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幼児のカテゴリー化様式に及ぼす保存性、知能およ び族類似性の影響

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

幼児のカテゴリー化様式に及ぼす保存性、知能およ び族類似性の影響

著者 杉村 健, 清水 益治

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 38

号 1

ページ 123‑134

発行年 1989‑11‑25

その他のタイトル Effects of Conservation, Intelligence, and Family Resemblance Structure on Young

Children's Categorization

URL http://hdl.handle.net/10105/1995

(2)

幼児のカテゴリー化様式に及ぼす保存性、

知能および族類似性の影響*

杉 村   健・清 水 益 治**

(奈良教育大学心理学教室) (平成元年4月26日受理)

近年、人工刺激を用いたカテゴリー化の研究では全体的様式と分析的様式に関心がもたれるよ うになってきた(Burns, Shepp, McDonough, & Weiner‑Ehrlich, 1987; Kemler, 1983: Shepp, 1983;

Ward, 1985; Ward & Scott, 1987; Sugimura & Inoue, 1988)。 Kemler (1983)によれば、全体様式 では刺激は未分化な全体として扱われ、全体的類似性によって関係づけられる。分析的様式では 刺激は次元的な成分として取り扱われ、共有する次元の価によって関係づけられる。さらに Kemlerは、分析的様式は全体的様式よりも抽象的であり、知覚および認知発達の過程において、

全体的様式から分析的様式‑と移行することを示唆している。

先の研究で述べたように(杉村・井上, 1987a)、従来の研究ではカテゴリー化様式を査定する のに、強制分類課題、カテゴリー化課題、分類学習課題などが用いられてきた。本研究では Kemler Nelson (1984)によって考案された分類学習課題を用いて、幼児のカテゴリー化様式を 検討する。

本研究で用いる分類学習課題では、カテゴリ‑ 1とカテゴリー0の典型事例を標本事例として 提示し、そこに学習事例を1事例ずつ分類させる。このような課題において、被験者は2つの標 本事例の相違点に注目し、与えられた学習事例とそれぞれの標本事例とを比較し、どちらの標本 事例の仲間かを決定する。このような分類の過程には次の3つの方略が考えられる。

(1)標本事例と各学習事例との知覚的類似性に基づく分類 (2)標本事例と各学習事例との複数次元価の同一性に基づく分類 (3)標本事例と全学習事例に共通する単一次元価の同一性に基づく分類

従来の研究において全体的様式とよばれているものは(1)と(2)の分類方略、分析的様式とよばれ ているものは(3)の方略に基づいていると考えられる。本研究ではこれら3つの方略を仮定するこ

とによって得られた結果を考察したい。

Kemler Nelson (1984)は全体的様式から分析的様式へと発達的変化があることを示し、それ が学習の意図性に関係していることを示唆したが、その後の研究では、幼児も大学生も全体的様 式よりも分析的様式をより多く用いること(杉村・井上, 1987b)、意凶学習条件下の幼児や偶 発学習条件下の大学生が、必ずしも全体的様式を多く用いないことが報告されている(Ward

Scott, 1987 c

最近、 Sugimura&Inoue (1988)と杉村・東畑・森田(1988)は、幼児のカテゴリー化様式に 影響する要因を分析し、次の結果を得ている。 (1)分析的様式は図式的な少女の全身図形よりも図 式的な顔事例の場合に多く用いられる。 (2)分析的様式は族類似(family resemblance)構造が強

* 本研究は杉村に対する文部省科学研究費助成金(日出1163年度)によって行なわれた。

**現在 奈良保育学院

123

(3)

124 ト り   健 fll 水 益iff

い課題よりも弱い課題の場合に多く用いられる(3)分類学習の基準が高められるにつれて、分析 的様式を用いる者が増加し、全体的様式を用いる者が減少する。このように、同じ年齢の幼児で あっても,刺激、課題及び学習の程度によって用いられるカテゴリー化様式が異なるのである。

本研究の目的は、図式的な少女の全身図形を用いて、先の研究で得られた族類似性と訓練室の 効果を確認するとともに、被験者の要因である保存性(実験1)と知能(実験2)によって、カ テゴリー化様式がどのように異なるかを検討することである。

