1. は じ め に 日本建築学会では,1975 年の建築工事標準仕様書 JASS 5 鉄筋コンクリート工事(以下,JASS 5 と称す) の改定において,従来の JASS 5 にあった指導書的な役 割を,新たに作成する指針に委ねることとした。「コン クリートの調合設計指針・同解説」は,このような背景 から 1976 年に制定された「コンクリートの調合設計・ 調合管理・品質検査指針案・同解説」を調合設計と品質 管理に分割し,調合設計の部分を見直して 1994 年に制 定されたものである。その後,1997 年に改定された JASS 5 の内容と整合させるため,1999 年に 1 回目の改 定がなされている。 今回改定した指針は,2009 年に改定された JASS 5 (第 13 版)の内容を取り込むとともに,将来的な性能規 定化に向けた調合設計者の自由度を広げた考え方を組み 込んだものとなっている。また,アンケート調査によっ て収集した全国のレディーミクストコンクリート工場の 配合計画書を整理し,単位水量や単位粗骨材かさ容積の 標準値などを,実態に近づけたものとしている。本稿で は,新しくなった「コンクリートの調合設計指針・同解 説」の概要について紹介する。 2. 建築に用いるコンクリートの調合 日本建築学会の調合設計法は,土木学会の配合設計法に 比べ,標準養生したコンクリートの材齢 28 日強度と,養 生中の温度の影響を考慮した構造体コンクリートの強度の 差である強度補正値を組み込んでいる点が異なっている。 土木用コンクリートでは,標準養生したコンクリート の材齢 28 日の圧縮強度を基準に,構造物中のコンクリー トの強度は,いずれはその強度に達するであろうと考え てきたのに対し,建築用コンクリートでは,部材断面寸 法が土木構造物に比べて小さく,養生中の温度の影響を 受け,湿潤養生打切り後の強度増進が期待できないと考 えてきた。これは,構造物中で発現しているコンクリー ト強度は,以前は現場水中養生した供試体の強度で,今 日では構造体から切り取ったコア供試体の材齢 91 日の 強度で表されると考えているためである。一方,調合強 度は,標準養生した供試体の圧縮強度をもとに定めるた め,構造体コンクリートが受ける外気温などの影響は, 補正値として組み込まれることになる。 このような建築用のコンクリートの調合強度の考え方 は,1957 年版の JASS 5 に示されたものが原形である。 1957 年版 JASS 5 の調合強度は,所要強度(現在でいう 設計基準強度)に,コンクリートの品質のばらつきを考 慮した補正値を加えたものとなっている。また,現在の 調合計算手法とは異なるが,外気温が下がるような時期 には,水セメント比を求めるときに用いるセメント強度 の補正によって,気温補正を行っている。 1957 年版の JASS 5 の改定から 50 年以上が経過し, 建築用のコンクリートの調合強度の算出方法は,上記の ような基本的な考え方に加え,耐久設計基準強度という 新しい考え方を組み込んだ形になっている。従来,構造 体コンクリートの耐久性能は水セメント比の上限値を設 定することなどで担保されてきたが,調合設計や品質管 理の簡略化を目指した結果,水セメント比の上限値を耐 久設計基準強度という圧縮強度の関数に置き換えるよう にしたのである。今回改定した指針は,これらの考え方 も踏襲しつつ,性能規定化に向けた合理的な調合設計法 について示したものとなっている。 解説
日本建築学会
「コンクリートの調合設計指針・同解説」の改定
桝田 佳寛
*1・鹿毛 忠継
*2・陣内 浩
