t tトー Il I I
発達性読み書き障害の視覚認知 ・音韻認知複合仮説の検討
1 7530681
平成 17 年 度〜平成 1 9 年度科学研究費補助 金 ( 基盤研究 ( C) ) 研究成果報告書
平成 20 年 3 月 研究代表者 松本 敏治
弘前大学教育学部教授
<は しがき >
本研 究 は、発 達 性読 み書 き障 害 の認知 的特徴 を視覚 認知 な らび に音 韻認 知 の側 面 か ら検 討 した も の で あ る。学 習 障害 を初 め とした発達 障害 に関す る研 究 は、本邦 にお いて も急激 に増加 し、特 別支援教 育 の 正 式 な 始 ま りとともに学校 現 場で も関心事 とな って い る。読 み書 き障害 について も関心 が高 まってお り 、200 7 年 日本 LD 学会 のメイ ンテーマ と して、デ ィス レクシア( 発達性読 み書 き障害) が取 り合 え あげ られ る ま で にな って い る。読 み書 き障害 につ いて は欧米 で の症 例 を も とに発展 して きたた め、アル フ ァベ ッ ト文 字 の読 み とそ の障害 をも とに理論 的 ・ 実証 的検討 がな され 、主 に音韻 的処 理がそ の原 因 と見 な され て きて い る 。ただ し、日本語 は英語 と文 字体 系が ことな る ことか ら 日本 語学 習者 にお ける読 み書 き障害 の メ カニ ズ ム を検 討 す る必 要 がある と思 われ 、幼 稚 園児お よび学齢 児 を対 象 と した研 究 が進 めれ て い る。本 報告者 は 、1993 年 以 降発達 障害 を対 象 と して支援 ・ 指 導 を行 って来 た。前任地 で ある室 蘭 にお いて 、読 み書 き に困難 を 示 す学 習 障害 の症例 を兄 い だ し、そ の後 1 0 数年 にわ た り、この症 例 をふ くめ読 み書 き障 害 を示 す 児童 生 徒 の 認 知 的特徴 と発達 的変化 を調査 して きた。第 1 論文 で は、発達 的読 み書 き障害 を示 した症例 の読 み特 性 を 音 韻 的 処理 と意 味的処 理 との関連で検討 した。第 2 論文 で は、小学 年 低学年 で読 み書 き困難 を訴 え 眼球 運 動 ・視 覚 認知 に問題 を示 した症 例で、認知 的特徴 と読 み書 きの困難 が学 年進 行 とともに どのよ うに変化 した か を報 告 した 。第 3 論文 で は、小学低学年 にお いて読 み に困発 を示 した二事 例 に対 して行 った 、五 十音 表 暗 唱 と対 連 合 学習 を用 いた指 導 法 の効 果 につ いて検 討 した。第 4 論 文 で は、英 語 の読 み に困難 を示 した 中学 生 ( 一 事 例 )を対象 に p h oni c s 指 導 を行 い、そ の効 果 を検 討 した。第 5 論文 で は、英 語 学習 に困難 を しめす 中学 生 5 名 と健常 中学 生 1 0 名 を対象 にそ の認知 的特徴 と p ho n i cs 指導 の効 果 について検討 した。第 6 論文で は 、研 究協 力 を 申 し出た小学 1 年 生か ら高校 生 ( 50 名)を対 象 に読 み書 き能 力 と視 覚 的認知 能 力 ・ 音韻 処 理能 力 に つ い て調査 し、読み書 き困難 の程度 と認知 的能 力 との関係 を検 討 した。
研究組 織 研究代表者 : 研究協 力者 :
松本 敬治 ( 弘前大学教 育学部 ) 鈴木瞳 ( 春 日協会学校)
藤 田酒代 ( 茨城大学特別支援 教育特別専 攻科)
交 付決定額僅 分額)
( 金額単位 :円)
直接経費 間接経費 合計
、
成17 年度 1 , ( X泊, 1 , C K X ) ,
、成
18 年度 鮒 , 60 0,
、
成19 年度 7 0 0, 21 0 , 91 0 ,
ゝ 計 2 , 3 0 0, 21 0 , 2, 51 0 ,
研究 発表 (1) 雑 誌発表
松本 敏 治 、平仮名 読 み に困難 を示 した 2 事 例 へ の読 み指 導 ‑ 50 音表 暗 唱 と対連 合 学 習 を用 いて‑ 、弘 前 大学 教育学部紀 要 、査読無 し 、94,2005,73‑ 80.
松本 敏治 、発達性 読 み書 き障害 を示 した 1 症 例 の平仮 名 読 み にお け る意 味的処 理 と音 韻 処理 につ い て 、特 殊教育学研 究 、査読有 り 、44( 2) 、2 006、1 03‑ 11 3.
松 本 敬治 、視機能 上 の 問題 と読 み書 き困難 を示 した症 例 の認知 特性 と学習 の推移 、弘 前大学教育 紀 要 、査 読無 し 、99,2008,1 25‑ 1 35.
( 2) 学会発表
松本 敏治 、英語 の読 み に困難 を示 した事例 へ の p h o ni c s 指導 、日本 特殊教 育学会 第 43 回大会 、2005 年 9 月
23 日、金沢大学
松本敏 治 、平仮名読 み に困難 を示 した 2 事例 へ の読 み指 導 ‑ 5 0音表 暗唱 と対連 合 学習 を用 いて‑ 、日本 特 殊 教育 学会第第 44 回大会 、2006 年 9
月1 2 日、群馬大 学
松本 敏 治 ・ 鈴木 瞳 ・ 藤 田清代、英 語学習 困難 中学 生へ の pho ni c s 指 導 の効 果 と認 知 的特徴 、日本 LD 学 会第
1 6 回大会 、2007
年11
月24 日、神 奈川
目次
第
1 論文
発達性読み書 き障害 を示 した‑症例 の平仮名読 み にお ける意 味的処理 と音韻 処理 について
一 一 一 一 ‑‑ ‑ 一 一 一 一 一 一 一 一 一 1 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ I ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 一 一 一 一 一 一 一 一 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 一 松本敏治一 一 ‑ ‑ ‑ ‑ 1 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑‑ ‑ ‑ ‑ ‑ I ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑‑ ‑ ‑ 1
第
2 論文
第
3 論文
第
4 論文
第
5 論文
第
6 論文
視機能上 の 問題 と読み書 き困難 を示 した症例 の認知特性 と学習 の推移
一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ‑ 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 松本敬治一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 日一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 日一 一 一 一 一 一 一 一 一 ‑一 一 1 3
平仮名読み に困難 を示 した 2 事例へ の読 み指導 ‑ 50 音義暗唱 と対連合学習 を用 いて一
I ‑一 一 一 一 ‑‑一 一 一 一 一 ‑ ‑一 一 一 一 一 一 一 ‑ 一 一 一 ‑‑ 一 一 一 一 一 ‑一 一 松本敏治一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ‑一 一 一 一 一 一 ‑一 一 一 一 一 一 一 一 27
英語 の読み に困難 を示 した事例へ の Phoni cs 指導
‑ ‑ ‑‑ ‑一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ‑ 一 一 一 ‑ 一 一 一 ‑一 一 ‑ 一 一 一 一 一 一 一 一 松本敏治‑ ‑一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ‑一 一 ‑一 一 一 一 一 一 一 一 一 ‑一 一 一 一 ‑一 一 一 一 一 一 一 3 7
英語学習 困難 中学生 と健常 中学生へ の phoni cs 指導 の効果 と認知的特徴
‑ ‑‑ ‑ ‑一 一 ‑一 一 ‑一 一 一 ‑‑ 一 一 ‑一 一 ‑‑ ‑‑ 松本敏治 ・ 鈴木 瞳 ・ 藤 田清代一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ‑一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ‑ 一 一 一 一 一 一 一 日40
読み書 き障害 の臨床的特徴 と文字/ イ ラス ト読 み速度 ・ 眼球運動 ・ Re y‑ Os t e r r i e t h 複雑図形記銘再生 との関係
一 一 一 一 一 一 一 ‑一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ‑一 一 一 一 一 一 ‑一 一 一 一 一 松本敏治一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ‑一 一 ‑一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ‑ 一 一 一 一 一 一 一 43
罪‑論 文
