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中学生を対象にしたストレスマネジメント教育の効果

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(1)

臨床・健康教育学系

スクールカウンセラーによる

中学生を対象にしたストレスマネジメント教育の効果

-質と量からの評価-

宮 下 敏 恵 ・田 中 圭 介

(令和元年月30日受付;令和元年11月29日受理)

要   旨

 本研究の目的はスクールカウンセラーによる中学生を対象としたストレスマネジメント教育の効果を検討すること であった。児童生徒への予防的支援として,スクールカウンセラーによる心理教育が今後益々求められることが指摘され ている(石倉・中田, 2016)。学校現場で実施可能な少ない回数による心理教育を行うことが重要だと考えられる。そこ で本研究においては田中(2018)のプログラムを参考に回の心理教育による効果を検討することを目的とした。その際認知的評価測定尺度による量的評価と自由記述の分析による質的評価の両方から検討を行うこととした。プログラムの内 容としては,ストレッサーとストレス反応に対する考え方の影響の説明,前向きな考え方を探すゲーム,呼吸法などで あった。分散分析を行ったところ中学生男子において心理教育後に認知的評価測定尺度のコントロール可能性 上昇するという有意な差がみられた。自由記述の分析を行ったところ呼吸法などの具体的な対応方法に関する内容が最 も多くみられた。中学生男子においては前向き思考の大事さの理解が多くみられ中学生女子においては多面的思 考の大事さの理解」が多くみられた。学校の実態を把握しているスクールカウンセラーが心理教育を行うことにより,少 ない回数の授業でも中学生男子においては効果がみられる可能性が示唆された。中学年生の女子において効果がみら れるような心理教育の内容を今後さらに検討する必要がある。

KEY WORDS

psychological education 心理教育

school counselor スクールカウンセラー

junior high school students 中学生

 目的   

 文部科学省(1)によれば

平成29年度の全国小中学校における不登校の児童生徒数は144

,

031人にのぼり

年連続の 増加となっている。不登校の児童生徒数において

小学校では35

,

032人

(

平成28年度30

,

448人

),

中学校では108

,

999

(

平成28年度103

,

235人

)

であり

いずれも前年度より増加しており

小学校では185人に

中学校では31人に

人という高い割合がみられている。またいじめの認知件数は小学校では317

,

121件

中学校では80

,

424件の合計 397

,

545件であり前年度よりも増加している。思春期は精神疾患が発症しやすい時期であり

不登校や引きこもり

成績低下につながる可能性も高いなど

将来への影響は大人より大きいことが指摘されている(2)。このように児童生徒 に関する心理的問題は多岐にわたり

また将来への影響性という点からも早期に予防することが重要だと考えられる。

 学校現場における心理職の専門家としては

文部科学省の事業であるスクールカウンセラーが中心と考えられ

童生徒の心理的問題の予防には大きな役割を果たすことが求められる。平成

年度に文部省の調査研究委託事業とし て始まったスクールカウンセラー制度において

平成

年度は全国154校の配置であったが

平成

年に553校

平成

年には1

,

056校と急激に拡大し

平成30年度には26

,

700校となっており

平成31年度までには全公立小中学校

(

27

,

500校

)

に配置することが政府のひとり親・多子世帯等自立応援プロジェクトにも示されている。スクールカウン セラーの役割については

学校のニーズや地域の特性に基づき

多様な形で行われており

スクールカウンセラーが 試行錯誤しながら実践を行っていることが指摘されている(3)。しかしその後

教育再生会議の第七次提言

第八次提 言によりチームとしての学校の重要性が指摘されるようになり

さらには平成27年に中央教育審議会の

チームとし ての学校の在り方と今後の改善方策について

(

答申

)」

が発表され

,「

チームとしての学校

の在り方が示され

具体 的な改善方策の

つとしてスクールカウンセラーを法令に位置付けられるように求めている。このことから

平成29

月に学校教育法施行規則が改正され

,「

スクールカウンセラーは

学校における児童の心理に関する支援に従事 する

と職務の内容が法令上に位置付けられるようになったのである。さらに文部科学省の

児童生徒の教育相談の

(2)

