分散型エネルギーシステムの 最適運用のための
モデリングと最適化に関する研究
首都大学東京大学院 理工学研究科 電気電子工学専攻
田代 敏晃
論文要旨
近年,技術の進歩に伴い分散型電源の高性能・高効率化が進んでいることに加え,環境 問題への関心の高まりなどからも分散型電源の普及が進んでいる。また,電気事業の規制 緩和に伴う電力自由化が段階的に進められている。つまり,現在の電力システムを取り巻 く環境が技術的・制度的の両面から変化してきている。これらを背景に,需要家単位での 分散型電源の導入が進む可能性が高まっており,現在では様々なエネルギーシステムの研 究が行なわれている。
本研究室では,このような背景を踏まえ,分散型電源の導入量・導入台数が共に電力シ ステム内で支配的になる環境を「超分散環境」と呼び,超分散環境におけるエネルギーシ ステムを「超分散型エネルギーシステム」と定義して研究を行なってきた。超分散環境で は,現在の電力システムとは異なり,個々の需要家の振る舞いがエネルギーシステムの構 造を決定づけることになる。つまり新たなエネルギーシステムに対するシミュレーション を行ない、基礎的な解析を行なうため必要がある。そのため,先行研究では提案段階だっ たことも踏まえ,簡易モデルを用いたマクロ的視点でのシミュレーションを行ない,シス テム全体の振る舞いに重点が置かれていた。
しかし,以前より将来の展望が具体的に見えてきたことを踏まえ,要素を詳細化し,詳 細モデルを用いたミクロ的視点からのシミュレーションを行なう必要がある。そのため,
本研究では最適運用に重点を置き,分散型エネルギーシステムの解析・運用のためのアル ゴリズムの開発を行なった。分散型エネルギーシステムは現在の電力システムとは要素が 異なるため,分散環境に合致した,
1
需要家とネットワークのモデリングと2
最適化手法 の構築の2
点が必要となる。上述の課題を踏まえ,本研究では分散環境に合致した需要家 とネットワークのモデリング,分散型エネルギーシステムの解析・運用のためのアルゴリズムを提案し,モデル系統を用いたシミュレーションにより有用性を検証した。本研究で 得られた主要な成果は以下の通りである。
(1)
分散型エネルギーシステムにおける需要家とネットワークのモデリング需要家とネッ トワークのモデリングに関しては,需要家のモデリングを行なう際は,分散環境において 需要家が所有する可能性のある代表的な分散型電源を需要家の構成要素の候補として挙げ,要素の状態(負荷状態又は発電状態),モデルの状態(静的又は動的),需要家が自らの意 思で制御可か不可かに分類をし,今後の普及の予想なども考慮したうえで,負荷,太陽光 発電,バッテリーの
3
種類を選択し,これらの要素から構成される需要家のモデリングを 行なった。その後,モデリングした需要家のモデルを用いて,1
日の負荷パターン,太陽光 発電パターンを用い,シミュレーションを行なった。また配電網も独立型,くし型,ルー プ型,メッシュ型の4種類のネットワークモデルを構築し,分散型エネルギーシステムの 運用に関して,シミュレーションを行ない,電力不足量および電気料金の観点から評価を 行ない,構築したモデルの有用性を検証した。(2)
分散型エネルギーシステムの階層型最適運用決定手法本研究では,1
各需要家にお けるバッテリーの最適運用問題,および2
各需要家のバッテリーの最適運用決定後のネッ トワークの最適運用問題と2
つの階層に分け,階層型最適化手法を構築した。各需要家におけるバッテリーの最適運用問題については,バッテリーを持つ需要家の振 る舞いは過去の影響を受けて変動するので動的最適化問題となる。そのため,システムの 時間的な変化を考慮して最適化を行なう必要があることや,最適化手法の汎用性などに注 意し,本研究では,動的計画法
(Dynamic Programming
:DP)
を用いて各需要家の所有す るバッテリーの最適運用を決定した。本研究では,DP
における状態数をバッテリーの貯蔵 量,段を時刻と考え,各需要家の所有するバッテリーの最適運用を行なった。各需要家の バッテリーの最適運用決定後のネットワークの最適運用問題については,ネットワーク全 体のバランスに注意する必要があることから,逐次近似法を用いた。逐次近似法は解を直 接求めるのではなく,逐次的に微小量ずつ決定変数を動かしながら解を求める手法である。また,分散型エネルギーシステムでは多くの需要家を想定する必要がある。そこで,本 研究ではネットワーク全体の総和を一つの地域と捉え,ネットワーク全体の総和を求めて いる。そして一つの地域の総和を一需要家に縮約することで,同一のアルゴリズムで多く の需要家に対応可能な,分散型エネルギーシステムにおける需要家の階層型アルゴリズム を提案した。提案したアルゴリズムを
1
日の負荷パターンと太陽光発電パターンを用い,論文要旨
iii
電力不足量および電気料金という経済性の観点から評価を行ない,構築した階層型最適化 手法の有用性を検証した。論文要旨
i
1
序論1
1.1
本論文の背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.2
本論文の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2
分散型エネルギーシステムの特徴と位置付け4
2.1
本研究の特徴と位置付け ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
3
分散型エネルギーシステムのモデリング6
3.1