*3 概 要 2015 年 2 月,日本建築学会は約 15 年ぶりに「コンクリートの調合設計指針・同解説」の改定を行った。改定 した指針は,2009 年に改定された JASS 5(第 13 版)の内容を取り込んだものとしている。また,将来的な性能規定化に 向け,構造体コンクリートの目標性能を重視した調合設計を行う指針としている。さらに,具体的な調合計算の章では, 調合計算手順の見直し,実際のレディーミクストコンクリート工場の配合に関するアンケート調査結果を組み込んだ単位 水量や単位粗骨材かさ容積の標準値の見直しなどを行っている。 キーワード: 調合設計,調合計算,性能規定,耐久性,環境配慮 *1 ますだ・よしひろ/宇都宮大学 名誉教授(名誉会員) *2 かげ・ただつぐ/国土技術政策総合研究所 建築品質研究官(正 会員) *3 じんない・ひろし/大成建設㈱技術センター建築技術研究所 主 席研究員(正会員)3. 改定した指針の構成 改定した指針の構成を表-1 に示す。本指針は,1 章か ら 8 章までの本文と解説,ならびに 5 つの付録で構成さ れている。各章の流れは旧版のものを踏襲し,図-1 の ように構成されている。 大きな流れとしては,まず 1 章の「総則」で適用範囲 などを確認し,2 章の「調合設計で目標とする性能」に 進む。2 章では,調合設計で何を目標とする性能にする のかを決める。例えば,乾燥収縮に対する抵抗性を目標 に入れる場合は,乾燥収縮率としてどのような性能(例 えば 8×10-4以下)とするのかを設定する。今回の指針 では,それを実現するために単位水量の上限値をいくつ にするというような基本条件は 4 章で決めることにな る。目標とする性能を決めたら,3 章で材料を選定する。 旧版では材料の選定は 4 章であったが,使用する材料が 決まっていない状態で様々な基本条件を定めるのは難し いと考え,材料の選定は 3 章で行うこととした。 材料の選定までを終えたら,4 章の「計画調合を定め るための基本条件」に進む。4 章の計画調合を定めるた めの基本条件とは,前述したように,単位水量の上限値 のようなものである。単位水量の上限値は,コンクリー トの性能として求められているものではなく,本来求め られている乾燥収縮やブリーディングの抑制対策などを 調合計算に組み込むための条件である。4 章では,2 章 で設定した目標とする性能と 3 章で選定した使用材料な どから,このような調合計算で考慮する基本条件を定め る章となっている。 ここまでの条件が整ったら,5 章の「調合計算の方法」 に進む。5 章では,具体的な調合強度の算出や各材料の 単位量などを設定し,計画調合の案を作る。作られた計 画調合の案は,6 章の「算出された計画調合の検討」に おいて,2 章(一部,4 章)で設定した目標とする性能 を満たすのかを既往の推定式などで検討する。満たせな い場合は,調合の変更,材料の変更などを行うことにな るが,それでも性能を満たせない場合は,2 章で設定し た目標とする性能を再検討することになる。 6 章までを達成できたら,7 章の「試し練り調合の調 整および計画調合の決定」に進む。ここでの試し練りと
Revision of AIJ “Recommendation for Practice of Mix Design of Concrete”
By Y. Masuda, T. Kage and H. Jinnai
Concrete Journal, Vol.53, No.6, pp.521~526, Jun. 2015
Synopsis The “Recommendation for Practice of Mix design of Concrete” published by the Architectural Institute of
Japan was revised in February 2015 after almost fifteen years. This revision was carried out to achieve consistency with the revision of JASS 5 (2009). This recommendation also covers mix design methods that take into particular conside-ration performance specifications. This paper gives an overview of this latest revision of the “Recommendation for Practice of Mix design of Concrete”.