充実について-学校の教育力を高める組織的な教育相談体制づくり-

(

報告

)」

において

スクールカウンセラーの職 務が明確化されている(4)。スクールカウンセラーの職務としては①不登校

いじめ等の未然防止

早期発見及び支 援・対応等がまずあげられており

具体的には

(

)

児童生徒及び保護者からの相談対応

,(

)

学級や学校集団に対す る援助

,(

)

教職員や組織に対するコンサルテーション

,(

)

児童生徒への理解

児童生徒の心の教育

児童生徒及 び保護者に対する啓発活動

項目となっている。②不登校

いじめ等を学校として認知した場合又はその疑いが 生じた場合

災害等が発生した際の援助があげられており

具体的には

(

)

児童生徒への援助

,(

)

保護者への助 言・援助

,(

)

教職員や組織に対するコンサルテーション

,(

)

事案に対する学校内連携・支援チーム体制の構築・

支援

項目となっている。さらに具体的な内容をみてみると

児童生徒や保護者との面接はもちろん

児童生徒 本人のアセスメントや家族や教職員などとの関係性など

多面的・多層的な学校アセスメント

教職員や組織に対す るコンサルテーションが求められている。事案が発生してからではなく

未然防止

早期発見

早期支援・対応が重 要視されており

教職員とスクールカウンセラー等が一体となった教育相談体制づくりが重要であるとされてい (5)。そしてスクールカウンセラーは

事案対応にとどまらず

日ごろから教職員に協力しながら学校の教育相談活 動強化にさらに貢献するとともに

児童生徒への予防・開発的支援である心理教育にも大きく寄与することが期待さ れる

と述べられている(5)ように

すべての児童生徒を対象とした予防的心理教育などの一次的援助サービス(6)を行 うことが今後益々求められているといえるだろう(7)

 学校現場におけるすべての児童生徒を対象とした予防的心理教育としては

下田(8)が指摘するようにストレスマネ ジメントプログラム(9),(10),(11),(12)

集団社会スキルトレーニング(13),(14)が多くみられる。東日本大震災後のトラウマケア とストレスマネジメントに関する心理教育の

側面をとりあげた研究(15)など幅広い実践研究の蓄積が進みつつあると いえる。さらに欧米で効果を実証されている認知行動的アプローチに基づく心理教育プログラムとして

抑うつに焦 点をあてた研究(16)や不安に焦点をあてた研究(17)がみられるようになっている。下山他(17)においては

認知再構成法プ ログラムとして

,4

セッション版プログラム

11セッション版プログラム

,6

セッション版プログラムの開発を行っ ている。11セッション版では自尊感情の増加

不安の低減などの効果がみられたものの

長期間であり実用的ではな いとしてさらに

セッション版プログラムの開発を行っている。しかし宮城他(18)が学校側の意見として指摘している ように

心理教育を行う上で

時間の確保や誰が授業を行うのかという問題は大きい。中学生及び高校生に対する抑 うつ予防心理教育プログラムを実践する際に

学校現場の導入が難しいと意味がないと指摘し

,6

回のプログラムを

回に再構成し効果を検討している研究もみられる(19)。前述したストレスマネジメントプログラムにおいても

回か ら10回前後

集団社会スキルトレーニングにおいても

回から10回前後のプログラム回数となっており

授業時数が 限られた中で

心理教育の授業のみで数回から10回近い回数を恒常的に確保することは難しいといえるだろう。学校 現場において実施可能となる少ない授業回数にするなどの工夫が必要だと考えられる(20),(21)。もう一つの誰が実施す るのかという点についてであるが

教師を対象に調査を行った先行研究(22)によれば

予防を目的とした取組におい

ストレス対処法を教えたり人間関係作りのスキルを教えたりするなどの心理教育についてはスクールカウンセ ラーに期待しているという結果が得られている。実際に学校にいるスタッフを活用することが有益であり