発達 性 読 み書 き障害 を示 した‑症 例 の平仮 名読 み にお け る 意味的処理 と音韻処 理 につ いて
松 本敏治
l目的
本報告 の 目的は、漢字読 み において音想起過程 に顕著な障害 を抱 え意味的処 理が優位 と思われ る発達性読 み書 き障害の青年 の症 例 にお いて,平仮名読 みが どのよ うな処理経路 を通 じて獲得 され たか を明 らか にす る ことである。
多 くの読み書き障害 を示す事例 は 、ADHD やそ の他の精神発達 上の問題 を抱 える ことが多 く、読み書 き学 習 の遅 れ に対す るそれ らの影響 を無視で きな い。しか し、本症例 は読 み書 きお よび 九九 の習得 困難以外 に は顕著 な障害 を示 さず 、読 み書 き障害 を単独 に示 した事例 で あ り、他 の因子 を排 除 して処 理過程 を検 討す ることが出来 る。また、本症例が調査および実験 に協力的で あ り、長期( 1 0 年以上)にわた る実験および調査 か ら詳細な資料 を うる ことが 出来た。
音読 の障害 を考 える際の代表的説 明モデル として二重経路 モデル と トライ ア ングル ・ モ デルがある。二重 経路 モデルは後天性失読症例 の説明モデル として提 出されて いるもので あるが 、発達性 の読み書 き障害症 例 の説 明 にもこれ らのモデルが用 い られ る(ワイデル ,2003) 。二重経路 モデルで は 、1) 文字 を規則 に基 づ いて音韻 に変換す る経路 と 2) 語柔辞書 を用 いて文字列全体 を普掛 こ変換す る経路が ある と見なす。また後 者の経路 には、辞書 か ら意味 システムへの参 照 を経 由 して音韻 へ至 る経路 と辞書か ら直接 音韻へ至 る経路 に分かれ る( 伊集 院 ・ 辰 巳 ,2003) 。一方、トライ ア ングルモデルで は、文字 ・ 意 味 ・ 音韻 の処理ユニ ッ トが相 互 に連結 し他 のユニ ッ トと情報交 換 を行 う。読 み において は、「 文字‑音韻 」、「 文字‑意 味‑音韻 」そ して
「 文字‑音韻‑意味( 意味 と音韻 は再帰的な処理が行われ る ) 」のプ ロセ スが存在す る と考 え られ る。
日本語 の表記 は、表 音文字 として の平仮 名 ・カ タカナ と表 象文字 の側 面 ももつ漢字 が混 在 して いる。表音 文字である仮名は主 に非語桑的読 みのプ ロセ ス( 音韻 想起 : 二重経路 仮説 で は非語柔経路 、トライア ングル モデルでは 「 文字‑音韻」) で処理 され る。一方、表 象文字で ある漢字 は、主 に意 味 を処理す るプ ロセ ス( 意 味 的処理 : 二重経路仮説 で は語真 経路 、トライ ア ングルモデル で は 「 文字‑意味‑音韻 」) で処理 される と見な される ( Sa s a numa,1 980;Ya ma dor i ,1 975) 。しか し、漢 字 の読み につ いて 、同音 異義 語 での読み 反応 時 間が非同書意義漢字 よ り長 い こと ( Wyde l l , Pa t t e r s on,a ndHumphr e ys ,1 993) 等 、意 味的処理 と音韻想 起 の両方で処理 され る ことを示す 結果 も得 られて いる ( Fus hi mi ,I j ui n,Pa t t e r s on,a ndTa t s umi , 1 999;
Hi no,Lup ke r ,Se a r s ,a ndOga wa,1 998;Sa s a mur a,Sa kuma,a ndKi t a no,1 992) 。同様 に親和性 が高 い平仮名 ・ カタカナ、す くな くともカタカナで は、その読み において意 味的処 理 と音韻想 起 の両者が 関連 し て いることを示す報告 もある ( Bes ne ra ndHi l de br a ndt s,1 987;Hi noa ta 1 . ,1 998) 。以 上の ことか ら、
平仮名読みは音 韻想起 を主 とす る もので あ って も、意 味的処 理 とも関連 してお り、同様 に漢字読み にお い
て も音韻想起 の過程が一定 の役割 を果た して いる と考 え られ る。
本症 例 は、漢字読みお よび書 きに顕著な困難 を示 したが、正確 に読 み( 語 音)を再 生 で きな い漢字で あ って も、意 味的 に対 となる漢字( 例 : 「 攻」に対 して 「 守 」 ) を選ぶ あるいは文章 に適 した漢字 を選 ぶ ことは可能 で あ り漢字 の意味的理解 は相対的 に保 たれて いる。また、漢字読 みの誤 り分析 の結果 は、意 味的類似性や熟語 的 なつ な が りを もつ漢字 との混乱( 例 : 攻‑ げき)を示 した( 松本 ,1 998) 。漢字 の読 み ・理解 につ いて の調査 の 結 果 は 、本 症 例 で は意 味 的処 理 が優 位 で 音 韻 想 起 ( 漢 字 一 昔 )に問題 が あ る こ と を示 唆 して い る( 松 本 , 1 998) 。一方、平仮名読 みは、小学校 3・ 4 年 まで困難 を示 したが、小学校高学年で は 日常 生活場面で困難 は報 告 されず平仮 名読み書 きは習得 された と考 え られた。
漢字 についての現在 の読 み書 き困難 の特 徴 は、本症例 で音 韻想起過程 に多 大な 困難 を抱 える ことを示 し た。しか し、表音文字 であ り、音韻想起過程 によって主 に処理 され る と考 え られ る平仮 名 につ いて読 み書 き に困難 を示 さな くな って いる。このよ うな平仮名読 みは、どのよ うに習得 された ので あ ろ うか。本症 例 の平 仮 名読 み習得の成立 につ いて は、つ ぎの よ うな仮説 が提 出出来 る。第 一 は、本症例 は、平仮 名 にお いて も意 味的処 理が なお優位 な状態 にあ り、意 味 的処 理 を使 用す るな ん らか の方 略( 例 :「あ」を見 て ア リを想 いだ し、そ の語頭音 を発話 す る)を行 うことで平仮 名読 み を可能 と した とす る解 釈で あ る。第 二 は、本症 例 の音 韻想起 過程 の損傷 あ るいは未発達 は、意 味処理過程 との比較 で の相 対 的 な もので あ り、限 られた もので あ れば音 韻想起 の学習 が可能 で ある程度保 たれて いる とす る もので あ る。あるいは、この両 者が 同時 に生 じ て いるのか もしれな い。平仮 名読 み に困難 を抱 える児童生徒 も多年 の学 習 によ って学習 が成立す る ことは よ く見 られる。読み書 き障害 を抱 える子 どもが文字習得 を進 める上 で、どの よ うな処 理 に基づ き読 み書 き の習得 を行 って いるか を明 らか にす る ことは、読 み書 き障害 を抱 える児 童生徒 へ の指導 を考 える際 の重要 な情報 となる。
本研究で は、本症例 の平仮 名読 みが意 味的処理 に依存 して いるのか 、音韻想 起 に も とづ くもので あ るか を 明 らか にす るため次 の 3 つの実験 を実施 した。
第一 の実験では、平 仮 名一文字 ・ 有意 味語 ・ 無意 味語読 み、イ ラス トの呼称 な どの読 み速度 を比較 した 。平 仮 名一文字の読 み速 度 は、音韻想起 速度 の 問題 が存在す るか否か を明 らか にす るで あ ろ うし、有意 味語 と 無意 味語 の読 み速度 の比較 は、平仮 名読 み にお ける意 味的処 理 の優 位 の程度 を明 らか にす る。第二 の実験 で は、平仮名読 み速度 へ の意味性 の効果 について検討す る。もし、本症例 が平仮 名読 み にお いて も大 き く意 味的処 理 に依存 して い るな ら読 み速度 に対す る意 味性 の効 果 は顕 著 な もの とな るで あ ろ う。第三 の 実験 は、既習得漢字 の読 み( 平仮 名)の正誤判 断 時間へ の意 味性 の効果 を検 討す る。読 み と して 、正 しい読 み、意 味的 に関連 した間違 った読み、意 味的 に無 関係な間違 った読 みの 3 種類 を用 い、反応 時間へ の意 味性 の効果 を調査す る。第‑お よび第二 の実験 は ともに発話 を求 め るため音 の構 成 な ど音韻操作 上 の 問題 が結 果 に影 響 を及 ぼす ことが考 え られた。この実験 は、漢字 の後 に呈 示 された読 み( 平仮 名)が正 しい もので あ るか否 か を判 断 しボタ ン押 しによって反応す る こととす るため、構音構成 を必 要 としな い。
本症例 の平仮 名読 み の処 理が 、未習得 あ るいは習得途 上 の漢字 と同様 に、意 味 的処 理 が優位 であ り、音韻 想起 になお問題 を抱 え るな ら、次 の ことが予想 され る。
1) 平仮 名一文字 お よび平仮名 の非語( 無意味語)の読 み速度 は、有意 味語 に比べ て顕著 に遅 れ る 。2) 平 仮 名 読 みにおいては、意 味性 の高 い平仮 名読 みの速度 は、意 味性 の低 い平仮 名 の読 み速度 を上 回る 。3) 漢 字 を提 示 した後 そ の読 み を提 示 して正誤 判断 を求 めた場 合 、本 症 例 は意 味 的 処 理 に基 づ いて 判 断 を行 う。従 っ て、意味的に近 い間違 った読み( 犬‑ね こ)におけ る反応潜時 は、意 味的 関連性 が低 い読 み 間違 い( 犬 ‑ つ ぼ)
‑ 2‑
