審 査 論 文 要 旨(日本文)
論文提出者氏名: 植木 洋一郎 審査論文
題 名:Factors associated with duration before receiving definitive diagnosis of narcolepsy among Japanese patients affected with the disorder
(日本人ナルコレプシー患者における確定診断までの期間に影響する因子)
著 者:Yoichiro Ueki, Kenichi Hayashida, Yoko Komada, Masaki Nakamura, Mina Kobayashi, Makio Iimori, Yuichi Inoue
掲載誌:International Journal of Behavioral Medicine (in press, 2014)
(審査論文要旨:日本語論文の場合1,000字以内・英語論文の場合500 words)
【背景】
ナルコレプシー(NA)は、日中の過剰な眠気と REM 睡眠の易発現傾向を特徴とする睡眠障 害である。もし未治療で経過すると、日中の強い眠気による居眠りやミスのため、学業不振 や失業を引き起こす。その結果、患者のQOLは深刻な影響を受ける。
【目的】
未治療のNA患者は、日中の眠気のために、多大な社会的不利益を被っているにも関わらず、
確定診断までに長期間を要していることが少なくない。早期かつ正確な診断を促進していく ために、我々はレトロスペクティブに、NA患者が疾患を知り、睡眠専門医から確定診断を受 けるまでの期間と、疾患を知った経緯を調べた。これらに解析を加え、日本におけるNA患者 の確定診断までの期間に影響する因子を検討した。
【方法】
2010 年 3 月〜4 月に日本睡眠学センターもしくはスリープ&ストレスクリニックを受診した 外来患者181名(男性108名、女性73名、平均年齢37.6 ± 16.6歳、情動脱力発作(CA)を伴
うNA/CAを伴わないNA=131名/50名)を対象とした。彼らに対し、性別、年齢、発症時の
年齢、確定診断までの期間、診断分類、治療前のCAの頻度、治療前のエプワース眠気尺度の 得点を調べた。さらに、NAの疾患概念を知った経緯について調査した。また、確定診断まで の期間を従属変数、各臨床指標を独立変数として、多変量ロジスティック分析を行った。
【結果】
確定診断までの期間の平均は、9.9 ± 10.1年であった。NAの疾患概念を知った経緯で、最も 多かったのはメディア(58.6%)で、ついで一般医もしくは専門医(22.7%)、友人・家族(18.8%)
であった。多変量ロジスティック分析において、確定診断までの期間が中央値(7年)以下で あることには、成人発症であること(p < 0.01)、1995年以降に発症していること(p < 0.001)、 睡眠専門医もしくは一般医から疾患概念を初めて知ったこと(p < 0.001)が関連していること が示された。
【結論】
NA の早期診断および治療を促進するためには、1)主にインターネットを通じて、医療情報 をより広く提供していくシステム、2)専門医と一般医の連携をより強化し、さらに過眠症の 鑑別に焦点をあてた一般医のトレーニングシステム、3)10代発症のNA患者を早期に発見す るための学校職員への教育システムを確立していくことが望まれる。
東 京 医 科 大 学