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新興国市場における需要探索型イノベーションの戦略的優位性に関する研究 : 韓国企業の先進的取組事例を中心に

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2018 年 3 月 目次 1.はじめに  1-1 研究背景と問題意識  1-2 研究目的と研究方法 2.マーケティング力とイノベーション力のバラ ンス戦略の重要性 3.需要探索型イノベーションに関する先行研究 4.新興国市場における需要探索型イノベーショ ンの戦略的優位性に関する韓国企業の事例検 証  4-1 LG 電子の東南アジア市場向けの「蚊を退 治するエアコン & テレビ」  4-2 オリオン製菓のインド市場向けの「植物 性のチョコパイ」  4-3 サムスン電子のインド市場向けの「太陽 電池で充電できる携帯電話」 5.おわりに  5-1 総括  5-2 今後の課題 キーワード 新興国市場,現地化圧力,マーケティング力(市 場づくり競争力),イノベーション力(ものづく り競争力),需要探索型イノベーション(マーケ ティング・ドリブン・イノベーション),グロー バル企業

1.はじめに

1-1 研究背景と問題意識  顧客のニーズは,いかなる時代においても何ら かの形で存在する。また,そのニーズは常に変化 しつつ,多様化している。企業は,このニーズに

新興国市場における需要探索型イノベーションの

戦略的優位性に関する研究

   韓国企業の先進的取組事例を中心に   

徐 誠敏

* 

李 美善

**

A Study of Strategic Advantage of Marketing-Driven Innovation in Emerging Markets

   Focusing on Advanced Practices in Korean Companies   

SEO, Sung Min

LEE, Miseon

論文

   

*名古屋経済大学経営学部准教授 **名古屋経済大学経営学部准教授

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市場ならではの制約条件を克服し,それに対して 柔軟かつ迅速に対応できるような企業経営の現地 化能力を高めていかなければならない(全・韓, 1997;Ghemawat,2007; 徐,2014; 徐・ 李, 2015)。すなわち,新興国市場開拓・拡大を実現 するためには,市場価値(Market Value)に対す る最終意思決定権を持つ顧客側の視点を優先させ る「マーケットイン(Market-in)」的な考え方が 必要不可欠なのである。とりわけ,後発企業の場 合においてはなおさらである。  サムスン電子や LG 電子などといった韓国を代 表するグローバル企業は後発企業として 1997 年 以降から 2018 年にかけて,不確実性が高い新興 国市場の変化に対して「マーケットイン」的な考 え方に基づき柔軟かつ迅速に対応することで,ダ イナミックな成長を果たすことができた。その結 果,両社はその市場支配力を高めるだけでなく, グローバル企業としてのブランド価値をも向上さ せることができた6。両社の企業競争力の最も大 きな原動力の 1 つとしては,「需要探索型イノ ベーション(マーケティング・ドリブン・イノ ベーション;Marketing-Driven Innovation)」が挙 げられる。すなわち,長期的な視点から市場の潜 在的なニーズや時代の変化を先取りし,それを満 たすための革新的な製品・サービスを具体的な形 として提供することで,市場価値を生み出す革新 的な取り組みであるといえる。さらに言えば,新 興国市場の特性に応じるための両社が併せ持つ, 「マーケティング力」と「イノベーション力」の バランス戦略なのである。 1-2 研究目的と研究方法  本稿では,激変する新興国市場ならではの厳し い制約条件を満たすための革新的な製品・サービ スをつくるのに必要不可欠な「需要探索型イノ ベーション」の戦略的優位性を明らかにすること を目指す。したがって,本稿では,「需要探索型 イノベーション」に関する先行研究の考察を踏ま え,韓国のグローバル企業の成功事例をグローバ ルな視点に立ったマーケティングとさまざまなイ ノベーションの視点から深く考察することで,そ の目的を明らかにしておきたい。 応え続けることにより,顧客を創造・維持・拡大 することができる。これこそがまさに,企業成 長1の本質なのである。経営学の世界的権威であ る Drucker(1954)は,今から 64 年前,企業成 長の本質について次のように述べている。「企業 の目的は,顧客を創造することである。その目的 を実現するために,企業に求められる基本的機能 には,マーケティングとイノベーションが必要不 可欠である」2。すなわち,企業の究極の目的は, 常に変化する市場のニーズに柔軟かつ迅速に応え 続けることで,ダイナミックな成長を果たすこと なのである。それゆえ,企業は,顧客の視点に 立って市場の特性を知り,新たな市場をつくり出 す「マーケティング力=市場をつくる競争力」を 高めなければならない。それと同時に,顧客に驚 きと感動を与え新たな価値と満足を生み出す「イ ノベーション力=ものをつくる競争力」をも向上 させなければならない。したがって,企業が顧客 を創造・維持・拡大していくうえで,「マーケ ティング力=市場をつくる競争力」と「イノベー ション力=ものをつくる競争力」の相関関係はき わめて高いといえる3  企業の目的は,経済成長の鈍化とともに飽和状 態にある先進国市場だけでなく,不確実性の高い 新興国市場4でも依然として重要であることに変 わりはない。とりわけ,新興国市場の場合には, 先進国市場に比べてその環境は我々の想像を絶す るものがある5。すなわち,その環境は,日欧米 先進国の言語・文化・価値観・経済状況・制度な どとはまったく異なる,新興国市場ならではの文 化的・政治的・制度的・地理的・経済的な差異が 存在している。それゆえ,先進国企業は新興国市 場へ進出する際に,必ず「現地化圧力(Localiza-tion Pressure = Cross-border differences)」 に 直 面 することになる。  グローバルな事業展開を行う企業は,上記の新 興国市場の特殊性を安易に捉え,先進国市場で成 功した製品やビジネス・モデルをそのまま持ち込 んでしまうと,新興国市場の開拓と拡大はきわめ て困難なものとなる。すなわち,ものをつくり販 売する供給者側の理論を優先させる「プロダクト アウト(Product-out)」的な考え方では,新興国 市場に受け入れられる製品をつくることは難し い。これを可能にするためには,上述した新興国