スクール カウンセラーの果たす役割は重要だと指摘されている(21)。学校のニーズを的確に把握するためにもスクールカウンセ ラーが担任等と連携して実施することでより行いやすくなると考えられる。

 以上の点から本研究では

今後益々必要性が高まると考えられるスクールカウンセラーによる心理教育の効果を検 討することを目的とする。予備的知見ではあるが

田中(23)

下山他(17)のプログラムを参考に

セッション単位の効 果検証を試みている。本研究においても

多忙な学校現場においてスクールカウンセラーが実施可能な回数として

田中(23)と同様に

回の心理教育プログラムを用いて検討を行うこととする。また

本研究においては

中学

年生を対 象に行った研究において

男女の特徴を配慮する必要が指摘されている(24)ことから

男女それぞれにおいてどのよう な影響がみられるのか検討を行うことも目的とする。本研究では心理教育を行った効果として授業前後の認知的評価 の測定を行う。さらに授業内容が中学生において理解できたかなどについて評価を行い

心理教育が生徒にとってど のような体験であったかという質的な側面を検討するために自由記述の分析を行うことも目的とする。 

2

 方法

21 調査対象者

 調査対象者は

A県の公立中学校

校の

年生

(

男子32名

女子23名

)

であった。受験や高校への進学を控えた

生を対象に心理教育を行ってほしいという学校側の依頼もあり実施したため

調査は2018年

2019年それぞれの

生を対象に実施されている。2018年の調査においては男子12名

女子12名

2019年においては男子20名

女子11名で

(3)

あった。

22 調査時期

 本研究における心理教育の授業は2018年

月と2019年

月に行った。

23 調査内容

 本研究で用いた尺度は三浦(25)による認知的評価測定尺度であった。本尺度は

影響性

コントロール可能性

因子14項目からなる尺度であり

信頼性

妥当性が確認されている。最近

ヶ月の間に学校の中で経験した最も いやな出来事を思い出してもらい

そのいやな出来事に対してどのように感じたかについて回答を求めた。

影響

については

学校の生活をおびやかすと思う

」「

心の大切なものを

なくすと思う

などの項目から構成されて おり

,「

コントロール可能性

については

原因を

なくすことができると思う

」「

解決するための方法がわかってい ると思う

などの項目から構成されている。

ぜんぜんそう思わない

から

とてもそう思う

件法で回答を求 めた。授業前での尺度の信頼性は影響性

α

=

.

80

コントロール可能性

α

=

.

87であった。

 また授業内容の評価について

以下の

項目について

,4

件法で回答を求めた。項目としては

「(

1

)

授業の内容は わかりやすかったですか?

」(

1

.

わかりやすかった

2

.

どちらかといえばわかりやすかった

3

.

どちらかといえばわ かりにくかった

4

.

わかりにくかった

),「(

2

)

授業を通して心の健康について理解は深まりましたか?

」 (

1

.

深まっ

2

.

どちらかといえば深まった

3

.

どちらかといえば深まらなかった

4

.

深まらなかった

),「(

3

)

授業を通して役 に立つ知識やストレスの対処法を得られましたか?

」(

1

.

得られた

2

.

どちらかといえば得られた

3

.

どちらかとい えば得られない

4

.

得られなかった

),「(

4

)

授業の内容に満足しましたか?

」(

1

.

満足した

2

.

どちらかといえば満足 した

3

.

どちらかといえば満足しなかった

4

.

