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都道府県財政における収入と支出の決定

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Academic year: 2021

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(1)

都道府県財政における収入と支出の決定

――

ARDL

バウンド検定アプローチによる実証分析 ――

平 井 健 之

Ⅰ.は じ め に

わが国の地方政府の財政状況は都道府県や市町村ごとに大きく異なり,地域 間での財政力の格差は顕著なものとなっている。それを都道府県についてみる と,例えば,近年の財政力指数( 年度から 年度までの カ年度平均)

では,東京都,愛知県,神奈川県が . を超える一方で,鳥取県,高知県,島 根県をはじめとする 県は . を下回っている状態である。さらに,財政力指 数が . を下回っている県は, 道県に上っている。とくに財政力指数の低 い地域では地方税などの自主財源が乏しく,地方政府の収入は地方交付税や国 庫支出金などの国からの財政移転に依存している。このように,地域間で財政 構造に違いが存在する状況では,各地方政府の収入と支出に関する意思決定の あり方も異なるかもしれない。

本稿では,政府の収入と支出の因果関係の実証研究に基づき,各都道府県で の収入と支出に関する意思決定のあり方に違いがあるかどうかを検討したい。

ここで,政府の収入と支出の因果関係の実証研究は,諸外国ではこれまで数多 く進められており,わが国でも近年,いくつかの研究が存在する!。この収入と 支出の因果関係をめぐっては,次の つの仮説が提示されており,実証研究で は政府の財政運営がそのいずれの仮説に相当するかが明らかにされている。

( ) 諸外国における政府の収入と支出の因果関係の実証研究の動向は,Payne( )に おいて詳しく概観されている。また,わが国の政府を含めた最近の研究動向については,

瀧本・坂本( )を参照されたい。

巻 第 号 年 月

(2)

まず第 は,収入から支出への因果関係があるという租税−支出仮説(tax-

spend hypothesis)であり,収入の変化が支出の変化をもたらすとしている

(Buchanan and Wagner,

, Friedman,

)。第 は,逆に支出から収入へ の因果関係が存在するという支出−租税仮説(spend-tax hypothesis)で,租税 の徴収よりも前に支出の決定が行われるとしている(Peacock and Wiseman,

, Barro,

)。そして,第 は,収入と支出で双方向の因果関係が存在

するという仮説(fiscal synchronization hypothesis)で,Musgrave )や

Meltzer

and Richard(

)の理論に基づいている。最後に,第 は,収入と支出との

間に因果関係が存在しないという仮説(institutional separation hypothesis)であ る。

これら つの仮説を検証する既存研究は,政府の収入と支出の時系列データ を使用し,ベクトル自己回帰(VAR)モデル,あるいは誤差修正モデル(ECM)

の枠組みで,Grangerの因果関係の検定に基づき実証分析を行っている。例え ば,トルコ政府を分析対象とする

Darrat(

)や

Payne, Mohammadi and Cak

)の研究は,租税−支出仮説を支持する分析結果を導いている。これに 対して,ギリシャ政府を分析対象とする

Hondroyiannis and Papapetrou(

Vamvoukas

),さらにアメリカ合衆国に関する

Islam

)の研究は,

支出−租税仮説が成立するという分析結果を示している。また,収入と支出で 双方向の因果関係が存在するという仮説は,アメリカ合衆国の政府を分析対象 とする

Miller and Russek(

)と

Jones and Joulfaian(

)の実証研究,中 国に関する

Li(

)の実証研究において支持されている。さらに,アメリカ 合衆国における

Hoover and Sheffrin(

)や

Baghestani and McNown(

の実証研究は,政府の収入と支出の間で因果関係が存在しないとする仮説の証 拠を提示している。

この他にも,Baffes and Shah( ),Owoye ),Kollias and Mskrydakis

),Chang, Liu and Caudill( ),Narayan(

a),及び Owoye and

Onafowora

)のように,複数の国の政府を分析対象として,収入と支出の

因果関係に関する分析結果を比較し検討する研究も行われている。Baffes and

(3)

