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『健康の庭』

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熊本大学学術リポジトリ

『健康の庭』

著者 荻野 蔵平, Bauer Tobias

雑誌名 文学部論叢

巻 98

ページ 167‑182

発行年 2008‑03‑07

その他の言語のタイ トル

Gart der Gesundheit

URL http://hdl.handle.net/2298/7997

(2)

翻訳

健 康 の 庭

荻野蔵平、 バウアー・トビアス訳

[要旨]

( )

[キーワード] 健康の庭 ( )、 本草書 ( )、 薬草、 四大、

ヨーハネス・ヴォネッケ・フォン・カウプ ( )、

ベルンハルト・フォン・ブライデンバッハ ( )。

(解 説)

以下は、 健康の庭 の抄訳である。 底本は、 1485年 にマインツのペーター・シェファー ( ) 印刷所において刊行さ れた初期刊行本 (インキュナブラ) で、 1966年にミュンヘンのケープル社か ら復刻されたファクシミリ版である:

( )

。 後期中世ドイツ語で執 筆されているこの 健康の庭 は、 ドイツ中世の本草学を近世へ伝えた極め

(3)

て重要な文献であるが、 日本ではまったくといってよいほど研究がなされて おらず、 抄訳ではあるが今回の翻訳によりその内容の一端を紹介したい。

健康の庭 の著者は、 マインツの医師ヨーハネス・ヴォネッケ・フォン・

カウプ ( 、 ) で、 彼はこの草本図鑑の

執筆を同じくマインツ大聖堂の参事会員であるベルンハルト・フォン・ブラ

イデンバッハ ( 、 頃) に依頼されたので

あった。 ヴォネッケはコンラート・フォン・メーゲンベルク (

、 ) の 自然の書 ( 、 ) や

古ドイツ語版マケル ( 、 頃) あるいは 救急 症例集 ( 、 世紀) などに代表されるドイツ語ならびにラテン 語による先行の本草書を頼りに1483年までに本書の編纂をほぼ終えていたと 考えられる。 ところで、 この間の事情は今回訳出した 「序章」 にも簡単に触 れられているのだが、 ブライデンバッハは1483年に聖地巡礼の旅に出かけた 折に、 挿絵を担当していたオランダ人版画家エルハルト・ロイビヒ (

、 頃 頃) を同行させている。 それは本国には成育しない様々 な植物をこの目で確かめ、 スケッチさせるためであった。 その後、 シェファー は完成品を1485年にフランクフルトの春の書籍市に出品している。 この図鑑 は講評を博したようで、 初版から5ヶ月後にはアウクスブルクのヨーハン・

シェーンスペルガー ( ) が第二版を出版したほどで、 そ の後版を重ね17世紀末までに60を越える版 (そのうち15編がインキュナブラ) が確認されている。 健康の庭 は435章からなり、 その内訳は382章が薬草 を、 25章が動物に由来する薬を、 28章が鉱物を扱っている。 その内容は、 当 時の植物学・薬草学に関する知識や世界観を反映しており、 近世の自然科学 のさきがけとなるような実証的な記述と並んで、 占星術や呪術的信仰に基づ く解説も数多く含まれていて大変興味深い。 また、 木版による挿絵が多数挿 入されていて、 その数は379図にのぼる。 なお、 書名に 庭 が付いている のは、 もちろん 「薬草園」 を意味してのことだが、 それと並んで死や疫病な どの外敵から守られ、 安心して暮らせる空間、 つまり 「エデンの園」 のイメー ジも含意しているであろう。

今回は、 興味深い記述の中から、 1. 「序章」、 2. 「第1章ヨモギ」、 3.

(4)

「第426章キツネ」 の3章を訳出した。 転写は原典に可能な限り忠実に行ない、

省略ダッシュ ( ) も忠実に再現し ( )、 散見される印 刷ミスと思われる綴りもそのままに残した。 ただし、 飾り大文字は通常の大 文字とした他、 と (上に点のない) 1は とし、 の様々な書記法も に統 一したこと、 ローマ数字前後の中点を省略するなど若干の変更をほどこした。

また、 テキスト中の段落表示記号には便宜的に を用いた。 なお、 注は最小 限に留め、 各章の日本語訳ごとに付け加えた。

1. 「序 章」

(5)
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(7)

(訳)