需要家のモデリング・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 3.2
ネットワークのモデリング・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
4
分散型エネルギーシステムの最適運用12
4.1
分散型エネルギーシステムの運用モデル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 4.2
階層型最適化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
4.2.1
動的計画法に基づく各需要家のバッテリーの最適運用・・・・・・・・・14
4.2.2
逐次近似法に基づくネットワークの最適運用 ・・・・・・・・・・・・・・・16
4.3
提案手法のアルゴリズム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
5
数値実験及び考察23
5.1
数値実験条件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
5.2
小規模ネットワークにおける数値実験結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
5.2.1
数値実験条件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
目次
v
5.2.2
逐次近似法に基づくネットワークの最適運用 ・・・・・・・・・・・・・・・27
5.2.3
動的計画法に基づく各需要家の最適運用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 5.2.4
需要家およびネットワークの最適運用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
5.2.5
逐次近似法に基づくネットワークの電気料金の最適運用 ・・・・・・・28
5.2.6
動的計画法に基づく各需要家の電気料金の最適運用 ・・・・・・・・・・29
5.2.7
需要家およびネットワークの電気料金の最適運用 ・・・・・・・・・・・・30
5.3
大規模システムにおける需要家縮約アルゴリズムにおける数値実験結果 ・30 5.3.1
数値実験条件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
5.3.2
逐次近似法に基づくネットワークの最適運用 ・・・・・・・・・・・・・・・31
5.3.3
動的計画法に基づく各需要家の最適運用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31 5.3.4
需要家およびネットワークの最適運用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
5.3.5
逐次近似法に基づくネットワークの電気料金の最適運用 ・・・・・・・31
5.3.6
動的計画法に基づく各需要家の電気料金の最適運用 ・・・・・・・・・・32
5.3.7
需要家およびネットワークの電気料金の最適運用 ・・・・・・・・・・・・33
5.4
考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
6
結論37
6.1
成果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 6.2
今後の展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
参考文献
41
謝辞
43
A
分散型電源の現状1
1 序論
1.1
本論文の背景と目的2011
年3
月11
日に発生した東日本大震災の影響から,電力供給を確保するために東京電 力管内では計画停電を実施された。また,電力需要が増加する夏には大口の需要家などを 対象とした電力制限令の発令や企業などにおいては,電力需要の比較的少ない休日に出勤 するなど就業時間の変更などが生じた。このように電力供給が不足することで多くの人々 の生活に大きな影響を及ぼした。現在の日本では,企業や産業,そして家庭などにおける 社会活動のほぼすべてが「電力」に依存している。つまり「電力」は社会機能そのものを 支える一次インフラであり,かつライフラインである。そのため,日本ではこれまでに世 界屈指の高い技術により,停電の少ない安定した電気の供給・利用体系が築かれている。これらのことから,電力の社会的地位が高いことが明白であり,電気エネルギーを供給す ることは社会における重要なインフラ設備であることが分かる。さらに日本は,総エネル ギー需要に占める電力需要の割合や一人当たりの電力消費量が,主要先進国
(
日本,ドイ ツ,フランス,イギリス,アメリカ)
の中でも高い水準にある。そのため,電力の供給に関 しては,細心の注意を払う必要がある。電力を供給している現在の電力システムは各地域の電力会社における地域独占であり,
火力発電や原子力発電といった大容量・集中型電源を使用しているという特徴がある。し かし,太陽光発電や燃料電池などの分散型電源やバッテリーなどの分散型貯蔵装置の性能 向上に加え,環境問題への関心の高まりや国の助成制度の導入などを背景に,我が国にお
第
1
章 序論2