Shah( )はラテンアメリカ諸国(アルゼンチン,ブラジル,メキシコ)を 対象に,Owoye )はG 諸国を対象に,そしてKollias and Mskrydakis はヨーロッパの カ国(ギリシャ,スペイン,ポルトガル,アイルランド)に ついて,各国政府の収入と支出の因果関係を分析している。また,Chang, Liu

and Caudill( )はアメリカ合衆国や日本をはじめとする カ国を対象に,

Narayan( a)はアジアの カ国を対象に,そしてOwoye and Onafowora

)はOECD諸国( カ国)について,同様の分析を行っている。いずれ の実証研究においても,因果関係に関する つの仮説をめぐり,国によってそ の分析結果が異なることが示されている。

これらの研究は各国の中央政府を分析対象としているが,地方政府の収入 と支出の因果関係に関する実証研究も行われてきた。アメリカ合衆国の州や 地方レベルを分析対象とする研究として,Marlow and Manage( , ),

Chowdhury( ),Ram( ),Payne( ),Zapf and Payne( )があ り,また,わが国の都道府県を分析対象とする研究としては,平井(

)や瀧本・坂本( )がある。とりわけ,わが国については,地方の支 出決定について地方政府にある程度の裁量の余地があるものの,地方の収入 は国からの財政移転に依存して実質的には中央政府(国)の意思決定により 調達されているといえる。そのため,平井( )は,標準的な誤差修正モデ ルを用いて,都道府県全体の収入と支出の短期と長期における因果関係を分 析することにより,地方財政をめぐる国と地方の意思決定のあり方を検討して いる。

さらに,平井( )は,収入と支出の 変数間の長期均衡に向けた非対称 な調整過程を考慮に入れて,収入と支出の因果関係を分析している。その分析 結果から,都道府県全体では,財政が悪化する状態においてのみ収入から支出 への因果関係の存在が示されている!。またここで,政府の収入と支出のデータ について,平井( )は実質値のデータを使用しているが,瀧本・坂 本( )は,名目値,実質値及びGDP比の 種類のデータを使用し,平井

)と同様に,短期と長期の因果関係をより詳細に分析している。

(4)

ところで,上記の地方政府を分析対象とする実証研究は,Payne( )を 除いて,地方政府全体としての収入と支出の因果関係を分析している。これに 対して,Payne( )は,アメリカ合衆国の州政府を分析対象として,各州 における収入と支出の長期の因果関係をそれぞれ分析している。その分析結果 からは,租税−支出仮説は の州で,支出−租税仮説は つの州で,そして 収入と支出で双方向の因果関係があるという仮説は の州で支持されること が示されている。したがって,アメリカ合衆国の州政府間では,収入と支出の 意思決定のあり方は異なっているといえよう。既述のように,地域間で財政構 造に違いが存在するわが国についても,各地方政府の収入と支出に関する意思 決定のあり方は同様に異なるかもしれない。

そこで,本稿の目的は,わが国の各都道府県を分析対象として,収入と支出 の因果関係をそれぞれ分析し,都道府県において収入と支出の意思決定のあり 方に違いがあるかどうかを検討することである。本稿の実証分析では,とくに 政府の収入と支出の共和分検定について,多くの既存研究とは異なり,Narayan

a)やOwoye and Onafowora( )と同様に,Pesaran, Shin and Smith

)によって提案された自己回帰分布ラグ(Autoregressive Distributed Lag,

ARDL)バウンド検定アプローチを適用する。この検定アプローチは,Engle and

Granger( )やJohansen( )によって提案された従来の共和分検定の方

法に対して,次のような利点をもつ。まず第 に,収入と支出の各変数の和分 の次数が 以上でなければ,あらかじめ各変数の和分の次数に関する情報を必 要としないことである。さらに第 に,バウンド検定は,本稿のように年度デ ータを使用する小標本の研究においてより頑健な結果を提示することである。