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ることができるからである。  また,企業は市場から導き出された情報を実践 的知識へと転換させ,それを組織全体に共有させ ることで,革新的な製品・サービスを具現化でき る組織能力を構築・強化しなければならない (徐・李,2015)。このような「組織的知識創造」9 を通して,企業は新製品・新市場・新組織の実現 を促すイノベーションを生み出すことができる (図 2 参照)。その結果として,企業の高業績が生 み出されるのである。すなわち,「市場志向型経 営」を積極的かつ戦略的に行う企業ほど,高業績 を上げることができるといえる(表 1 参照)。 表 1 市場志向の高い企業と高業績の相関関係に関する研究 正の相関関係

Kohli and Jaworski,1990;Narver and Slater,1990;Jaworski and Kohli, 1993;Slater and Narver,1995; Deshpande,Farley and Webster, 1993;Rueckert,1992

負の相関関係 Greenley,1995;Harris and Ogbonna,1999;Noble,Sinha and Kumar, 2002;Hult,Kitchen and Slater,2005 出所:池田・高木(2012),95-97 頁をもとに筆者ら作成。  上記のマクロ環境を調査・分析した後,企業は ミクロ環境の動向調査・分析を通して,競合他社 とは異なる戦略を採用し,新たな顧客を創造しな ければならない。言い換えれば,企業が市場支配 力を高めるために行う戦略とは,「自社(Compa-

ny)の相対的な企業力を用いて,顧客(Custom-2.マーケティング力とイノベーション力

のバランス戦略の重要性

 冒頭で述べたように,Drucker(1954)が論じ た企業の目的とその実現のための基本的機能の組 み合わせは,今日的な視点から考えてもその本質 的な意味は依然として重要であることに変わりは ない。企業は持続的成長を促すために,先進国市 場だけでなく新興国市場でも,新しい市場をつく る「マーケティング力」と新しいものをつくる 「イノベーション力」を車の両輪として有機的に 機能させなければならない(図 1 参照)。すなわ ち,企業は顧客を創造・維持・拡大していくため に,各々の市場特性に応じた「マーケティング 力」と「イノベーション力」のバランス戦略が必 要不可欠なのである(徐,2012;2014;2016)。  まず,企業は市場の動向や特性を正しく知り理 解し学習しなければならない。それゆえ,企業は 市場調査をマーケティングの出発点と捉え,戦略 的かつ体系的に行わなければならない。なぜな ら,「市場調査(主にマクロ環境の PEST 分析7 の動向調査)をせずに市場参入を試みるのは,目 が見えないのに市場に参入しようとするのと同様 だ」8からである。とりわけ,不確実性がきわめ て高い新興国市場のマクロ環境の変化に対して, 企業は時代の流れを読む先見力と変化対応力を いっそう高めなければならない。なぜなら,企業 はマクロ環境の絶え間ない変化と市場調査を徹底 的に分析することで,数多くの市場機会を発見す 図 1 マーケティング力とイノベーション力のバランス戦略がもたらす持続的成長 出所:徐(2016),63 頁をもとに筆者ら作成。

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課題を解決することができる。その際のポイント としては,①現地市場でしかわかりえない顧客の 価値観やライフスタイル,②自社の競争優位を実 現するバリューチェーン(価値創造連鎖)を構築 できる要素が現地市場にあるかどうか,③現地市 場で競うべき競合他社と競うべきでない競合他社 の区別への理解と対応が挙げられる12  上述したようなマクロ環境分析である PEST 分 er)のニーズをより満たし,競合他社(Competi-tor)との差別化を図るための取り組みである」10 といえる(図 3 参照)。Ohmae(1982)が提唱し た「戦略的三角関係=戦略的 3C」11の考え方は, 先進国市場だけでなく,新興国市場での事業展開 にも有効活用できる。すなわち,企業は新興国市 場における「戦略的 3C」の関係性を改めて深く 理解し,それぞれへの対応を図ることで,市場の 図 2 組織的知識創造がもたらすイノベーション創出のための 7 つのプロセスの好循環 出所:徐・李(2015),16 頁をもとに加筆修正。 図 3 戦略的 3C の関係性 出所:Ohmae 著,野口・湯沢訳(1984),114 頁をもとに筆者ら作成。

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やすく伝え,適切な流通チャネルを通して,顧客 とのコンタクトポイントを増やしていかなければ ならない。企業は,このような取り組みを通し て,さまざまな市場の状況に応じて,4P をフル 活用することで,自社のブランド価値を高めてい く。その後,企業は,フィードバックやマーケ ティング有効性評価,STP 戦略とマーケティン グ・ミックス戦術の見直しや改善活動などを行わ なければならない。  図 4 で示されている 5 つの「マーケティング・ マネジメント・プロセス」は,市場戦略の基盤と なる。また,企業は市場における事業戦略を成功 させるために,この基本的なプロセスを徹底的に 実践することも選択肢の 1 つとして考えられる。 さらに,企業は製品に価値を付け加え,独自の戦 略的ポジショニングを確保しなければならない。 これを実現するためには,製品のターゲットを顧 客そのものではなく,顧客が置かれている状況 ベースの分類化手法に基づく,確かな因果関係を 示すブランド・マーケティングが必要不可欠なの である(Christensen & Raynor,2003)。

