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伊藤 フミ・玉木 民子

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(1)

33

食物嗜好についての研究(第2報)

―生育地域別にみた嗜好の傾向―

伊藤 フミ・玉木 民子

Studies on the Preference of Food(Part 2) 

by 

Fumi Ito, Tamiko Tamaki

 「バランスの取れた食生活の実践」に深いかかわりがあると思われる食物の嗜好は「どのよう に形成されるであろうか」この疑問を解明したいと考えて,1980年6月に19歳から70歳代の女性 495名を対象に実施した「食事調査」は年齢別に集計し,考察を試みたところ,食物の嗜好は喫 食経験によって形成され,特に幼児期の喫食経験との関連が深いことが解明された。また一人一 人の生理的事情によっても大きく変化し,40歳代を境にして変化の実態を把握することができ

1)

た。

 この度は,前回の調査で,対象者の数が多く,特色のある傾向が認められた,19歳と40歳代を 選んで,幼児期の生育地域別に「農村育ち」と「町・市育ち」 (中小の町と市街地を合わせて)

に分けて,調査項目毎に集計し,考察を試みたのでその結果を報告したい。

調 査 方 法

1調査対象(表1)

 先回の調査対象495名の中から,同年齢者の数が多く,特色ある結果が得られた19歳(本学で 小児栄養を履修していた短大2年生)113名と

      表1 生育地域別調査対象()は%

40歳代132名について,幼児期の生育地域を農 村・中小の町・市街地・山村・漁村の五地域に 分けた結果が表1である。今回は少数の山村・

漁村を除き,19歳105名,40歳代114名を「19 歳の農村育ち」 「19歳の町・市育ち」 「40歳代 の農村育ち」 「40歳代の町・市育ち」の四グル ープに分けて集計し考察した。

2 調査時期・方法 第1報と同じ

     人数 生育地域

19

113(100.0)

40歳 代

132(100.0)

村132(28・・3)157(43.・2)

中小の町138(33.・6)125(・8.・9)

市街地135(3・.・)i32(・4.・3)

村12(・. 7) 17(5.・3)

缶… 村13(2・・7)14(3.・)

記入不備13(2・・7)i7(5・・3)

新潟青陵女子短期大学研究報告 第12号 (1982)

(2)

34       伊藤フミ・玉木民子      結果及び考察

 調査項目に従って,結果及び考察を述べる。

 1 生育地域別健康・食事状況(図1)

 1)健康について

 「健康である」と自覚する者「19歳の農村育ち」が46.9%,「40歳代の農村育ち」が45.6%で

「町・市育ち」に比べてわずかに優位である。

 「既往症」について,「19歳の農村育ち」に盲腸炎・おたふくかぜ・はしかがあり,「40歳代 の農村育ち」に子宮筋腫・胃炎・胃潰瘍・盲腸炎・胆のう炎・血性肝炎・肋膜炎・気管支喘息・

図1蜻地域別儲幕)顯・鰯犬況

0 50 100%

A 46.9       46.9 li

B 42.5 43・8 1.4鰐過;

;・:ホ・?

§」翅健康である

@ [コ普通 W.8∈∋病気がち

@ 囲記入不備3.4 健康について

C 45.6 42.1 3.5

灘、二・し

D 38.6多   49.2 8.8

A 12.5 53」  1918i}1榊 四  バランスがとれている  やや太りすぎ

体格について

B %41.1 39.7 6.8

1:1;1 

W.2章llIlI ノ 太りすぎ

C 28.1       日S0.4    21.1 撃撃lI

ム:含5.2 ili㈱少しやせ気味5.2=やせすぎ

D 29.8         1;lllR3.3  17510.5     1     1,1,1 ll a:書 三・鼠・記入不備

A 40.6 59.4 囮餓があってよく食べる

B 27.4       71.2

食欲について

C 47.4      49.1        、

1・4[コ普通

c目鰍なくて少食

R。5團言己入不備 D 31.6      57.9      ア.〇    三

A 28.1       62,5       9.4

B 24.7 一一一隔一}一一一@   61.6 .]3.Z 好傾

ォ向ォに 轤ツ フて「い

0 474   43・95・3ii

  囮蕎麓皇ヒこ瓠

@ 口普通

R.4∈ヨ髭繍罫のが P.7匿ヨ記入不備 D 49.1       40.4       .8,

A 31.3    65.6   1

嗜つ

Dいフて

マ化に

B 31.5 61.6  澤

3.1 囮変化を感じたことがある U.9 口変化を感じたことがない

@ 慶ヨ記入不備 C 19.3       71.9      き18・告・

F ;,

D 35.1 5…  1!鑑φ:

A 34.4 53.1  3.1 :皐14

魏鋸袈

B 24.7 54.8 ・16・4≒

  囮難窪欝雫儒ン

@ 〔]普通4コ  巨ヨあまり考えていない

@ 囲記入不備3.5

C 38」6      47.4        14.0      − 

D 49.1    一S7.4

A…19歳の農村育ち(N=32) B…19歳の町・市育ち(N=73)

b…40歳代の農村育ち(N−57) D…40歳代の町・市育ち(N=57)

(3)

食物嗜好についての研究(第2報) 35

ジフテリア・百日咳・中耳炎等がみられる。「19歳の町・市育ち」には,敗血症・頸部化膿症・

腰椎分離症・盲腸炎・胃炎・急性腸カタル・小児リューマチがあり, 「40歳代の町・市育ち」に はリューマチ性筋膜炎・胸膜炎・膵臓炎・胆のう炎・脱腸・盲腸炎・腰椎すべり症・十二指腸潰 瘍・肺炎等の記載がある。

 「現在かかっている病気」では,「19歳の農村育ち」に湿疹1名,「40歳代の農村育ち」に神 経痛・頭痛各1名, 「19歳の町・市育ち」には記入がなく, 「40歳代の町・市育ち」には胃潰瘍

・リューマチが各1名である。生育地域別にみて「農村育ち」がやや優れていると思われるもの の「40歳代」という年代の実態に目をみはる思いである。この年代は戦中・戦後の困窮の時代に 幼児期を過した人たちである。

 2) 体格についての自己評価

 「身長と体重のバランスがとれている」と自覚する者「町・市育ちの19歳」が41.1%,「40歳代 の町・市育ち」が29.8%で「農村育ち」に比べて高率で「農村育ち」には「やや太り気味であ る」「太りすぎている」と自覚する者が多い。

 3)食欲について「食欲があってよく食べる」もの「19歳の農村育ち」が40.6%, 「40歳代の 農村育ち」が47.4%で「町・市育ち」より高く, 「町・市育ちの40歳代」に「食欲がなくて少食 である」の率が高いのは2)の体格についての自己評価と一致した結果といえる。

 4)嗜好及び嗜好の変化について

 「好ききらいがなくて何でもおいしい」と記した者は,19歳では,農村育ちが28.1%でわずか に高く,40歳代では町・市育ちが49.1%でわずかに高い。「きらいなものが比較的多い」は,19 歳・40歳代ともに「町・市育ち」が高率である。

 「これまでに嗜好に変化を感じたことがある」ものは町・市育ちがわずかに高く,「19歳の町

・市育ち」が31.5%,「40歳代の町・市育ち」が35.1%である。「変化した食事内容」について,

「19歳の農村育ち」は,12歳から18歳にかけて,ピーマン・にんじん・福神漬が食べられるよう になった。魚や小魚・海草が食べられるようになった。給食でパンが好きになった等,年齢と喫 食経験を重ねることによって嗜好の範囲を広げてゆくことが認められた。「40歳の農村育ち」で は,18歳で魚や油が食べられるようになった。46歳頃から淡泊なものを好むようになった。45歳 頃から血圧を気にして塩分を控えるようになった等の記載がある。「19歳の町・市育ち」は,10 歳から18歳にかけてマカロニサラダ・ところてん・トマト・しいたけ・ねぎ等が食べられるよう になった。敗血症の後油を好まなくなったとあり,「40歳代の町・市育ち」では,45歳頃から淡 泊なものを好むようになった。胆のう炎・膵臓炎にかかってから油ものを避けるようになったと 記されており,生育地域による違いよりも年齢・喫食経験・生理的条件によって変化してゆくこ

とがうかがわれた。

 5)食事に対する心遣いについて

 「食品の組合わせや栄養のバランスに注意している」ものは「19歳の農村育ち」は34.4%で

「町・市育ち」より高く,「40歳代の農村育ち」は38.6%で「町・市育ち」より低く更に「あま り考えていない」率が高い点は検討を要する問題点である。

 2 食品群及び調理手法別の嗜好傾向について(図2,図3)