いては需要家への分散型電源や分散型貯蔵装置の導入が進みつつある。また日本国内における電力品質は世界でもトップクラスに位置する。しかし,一方で先 進国と比較するとコストも高いといわれており,国際社会で競争するグローバル企業など を中心にした海外進出の一因ともなっている。このような背景から,電力にも市場経済に おける競争原理を適用しようと,
1995
年の電気事業の規制緩和の進展に伴って,電力自由 化が段階的に進められてきている。こうした背景から将来,分散型電源が需要家単位で急 速に導入されることが予測される。前述から,現在の電力システムを取り巻く環境が技術的・制度的の両面から大きく変化 してきていることが分かる。本研究室では分散型電源が系統内で導入量・導入台数が共に 支配的な立場を占めるような環境を「超分散環境」と呼び,電力だけでなく燃料電池等の 熱エネルギーの供給を踏まえて,超分散環境におけるエネルギーシステムを「超分散型エ ネルギーシステム」と定義し,研究・解析を行なってきた。超分散型エネルギーシステム において,
(1)
需要家は複数の分散型電源を持ち,(2)
需要家同士でネットワーク(
配電網)
を繋ぎ電力の融通が可能であり,(3)
貯蔵機能を持つ分散型電源を持つ,という条件を想定 している。先行研究ではマクロ的視点,つまり数千軒から数百万軒の需要家が分散型電源を所有し た状況を負荷状態か発電状態の2値でシミュレーションしていたのに対し,本研究では,
ミクロ的視点,つまり一軒から数百軒の需要家が分散型電源を所有した状況を想定し,需 要家のモデルを詳細化したものを用いて,分散環境に合致した新たなエネルギーシステム の在り方に対する具体的な提言をするために,最適運用という観点からシミュレーション を行ない,基礎的な解析を行なった。具体的には,
(1)
一需要家の振る舞いに着目し,負 荷・太陽光発電・バッテリーから構成される詳細なモデルの作成,(2)
構築したモデルの最 適運用決定アルゴリズムを構築,(3)
数値実験による構築したアルゴリズムの検証と定量的 評価,を目的としている。1.2
本論文の構成第
1
章“
序論”
では, 本論文の目的と背景について述べる。第
2
章“
分散型エネルギーシステムの特徴と位置付け”
では,先行研究と比較して,本 研究がどのような視点に基づいているのかをミクロ的・マクロ的の視点において述べ,分 散型エネルギーシステムを検討する基本方針を述べる。第
3
章“
モデリング”
では,分散環境における需要家は複数で構成される要素であると 考え,その複数の構成要素を挙げ,いくつかの種類に分類し,本論文に関するモデルを述 べる。また需要家を配電網で繋ぐネットワークのモデルについても述べる。第
4
章“
分散型エネルギーシステムの最適運用”
では,本論文で検討する分散型エネル ギーシステムがどのような条件下を想定するのかを始めに述べ,構築した2
つの最適運用 アルゴリズムの位置付け,定式化,アルゴリズムを述べる。第
5
章“
数値実験及び考察”
では,本論文で構築したアルゴリズムの結果とそれに対す る考察を述べる。第
6
章“
結論”
では,本論文の結論及び今後の展開を述べる。付録では,
2011
年現在での分散型電源や制度の現状を掲載する.2 分散型エネルギーシステ ムの特徴と位置付け
先行研究である超分散型エネルギーシステムは大規模,簡易モデルを想定し,
システム全体の振る舞いに重点を置いていた。しかし,現在では分散型電源を中 心としたエネルギーシステムが具体的に検討されているため一要素を具体化し,
実システムにより近い形で検討する研究も重要である。本章では,先行研究と本 研究の違いを明らかにし,本研究の特徴,位置付け,基本方針を述べる。
2.1
本研究の特徴と位置付け第
1
章で述べたような背景を踏まえ,本研究室では,分散型電源の導入量・導入台数が 共に電力システム内で支配的になる環境を「超分散環境」と呼び,超分散環境におけるエ ネルギーシステムを「超分散型エネルギーシステム」と定義して研究を行なってきた。超 分散環境では,現在の電力システムとは異なり,個々の需要家の振る舞いがエネルギーシ ステムの構造を決定づけることになる。つまり新たなエネルギーシステムに対するシミュ レーションを行ない,基礎的な解析を行なうため必要がある。そのため,先行研究では提 案段階だったことも踏まえ,簡易モデルを用いたマクロ的視点でのシミュレーションを行 ない,システム全体の振る舞いに重点が置かれていた。しかし,以前より将来の展望が具 体的に見えてきたことを踏まえ,要素を詳細化し,詳細モデルを用いたミクロ的視点から のシミュレーションを行なう必要もある。そのため,本研究ではミクロ的視点から見た最適運用に重点を置き,研究を行なった。図
2.1
に本研究のイメージ図,図2.2
に本研究と先 行研究の違いのイメージ図を示す。図
2.1
: 研究の位置付けのイメージ図
2.2
: 本研究と先行研究の違い3 分散型エネルギーシステ ムのモデリング
分散環境における需要家は複数の異なる要素から構成されている。また,その 要素に関しても多種多様である。需要家の所有する可能性のある分散型電源に関 しても複数の種類が考えられる。また,分散型エネルギーシステムにおいて,需 要家間はネットワークを繋ぎ,電力の融通が可能であるため,そのネットワーク に関するモデリングも検討する必要がある。本章では,需要家に関するモデリン グとネットワーク
(
配電網)
に関するモデリングについて述べる。3.1
