論文の内容の要旨
氏名:奥 野 宏 晃
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:Interleukin-1β as a Predictor of Glucocorticoid Response in Ulcerative Colitis (IL-1βによる潰瘍性大腸炎のグルココルチコイド反応性の予測検討)
潰瘍性大腸炎(UC)は、腸粘膜の炎症と障害を来す根治療法のない慢性自己免疫性疾患である。近 年、内視鏡画像上での粘膜治癒を得ることがUCの治療目標として推奨されている。グルココルチコイド
(GC)は5-アミノサリチル酸製剤無効のUCに対する第一選択薬であるが、多彩な副作用や合併症を有す る。特に、GCにより誘発されるサイトメガロウイルス腸炎はUC難治化の原因であり臨床上大きな問題と なる。また、約20%のUC患者はGCに抵抗性を示し、CMV腸炎や重篤な術後合併症の発症率が増加す る。GCの投与前に、治療反応性の予測が可能であれば、抵抗性のある患者への無用な投与を避けること ができるが、実際は投与をすることでしか判定できない。近年、インターロイキン-1β(IL-1β)の持続 的な暴露がGC受容体(GR)の発現を低下させ、GCの抵抗性を誘導することが報告された。本研究は、
GC抵抗性および反応性UC患者の、炎症を有する大腸粘膜の生検組織を用いて、IL-1βおよびGRα、GR βの発現量を解析し、IL-1βの発現量がGC反応性の予測因子になりうるかを検討した。
当院および関連施設で下部消化管内視鏡検査を施行したUC患者の内、6カ月以上GCの使用歴がない状 態で生検を行った患者を候補とした。生検後にGC治療を行わなかったものや外科的治療介入により経時 観察が困難となった者を除外した。Rachmilewitz内視鏡インデックスを用いて、疾患重症度を標準化し たGC抵抗群10例と反応群9例、および健常コントロール8例の計27例を本検討の最終的な対象とした。対 象の生検粘膜からmRNAを抽出し逆転写反応を行い、得られたcDNAに対してIL-1β、GRの発現量を real-time PCRにより測定し、比較CT法で解析した結果、GC抵抗群は反応群に比べ、粘膜中のIL-1βの 発現が有意に上昇していた。また、IL-1βの発現量を用いて、感度90.0 %、特異度78.0 %、AUC 88.0 % と高い精度でGC抵抗群と反応群を判別することができた。GRの発現量はGC抵抗群と反応群で有意差を 認めなかった。
次に、IL-1βの発現が炎症の程度に依存したものか否かを確認するため、他の炎症性メディエーター
(TNF-α、IFN-γ、IL-12 p35、IL-12 p40、T-bet、IL-4、IL-13、IL-33、GATA3、IL-17A、IL-17F、 IL-21、IL-22、IL-23 p19、IL-6、RORC、TGF-β、FoxP3)についても同様の手法で解析したが、いず れもGC抵抗群と反応群で有意差を認めなかった。
本研究により、疾患重症度を標準化したUC患者において、大腸粘膜中のIL-1βの発現量はGC反応性の 判別を可能とすることが示唆された。