私は(注1)自分の周囲において、 自然の創造主の素晴らしき技を幾度となく、

そして数多くまのあたりにしてきた。 あのお方は、 初めに天を創造され、 美 しく輝く星々でそれを飾り、 それらの星々に天の下のあらゆる存在に影響を 及ぼす力をお与えになられたのである。 そしてその次に四大(注2)をお造りに なられた。 火は熱にして乾、 空気は熱にして湿、 水は冷にして湿、 土は乾に して冷というように、 それらがすべての存在に各自の性質を付与しているの である。 自然を生み出したあの名匠は、 さらにその後、 あらゆる種類の植物 と動物をお造りになり、 最後にあらゆる創造物の中で最も高貴な存在として 人間を創造された。 それらすべてのことを見て私は、 創造主が自らの創造物 にお与えになった秩序の素晴らしさを知るに到ったのである。 つまり、 天の 下のあらゆる存在は、 各自の性質を星から、 そして星を通して受け取り、 持 ち続けているのだ。 それはまた、 先に述べた四大の中で生まれ、 成長し、

生存するすべてのもの、 あるいは空に舞う生き物すべてにおいても同様に見 て取れる。 鉱石であれ岩石であれ、 植物であれ動物であれ、 四大の性質、 つ まり熱、 冷、 湿、 乾が混合してできあがっているからである。 さらにまた覚 えておくべきは、 先述の四大が、 人体の中においても、 人間の生活や性質に 相応しい一定の度合いにより配合されていることである。 そのような一定の 度合い、 割合の中に留まる限り、 人間は溌剌として健康でいられる。 しかし、

人間が四大の一定の割合から離脱あるいは脱落したりする場合には、 例えば、

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それは熱が優勢になり冷を弱めようと働いたり、 あるいは逆に冷が熱を押さ えつけようとする場合や、 あるいはまた人間が冷湿に充満されたり、 湿が過 度に奪われたりする場合によく起こることなのだが、 そのような場合には、

人間は必ずや病気になり、 死に近づくことになる。 人間の健康と命の拠り所 となる四大の配合が、 今述べたように破壊されてしまう理由には、 天空が人 間の性質に及ぼす有毒で目に見えない影響がある。 というのも、 淀んだ空気 は不潔で、 有毒となるからだ。 また体によくない食べ物や飲み物を摂取した り、 あるいは、 体にはよいが、 正しい量や時間に摂取しなかったりすること などがその理由として挙げられる。 確かに、 一定の度合いの四大から逸脱し たり、 人間が病気になったりすることの原因は、 木の葉や海の砂粒の数ほど もあり、 それらすべてを語り、 説明し尽くすことは容易なことではなかろう。

人間はこのように何千もの危険に周りを取り巻かれているため、 自分の健 康あるいは生命に一瞬たりとも安心していられないわけなのだが、 そのこと を考えていた時に、 私の心の中にふと次のことが思い浮かんだのである。 自 然の創造主は、 そのような危険の中に我々を置かれたのであるが、 それに対 して同時にまた、 慈悲深くもさらなる危険を避ける術を与えてくださってい るのである。 そして、 それは神が様々な力をお与えになったあらゆる植物、

動物そしてそれ以外の被造物の力を借りて、 上に述べた四大を回復させ、 そ の働きを強めたり、 弱めたりすることができるということなのである。 植物 にはその特性の段階により、 体を暖めたり、 また冷やしたりする力がある。

同様に地上や水中の他の多くの被造物も自然の創造主のお蔭により人間の命 の維持に役立っている。 そのような植物と被造物の力を借りて、 病人は四大 の本来の配合と肉体の健康を取り戻すことができる。 ところで、 この世の人 間にとって肉体の健康よりも大切で価値ある宝物はないといえるから、 私に は多くの植物やその他の被造物の力と性質がその正しい色と形状とともに収 められている一冊の図鑑を編纂することよりも、 しかも世の中すべての人の 慰めと公益のために編纂することよりもりっぱで役に立つ、 あるいは神聖な 仕事はないと思えたのである。 その後私は、 そのような賞賛されるべき仕事 を一人の医者(注3)により着手させた。 彼は私のたっての希望で、 ガレノス、

アヴィセンナ、 セラピオン、 ディオスコリデス、 パンデクタ、 プラテアーリ

(9)

