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卒業式の音楽 ―選曲の歴史とテーマ性―

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

卒業式の音楽 ―選曲の歴史とテーマ性―

著者 雨森 美智子

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 27

ページ 213‑225

発行年 1991‑03‑01

その他のタイトル Songs at Graduation Ceremony ―Selection of Songs:Its History and Theme―

URL http://hdl.handle.net/10105/6771

(2)

卒 業 式 の 音 楽*

−選曲の歴史とテーマ性−

雨 森 美智子日

(附属小学校)

要旨:卒業式の音楽は、プログラムのそれぞれの流れの節目で、テーマを歌う、

送別やお祝いの気持ちを歌う、思い出を歌う、学年や学校の高まりやまとまり を示す。場面の転換をはかる、ムードをっくる、など、いろいろな役を担う。

「わが校の卒業式の音楽は、どんな流れを経てきたのか」「それは音楽部の研究 にどんな影響をあたえ何を反映してきたのか」などを一度ふりかえりたい。

(本校では、卒業式当日をふくめ、3、4回の「6年生を送る会」が持たれ るが、文中の「卒業式の音楽」は、厳密には卒業式当日の「送る会」の音楽で ある。)

キーワード:歌唱教材 卒業式 学校行事

一、今までの流れ

本校は、1966年、これまでの教育の考え方を根本的に検討するとともに、もう一度あらためて 教育のあり方を追求しようとして『教育の本質に基づく授業の改善』という著書を出版した。19 65年には、現在に続いている第1回教育研究発表会がスタートしている。新しい本校の出発とも なったこの年度、1966年3月の、第16回卒業式からの音楽をふりかえってみる。

*アンダーラインを付けたのは、テーマにつながる歌

*[・]は、卒業式当日までの「送る会」での歌

フ ̄   ̄   マ 音         備     

196 6 ・3 別 れ の 歌 (6 年 ) 第 1 応 援 歌

16 回 6 年 生 を送 る歌

196 7 ・3 別 れ の歌 いわ え この 日

6 年生 を送 る歌 (以 前 か ら)

Songs at Graduation Ceremony

−Selection of Songs:Its History and Theme−

Michiko Amenomori

(Attached Elementary School,Nara University of Education,Nara)

−213−

(3)

 −  マ

19 68 ・3 別 れ の歌 証 書 授 与 B G M

6 年 生 を送 る会 ピア ノで

ど こかで 春 が 別 れ の 曲 な ど

第 3 応 援 歌 19 69 ・3 ほ た るの光 合 奏 (4 、 5 年 ) 証 書 授 与 B G M

応 援 歌 ・手 の ひ らを太 陽 に ・ 1 年 生 く ほ た る の光 ん お と う と くん ・ ・ ・ オ ル ガ ンソ ロ

思 い で の歌 ・ハ ミング ) リ レー 別 れ の歌 6 年生 を送 る歌 以 後 ) 19 70 ・3 友 だ ち讃 歌  み ん な で作 ろ う 19 69 ・ 4

2 0 回 全校 合 唱 )

とべ よ とべ (4 、 5 年 ) 手 の ひ らの うた 教職 員 ・父母 ) 別 れ の 歌 6 年生 を 送 る歌 (1 、2 年 )

児 童 会 発 足

197 1 ・3 手 の ひ らを太 陽 に  み ん な で 作 ろ う た ん生 日お めで と

線 路 は続 くよ ど こ まで も

友 だ ち讃 歌  た ん 生 日 おめ で と う 6 年 生 を 送 る歌 (作 曲 )

別 れ の歌

第 5 応 援 歌

197 2 ・3 未 来へ つ な が る 未 来 (全 校 ) 児 童 公 園 作 り この 1 年 ひ とつ の こ と (6 年 ) あせ み ど ろ山

もちつ き (1 、 2 年 ) な か ま池 ま っか な秋 (3 、 4 年 ) も ちつ き大 会 ぼ く らの町 は川 っぶ ち (5 年 ) 教 生 先 生 こん にち は 19 73 ・3 6 年 生 を 中心 に 未 来 (全 校 )

つ くり出 した わ 高 くか か げ よ (6 年 ) た した ちの学 校 ぼ く らの 町 は 川 っぶ ち

ク ラ リネ ッ トこわ しち ゃ った え ん ぴ つ が一 本

もえ あ が れ雪 た ち (5 年 ) ほた るの 光  笛合 奏 ( 〝 ) ど こ かで春 が 全 員 )