( ) 政府の収入と支出の長期における因果関係に関する多くの実証分析では,標準的な誤 差修正モデルが適用されている。これに対して,Ewing, Payne, Thompson and Al-Zoubi

),Saunoris and Payne( ),Young( )やPaleologou( )等は,収入と 支出の長期均衡への非対称な調整過程を考慮した誤差修正モデルを適用して,収入と支 出の因果関係を分析している。ここで,Ewing, Payne, Thompson and Al-Zoubi )と

Young( )はアメリカ合衆国の政府を対象に,Saunoris and Payne( )はイギリ

スの政府を対象に,そしてPaleologou( )はドイツ,スウェーデンとギリシャの カ国の政府について,収入と支出の因果関係の検定を行っている。

(5)

本稿の構成は,以下の通りである。まず第Ⅱ節では,実証分析で使用するデ ータと分析方法について解説する。次に第Ⅲ節で各都道府県における因果関係 の分析結果を提示し,収入と支出の決定のあり方に違いがあるかどうかを検討 する。最後に,第Ⅳ節では結論を述べる。

Ⅱ.データと分析方法

.データ

本稿の実証分析では,わが国の 都道府県の財政を分析対象とし,各都道 府県の年度データを使用して,政府収入と政府支出の因果関係の検定を行う。

使用される収入及び支出のデータはそれぞれ,各都道府県の 年度から 年度までの歳入決算額及び歳出決算額である。ただし,沖縄県のデータ は本土返還後 年度から利用可能となるため,同県についてのみ 年度 から 年度までの年度データを使用する。

本稿では各地方政府(都道府県)の基礎的財政収支をめぐる収入と支出の因 果関係を分析することとし,各地方政府の収入("$!&)は歳入総額から地方債 収入を差し引いたもの,そして支出("!%&)は歳出総額から公債費を差し引 いたものとする。これらのすべてのデータ(名目値)は,『地方財政統計年報』

の各年度版より得られる!。本稿の実証分析では,上記の地方政府の収入("$!& と支出("!%&)の 変数についてそれぞれ自然対数をとった収入と支出のデ ータを用いることとし,各変数を#"$!&#"!%&で表示する。

なお,本稿で使用する収入と支出に関するデータは,すべて名目値のデータ である。これらのデータを実質化する場合には,例えば,県民経済計算の都道 府県ごとのデフレータを使用することが考えられるが,分析期間を通してすべ ての都道府県について同デフレータの一貫したデータを得ることはできない。

また,Owoye and Onafowora( )でも指摘されているように,政府の収入

( ) 都道府県の歳入と歳出に関する近年のデータについては,総務省ホームページの地方 財政統計年報から入手できる。また,それ以前の同データは,『地方財政統計年報』(地 方財務協会)より得られる。

(6)

と支出の因果関係の実証分析においては,名目値と実質値のいずれのデータを 使用すべきかについてコンセンサスは得られていない。さらに,アメリカ合衆 国において,各州の収入と支出の因果関係を分析しているPayne( )もま た名目値のデータを使用している。そこで,先行研究の動向も考慮し, 道府県の収入と支出の名目値のデータを用いて,各都道府県の収入と支出の決 定のあり方を実証的に分析することとする。

.共和分検定

実証分析ではまず,各地方政府(都道府県)の収入($"%!*)と支出($"!&* の 変数が長期的な均衡関係にあるかどうかを検定する。そこで, 変数間の 共和分検定について,本稿では,Pesaran, Shin and Smith( )によって提 案されたバウンド検定アプローチを適用する。このバウンド検定アプローチ は,Engle and Granger( )やJohansen( )のような共和分検定の手続 きと異なり,和分の次数が より小さいか,または に等しい変数からなるモ デルに適用される。すなわち,検定では,すべての変数について和分の次数が 同じでなければならないということを前提としていない。そのため,このアプ ローチは,事前に和分の次数を検定する際に生じる不確実性を排除できる

(Narayan, a)。

バウンド検定を実行するために,地方政府の収入($"%!*)と支出($"!&* について,次の⑴式と⑵式で表されるARDLモデルを推定する。

%$"%!*#"!"!