の反 応 潜時 よ り長 くな くなるで あろ う。また健常 者 にお いて 同様 の効 果 が見 られ た と して も本症例 にお い てそ の差 はよ り顕著 で あ ろう。
日
方 法
症例 : E, 20 才 ( 2005 年 ) の男性。右利 き。
主 訴 :「 平仮名読 みが で きない、漢字 を覚 え られな い」を主訴 と して著 者 の教育 相 談 に来談 ( 8 歳 1 0 ケ月時) 。 腹性癖 癖 として抗 けいれ ん剤投与 を受 け、腹痛 ・ 唱 吐 はコ ン トロール され て いた。
検 査 結 果 : 8 歳 8 ケ 月時 点 ( CA8: 08) : 田中 ビネ ‑I Q113。CA1 0 歳 1 ケ 月 : I TPA 言 語 学 習 年齢 8 歳 11 ケ 月。
CA1 0 歳 3 ケ月 : WI SC‑ 良: FI ql O2、VI ql O8、PI q95。CA1 2 歳 2 ケ 月 : WI SC‑ 良: FI Q1 07、VI ql O O、
PI ql1 3。K‑ ABC 継 次処 理 88±9 , 同時処理 8 9±9 , 習得度 77±5 。
田中 ビネ一にお いて算 数 問題 ( 8 歳級)、図形 の記憶 ( 9 歳級)に困難 を しめす 。I TPA で は形 の記憶 が顕著 に低 い成 績 を示 した 。WI SC‑ R で は、算数 ( 7) と横木模様 ( 7) で低 い評価 点 を示 した 。K‑ ABC で は手 の動作 ( 7) 、 語 の配 列 ( 7) 、模様 の構 成 ( 7) 、位 置探 し ( 6) の評価 点 が低 い。ベ ンダーゲ シ ュ タル トテ ス ト ( 8: 08) で誤 謬 数 は、コ ビッツ方で 5 点 で平均 を上 回った。
TK 式読み能力検 査 ( CA1 2: ll ) では、語識別 、文理解 、推論 は偏差値 30‑44 の 間 で あ った。標準失語症検 査 ( CA1 2: 02) 漢字 ・ 単語 の書字 、漢字 ・ 単語 の書取 、お よび計算 に関す る項 目が 1 標 準 偏 差 よ り低 い値 を示 し た。ペ ン トン視覚記 銘検 査 ・ 施行 法 A/ C/ D( CA1 2: 02 時点) で は、視覚 記 銘 お よび 視 覚運 動 障害 を示す 所 見 はみ られなかった 。
学習 上 の困難 : 8 歳時 点 で 、平仮 名 ・ 片仮 名 ・ 漢 字読 み 、書字 にお ける鏡 文 字 、書 き順 、鏡 文 字 と正 文字 の弁 別 、左右 の認識 、九九 、形 の記憶 。1 2 歳 の時点で平 仮 名 の読 み書 きは改 善 、漢 字読 み書 き に困難 あ り、理 科 ・ 社会 に比べて算数 ・国語 の成績が悪 い。
漢字読 み は 、1 3 歳 と 1 7 歳 で小学 1 年 生か ら 6 年 生 まで の漢字 1 20 文 字 をそ れ ぞれ 単 独 ( 送 り仮 名 な し)で提 示 し、そ の読 み を調査 した。音訓 どち らか で も正 しい読 みが 生 じた場 合 を正 答 と した 。結 果 、1 3 歳 時点 で 、 正 反応 率 は 1 年 1 00%、2 年 63%、3 年 58%、4 年 0%、5 年 0%、6 年 0% で あ った 。17 歳 時点 で は 、1 年 1 00% , 2 年 1 00%, 3 年 95%, 4 年 90%, 5 年 70%, 6 年 8 0% 。この時 、4 年以 降の漢 字 で はほ とん どが音読み ( 88%) で あ
った。
1 3 歳 と 1 7 歳 で文 章 を提示 し指 示 され た部分 の漢字 を書 くとい う課題 を行 った( 例 : い Lをな げる ) 。1 3 歳 時 点 で 1 年 1 00%、2 年 0%、3 年 0%、4 年 0%、5 年 0%、6 年 0% で あ り 、1 7 歳 で は 、1 年 95%, 2 年 60%、3 年 45% , 4 年 5%、5 年 5%、6 年 0% で あった。
本症例の文字読 み の特 性 : 漢字 の読 み ・ 意 味理解 に関す るテ ス トの結果 は、読 み( 音韻 想起 ) が 出来 な い漢 字 で も、意 味的 に関連 した漢 字 を選択 す る こと、文 脈 に則 して適 切 な 漢 字 を選 択 出来 る こ とが示 され た ( 松 本 , 1 998) 。また 、漢字 の読 み誤 りと して、意味性 錯 読 ( 例 : 宿 ‑ りょか ん の りょ)、視 覚 性 錯 読( 例 : 苦‑ わ か い) が頻 繁 に見 られ る 。算 を…す う' ‑と読 む な ど熟 語 想起 か ら生 じた と推 測 され る読 み あ や ま りが多 発 し た。
なお、対象者お よび保 護 者 には研 究 の遂行 と発表 に関 して文書 にて 同意 を得 た。
実験
1
被験 者 : 本症例 E( CA: 1 6: 03) 。対照群は、大学生 7 名 ( C1, C2, C3, C4, C5, C6, C7) 。
刺 激 : 文字あるいはイ ラス トが 20 個 印刷 された A4 版( 横) カー ド。カー ドは印刷 され た項 目によって 、4 種類 に分 か れる( 有意味 単 語 、無意味語 、イ ラス ト、平仮名一文字) 。各カー ドには 、1 行 5 項 目で 4 行 、計 20 項 目が 印刷 されている。各 刺 激 種類 ごとに 3 枚計 1 2 枚用 意 され る 。1 文字 の大 き さは縦 8mmX 横 8mm 。イ ラス ト 1 つ の大 きさはほぼ縦 3cmX 横 3c m 程度で ある。有意味単語 は平仮 名でかかれ た 名詞 1 0 種類(こたつ 、な ま ず 、き りん,等)、無意 味単語 は有意 味単語 で もち いたすべて の平仮 名 を並 べ換 え作 成 した平仮 名 3 字 1 0 種 20 個 (きざさ、さ らめ 、な ごち、等) 、単文字 は平仮 名一文字 1 0 種 20 個 ,イ ラス トは有 意味語 で もち い られ た 名詞 のイ ラス ト(こた つ、なまず,き りん、等) であ る。
手続 き: 次のよ うな指 示 を与えた。「これか ら、文字(あるいは絵)を見せ ます。それ を左か ら右 に順 に読 んで ( 名前 をいって)くだ さい。出来 るだ け早 く正確 に読 んで くだ さい。」実敦 開始 前 にイ ラス トを提示 し、名前 の確 認 をお こな い、命 名が有意味単語刺激での命 名 と異な った場合 は、「これ は、さ く らです」な どの指示 を 与 えた。有意味単語 ,無意 味語 の語頭読み条件で は、「 各単語 の最初 の文字 だ け読 んで くだ さい」と教示 し、
イ ラス トの語頭読 み 条 件では 「 絵 の ものの名前の最初 の音 だ け、た とえば、ね こな ら叩ね 一 一 だ け、言 って くだ さい」と教示 した。あ らか じめ決 めた ランダム な順 序 で 1 2 試行 ( 4 条件 ×3 枚 ) 実 施 した 。イ ラス ト、有意 味 語 、無意味語、単文字 ともに施行 前 に「 今 回読 んで も らうカー ドに出て くる言葉 は、さ く ら、き りん、・‑で す。」な どのよ うに提 示 され る項 目につ いて、口頭 にて あ らか じめ教示 した。実験 者 の合 図 によって読 み を 始 め るようにもとめ,そ の読み上げる様子 を ビデ オテープで録画 した。
実験 2
被 験 者 : 本症 例 E( 実 験 実施時 CA1 6: 03) 。対 照 群 は、大学 生 と社会 人 8 名 ( C 1 , C2, C3, C4, C5, C6, C7 , C8) 。
材料 : 平仮名 2 文字 か らなる項 目( 例 : の こ、つの)を 1 行 5 項 目 ×1 0 行 、計 50 項 目印刷 した刺 激 カー ドを 6 枚作 成 した ( A4 半分 のサ イズ) 。各項 目の間 には 2 文字 分 の空 白を設 けた。文字 の大 き さは、縦 8 mmX 横 8mm で ある 。1 枚の刺激 カー ドに使用 され る項 目は 1 0 種 類 で あ り,各項 目が 5 回登場 し、そ の順 序 は ランダムで あ る 。6 枚 のカー ドは、含 まれる項 目の意 味の連想価 によって 3 種類 に分 け られ る。意 味性 高 2 枚( 例 : の こ、つ の)は、もっとも有意 味語 を想起 Lやす い もので あ り、逆 に意 味性低 2 枚( す に、れ ち)は,もっ とも有意 味語 を想起 しにくい。意味性 中 2 枚(も こ、そ む)は、そ の 中間であ る。意 味性 が 同一 の各 2 枚 は、使用す る項 目は 同一であるが項 目の順 序が異な って いる。これ らの刺激 は、梅本 ・ 森川 ・ 伊吹 ( 1 955) の無 連想価 分類表 か ら 選 出 した。
手続 き: 被験者 に、「これ か ら平仮 名 2 文字 か らな る言葉が 50 個 かかれた カー ドを見 せ ます 。左端か ら初 め て右下 まで横 に読 んで いって くだ さい。出来るだ け早 く正確 に読 んで くだ さい。で は,は じめて くだ さい。
は い。」との教 示 を与 えた。各 カー ドごとに 1 試行 ,計 6 試行 実 施 した。実施順 序 は,意 味性 高、中、低 ,低 、 中、高であった。実験者 の合図によ って読 み を始 め るよ うに もとめ,そ の読 み上 げる様子 を ビデ オテ‑ プで 録画 した
実験 3
被験者: 本症例 E( 実験実施時 CA15: 03) , 対照群 は、成人 ・ 大学生 6 名 ( C1 、C2、C3、C4、C5、C6)