      1)2)

 「現在及び幼時期の食事内容」の調査項目の集計結果から「嗜好率」 「喫食頻度率」を求めて 比較した。

 1) 穀類・いも類について

 ごはん類について,「農村育ち」は19歳・40歳代ともに喫食頻度率が高く,幼児期についても

(4)

36 伊藤フミ・玉木民子

①現

40.6

図2 食品群別嗜好と喫食頻度について

28.8 52.6

52.6

ごはん類ニーtt

31.3

   14.Q

40、6 38.4

56.1

28.1

32・9・ ・㌦『』 W1§一パン類;7,。 t24・7

25.0 37.0 38.6

33.3 18.8

15.1 29.8

21.1

45,6

35.1

8 5

1 5

2 1 めん類

,tC   26.0 33.3

いも類

び品 及製 豆豆

67

31.6 25.0

23.3 43.9

G・.〜1,[:∫し∴:ご

36.8

34.2

12.5 28.1

29.8   37.5

45.2 ・ 一巳 ;.z.  、・    ・ 、 ノ∵㌦} 電・

     24.6     28.1

50.0  46.3 ♪ 

17.5 31.6

3.1 6,8:・.

 28.1 31.6 31.3 34.2 49.1

42.1

   34.4 46.6.

  38.6

43.9[::::::::::::=_一,一一一一一一一一

19.3 18.8 6.8

14.0 29.8 18.8 6.8

43.9 24.6

魚、介類

  18.8

.4 D; ・=f・

F21.9

42.1 36.8

肉  類㌧

   28.1

..・ン∫二・こ÷;: ,:: 37.0

28.0 28.1

卵 類葛

  46.9 t 46.6 29.8

33.3 40.6 牛乳及び:.

乳製品

小魚類

海草類

49.3 19.3

33.3 0

2.7 14.0

22.8 12.5

19.2 31.6

35.1 37,5

㍉・緑黄色㌧. :lrJ・

  野 菜

78.1

 43.8

49.3・

   29.8 42.1[=:=

.騨1∵

69.9:,∴ ,ひ ∴二,・

57.9 45.6 z

80   70   60   50   40   30   20    10   0         0善  女子  率(%)

淡色野菜

くだもの

43.9 50.7 38.6

40.4

56.3 50.7 35.1

59.4

.8

.4

0    10    20    30   40    50    60

     喫食頻度率(%)

㎜19歳濃村育ち(N −32)

囮40歳代:農村育ち(N=57)

匿霊ヨ19歳:町・市育ち(N =・ 73)

〔::」40歳代:町・市育ち(N=57)

(5)

食物嗜好についての研究(第2報) 3ワ

②幼児期

       46.9

V7.2 47,9 二で8.∫こ:・∵ご∵ご三∵.・.3・・㍉ン}:∫・㌃て㌦㌔弘ご二

49.1

18.8

@ ,  ,   P.  ■

21.9 °㌔・・∵ン∵ジ㌃9.ご 3.5 8.8 18.8 31.5

RL6

∫∴・:ごド1}∵.守:㌦迂1艮

24.6 9.4

19.2.:・:・∵」・:て∫・!㌔・

 61.4

@   52.6

40.4

15.6

P5.1 鰐・:くで・ぐ二

45.6

25.0

@  15.1

Il

:ヅ}錆望:°.

35.1 33.3

9.4

28.8 fと㌃.°㌔,三凸㌧,染争.ヤニξ二・

1.8 12.3

     43.8

U3.05章ン∴♂で:冨.:1…:ノノト、へ:一…∵5て ゴ:・rξ・∵∴:唱7く 卿 :∵二、ご

ごはん

pン

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「も

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實贒

卵牛乳及乳製品小魚海草緑黄野くだも

4.6 1.6

8・禦

7.0 覧・:〜∵.㍉そごく∵二・.::1:ゴ:ごゴ∫ぐ∵∴∵:!