'#"

(""'%$"%!*!'"!

'#!

)"#'%$"!&*!'""$$"%!*!"""%$"!&*!""$"*

%$"!&*##!"!

'#"

(#"'%$"!&*!'"!

'#!

)##'%$"%!*!'"#$$"!&*!""#%$"%!*!""$#*

ここで,%は 階の階差演算子,$"*$#*は誤差項である。これより,⑴式に おいて, 変数間で共和分関係が存在しないという帰無仮説は#!&"$#"%#!

であり,対立仮説は#"&"$$#!!"%$#!である。一方,⑵式において,共和分 関係が存在しないという帰無仮説は#!&#$##%#!であり,対立仮説は#"&

(7)

"#"!!!"$"!!である。そのため,これらの帰無仮説を,それぞれF 統計量を 用いて検定する。

このF 統計量の漸近分布は 変数間で共和分関係が存在しないという帰無 仮説の下で非標準的であり,F 検定は,⒜データの非定常性,⒝独立変数の数,

そして,⒞サンプルサイズに依存している。Pesaran, Shin and Smith( )と

Pesaran and Pesaran( )は,検定における つの臨界値,すなわち下方の

臨界値と上方の臨界値を報告している!。下方の臨界値はモデルに含まれるすべ ての変数が##!$であることを仮定しており,上方の臨界値はすべての変数が

##"$であることを仮定している。

計算されたF 統計量の値が上方の臨界値を上回る場合には,共和分関係が 存在しないという帰無仮説は棄却されることになる。このとき,収入($"%!' と支出($"!&')の 変数は共和分関係にあると判断できる。そして,F 統計 量の値が下方の臨界値を下回る場合には,帰無仮説は棄却されず,収入($"%!' と支出($"!&')の 変数間で共和分関係は存在しないと判断する。しかし,

もし計算されたF 統計量の値が下方の臨界値と上方の臨界値の間にあるとす れば,共和分検定の結果は不確定となる。ここで,バウンド検定では他の共和 分検定の方法と異なり,従属変数と独立変数を区別することができる。例えば,

$"%!'を従属変数として,そして,$"!&'を独立変数とすることによって,

バウンド検定に基づき 変数間で共和分関係が存在すると判明すれば,その結 果はこの関係において$"%!'が従属変数となることを意味している(Narayan,

a)。

.Granger の因果関係

上記のバウンド検定において,地方政府の収入($"%!')と支出($"!&'

( ) F検定に関する つの臨界値は,サンプルサイズTについて,Pesaran, Shin and Smith

)ではT の場合,Pesaran and Pesaran( )ではT の場合が報告さ れている。さらに,Narayan( b)においても,T からT までのサンプルサ イズにおける臨界値が報告されている。なお,Microfit . では, つの臨界値を直接求 めることができる(Pesaran and Pesaran, )。

(8)

の 変数間で共和分関係があると判断されると,Odhiambo , ),Ozturk

and Acaravci( )に従って,次の⑶式または⑷式で表される誤差修正モデ

ルに基づき,Grangerの因果性検定を行う。

$%#'",#"!"!

)#"

* "")$%#'",!)"!

)#!

+"#)$%#"(,!)""$"!&,!""-",

$%#"(,#!!"!

)#"

*!")$%#"(,!)"!

)#!

