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交雑ポプラ細胞における小胞体の構造解析 共生基盤学専攻

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2016 年 2 月 4 日

交雑ポプラ細胞における小胞体の構造解析

共生基盤学専攻 バイオマス転換学講座 資源植物創成学 桜井 健至

1.はじめに

樹木の師部柔細胞や皮層柔細胞では氷点以下の低温になると細胞内の水の凍結を防ぐために細 胞外凍結を起こし、細胞は収縮、変形する。その際に小胞体(ER)の局在性や構造が変化すること が知られている。冬のクワの皮層柔細胞においては脱水によって細胞膜直下で ER 由来の多重層構 造が形成されることが電子顕微鏡観察によって示唆されている。この多重層構造の存在が凍結傷害 の原因となる細胞膜とオルガネラ膜との異常接近を妨げ、生体膜同士の膜融合を回避する役割を果 たしていると考えられている。そのため、低温馴化した樹木細胞において ER の動態変化を観察す ることは低温馴化や凍結抵抗性のメカニズムを考える上で非常に興味深い。そこで本研究では ER を GFP(Green Fluorescent Protein)で蛍光標識したハイブリッドアスペン(交雑ポプラの一種)の 形質転換株を用いて、木本植物の細胞における ER の構造や局在性の変化を観察することにした。

2.材料と方法

アグロバクテリウム法によりER局在型のGFPを導入したハイブリッドアスペン(Populus tremula

× P. alba)の形質転換株を用いた。このハイブリッドアスペンの培養個体を増殖させてから鉢上

げしたものを 23℃・日長 16 時間で高さ 10 cm 程度に生育させ、未馴化株とした。これを植物育成 チャンバー内で短日・低温条件(4℃・日長 8 時間)で 3 週間以上処理したものを低温馴化株とし た。葉は 5 mm×5 mm 程度にカミソリ刃で切り取り、葉切片とした。茎の縦断面は 2 mm×8 mm 程度 に、横断面は 2 mm×2 mm 程度にそれぞれカミソリ刃で切り取り、茎切片とした。その後、未馴化 株と低温馴化株の葉と茎それぞれの切片の GFP 蛍光を共焦点レーザー走査型顕微鏡で観察した。ま た、低温ステージなどの設備がなく凍結状態のまま組織の GFP 蛍光を観察することができないため、

未馴化株と低温馴化株の葉切片と茎切片を-0.5~-5℃の凍結脱水に相当する濃度のソルビトー ル溶液に浸して室温で 20 分以上経過させて浸透脱水させたものも顕微鏡観察に供試した。

3.結果と考察

最初に葉の GFP 蛍光を観察した。未馴化株と低温馴化株ともに葉の表皮細胞や葉肉細胞などで蛍 光を発していた。形質転換した未馴化株の葉の表皮細胞では細胞の輪郭に沿った蛍光やネットワー ク構造の蛍光がみられた。未馴化株の葉切片を 1.35 M ソルビトール溶液(-2.5℃の凍結脱水に相 当)に浸すと、ネットワーク構造は見られず、小胞状の ER の蛍光しか観察できなかった。低温馴 化株の葉切片を 1.35 M ソルビトール溶液に浸すと、網目の粗いネットワーク構造に変化していた。

続いて、茎の GFP 蛍光を観察した。未馴化株と低温馴化株ともに茎の横断面、縦断面ともに皮層 柔細胞、師部柔細胞、木部放射柔細胞などで蛍光を発していた。また、未馴化株と低温馴化株の皮 層柔細胞や師部柔細胞でも細胞の輪郭に沿った蛍光やネットワーク構造の蛍光がみられた。2.7 M ソルビトール溶液(-5℃の凍結脱水に相当)に浸して脱水処理すると、低温馴化株のほうが未馴化 株と比べてネットワーク構造が見えた細胞の数は多かった。

葉の表皮細胞と茎の皮層柔細胞はともに低温馴化することでネットワーク構造はより細かい網 目に変化しているのが観察された。これらを浸透脱水すると低温馴化株のほうが未馴化株より多く の細胞でネットワーク構造が維持されていた。ER を GFP で標識することでハイブリッドアスペンで は ER の構造が低温馴化処理だけでなく、浸透脱水でも影響を受けることがより直接的に示された。

参照

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