0.5  多 4.0

.3

.1 ン1

1.6 8.12

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 18.82 U.3

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 9.41

U.4「7・亭}・・二嬬 9.1

1.6

5.61

V.8 ∵二ぞ.{・!::;:・

3.9 色野

6.8 0.61

6.6 .∵;ン:・∴・∵・:匁二【}:・㌔}・:... ∴・こ:ヤ{.∵∴..ガ、≒ヤ

1.1       .3 U.8

0   70   60   50   40   30   20    10    0        P言  女子  率(%)

0.6

虞・ン∴・1∫・・!㌦・ :馳∴−30.1

9。1 9.8

         37.5

;∴:塑} 1∵姻∵・24.7

 5.3    17.5

        34.4

.:∵・、ヤ∵.ゴニ?・∵∫・.:・.詰・:唱・:・∵・ 34.2

      28.1      24.6     18.8

・,9∵E二・・二∵.・∴て 17.8

8.6 0.4

   15.6

㌦ ㌦・ . 11.0

9.8 3.3

三∵∴ ;、じ・∵ 16.4

5.0 1.6 9.8

   12.5

こなみ゜・:、ヤ㌦:こ:一ご」〜ご」・:ヤ・キ 32.9

  10.5      21.1

       43。8

.こ㌣・ミ!三∵・ご汽自∵°・,:∫∴ ∫こ!て」:,・,t;!・:・・ご?・6L6

       28.1         31.6

1⊥i 5.6

・. R0.1

3.1

 −t2 D7

2.3

17.5

    19.3     17.5    15.6

隔∵黶F 一:・㌃∴・ヤ 二 15.1

    17.5

___コ22.8

.1

黶E:D  13.7 9.3

8.1

6.3㌧::・:づ二,烈15.1

  24.6

___」24.6

     1「       56.3

: f: f∵∫ .   −t・・…   , ・  :・㍉   50.7

     33.3      33.3

__一一一_■       1

皿皿皿19歳:農村育ち(N=32)

40歳代:農村育ち(N ==57)

0  20  ℃σ幽…

  喫食頻度率(%)

  60

::19歳:町・市育ち(N=73)

::コ 40歳代:町・市育ち(N=57)

(6)

38 伊藤フミ・玉木民子

同様の傾向がうかがえる。

 パン類は・これとは逆に嗜好率において,「町・市育ち」が高い傾向がみられるものの「19歳 の農村育ち」の現在及び幼児期の喫食頻度率が「町・市育ち」を上まわっているのは集団給食や 食糧の流通事情の変化によるものと推測される。

 めん類は生育地域別の傾向は認めがたく,19歳は「町・市育ち」が,40歳代に「農村育ち」の 嗜好率・喫食頻度率が高い。

 いも類もまた地域別の傾向はみられず,現在は「19歳の農村育ち」と「40歳代の町・市育ち」

の嗜好率と喫食頻度率が高く,幼児期と逆の傾向が認められる。当事の食糧事情によるものであ ろうか。以上の結果から生育地域別の特色は,現在の社会事情や流通事情によって一層縮小され る傾向にあるものと考えられる。

 次に自由記載による「あなたの食事嗜好に大きく影響したと思われる事柄について」生育地域 別に概観したい。

  「19歳の農村育ち」は,自給自足できる農家に育ったので新鮮な野菜・果物を好む。母親の料 理と学校給食。父親や祖母の好み。寮生活で好ききらいがなくなった。楽しい思い出につながる 食事。成長に従って好ききらいがなくなった等。「40歳代の農村育ち」では農家に育ってごはんや 野菜を今でも好む。子供の頃に食べたもの。戦争中食糧不足であったので何でも食べた。米が少 なく野菜や豆を多く食べた。海が近いので魚を好み肉はあまり食べなかった。夫の好みに合わせ るようになった。血圧が高いので塩分を減らしている等。「19歳の町・市育ち」は,家庭の食生活と 両親の好み。海が近かったので新鮮な魚を好む。保育所や学校給食。家庭科の学習。敗血症にな って油ものがきらいになった。家族と一緒の外食で嗜好が広がった等。「40歳代の町・市育ち」で は,戦争中の食糧不足で好ききらいがなくなったと訴える者が多く,学童疎開で何でも食べられ るようになった。両親の好みや夫の好み。食糧事情が変り洋食やパン食も好むようになった。妊 娠して好みが変った。30歳代から40歳代にかけて年齢とともに好みが変った。油っこいもの・塩 分の強いものを避けるようになった等が主な内容である。「農村育ち」が食糧生産の基地として,