+!#)$%#'",!)"!$"!&,!""-#,

ここで,-",-#,は誤差項で,"!&,!"は 変数の長期均衡関係から得られる ラグ付きの誤差修正項である。この誤差修正項の係数"$(または!$)は,長 期均衡からの乖離に対する調整の速度を表している。

そこで,収入(%#'",)と支出(%#"(,)の 変数間のGrangerの意味での 因果関係について,短期の因果関係の存在は,⑶式(ま た は⑷式)よ り,

$%#"(,!)の回帰係数"#)(または$%#'",!)の回帰係数!#))がF 検定で有意 であるかどうかで判断する。これに対して,長期の因果関係の存在は,⑶式(ま たは⑷式)における誤差修正項"!&,!"の係数"$(または!$)がt検定で有意 であるかどうかにより判断する。本稿では,Payne( )と同様に,長期の 因果関係に焦点を当てて,わが国の各地方政府(都道府県)における収入と支 出の因果関係を分析する。

Ⅲ.分 析 結 果

.単位根検定

本稿の実証分析では,はじめに,各地方政府(都道府県)の収入(%#'", と支出(%#"(,)の 変数についてそれぞれ単位根検定を行う。既述のように,

Pesaran, Shin and Smith( )によるバウンド検定アプローチでは,各変数

$%!&または$%"&であることを前提にしている。すなわち,バウンド検定

を実行するためには,どの変数も$%#&でないか,または和分の次数がそれを 超えていないかを確認する必要がある。そのために,一般的な検定方法として,

Dickey and Fuller( , )によるADF(Augmented Dickey-Fuller)検定を

(9)

適用する。表 には, 都道府県について,収入($"%!')と支出($"!&' の 変数に関するADF検定の結果が報告されている。ここで,ADF検定にお けるラグ数は,SBC(Schwartz Bayesian Criterion)に基づき選択された。

表 より,まずトレンド項を含まないモデルによる検定結果をみると,岩手,

宮城,福島の 県を除く都道府県の各水準変数について,$"%!'$"!&' いずれの 変数も %の有意水準で単位根の帰無仮説が棄却される。そのた め,これら の 都 道 府 県 に つ い て は,$"%!'$"!&'の 変 数 が と も に

#!!"であると判断される。また,岩手県について,$"%!'#!!"変数と判

断されるが,$"!&'は 階の階差変数においても %の有意水準で単位根の 帰無仮説を棄却できず,#!#"変数である可能性が高い。さらに,宮城県と福 島県については,$"%!'$"!&'の 変数はともに 階の階差変数において %の有意水準で単位根の帰無仮説が棄却されず,#!#"変数である可能性 が高い。

一方,次にトレンド項を含むモデルによる検定結果をみると,青森,岩手,

宮城,福島,岐阜と沖縄の 県を除く都道府県では,$"%!'$"!&'のいず れの 変数も,水準変数では %の有意水準で単位根の帰無仮説を棄却でき ないが, 階の階差変数では帰無仮説を棄却できることがわかる。したがっ て,これらの 都道府県において,$"%!'$"!&'の 変数はともに#!""

変数であると判断される。沖縄県については,$"%!'#!""変数であるが,

$"!&'#!!"変数であるという結果が示されている。また,青森と岐阜の各

県については,$"!&' %の有意水準で#!""変数であると判断されるが,

$"%!'#!#"変数である可能性が高い。さらに,岩手,宮城,福島の 県に

ついては,$"%!'$"!&'はともに, 階の階差変数においても %の有意 水準で単位根の帰無仮説が棄却されず,#!#"変数であるといえる!

