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はじめに
本書は大学3年生から大学院修士課程までの範囲の学生を対象とした教科書 である.取り扱う対象を代数曲線に限って,代数幾何学で対象をどのように取 り扱うかを解説することを目的としている. 3年生の代数学の大抵の講義では,単項イデアル整域や素元分解環などを学 習して,体k上の1変数多項式環k[x]が単項イデアル整域であり,n変数の多 項式環k[x1, x2, . . . , xn]が素元分解環であることを学習する.もちろん,他の 主題に力点が置かれて,これらの事柄に触れずに講義が終わってしまう場合も ある.本書は,このように一様でない学習状況から出発する. 体kが標数0の代数的閉体であるとき,2変数多項式環k[x, y]の単項イデア ル(f (x, y))は,fが既約多項式ならば,アフィン平面A2上の既約な平面曲線 C = V (f )と対応している.すなわち,剰余環R = k[x, y]/(f )の極大イデア ルとCのk-有理点が1対1に対応している.さらに,Rの元はC上の正則関 数と考えられる.曲線Cがその上の点P (a, b)で特異点になるか,または,非 特異点になるかは,曲線Cの定義方程式f (x, y) = 0を変数x− aとy− bに 関してテーラー展開して判別することができる. 環Rは整域だからその商体Q(R)が考えられる.この商体は曲線C上の有 理関数のなす体(関数体)と考えられるが,重要なことは,Cの点Pで正則 な有理関数(すなわち,Pで定義される有理関数)の全体が局所環OPをな すことである.とくに,Pが非特異点の場合には,OPはk(C)の体kを含む 離散付値環(DVR)になっている.例えば,Cがすべての点で非特異であると きは,Cの相異なる点はk(C)の相異なる離散付値環に対応している.それで は,k(C)のような体k上に超越次数1の有限生成拡大体(1変数代数関数体とcurve2:<2016/7/22>(17:50) :
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ii はじめに いう)Kが与えられたならば,Kの離散付値環と曲線の点が1対1に対応する ような代数曲線は存在するのだろうか.これは古典的な問題であり,代数曲線 論に対する一つのアプローチであった.答えは,非特異射影代数曲線である. 本書では,非特異射影代数曲線を射影平面曲線の特異点解消として導入する. まず,射影平面曲線を定義し,アフィン平面上の代数曲線C = V (f )は射影代数 曲線の有限個の点の補集合になっていることを示す.1変数代数関数体Kは1 変数純超越拡大体k(x)の単純拡大体になっている.したがって,K = k(x, y) と2つの元でk上生成されている.元yのk(x)上の最小多項式から,原始的既 約多項式f (x, y)が得られて,xとyの間の関係はf (x, y) = 0で与えられる. C = V (f )とすると,K = k(C)となる.すなわち,Kはアフィン平面曲線C の関数体になっている.この多項式f (x, y)を斉次多項式F (X0, X1, X2)に直 して,F (X0, X1, X2) = 0によって射影平面曲線C = V+(F )を定義する.こ の曲線の特異点を解消すると,非特異射影代数曲線Ceが得られて,K = k( eC) となる.さらに,Kの離散付値環全体とCeの点全体が1対1に対応する. このような対応が得られると,非特異射影代数曲線上の因子や,有効因子の 線形系などを導入することができる.このような取り扱いを,まず,非特異射 影平面曲線に対して議論する.一般の場合はそれから類推することになる.射 影平面曲線に関するベズーの定理は射影平面上の交点理論の一つの結論であ るが,完全な証明は与えていない.2つの平面曲線の交点における局所交叉数 (重複度)は環論的に正確に述べてあるが,それらの和を取り扱うときはコホ モロジー論などに依ったほうが見やすい.それらの高等技術を使わずに無理を して証明するよりも,厳密な証明は省略して,応用を述べる方がよいと判断し た.同じことは,非特異射影代数曲線上のリーマン・ロッホの定理についても 言える. これらの重要な定理の証明を省略したことは,本書の限界をあらわしている とも言える.しかし,これらの重要定理を仮定しても,それらを使った幾何は 十分に興味深いものである.代数幾何学をさらに勉強する動機付けになると期 待している.いくつかの応用として,線形系による非特異射影代数曲線の射影 空間への埋め込み,楕円曲線,超楕円曲線,フェルマー曲線などを取り扱った. 本書は,関西学院大学理工学研究科の大学院生向けの講義「代数幾何学特
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kbdbook7<2016/04/25, v0.7 keibundou.corp. n.miyakawa>: upLaTeX2e<2011/05/07u00>+0 (based on LaTeX2e<2011/06/27>+0):
はじめに iii 論」の数年間にわたる講義の内容をまとめたものである.学部の代数学のいわ ば抽象的な内容のすぐ傍に,具体的で興味深い問題が動機付けとして潜んでい ることに気付いてほしい.その意味で,本書は講義の教科書としての役割と同 時に,進んだ学生が自習書として読めるように工夫した. 2016年3月 著者記す