‑41
装置 : 刺激提示装置 としてコンピュータデ ィスプ レイ を、反応用 にコ ンピュータゲームな どで使用 され るゲ ーム コ ン トローラーを用 いた 。Ma c i nt os h で動作す る心理実験用 ソフ トウェア Ps ySc ope を用 いて実験 を制 御 し、反応を記録 した。
刺激材料
漢字 :「 町、川、山、森、花 、足、空、虫、土 、赤」(山田( 1 998) よ り) 。これ らの読 み につ いて は学習が成立 して いた。
読み : 正 しい読み として、「 まち、かわ、や ま、も り、はな、あ し、そ ら、む し、つ ち、あか」。間違 って いるが意 味的連 関が ある読み として 「 む ら、うみ、おか、はや し、くさ、ひ ざ、くも、あ り、どろ、あお」。間違 ってお り 意味的連関も薄 い読み として 「 かめ、もち、すず、つめ、かぎ、ゆき、ふで、みみ、さめ、は り」が用意 された。
デ ィス プ レイ を、被験 者 の前 50c m に設置 し、漢字 および平仮 名刺激 は各文 字 ほ ぼ縦横 30mm の大 き さで 提示 した。
手続 き
実験 は、縦横 1 m80c m の聴覚検査用 の小部屋で実施 した。被験者 は椅子 に座 り机 の上 に置かれた コ ンピュ ータデ ィスプ レイ に対面 す る。被験者 の頭部 をあ ご載せ台 で固定 した。実験 者 は、被 験者 の横 5 0c m の距離 に座 る。実験 にあた って被験者 は利 き手 に反応用 のゲーム コ ン トロー ラー を持つ。実験 者 は、コンピュータ キーボー ドを机 の下 に隠 し持ち、実験 を制御す る。
次 のよ うな指示 を与 えた。「これか ら実験 を始 め ます。コ ンピュータ画面 の真 ん 中 に赤 い十字が で ます か ら、それ を見て いて くだ さい。わた しがキーボー ドを押す と、少 しして画面 に漢 字 が 出 ます 。そ して、そ の 後、その漢字 の読みが平仮名で 出て きます。その読みがあって いた らコン トロー ラーの上側 のボ タ ンを、間 違 って いた ら下側のボタ ンを、出来 るだけ早 く正確 に押 して ください。」
各試行 に先立 って、コン ピュータ上 に、赤 い十字 の凝視点 を提示す る。実験 者 は、被験者 が画面上 の凝視点 を注視 して いる ことを確 認 した後、キーボー ドを押 し試行 をスター トさせ る。この際、キーボー ドを押す音 は被験者 に聞 こえてお り、試行 開始 の合 図 とな って いる。キー押 し後 1 秒後 に、漢 字刺 激 を提示 ( 250ms e c)
し、その直後、読み文字( 平仮名)を提示す る。被験 者 の反応( ボ タン押 し)によ り読 み文字 は消え 、1 試 行 を終 了す る。本実験 に入 る前 に、予備練習 として 1 0 試行 を行 う。
各漢字刺激文字 に対 して正読 み、意味 関連 あ りの誤 った読 み、意味 関連 な しの誤 った読 み の 3 種類 の読 み
が呈示 される。各組 み合わせ ( 3 条件) で 1 0 試行 を行 い、全試 行で 300 試行 とした( 漢字 ( 1 0) ×読み ( 3) ×繰 り返
し( 1 0 ) ) 。提示順序 は ランダムで あ らか じめ決め られて いた 。1 50 試行 を 1 セ ッシ ョンと し 、2 セ ッシ ョン行
った 。1 セ ッシ ョンと 2 セ ッシ ョンの間は 5 分以上 の休憩時 間 を とった。また、セ ッシ ョン中での被験 者が疲
労 を訴えた場合 、随 時休 憩 を とった。本症 例 は 、1 セ ッシ ョン中 2 回程度 休 み を要求 した 。本症例 に対 して
は、反復 による効果 を見 るため.同様 の実験 をそ の後 2 回実 施 した 。1 回 目の反復実験 で は、漢字提 示 時 間を
500ms e c として 同様 の実験 を行 った 。2 回 目の反復実験 で は、再 び漢 字提示 時 間 を 250ms e c として 実験 を
行 った。ただ し、長時 間の実験 で は疲労 を訴 え、集 中で きな くな る ことか ら 、2 回 目の反 復実験で は各条件
の試行数 を半分 とし全試行 1 50 とした 。1 回 目の反復実験 で漢字提示時 間 を 500ms e c と したのは、健 常者 に
とっては 250 ms e c は漢字 認知 に十分 な時 間で あ ったが、本症例 は この提示 時 間で は漢 字 認知 自体 に困難 を
抱 える可能性 も考 え られ たた めで ある。反応 時間および反 応 はコ ン ピュータ に記録 され 、実験後 処 理 され
た。
Ⅰ Ⅰ Ⅰ
結 果実験 1 : 実験後、ビデオテープを再生 し、実験者の合図の直後か ら最後 の項 目を読 み上 げるまでの総時間 を ビデ オ テープのカ ウ ンターに従 って計測 した。各条件三試行 の平均読 み上 げ時間 を Fi g.1 ‑ 1 に示 した。本 症例 が示 した値 を基準値( 全被験者 の平均か らの標準偏差分 の隔た り)に変換 した ところ、イ ラス ト 0. 47 、 有意 味単語1 . 09 、無意味単語 2. 20 、イ ラス ト語頭音 0. 88 、有意味単語語頭音 0. 48 、無意 味単語語頭音 1 . 5 、 単文 字 0. 8 であった 。1) 無意味語 の読 み上 げ速度 は、健常成 人 に比べて顧著 な遅 れ を示 した 。2) 有意 味語読 みで は、健常者 との間で差はなか った 。3) 平仮名一文字 、有意味詩語頭 、無意味語語頭 と もに読 み速度 は健 常者 と同程度であ った。また, 無意味語で の遅れ は第一試行 で特 に顕著で あった。本症例 の無意味語読 み を 分析 した ところ、有意 味語 に比べて休止時間が長 く、有意味語 にはみ られな い吃音 の よ うな音 の繰 り返 し ( 例 : て ・ て・ て ごん) が見 られた。
イ ラ ス ト
鴨文字
Jl叩意嘩算芽頭書
新出帥算
糾酌むト
Jl!意嘩算
有意嘩算
Fi g. 111 イラス ト ・有意味語 ・無意味語 および ひ らがなl 文字の リス トの読み上 げ に要 した時間
実験 2: 実験 1 と同様 、実験後 ビデオテー プを再 生 し、実験 者 の合 図の直後か ら最後 の項 目を読み 上 げるま での総時間をビデオテープのカウンターに従 って計測 した。本実験 は、各刺激カー ドを初めて見る前 半の初 見 3 試行( 意 味性高、中、低)と同 じカー ドを再度見 る こととな る後 半 の再見 3 試行( 意 味性低、中、高)に分け ることが出来 る。前 半 3 試行 と後 半 3 試行 に分 けた意 味性 の効果 を Fi g.1 ‑ 2 に示 した。意 味性が高 いほ ど読 み上げ時間が短縮す る傾向が見 られたが、これ は健常成人 にお いて も同様で あった。全般的な、読 み時間は 健常成人に比べ る と顕著 に長か った。また、初見 と再見でのデータを見てみ る と平仮 名読 み速度 は、本症例 および健常成 人 ともに再見 で読み時間が短縮 して いる。本症例が特徴 的で あるの は、意 味性高条 件 での読 み時間の顕著 な短縮で ある。初見で 37. 8 秒、再見 で 27. 5 秒 と顕著な短縮( 1 0. 3 秒 、27%) を示 し、健 常成人 との差 も縮 小 して いる。一方 、意 味性 中お よび低条件での時間短縮 は 4. 6 秒 ( 1 0%) 、5. 1 秒 ( 11 %) で意味性
‑6‑
高条 件 に比 して小 さか った。健常成人の平均か らの隔た りを知 る 目的で本症例 の読 み上 げ時間の基準値 ( Z) を求 め た。結果は、第 ‑試行の高条 件 2. 3 7 、中条 件 2. 20 、低条件 1 . 9 2 , 第二 試行 の高条件 2. 0 、中条件 2. 3 3 、 低 条 件 1 . 88 であった 。意 味性高条 件で は、反復 によ り読 み 上 げ時 間そ の ものは顕 著 な短 縮 を示 して いる が、被 験者全体の分布 上 の位置 には大 きな変化 はない。
声l 一■
奮味性
低 高 中
意 味捜
低
F i g .2‑2 単語 リス ト読み における意味性 と反復 の効果
実験 3: 本症例 は、実 験 中な ん どか疲 労 を訴 え数 回休 憩 を必要 と した。実 施 中 に も凝視 が維持 で き な い こ と、あるいは 「 見損 な った」と報告す る試行 もあった。そ こで、全試行 の平均 ( 964ms e c ) か ら 3 標準偏 差以上 遅 い反応 2 23 3 ms e c 以上)について は凝視 の失敗 な どの可能性が あるもの として分析 か ら除いた。このよ う な試行 は、正読 み にお いて 1 試行 、意 味的 関連 あ りの誤 った読みで 6 試行 、意 味的 関連 な しの誤 った読 みで
1 試行 であった。二つ の反復実験 にお いては 5 0 0ms e c 条件の正読み、意味的関連性 のあ る誤 った読 み でそれ ぞれ 1 試行存在 した。また、本症例 で は、誤 反応 は正読みで 5 試行 、意 味的関連 のな い誤 った読 みで 1 試行み られた。対照群では 7 名全員で 45 ( 2%) の誤 反応 がみ られた。ほ とん どの場合 、本 症例 ・ 対 照群 ともに気 づい てお り直後 に「あ、間違 えた」な どの言語反応 が認 め られた。
各被験者 の示 した読 み の判 断 に要 した反応潜時 を Fi g.