( ) 表 のトレンド項を含まないモデル,または含むモデルによるADF検定の結果にお いて,青森,岩手,宮城,福島,岐阜の 県については,収入($"%!')と支出($"!&' の両方またはいずれかの変数が,#!!"でも#!""でもないと判断される。そのため,こ れらの各変数について 階の階差をとってADF検定を行ったところ,すべての変数に ついて %の有意水準で単位根の帰無仮説が棄却された。

(10)

トレンド項なし トレンド項あり

都道府県 変数 階の階差 階の階差

北海道 #"$!& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )* − . ( ) ( ) − . ( )***

青 森 #"$!& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )

#"!%& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )**

岩 手 #"$!& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )

#"!%& − . ( ) − . ( ) − . ( ) − . ( )

宮 城 #"$!& − . ( ) − . ( ) − . ( ) − . ( )

#"!%& − . ( ) − . ( ) − . ( ) − . ( )

秋 田 #"$!& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

山 形 #"$!& − . ( )*** − . ( )* − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )**

福 島 #"$!& − . ( ) − . ( ) − . ( ) − . ( )

#"!%& − . ( ) − . ( ) − . ( ) − . ( )

茨 城 #"$!& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

栃 木 #"$!& − . ( )*** − . ( )** ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )** − . ( ) ( ) − . ( )***

群 馬 #"$!& − . ( )*** − . ( )* ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

埼 玉 #"$!& − . ( )* − . ( ) ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )** − . ( ) ( ) − . ( )***

千 葉 #"$!& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

東 京 #"$!& − . ( )** − . ( )** − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( )** − . ( ) − . ( )***

神奈川 #"$!& − . ( )*** − . ( )** − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

新 潟 #"$!& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

富 山 #"$!& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( )** − . ( ) − . ( )***

石 川 #"$!& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )** − . ( ) ( ) − . ( )***

単位根検定

(11)

トレンド項なし トレンド項あり

都道府県 変数 階の階差 階の階差

福 井 #"$!& − . ( )*** − . ( )* − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )** − . ( )** ( ) − . ( )***

山 梨 #"$!& − . ( )*** − . ( )** − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( )*** − . ( ) − . ( )***

長 野 #"$!& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

岐 阜 #"$!& − . ( )* − . ( ) − . ( ) − . ( )

#"!%& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )*

静 岡 #"$!& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )* − . ( ) ( ) − . ( )***

愛 知 #"$!& − . ( )*** − . ( )*** − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

三 重 #"$!& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

滋 賀 #"$!& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

京 都 #"$!& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

大 阪 #"$!& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( )*** − . ( ) − . ( )***

兵 庫 #"$!& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( )*** ( ) − . ( )***

奈 良 #"$!& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

和歌山 #"$!& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

鳥 取 #"$!& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )** − . ( ) ( ) − . ( )**

島 根 #"$!& − . ( )*** − . ( )*** − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

岡 山 #"$!& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

広 島 #"$!& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

(続き)

(12)

トレンド項なし トレンド項あり

都道府県 変数 階の階差 階の階差

山 口 #"$!& − . ( )** − . ( ) ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )**

徳 島 #"$!& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )* − . ( ) − . ( ) − . ( )**

香 川 #"$!& − . ( )* − . ( ) ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )** − . ( ) ( ) − . ( )*

愛 媛 #"$!& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

高 知 #"$!& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )* − . ( ) ( ) − . ( )*

福 岡 #"$!& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

佐 賀 #"$!& − . ( )** − . ( )* − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )** − . ( )* − . ( ) − . ( )***

長 崎 #"$!& − . ( )*** − . ( )* − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

熊 本 #"$!& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

大 分 #"$!& − . ( )*** − . ( )* − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( )** − . ( ) − . ( )***

宮 崎 #"$!& − . ( )** − . ( )* ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( ) ( ) − . ( )***

鹿児島 #"$!& − . ( )*** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )** − . ( ) − . ( ) − . ( )***

沖 縄 #"$!& − . ( )** − . ( )*** − . ( ) − . ( )***

#"!%& − . ( )*** − . ( )*** − . ( )*** − . ( )***

(続き)

注:ADF検定において,トレンド項なしは定数項のみを含むモデル,トレンド項ありは定数 項とトレンド項を含むモデルによる検定である。検定統計量の括弧内の値は,検定におけ るラグ数を示している。このラグ数は,SBC(Schwartz Bayesian Criterion)に基づき選択 されている。ADF検定における臨界値は,Mackinnon( )より得られる。