実験1

認知発達の研究と学習発達の研究は独立に行われてきたが、近年、両者を関係づけようとする 研究が行われるようになってきた(例えば、 Gholsonら、 1976; O'Conner & Beilin, 1980;柴B], 1976; Sugimura, 1985, 1986;杉村ら、 1985, 1986)。この種の研究では、認知発達の指標と・Lて、

主としてPiagetのいう操作水準(多くは保存性)を取り上げ、それによって被験者を分類し、

学習課題の成績を比較する。本実験では、筆者らが従来の研究で用いてきた数の保存課題によっ て保存児と非保存児を固定し、両者のカテゴリー化様式がどのように異なるかを検討する。

方法

実験計画 2×2×3の要因計画が用いられた。第1の要因は保存悼(保存児、非保存児)、

第2の要因は課題(強族類似、弱族類似)、第3の要因は学習の程度(4/4、 8/8、 8/8十16)であっ た。学習の程度のみ被験者内要因である。

被験者 幼稚園年長児153名(男児70名、女児83名)に以下に述べる保存課題を行い、その結 果に基づいて5点の者55名を保存児、 0点の者72名を非保存児とした(Table l参照)。保存児 のうち5名(男児2名、女児3名)と非保存児のうち12名(男児7名、女児5名)は64試行以内 に8/8の学習基準に達しなかったので除外し、最終的に保存児50名と非保存児60名を本実験の被 験者とした。保存児の平均年齢は 10(5:2‑6:2)、非保存児は5:08(5:2‑6: l)で

あった。

Table 1

Number of subjects in each score on the conservation task

Score 0 1

Male   31 17  22 Female  41  9  33

Tota1   72  26  55

保存課題 黄色のおはじき6個とピンクのおはじき6個を対 応させて平行に並べ(標準事態)、数が同じであることを碓認 させた後で、以下の5つの事態でおはじきの数が同じかどうか を尋ねた。

①ピンクのおはじきの間隔を広げる(拡散)

②ピンクのおはじきの間隔を縮める(収縮) (彰ピンクのおはじきを3つずつに分ける(分割)

④ピンクのおはじきを平行にずらす(移動)

⑤ピンクのおはじきを丸く並べる(円)

それぞれの事態で=同じ"と答えた場合に1点、 =違う"と答えた場合に0点を与えた。先に 述べたように、保存児は全ての事態で=同じ"と答えた者であり、非保存児は全ての事態で=違

う"と答えた者である。

分類刺激 Fig. 1に示すような頭、腕、上半身、下半身、脚の5次元がそれぞれ2価で変化す る図式的な少女の全身図形を刺激とした。 Fig. 1において1 1 1 1 1と示された少女はカテゴ リ‑1の典型事例であり、丸い頭、逆三角形の上半身、三角形の腕、半円の下半身、三角形の脚

(4)

Fig. 1 Examples of schematic girls used in this study

を持っている 00000と示された 少女はカテゴリー0の典型事例であ り、四角形の頭、逆半円の上半身、四 角形の腕、三角形の下半身、四角形の 脚を持っている。次元の目立ち易さを 統制するために、 5つのセットを作っ た。後に述べる基準次元(a次元)は セット1では頭、セット2では脚、セッ

ト3では腕、セット4では下半身、セッ ト5では上半身である。

分類課環 Table 2に示したよう に、各課題は標本事例2事例、学習事 例8事例、テスト事例2事例の合計12 事例からなっている。

(1)標本事例 2つの課題で同じであり、カテゴリ‑1の典型価1を全ての次元で持つカテゴ リ‑1の典型事例と、カテゴリー0の典型価0を全ての次元で持つカテゴリー0の典型事例から なっている。これらの2事例は分類学習及び様式査定の際、標本として被験者の前に左右に並べ て提示されている。

(2)学習事例 強族類似課題はカテゴリ‑1の典型価1を4つの次元で持つ4事例と、カテゴ リー0の典型価0を4つの次元で持つ4事例からなっている。カテゴリ‑1は4事例合計して価 1を16、カテゴリー0は4事例合計して価0を16持っているので、標本事例との族類似性が強い。