満足しなかった

)

であった。さらに以上の

項目に加え

授業を受け た感想について自由記述を求めた。

24 調査手続き

 中学校に勤務するスクールカウンセラーが養護教諭と事前に打ち合わせを行い

学級のニーズについて話し合いプ ログラムの内容について検討を行った。50分の

コマの授業時間において心理教育に関する授業を行った。教育課程 に基づく授業時間内において実施した。授業の最後に前述した授業に関する

項目の質問と自由記述を求めた。認知 的評価測定尺度による事前調査は授業の

週間前に実施し

事後調査は授業終了の

週間後に行った。

25 授業内容

 心理教育に関する授業内容は田中(23)を参考に

,(

1

)

ストレッサーとストレス反応

及びストレス反応に対する考え 方の影響の説明

,(

2

)

前向きな考え方を探す個人エクササイズ

,(

3

)

前向き探しゲーム

,(

4

)

10秒呼吸法の体験とし た。前向き探しゲームは中学生が体験するストレス状況に対して

気持ちが前向きな考えを

人ずつ出していくとい うものである。前向き探しゲームの例や課題については学級のニーズにあったものを養護教諭と相談して用いた。受 験が近いために学習面でのストレス状況や高校生になったときの友人関係でのストレス状況などを前向き探しゲーム の例や課題に取り入れることとした。また前向き探しゲームのやり方については

グループ学習の際によく行ってい る形式とし

学級の班に分かれ

ストレス状況に対して

気持ちが楽になる前向きな考えを一人ずつ付箋に書いて出 していき

ミニホワイトボードにまとめるというものとした。

26 分析方法

 認知的評価測定尺度の

影響性

」,「

コントロール可能性

の各下位尺度において

独立変数を時期

(

pre, post

)

×性

(

)

要因混合計画による分散分析を行った。分析はIBM-SPSS Ver

.

24で行った。

 授業内容の評価に関する

項目は各評定について人数を算出し

自由記述については臨床心理学を専門とする

の研究者が協議し

カテゴリーごとに分類を行った。

27 倫理的配慮

 質問紙の回答は本研究以外には使用しないこと

回答は強制ではないことを口頭で伝えた。また心理教育の授業及 び質問紙の回答においては

担任及び養護教諭が同席し

心身の不調を訴えた際は速やかに保健室に同行するように 配慮を行った。

(4)

3

 結果

31 認知的評価測定尺度の分析

 認知的評価測定尺度の分析対象者は記入漏れや規則的な回答など回答に不備がみられたものを除外した結果

2018 年の調査においては男子11名

女子

2019年の調査においては男子15名

女子11名となった。

 

影響性

において時期×性別の

要因分散分析を行ったところ

主効果

交互作用ともに有意な差はみられな かった。

コントロール可能性

において時期×性別の

要因分散分析を行ったところ

交互作用に有意な差がみら れた

(

F

(

1

,

44

)

=5

.

98

,

p<

.

05

)

。時期

性別の主効果

はみられなかった。男子において

授業後にコント ロール可能性が上昇するという結果がみられた。この 結果はFigure 1に示した。分散分析の結果及び認知的 評価測定尺度の平均値

標準偏差をTable 1に示した。

32 授業内容の評価の項目について

 授業内容の評価においては

認知的評価測定尺度の 分析対象者46名のうち

未記入の

名を除いた男子26

女子18名を分析対象とした。

(

1

)「

授業の内容は わかりやすかったですか?

においては

,「

わかりや すかった

を選んだのは44名

(

100

%)

であった。

(

2

)

授業を通して心の健康について理解は深まりました か?

においては

,「

深まった

を選んだのは40名

(

90

.

9

%),「

どちらかといえば深まった

を選んだの

名であった

(

9

.

1

%)

(

3

)「

授業を通して役に立つ知識やストレスの対処法を得られましたか?

においては

,「

られた

を選んだのは38名

(

86

.

4

%),「

どちらかといえば得られた

を選んだのは

(

13

.

6

%)

であった。

(

4

)「

授業 の内容に満足しましたか?

において

満足した

を選んだのは43名

(

97

.

7

%),「

どちらかといえば満足した

を選 んだのは

(

2

.