需要家のモデリング分散型環境において,需要家は複数の分散型電源を所有している。分散環境における需 要家は分散型電源を所有しているため,負荷状態のみならず発電状態も含め,どちらかの 状態をとり得る。つまり,現在の電力システムにおける需要家のモデルは負荷状態のみの ため使用できない。そのため分散環境に合致した新たな需要家のモデルが必要となる。
本研究における分散型電源とは,需要地近傍に配置が可能で,発電を行なう小規模な発 電設備全般のことである。太陽光発電,風力発電に代表される自然エネルギーを利用した 分散型電源,燃料電池,マイクロガスタービンに代表される排熱を利用した分散型電源が 存在する。また電力貯蔵装置であるバッテリーも需要地近傍に配置され,電力需要に応じ て電力を放出することが可能なことから,本研究では分散型貯蔵装置の一つと考えている。
表
3.1
: 分散型エネルギーシステムにおける需要家の構成要素の分類種類 要素 要素の状態 要素の性質 需要家による制御
負荷 需要家の電力消費 負荷 静的 不可
分散型電源 太陽光発電 電源 静的 不可
分散型電源 風力発電 電源 静的 不可
分散型電源 燃料電池 電源 静的 可能
分散型電源 マイクロガスタービン 電源 静的 可能 貯蔵装置 バッテリー 電源
or
負荷 動的 可能本研究では,エネルギーシステム内で支配的であることから,需要家のモデルは日本の一 般家庭を想定している。分散環境における需要家の構成要素は次の表
3.1
のように分類す ることが可能である。次に表
3.1
の項目にある要素の状態・モデルの状態・制御について述べる。まず,要素 の状態について述べる。•
負荷需要家が消費する電力消費のことを指す。本研究では,ある小規模な地域のエネル ギーシステムにおける電力の供給を検討している。そのため最も支配的なパラメー タとなる。
•
電源需要家が所有する発電源である分散型電源のことを指す。分散型電源は大きく2 種類に分類することが可能である。
1
種類は太陽光発電,風力発電などの天候や時 間帯の影響を受け,その影響によって出力が左右される需要家が制御不可能な電源 である。もう1
種類は燃料電池,マイクロガスタービンなどの需要家が制御可能な 電源の2
種類に分類される。また,制御可能ではあるが,燃料電池は通常,排熱を 利用し,熱供給と共に用いられるという制約条件がかかる。•
電源or
負荷電力貯蔵装置のことを指す。時間によって蓄電・放電が可能であり,エネルギー
第
3
章 分散型エネルギーシステムのモデリング8
システムとしては電源・負荷の2
つの状態をとる可能性がある。次に,モデルの状態について述べる。
•
静的モデル静的モデルとは,ある時刻における状態が,その時刻,その時刻における状態だ けによって決定されるモデルのことである。電力システムにおいて,単位は
kW
で ある。•
動的モデル動的モデルとは,ある時刻における状態が,それ以前の時刻の状態にも依存する モデルのことである。電力システムにおいて,単位は
kWh
である。最後に,制御について述べる。
•
制御不可能需要家が自ら制御不可能なことを指す。制御不可能な要素は問題としての自由度 が少ない。例えば,夜に発電する太陽光のモデルなど,現実とかけ離れたモデリン グを行なうことは不可能である。
•
制御可能需要家が自ら制御可能なことを指す。制御可能な要素は問題としての自由度が高 いため,最適化する意義が生まれる。
このように要素の状態,モデルの状態,制御に関して上記のことを考慮し,本研究では 需要家を,
(1)
負荷,(2)
太陽光発電,(3)
バッテリーの3
種類を需要家のモデルとして,実 際にモデリングを行なった。この3
種類をモデリングの対象とした理由を以下に示す。•
負荷電力システムを検討しているため,最も支配的なパラメータである。
•
太陽光発電風力発電は一般家庭には設置困難である。また,マイクロガスタービンは一般家 庭に導入する可能性が低いという点でモデリング対象として除外した。太陽光発電 は政府主導
(
補助金等)
によって導入が進んでいることや一般家庭にも設置がしやす いなど,社会的背景や実現性も含めて選択した。•
バッテリー表
3.1
より,バッテリーはモデルの状態が動的であり,バッテリーをモデルに組み 込むことで問題が動的問題に変化する。具体的にはある時刻で貯蔵した量によって,次の時間の状態が変化する。また,需要家が制御可能な要素であり,この要素に関 する最適運用アルゴリズムを構築する。
制御不可能である太陽光発電と制御可能なバッテリーを組み合わせることで,安定した 電力供給システムが実現可能となると考えた。
3.2
ネットワークのモデリング現在,既存の電力システムにおいて,発電所から需要家への電力の流れる方向は一方向 である。つまり需要家間で相互作用は存在しない。しかし需要家同士を配電線で繋げる電 力ネットワークを接続することで
,
相互作用が生じ,個々の需要家内で発生する電力の余 剰,不足を他の需要家と融通することが可能となる。それに伴い,電力供給信頼性,
経済性 の向上につながる可能性があると考えられる。現在の各電力会社域内の電力系統は,少ない設備でより多くの電気を送るという観点か ら,メッシュ状あるいは潮流管理などの観点から放射状など,両者を組み合わせた構造と なっている。
平常時,需要家同士は放射状に繋がれており,緊急時
(
停電,
断線等)
になると,横の配 電線が繋がるようになる。平常時に横の配電線を繋げない理由は,
事故線の特定を素早く容 易に行なうためである。図3.2
に現在の電力ネットワークを示す。分散型エネルギーシステムにおいては,需要家間をネットワーク
(
配電網)