***は %水準で有意,**は %水準で有意,* %水準で有意であることを示す。

(13)

以上より,ADF検定において,モデルにトレンド項を含まない場合と含む 場合での検定結果は異なっているが,トレンド項を含むモデルによる検定結果 で判断すると,青森,岩手,宮城,福島,岐阜と沖縄の 県を除く都道府県に ついて,収入($"%!')と支出($"!&')の 変数はともに#!""変数である といえよう。また,沖縄県については,収入と支出の 変数は#!!"または

#!""であるが,青森,岩手,宮城,福島,岐阜の 県については, 変数の

うち少なくとも つは#!#"変数であると判断される。なお,同様の結果は,

ADF検定のラグ数がAIC(Akaike Information Criterion)に基づいて選択され た場合についても得られた。そのため,以下の分析では,青森,岩手,宮城,

福島,岐阜の 県を除いた 都道府県についてそれぞれ,共和分のバウンド 検定を実行する。

.共和分検定

共和分のバウンド検定の結果は,表 に報告されている。ここで,⑴式と⑵ 式におけるラグ数は,SBCに基づき選択された。まず,収入($"%!')を従 属変数,支出($"!&')を独立変数とする場合においては,北海道や秋田,山 形など, 道府県で,共和分関係の存在が示されている。これらの道府県で は,計算されたF 統計量の値が %水準で上方の臨界値を上回っている。こ れに対して,東京都と沖縄県については,F 統計量の値が %水準でも下方 の臨界値を下回るため,共和分関係は存在しないと判断される。また,大阪府 については,計算されたF 統計量の値が %水準での下方の臨界値と上方の 臨界値の間にあるため,検定結果は不確定となる。

次に,支出($"!&')を従属変数,収入($"%!')を独立変数とする場合で は,秋田,山形,茨城をはじめ, 府県において,共和分関係の存在を示す 検定結果が得られている。これらの府県については,計算されたF 統計量の 値が %水準で上方の臨界値を上回るため, 変数間で共和分関係が存在し ないという帰無仮説は棄却されることになる。一方,静岡,鳥取,島根の 県 については,F 統計量の値が %水準でも下方の臨界値を下回るため,共和

(14)

従属変数"$"%!' 従属変数"$"!&' 都道府県 F統計量

#!$!"!!#!! 共和分関係

F統計量

#!$""!"#!! 共和分関係

北海道 ** あり 不確定

青 森

岩 手

宮 城

秋 田 ** あり ** あり

山 形 ** あり ** あり

福 島

茨 城 ** あり ** あり

栃 木 ** あり * あり

群 馬 ** あり ** あり

埼 玉 ** あり ** あり

千 葉 ** あり ** あり

東 京 なし 不確定

神奈川 ** あり ** あり

新 潟 ** あり ** あり

富 山 ** あり ** あり

石 川 ** あり ** あり

福 井 ** あり * あり

山 梨 ** あり ** あり

長 野 ** あり ** あり

岐 阜

静 岡 * あり なし

愛 知 ** あり ** あり

三 重 ** あり ** あり

滋 賀 ** あり ** あり

京 都 ** あり ** あり

大 阪 不確定 不確定

兵 庫 ** あり * あり

奈 良 ** あり * あり

和歌山 ** あり * あり

鳥 取 ** あり なし

島 根 ** あり なし

岡 山 ** あり ** あり

共和分のバウンド検定

(15)

分関係は存在しないといえる。また,北海道,東京都,大阪府の検定結果は,

F 統計量の値が %水準での下方の臨界値と上方の臨界値の間にあるため,

不確定である。

そこで,表 において,検定結果が不確定であった北海道,東京都,大阪府 についてはそれぞれ,Owoye and Onafowora )と同様に,Banerjee, Dolado and Mestre )によるECM(Error-Correction Mechanism)検定を適用して,