3.需要探索型イノベーションに関する先

行研究

18  近年,グローバルな事業展開を行う企業間で熾 烈な競争が展開されている。このような状況下 で,企業がグローバル市場で勝ち残るための競争 戦略として,または国の競争優位の構築におい て,イノベーションの重要性が叫ばれて久しい。 イノベーションは,企業の持続的競争優位を確保 するための最も重要な戦略的要素の 1 つだからで ある。またイノベーションは,一企業を成長発展 させるためだけでなく,一国の経済を発展させる ためにも重要な役割を果たしているからである。 すなわち,イノベーションは,常に企業と国の新 たな経済成長の大きな原動力となりうるといえ る。  Schumpeter(1934)は,イノベーションを 5 つ に分類しそれぞれを定義している。その定義と関 連事例を,今日的な視点から概観すると,表 2 の ようにまとめることができる。本稿では,それら を踏まえ,イノベーションを次のように定義す る。イノベーションとは,「新たな知識や多様な アイデアを活かしてつくった革新的な製品・サー 析とミクロ環境分析である戦略的 3C 分析を行っ た後,企業は次なる戦略的ステップを行う。すな わち,企業は誰(メインターゲット)に,何(価 格,機能,品質など)を,どのような広告表現や 流通チャネルを通して,どのような価値を伝達し 提供するために用いる STP 戦略を行わなければ ならない13。まず,企業は市場を顧客の視点から 複数のテーマで細分化する(Segmentation)。次 は,製品・サービスの対象となるターゲットを明 確に定める(Targeting)。最後に,競合他社より 優位な自社の独自性が十分発揮できるポジション を決める(Positioning)。企業は,STP 戦略を行 うことで,効果的に市場を開拓・拡大することが できるのである。  上記のやり方は,現代企業の典型的な「マーケ ティング・マネジメント・プロセス」である (Kotler,1999)。しかし,このやり方では,既存 の製品・サービスの延長線上にあるものしか生み 出されない。すなわち,技術的な性能向上と漸進 的な改良による「持続的イノベーション(Sustain-ing Innovation)」14につながるのである。それゆえ, その製品が市場に受け入れられたとしても,競合 他社からの模倣困難性が低く,特に規模が小さい 企業は長期的な競争優位が得られにくい。企業は このような課題を解決するために,顧客の日常生 活を理解し,その状況を深く観察することが求め られる。このやり方を徹底的に実践する企業は, 従来の考え方の延長線上にはなかった新しい経験 や価値を生み出すことができるのである。企業 は,このような「顧客インサイト(Customer In-sight)」15を活かしつつ,生活と製品との新しい関 係を効率よく結びつけると,「市場イノベーショ ン(Commercial Innovation)」16の可能性が高まる (石井,2010)。その典型的な成功事例としては, 米国文化を象徴する大型バイク・ブランドである 「ハーレーダビッドソン」とネスレの受験生応援 対象製品である「キットカット」などが挙げられ る17  STP 戦略の立案が行われた後,企業はさまざま な状況に応じて,マーケティング目標を達成する ために,4P をバランスよく組み合わせ,明確か つ戦略的に計画し実行しなければならない。すな わち,適切な顧客に,適切な製品を,適切な価格 で,適切な広告活動を通して製品の良さをわかり

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図 4 5 つのマーケティング・マネジメント・プロセス

注:MC(Marketing Control),MM(Marketing Mix),PEST(Politics,Economic,Social,Technological)    出所:Kotler 著,木村訳(2000),46-53 頁と徐(2014),31 頁をもとに筆者ら作成。 類型 定義 該当事例 (1)プロダクト・イノベー ション(Product Innova-tion) 顧客の間でまだ知られていない創造的活 動によって生み出された革新的な製品を 市場に提供し,競合他社との差別化を図 るための取り組み。 Apple の iPod,iPhone,iPad,Dyson の 羽のない扇風機(Air Multiplier) (2) プ ロ セ ス・ イ ノ ベ ー ション(Process Innova-tion) 新製法・新生産方式を導入し,開発・製 造・物流などで競合他社が模倣困難な革 新的なプロセスの実現。 トヨタの「かんばん方式」や「ジャス ト・イン・タイム(JIT)方式」 (3)マーケット・イノベー ション(Market Innova-tion) 新しい販路の開拓,すなわち国内外にお いて従来参入していなかった新市場の開 拓。 富士フィルムの多角化による新市場開 拓,サムスン電子の新興国市場開拓 (4)マテリアル・イノベー シ ョ ン(Material Inno-vation) 原料・半製品の新しい供給源の獲得。 東レの繊維新素材の新しい供給源の獲得 (5)組織的イノベーション (Organizational Innova-tion) 新しい組織の実現。 京セラのアメーバ経営19 表 2 Schumpeter による 5 つのイノベーションの定義と該当事例 出所:徐・李(2017),23-24 頁をもとに筆者ら作成。