1‑ 3 に示 した。本症例 の反応 潜 時 は他 の被験 者 に比
べてほぼ 3 0 0 か ら 5 00ms e c 長か った。
正読み 1意味同産あI) 意味開連な
h
不正t..t^み
Fi g.1‑3 漢字読みの正誤判断 に要す る時間
本症 例 の初 回 と反 復 1 お よび反復 2 で の反応 潜 時 の変化 を Fi g1‑ 4 に示 した。本 症 例 の反応 時 間 につ いて 3( 初 回、反復 1 、反復 2) ×3( 正読み、意 味的関連性 のある誤 った読 み、意 味的関連性 のな い誤 った読み )の 2 要 因の分散分析 を行 った結果、反復 の主効果 ( F( 2,73 0) ‑8 2. 89 ,
p<. 0 1) お よび読 み の主効果 ( F( 2,73 0) ‑ 1 3. 62 ,
p<. 0 1) が見 られ た。相互作用 は認 め られ なか った。反復 の効果 につ いて多重 比較 をお こな った と ころ、初 回は反復 1 お よび反復 2 よ り有意 に長か った( p <. 01 ) 。また 、反復 1 は反 復 2 よ り有意 に長か った。
( p <. 01 ) 。読 み の主効果 につ いて の多重 比較 の結果 は、正読 みで の反応潜 時 は意 味 的関連 のな い誤 った読 みで のそれよ り有 意 に長 い こと、意 味的関連性 の ある誤 った読みで の反応潜 時 は意 味的 関連性 のな い誤 っ た読みよ り有意 に長 い ことを示 した ( p <. 01 ) 。
初 回、反復 1 、反復 2 ごとに読 み の効果 につ いて 分散分析 を行 った と ころ、初 回 で主効 果 がみ とめ られた ( F( 2, 290) ,
p<. 01 ) 。多重比較 の結果 は、意 味的関連性 のある誤 った読 みで の反応潜 時 は、意味的関連性 の な い誤 った読 みよ り有意 に長か った( p <. 01 ) 。反復 1 で も主効果 がみ られ た ( F( 2, 295)‑4. 28 ,
p<. 05) 。 多重比較 の結果 は、正読 みで の反応潜 時 は、意 味 的関連性 のな い誤 った読 み よ り有 意 に長 い ことを示 した ( p <・ 05) 。反復 2 で は、主効果が認 め られなか った 。3) 対照群 の被験者で は C4 の被験 者で意味的関連 あ りの 誤 った読み とと意 味的関連な しの誤 った読 みで有意差( t ( 1 98) ‑2. 64 ,
p<. 01) が見 られた。
‑ 8‑
正読み 奮味階建あ I) 意味関連な し 不正読み
Fi g.1‑4 本症例 の実験繰 り返 しによる読み判 断時 間の変化
l V 考察
実験 1 の結果 は、平 仮 名一文字 の読 みお よび有意 味語 ・ 無意 味語 の語 頭 文字 を読 み上 げ る課題で は、本症例
の読 み速度 と健常成 人 のそれ との間 に隔 た りはな い ことを示 した。この結 果 は 、本症 例 は音韻 想起 過 程 に
問題 が あるな らば、読 み速度 に差 が 生 じる とす る 当初 の仮 説 とは一致 して いな い。それ ゆえ、一 一 一文 字 か ら
そ の文字 を含 む単 語 を想起 し、そ れ か ら語頭 音 のみ を取 り出す ‑ ■ とい うよ うな迂遠 な方 法 を採 用 して いる
とは考 え られ な い。本 症 例 も、健 常 成 人 同様 平 仮 名一 文 字 の読 み は音 韻 想 起 過 程 で 処 理 され る考 え られ
る。一方 、無意味語 ( 非語 )リス トの読 みは、顕著 に長 い時 間 を要 して い る。この ことは、無意味語読 み は、意
味 的処理 に依存 し得 な いゆえ に音韻 想起過程 に大 き く依 存 し、そ のた め本症 例 で は読 み時 間が長 くな る と
す る説 と一致す る。しか しなが ら、平仮 名一文字 の結果 は この解 釈 を支持 しな い。この矛盾 を廃 決す る解釈
と して は次 の二 つ が考 え られ る。第一 は、音韻 統 合 ・ 構成 上 の問題 と見 なす もの で 、第 二 は、視 覚認 知 上 の
問題 か ら生 じた とす る もので あ る。本症 例 で は 、少 な くとも平仮 名 の音 韻 想起 に問題 を示 さな い程 度 に音
韻想起過程 は機 能 して いる。第 一 の解 釈 で は、本症 例 は一 文字一 昔 と して想 起 され た 各 音 を一連 の音韻 の
繋が りと して構 成 ・ 統 合 す る ことに困難 を抱 え る とす る。無 意 味語 の読 み にお いて み られた吃音状 の読 み
の頻発な どは、そ の 間接 的証拠 と見 な され る。本症例 は、一 文字一昔 とい う課 題 で あれ ば、成人 に匹敵す る
程度の処理が可能 とな ったが 、複 数音韻 の統合 ・ 構 成 には未 だ問題 を抱 え る と考 え る。英語 圏 にお け る研究
で は、発達性 の読 み書 き障害 の原 因 を音韻 操作 と音想起 のス ピー ドの遅 さの どち らか あるいは両者 の障害
とす る説が一般 的で あ る( 加藤 、2003) 。小林 ・ 加藤 ・ へイ ンズ ・マル カ‑ ソー ・フ ック ( 2003) や宇 野 ・ 春原 ・ 金
千( 2003) は 日本 の幼 児 にお いて も音 韻処 理 が読 み の習得 の重要 な要 因で あ る と指 摘 して いる。また 、本実
験では、無意味語 は、有意味語 リス トで使 用 され た文字 を入れ換 えてつ く られ て お り、音韻構成 上 の 困難 さ
や音韻 の連 続 の親 和 性 (日本 語 ら しい音 のつ な が りで あ るか ど うか)は考 慮 され て い な か った。こ の こと
が、音韻統合 ・ 構成 を さ らに困難 と して いたか も しれ な い。今一 つ の解 釈 は、文 字 列 の視 覚 的認 知上 の障害
が、反応 の遅 れ を引 き起 こした とす る もので あ る。本症例 は、諸検 査 ( WI SC‑ 良 , K‑ ABC , ベ ンダーゲ シュタ
ル トテス ト) お よび読 み書 き( 鏡 文字 、鏡文字 と正文 字 の弁別 困難) で視 覚的認 知 上 の問 題 を示す 所見 が得 ら
れて い る。一文字 の認 知 は問題が な くとも複 数 の文字 か ら構 成 され た文字 列 の場 合 、そ の配置や順序性 の 把握 に困難 を抱 えて い る しれな い。日本 の読 み書 き障害 の場 合 、そ の原 因 は音 韻 処 理能 力のみで はな く図 形 の認知能 力 との 関連 を指摘す る報告 もあ る ことか ら( 宇 野 ・ 加我 ・ 稲垣 , 1 996; 宇 野 ・ 春 原 ・ 金子 、2003; 香 原 ・ 宇野 ・ 金子 、2004; ) 、本症例 の視覚認知 上の 問題 が文字 列 の認知 に影響 をあた え、結果 として無意 味単 語 の読 み測度の遅 さ につなが った可能性 も否定で きない。
また 、イ ラス トの呼称 時間は健常成人 と同程度 で あった ことか ら、意 味一昔 には問題 を抱 えな い ことを示 した。同様 に有意味語 で も、健常成人 と同程度 の読 み時 間で あった。実験 1 で有 意 味語他 の読 み時 間が健 常 成人 と同 じで あった理 由 として刺激 の予測性が挙 げ られ る。実験 1 で は、各試行 に先立 って 、リス トに登場 す る項 目を教示 され た ことか ら予測が可能 とな り、意 味的処 理 が よ り優位 とな った可能 性 はあ る。いず れ に しろ、有意味語で意 味的処理が行われた ことによ り健常成 人 と同様 の成績 を収 めた と推察 され る。
実験 2 では、単語 の意 味性 による読 み速度 の差 は本症例 ・ 健 常成人 ともに認 め られ た。ただ し、実験 1 とは異 な り、意味性 が高 い とみな され る条件で も健常 成 人 とは読 み時 間 に顕著 な差 異 が見 られ た。この よ うな差 を生 じさせ る原 因 と して は、通常 は本症例 と対照群 の生活年齢 の差が考 え られ る。しか しなが ら、同時期 に 実施 した実験 1 の結果 は、無意味語以外 で は読 み速度 の差 は認 め られな い。そ れ ゆ え、この差異 の原 因 を生 活 年齢 の差 にのみ求 め るのは難 しい。他 の理 由 と して は、実 験 手続 上 の差 が考 え られ る。実 験 2 で は実 験 1 と異な り、事前 に項 目につ いて情報 を呈示 しなか った。そ のため初見 で は、意 味的処 理 を行 うこと も難 し く音韻想起処理 へ の依 存 の程度 が大 きい。それ で も意 味性 高 の読 み時 間が意 味性 中 ・ 意 味性低 よ りもそ れ よ りも短 いが 、そ の理 由 と して次 の 2 つが考 え られ る。一 つ は、同 じ項 目が リス ト中何 度 か登場す るため、
2 回 目以 降は意 味的処 理 が可能 とな った とい う解 釈 、い ま一 つ は リス ト上で最 初 に登場 した段 階で も意味 的処理が行われた とす る解釈で ある。ただ し、有意味語 で あ って も「 つの」な ど、通常で あれ ば漢字 で表記 さ れ る ものが平仮 名で表 され るな どそ の表 記 は親 和性 が低 い。そ のた め、初 見 で み た項 目につ いて親 和性 に 基づ く意味的処理 を行 った可能性 は低 い。
本症例 が意味的処理 に大 き く依存 して い る も う一つ の根 拠 として は、再見 にお ける意 味性 高へ の反応 時 間の顕著な短縮が ある。一度実験 事態で経験 した項 目は予測 され、それが有意 味性 が高 い場合 は、健 常成人 とほぼ同様 とな る。この解釈 は、実験 1 での事前 に項 目を教示 した後 の有意 味語 の読 み時 間が通常 成 人 と同 程度であった結果 とも矛盾 しな い。