誤差修正モデルにおける誤差修正項の係数のt検定に基づき,共和分検定を行 うことにする!。ここでは,北海道,東京都,大阪府のそれぞれについて,収入

($"%!')と支出($"!&')の 変数は,表 のトレンド項を含めたモデルに

従属変数"$"%!' 従属変数"$"!&' 都道府県 F統計量

#!$!"!!#!! 共和分関係

F統計量

#!$""!"#!! 共和分関係

広 島 ** あり ** あり

山 口 ** あり ** あり

徳 島 ** あり ** あり

香 川 ** あり ** あり

愛 媛 ** あり ** あり

高 知 ** あり ** あり

福 岡 ** あり ** あり

佐 賀 ** あり ** あり

長 崎 ** あり ** あり

熊 本 ** あり * あり

大 分 ** あり ** あり

宮 崎 ** あり ** あり

鹿児島 ** あり ** あり

沖 縄 なし ** あり

(続き)

注:従属変数"$"%!'については,⑴式の推定による帰無仮説#!$!"!!#!!に関する検 定結果を,従属変数"$"!&'については,⑵式の推定による帰無仮説#!$""!"#!! 関する検定結果を示している。沖縄県以外の各都道府県について,検定に関するF統計量 の下方の臨界値と上方の臨界値はそれぞれ, %の水準で . と . , %の水準 で . と . である。沖縄県については,検定に関するF統計量の下方の臨界値と 上 方 の 臨 界 値 は そ れ ぞ れ, %の 水 準 で . と . , %の 水 準 で .

である。

**は %水準で有意,* %水準で有意であることを示す。

(16)

おけるADF検定の結果から#%!&変数であると判断し,Banerjee, Dolado and

Mestre( )で報告されているt統計量の臨界値に基づき,改めてt検定を

行うことにする。その検定結果は,表 に示されている。

表 より,収入($"%!))を従属変数とする場合における東京都と大阪府に 関するt統計量の値と,支出($"!&))を従属変数とする場合における北海道,

東京都と大阪府に関するt統計量の値はすべて,Banerjee, Dolado and Mestre

, p. , TableⅠ)における %の臨界値− . を上回っている。した

がって,これらの結果は,共和分関係が存在しないという帰無仮説を棄却でき ないことを意味する。一方,収入($"%!))を従属変数とする場合における北 海道に関するt統計量の値は %水準の臨界値− . を下回るので,共和分 関係が存在しないという帰無仮説を棄却できる。そのため,北海道については,

収入($"%!))を従属変数とする場合において長期の均衡関係が確認される。

以上より,収入と支出の 変数,またはいずれか一方の変数が#%"&と判断さ れる 県を除いた 都道府県について,ARDLバウンド検定の結果は次の通り

( ) Banerjee, Dolado and Mestre( )の検定では,ADL(Autoregressive Distributed Lag)

モデルにおけるラグ付き従属変数の係数に基づいて共和分検定を行う。Banerjee, Dolado

and Mestre( )は,次のECM回帰をOLSで推定することを推奨している。

$%$&$+)#!%$&'$*)""+)!!"%'*)!!"!'(#!!''$*)"'"#)

ここで,$%$&!%$&は,ラグ演算子Lについての多項式である。上式より,"のt 計量の値がBanerjee, Dolado and Mestre )で報告されている臨界値を超えていれば,

共和分関係が存在しないという帰無仮説は棄却されることになる。

従属変数$$"%!) 従属変数$$"!&)

都道府県 t統計量 共和分関係 t統計量 共和分関係

北海道 − . ** あり − . なし

東 京 − . なし − . なし

大 阪 − . なし − . なし

ECM 検定

注:ECM検定におけるt統計量の臨界値は,Banerjee, Dolado and Mestre , p. , Table

Ⅰ)で報告されている。このt検定での %水準の臨界値は− . , %水準の臨界値は

− . である。

**は %水準で有意であることを示す。

参照

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