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 Christensen ら(1997,2003) は, 上 記 の Schumpeter(1934)の提唱した 5 つのイノベー ションのうち,「プロダクト・イノベーション (Product Innovation)」と「マーケット・イノベー シ ョ ン(Market Innovation)」 の 延 長 線 と し て, 「持続的イノベーション(Sustaining Innovation)」 と「破壊的イノベーション(Destructive Innova-tion)→ローエンド型破壊イノベーション(Low End Destruction Innovation), 新 市 場 型 破 壊 イ ノ ベ ー シ ョ ン(New Market Disruptive Innovation)」 を具現化かつ体系化した(図 5 参照)。  一般に,豊富な資金力と高度な技術力を持つ大 企業のほとんどは,長年にわたり漸進的改良を中 心とする「持続的イノベーション(Sustaining In-novation)」を行っている。だが,これらの大企業 は,顧客の意見に耳を傾け過ぎた結果,リーダー の地位を失うという「イノベーションのジレン マ」に陥る。すなわち,大企業が顧客の需要を満 たしすぎたことに気づかないうちに生じた低価格 ニーズという隙間に,破壊的技術を採用した競合 他社が入り込むのである。この競合他社は,低価 格ニーズに応えるためのシンプルかつ使い勝手の ビスを市場に提供することで,顧客に対してこれ までとは異なる形の新たな価値と満足をもたらす と同時に,企業に対しては経済的な成果を生み出 す革新的な取り組み」20を指す。今日,各国の市 場で起きているイノベーションのほとんどは, Schumpeter(1934)が提示した 5 つのイノベー ションに当てはまる。  市場は常に変化し続けるダイナミックな生態系 である。また,市場は多くの企業の予想を大きく 上回る速さで目まぐるしく変化し続けている。そ のため,企業はこのような市場の特性に応じ,そ の変化に柔軟かつ迅速に対応しつつ,既存のもの と異なる新しいものを生み出していかない限り, 持続的な成長は望めない。すなわち,企業のイノ ベーションの最も大きな成功の原動力は,この変 化を戦略的かつ創造的に活用することにほかなら ない(Drucker,1985)。したがって,企業は体系 的なイノベーションを創出するために,内部と外 部の環境に生じうる 7 つの機会を発見し,それら を確実につかみ取れるように戦略的かつ組織的に 取り組まなければならないのである(表 3 参 照)21 大         信頼性・確実性         小 内部環境への依存 (1)予期せざる成功と失敗を機会と捉える 想定しなかった成功や失敗の原因を探り,それによって得た結果により想定した 通りに成功させる。 (2)不調和(ギャップ)を探す 想定した結果と現実のギャップを探す。その不調和を解消することでイノベー ションを起こす。 (3)プロセス・ニーズを発見する 企業が成果を上げるための行程で不足している必要なもの,つまり気づいていな いプロセス・ニーズを発見する。 (4)産業や市場の構造の変化を知る 産業や市場の構造が変化し,製品・サービスの仕組みが変わることで生まれる ニーズを探る。 外部環境への依存 (5)人口構造の変化に着目する 社会の人口の増減や年齢構成,男女比などは年々スライドしており,それによっ て対象となる購買層も変化する。この予測可能な変化を見込んで戦略に役立て る。 (6)認識の変化を捉える 社会の流行やライフスタイルの変化,価値観や認識の変化を察知し,新たなニー ズを発見する。 (7)新しい知識を活用する いわゆる新発明や新発見などの新しい知識によって、まったく新しい製品・サー ビスの開発を行う。ただし、研究、開発、検証など実用までに時間と費用がかか りリスクも大きい。 表 3 企業の内部環境と外部環境におけるイノベーションの 7 つの機会 出所:Drucker 著,小林監訳(1985),55-56 頁をもとに筆者ら作成。

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様化する高度な顧客の要望などが挙げられる。 「オープン・イノベーション」の典型的な成功事 例としては,自前主義からの脱却を推進し,社外 との連携や融合の強化を通して,多くの企業と共 同開発や新素材の提供を行い,さまざまな市場価 値を生み出した東レが挙げられる25  1990 年代後半から,グローバルな事業展開を 積極的に行っている企業は,企業間の競争が激化 する「レッド・オーシャン(Red Ocean)」を避 け,競争のない未開拓の市場である「ブルー・ オーシャン(Blue Ocean)」を見つけ出し,そこ から新たな価値創造の実現に力を注ぎ始めてい る26。これは,顧客や競合他社も気づいていない 新しい需要を生み出すことで,競争のない新しい 市場空間をつくり出す「ブルー・オーシャン」戦 略の本質である。この「ブルー・オーシャン」戦 略を支えているのは,低コストと顧客の価値創造 (差別化)を同時実現する「バリュー・イノベー ション(Value Innovation)」27である(図 6 参照)。 「バリュー・イノベーション」の典型的な成功事 例としては,QB ハウス,アスクル,H.I.S.,NTT の i モード,コマツ,シマノ,セコム,SONY の ウォークマン,日清食品,任天堂の Wii などが挙 げられる28  企業間の技術の同質化により,コモディティ 良い製品をローエンド市場に根付かせることで, 次第にハイエンド主流市場を侵食し始めることに なる。このような「ローエンド型破壊イノベー ション(Low End Destruction Innovation)」の典型 的な成功事例としては,近年急成長中の中国の 「グローバル・チャレンジャー(Global Challeng-er)」22で あ る Lenovo,Coolpad,Huawei,Xiaomi などのスマートフォンが挙げられる23。主流市場 と異なる価値基準に基づいた製品を新市場に根付 かせるイノベーションである「新市場型破壊イノ ベ ー シ ョ ン(New Market Disruptive Innovation)」 の典型的な成功事例としては,コダックの使い捨 てカメラが挙げられる24  20 世紀のほとんどの企業は,自社内部のみの 資源やアイデアをフル活用し,競合他社に先駆け て革新的な製品・サービスを提供する「クローズ ド・イノベーション(Closed Innovation)」を行っ ていた。しかし,21 世紀に入り,次のような企 業を取り巻く内外の環境変化により,Chesbrough (2003)が提唱した「オープン・イノベーション (Open Innovation)」の重要性が高まってきた。そ れらは,①熟練した労働者の流動性の高まり,② 大学・大学院の研究者の増加,③競争環境の激 化,④イノベーションの不確実性,⑤研究開発費 の高騰,⑥株主から求められる短期的成果,⑦多 図 5 Schumpeter による 5 つのイノベーションと Christensen による 2 つのイノベーションとの関係性 出所:徐・李(2017),25 頁。