(4)

  −  マ 1974 ・3 6 年生 を 中心 に 未 来 全校 ) 「ひ とつ の こ と」

つ く り出 した わ ひ とつ の こ と (6 年 ) プ ログ ラ ム に た した ちの学 校 もえ あ が れ 雪 た ち (5 年 ) 歌 詞 を 入 れ始

春 が 来 た (3 、 4 年)

山 の 子  森 の か じや (1 年 ) ど こか で 春 が 全 員 )

め る

19 75 ・3 6 年 生 を 中心 に 未 来 (全 校 ) 春 よ こい (1)

つ くり出 した わ 手 の ひ らの う た  サ ッち ゃん (2)

た した ちの 学 校 別 れ の歌 (6 年 ) こぎつ ね(3 ) ど こか で春 が (4 ) 思 い 出 (5)

19 76 ・3 6 年 生 を中 心 に 輪 に な って 全校 ) 1976 ・ 2 ・ 7 つ く り出 したわ 未 来 全校 ) 西 田先 生 追 悼

た した ちの 学 校 ほた るの 光  笛 (5 年 ) 音 楽 会

1977 ・3 道 はつ づ く (5 年 ) 歌 にの せ て (全 校 ) 未 来 (全校 ) 別 れ の 歌 (6 年 )

体 育 大 会 応 援 再 現 (応 援 歌 ) み つ ば ちぶ んぶ ん (1)

お花 の国 の き しゃぽ っぽ (2 ) 富 士 山(3 ) ど こかで 春 が (4 )

は た るの光 (5 ) 19 78 ・3 す こや か に 未 来 全 校 )

ゆ たか に 森 は生 きて い る 全 校 ) モ ル ダ ウ (6 年 )

ー215−

(5)

フ ̄ −  マ 1979・3 限 りな き未来へ 未 来 (全校 )

6 年生 を送 る歌 作詩 ・作 曲)

森 は生 きている (全校 ) 別 れの歌 どこかで春 が

≡ …喜 忘: i 三 言…喜… :な ら〕

1980 ・3 あふれ くる生命 未 来  森 は生 きてい る 生命讃歌

歌 え高 らかに 高いのぞみを (全校 ) 卒 業生父母 に も ひ とつの こ. (6 年)

生命讃歌 全員)

森のか じや仙  こぎつね合奏(2)

手の ひらを太陽 に(3) あ る朝(4)

マル セ リーノ合奏(5)

ふ るさと(6)

歌 って もらう

198 1・3 未来へ メヌエ ット (オープ ニング)未来 1980 ・12 ・12 はばたこう ≡芋…三善誓 スト

警 芸 忘 〕 送 る会

ひとつ のこと (6 年)

別 れの歌 どこかで春が

第 1 回 全校音 楽会

1982・3 歌 はかがやき 風 と川 と子 ど もの歌 より 証書 B G M 冬の おわ りの (オープニ ング) レコー ド曲

川 の合唱 プ ログラム様 式変

歌 はかがやき (フィナー レ)(全校)

ひ とつ の こと (6 年)

山の子  オルゴールの 中の小人 たて笛 メ ドレー  ファンファー レ ザ ロンゲス トデーマーチ

ク リーゲルの メヌエ ッ ト タイムカプセルアル ファー号 夕 やけに拍手  か りがわたる

(6)

 −  マ 1983・3 はばたけ若 い力 あけぼの (全校 )

高 くかかげよ (6 年 ) 若 き命 全校 )

ホ ップステ ップ ジャンプ くん はずむよはずむよ きかん車 そ うだ った らいいのにな

す ぐです春です 牧場の小通 パ フ よ ろこびの 目 地球の子 ども  高 くかかげよ 1984 ・3 の び ろ附小 の樹 森は生 きてい る (オープニ ング)

六年生を送 る歌 (1 年)

みん なで行 こう (2 年)

パ フ (4 年) (5 年)

ピオ ネールは木を うえ る (3 年)

ふ るさと  ひ とつの こと (6 年)

_星型昼 全校)

モル ダウ笛]送 る会 1985 ・3 や さ しさ と 春の歌  おいわ い (全校)

勇気のつば さで 海よ (4 、 5 年が 6 年によ びか け)

もえ ろ (1 〜 5 年)