Table 2

Strong and weak family‑resemblance tasks used in Experiments I and fI

Category 1 Category 0

Dimension Dimension

a b c d e a b c d e

Sample 1 1 1 1 1    0  0  0  0  0

Learning:

Strong FR task

Learning:

Weak FR task

1 1 1 1 0 1 1 1 0 1 1 1 0 1 1 0 1 1 1 1 1 0  0 1 1 1 0 1 0 1 0 1 1 0 1 0 1 0 1

0  0  0  0 1 0  0  0 1 0 0  0 1 0  0 0 1 0  0  0 0  0 1 1 0 0  0 1 0 1 0 1 0  0 1 0 1 0 1 0 0 1 1 1 1

1 0  0  0  0

弱族類似課題はカテゴリ‑ 1の典型価1を3つの次元で持つ4事例と、カテゴリー0の典型価 Oを3つの次元で持つ4事例からなっている。カテゴリ‑1は4事例合計して価1を12、カテゴ リー0は4事例合計して価0を12持っており、強族類似課題と比べて、標本事例との族類似性は

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126 杉 村   健・清 水 益 vn

弱い。しかし、いずれの課題も標本事例との族類似性があるので、この族類似性すなわち、標本 事例と学習事例の全体的類似性によって2つのカテゴリーに分類することができる。

Table 2からわかるように、いずれの課題でもカテゴリ‑ 1の学習事例は基準次元である次元 aで価1を持ち、カテゴリー0の学習事例は次元aで価0を持っている。従って、この基準次元 の価に基づいても2つのカテゴリーに分類することができる。

(3)テスト事例 カテゴリー化様式を査定するための事例である。テスト事例10000をカ テゴリー0に、 01111をカテゴリ‑1に分類したならば、族類似性によってカテゴリー化し ているので、全体的様式を用いていると判定される。逆にテスト事例1 0000をカテゴリ‑1 に、 01111をカテゴリー0に分類したならば、基準次元aの価によってカテゴリー化してい るので、分析的様式を用いていると判定される。

手続き 実験は幼椎園の一室で個別に行われた。実験者は被験者と向かい合って座り、まず先 に述べた保存課題を行った。

分類学習課題では被験者の前に2つの標本事例を左右に並べて提示し、次の教示を与えた。

"今度は̀仲間集め'というゲームをしましょう。 (左方の標本刺激を指さして)この子は̀とよ ちゃん'です。 (右方の標本刺激を指さして)この子は̀きっちゃん'です。これからお兄ちゃんが、

ここにあるカードを1枚ずつ○○ちゃんに渡すからね. ○○ちゃんはその子が̀とよちゃん'の仲 間か、 ̀きっちゃん'の仲間か考えて、お兄ちゃんに教えてね。 ̀とよちゃん'の仲間と思ったらこ こに(左方の標本刺激の下を指さす)、 Lさっちゃん'の仲間と思ったらここに(右方の標本刺激 の下を指さす)カードを置いてね。 00ちゃんが、ちゃんと仲間にできたら、お兄ちゃんは̀あ たり'と言うよ。でもちがってたら、 ̀はずれ'と言うからね。いつもLあたり'と言われるように 頑張ってね。じゃこの子は‑とよちゃん'の仲間かな、̀さっちゃん'の仲間かな(カードを手渡す)0"

教示に続いて、被験者に学習事例のカードを1枚ずつ手渡して、=とよちゃん"の仲間か、"さっ ちゃん"の仲間かの判断を求めた。正反応には"あたり"、誤反応には"はずれ"と言い、誤反 応の場合は正反応を教えてから次の試行に移った。連続4回正反応(4/4)、連続8回正反応 (8/8)、連続8回+16回(8/8+16)正反応のそれぞれの基準に達したときに、 2つのテスト事例

