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須屋根で覆われた大仏殿内の温湿度

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

須屋根で覆われた大仏殿内の温湿度

著者 永田 四郎

雑誌名 古文化財教育研究報告

巻 6

ページ 83‑87

発行年 1977‑06‑30

URL http://hdl.handle.net/10105/416

(2)

須屋根で覆われた大仏殿内の温湿度

永 田 四 郎

1. 1 年から翌年1 2月までの1年余にわた9,大仏殿内須弥壇上で温湿度の継続観測を ぉこなったが, 1 9 7 5年からは大仏殿屋根修理のために巨大夜須屋根で大仏殿が覆われたoこの 須屋根によって大仏殿内の気象状態が変わることが予想され,その影響の程度などを知る目的で観 測を試みた。観測は1 97 5年夏から始められ現在も続行しているが・ここには1 97 5年1 0月 1 9 7 6年9月の1年間の観測結果をまとめてみた。この観測実施には東大寺当局の特別の許可 と協力をいただき,得られた資料の整理には本学学生岡崎久美子氏の協力を得たoここに併せて謝 意を表する次第である。

2.今回の観測(以下第二次観測とよぶ)も1 968年‑ '69年観測(第一次観測とよぷ)と 同一条件でおこなわれた。す壕わち,通巻自記温湿度計を大仏殿内須弥壇上の北側に設置し,毎週ア スマン通風温湿計によってチェックし自記紙読取値を補正したo

気温と湿度の平均値は次表の通Dである。

第1表 大仏殿内の気温平均値(℃)

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12

(1975) 10 11 12 (1976)

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1 4.6

(3)

第2表 大仏殿内の湿度平均値(%),〔 〕内は絶対湿度(to

午 時       刻

12

(1975)

10      90   83 11  87   88       80 12

(1976)

1 2 3 4 5 6 7 8 9

83   84   78

20   平  均

80  85  86 〔12.47〕

73  79  83〔 8.92〕

74  77  80C 5.89J

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83  85  85  76  74  78  80〔11.00〕

3.第一次観測と第二次観測との結果を幾つかの点について比較図示する.

(1)気温月平均値の比較

1   2   3   4   5   6   7   8   9  10  11 12月

第1図 気温月平均値の比較

A・'月平均気息 B: (大仏虫内月平均気温ー(外気月平均気温)

‑84‑

(4)

第1図Aは大仏殿内の月平均気温について第一次,第二次観測値を比較してある。第一次観測 に比べて冬期はやや高温,夏期はやや低温で,年変化が若干小さくなった傾向が見られるが,午 平均気温は第一次,第二次でそれぞれ1 4.3℃と1 4.6℃で,後者が僅かに0.3℃高温になって いて,この点では大差は現れていない。

第1図Bは大仏殿内外の温度差を示し, (大仏殿内月平均気温)‑(外気月平均気温)で, 0 線よ9上方の十域は大仏殿内が外気よ9高温,下方の一域は大仏殿内が低温であることを示して いる。なお,ここの外気測定値は奈良地方気象台のそれを用いた。この図からは両者間にかなb の差が見られる。すなわち,第一次には夏期を中心として大仏殿内が外気よj? 0.5‑1 ℃ぐらい 低温であったが,第二次では, 6, 7月以外は大仏殿内が外気よb高温になっている。年平均の 内外温度差は第一次が+0.1 ℃で第二次では+0.5 ℃であD,後者が0.4℃も高温になっている。

(21湿度月平均値の比較

1 9. 免  4  5  6  7  8  9  元 11  12 1 2  3  4  5  6  7  8  9 10 11  12月

第2図 湿度の月平均値の比較

A :月平均湿度  B : (大仏殿内月平均湿度)‑ (外気月平均湿度) C: (大仏殿内月平均絶対湿度)‑(外気月平均絶対湿度)

‑85‑

(5)

第2図Aは月平均湿度の比較で,一見して第二次には相対湿度が全体として高くなっているこ とが分る。年平均湿度は第一次で7 1%,第二次は8 0%で,第一次よ9 9%高くなっている0

第2図Bは気温と同様な内外湿度差であるが,第一次では7月に僅かに大仏殿内が外気よb高 湿になった以外はすべて外気よ9低湿になっていて,年平均の内外湿度差は4%だけ大仏殿内が 低湿である。これに対して,第二次では一年中大仏殿内が外気よ9高湿になっていて,年平均の

内外湿度差は大仏殿内が3%高湿となる。

第2図Cは絶対湿度すなわち空気中の水蒸気量の比較であるが,第一次の年平均値9.82 Vm*

に対し,第二次のそれは11.00 fcrfで,後者が.18 Vmサ増大している。 C図の内外絶対湿度の 差を見ると第一次,二次の差が明らかで,第一次では外気よ9平均0.45 fcrfだけ少なかったの に対し,第二次では外気よ9平均0.6 1 も多くなっているo

(3)気温,湿度の日変化の比較

0     4     8    12    16    20     0時

第3図 年平均の日変化の比較

第3図は年平均の日変化であるが,気温,湿度ともに,第一次に比べて第二次には日変化が′」

さくなっている。

4 以上, 2, 3の点についてだけ簡単に比較したが,須屋根で覆われた結果,大仏殿内は・

○気温は平均して高くを9,ほとんど1年中外気よ9高温になっているo

‑8 6‑

(6)

○温度は平均9%も高く夜9, 1年中外気よ9高湿になったO大仏殿内の絶対湿度も増大したo o気温,湿度の日変化は何れも′」\さくなった。

以上の傾向は何れも予想されることであるが,須屋根の影響が気温よDも湿度,水蒸気量に大き く現われていることに注目したい。

参  考  文  献

(I)永田四郎:堂内気象の観測(12),奈良教育大紀要第18巻第2号

(1970)

須 屋根 外観

須   屋 根   内   部

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