を繋ぐことで,需要家間での電力の融通が可能となる。そこで,本研究では,基礎的な検討段階であると いうことも踏まえ,電力の融通を行なわない独立型を含めて,くし型,ループ型,および メッシュ型の
4
種類を提案した。図3.3
に本研究で提案したネットワークのモデルを示す。独立型とは,需要家間に相互作用はなく,その需要家のみで電力の融通を行う。つまり ネットワークを介して電力の融通は行なわない。そして,くし型,ループ型,メッシュ型 のいづれのネットワークモデルも電力の融通は隣の需要家のみから行なうものとしている。
第
3
章 分散型エネルギーシステムのモデリング10
図
3.1
: 現在の電力ネットワーク図
3.2
: 提案したネットワークモデル本研究ではネットワークの有用性を検証するため,ネットワークの構成によってネットワー ク全体の電力不足量を評価する。
配電線の容量制限について
現実の配電ネットワークでは,電線にあまりに大きい電流を流すとその電線は焼き切れ るなどの点を考慮して,流せる電流に上限がある。本研究では,本来ならば電力,電圧,電 流を考慮して最適化を行なうのが望ましいが,電力の授受のみしか扱っていない。そのた め配電制限を与えることで電圧が一定である状態を想定し,電流を電力のみで扱えること
にした。従って,需要家同士で融通できる電力に上限があるものとする。
4 分散型エネルギーシステ ムの最適運用
本章では,分散型エネルギーシステムの運用問題について,まずどのようなシ ステムを目指すかを述べ,定式化を行なう。そして,本研究では構築した
2
つの 最適運用問題が階層構造であることを述べ,それぞれの最適運用問題に関する定 式化を行ない,アルゴリズムを示す。4.1
分散型エネルギーシステムの運用モデル分散型エネルギーシステムの運用・制御は,分散型エネルギーシステムを構成する需要 家や電力会社などが全体の目標実現に向かって協力する「協力型システム」と,分散型電 源を所有するそれぞれの需要家が利益を追求する「競争型システム」の
2
種類に分割でき る。「協力型システム」と「競争型システム」について以下に示す。•
協力型システム電気エネルギーの供給を社会における重要なインフラ設備と位置付けて,分散型エ ネルギーシステムを構成する需要家や電力会社などが,エネルギーシステム全体と しての設備・運用コスト削減や信頼性向上の実現を目指して,互いに協力してシス テムの運用・制御を行なうシステムモデルのことを指す。例えば,火力発電や原子 力発電などの集中型電源は現在と同様に経済負荷配分に従って運用され,各需要家 は可能な範囲において需給平衡バランスの維持や経済性向上に協力するものなどが
挙げられる。
•
競争型システム分散型電源を所有する各需要家がエネルギーシステム全体としての運用コスト削減 や信頼性向上の実現を目指すのではなく,自らの利益を最大とするような行動を取 るシステムモデルのことを指す。例えば,各需要家はシステム全体としての需給平 衡維持や経済性向上などには関心は持たず,時々刻々と変化する電力価格などの情 報を基に,専ら自己の利益を最大化するように行動するものなどが挙げられる。「協 力型システム」とは異なり,需給平衡の維持は困難となり,需給不平衡の振る舞い は複雑となることが予想される。
以上の
2
つの運用モデルのいずれにおいても,需要家の振る舞いは独立ではなく,ロー カル情報・グローバル情報に基づいた複雑な相互作用が存在する。この相互作用がエネル ギーシステムの振る舞いを決定することになる。本研究では,エネルギーの供給は社会における重要なインフラ設備であると考え,前者 の協力型システムについての検討を行なった。また,電力供給は基本的に需要家が所有す る分散型電源のみで賄うものとしている。
4.2
階層型最適化「分散型エネルギーシステムの最適運用問題」を本研究では,
(1)
各需要家における最適 運用問題,(2)
各需要家の最適運用問題が決定された後のネットワークとしての最適運用問 題,の2
つの階層問題に分割して考えることができる。分散型エネルギーシステムの最適 運用において定式化した式の前半部分が(1)
各需要家における最適運用問題,後半部分が(2)
各需要家の最適運用問題が決定された後のネットワークとしての最適運用問題に該当 している。(1)
各需要家における最適運用問題においては,バッテリーの容量,バッテリー に入れられる容量が制約条件となり,(2)
各需要家の最適運用問題が決定された後のネッ トワークとしての最適運用問題においては,配電線の容量制限制約条件となる。また,こ の問題は実システムにおける複雑な要素を単純化しているため近似的手法である。極度に 単純化されたモデルの解析は意味がないこと,また近似を行なう際にエネルギーシステム第
4
章 分散型エネルギーシステムの最適運用14
図
4.1
: 提案手法全体のバランスを十分検討することが重要である。本研究における分散型エネルギーシス テムは,需要家はバッテリーを所有しているため動的最適化問題となるが,ネットワーク の最適化は静的最適化問題であるため,階層ごとに状態が静的と動的が混在しているとい う特徴がある。
4.2.1
動的計画法に基づく各需要家のバッテリーの最適運用バッテリーを所有する需要家の振る舞いは過去の影響を受け変動するので,動的最適化 問題となる。そのため,システムの時間的な変化を考慮して最適化を行なう必要がある。
そこで本研究では,動的計画法
(Dynamic Programming
:DP)
を用いて各需要家のバッテ リーを最適運用する手法を提案した。図
4.2
: 動的計画法<動的計画法
(Dynamic Programming