ウス(注4)といった定評のある医学者やその他の人々の著作の中から多くの植 物が持つ効力と性質を一冊の図鑑にまとめてくれたのである。 ところで、 私 が植物を描き終えて仕事半ばに差し掛かった頃、 私はこれら多くの高貴な植 物がこのドイツ諸国に生育しないことに気がついた。 それゆえ私はそれらの 植物の本当の色と姿を伝聞でしか描くことができなかった。 そのため私はそ の開始した仕事を未完のままに筆を置くことになった。 そうこうする内に私 は、 神の許しと贖罪のために、 キリストの墓とやさしき処女聖カタリ―ナの 遺骨が眠っているシナイ山へ巡礼の旅に出ることとなり、 その準備に取り掛 かった。 だがそのように開始された高貴な仕事が未完のまま先延ばしになる ことがないように、 また私の巡礼が私の魂のみならず、 世の中すべての人々 の救いに役立つようにとの願いから、 私は智恵に富み、 手先の器用な一人の 画家(注5)を同伴させたのである。 そのようにして我々は、 ドイツ諸国を後に し、 イタリア、 オーストリア、 スロベニアあるいはヴェンド人の国々、 すな わちクロアチア、 アルバニア、 ダルマチアと旅を続けたのであった。 その後 コルフ、 モレア、 カンディア、 ロードス、 キプロスなどのギリシャ諸国を巡 り、 やがて約束の地そして聖なる都エルサレムに到着した。 その後さらに小 アラビアを過ぎシナイ山へ、 シナイ山から紅海を渡って、 エジプトのカイロ、

バビロン、 アレクサンドリアへと進み、 そこから再びカンディアへと戻って きたのである。 それぞれの王国やその他の国々を通って旅する間、 私はその 土地の植物を熱心に調べ、 またその正しい色と形状を描かせてきた。 その後、

私は神の助けにより再びふるさとドイツへ戻ることができた。 この仕事を完 成させ、 今ここに成就することができたのは、 私の大いなる熱意と神の助け のお蔭である。 私はこの図鑑をラテン語で 、 ドイツ語で

つまり 健康の庭 と呼ぶことにしたい。 その庭に見出される 435種もの植物とその他の被造物は、 人間の健康に役立つ力と効用を持ち、

すべて薬種商において薬として用いることができるものばかりである。 その 内の350種は、 その姿が色づけして描かれているので、 本物と見紛うばかり である。 世の中の学識者や一般の人々にも役に立つようにとの願いから、 私 はこの図鑑をドイツ語で作らせたのである。

さて本書は5部に分かれる。 第1部は今しがた述べた序章である。 第2

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部では、 植物および被造物がアルファベット順に並べられ、 それぞれの効用 が説明される。 第3部は下痢止めと強壮に効く植物についての一覧である。

さらには芳香植物、 ゴムの木、 果実の種と根、 宝石、 動物並びにそれ らに由来し薬として役立つすべてのものについて述べられている。 第4部 は、 尿の色とその意味に関しての解説である。 そして最後の第5部は、 人 間のすべての疾患と病気にはどんなものがあるかをすぐに見つけることので きる索引となっている。 さあ、 汝気高く美しい庭よ、 遠くのすべての国々 まで出かけて行くがよい。 健康な人には喜びとなり、 病める人には慰め、 希 望、 助けとなるがよい。 この世に住む人で、 汝の効用と効き目を余すことな く語り尽くせる人はいないであろう。 私はあなたに感謝いたします。 この 庭に含まれる植物とその他の被造物に力を与えてくださった天地の創造主よ。

あなたは、 埋蔵されていたためこれまで世の人々には隠されてきたこの宝を、

私に対し情け深くも人々に知らしめることをお許しになられました。 今も、

そしてこれからも永遠にあなたに栄誉あれ。 アーメン。

(注)

(1) 「私」 とはマインツ大聖堂の参事会員であるベルンハルト・フォン・ブライデンバッハ ( 頃) のことである。

(2) 「四大」 とは、 本文中の説明にもあるように、 この世の存在物を構成する 「地・水・火・空 気」 の4元素のこと。 四大はさらに 「熱・冷・湿・乾」 の4因子の組み合わせからなる。

(3) マインツの医師ヨーハネス・ヴォネッケ・フォン・カウプ( ) のこと。

(4) ガレノス (129 199頃) :ギリシャの医学者、 ルネサンスに到るまで西洋医学の権威。 アヴィ センナ (980 1037) :アラブの哲学者・医学者。 セラピオン (2世紀頃) :ギリシャの医学者 のことか。 ディオスコリデス (40頃 90頃) :ギリシャの医学者、 薬物誌 (