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ら,新興国市場は変化が速く不確実性がきわめて 高いが,数多くの市場機会が存在しているからで ある。したがって,次節では,新興国市場で「需 要探索型イノベーション」を通して,さまざまな 制約条件を克服し,戦略的優位性を確保している 韓国のグローバル企業の成功事例を検証する。

4.新興国市場における需要探索型イノベー

ションの戦略的優位性に関する韓国企業

の事例検証

4-1 LG 電子の東南アジア市場向けの「蚊を退治 するエアコン & テレビ」32  マラリアやジカウイルス,デング熱を媒介する 蚊による感染症は,数十年前からインドネシアを はじめ,インド,ベトナム,フィリピン,スリラ ンカのような熱帯・亜熱帯地域で多く発生してい る。これを受け,熱帯・亜熱帯地域では,その感 染症による死亡率,とりわけ子供の死亡率が年々 高まりつつある。これは,上記の新興国市場で は,深刻な社会問題なのである。人口 2 億人を超 える巨大な新興国市場であるインドネシアでは, 2009 年蚊が媒介するウイルス性伝染が 15 万件以 上確認された。  このような伝染病により大きな社会問題になっ ているインドネシアに着目した LG 電子は,2008 化29が急速に進んでいる今日の市場において, 企業が取り組むべき革新的な成長戦略の 1 つとし て Aaker(2011)の提唱した「カテゴリー・イノ ベーション(Category Innovation)」が挙げられる。 すなわち,企業はブランド・レレバンス戦略30 を通して,既存の製品カテゴリーの魅力を低下さ せる新カテゴリーを創出することで,そのカテゴ リーを代表するブランドをつくらなければならな いのである。このような「カテゴリー・イノベー ション」を通して,企業は熾烈な市場競争の中 で,選ばれ続けるブランドとなり,顧客からの高 い支持を得ることができる。「カテゴリー・イノ ベ ー シ ョ ン 」 の 典 型 的 な 成 功 事 例 と し て は, Apple の iMac,アサヒスーパードライ,P&G の アリエール,サウスウエスト航空,デル・コン ピュータなどが挙げられる31  グローバルな事業展開を行う企業は,上記の 「需要探索型イノベーション」のいずれを実行し, 市場に確実に受け入れられるような革新的な製 品・サービスを提供することで,市場価値を生み 出している。また,企業は比較的市場・経済が安 定している先進国市場だけでなく,近年急成長を 遂げている新興国市場においても「需要探索型イ ノベーション」を積極的かつ戦略的に行い,潜在 需要を掘り起こそうと全力を傾けている。なぜな 図 6 低コストと顧客の価値創造を同時実現する「バリュー・イノベーション」の構造 出所:徐・李(2017),29 頁。

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で,蚊を退治するエアコンの技術やノウハウなど を一層進化させた新製品と,それらをテレビに応 用し開発したものを提供している。すなわち,同 社は蚊を追い払う特殊な超音波を発信する装置を 内蔵した新型液晶 TV「Mosquito Away」シリーズ をインド市場向けに積極的なマーケティング活動 を行い始めている(写真 1 と 2 参照)。同社はこ の製品もエアコンと同様,フィリンピンやスリラ ンカなどの東南アジア地域にも展開し始めてい る。このような同社の戦略的な取り組みは,まず 巨大な新興国市場で徹底的に現地の人々の生活習 慣を細かく分析した現地適合化戦略を通して市場 支配力を高めている。その後,その市場の特性と 年から,これを解決するためのエアコンの研究開 発に着手し始める。翌年同社は,インドネシアの 国立大学「IBP 大学」との共同研究を通して,蚊 が嫌がる超音波(30~100KHz)を発信し,蚊の神 経を麻痺させ追い払い,蚊に刺されるのを防ぐエ アコンを発売することになる33。すなわち,同社 は蚊が誘発するマラリア,ジカウイルス,デング 熱などの疾病に対する警戒心が強い東南アジア市 場のマクロ環境を深く考慮して超音波機能を組み 込んだ製品を出すことにしたのである。  LG 電子は,上記の製品を,「ターミネーター」 と名づけた。その理由は,現地の人々にその機能 の良さをわかりやすく伝えると同時に,より強く インパクトを残すためである。またこの製品は, 現地の中・上流層をメインターゲットとし,一般 的なエアコンよりも 40 ~ 50% 高い価格で提供さ れているにもかかわらず,売れ筋商品になってい る。とりわけ,上流層の間では,妻や娘が妊娠す れば買う必需品になり,月平均 3500 から 5000 台 が売れるヒット商品となっている。さらに,同社 は,この製品をインドネシアと経済的,社会・文 化的な特性とほぼ類似したインド市場をはじめ, ベトナム,フィリピン,スリランカでもグローバ ルな視点に立ったマーケティング活動を積極的に 行い始めている。  とりわけ,2016 年 LG 電子は,IT や家電製品 分野で急浮上する市場として注目されるインド

写真 1 LG 電子の蚊を退治する「Mosquito Away Air Conditioner」

出所:LG 電子の HP より。

写真 2 LG 電子の蚊を退治する「Mosquito Away TV」

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性を好む傾向が強まっている点に着目し,インド 市場での反応を基盤に製品開発を行い,全世界に 販売する計画を立てて実行している。  「カースト制度」36が根付いているインドでは, 上位階級ほどベジタリアンが多い。このような社 会文化的な背景に着目したオリオン製菓は,自社 が扱うすべての商品にベジタリアン用の公式ラベ ルを付け,「健康な生活(Healthy Life)」という コンセプトを中心とした「Well-Being & Premium