3

%)

であった。

34 自由記述の分類結果

 自由記述の分類においては

授業内容の評価と同様に44名を分析対象とした。授業を受けた感想について

自由記 述の回答を分類したところ

,7

つのカテゴリーに分類された。自由記述の

文の中に複数の分類内容を含むものは複 数のカテゴリーにカウントした。その結果

多面的思考の大事さの理解

」「

今後の対処

(

前向き思考

呼吸法等

)

可能 性について

」「

前向き思考の大事さの理解

」「

ストレスの理解

」「

今後の生活への意欲

」「

授業に関する感想

」「

その

に分類された。男女別の結果をTable 2に示した。

 カテゴリーの内容についてであるが

多面的思考の大事さの理解

はいろいろな角度から考えたり視野を広げたり するなど多面的に思考することの重要性についての内容である。

今後の対処

(

前向き思考

呼吸法等

)

可能性につい

今後の生活において本授業で習った呼吸法や前向き思考などの対処を使っていきたいという内容である。

前向き思考の大事さの理解

前向きに考えることの大事さについて理解したという内容である。

ストレスの 理解

については

ストレスの原因がたくさんあること

ストレスがどのように生じるのか理解したなどストレス全

■ ▲

16.00

15.00

14.00

13.00

12.00

11.00

男子 女子

pre       post

Figure 1.コントロール可能性における授業前後の変化

Table 1

認知的評価測定尺度の記述統計量と分散分析の結果

尺度 性別 人数 pre post 分散分析の結果

平均 SD 平均 SD 時期の主効果 性別の主効果 交互作用

認知的評価測定尺度 F 値 df F 値 df F 値 df

影響性 男子 26 10.81 4.15 10.54 5.08 1.24 1,44 .12 1,44 .43 1,44 女子 20 10.75 4.96 9.70 4.99

コントロール 男子 26 12.96 5.62 15.19 5.50 .77 1,44 .44 1,44 5.98 1,44 可能性 女子 20 13.65 4.77 12.60 5.36

p<.05

(5)

般に関して理解したという内容である。

今後の生活への意欲

においては

受験や高校生活など今後の生活につい て活かしていきたいなどの内容である。

授業に関する感想

は授業がおもしろかった

勉強になったなどの授業自 体に関する感想である。

 一番多く見られた回答は男女ともに

今後の対処

(

前向き思考

呼吸法等

)

可能性

であった。回答者数に占める割 合は男子で69

.

2

%,

女子でも60

であった。男子においては

前向き思考の大事さの理解

においても回答者数に占 める割合は57

.

7

となっており

次いで

ストレスの理解

」「

多面的思考の大事さの理解

となっている。女子にお いては

前向き思考の大事さの理解

」「

多面的思考の大事さの理解

が45

となっており

次いで

ストレスの理

」「

今後の生活への意欲

となっている。男子においては女子に比べて

前向き思考の大事さの理解

」「

ストレスの 理解

の割合が高く

女子においては男子に比べて

多面的思考の大事さの理解

」「

今後の生活への意欲

の割合が 高いという結果がみられた。

 具体的な回答として

今後の対処

(

前向き思考

呼吸法等

)