) は1500年にわたり西洋薬草学の古典。 パンデクタ:不詳。 プラテアーリウス (マテ ウス・プラテアーリスス、 12世紀中頃) :イタリアの医学者、 救急症例集 ( ) の著者とされる。

(5) オランダ人版画家エルハルト・ロイビヒ ( 、 オランダ名 1500頃) のこと。

2. 「第1章 ヨモギ」

[・・・]

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(訳)

アルテミシア とはヨモギのことである。 第1章。 ヨモギは薬 草の母である[・・・]。 アヴィセンナやディオスコリデスといったりっぱ な権威たちは、 我々にこの草について説明し、 ヨモギとは草の一種で、 葉の 幅がより広いことを除けば、 形状はニガヨモギやセロリに似ていると述べて いる。 葉は外側が白く、 内側が緑で、 強い匂いを放ち、 苦味がある。 この草 は長い茎をしている。 その花はカミルレの花に似ている。 これがアルテミシ アと呼ばれるのは次のような理由による。 マウソロス(注1)と呼ばれた王にア ルテミシアという名の奥方がいた。 この王妃が、 この草に認められる効能の 故に、 この草に自分と同じ名前をつけたいと思ったからである。 大学者プ リニウスは、 この草はかつてはパルテニス と呼ばれていたと述べ ている。 イシドールは 語源学 (注2) と呼ばれる著作のなかで、 アルテミシ アと呼ばれるヨモギは草で、 異教徒たちの間ではディアーナとして崇拝され、

またそのようにも呼ばれていた、 と述べている。 というのも、 女神ディアー ナは、 ギリシャのアルテミスに相当するからである。 プラテアーリウスは この葉の熱と乾の度合いは第3段階(注3)だとしている。 薬として用いられる のは葉のほうで、 根は稀である。 葉は枯れたものよりも青葉が使われる。 プ ラテアーリウスは、 ヨモギは生理と呼ばれる女性の病に効果があり、 生理が 正しい時期に来ない女性は、 ヨモギをワインで煎じたものを飲むと間違いな く効き目があるといっている。 また、 入浴の際に臍の下の左右をそれで何度 もなでるのも効果があるという。 大家のディオスコリデスは、 妊娠し胎児 ゆえに苦しんでいる女性は、 ヨモギをワインあるいはビールと一緒に煮立た せたものを飲めば、 直ちに回復するという。 あるいは、 その植物を煮たてた ものを左の腿に縛っておいてもすぐに直るともいう。 しかし、 子どもが生ま れたらすぐにそれを外さなければならない。 それを怠ると、 ひどい害を被る ことになる。 体内の胎児がすでに死亡している女性は、 ヨモギを飲めば、

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穏やかに胎児をおろすことができる。 またディオスコリデスは、 ヨモギの 章で、 ヨモギを用いる人には毒や魔法が効かないと述べている。 また、 動物 に噛まれても、 それが罪を犯した獣でない限り、 害を被ることはないという。

さらにヨモギを家の中に持っている人に、 悪魔は手出しができない。 また、

ヨモギの根を首に巻いておけば、 毒のある動物も危害を加えることはできな い。 仮に有毒な動物に危害を加えられても、 ヨモギのエキスを飲みさえすれ ば、 直ちに回復するという。 りっぱな権威たちは口をそろえて、 ヨモギが 二種類ある場合には、 一方は赤くて茎がなく、 他方は白い色をしていると述 べている。 生理を長らく待っている女性は、 赤いヨモギの葉をワインで煮 てそれを飲むとよい。 だが、 生理があまりに長く続くようであれば、 白いヨ モギの葉をワインで煮て、 それを使うとよい。 そうすれば、 たちどころに生 理は過ぎ去ることだろう。 またさらに、 ヨモギはワインと共に用いると、

尿の出を良くする。 ディオスコリデスによると、 ヨモギは、 それを粉にし、

その粉にパセリと水を混ぜたものを飲むと、 結石にとてもよく効きという。

ワインで煮たヨモギを飲むと、 腫瘍であれ、 それ以外のものであれ、 子ど もを生んだ女性において長引くあらゆる病を追い出してくれる。 ヨモギを 身につけておくと、 歩いても、 疲れることはない。 また、 ヨモギの根を家 の戸口の上に置いたり、 家の前にさげておくと、 災いや危険な目にあうこと がない。 学識高き権威のガレノスは、 ヨモギは赤いものでも白いものでも、