実験 3 で は、意 味的処理 が優位 で あれ ば、意 味 的 に近似 な単 語 は弁別 が 困難 な ため反応 時 間が長 くな る と す る仮説 と一致す る結果 が示 された。また、健常成人 に比べ て判 断時間が顕著 に長 かった。この判 断 時間の 長 さの原 因 として、本症例 の実施時点で の年齢 1 5
歳3 カ月で あ り、対照群 を成 人 と した ことによる発 達的要 因による可能性 も否定 で きな い。しか し、知能指 数 は 113 と平均 を超 えて い る ことか ら 、1 5
歳3 カ 月時点 で も全般的認知 的処理能 力はほぼ成 人 と同程 度 と見 なす ことが 出来 る。そ れ ゆ え少な く とも本症例 の 障害 と 関連 しな い単純 な処理 で は健常成 人 と同程 度 の能 力 を有 して いる ことは明 らかで ある 。成人 との 反 応時間 の差 につ いて は、健常成人 との生活年齢 の差 による影 響 を否定で きな い もの の 、本症 例 が示す知 能 指数お よび実験 1 に見 られ る結果 を考 慮す るな ら、判 断 の顕著 な遅 れ の原 因の多 くは本症 例 の もつ読 み 処 理 上の 問題 に帰す る ことが妥 当で あろ う。
実験 3 は、前刺激 として漢字 を用 いたため、漢字処理 の影響 を無視で きな い。使 用 した漢 字 はすべ て 本症例 で読みおよび意 味理解 ともに成立 して い る もの とはいえ、本症例 の特徴 を考 えれ ば、漢 字読 みの過 程です
ー 1 0 ‑
で に意 味的処理が優位 に行われた可能性 は高 い。そ のため、漢字か ら生 じた意 味 と平仮 名か ら生 じた意 味 の比較 を行 うという方 略 を用 いた可能性 も十分 に考 え られ る。意味 的な比較 を行 う場合 、漢字か ら得 られ た意 味 と最 も差異が大 きい意味的 関連がな い誤 った読 み( 平仮 名)との比較判 断 は容 易 で あるが 、意 味的 に 近 い正 読み と意味関連 あ りの誤 った読 み は判 断が 困難で あ る。この弁別容 易性 の程度が 反応速度 に影 響 し た と考 え られ る。これ を示唆す る第二 の根拠 は、漢字読 み判 断 を繰 り返す ことによる反応時間の差 のパ タ ー ンの変化 で ある。意 味的関連性 あ りの誤 った読 み の反応潜 時 は、初 回の実 験 にお いて は正読 み とほ ぼお な じで あったが、反復 2 では意味的関連性 な しの誤 った読 み の反応潜 時 に近 づ いて いる。これ は、繰 り返 し によ り意味上の弁別 が容 易にな った ことによる と解釈 で きる。実験 初期 には、文字 か ら意味へ のア クセ ス が相対 に広範な意味表象 を活性化 してたため、意味的 に近 い文字 との弁別 が困難 で あ った。しか し、繰 り返 し提 示 によ り活性化 され た' ■ 意味範 囲' ' が 限定 された ことによ り, 正読 み と意 味的関連性 あ りの誤 った読 み での反応潜時 に差が生 じた と考 え られ る。
一方 、健常者 にお いて は、条件 による差 はほ とん ど兄 いだ されなか った。この ことは、健 常者 は意味的処理 に もとづ く判 断で はな く、音( 読 み)の比較 による正誤判断 を行 った可能性 を示唆 す る。ある被験者 の 内省 報告 によれば、‑ ' 漢字 が 出た段階で音 に変換 し、つ ぎの平仮 名読みが 出た とき には、そ の最初 の文字 を見 て 先 の漢字 の読みの第 一音 と一致す るか どうかで判 断 を下 した。そ のため、あ し・あかな ど第‑音が同 じ平仮 名で は迷 いが生 じた一 一 とある。本課題 にお いて健常成 人 は、漢字一昔 と平仮 名一 昔 、そ して比較 とい うプ ロ セ ス をお こな った可能性 が高 い。
本症例 は、小学校低 学年 にお いて平仮名お よび漢字 の読み書 き障害 を顕著 に示 した。小学校高学年 にお い て平仮 名読 み には 日常 生活上顕著 な 困難 は見 られ な くな ったが 、漢字 の読 み書 きの 困難 は依 然残 って い た。今 回の研究で は主 に本症例 の平仮名読 みが どのよ うに成 立 した のか に焦点 をあて検 討 をお こな った。
結果 は、本症例 は、単独 の平仮名読 み につ いて は音韻処理過 程( 音韻想起) で成 立 して い る ものの、平 仮 名単 語 の読 み にお いて は意 味処理過程 に依存せ ざるを得な い段 階 にある ことを示 した。本症 例 で、小学校 高学 年で平仮 名の読み書 き困難が報告 されな くなった理 由は、単独平仮名 は問題 な くスムー ズに音想起 が 出来 る こと、お よび通常読 み書き課題 として呈示 され る ものが 高 い意味性 を もって いるた め 、意味的処 理 過程 による読みが可能 で あった ことによる と考 え られ る。
引用文献
Bes ne r , D・& Hi l debr a ndt , N. ( 1 987)Or t hogr a phi candphonol ogi c alc odesi nt heor a lr eadi ng ofJ a pa ne s eka na.J our nalofExper i me nt a lPs yc hol ogy:Lea r nl ng , Me mor y,a ndCo gni t i on , 1 3,335‑ 343.
Fus hi mi , T ・ ,I j ui n , M. , Pat t er s on , K.Tat s umi , I . F.( 1 999)Cons i s t ency,f r equenc y,and l e xi cal i t ye f f ect si nna ml ngJ a pa ne s eKa n j i .J our nalofExper i ment alPs yc hol ogy;Huma n Pe r c e pt l Ona ndPer f わr ma nc e,25,382‑ 407.
春原則子 ・ 宇野彰 ・ 金子 真 人 ( 2004) 発達性読 み書 き障害 児 に対す る障害構造 に即 した 訓練 につ いて ‑ そ の 方法 と適用‑.発達 障害研究 , 26( 2) ,77‑ 84.
Hi no,Y " Lupke r ,S. J ・Se a r s,C・ R・& Oga wa,T ・( 1 998)Theef f ec t sofPol ys emyf orJ a pane s e
ka t a ka nawor ds.Re a di nga ndWr i t i nng,1 0,395‑ 424.
伊集 院 睦雄 ・ 辰巳格 ( 2003 ) 健常成人 と後天性失読症例 の音読 モデル研究 の立場 か ら一 二重経路 モデル と ト ライアングル ・モ デ ル‑. LD 研究 、1 2( 3 ) 、268‑ 278.
加藤 醇 子 ( 2 0 03 ) 読 み書 きの言語認知心理学 と研 究 の動 向一 特集 にあたって‑. LD 研 究 ,1 2( 3 ) ,240‑ 247.
小林 マ ヤ( 志帆)・ 加藤 醇乎 ・ チ ャールズへイ ンズ ・ボール マルカ‑ソー ・ / てメ ラ フ ック ( 2003) 幼児 の読 み能 力 に関わる認 知 言 語能力. LD 研究 ,1 2( 3) , 259‑ 267.
松本敏 治 ( 1 9 98) 漢 字 ・ 読字書字 困難 を示 す学習 障害 の症例 .室蘭工業大学紀要 、48、1 25‑ 1 3 6.
Sas a numa,S.( 1 980)Ac qui r e ddys l e xi ai nJ a pa ne s e.I nM.Col t hea r t , K.Pa t t e r s on , & ∫ . C.
Ma r s ba l l( Eds. ) :De e pdys l e xi a , Rout l e dge & Ke ga nPa ul ,London,pp.48‑ 90.
Sa s a numa ,S. ,Sa kuma , N. , Ki t a no , K. ( 1 992)Re a di ngka n j iwi t houts e ma nt i cs:Evi de nc ef r o m al ongi t udi nals t udyofde me nt i a.Cognl t l VeNe ur ops yc hol ogy, 9,465‑ 486.
梅 本 尭 男 ・ 森川弥寿 男 ・ 伊 吹 昌雄 ( 1 955) 清音 2 文 字 節 の無連想価 お よび有意 味 度 .心理 学研 究 ,26 , 1 48 ‑ 155.
宇野彰 ・ 加我牧子 ・ 稲 垣 真 澄 ( 1 996) 視覚 的認知 障害 を伴 い特異的な漢字 書字 障害 を呈 した学習障害 児 の一 例 .脳 と発達 ,28( 5) ,41 8‑ 423.
宇野彰 ・ 春原則子 ・ 金子 真 人 ( 2003)6 歳児 1 001 名 にお ける平仮名音読 力 と関連す る認 知能 力. 第 6 回認 知神 経心理学研究会 抄録 、ht t p: / / www2. t mi g. or . j p/ CNP/ PDFs 2003/ uno. pdf
ワイデル、タエコ N.( 2003) 言語 ・ 認知神経心理学 にお ける読み につ いて . LD 研究 ,1 2( 3) ,248‑ 258.
Wydel l ,T・N. ,Pa t t e r s on , K・E. , & Humphr e ys , G.W.( 1 993)Phonol ogi ca l l yme di a t e da cc e s s t ome a nl ngf orKa n j i ;I sar owss t i l lar os ei nJ a pa nes eKan j i ?J our a nalofPs ychol ogy:
Le a r ni ng , Me mor ya ndCogni t i on,1 9( 3) ,491 ‑ 51 4.