米・野菜・果物との結びつきが強く,「町・市育ち」は外食や学童疎開等による嗜好の拡大が一 つの特色と考えられる。

 食物の嗜好は,家庭や集団生活における喫食経験によって形成され,その喫食経験の内容は母 親や調理を担当する者の知識や嗜好・調理技術更に家族や地域の食習慣・食糧事情・喫食者の年 齢・生理的要求等によって特色付けられることをくみ取ることができた。

 次にその他の食品群及び調理手法別の嗜好率・喫食頻度率について考察をすすめたい。

 2) 豆及び豆製品・魚介類・肉類・卵類について

 豆及び豆製品について「農村育ち」の19歳及び40歳代ともに現在の嗜好率・喫食頻度率は,

「町・市育ち」に比べて高く,幼児期においは40歳代の「町・市育ち」が高い。19歳全体の低率 については注目して一層高める努力が必要と考える。

 魚介類は,現在「農村育ち」の40歳代が「町・市育ち」よりも嗜好率・喫食頻度率が高く,幼 児期には19歳・40歳代ともに「農村育ち」が高い。

 肉類は,19歳及び40歳代ともに「町・市育ち」の率が高い傾向であるが,現在の喫食頻度率は 四グループの差がなくなって来ているのは流通事情の変化によるものと考えられる。

 卵類は,肉類と同じ様に19歳・40歳代ともに「町・市育ち」の嗜好率・喫食頻度率が「農村育 ち」より高率であり,19歳が40歳代より高率を示している。

 3) 牛乳及び乳製品・小魚類・海草類について

 牛乳及び乳製品について,「農村育ちの19歳」にわずかに例外はあるものの,全体的には「町・

(7)

食物嗜好についての研究(第2報) 39

市育ち」に高率が認められる。「40歳代の農村育ち」については積極的に高める必要がある。

 小魚類は,現在は「町・市育ち」の嗜好率・喫食頻度率がわずかに高く,幼児期は逆に「農村 育ち」がわずかに高い。19歳全体の低さについては,一層高める努力が必要である。

 海草類は,わずかに例外はあるが全体的には「町・市育ち」の嗜好率と喫食頻度率が高い。ま た嗜好率が幼児期に比べて高くなっておるものの19歳の喫食頻度の低率が気になるところであ

る。

 4) 緑黄色野菜・淡色野菜・果物類について

 緑黄色野菜は意外なことに,現在の「農村育ち」の率が低く40歳代においては幼時期よりも嗜 好率がおちている。 「19歳」に比べて「40歳代」が,「町・市育ち」に比べて「農村育ち」が緑 黄色野菜を積極的に取り入れる必要が認められる。

 淡色野菜についても緑黄色野菜と同様,嗜好率において「農村育ち」が低く,特に「40歳代」

では幼児期より減少している。r40歳代の農村育ち」は淡色野菜の重要性を認めてその率を高め る必要がある。

 19歳は,緑黄色野菜・淡色野菜ともに幼児期に比べて嗜好率・喫食頻度率の格段の向上が認め

られる。

 果物類は,野菜とは逆に「農村育ち」が現在,19歳・40歳代ともに嗜好率・喫食頻度率が極め 図3 調理手法別における嗜好と喫食頻度について

①現  在

63.25

60  50

  21.

32.gtt,1二虹謎」∴ご     1フ,ら  28.1〔:

40    30    20    10    0  0言女子率  (%)

和風 料理

洋風 料理

中華風 料 理

、,,∴、,興聖嬰7∴45.2

!『      . 、 レ.

」       50.9

霧8・1

..・@ ∵  ,:,: 31.5

y鉱3−D_.二ニコ17.5 21.9

ごぺ二゜・♂・べ・.15.1 3.5

.コ19.3

0    10    20    30    40    50    60

    喫食頻度率(%)

② 幼児期

60  50

和風 料理

洋風 料理

中華風 料 理

40    30    20    10    0  P書女子率  (%)

皿皿1皿19歳:農村育ち(N=32)

%40歳代:農村育ち(N =57)

12。3

竺野

5

10

31β 29.8

0    10    20    30    40    50    60

    喫食頻度率(%)

E趣]19歳:町・市育ち(N=73)

[::コ40歳代:町・市育ち(N=57)

(8)

40 伊藤フミ・玉木民子

て高い。生産・流通事情・経済事情の変化によるものであろうか。

以上の結果は,昭和54年度駅栄翻査の結果とは必ずしも一鎗なかった.