可能性

においては

呼吸法を大事にしたい

」「

勉強で 行きづまったり緊張したときは呼吸法を試してみようと思った

」「

いつも悪い方にしか考えてなかったのでこれから 前向きに考えるようにしていきたいと思います

などがみられた。男子に多くみられた

前向き思考の大事さの理

暗いことがあっても前向きに考えることが大切だと分かった

」「

今日の授業を通して嫌なことがあったらな んでも前向きに考えていきたいと思いました

などの内容がみられた。同じく男子において多くみられた

ストレス の理解

においては

,「

ストレスをためないことは大切

」「

毎日ストレスがたまっていくことを知った

」「

ストレスは 誰でも感じることなので

その対処法をどうするのかで差が生まれるのだと感じた

などの内容がみられた。女子に おいて多くみられた

多面的思考の大事さの理解

においては

,「

ストレスや不安があったら他の視点から考えた

考えすぎないようにしていきたいと思いました

」「

考え方を変える

新しい考えを見つけることでストレスを味 方にできると分かった

」「

ストレスを抱えたときはネガティブになって不安になったりイライラしたりするけど

ういうときは違う視点でみてみるといいんだと分かりました

などの回答がみられた。同じく女子の方が多い

今後 の生活への意欲

においては

,「

前向きに考えて高校生活を楽しみたいと思いました

」「

高校に行ったらストレスが多 くなると思うので

今日の授業を思い出していきたいと思います

などがみられた。

4

 考察

41 認知的評価測定尺度の結果について

 本研究においてはスクールカウンセラーによる心理教育の授業を行った効果について

性別による影響の違いも含 めて検討を行った。認知的評価測定尺度の

影響性

においては有意な差はみられなかったものの

コントロール可 能性

においては交互作用がみられ

男子において心理教育の授業後に得点が上昇するという結果がみられた。スト レッサーが自分にとってどの程度重要で脅威であるか(9)という

影響性

については男女ともに低下はみられず

トレッサーの原因や解決方法がわかっている

あるいは解決することができる(9)という

コントロール可能性

にお いて高くなるという有意な差がみられたのである。本尺度で評定した

いやな出来事について脅威であることは変わ らないものの

解決できる

対処できるという評価が上昇したといえる。先行研究においては

レジリエンス尺度の

楽観性

に性差がみられ

男子の方が楽観性は高く

支援において男子には

前向きな考え方や取組を支持

する などの性別に配慮する必要性が指摘されている(24)。先行研究において男子の楽観性の高さが指摘されていることから

本研究の男子において

コントロール可能性

の上昇がみられたのは

心理教育の授業を受けることで

スト

Table 2

男女別の自由記述の分類結果

男子(n=26) 女子(n=20)

回答数 回答数による割合( 回答者数に

よる割合( 回答数 回答数による割合( 回答者数に よる割合(

1:多面的思考の大事さの理解 6 11.5 23.1 9 19.1 45.0

2:今後の対処(前向思考呼吸法等)可能性について 18 34.6 69.2 12 25.5 60.0 3:前向き思考の大事さの理解 15 28.8 57.7 9 19.1 45.0

4:ストレスの理解 9 17.3 34.6 5 10.6 25.0

5:今後の生活への意欲 2 3.8 7.7 5 10.6 25.0

6:授業に関する感想(おもしろい勉強になった) 2 3.8 7.7 6 12.8 30.0

7:その他 0 0.0 0.0 1 2.1 5.0

(6)

レッサーに対処できるという前向きな考えを男子は取り入れやすいためコントロール可能性が高まったのではないか と考えられる。

回のみの授業ではあったが

男子においては前向きに対処できるという評価は高められるといえる だろう。同じく中学

年生に

回の心理教育の授業を行った効果について検討している先行研究(18)においても

男子 においてストレス反応の

無気力

得点が低下しており

女子に比べて男子に対しての授業効果が大きいことが示さ れている。

 本研究では女子において有意な差はみられなかったことから

今後は女子においても効果のみられる授業内容の工 夫が求められるだろう。中学生の女子においてはソーシャルサポートの影響が大きいことが明らかにされている(24) 本研究で対象とした中学