マーケティング活動」37を展開している。上述し たように,同社のインド向けのチョコパイには, マシュマロの原料である豚の皮の代わりに,植物 性を持つ海藻類の寒天を原料として使ったマシュ マロを使用している。同社が行った革新的な取り 組みを,Schumpeter(1934)が提唱した 5 つのイ ノベーションの視点から見ると,「植物性のチョ コパイ」という新しい市場を創造した点は「マー 類似した他の新興国市場に汎用的に対応できる製 品として提供することで,確実に高収益を生み出 している。これはまさに,グローバル・マーケ ティングにおける地域標準化戦略の勝ちパターン の横展開であるといえる(図 7 参照)。  上記の LG 電子の戦略的な取り組みは,同社が 持つ資源や能力だけでなく他の主要なステークホ ルダー34の 1 つである進出先の国立大学が持つ 技術やアイデア,ノウハウ,データ,知識などを 組み合わせ,革新的なビジネス・モデルや製品開 発などにつなげる「オープン・イノベーション」 の典型的な成功事例であるといえる。 4-2 オリオン製菓のインド市場向けの「植物性の チョコパイ」35  韓国大手製菓会社であるオリオン製菓は,2007 年からチョコパイをインド市場に提供し始めてい る。韓国市場で成功したものをそのまま持ち込ん で提供するビジネス・モデルは,インド市場でな かなか受け入れられないと気づいた同社は,イン ド市場独自の社会文化的(宗教的)な背景に着目 した。すなわち,ヒンドゥー教やジャイナ教の基 本であるアヒンサー(非暴力または非殺生)を重 んじる現地の人々の 40% 以上がベジタリアン(菜 食主義者)であるということである。これを受 け,同社は 2009 年から,インドの顧客の社会文 化的特性に合わせた「植物性のチョコパイ」を開 発し,本格的にインド市場へマーケティング活動 を行い始めている(写真 3 参照)。また,同社は, グローバル・マーケティングの視点から世界の食 品を取り巻くトレンドが,動物性を回避し,植物 図 7 LG 電子のグローバル・マーケティングにおける地域標準化戦略の勝ちパターンの横展開 出所:徐(2014),251 頁をもとに筆者ら作成。 写真 3 オリオン製菓のインド向けの植物性のチョコパイ 出所:オリオン製菓の HP より。

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動力の 1 つとしては,中長期的な視点から取り組 んでいる同社ならではの「地域専門家制度」39 挙げられる。言い換えれば,同社は「地域専門家 制度」を通して,個人レベルから得られた知識 (個人知=一般情報・ノウハウ)を組織全体に とって戦略的に重要な知識(組織知=問題解決情 報・戦略的情報)に転換させ新たな知識を創造す ることで,新興国市場の開拓と拡大を促している のである40  また,サムスン電子は,インド市場のマクロ環 境へ柔軟に対応し,「太陽電池で充電できる携帯 電話」という「ブルー・オーシャン」を生み出 し,インド市場の環境的な特性と類似した新興国 市場へ普及させることができた。すなわち,同社 は当時の携帯電話の過剰な機能などを極力省き, 低コスト化と現地顧客の価値創造を同時に実現す る「バリュー・イノベーション」の創出につなが るビジネス・モデルを確立したといえる。さら ケット・イノベーション」であり,「植物性の チョコパイ」の原料であるマシュマロの新たな資 源を獲得した点は,「マテリアル・イノベーショ ン」でもあるといえる。 4-3 サムスン電子のインド市場向けの「太陽電池 で充電できる携帯電話」38  2009 年,サムスン電子はインド市場の電力事 情を深く考慮して,本体裏面に太陽光パネルを設 置し,太陽光を集め充電できる携帯電話(グロー バル・ブランド名:クレスト・グルー)を生み出 した(写真 4 参照)。同社は,この革新的な携帯 電話を世界で初めてインド市場に投入した。これ は,8 万ルクス程度の太陽光がある場所なら,1 時間ほどの充電で 5 ~ 10 分間通話できるという ものである。また,都市・農村を問わず電力事情 が良くないインドだが,この機器であればユー ザーは別途電源がなくても手軽に携帯電話が利用 できる。したがって,「クレスト・グルー」は, インド市場の環境的な特性を深く考慮して開発さ れたインド特化型携帯電話なのである。  ここで注目すべき点は,サムスン電子のグロー バル・マーケティング戦略は単なる地域密着型の ものづくりにとどまらず,インド市場の環境的な 特性と類似した新興国市場(アフリカ,中東,東 南アジア,南米,ヨーロッパなど)に標準化した 製品を発売することで,確実に高収益を生み出し ていることである(図 8 参照)。すなわち,同社 はインドの経済的,社会文化的な特性と類似した 地域への標準化戦略の勝ちパターンの横展開を 行っているといえる。このような戦略的なグロー バル・マーケティングを可能にした最も大きな原 写真 4 太陽電池で充電できる携帯電話(クレスト・グルー) 出所:サムスン電子の HP より。 図 8 サムスン電子のグローバル・マーケティングにおける地域標準化戦略の勝ちパターンの横展開 出所:徐(2014),251 頁をもとに筆者ら作成。