 5) 調理手法別(和風・洋風・中華風)調理について(図3)

 和風料理について は,生育地域別の傾向 はとらえがたい。現在

「農村育ち」の19歳と

「町・市育ち」の40歳 代の嗜好率が高い傾向 がみられるが,幼児期 についても同様の傾向 が認められる。

 洋風料理は,19歳・

40歳代ともに「町・市 育ち」の率が高く,19 歳は幼児期に比べて大 幅に伸びている。

 中華風料理は,わず かに例外はあるものの 19歳・40歳代ともに

「町・市育ち」の率が 高い傾向といえる。ま た現在の嗜好率におい て19歳と40歳代の差が

少ない。

 6) 味(塩からいも の・薄味のもの・油っ こいもの・酢っぽいも の・甘いもの)の嗜好 傾向について(図4)

 塩からいものは,19 歳は「町・市育ち」が 高く,40歳代は「農村 育ち」が高い傾向が認 められる。

 薄味のものについて は,明らかな傾向はと らえがたい。塩からさ      4)5)

とともに今後の課題と したい。

 油っこいものは,現 在は「町・市育ち」が

474

    図4

①現  在

「味」における嗜好と喫食頻度について

17.8 噂  . :定・,.・.

0 24.6

22.8

2L9

28.8   ・二・ ,%. .●

28.1 22.8

6.3 15.1 ㌦τ一・・ぞT….

14.0 15.8

曜一一

  15.6

P9.2「7二・∴ジ .1 26.3

24.6 37.5     旦m皿皿㎜T28.8.

  門

E:㍉;

.4 35.1

50    40    30    20    10     0     0善女子率  (%)

② 幼児期

37.5 39.7

42 98

塩からい7.

もの

うす味の;      . 21.9

 もの  冤   21.

    一一一__一...一:_.___コ28.1

       15.6

油つこいt..         19.2 もの         19.3      −._一._一一.::コ22.8

酢つcseし、・.

もの

甘いもの

11P1ま

  19.3   19.3

15.6

.・阡ア20.5

0     10    20    30    40

  喫食頻度率(%)

.塩からい もの

・うす味の:J もの

42.1

45 99

15.1 15.9

3翫 8

21

1「」

 い  こ  つの

 油も

50    40    30    20    10    0     日薔女子率  (%)

酢つばい1・

もの

甘いもの

田皿19歳:農村育ち(N ・=32)

llZZZ 40歳代:農村育ち(N=57)

6

・7 0 

野36蹴 498

0    10    20    30    40

  喫食頻度率(%)

区琶三」19歳:町・市育ち(N=73)

〔:::]40歳代:町・市育ち(N−57)

(9)

食物嗜好についての研究(第2報) 4!

嗜好率・喫食頻度率ともにやや高く,幼児期には「40歳の町・市育ち」がわずかに高い。

 酢っぱいものは,全体的に40歳代が19歳より高率である。

 甘いものについては,現在の嗜好率は19歳・40歳代ともに「農村育ち」が高いが喫食頻度率及 び幼児期の嗜好率は「町・市育ち」が高い。

 以上「食生活の運営上」重要だと考えられる主な食品群と調理手法について,生育地域別に現 在及び幼児期の嗜好率と喫食頻度率について比較してきたが,現在「農村育ち」について,19歳

と40歳代ともにその率が高いと認められたものは,ごはん類・豆類・果物類であり「町・市育 ち」については肉類・卵類・牛乳及び乳製品・小魚類・海草類と洋風料理であった。なお年齢別 では「19歳」が「40歳代」に比べて高率を示したものは,パン類・卵類・牛乳及び乳製品・淡色 野菜・果物と洋風料理であり,「40歳代」ではごはん類・豆類・魚介類・小魚類・海草類と和風料 理であった・更に現在の嗜好率と幼児期の喫食頻度率との関連性を検討した結果,ほとんどの食 品について幼児期の傾向遡在に続いていること醐らかになった。冒渉幼児期の館活の腰 性を再発見する結果となった。