利根川 (6 年)

高 くかか げよ 全校)

ク リーゲルの メヌエ ッ ト(6)

モル ダウ(6) タイムカプセル アル ファー号 夏の樹 (全) 全 ) 会

1986 ・3 とどけ 未来  オープニ ング 入場 B G M 合奏 われ らのねが い 〕:レ了

とべ よ鳩 よ (1 〜 5 年 2 部合唱)

モーツアル ト讃歌 (6 年 ・学習)

(6 年 ・決意)

生命讃歌

冬の ラル コ

1986 ・2 ・16 霊 禁 た㌫ やき 〕 第 2 回全校音楽

−217−

(7)

 −  マ 198 7 ・3 大 き くはば た け 森 は生 きて い る

今 こ そ 一 瞬 の 今 を ま ほ うの す ず モル ダ ウ (6 年 )

19 88 ・3 ひ びけ 未 来 入 場 B G M 合 奏

み ん な の 胸 に み ん な の胸 に 証 書 B G M

五 月 の 風 船

ぞ う列 車 が や って きた 歌 は か が や き

ひ とつ の こ と  ふ るさ と (6 年 ) 冬 の お わ りの

生 命讃 歌

メ ドレー

19 89 ・3 典型 全 校 ) 春 が き た よ (1 〜 4 年 ) い の ち の うた 全校 2 部合 唱 ) (5 年 )

ゴー ル を め ざ して (5 、 6 年合 唱 ) ひ とつ の こ と (6 年 )

生 命 讃 歌 全 校 )

二、流れをふりかえって

卒業式の歌には、全校で歌う歌、6年生の歌、5年生の歌…と、それぞれのジャンルがあるだ ろうが、次元の揃わないまま、前述の表を見ながら印象に残ったところをあげてみる。卒業式の 歌では、何を歌えばよいのだろう。

1「思い出」「別れ」を歌う

本校の卒業式は、新しく深い教育観を持った先輩たちの考えにより、「仰げば尊し」や「ほた るの光」を形式的に歌うことからはすでに脱却されていた。それらに替わって「別れの歌」(教 育出版6年)、「6年生を送る歌」(音楽教育の会歌集)という歌がとりあげられ、子どもたちの

ための、子どもを主人公にする新しい卒業式の歌が模索されていたのである。

(8)

2 卒業を祝う

「いわえこの日」も早くから6年生を送る歌としてとりあげられていた。2番から拍手で6年 生を送り出すという形式もそのまま踏襲している。

卒莫式を単なる悲しい別れの日とせず、希望をもって送り出す、新しい出発ととらえた発想は、

子どもの健全な成長をねがう本校の卒業式全体の理念を象徴しているように思え、この歌に替わ る歌を見つけられず、またこの歌をとりやめる勇気もなく今日に至っているのである。*「別れ の歌」「6年生を送る歌」の組み合わせはしばらく続く。

この流れに大きな変化を感じたのは、1970年であった。「友だち讃歌」(「NHKみんなの歌」)

や「飛べよ飛べ」(教芸教科書6年)の選曲はたいへん新しく感じられた。

3 全校の歌う力を示す

「手のひらを太陽に」「友だち讃歌」これらの歌は、全校の子どもたちの歌声に、生活力や活 気をよび起こした。「全校を歌う集団に」という音楽部内のスローガンのもとに「ぼくらの町は 川っぶち」をはじめ、全校がひとつになって歌う気運が高まっていった。

4 テーマ性をもって歌う

「飛べよ飛べ」…卒業式の歌は、「別れ」と「思い出」が選曲のめやすと思っていた私の心に、

西田孝二先生が「とりあげよう」と言われたこの「飛べよ飛べ」は、たいへん新鮮に映った。こ の年新しく採用した教芸社6年の教科書に載っていた。今から患えば簡単な歌であるが、鳩の姿

と、卒業していく6年生の姿を重ね、在校上級生の4、5年生が6年生に歌うという内容と形式 は、卒業式の音楽にまた新しい側面を開いてくれた。今ではあたりまえになった、卒業式と未来 という内容をっなぐきっかけになった歌である。

「未来」…ベートーベンの第九交響曲の「よろこびの歌」に山村公給先生が作詞七てくださっ た。

1971年、運動場の南東の隅、今の小プールの端あたりに児童公園が生まれた。トラックで運び 込まれた土が今の教材園のあたりにおろされた。毎日、中休み昼休みになると、全校のみんなが、