:DP)
>動的計画法
(Dynamic Programming
:DP)
とは動的システムの最適化手法として研究さ れ,確立された手法である。最適性の原理に基づき,ある一時点の結果ではなく,部分解 を列挙し,そこまで以上の最適解が求められないような部分解を切り捨てながら,時間の 経過に応じて次々と決定を行ない,この一連の決定の結果として得られた全期間で効果を 最大にする方策を決定するという,逐次的に解を決定していく方法である。最適性の原理については以下に示す。
•
最適性の原理最善方策では,中間の状態がどんなものであっても,最適方策の前半部分
(
後半部 分)
が,最初の状態からその状態を得る方策(
その状態から最終状態に至る方策)
の うちで最適である。第
4
章 分散型エネルギーシステムの最適運用16
図
4.3
: 大規模システムにおける需要家縮約4.2.2
逐次近似法に基づくネットワークの最適運用本研究では,エネルギーの供給は社会における重要なインフラ設備であると考え,協力 型システムについての検討を行なった。そのため,ネットワーク全体の平均値に近づける 運用を行なう。その際,ネットワーク全体のバランスに注意する必要があることから,逐 次的に微小量ずつ決定変数を動かす逐次近似法を用いた。以下に逐次近似法について示す。
<逐次近似法>
一般的に非線形計画問題においては,特殊な場合を除いて解を解析的あるいはその他の 手段によって直接的に求める,いわゆる直接解法が存在することはほとんどないことが知 られている。そのためコンピュータ利用を前提とした逐次的に微小量ずつ決定変数を動か す逐次近似法によって解を求めている。
大規模システムにおける需要家縮約のアルゴリズム
分散型エネルギーシステムでは多くの需要家を想定する必要がある。そこで,本研究で はネットワーク全体の総和を一つの地域と捉え,ネットワーク全体の総和を求めている。
そして一つの地域の総和を一需要家に縮約することで,同一のアルゴリズムで多くの需要 家に対応可能な,分散型エネルギーシステムにおける需要家の階層型アルゴリズムを提案 した。図
4.3
に提案手法のイメージを示す。4.3
提案手法のアルゴリズム本研究では,電力不足量と電気料金の2通りのシミュレーションを行ない,評価を行なっ た。以下に,アルゴリズムを示す。表
4.1
に変数一覧を示す。電力不足量の場合
協力型システムとは需要家数の総数
N
,時間帯数T
,P Di (t)
を時間t
におけるi
番目の需 要家数の消費電力,P P i (t)
を時間t
におけるi
番目の需要家の発電量,P Li (t)
を時間t
にお けるi
番目の需要家に接続している配電線を流れる有効電力,P Si (t)
を時間t
におけるi
番 目の需要家のバッテリーの入出力,接続行列C = [c ij ]
,c ij =1 or 0
と与える。ネットワー ク全体の電力不足量を最小化するという最小化問題であり,以下のように表される。P min
S,P L J (P S , P L ) =
T
t =1
N
i =1
(P P i (t) + P Si (t)) +
j ∈ C
i(P Lij (t) − P Di (t)) 2 (4.1) subj.to − P Si max P Si (t) P Si max (4.2)
P Lij (t) = 0 (4.3)
P Lji = − P Lij (4.4)
0 W Si (t) W Si max (4.5)
W Si (t) =
t
h =1
P Si (h) (4.6)
第
4
章 分散型エネルギーシステムの最適運用18
表
4.1
: 変数一覧記号 変数,パラメータ 単位
N
需要家の軒数-
T
時間帯数-
V B
電力会社から購入する料金 円V S
電力会社に販売する料金 円N A
ネットワーク数-
P L
配電線を流れる有効電力kW P S
バッテリーの入出力kW W S
バッテリーの貯蔵容量kWh C(
接続行列)
配電線のネットワーク構造-
P L max
配電線の電力上限kW P S max
バッテリーのkW
容量kW W S max
バッテリーのkWh
容量kWh
P D
需要家の負荷パターンkW P P
太陽光発電の発電パターンkW η in
,η out
バッテリーの変換効率kW
ただし,
C i { j | c ij = 1, j = 1, 2, ...N }
,i = 1, 2, ..., N
;t = 1, 2, ..., T
である。<動的計画法に基づく各需要家の電力不足量の最適運用>
本研究では,各需要家において,バッテリーの運用を最適運用問題として考え,バッテ リーの運用の最適化を動的計画法
(DP)
を用いる。状態数
S
,時間帯数T
,B t
を時間t
における電力量,充放電量P ch
とすると,変化量P b
は,P b = S − P ch
,P D i (t)
を時間t
におけるi
番目の需要家の消費電力,P P i (t)
を時間t
に おけるi
番目の需要家の発電量,P Li (t)
を時間t
におけるi
番目の需要家に接続している配電線を流れる有効電力,
P S i (t)
を時間t
におけるi
番目の需要家のバッテリーの入出力,と 与え,時間毎でのバッテリーの運用を最短経路問題に帰着させ,以下のように表される。min
P
SJ(P S ) = T t =1
(P P i (t) + P S i (t)
+
j ∈ C
iP Lij (t) − P D i (t)) 2
(4.7)
subj. to − P S i max ≤ P S i (t) ≤ P S i max (4.8)