 特異の例として,40歳代の幼児期におけるいも類の嗜好率及び喫食頻度率が現在よりも高いの は当時の異常の食糧事情によるものと思われることと,19歳の現在緑黄色野菜と淡色野菜のこの 率が幼児期に比べて大きく伸びているのは,年齢に伴う嗜好の変化であろうか。又40歳代の「農 村育ち」のこの群の嗜好率が幼児期よりも減じている点に注目の必要がある。

3 幼い頃の食事についての楽しい思い出

 「19歳の農村育ち」について,四季の行事(正月・祭・盆・誕生会・クリスマス等)に家族そ ろって又は客を招いての食事。農繁期に山やたんぼでいただいた食事。キャンプの飯ごう炊さん。

遠足や旅行の食事等。

 「40歳代の農村育ち」は正月・祭・お盆等に母が作ったささずし・おはぎ・赤飯等。食糧難で おいしいものが食べられなかった。一個の卵を家族で合けて食べた。じゃがいもやさつまいもを ふかして食べたこと。食物の不足でコッペパンがおいしかった。茶わんの中にはごはんよりもい もや豆が多かった。

 「19歳の町・市育ち」は,四季の行事(正月・祭・誕生会・クリスマス等)に家族や客と母の 手作りのごちそうをいただいたこと。遠足や運動会のおべんとう。父の作ってくれたお菓子・鉄 板焼き。家族と一緒の外食。盛り付けや飾り付けの美しい食事等。

 「40歳代の町・市育ち」は少ない食べものをよくかんで食べた。正月・祭・お盆・誕生日等に 赤飯・すし等ふだん食べられないものを母や祖母に作ってもらったこと。茶わん蒸し・油揚げ・

おすしはごちそうであった。家族で米飯が食べられたこと。お正月に白いごはんに薄い鮭の切身 が最上のごちそうであった。大みそかに年一回白米飯を食べた。いも掘りに連れていってもらっ たこと。農家に親せきがあったのであまり不自由をしなかった。好ききらい等いってはおられな かった等が主な記載内容である。

 以上の内容には生育地域による違いは少なく,平和で豊かな幼児期を過して来た19歳と「町・

市育ち」は勿論「農村育ち」も食糧生産に従事しながら極度の食糧不足の中を家族の愛情と努力 に支えられて生き抜いて来た40歳代の幼児期の姿が写し出されている。

4 食事の大切さを感じた経験について

 「19歳の農村育ち」において,中学生の頃夏パテで食事ができなくなった。栄養の偏りで視力 が減退した。食生活が不規則で疲れやすくなった。食事を取らないと車に酔い,立ちくらみをす

(10)

42 伊藤フミ・玉木民子

る。家族の中に病人が出て,食事療法を医師にすすめられて。ごはんの大切さを祖母に教えられ た。太り出して食事制限をはじめて等。

 「40歳代の農村育ち」は家族や夫の病気(高血圧・糖尿病・貧血・肥満等)。妊娠や出産を機 会に。長男と長女の発育の差から栄養の大切さを痛感した。戦争中食糧不足の為病気が治りにく かった体験。食事が不規則で体を悪くした。保健婦さんのお話等

 「19歳の町・市育ち」は,母の病気。暴飲暴食と不規則の生活で健康を害した。病気をしてか ら(胃腸カタル・腎臓病・敗血症・貧血・頸部化膿症・かぜ・便秘・扁桃腺手術等)。食事制限 で体力が落ちた。体重を減らす為に欠食をして極度に衰弱をした人を見て。運動クラブで体力向 上の為に食事に注意して。教科の学習の中で。ラジオ等の情報で等。

 「40歳代の町・市育ち」は,戦争中の食糧不足。米を食べると力がついた。疎開して物資のな い時に衣・住を切りつめて食にかけた両親への感謝。妊娠・出産・授乳の体験の中で。家族の病 気(貧血・高血圧。便秘・脚気・肥満等)。ビタミン不足で口角炎になって。結婚して健康管理 の大切さに気付いて等。

 以上の記載の中に生育地域別の特色の影は薄い。19歳については,これまでの食生活に関する マイナスの体験を通して食生活への関心を深め,40歳代は更に家族に対する責任とこれを成し遂 げる生活の中で得たマイナスの体験が,食嗜好をのりこえて食生活の重要性に目を開き,バラン スの取れた質の高い食生活実践への活力になっていることがうかがえた。