バケツやビニル袋、あきカン、一輪車などで土運びをし、すでに仮工事で放射状に並べられた土 管の上に次々と土を積み重ね、山を作った。

児童会で名前が募集された。「トンネル山」「附小山」など、大人が思うとふさわしい、かわい い名前がたくさんあったのに、子どもたちは「あせみどろ山」という奇妙な名前を選んだ。文字 どおり毎日汗みどろになり、ドロドロになって土を運び作った山だったからである。ちなみに中 休みが20分から30分になったのも、この山作りのために児童会から要求されたもので、これが現 在に続いている。

この仕事を歌って作られたのが「未来」である。その後続く卒業式の「未来」というテーマを 発展させた土台になる作品であり、今も大切に歌い継いでいる。

*「テーマ性をもつ」ということは、いろいろな原いや思いをもって歌うことであり、卒業式に はどんな内容を歌うかを、この二曲は私たちに考えさせてくれた。

ー219−

(9)

5 決意を歌う

長く続いた6年生の送別の歌「別れの歌」に加え、6年生の歌として新しい局面を開いたのは

「一つのこと」である。6年生が、別れや思い出の感傷にとどまるのでなく、明日への飛躍を力 強く歌うところに価値をみつけた。

6年生が巣立つ決意を歌うなら、5年生も学校を引き継ぐ決意を歌わせたい。「ほたるの光」

で別れを惜しむといった感傷に留まらず、それを乗り越えた力強いものでありたい。この思いは、

「道」の選択へとつながる。

6 成長を示す

卒業式は、送り、送られる場であるとともに、6年生と在校生が、最高の姿を見せる場にした い。今までの学習、生活の積み重ねが裏づけとなって表現される歌声でありたい。

「モルダウ」…6年間の成長を、川の成長していく姿に重ね合わせ、力強く示し、卒業させた いと思った。

「モーツァルト讃歌」…6年生で学習したモーツァルトの生涯や作品、特に「魔笛」の学習、

「パパパの二重唱」の音楽会での発表に裏づけられ、また、附小で身につけたすべての力をもと にして、内容と技術のある歌う力を示させたいと思った。卒業生たちは、自分たちがかつて歌っ たミュージ丸くレの曲を歌う今の1年生と対比して、6年間の成良を見せてくれた。

* 在校生からのプレゼントの歌も、各学年の最高の歌や演奏となればよいだろう。緊張する発 表の場となるのである。

7 テーマを構成して歌う

近年、卒業式は毎年テーマを決めてとりくむようになってきた。音楽もそれに合わせ、内容に ふさわしい歌でつなぐようにしてきた。テーマを決めるにあたっては、歌の中からヒントを得て 決まることも多く、テーマと音楽は切り離せない。

テーマには、子どもたちの健康な成長をねがう教師の思いが込められている。生命・平和・自 然・人間のやさしさ・未来・道…こんな内容がこれまでにとりあげられた。これらはまさしく私 たちの歌唱教材選択の角度でもある。

テーマが教師たちのねがいであるとともに、子どもたち自身のものとして全校の子どもたちに 浸透し、歌と融合させて歌えるように、卒業式当日だけのテーマにならないように今後も心して いきたいと患う。

8 オープニングとフィナーレ

テーマを構成し、内容が組み立てられ、卒業式がひとつのストーリーになったとき、オープニ ングとフィナーレの役割りは大きい。

オープニングは、附小の卒業式らしく幕開けしたい。今までにとりあげた曲をふりかえってみ る。

・テーマを歌う      未来

・この場に居合わすよろこびを歌う    春のうた(世界は光に満ちて…)

メヌエット(さわやかな風に…)

(10)

・子どもの生命力を発揮する 森は生きている 冬の終わりの

・おごそかに開幕する(創造主を讃える) あけぼの

・附小の子どもの理想を歌う        典型

フィナーレは、何年聞かは「どこかで春が」を全員で歌い、平和に式を閉じることが続いた。

「生命讃歌」が生まれてからは、フィナーレにかける思いに大きな傾斜がかかってきたように思 う。「この年のメンバーで歌う最後の芸術作品」こんな思いで歌いたいとのねがいが強まってき た。期待が高くなるにしたがって、選曲の幅がせばまり、テーマ、曲想、本校の技術に見合った 曲を見つけるのがたいへんむずかしくなってきたのである。