P Lij (t) = 0 (4.9)
P Lji = − P Lij (4.10)
0 ≤ W S i (t) ≤ W S i max (4.11) W S i (t) =
t h =1
P S i (h) (4.12)
ただし,
C i { j | c ij = 1, j = 1, 2, ...N }
,i = 1, 2, ..., N
;t = 1, 2, ..., T
である。以下に,各 需要家の電力不足量の最適運用のアルゴリズムを示す。[
動的計画法に基づく各需要家の電力不足量の最適運用のアルゴリズム] Step 0:[
準備]
状態数
S
,時間帯数T
,バッテリーの入出力P S
,初期のバッテリーの貯蔵容量W S
を定義し,k = 1
とする。Step 1:[
ルートの計算]
最小二乗法により,(P P i (t) − P D i (t) − P S i (t)) 2 (4.13)
を計算する。Step 2:[
各状態の最適値の選択]
時刻
t + 1
のj
番目の状態数を表すバッテリーの入出力としてP S t +1 ,j
を用いて,この状態での値を
f ( P
S(t+1,j))
とする。また時刻t
のi
番目の状態より時刻t + 1
のj
番目の状態に移る。その時の値をf(P S ( t,i )
,P S ( t +1 ,j ) )
とし,f (P S t +1 ,j ) = min
i ∈ S
t[f(P S t,i + f (P S t,i , P S t +1 ,j )] (4.14)
を求める。第
4
章 分散型エネルギーシステムの最適運用20 Step 3:[
終了判定]
t = T
なら終了とする。さもなければt = t + 1
としてStep 1
へ行く。<逐次近似法に基づくネットワークの電力不足量の最適運用>
本研究では,任意のネットワークにおいて,ある時間
t
における各需要家の電力平均化 問題と考え,需要家の総数N
,時間帯数T
,P D i (t)
を時間t
におけるi
番目の需要家の消 費電力,P P i (t)
を時間t
におけるi
番目の需要家の発電量,P Li (t)
を時間t
におけるi
番目 の需要家に接続している配電線を流れる有効電力,P S i (t)
を時間t
におけるi
番目の需要家 のバッテリーの入出力,と与えると,逐次近似法に基づき以下のように表される。min
P
S,P L J(P S , P L ) =
T
t =1
N
i =1
(P P i (t) + P Si (t)) +
j ∈ C
i(P Lij (t) − P Di (t)) 2 (4.15) subj.to − P Lij max P Lij (t) P Lij max (4.16)
以下に,逐次近似法に基づくネットワークの電力不足量の最適運用についてのアルゴリ ズムを示す。
[
逐次近似法に基づくネットワークの電力不足量の最適運用のアルゴリズム] Step 0:[
準備]
需要家の時間毎の消費量
P D (t)
,発電量P P (t)
,需要家数N
,バッテリーの貯蔵容 量W S
,バッテリーの蓄電・放電による損失η in
,η out
,配電線の容量制限P L
,微小 量ΔP
,最大反復回数k max
を与える。Step 1:[
算出]
各需要家の時間毎の発電量と消費量の差分,
B(t) = P P (t) − P D (t)
を算出する。算出した各需要家の発電量と消費量の差分,
B
を動的計画法(DP)
を用いて最適化 を行なう。Step 2:[
ネットワークの定義]
ネットワーク構成を定義し,
k = 1
とする。Step 3:[
ネットワークの最適運用問題]
ネットワーク全体の時間毎の
B (t)
の平均値Ave
を求め,各需要家の時間毎のB(t)
の値を
ΔP
ずつ流し,Ave
に近づける。Step 4:[
終了判定]
配電線の容量制限
P L
の値に達する,又はk = k max
ならば終了。さもなければk = k + 1
としてStep 3
へ行く。Step 5:[
ネットワークの総和計算]
小規模ネットワークの最適運用終了後の各需要家の電力不足量から,小規模ネッ トワーク全体の電力不足量
B(t)
を計算する。[
大規模システムの電力不足量における需要家縮約のアルゴリズム] Step 0:[
準備]
需要家の時間毎の消費量
P D (t)
,発電量P P (t)
,需要家数N
,大規模ネットワーク 数N A
,時間毎の電力会社から購入する料金V B (t)
,時間毎の電力会社に販売する料 金V S (t)
,バッテリーの貯蔵容量W S
,バッテリーの蓄電・放電による損失η in
,η out
, 配電線の容量制限P L
,P Llarge
微小量ΔP
,最大反復回数k max
,m max
を与える。Step 1:[
算出]
各需要家の時間毎の発電量と消費量の差分,
B(t) = P P (t) − P D (t)
を算出する。算出した各需要家の発電量と消費量の差分,
B
を動的計画法(DP)
を用いて最適化 を行なう。Step 2:[
ネットワークの定義]
ネットワーク構成を定義し,
k = 1
,m = 1
とする。Step 3:[
小規模ネットワークの最適運用問題]
小規模ネットワーク全体の時間毎の
B(t)
の平均値B(t) Ave
を求め,各需要家の時 間毎のB(t)
の値をΔP
ずつ流し,B(t) Ave
に近づける。Step 4:[
小規模ネットワークの終了判定]
配電線の容量制限
P L
の値に達する,またはk = k max