山田純 ( 1 998) 漢字 と仮 名の音読過程 .苧坂直行( 編) 、読 み一 脳 と心 の情報処理‑.朝倉書 店 、11 91 131 . Ya ma dor i , A. ( 1 975)I de ogr a m r e a di ngi na l e xi a.Br ai n,98,23ト238.
‑ 12‑
第
2 論文
視機能上 の問題 と読み書 き困難 を示 した症例 の認知特性 と学習 の推移
松 本敏 治
l目的
読み書 き学習 困難 の原 因 として は、第一 に基本 的知的能 力の低 さが あげ られ る。しか し、そ のよ うな知 的 問題や他の明 白な知 覚上 の問題や環境的な問題がな いに もかかわ らず読 み書 き に特 異的困難 を示す発達性 読み書 き障害 あるいは書 き障害 といわれ る ものが存在す る。
欧米 で は、古 くか ら読み書 きに特有 の問題 を もつ症例 が報告 されて いたが、日本 にお いて は この間題へ の 認識 はよ り近年 にな ってか らで ある 。1 999 年 、文部省( 現在 は文部科学省)によ り、' ' 基 本 的 には、全般 的な 知的発達 に遅れ はな いが、聞 く、話す 、読 む、書 く、計算す る また は推論す る能 力の うち特定 の もの の習得 と使用 に著 しい困難 を示す ' 'ものが LD とされ 、学習 上 に特 有 の困難 を抱 え る児 童 生徒 へ の関心 が 高 まっ た 。2007 年 には 日本 LD 学会第 1 6 回大会で、「 デ ィス レクシア」が メイ ンテーマ とな った( デ ィス レクシア と は、読みに困難 を抱 え、結果 として書 きにも問題 を生 じる LD である) 。
読みは、基本的 には文字 とい う視覚刺激 を一定 の規則 に従 い音 に変換 し全体 の意 味 を抽 出 し理解す る過程 であ り、書 きは 自己の思考 を音声への変換 を媒介 としたのち に一定 の昔一 文字変換規則 に従 い視覚刺 激( 文 辛) へ変換す る ことで ある。このよ うな文字 の特性 を考 えれ ば、読 み ・ 書 きにお いて、聴 覚的 ・ 視覚的 な認知 が大 きな役割 を果 たす こ とは 当然 と もいえ る。森永( 1 990) は、読 み 障害 の タイ プ と して 、視 覚性 読 字 障 害 、聴覚性読字障害 、そ して聴覚性言語発達 の意味理解 の問題 か ら生 じた意 味理解障害 の3つのタイ プ に分 類 した。
現在、欧米で は発達 性 の読み書 き障害( デ ィス レク シア)の原 因 として、音 韻操作 と音想 起 の速度の遅 さの どち らか あるいは、両 方 の障害 による とす る説 が一般 的で ある( 加藤 、2003) 。アル フ ァベ ッ トを用 い る文 字 体 系で は、基 本 的 に文字 は表 音文字で あ るため 、文字一 昔 ・ 音‑ 文字 規則 が非 常 に重 要 とな る。そ のた め、音韻認識能 力が読 み習得 に強 く影響 を及 ぼす と考 え られ る。ただ し、アル フ ァベ ッ ト圏の言語で あ って も、その文字 ・ 音 の規則性 には差 が ある。イ タ リー語 ・ドイツ語 は文字 ・ 昔 の規則性 は高 いが、英語 ・ デ ンマー ク語な どは、文字 ・ 音 の対応 の規則性 は相対 的 に低 く例外 が多数存在 す る。この よ うな言 語 の文字 ・音 の規 則性 の差が、読 み書 きの困難 の出現 とかかわ って いるとす る指摘 もある(ワイデル 、2003) 。
一方、日本語 は、表音 文字 的色合 いの強 い平仮 名 ・ 片仮 名 と表象文字 で ある漢 字 が混在す る。仮 名で は非語
柔 的読みのプ ロセ ス( 文字一昔)が、漢字で は語桑 的意 味的 プ ロセ ス( 単語‑意 味一昔 ) が優 勢 となる と され
て きた ( Sa s a numa, 1 980;Ya ma dor i ,1 975) 。アル フ ァベ ッ トと同様 に文字一昔 変換が 主 となるひ らがな
習得では、音韻処理能 力( 音韻意識 、音韻記憶 、RAN( Ra pi dAut oma t i cNa mi ng) との関係 を指摘す る報告
が近年相次いで いる( 宇野 、2003; 小林 ・ 加藤 ・ チ ャールズへイ ンズ ・ マルカ‑ソー 、2003; 細 川美 由紀 ・室 谷直
子 ・ 二上哲志 ・ 前川久 男 、2003; 小林 、2007) 。一方 、平仮 名 ・文字 素対応 の規則 性 が高 く、複雑な図形 で ある
漢字 を用 いる 日本語 で は 、音韻 的処 理障害 のみで は読み書 き障害 あ るい は書 き障害 を説 明で きな い と し
て 、読 み書 き と図形 認 知 能 力 に注 目 した研 究 も存 在 す る( (石井 麻 衣 ・雲 井 未 歓 ・小 池 敏 英 、2003; 宇 野 、 2003; 久保 田・ 窪島 、2007) 。
以 上 のよ うに 日本 にお いて読 み書 き困難 の問題 は、単な る知的な遅 れ に付 随す る学習 の遅れ のみ としてで はな く、学習者の認知 特性 と関連 して吟味 され よ うよ うにな って きた。しか し、日本 にお いて発達性読 み書 き障 害 への関心が高 ま ってか らそ う年 月が経 って はいな い。そ のた め、学齢 初期 に読 み書 き障害 を示 した 事 例 が 成長 とともに どの よ うな認 知 的発 達 を とげ、読 み書 きの能 力が どの よ う に変化 して い くか につ い て 、正確 に予見す る ことは容 易ではな い。特 にさきに述べた よ うに、日本語 には表音 文字 と して の平仮 名 ・ 片仮 名 、表象文字 と して の漢字 を混合 して用 いる とい う特徴が ある。このた め、児童 のなか には平仮 名の習 得 か ら困難 を示す もの もいれ ば、漢字 の習 得 にお いて困難が顕著 とな る もの もいるな どさまざまな状態像 が存 在す る。また、中学 の英語学習 にお いて困難 を示す生徒 の中に小学校 時代仮 名 ・ 漢字 学習 に困難 を示す ものか いる との報告 が あ る。このよ うな状態 を考 えれ ば、も しあ らか じめ学習 上 の困難 が予見 されれ ばそ の認 知 特性 に応 じた 学 習支援 が早期 か ら可能 とな る。そ のた め、認知 的特 徴 と学 習 困難 の推移 とにつ いて の資料 が求 め られ る こととな る。
そ こで 、本研究 は小学校低学年 にお いて漢字 の読 み書 きの学習 困難 を主訴 として H 大 学教育学部 の教育相 談 に来談 した一事例 につ いて、そ の読 み書 きの状態像 と認知 的特徴 と視覚 的 ・ 音 韻 的処 理 の能 力、小学 2 年 生か ら中学 1 年生 まで の に学習上の問題 の推移 につ いて報告す る。
l l . 方法 と結果 1 . 対象児
小学 2 年か ら中学 1 年 生 まで H 大学特別支援教育セ ンターにて教育相談 ・ 指導 に来談 した男子( 以下 UW) 。 1 ) 主訴 : 小学 2 年生の時 、平仮 名 ・ 片仮 名 ・ 漢 字が覚 え られ な い ことを主訴 に H 大学 教育 学 部特別支援 教 育相 談 に来談 した。訴 えは 、「 平仮 名 ・ 漢字 ・ 片仮 名が覚 え られな い。計算 ・ 時 計 の読 み取 りは出来 るが、文 章題 は 文章が読 み取 れず点数が取れな い。国語 の点数 は0点 に近 い。しか し読 み聞かせ る と解 り全 問出来 る。勉強一 特 に国語‑は ̀ 苦手 だ 、嫌 いだ ■とい う意識 が強 く、や って もど うせ 出来 な い。覚 え られな い とい う気 持 ちが
ある。自信が もてな いた め、人前で発表す る ときな どとて も不安そ うな様子 を見せ る。」で あった。
2) 坐育歴 : 妊娠 ・出産 にお いて は問題 な し。母親 はすで に同朋二 人 を育 て保育 関係 の仕事 に従事 して お り豊 かな育児 ・ 保育経験 を持 つ 。本児 に乳幼児期 に問題 を感 じた ことはな い。人見知 りもあ り、同朋 とも仲 よ く 遊 んで いた。保育 園で も 1 歳 6 カ月 ・ 3 歳児健 診で も遅れ な どを指摘 された こともはな く、両親 は問題 を感 じ なかった。
ただ し、運動 のぎ こちな さは見 られ た。保 育 園で はお遊戯 が うま く出来ず恥 ず か しい といって踊 らず 、動 きもワンテ ンポずれて いた。劇 の台詞 は練 習ではや らな いの にもかかわ らず 、本番で はち ゃん と出来 た。入 学前 には 自分 の名前 な どは書 けて いた。生活面で は、困る ことはな い。と ころが 、小学校 入学後 、6 月 に勉強 が分か らない と言 って泣 いた。