必要としている女性に用いると効果があるという。 また、 腰に石のある人に も大変よく効くという。 大家のプリニウスは、 第25巻の 「ヨモギ」 の説明 の中で、 ヨモギはかつてはパルテニスと呼ばれていて、 それには2種類ある とする。 一方は葉が広く、 他方は葉が薄く小さいが、 両者ともその性質と効 用は同じだという。 また、 同じ大家は第26巻で、 ヨモギを身につけている と、 野を歩いても疲れを感じないし、 歩行により体の部位を痛めることもな いという。 彼はまた同じ巻で、 ヨモギをイチヂクとミルラと一緒にすりつ ぶして混ぜたものを小量ワインに入れて飲むと冷えた胃を暖める効果がある と語っている。 また彼によれば、 この植物の根を服用すると非常に激しく 子宮を清めるので、 胎児は、 死んでいても生きていても、 母胎にとどまって いられない程だという。 大家のプラテアーリウスは、 この植物の葉は根よ

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り薬として体によく、 しかも青々としたもののほうが枯れたものよりも有効 だという。 そして特に有効なのは不妊症の女性に対してである。 さらに、

ヨモギとヒメウイキョウの種を挽き混ぜあわせたものは大きな吹き出物に塗 ると効き目がある。 あるいは耳の後ろにできた瘤は、 まず鋭利な瀉血用メス で血を抜いてから粉末を塗ると効果がある。 ヨモギは、 冷たい物質に起因 する脾臓や肝臓といった臓器の詰まりを解消するのに役立つ。 ヨモギとコタ ニワタリをそれぞれ一掴みとニガヨモギをほんの少しとり、 ワインで煎じて から砂糖で甘い味をつける。 この飲み物は、 さらにセントレーアと呼ばれる ホウライセンブリをほんの少し混ぜ合わせれば、 黄疸にも効果がある。 また 飲用後に残った植物の余りはまだ温かいうちに脾臓の上に押しあてるがよい。

脾臓が外側に腫れ上がっている場合にも同様に効く。 ヨモギとタクスス・

バルバトゥス と呼ばれるイチイをワインで煮たものを温かい うちに患部にあてると、 脱腸の人に効果があるといわれる。

(注)

(1) マウソロス (紀元前353 352頃没) 小アジアのカリアの総督。

(2) イシドール (560 636頃) :スペインの聖職者。 語源論 ( ) は中世に広く使わ れた百科事典的書物。

(3) 第3段階:アラビア・ギリシャの医学者が導入した薬草の特性・効力の強さの度合いの一 つ。 1から4段階まであり、 その順に特性・効き目が強くなる。

3. 「第426章 キツネ」

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(訳) キツネ 第426章

ラテン語でウルピス という。 医学の権威たちは、 キツネをとても 欺瞞的な動物であるという。 イヌに追いかけられると、 走るのに邪魔になら ないよう足の間にしっぽを巻いて入れる。 そしてイヌから逃れられないこと を悟ると、 自らのしっぽに尿をかけ、 それでもってイヌから身を守る。 尿の かかったしっぽのきつ

い悪臭に耐えかねて、

イヌはキツネから走り 去るからだ。 キツネ の脂およびその髄を手 足に塗り付けることは、

ラテン語でスパスムス と呼ばれる痙 攣の治療に極めて有効 である。 乾かして粉 末にしたキツネの血は、

腎石と膀胱結石の治療 に役に立つ。 大家の プリニウスは第28巻で、

キツネの舌を身につけ る人は盲目にならず、

目が痛くなることもな

いと言っている。 第426章 「キツネ」

(出典:

( )

)

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文 献

(翻訳に用いた原典資料)

( )

(関連する原典資料および翻訳)

プリニウス プリニウスの博物誌 全3巻、 中野定雄他訳、 雄山閣出版、 1986年。

(主要参考文献)

(付記)

本稿は、 平成19年度科学研究費補助金・基盤研究 (C) の研究課題 「15・16世紀ドイツ本草書の ヨーロッパ諸国への影響について」 (課題研究番号18520234、 研究代表者:荻野蔵平) の成果の一 部である。

参照

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