Keywords: mix design, calculation for mix proportion, performance specification, durability, environmentally conscious
表-1 コンクリートの調合設計指針の目次 1 章 総則 2 章 調合設計で目標とする性能 3 章 材料の選定 4 章 計画調合を定めるための基本条件 5 章 調合計算の方法 6 章 算出された計画調合の検討 7 章 試し練り調合の調整および計画調合の決定 8 章 計画調合の表し方および現場調合の定め方 付録 1 調合計算例 付録 2 参考調合表 付録 3 各国の調合設計方法 付録 4 アンケート調査結果 付録 5 所要の流動性と材料分離抵抗性を合理的に考慮できる調合設計の手順(調合設計指針改定小委員会試案) 開 始 目標とする性能項目 および目標値の設定 調合計算 調合の変更 材料の変更 試し練り調合の算出 試し練りの実施 計画調合の決定 現場調合の決定 8 章 7 章 5 章 4 章 3 章 2 章 Yes. Yes. Yes. Yes. No. Yes. 材料の選定 計画調合を定めるため の基本条件の設定 水セメント比 単位水量などの制限を 満足しているか? 塩化物量・ アルカリ量・環境配慮 などによる制限値を満足 しているか? 調合条件 および目標値を満足 しているか? 終 了 No. No. No. 6 章 図-1 調合設計の手順と各章の関係
は,調合済のコンクリートを確認するために設計監理者 などが工場で立ち会って行うものではなく,6 章までで 机上検討したコンクリートを実際に練り混ぜ,性状など を確認する行為を示している。実際にコンクリートを練 り混ぜ,要求を満たすものができたら,計画調合を決定 する。最後の 8 章では,計画調合の表し方や,現場調合 の定め方について示している。 4. 各章の本文と解説の内容 4.1 「1 章 総則」 1 章の改定ポイントは,用語の見直しと,調合設計の 手順の見直しとなっている。指針改定作業の初期段階で は,コンクリートの調合設計とはどのような行為なのか, その手順はどうあるべきかの議論に多くの時間を使うこ ととなった。様々な意見があったが,議論の結果,調合 設計という用語は,コンクリートの目標性能を設定する ことから現場調合を作ることまでの一連の行為を意味す る広義なものと,施工性と圧縮強度などを指標として各 材料の使用割合や使用量を算出する狭義なものの 2 種類 の使われ方があると結論し,これを明文化した。また, 狭義な意味で使われるときの調合設計は,調合計算とい う用語と同義とした(表-2 参照)。 本指針で示す調合設計の手順は,前述した広義の調合 設計を網羅するものとした。細かい表現などは異なる が,調合設計の手順の流れは旧版の考え方を踏襲するも のとなっている。ここでの議論で時間を割いたのは,2 章で扱う目標とする性能と 4 章で扱う基本条件の抽出で ある。また,抽出した項目を 2 章と 4 章のどちらに振り 分けるべきかについても,議論となるケースがあった。 例えば,旧版で目標とする性能としていた計画調合上の 塩化物イオン量は,鉄筋を腐食させる量で規定している のではないことが議論となり,結論として調合計画を定 めるための基本条件の項目の一つに変更した。 4.2 「2 章 調合設計で目標とする性能」 2 章は,コンクリートの目標とする性能を決める章で ある。2 章で示した内容を整理して表-3 に示す。旧版で は,2 章で決める性能として「構造安全性にかかわる性 能項目」,「耐久性にかかわる性能項目」,「使用性にかか わる性能項目」,「施工性にかかわる性能項目」の 4 項目 を大項目として掲げていた。今回の改定では,上記 4 項 目の内容を再考するとともに,超高強度コンクリートな どで生じる火災時の爆裂問題,環境配慮の 2 つの項目を 新設することとした。具体的には,旧版を踏襲した「構 造設計にかかわる性能項目」,「耐久設計にかかわる性能 項目」,「施工にかかわる性能項目」,「使用にかかわる性 能項目」に,「火災時の安定性にかかわる性能項目」,「環 境配慮にかかわる性能項目」を加えた 6 項目とした。 