンに異常が生ずることを報告した.また,近年で は濱田ら9)も健康人では特に摂取水分の制限を加 えないかぎり尿排泄の“circadian rhythln”が認め られることを報告している.一方,登校拒否児の 尿量,尿中塩類排泄量のリズムに関しては未だ報 告を認めなかったため,今回われわれは検討を行 なった. 今日まで小児期における尿量,尿中塩類排泄量 めリズムはコントロールの報告が少ないためどこ までがIE常域であるか明らかにはされていない. 今回の我々の研究ではコントロール症例数がn= 9と数はすくなかったが,従来からいわれてきたよ うに尿量とNa排泄量は24時間前後の概日リズム をもち排泄のピークが昼間にあるものが正常であ ると考えられた.この場合,:丸田一草川らの従来 からの方法は判断が主観的であるため,時系列の もつ周期性を解析するために自己相関係数を用い て24時間リズムをもつものを正しく選びだすので あれぽより正確度を増すものと考えた.すなわち, 丸田一草川の方法で正常(=1型)であっても自 己相関係数を用いた解析では異常群と判定された

ものが尿量,Na排泄量で9例中それぞれ2例お

よび1例存在した.これは登校拒否児群において も同様のことが言えた.即ち,1型のなかに異常 または境界と判断されたものは尿量:7例,Na 排泄量:3例であった.逆に自己相関係数から正 常と判断されたもののなかにはコントロール群に おいてはすべて1型であったが,登校拒否枢戸に おいては1型以外はII型であった(尿量:5例, Na排泄量:6例).このことは自己相関係数によ る判定法は周期性を客観的に判定できる反面,排 泄のピークを判定できないため本来ならぽ異常群 であるII型を正常と判定することになる.した がって,両者の判定方法を用いる必要があるとい える.

尿中K排泄リズムは尿量やNa排泄より確実

な概日リズムを反映するといわれている.

Growenlocklo)は睡眠中の安静臥位から起床後の 起立位への体位変換,歩行等の活動によりレニン ーアンギォテンシンーアルドステロン系を活性化 し,体内のNa貯留, K排泄を促進して,尿中Na/ K比を低下させることを示している.このことは

尿中K排泄リズムがNa排泄リズムより概日リ

ズムを反映しやすいことを示唆している.今後さ らに検討する必要があると考えている. 尿中水分,塩類の排泄機構には様々な要素が複 雑に関与することが考えられる.覚醒中の水分や 塩類の摂取,活動にともなう血行動態の変動,腎 血流量の変化,さらにはレニンーアンギオテンシ ンーアルドステロン系など腎臓に働く様々なホル モンの関与がある.したがって,尿リズムを単純 には説明できないが,帆足,小淵ら1D12)の「乳幼児 の排尿機構の発達」の研究では生後8週以後の乳 児で夜間睡眠中の排尿回数が次第に減少してい

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き,このことが水分摂取や視床下部中枢による排 尿の無意識的抑制によるものではなく,夜間にお ける腎臓での尿産生が減少するためであると推測 しており,乳児期より既に尿産生に概日リズムが あることを示唆するものと考えられる. また,浅見ら13)は小児期の尿中の塩類排泄濃度 (Na, K, Caなど)を尿中クレアチニン値で割っ て腎血流量を補正した指標で検討しているが,排 泄量そのものより日内変動がはっきりする可能性 が示唆されている. 今回の研究ではコントロール群を対象として, 登校拒否児群では尿量のリズムには異常が生ずる 傾向を認め,尿中Na排泄量のリズムには有意な 異常を生じていることを認めた.これは従来から の丸田一草川らの方法に自己相関係数で判定する 方法の両者を用いた場合に初めていえることであ るが,登校拒否児の尿中塩類の排泄の忌日リズム にずれあるいは乱れがあるという推察を立証でき たことと考えている. 今後の検討課題として,登校拒否児の示す尿リ ズムのパターンが症状の重症度,長期予後とどの ような関係がみられるか,コントロール症例を増 すことによりK,Ca排泄量或は尿中クレアチニ ン値で割った指標やさらには血中の値や腎血流量 を考慮した指標(例えば,excretional fraction) を用いた検討を行なうなど興味のあるところであ る. さらにリズムの異常そのものを考えるとき,正 常でも1日とか2日とか短期間は乱れてもすぐ戻 るのに対し,それが続き,時には正常になる日が あってもまたすぐ乱れるという,乱れの量的問題 があると思われる.また,著者は尿の排泄リズム について検討を行なったが,登校拒否児には他の リズム,・例えば,βエンドルフィンとか心拍数とか 皮膚電位変動などいろいろな乱れがあり,各臓器 の持つ固有のリズムの協調性の乱れというか生体 としてのリズムの乱れの質的な問題が多いにある と思われる.これらを総合して検討し,また治療 について検討することが今後の課題であろう. 文 献

1)Manchester CR:The diurnal rhythm in

water and mineral exchange. J CIin Invest 12:

995, 1933

2)Dean RFA, McCance RA:Phosphate clear−

ances in infants and adults. J Physiol 107: !82−186, 1948 3)草川三治,丸田圭子,大塚貞子:小児における24 時間リズムに関する考察.東女医大誌 36:683− 689, 1966 4)丸田圭子:起立性調節障害における尿中塩類排泄 リズムに関する研究.東女医大誌 39:480−493, 1969

5)Halberg F: Chronobiology, Ann Rev Physiol 31 :675−725, 1969

6)Simpson GE: Diurnal variations in the rate of urine excretion for two hour intervals;some associated factors, J Biol Chem 59:107−122,

1924 7)千谷七郎:そう欝病の病態学.精神日誌 60: 1164−1174, 1958 8)末田田鶴子:そう欝病における24時間リズムの変 動.精神経誌 62:1449−1485,1960 9)濱田吉通,松本 泰:尿排泄circadian rhythm の研究一各種水分摂取条件による検討一.日腎誌 28:1471−1479, 1986

10)Gowenlock AH, Millis JN, Thomas S:Acute postural changes in aldosteron and electrolyte excretion in man, J Physio1146:133−141,1959

11)小淵敏子,吉田弘道,帆市英一ほか:乳児の排尿 機構の発達(その1).小児の精神と神経 19: 83−88, 1979 12)帆足英一,小淵敏子,吉田弘道ほか:乳児の排尿 機構の発達(その2).小児の精神と神経 19: 163, 1979 13)浅見直,中野徳,堺 薫:健康小児の尿中 電解質および定時排泄率.小児科 27:929−933, 1986

参照

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