・成長を約束する       夏の樹(…育っだろう)

・全校の生命力を発揮する         歌はかがやき

・テーマを歌う      〝

・理想を歌う       高くかかげよ

・生命を讃え、生きているよろこびを歌う 生命讃歌

二、1989年の歌から

この年、「6年生を送る会」や卒業式でとりあげてみたいと候補にあげた作品は20曲ほど あった。それらの中から、卒業式当日の歌として以下の9曲を選び、原案とした。

・みんなの胸に(全校 集まりのよろこび)・典型(全校)・春がきたよ(1〜4年 春をいわう)・いのちのうた(全校 全校の歌う力)・ゴールをめざしで(5、6年)

・道(5年 学校をひきつぐ決意)・ひとつのこと(6年 巣立っ決意)・生命讃歌

(全員 フィナーレ)・いわえこの日

この歌の流れはほぼとりあげられ、この年のテーマは「道」となった。

「ゴールめざして」の5番の歌詞

、、ゴールめざして歩いて行こう。あの日に続くきょうの道を〟を5、6年がいっしょに歌 い、その後、5年生が、6年生が作った道を引き継ぐ決意を「道」で歌い、6年生が

人は続き 道は続く 遠い道 はるかな這。明日のぼる山も見定め 今終わる ひとつ のこと〟 と歌い切る。

「道」ということばには、6年生があゆんできた道、そのときそのときを全力を尽くして とりくんできた足跡、そして、未来への希望の意味が込められている。今回のテーマに添っ た歌で流れをつなぐことができたように思った。

以下、それぞれの歌についてふり返りの中から、紙数の都合上2曲をとりあげてみる。

典 型−オープニング・附小の子どもの理想の姿−(全校)

おごそかに、清潔に、そして附小の子どもたちのエネルギーの感じられる透明な声で、こ の送る会の幕開けをしたいと思った。

−221−

(11)

木村次郎 詩 丸山亜希 曲

「典型」とは、なんとも奇妙な、思い切った、聞き慣れない題名だと映ったが、歌詞をたどっ ていくうちに、これは「附小の子どもたちの理想の姿」ととらえさせようと思うようになった。

旋律把握のすんだ段階で、子どもたちにこう話しかけた。

T 「典型」とは、手本、見本というような意味です。

先生には、附小の子といえば、制服を着てランドセルをしょって来る姿、体操服を着た子、

体育大会でもえる子、水泳でがんばる子、マラソン大会の順位に目標をもってとりくむ子、毎 日日記をつける子、本を読む子、生きている顔をしていっしょうけんめい歌う子…いろんな姿 が浮かんできます。みんなはどうかな。

「典型⊥封ま、こんな子が附小の子だよ、こんな姿がいい姿だと考えたらどうでしょう。こ の歌は、そんな姿や生き方のことを歌っているのです。

T  「いずみの水 あつまり あふれ」は、そんな勉強や運動、くらしを積み重ね、かしこく なっていくみんながいっぱい集まっている、そして、ひとりひとりの頭のなかや心のなかも、

勉強した知識や、やさしい正しい心でいっぱいになっている、こんな意味です。

T 「泉」って、どんなものでしょう。

C 森のなかにある。

C 池みたいなもの。

C きれいな水が湧いている。

T そんな澄みきった水が、次からつぎへといっぱい湧いてくるのです。

T 「いずみの水」は、そんな澄んだ声で。

T 「あつまり あふれ」も、澄んだ声で。

T 「あふれ あふれ 輝きながれ」

はじめの あより、二度めの あほ、心をこめてていねいに。

T 「かがやきながれ」は、「かがやき ながれ」(鼻濁音)

きたない水にしないように。

T 「雪降るとも 風吹くとも」

T  北陸や東北や、北海道の子どもたちの雪や風は、みんなの想像している雪や風ではない。

雪は4メートルも5メートルも積もる。(新潟県竹之高地小の写真を見せる)北海道の先端、

猿払では、ブリザートで国道が閉鎖する。

T とてもつらいことや、いやなことがあっても、ということです。

(12)

T みんなにも、友だちとけんかしたとき、 雨ふりの日…いやなことがあった日もあるでしょう。

そんないやなことや、つらいことがあっても、みんなが学校に集まりかしこくなっていく、そ ういう意味です。

T 「かわけるとき」は、川を蹴るのではありません。水がないとき、渇いているときというこ とです。心が渇いているとき、人間はどろばうをしたり、いじわるをしたり、ひとをきずつけ たりします。