6 つの大項目の中には,表-3 に示すコンクリートに期 待する各種性能項目を整理した。性能規定化という将来 像に向かうとすれば,調合設計は表-3 に示す各性能項 目についての目標を定め,それらを満足するように調合 を作り込むのが理想である。前述した乾燥収縮を例にす れば,ひび割れ発生などを抑制するために構造体コンク リートに生じるひずみの上限値を定め,それを達成でき る乾燥収縮率となる使用するコンクリートを調合すれば よいことになる。このように,今回改定した 2 章では, 本来求めている目標とする性能に対し,構造体コンク リートと使用するコンクリートのそれぞれについて目標 値を定めるように規定している。 ここで議論となるのが,構造体コンクリートと使用す るコンクリートの各種性能は同じと見なしてよいかとい う問題である。建築分野では,古くから構造体コンクリー トと使用するコンクリートの圧縮強度は同じではないと いう考え方を基本としてきたが,2009 年版の JASS 5 を 改定したときに,少なくとも構造体コンクリートと使用 するコンクリートの中性化速度係数は同じではないとい う考え方を明確にすることとした。図-2 に示すように, 構造体コンクリートと使用するコンクリートの間には強 度差がある。これは,両コンクリートの微細組織などの 違いを意味しており,両コンクリートの中性化速度係数 にも差(図-2 ではΔA)があることを示唆している。簡 単に言えば,20℃水中養生を行った使用するコンクリー 表-2 用 語 の 例 調合設計 広義の調合設計とは,鉄筋コンクリート造の要求性能に対して,設 定した使用するコンクリートの目標性能の設定,計画調合を定める ための基本条件の決定,材料の選定,調合計画および算出された計 画調合の検討,試し練りと調合の調整,計画調合の決定,現場調合 の決定の一連の行為。また,狭義の調合設計とは,計画調合を定め るための基本条件の決定,材料の選定がなされた後に計画調合を算 出することであり,後述する「調合計算」のことをいう。 調合計算 使用するコンクリートの目標性能を達成するための計画調合の計画 手順,ならびに計画調合を定めるための条件の決定,材料の選定が なされた後に計画調合を算出することをいい,狭義の調合設計であ る。なお,JIS A 0203(コンクリート用語)において,調合とは 「コンクリートをつくるときの各材料の使用割合又は使用量」と規 定されており,具体的にはこれらを算出することをいう。 表-3 調合設計で目標とする性能項目 性能項目 各性能項目の内容 (改定版) 旧 版 改定版 構造安全性 構造設計 圧縮強度,ヤング係数,気乾単位容積質量 耐久性 耐久設計 中性化に対する抵抗性,塩化物イオンの浸透 に対する抵抗性,乾燥収縮に対する抵抗性, 凍結融解作用に対する抵抗性,水和熱による ひび割れを抑制する性能,アルカリ骨材反応 を抑制する性能 施工性 施 工 ワーカビリティー,仕上げ可能時間,施工上要求される強度発現性 使用性 使 用 水密性,遮蔽性,断熱性・蓄熱性,クリープ 記載なし 火災時の 安定性 火災時の爆裂に対する抵抗性 記載なし 環境配慮 製造時の省資源性,省エネルギー性,環境負 荷物質低減性,長寿命性
トの圧縮強度よりも構造体コンクリートの圧縮強度が低 くなるとすれば,20℃水中養生を行った供試体で求めた中 性化速度よりも,構造体コンクリートの中性化速度は速 くなるということである。このような構造体コンクリー トと使用するコンクリートの各種性能の違いは,現在の 技術資料の整備の現状では説明しきれるものではない。 しかしながら,将来的な性能規定化に向けた指針とし て,今回の改定では「耐久設計にかかわる性能項目」を 中心に,上記のような構造体コンクリートと使用するコ ンクリートの性能の差を組み込むこととした。また図-3 に中性化に対する抵抗性の例を示すように,構造体コン クリートと使用するコンクリートの性能の違いが算出で きないような場合については,どのように検討を進めれ ばよいのかを解説に示した。なお,現行の JASS 5 との 整合なども考慮し,4 章以降では耐久設計基準強度を用 いることになるが,本指針ではここまでの目標性能の検 討を満足するように,調合設計者が耐久設計基準強度を 設定することとしている。 