 1980年6月に実施した新潟市及び県内に住む19歳から70歳代の女子495名対象の「食事調査」

の結果,対象者の数が多く,特色のある傾向が認められた19歳と40歳代を選んで,幼児期の生育 地域別に①19歳の農村育ち ②19歳の町・市育ち ③40歳代の農村育ち ④40歳代の町・市育ち       1)の四つのグループに分けて調査項目毎に集計し,総数に対する百分比を求めて比較したところ次

の結果を得た。

 1 健康状態について

 「健康である」と自覚するもの「食欲があってよく食べる」と答えたもの「食べものに好きき らいがない」もの「やや太り気味である」 「太りすぎている」と自覚するものが,19歳・40歳代 ともに「農村育ち」に高い傾向が認められたものの生育地域別の差は僅少である。むしろ,年齢 による生理的変化に基く違いが大きい。

      1)

 2 食品群及び調理手法に対する嗜好傾向については,第1報と同じ方法で「嗜好率・喫食頻 度率」を求めて比較した結果,健康状態と同様に「生育地域」による違いよりも他の条件による 違いが大きい結果となった。

 「農村育ち」について現在,19歳・40歳代ともに「町・市育ち」に比べて嗜好率と喫食頻度率 の高い食品群は,ごはん類・豆類・果物類である。

 「町・市育ち」について現在,19歳・40歳代ともに嗜好率と喫食頻度率が「農村育ち」に比べ て高いものは,肉類・卵類・わずかに例外はあるが牛乳及び乳製品・小魚類・海草類・洋風料理

である。

 「19歳の農村育ちと町・市育ち」が現在,「40歳代」に比べて高率を示すものは,パン類・卵 類・牛乳及び乳製品・淡色野菜・果物・洋風料理である。

「40歳代の農村育ちと町・市育ち」が「19歳」に比べて高率のものは,わずかに例外はあるもの のごはん類・豆類及び豆製品・魚介類・小魚類・海草類・和風料理である。

(11)

食物嗜好についての研究(第2報) 43

 「19歳と40歳代について現在の嗜好率と幼児期の喫食頻度率との関連の深いもの」については,

ごはん類・パン類・めん類・魚介類・肉類・卵類・小魚類・海草類・果物類・和風料理・洋風料 理・中華風料理等,数多い種類が認められた。

 「幼児期との関連の認めがたいもの」では,いも類について「40歳代」の嗜好率が幼児期より も減じていることと,緑黄色野菜については「19歳」の嗜好率が大幅に伸びているのに比べて

「40歳代」の率が低いことと淡色野菜についても「40歳代」が「19歳」よりも低率である点に問 題があり啓発の必要が認められた。

 3 自由記載による「あなたの食事の好みに大きく影響したと思われる事柄」「幼い頃の食事 についての楽しい想い出」「食事の大切さを感じた経験」についても,「生育地域」による違い は少なく年齢による生理的変化及びその時代の社会的・経済的事情特に食糧事情との関連が深い       3)

ことがみられた。嗜好の形成因子には,環境的因子と心理的因子・生理的因子・社会的因子があ るといわれる実態を把握することができた。

 これらめ因子も喫食行動を通して働き,特に幼児期の食経験が重要な意義を持つものであるこ とを再確認することができた。

 著者らが長い間,関心を持ち続けて来た食物嗜好の形成について一つの結論を得たので,次は 乳幼児の食生活指導について具体的な実践に取り組みたい。

 終りに本調査の計画にお力添えいただいた県立新潟女子短期大学の岡田助教授・アンケート調 査にご協力いただいた本学卒業生及びご父兄・新潟青陵幼稚園の先生方やご父兄・集計にご協力 いただいた中谷様に感謝申し上げます。

引 用 文 献

1) 伊藤フミ・玉木民子:新潟青陵女子短期大学研究報告,第11号(1981)

2)民 志和子,児童の食物嗜…好に関する研究(第1報,P.42,第2報,第3報)静修短期大研究紀要(1976,

 1977, 1978)

3)村松功雄,栄養の心理,三共出版株式会社,1956,P.149

4)厚生省公衆衛生局栄養課編 昭和56年度版 国民栄養の現状(昭和54年国民栄養調査成績)第一出版株式  会社,1981P.36)

5)佐々木直亮・菊地亮也 食塩と栄養,第一版株式会出社 1980 P.23

参照

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