ならばstep 5
へ,さもなけ ればk = k + 1
としてStep 3
へ行く。Step 5:[
小規模ネットワークの総和計算]
小規模ネットワークの最適運用終了後の各需要家の電力不足量から,小規模ネッ トワーク全体の電力不足量
B(t) Reduced
を計算する。Step 6:[
大規模システムの最適運用問題]
第
4
章 分散型エネルギーシステムの最適運用22
大規模システムの時間毎のB(t) large
の平均値B(t) largeAve
を求め,各需要家の時間毎の
B(t) large
の値をΔP
ずつ流し,B(t) largeAve
に近づける。Step 7:[
大規模システムの終了判定]
配電線の容量制限
P Llarge
の値に達する,またはm = m max
ならばstep 8
へ,さ もなければm = m + 1
としてStep 6
へ行く。Step 8:[
大規模システムの総和計算]
大規模システムの最適運用終了後の大規模システム全体の電力不足量
B (t) total
を 計算する。5 数値実験及び考察
第
4
章で提案した(1)
一需要家における最適運用,(2)
ネットワークの最適運用,そして
(1)
,(2)
の両方を組み込んだ最適運用についての階層型アルゴリズムを用 いて,電力不足量と電気料金の最適運用に関しての数値実験を行ない,その結果 について述べる。そして結果についての考察を行ない,モデルの妥当性を検証を 行なった。5.1
数値実験条件ここでは全てにおいての数値実験で共通の条件を述べる。すべての需要家は同一の性能・
容量の分散型電源を所有しているものとする。また,バッテリーは蓄電・放電の際に電力 変換効率が生じるものとして扱う。一般家庭における
1
年間の平均消費電力は5500(kWh)
という統計値を基に,1
日の電力消費を約15(kWh)
とした。また,需要家の電力消費量に 関して,電力の過不足の時間帯が重なると,ネットワークの有用性の検証が困難である。そこで需要家の負荷パターンを
2
種類を想定した。本研究では,需要家は一般家庭を想定 していることから,一つは,専業主婦の家庭などの昼間もだれかが家にいる家庭を想定し,負荷パターン
P Ds (t)
とする。もう一つは,両親は共働きの家庭で,子供も学校に出かける ために,昼間は家に誰もいなくなる家庭を想定し,負荷パターンP Dd (t)
とし,図5.1
は負 荷パターンP Ds (t)
,図5.2
は負荷パターンP Dd (t)
を表したグラフである。また,太陽光発第
5
章 数値実験及び考察24
電は12
時ピークを線形変化するものとした。太陽光発電の発電パターンを図5.3
に示す。図
5.1
: 専業主婦家庭の負荷パターン図
5.2
: 共働き家庭の負荷パターン数値実験において共通の条件を表
5.1
に示す。また,1日の電気料金は,東京電力株式会社の電化上手の電気料金メニューを参考にし た。1日の電気料金の変動は図
5.4
に示す。図
5.3
: 太陽光発電の発電パターン表
5.1
: 数値実験条件記号 変数,パラメータ 値 単位
T
時間数24 -
W s
バッテリーの初期貯蔵量0 kWh η in
バッテリーの損失0.9 - η out
バッテリーの損失0.9 - P L max
配電線の電力上限0.1 kW
ΔP
微小量0.01 kW
k max
最大反復回数1000
回以上の条件のもとで,ネットワーク全体の
1
日の電力不足量と電気料金を評価値とした。第
5
章 数値実験及び考察26
図
5.4
: 1日の電気料金の変動5.2
小規模ネットワークにおける数値実験結果5.2.1
数値実験条件表
5.1
の他に,表5.2
に小規模ネットワークにおける数値実験条件に示す。表
5.2
: 小規模ネットワークにおける数値実験条件記号 変数,パラメータ 値 単位
P Ds (t)
専業主婦家庭の需要家3
軒P Dd (t)
共働き家庭の需要家3
軒S
バッテリーの状態数20 -
5.2.2
逐次近似法に基づくネットワークの最適運用図
3.3
に示したネットワーク毎による電力の不足量の比較を図5.5
に示す。5.2.3
動的計画法に基づく各需要家の最適運用動的計画法を用いて需要家の所有するバッテリーを最適運用した場合と最適運用しない 場合の電力不足量の比較を図
5.6
に示す。またネットワークのモデルは独立型とし,需要 家間の電力の融通は行わないものとする。5.2.4
需要家およびネットワークの最適運用動的計画法に基づく各需要家の所有するバッテリーの最適運用と逐次近似法に基づくネッ トワークの最適運用をそれぞれ組み合わせた,需要家およびネットワークの最適運用の場 合と逐次近似法に基づくネットワークの最適運用のみの場合の電力不足量の比較を図
5.7
に示す。図
5.5
: 逐次近似法に基づくネットワークの最適運用の数値実験結果第
5
章 数値実験及び考察28
図
5.6
: 動的計画法に基づく各需要家の最適運用の数値実験結果図
5.7
: 需要家およびネットワークの最適運用の数値実験結果5.2.5
逐次近似法に基づくネットワークの電気料金の最適運用図
3.3
に示したネットワーク毎による電気料金の比較を図5.8
に示す。図
5.8
: 逐次近似法に基づくネットワークにおける電気料金の最適運用の数値実験結果図
5.9
: 動的計画法に基づく各需要家の電気料金の最適運用の数値実験結果5.2.6
動的計画法に基づく各需要家の電気料金の最適運用動的計画法を用いて需要家の所有するバッテリーを最適運用した場合と最適運用しない 場合の電気料金の比較を図