また,6 つの大項目の中に追加した「環境配慮にかか わる性能項目」では,「省資源性」,「省エネルギー性」, 「環境負荷物質の低減性」,「長寿命性」の 4 つの目標値 を決めることができるようにした。例えば,再生骨材コ ンクリートのようなものを推進する場合には,「省資源 性」の項目で再生材料の利用率などを決めることなどが でき,低炭素を意識したコンクリートを推進する場合は, 「環境負荷物質の低減性」の項目でコンクリートの CO2 排出量の上限値を決めることなどができる。現状では, 環境配慮を性能として取り込む形の調合設計は未成熟で あるが,日本建築学会の指針として一つの指標を示すこ 構造体コンクリートの 所要の中性化速度係数 As 標準養生供試体と 構造体コンクリートとの 中性化に関する品質の差 標準養生供試体と 構造体コンクリートとの 圧縮強度の差 標準養生供試体によ る中性化速度係数 As+ΔA 標準養生供試体の 材齢 28 日圧縮強度 Fd+S 構造体コンクリートの 耐久設計基準強度 Fd ΔA(<0) S 値 (解 3.1)式 図-2 圧縮強度と中性化速度係数の関係1) 計画供用期間 t でかぶり厚さ c まで 中性化が到達する中性化速度係数 As,reqを算定 中性化速度係数 As,reqに対する 水セメント比または水結合材比を算定 水セメント比または水結合材比に基 づく耐久設計基準強度 Fd,reqを算定 (ΔA が算定不可能な場合) 計画調合による標準養生供試体の 材齢 28 日圧縮強度 Fd+S を算定 構造体コンクリートと標準養生供 試体との圧縮強度の差 S を算定 耐久設計基準強度 Fdを算定 Fd≧Fd,req 計画調合の見直し 計画調合どおりで可 YES NO 計画調合による標準養生供試体 の材齢 28 日圧縮強度 f に基づく 中性化速度係数 As+ΔA を算定 計画供用期間 t でかぶり厚さ c まで 中性化が到達する中性化速度係数 As,reqを算定 試験または信頼できる資料 によって ΔA を算定 中性化速度係数 Asを算定 計画調合の見直し 計画調合どおりで可 As,req≧As (ΔA が算定可能な場合) YES NO 図-3 中性化に対する抵抗性に関する検討フロー 表-4 各種混和材の環境配慮の分類 分 類 対 象 効 果 省資源 省エネルギー 環境負荷物質低減 高炉スラグ微粉末 フライアッシュ 単位セメント量の低減 製造エネルギーの節減 CO2排出量低減 長寿命 高炉スラグ微粉末シリカフューム 耐海水性 表-5 品質基準強度,調合管理強度および調合強度 品質基準強度 品質基準強度は,設計基準強度と耐久設計基準強度から(4.1)式に よって定める。 Fq=max(Fc,Fd) (4.1) ここに, Fq:品質基準強度(N/mm2) Fc:設計基準強度(N/mm2) Fd:耐久設計基準強度(N/mm2) max(*)は,括弧内の大きい方の値の意味である。 調合管理強度 調合管理強度は,品質基準強度と構造体強度補正値から(4.2)およ び(4.3)式を満足するように定める。 Fm=Fq+mSn (4.2) Fm≧Fwork+Swork (4.3) ここに, Fm:調合管理強度(N/mm2) mSn:標準養生した供試体の材齢 m 日における圧縮強度と 構造体コンクリートの材齢 n 日における圧縮強度の 差による構造体強度補正値(N/mm2)。ただし, mSn は 0 以上の値とする。 Fwork:施工上要求される材齢における構造体コンクリートの 圧縮強度(N/mm2) Swork:標準養生した供試体の調合強度を定めるための基準と する材齢における圧縮強度と施工上要求される材齢に おける構造体コンクリートの圧縮強度との差(N/mm2) 調合強度 調合強度は,調合管理強度および施工上要求される強度発現から (4.4)および(4.5)式を満足するように定める。 F≧Fm+k1σ (4.4) F≧αFm+k2σ (4.5) ここに, F:調合強度(N/mm2) k1:強度試験値が調合管理強度を下回る確率に対する正規 偏差で,通常の場合は,標準として 1.73 とし,高強 度コンクリートの場合は 2.0 とする。 k2:強度試験値が調合管理強度に対して最小の許容される強 度を下回る確率に対する正規偏差で 3.0 以上とする。 α:調合管理強度に対する最小の許容される強度の比で, 普通コンクリートの場合は 0.85 を標準とし,高強度 コンクリートの場合は 0.9 を標準とする。 σ:使用するコンクリートの圧縮強度の標準偏差で,実績 をもとに定める。実績がない場合は,普通コンクリー トで 2.5 N/mm2,高強度コンクリートで 0.1 F mを標 準とする。