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索型イノベーション」のあり方なのである。 5-2 今後の課題  本稿で考察した「需要探索型イノベーション」 のそれぞれの戦略的優位性を最大限に有効活用し た韓国企業の成功事例に付け加えて,近年その取 り組みを戦略的に進めている日欧米のグローバル 企業のベストプラクティス事例を国際比較の視点 から考察することにより,その普遍的なフレーム ワークを提示したい。 (文中敬称略) 注 1 ここでいう企業成長とは,多くの制約条件を 克服しつつ,企業が長期にわたってその規模 を拡大していく過程である。清水(1984), 23 頁。 2 Drucker 著,上田訳(1996),49 頁。 3 本稿では,市場をつくる競争力を「マーケ ティング力」と呼ぶことにする。また,もの をつくる競争力は「イノベーション力」と呼 ぶことにする。 4 ここでいう新興国市場とは,市場が対外開放 され,潜在需要が顕在化し,あるいは経済成 長に伴って潜在需要が急速に拡大している国 や地域を指す。新興国市場には,従来の発展 途上国に分類される国や地域,あるいは計画 経済体制から市場経済に移行して世界経済シ ステムに組み込まれつつある国々が含まれて いる。黄(2003),134 頁。それらには,近 年の目覚ましい経済発展と内需拡大が大いに 期待されるブラジル,ロシア,インド,中 国,南アフリカ,ベトナム,インドネシア, メキシコ,中近東などが挙げられる。 5 詳細な内容については,徐・李(2015)を参 照されたい。 6 サムスン電子と LG 電子は,急成長を遂げた ものの,最近,財政・経営面でいくつかの重 大な課題を抱えている。このような課題に対 する戦略的な取り組みについては,別の機会 に論じることにする。 7 ここでいうマクロ環境には,①政治的・法的 環境要因,②経済的環境要因,③社会文化的 に,同社は後発企業として競合他社とのベンチ マーキングを行わず,その代わりに従来とは異な る新たな発想を中心とした戦略的思考を実践した ともいえる。それとともに,同社は現地市場の経 済的事情をはじめ,社会文化的な特性から新しい 市場機会を発見し,それを具現化するための「プ ロダクト・イノベーション」を生み出したのであ る。

5.おわりに

5-1 総括  本稿では,「マーケティング力」と「イノベー ション力」のバランス戦略の重要性とその枠組み を提示したうえで,「需要探索型イノベーション」 に関する先行研究をレビューした。また,これら の考察を踏まえ,新興国市場における韓国のグ ローバル企業の成功事例を深く考察することで, 「需要探索型イノベーション」の戦略的優位性を 明らかにした。それらのまとめは,下記の通りで ある。  まず,韓国のグローバル企業は,激変する新興 国市場のニーズに柔軟かつ迅速に対応し続けるた めに,「マーケティング力」と「イノベーション 力」をバランスよく実践している。次に,このよ うなバランス戦略は,不確実性がきわめて高い新 興国市場ならではの厳しい制約条件の克服と現地 化圧力への柔軟かつ迅速な対応を促している。最 後に,韓国企業は,新興国市場の各々の潜在ニー ズを探索し,それらを革新的な製品・サービスの 具体的な形として提供することで,市場価値を生 み出す「需要探索型イノベーション」を最大限に 有効活用している。  また,韓国のグローバル企業は,不確実性がき わめて高い新興国市場において「需要探索型イノ ベーション」を生み出すために,次のような視点 から企業能力を強化している。それらは,①市場 環境の変化を複眼的な視点から捉える思考力,② 市場全体の動向を見渡せる俯瞰力,③市場ならで はの多様な制約条件を克服するために,わずかな 変化を敏感に察知し機敏に対応できる探索力,④ 市場の潜在需要を探り,それを具現化した革新的 な製品・サービスを生み出せる組織力である。こ のような戦略的な取り組みこそが,グローバルな 事業展開を行う企業が今後取り組むべき「需要探

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ス テ ム(2004),4 頁。Cooper(1994) は, 京セラでは集権的な職能部門別組織から分権 的な事業部制組織へと発展し,さらにアメー バ組織が開発されたと述べている。Cooper (1994),p.3。その詳細な内容については, 稲盛(2006)を参照されたい。 20 本稿でいうイノベーションの定義は,徐・李 (2017),23 頁をもとに加筆。 21 Drucker(1985)が分類した 7 つの機会は, 内部環境に依存するものの方が信頼性や確実 性が高く,外部における事象への依存度が高 いものほど信頼性・確実性は低下する。表 3 に示されている 7 つの機会は,信頼性と確実 性の大きな順に並べてある。Drucker 著,小 林監訳(1985),56 頁。 22 近年急成長中の新興国発超優良企業を「グ ローバル・チャレンジャー」と名づけたの は,ボストン・コンサルティング・グループ である。「グローバル・チャレンジャー」の 急成長を促したのは,次の要因が挙げられ る。それらは,①常にコスト競争力を高める ための体制づくり,②グローバルな感覚を持 ちグローバルに通用する人材育成力,③市場 変化への柔軟な対応力と迅速な浸透力,④各 業務を世界中で最適な場所に配置する「ピン ポインティング」力,⑤迅速かつ大胆な経営 判断力や意思決定力,⑥創意工夫によるイノ ベーション力,⑦多元性を受け容れる力であ る。これらの詳細な内容については,Sirkin, Hemerling and Bhattacharya 著, 水 越 監 修 (2008)を参照されたい。 23 詳細な内容については,徐・李(2017)を参 照されたい。 24 同上。 25 同上。 26 「ブルー・オーシャン」の中には,これまで の産業の枠組みを超えて,その外に新しく創 造されるものもあるが,企業競争のほとんど は,「レッド・オーシャン」の延長として, すなわち既存の産業を拡張することによって 生み出される。Kim and Mauborgne 著,有賀 訳(2005),20 頁。 27 詳細な内容については,同上を参照された い。 環境要因,④技術的環境要因が挙げられる。 これらの環境要因を分析するための手法を PEST 分析と呼ぶ。PEST 分析の詳細な内容 に つ い て は,Kotler 著, 木 村 訳(2000), 118-130 頁を参照されたい。 8 同上,48 頁。 9 ここでいう「組織的知識創造」とは,新しい 知識をつくり出し,組織全体に広め,製品・ サービスあるいは業務システムを具体化する 組織全体の能力のことを指す。Nonaka and Takeuchi 著,梅本訳(1996),序文ⅱ。 10 Ohmae 著,野口・湯沢訳(1984),113 頁。 11 「戦略的三角関係=戦略的 3C」の詳細な内容 については,同上を参照されたい。 12 詳細な内容については,小原(2009),24-26 頁を参照されたい。 13 詳細な内容については,Kotler 著,恩蔵監修 (2002),175-224 頁を参照されたい。 14 「持続的イノベーション」については後述す る。 15 石井(2009)は,生活者による,生活と製品 とのユニークな関係を見つけ出すことを, 「生活者インサイト」と呼んでいる。詳細な 内容については,石井(2009)を参照された い。 16 石井(2010)は,生活者の生活と製品との新 しい関係により,新たな市場がつくり出され ることを「市場イノベーション」と呼んでい る。また,彼は「製品機能が同じままでも, その機能にかかわる顧客の生活経験を変化さ せることができると,市場イノベーションが 起こる」と述べている。石井(2010),22 頁。 17 詳細な内容については,同上を参照された い。 18 ここで論じる「需要探索型イノベーション」 の詳細な内容については,徐・李(2017)を 参照されたい。 19 ここでいうアメーバ経営とは,「会社全体の 組織を機能別・役割別に細分化し,臨機応変 に変化させ,それぞれの組織が,『時間当り 採算』という統一した評価基準により部門別 に採算を求め,全社員に経営者意識を醸成す ることを可能にしてきた自社独自の経営シス テム」を指す。京セラコミュニケーションシ