年生においては

高校進学という移行期でもあるため

ソーシャルサポートが得られにく い環境となることが考えられる。ソーシャルサポートを求める被援助志向性を高めたり

移行期におけるサポートの 求め方を強調したりするなど

女子に配慮した心理教育の内容を取り入れていく必要があるだろう。

 認知的評価測定尺度の

影響性

において

本研究では有意な差はみられなかった。中学

年生を対象に自己教示 訓練を用いたストレスマネジメントプログラムを行った研究(12)においては

,「

影響性

に改善がみられていることか

ストレスに対する考え方などのストレス状況が生じたときの考え方をより丁寧に説明し

ストレス状況が怖いも のではないということを実感できる体験などが必要だと考えられる。

42 授業内容の評価について  

 授業全体について

授業のわかりやすさ

授業を通しての理解の深まり

役立つ知識や対処を得られたか

授業内 容の満足度の

項目から評価を求めたところ

,4

項目すべてにおいて肯定的な評価が得られたといえるだろう。

階の評定において

最も肯定的な評定を得られた人数はどの項目もおおよそ90

となっている。授業者が中学校に配 置されているスクールカウンセラーであることからこのような高評価になった可能性も大きいと考えられるが

本研 究における心理教育の授業については

スクールカウンセラーと養護教諭が事前に打ち合わせを行い

学校や学年の 状況やニーズにあった内容や方法を検討したためとも考えられる。多忙な学校現場であるため繰り返し何度も打ち合 わせを行ったわけではないものの

スクールカウンセラーの業務において

日常的に学校全体の特徴や学年のニーズ などを共有していたために

心理教育の授業内容の検討は行いやすかったといえる。当該校の実情を把握しているス クールカウンセラーが実施することにより

生徒の実態に合わせた心理教育を行うことができたのではないかと考え られる。

43 自由記述の結果について 

 中学生を対象とした予防的心理教育を概観した下田(8)が質的側面の重要性を指摘していることから本研究では

学生における心理教育の実践の効果を検討する上で

尺度得点の変化では捉えられない質的な側面として自由記述の 分析を行った。男女ともに一番多くみられた内容は

今後の対処

(

前向き思考

呼吸法等

)

可能性について

であっ た。

呼吸法は入試の時に使ってみよう

などの記述がみられており

受験が迫っていることから

具体的な対処方 法に関心が高かったと考えられる。

回のみの心理教育の授業であっても具体的な対処方法を短い時間でも体験する ことが

特に受験期である中学

年生においては重要だと考えられる。また男子においては

前向き思考の大事さの 理解

」「

ストレス理解

が女子に比べて多くみられた。女子に比べて

前向き思考の大事さの理解

が多くみられた ことは

前述したように男子は女子に比べて楽観性が高いという先行研究の結果を支持するものといえるだろう。男 子においてはストレスについての理解が進み

対処方法を知ることにより

前向きに対処しようという体験になって いると考えられる。中学生男子においてはストレスについて丁寧に説明し前向きな思考の重要性を伝えることにより コントロール可能性の上昇につながると考えられる。

 女子においては男子に比べて

多面的思考の大事さの理解

」「

今後の生活への意欲

が多くみられた。男子に比べ て女子の方が抑うつ・不安得点が高いという研究結果が見いだされており(26),(27)

また自分を振り返る内省的な側面 である

自己指向性

抑うつ・不安

などのストレス反応に正の関連が示されている(24)ことなどから

中学生の 女子においては内省的な側面が強いと考えられる。本研究の自由記述においても

自分は視野が狭くなって自分を追 い詰めていることがある

」「

日ごろからストレスがたまりやすい性格

など自分自身について振り返る記述が女子に はみられ

その上で一方的な考え方をやめ

いろいろな角度から考えるようになることが大事という多面的思考の大 事さの気づきにつながっている。さらには受験や高校生活など

今後の生活への意欲

につながる記述も多くみられ ていることから

女子においては自分自身の今までの考え方の特徴に気づき

振り返りを行い

ストレス状況を多面 的にとらえることの重要性を理解し将来への生活意欲に結びつくという体験が生じているのではないだろうか。ただ し女子においては認知的評価測定尺度において有意な差はみられていない。女子においてはソーシャルサポートの影

(7)

響が大きいと指摘されているが

高校入学という移行期においてはどのような心理教育を行うことが効果的である

今後さらに検討する必要があるだろう。

 本研究における自由記述の結果について

授業回数やターゲットとした内容は異なり直接比較はできないものの

抑うつの予防についての授業を行った堤の研究(19)における自由記述の結果と比較すると

おおよそ同様の結果が得ら れたのではないかと考えられる。堤の研究(19)においては中学生

高校生を対象にしているが

堤の研究(19)における

スキル実践への意欲

は本研究における

今後の対処

(

前向き思考

呼吸法等

)