とができたと考えている。 4.3 「3 章 材料の選定」 3 章は 2 章で設定した目標とする性能に応じて材料選 定を行う章である。環境に配慮したコンクリートを組み 込んだことで,材料選定は,より重要度を増した。長寿 命化を目指す場合に理想的となる材料と,省資源性を目 指す場合に理想的となる材料は相反することもあり,こ こで選定された材料によって,4 章で行う基本条件の設 定や調合なども変わってくることになる。 例えば,中性化抵抗性を重視する場合には混和材を含 まないポルトランドセメント単体を利用したほうが有利 になるが,表-4 に示すような省資源や環境負荷物質低 減などを重視する場合には高炉スラグ微粉末やフライ アッシュのような混和材を利用したほうが有利になる。 4.4 「4 章 計画調合を定めるための基本条件」 4 章では,5 章「調合計算の方法」で具体的な調合計 算を行う前に,単位水量の上限値などの基本条件を定め ることとしている。前述したように,4 章で設定する項 目は,計画調合を定めるための基本条件とすべき項目を 再考して規定している。 4 章では調合計算を行う基本条件として品質基準強度, 調合管理強度および調合強度を求めることになる。表-5 に示すように,各式は現行版の JASS 5 との整合を考慮 しながら決めているが,(4.3)式だけは JASS 5 にない 考え方を示している。(4.3)式は,実際の工事などで, 早期に構造体コンクリート強度が必要となるケースに対 応した式となっている。例えば,1 階床のコンクリート を打込み,1 週間後にはその床で移動式クレーンが作業 をするようなケースである。実務では,作業時の荷重な どから必要強度を算定し,必要に応じて打ち込むレ ディーミクストコンクリートの呼び強度を少し高くして 発注するようなこともある。これを,あらかじめ調合設 計に組み込んでおくとすれば,施工上要求される材齢に おける構造体コンクリートの圧縮強度(Fwork)をもとに, 補正値(Swork)を使って調合管理強度を割り増しておく ことになる。(4.3)式は,実際の実務で行われているよ うなことを,調合設計に反映させた式となっている。 また,スランプや空気量といったフレッシュコンク リートの目標値を定めるにあたっては,その基準となる 時を練上がり時(出荷時),荷卸し時,打込み時(筒先) などのどの段階を基準とするのかを再検討した。レ ディーミクストコンクリートでの施工を考えると,フ レッシュコンクリートの性状は,図-4 のように時々刻々 と変化していく。本来は,打込み時に締固め性能などを 満足したコンクリートが必要となるのであるが,この段 階のコンクリートを調合計算の基準として考えるのは難 しい。そこで,旧版同様,荷卸し時または打込み時に所 要の目標値が得られるように,練上がり時のフレッシュ コンクリートの性状を定める形とした。 4.5 「5 章 調合計算の方法」 5 章では,具体的な調合計算を行い,計画調合の案を 作成することになる。5 章の改定にあたっては,図-5 に 示す調合計算の手順の見直し,実際のレディーミクスト コンクリート工場の配合に関するアンケート調査結果を 組み込んだ単位水量や単位粗骨材かさ容積の標準値の見 直しなどを行った。 実際のレディーミクストコンクリート工場が設定して いる単位水量については,全国 10 地区の代表的な工場 の単位水量を調査したところ,図-6 のような結果が得 られた。日本建築学会では,約 15 年前にも同様の調査 を行っているが,今回の調査結果では,15 年前に比べ て平均的な単位水量の設定値が 3 kg/m3程度減少してい るという結果が得られた。