わたしたちが、やさしい心や、勉強をしたりがんばったりする心を失ったとき、歌を歌って 生き生きした力をよみがえらせようと歌っているのです。

伸びていこうとする附小のみんなが、ここに集まっていますという歌にしてほしいのです。

そんな、健康な心のみんなの歌声で、今年の送る会は幕あけしたいのです。

* この歌は、児童の伴奏(5年・北中)も指揮(同・中川)も、おごそかな大らかなイメージ をよくとらえ、全校をよくリードしていた。歌のできばえもかなりよかった。

ゴールめざして−思い出を歌う−

<ゴールめざして>

自分で何度も歌いながら、ひとり、6年生の立場になり、親の気持になり、胸がいっぱいになっ ていた。

1番は、チューリップグループで登った若草山や高円山の、全校遠足の場面が思い出された。

−223−

(13)

上級生が下級生を大切にしていた。

2番は、あの若狭の海での遠泳。子どもたちにとって、一生忘れられない思い出となるだろう。

3番は、今年度の附小まつり。6年1組の子どもは自分たちの力で曲を選び、伴奏を練習し、

「翼をください」を授業の合間に練習し、合唱を全校に発表した。毎Hのとりくみやクラスの団 結のもりあがりの様子は、子どもたちの話や授業態度から伝わってきた。

6年2組の合奏のとりくみも、高学年らしい自主的なものであった。きっと、クラスのまとま りを作り、友情の輪も大きくなったことだろう。何年か後には、きっとなっかしく同窓会を開け るクラスになったことだろう。

4番は、今年の体育大会のできごとを思い出す。舌組アンカー手前の女子Mさんは、ころんで バトンを落としてしまった。当然順位も変わった。舌組団の悲鳴や非難を背にして彼女は走った。

そのあと、泣きながら退場行進の合奏団のマリンバを演奏した。つらいなかで責任を果した彼女 に心から拍手をおくった。

4番まで歌うと、6年間の思い出、成長のよろこび、父母の感謝、様々の立場の気持が交差し て、私は胸がいっぱいになってくる。けれどもこの歌は、感傷をふりきって5番を歌わねばなら ない。子どもたちには、もう未来をめざして5番をきっぱり歌わせたいと思った。

この歌をと、りあげるにあたって、形の上で、5年生と6年生に歌わせたいと思った。全校をリー ドしてきた高学年が、学校を作ってきたとりくみをふり返り、未来をみつめる歌にしたかった。

授業のなかでこの気持を伝え、5年生の希望を聞いてみた。2番と3番を6年生に歌ってもらい たいという。1番は5年生が歌うという。そして4番は体育大会だからいっしょに歌いたいとい う意見であった。

2部合唱のパートは、それぞれのクラスで自由に2部に分かれさせた。3度や6度のハーモニー は比較的らくたとれたが、所々の変化音、旋律の追いかけっこの部分はていねいにやらねばなら なかった。最後の盛り上がりも、心強く、力強く歌わせたいと進めてきたが、驚いたのは、それ ぞれ学年別に歌っていたのをはじめて5、6年いっしょに合わせた日のことであった。きりっと ひきしまった歌になったことである。ここに、5、6年の心の通い合い、信頼を感じたのであっ た。

当日、1番を5年生が歌って一度着席、交代して6年生が2、3番を歌う。4番で5年生が再 び起立、6年生といっしょに4、5番を向かい合って歌うという形になった。

四、おわりに

今、こうして歴史をふり返ってみると、その時その時、その歌に教師も子どもも心をかたむけ 歌いきった、体育館での歌声や姿、それまでのとりくみがよみがえる。

この年は、「典型」と「ゴー′レめざして」に新鮮に出会えたことに気づく。その年に新しくと りあげたものには、教師が感動多く接することができる。それが子どもに伝わる。考えてみれば おそろしいことでもある。内容はより新しく、常に変えていこうとする精神を失うことなく進み たい。これが本校の伝統でもある。

(14)

卒業式は、全校の最高の姿がでる一大年中行事である。音楽部にとっても、1年間の総まとめ の音楽会をするつもりで、その年の学習の価値の出る歌声で結びたい。

参照

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