可能性について

と同様の内容と考 えられる。堤の研究(19)における

抑うつに対する認識の変容

は本研究における

ストレス理解

に対応しており

同じく堤の研究(19)における

抑うつ予防への意欲

前向き思考の大事さの理解

」「

多面的思考の大事さの理解

に対応していると考えられる。ストレスの理解が進み

前向き思考や多面的思考の大事さの理解につながり

さらに は今後の対処を行っていきたいという意欲についてもみられていることから

(19)と同様にストレスに向き合い

処していこうという変化がみられたと考えられ

経時的なストレス予防につながるなどの一次予防を促進させる変化 といえるだろう。堤(19)においてみられた

自分を振り返るきっかけになった

という分類は本研究においては明確に はみられなかったものの

女子においては自分の特徴を振り返る記述がみられている。この点についても堤(19)と同様 に本授業が自分自身を振り返るきっかけになり生徒にとって意味あるものとして認識されたと考えられる。

44 まとめと今後の課題

 本研究においては今後益々必要性が高まると考えられるスクールカウンセラーによる予防的心理教育の効果を検討 した。時間的ゆとりのない学校現場において実施可能な

回という心理教育の授業ではあったものの

男子において はストレス状況での

コントロール可能性

を高めるという有意な差が得られた。自由記述の回答結果と合わせて考 えると

男子においてはストレスを理解し

前向きな思考の重要性に気づくことなどの対処法を知ることにより

トレス状況でのコントロールができるという評価につながるといえる。学校状況や生徒の実態を理解しているスクー ルカウンセラーが実施することにより

多忙な学校現場との連携も容易に行うことが出来

実態に合った授業を行う ことができると考えられる。女子においては自分の特徴を振り返り

ストレス状況を多面的にとらえることの重要性 を理解していると考えられるが

女子において効果的な心理教育の授業内容をさらに検討していく必要があるだろ う。男女ともに自由記述の回答結果から

特に受験期である中学

年生を対象にしたこともあり

具体的なストレス 対処の方法に関心が高いという結果がみられている。短い授業時間であっても対処方法の体験活動を取り入れること は必要だと考えられる。

 本研究においては認知的評価のみをとりあげ効果を検討したが

ストレス反応などその他の指標によりさらに検討 を行う必要があるだろう。また本研究の限界として

学校の実情から統制群は設けることができなかったものの

後は統制条件を設定して効果検討を行っていくことも必要だと考えられる。さらには高校進学を控える移行期の女子 において

効果的な授業内容の工夫も求められるだろう。

〈付記〉本研究を行うにあたりご協力いただいた中学校の生徒の皆さま先生方さらには事前に丁寧な打ちあわせを繰り返 し行って下さった養護教諭の先生に深く感謝申し上げます。

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(9)

Clinical Psychology, Health Care and Special Education

Effects of school counselor-led stress management education on junior high school students: A quality and quantity-based evaluation.

Toshie M

IYASHITA

・Keisuke T

ANAKA

ABSTRACT

The purpose of this study was to examine the effect of stress management education provided by school counselors to junior high school students.  It has previously been pointed out that psychological education by school counselors is increasingly necessary as a form of preventive support for children (Ishikura & Nakata, 2016).  It is important that psychological education is conducted a small number of times throughout the school year.  Therefore, the purpose of this study was to examine the effect of one form of psychological education with reference to the program created by Tanaka (2018).  The research employed both a quantitative evaluation, using a cognitive evaluation measurement scale, and a qualitative evaluation, using free description analysis.  The content of the program included an explanation of the impact of thinking on stressors and stress responses, a game to highlight positive thinking, and breathing techniques.  An analysis of variance on a cognitive assessment scale showed a significant difference in junior high school boys’ “controllability” after psychological education.  An analysis of free description revealed that the most common content was related to specific measures such as breathing.  For junior high school boys, “understanding of the importance of positive thinking” was common, while for junior high school girls, “understanding of the importance of multifaceted thinking” was common.  The findings suggest that school counselors who understand the actual school situation should provide psychological education, and even a small number of lessons may be effective for junior high school boys.  Further research is necessary to understand which psychological education content can be effective for third grade junior high school girls.

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