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ケティング活動」を通して,トランス脂肪 酸,合成保存料,グルタミン酸ナトリウム (MSG),合成着色料が入っていないことを 積極的に強調している。 38 詳細な内容については,徐(2014),250-251 頁を参照されたい。 39 ここでいう「地域専門家制度」とは,21 世 紀の国際的な感覚を持つグローバル・リー ダーを養成するための制度で,国内人材を 海外に派遣して現地の産業,経済,環境,文 化,制度等を習得させるサムスンの代表的な グ ロ ー バ ル 人 材 育 成 制 度 を 指 す。 徐・ 李 (2015),13 頁。 40 詳細な内容については,同上を参照された い。 参考文献 日本語文献 安 部 義 彦・ 池 上 重 輔(2008)『日本のブルー・ オ ー シ ャ ン 戦 略 ―10 年 続 く 優 位 性 を 築 く 』 ファーストプレス。 池田芳彦・髙木裕宣(2012)「新興国市場参入と 市場志向性に関する考察―標準化・適応化パラ ダイムから市場志向パラダイム」『文京学院大 学総合研究所紀要』第 12 号,93-112 頁。 石井淳蔵(2009)『ビジネス・インサイト―創造 の知とは何か』岩波新書。 石井淳蔵(2010)「市場で創発する価値のマネジ メント」『一橋ビジネスレビュー』第 57 巻第 4 号,20-32 頁。 稲盛和夫(2006)『アメーバ経営―ひとりひとり の社員が主役』日本経済新聞社。 小原一樹(2009)「新興国事業戦略における「3C」 の考え方―日本企業のモノづくり偏重から市場 起点のマネジメントへの転換」『知的資産創造』 7 月号,20-29 頁。 28 詳細な内容については,安部・池上(2008) を参照されたい。 29 ここでいうコモディティ化とは,「企業間に おける技術水準が次第に同質化となり,製品 やサービスにおける本質的部分での差別化が 困難となり,どのブランドを取り上げてみて も顧客側からするとほとんど違いを見出すこ とのできない状況」を指す。恩蔵(2007),2 頁。 30 ここでいうブランド・レレバンス戦略とは, 「新しいカテゴリーあるいはサブカテゴリー が形成されるような革新的な新商品を創造す る こ と 」 を 指 す。Aaker 著, 阿 久 津 監 訳 (2011),37 頁。 31 詳細な内容については,同上を参照された い。 32 LG 電子の東南アジア市場向けの「蚊を退治 するエアコン & テレビ」の事例については, 次の資料をもとに論じることにする。LG 電 子の HP。東亜日報,2009 年 6 月 24 日掲載。 ア ジ ア 経 済 新 聞,2010 年 11 月 25 日 掲 載。 IT 東亜,2012 年 11 月 22 日掲載。韓国経済 新 聞,2010 年 11 月 21 日 掲 載。 中 央 日 報, 2010 年 9 月 9 日 と 2016 年 6 月 16 日 掲 載。 ハンギョレ新聞,2016 年 6 月 16 日掲載。 33 このエアコンから出る超音波は,人体に害を 与えず,人に聞こえないためテレビの視聴に も影響しない。このような効果は,地元大学 の調査により確認されている。 34 ここでいうステークホルダーとは,「企業の 目的や使命達成に対して影響を与える利害関 係者グループもしくは個人のこと」を指す。 Freeman(1984),p.52。ステークホルダーは, 内部と外部のステークホルダーに大別でき る。すなわち,前者は,経営者と社員が挙げ られる。後者は,顧客・消費者をはじめ,株 主,投資家,取引先,業界団体,サプライ ヤー,メディア,アナリスト,債権者,消費 者団体,NPO,地域社会,自治体,政府,政 治団体,監督官庁などが挙げられる。 35 オリオン製菓のインド市場向けの「植物性の チョコパイ」の事例については,次の資料を 基に論じることにする。アジア経済新聞電子 版・国民日報電子版,2009 年 8 月 6 日掲載。

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