そこで,調合計算で標準的な スランプ 21 cm (工場での出荷時) (現場での荷卸し時)スランプ 18 cm (打込み時:筒先)スランプ 16.5 cm トラックアジテータ での運搬 コンクリートポンプでの運搬 打込み締固めに 適した性能とする。 筒先での性能変化を考慮して 荷卸し時の管理値としての値 を設計図書に示す。 現場到着までの性能変化を考慮 して,現場における荷卸し時の 管理値を満たすように調合する。 図-4 練上がり時(出荷時),荷卸し時,打込み時(筒先)でのスランプの変化 調合強度 細骨材の種類 実積率 単位粗骨材かさ容積 単位粗骨材量 単位細骨材量 混和材の使用量 単 位 水 量 化学混和剤の種類・使用量 水セメント比または水結合材比 単位セメント量または単位結合材量 セメントまたは 結合材の種類 単位水量の最大値 空 気 量 スランプまたは スランプフロー 水セメント比または 水結合材比の最大値 図-5 調合計算の手順
値として与える単位水量の標準値を,3 kg/m3小さくす ることとした。同様に,単位粗骨材かさ容積のかさ容積 も,旧版の標準値よりも 0.02 m3/m3小さくするほうが 実務に近づくと判断し,標準値の修正を行った。 4.6 「6 章 算出された計画調合の検討」 6 章は,算出された計画調合の案をもとに,作ろうと しているコンクリートが 2 章(一部,4 章)で目標とし た性能を満たせるのかを,推定式などを用いて机上検討 する章である。検討する項目は,「ヤング係数」,「単位 容積質量」,「塩化物イオン量」,「乾燥収縮率」,「断熱温 度上昇量」,「アルカリ総量」,「クリープ係数」,「再生材 料の使用量」,「エネルギーの削減量」,「CO2排出量の削 減量」の 10 項目とし,日本建築学会の他の指針などで 示されている各種推定式などと整合するように改定し た。ただし,環境配慮を目指した「再生材料の使用量」, 「エネルギーの削減量」,「CO2排出量の削減量」の検討 方法については,日本建築学会の他の指針などでは扱わ れていないため,本指針でそれぞれの検討例を示すこと とした。 4.7 「7 章 試し練り調合の調整および計画調合の 決定」 7 章は,6 章までの検討ですべての要求を満たす計画 調合の案ができた後に,実際に練り混ぜてみるという章 である。指針として書くべきことは少ないが,実際には 練混ぜてわかることも多く,様々な微調整を行いながら 計画調合を決定していくことになる。 4.8 「8 章 計画調合の表し方および現場調合の定 め方」 8 章は,7 章で決定した計画調合を表の形で示す章で ある。実務では,レディーミクストコンクリートが配合 計画書として各工事現場に提示してくれる配合表と同じ 位置づけのものを作成することになる。また,8 章では 現場調合の決定までを行うこととしている。現場調合と は,骨材の表面水なども考慮した各材料の計量値などを 示したもので,実務ではレディーミクストコンクリート を製造するときにオペレータが計量している値と同じ位 置づけのものを示すことになる。 5. お わ り に 今回改定した調合設計指針は,将来的な性能規定化を 見据えながら,可能な範囲で内容を再考したものとなっ ている。その一方で,将来像のイメージにあわせて指針 の詳細を明文化してみると,構造体コンクリートと使用 するコンクリートの各種性能の関係など,技術的資料の 不足している部分も多くみられた。研究の発展にも期待 しつつ,今後も本指針の利用者の皆様と調合設計の合理 化を考えていきたい。 小委員会の構成 主 査 桝田佳寛 幹 事 鹿毛忠継 陣内 浩 委 員 伊藤智章 太田達見 小泉信一 小島正朗 酒井正樹 佐藤幸惠 鈴木澄江 土屋直子 寺西浩司 道正泰弘 西 祐宜 宮野和樹 渡邉悟士 協力委員 松沢友弘 参 考 文 献 1) 日本建築学会:建築工事標準仕様書 JASS 5 鉄筋コンクリート工 事,p.175,2009 北海道 東北 関東 1 関東 2 北陸 東海 近畿 中国 四国 九州 167 179 183 180 172 176 183 185 178 185 平均値 最大値 最小値 200 195 190 185 180 175 170 165 160 155 単位水量(kg/m 3) 図-6 地方別単位水量のアンケート調査結果 (スランプ 18 cm,AE 減水剤使用)