3) 学習状況 : ( 小学 2 年時点 で)ひ らが なが覚 え られず 、授業 も集 中 して 聞 いて い られな い。授業 中も教 科書 も出 した り出 さなか った りす る。「ま じめで一所懸命 や って も覚 え られ な い」と言 って泣 いた。改 め て 教 え た ら、( 1年生の) 夏休み前 に平仮 名 を覚 えた。しか し、鏡文字 が見 られ 、漢字 の筆順 は不 正確 で定 まって いな
‑14‑
い。文 章 を読 ませ ると逐 字読み。繰 り返 し読 む と速度が上が る。しか し、音読 みカー ドの課題 はク ラス 1 進 ん で い る。字 の再 認は出来 る。行 飛 ば しや逆 戻 りが見 られ る。そ れ を防 ぐた め 、手 を添 えて 読 んで いる。書 き もだ いぶ ん苦労 して い る。書 く度 に筆順 が変 わ る。また 、2 桁 の数字 を書 くとき に、右 の数字 か ら書 く こと が ある。図形課題は出来 る。絵 は好 きで、上手 に描 いて遊 んで いる。
1 . 教育 評価
1) 学校 でのテス ト: 保 護 者が持参 した学校 で のテ ス トの成績 は以下 の よ うな もので あった。ひ らがな清音 読 み( 小学 1 年 5 月)は 、46 文字 中 7 文 字正解 。6 月は 31 文字 、7 月で 36 文字 の正解 で あ った。ひ らがな清 音書 き は 、6 月で 7 文字 、7 月で 29 文字 を書字で きた。
小学 1 年 の学年末の観点 別学習状況 診断のテス トで は、国語 は ̀ 理解 " 1 0/ 1 00 点 ( 1 00 点 満点 中 1 0 点) 、=漢字 読 み書 き ‖ 5 / 5 0 点、"ことば 一 一 0/ 5 0 点で あった。
小 学 2 年 の学 期 末 の観 点 別 学 習 状 況 診 断 の テ ス トで は、I l 文 章 理 解 ' ' は 90/ 1 00 点 、=漢 字 読 み 書 き ' 1 1 0/
50 点 、"ことば ‑ ■ 2 4/ 5 0 点 で あった。算 数 の観点別到達度診断 のテス トで は、…知識 ・ 理解 一 一 3 0/ 5 0 点 、"表現 ・ 理 解 ● ● 45 / 5 0 点で あった。
小学 3 年 の単元別 のテ ス トで は、算 数 は 90‑1 00 点 、理科 は 60‑90 点 で あ った 。国語 は、"( 文 を) 書 く' ' は 50/ 1 00 点 、"漢字 の読 み書 き 一 一 5 / 5 0 点 、=言葉 … 5 / 5 0 点 で あった。
2) PRS( LD 児診断のた めのス ク リーニ ング ・ テ ス ト ) ( 8 歳 0 カ月 ・ 小 学 2 年 5 月 ) : PRS を担 任教師 に依 頼 しチ ェ ック して も らった。結果 は、聴 覚的理解 9 、記憶 9 、話 し言 葉 1 2 、言 語 性 LD21( 基 準 20) オ リエ ンテー シ ョ ン 1 0 、運動能 力 7 、社会 的行動 1 8 、非言語性 LD 判 定 35( 40) 総 合判定 56( 65) で あ り、非言 語性 LD 判 定 お よ. び 総合判 定で基準値 を下 回 り非言語性 LD・ LD サ スぺ ク トで あ った。
3) 漢字書 き取 り ( 7 歳 7 カ月 ・小学 2 年 1 2 月) : 小学 1 年 の学習 漢字 か ら 20( 虫 ・ 川 ・ 水 ・ 本 ・口・目・ 雨 ・山 ・ 犬 ・ 耳
・白・円 ・ 首 ・ 車 ・青 ・ 花 ・空 ・ 土 ・玉 ・ 草)の書 取 りを行 わせ た。ヒン トな しで か けた の は、虫 ・ 川 ・ 水 ・ 本 ・口・目・
雨 の 7 つのみで あった。誤 りの多 くは無反応で はな く文字 の不正確 さであ った ( Fi g.2‑ 1 ) 。
丁白 ご 日 . 玉 花 」皐 草
Fi g. 2‑1〕W の小学 2 年の時の漢字書字
4) 学習領域 スキル別 つ まづ きチ ェ ック リス ト( 11
歳1 0 カ 月 ・小学 6 年 3 月): 海津 ( 2001) の ' ' 学習領 域 スキル
別 つ まず きチ ェ ック リス ト 国語‑■ ● につ いて保護者 にチ ェ ックを依頼 した。チ ェ ックの項 目は、1) 音韻 認知 ( 3 項 目) 、2) 意 味理解 ( 6 項 目) 、3) 構 音 ( 4 項 目) 、4) 語費 レベル ( 4 項 目) 、5) 一 文 字 読 み ( 4 項 目) 、6) 単語 読 み ( 5 項 目) 、7) 文章音読 ( 4 項 目) 、8) 書字 ( 8 項 目) 、9) 図形理解 ・ 構成 ( 8 項 目) か らな る。保護者 には小学 1 ‑3 年生 まで と 、4 年 生以上 に分 けて各項 目に該 当す るか どうか を回顧 してチ ェ ック して も らった 。小学 1‑3 年 で は、意 味理解で 3 項 目、語柔 レベルで 1 項 目、一文字読みで 4 項 目、単語読 みで 4 項 目、文章 音読で 3 項 目、書字 で 8 項 目、図形理解 ・ 構成で 4 項 目、全体で は 45 項 目中 27 項 目で該 当 し、読 み書 き障害 の問題 が低学年で 生 じ ていた ことが確認 された 。4 年生以 上で は、単語読 みで 1 項 目、文章音読 4 項 目、図形理解 1 項 目、全体 で 46 項 目中 6 項 目が該当す る とされ、音読 の問題 は依然 として残 って いた。読 み書 き に関連す る項 目以外で特徴 的 で あったのは、①音韻認知 ・ 構音 の問題が認 め られず 、② 図形理解 ・ 構成 の多 くが該 当 し、③学年が進 んで も 文章音読 の問題が残 った ことで あった。
5) Dys l e xi a チ ェック リス ト ( 1 2 歳 1 0 カ月 ・中学 1 年 3 月)
:加 藤( 2006) が 、日本 のデ イス レクシアが各年齢 ・ 学年 にお いて示す特 徴 を列挙 した項 目につ いて該 当す るか否 か のチ ェ ック を保 護 者 に依頼 した 。4 歳 で は 3 項 目中該 当項 目はなか ったが 、5 歳で 7 項 目中 3 項 目「自分 の名前 に使 われ る文字 を認識 で きな い 」 「 絵 本 を 読 まな い 」 「 文字 を教 えよ うとす る と逃 げ出す」が該 当 した。
一方 、「 色 ・ 形の名称」、「 友人の名前 を覚 え る」、「 単語 の発音 」、「 歌 を覚 え る」、「し り取 り遊び」な どで は問 題が見 られなか った とされている。
小学 1・ 2 年 の 「 話す 」3 項 目中該 当項 目な し。「 読 む ・ 書 く」で は 、9 項 目中 6 項 目 「 一 文字ず つ のた ど り読 みが なかなか抜 けな い」、「 何 回か読 む と暗記 して しま うが、新 しい文 は逐字 読 み とな り、内容 が理解で きな い」
「 読 んで あげる と理解 で きる(聞 けば理解 で きるが文字 か らは理解 で きな い ) 」 「 飛 ば し読 みや勝 手読 み が多 い 」 「 音読 の宿題 を嫌 が る 」 「 授業 は苦痛で しかな い。読 むだ けではな く、書 くことは更 に大変で、連絡 帳 を書 くことができな い」が該 当す る とされた。
小学校 3 年以降で は 、1 6 項 目中 4 項 目が該 当 した 。「 簡 単な文 は読 め るよ うにな るが 、学 年 レベル の複 雑 な 文や初めての文章 は困難 。 」 「 単語 によ って読み方 が変わ る漢 字 が読 めな い 」 「 見慣 れな い言 葉 の区切 りや文 章 の 中の区切 りがわ か りに くい 」 「 算 数 が得意 で も文 章題 にな る と読 む ことが 困難 で 回答 が 出せな い。社 会、理科 も理解 力が あ るに もかかわ らずテス トはできな い。社会科見学 も説 明が十分読 めな い し、感 想 を書
くことも困難 にな り学習全般が困難 になる。」が該 当す る とされた。
中学校 ・高校以 降で は 9 項 目中 2 項 目が該 当。「 各科 目とも複 雑 で長 い文章 を読 む ことにな り、困難 さ は増 す 」 「囲碁や将棋 な ど思考推論 を必要 とす る ものが得意な ことが ある」が該 当す る とされ た。
U W で は、問題 は読 み書 きに集 中 してお り、聴覚 的 ・ 音声処 理 に関連す る項 目で は ほ とん ど該 当 して いな い。
6) TK 式読み能 力診 断検査 ( 11 歳 1 0 カ月 ・ 小学 5 年 3 月): 読 み書 き につ いて の能 力 をチ ェ ックす るため TK 式 読み能力診断検査 を実 施 した。結果 は、語識別( 有意味文 の中か ら 3 文字以上 の名詞 を選 択) が 1 0 段階 中 3(
偏 差 値35‑39) 、語識別 ( 無意 味文 の 中か ら 3 文字以上 の名詞 を選択) は 4( 40‑44) 、文理解 3( 35‑39) 、文意記
憶2( 30‑3 4) 、推論 3( 35‑39) であ り、読み能 力に顕著な困難 が存在す る ことが確 認 され た ( Ta bl e2‑1 ) 。
‑