を続けて提示し、カテゴリー化様式を査定した。 64試行以内に8/8の基準に達しなかった場合は 実験を中1LLた。

結果

学習 4/4の学習基準達成までに要した試行数について、 V/捕了変換を行い、重みをかけ ない平均法を用いて2(保存性) × 2(課題)の分散分析を行った。その結果、課題の主効果がF

1,106)‑3.26、 ♪<.10で有意であり、弱族類似課題(平均7.3)の方が強族類似課題(平均 4.7)よりも多くの試行を要した。 8/8の学習基準までに要した試行数について同様の分析を行っ たところ、課題の主効果がF (1,106) ‑3.96、 p<.05で有意であり、弱族類似課題(平均 21.5)の方が強族類似課題(平均15.7)よりも多くの試行を要した。 +16の過剰訓練中のエラー 数については、課題の主効果がF (1,106) ‑3.22、 p<.10で有意であり、弱族類似課題(平均 1.9 の方が強族類似課題(平均2.6)よりもエラー数が少なかったO

様式 Table 3は群ごとに分析的様式者、全体的様式者、不定者の割合を示したものである。

保存児について、学習基準ごとに2(課題) ×3(様式)のx2検定を行ったところ、 8/8の学習 基準では;2 (2) ‑5.34、 p<.10、 8/8+16の学習基準ではx (2) ‑7.50、 p<.05であった。

非保存児について同様の分析を行ったところ、 +16の学習基準ではx" (2) ‑5.94, p<

(6)

.10であった。表から明らかなように、いずれも分析的様式者は弱族類似課題でより多く、全体 的様式者は強族類似課題でより多かった。強族類似課題、弱族類似課題ともに、学習基準ごとに 行った2 (保存性) ×3 (様式)のx2検定はすべて有意でなかった。

課題の要因をこみにした2(保存性) ×3(様式)のx2検定はどの学習基準でも有意でなかっ た。保存性の要因をこみにした2(課題) ×3(様式)のx2検定の結果は、 8/8の学習基準では 蝣z (2) ‑9.07、p<.05、 8/8+16の学習基準ではx (2) ‑12.96、p<.01であった。いず れも分析的様式者は弱族類似課題でより多く、全体的様式者は強族類似課題でより多かった。

3回のテストで一貫して分析的様式を用いた者の割合について、角変換法による2(保存性)

× 2(課題)の分散分析を行った。その結果、いずれの主効果、交互作用も有意ではなかった。

全体の平均は27.8%であった。一貫して全体的様式を用いた者の割合については、課題の主効果 が;z (1) ‑8.57、 p<.01で、強族類似課題(平均36.3%)の方が弱族類似課題(平均 13.0%;よりも全体的様式者が多かった。

Table 3

Categorization modes as a function of conservational levels and family‑resemblance structures

Level of constl!・vation

Conserver

Nonconserver

Family resemblance structure

Strong    25

Learning criterion

4/4 8/8 8/8+16 Analytic   28.0 32.0  32.0 Holistic    56.0 56.0   56.0 Undeterm. 16.0 12.0  12.0

Weak      25

Analytic   32.0 56.0  .0 Holistic    48.0 24.0   20.0 Undeterm.  20.0 20.0  12.0 Analytic   36.7 36.7  40.0 Strong    30   Holistic   53.3 50.0  50.0 Undeterm. 10.0 13.3  10.0 Analytic   53,3 63.  63.3 Weak     30   Holistic    40.0 26.  20.0 Undeterm,  6.7 10.0  16.7

次に、群ごとに学習によるカテゴリー化様式の変化の検定を行った 4/4から8/8の学習基準 までは、保存児の弱族類似課題群で分析的様式を用いた者が:2 (i) ‑3.13、 pく.10で有意に 増加した。 4/4から8/ + 16の学習基準までは、保存児の弱族類似課題群では分析的様式者が

X (1) ‑7.11、p<.01で有意に増加し、全体的様式者がx (1) ‑3.27、p<.10で有意に 減少した。また非保存児の弱族類似課題群でも全体的様式者がx (1) ‑3.13、 p<.10で有意

に減少した。 8/8から8/8十16の学習基準までは、いずれの群もカテゴリー化様式は有意に餐 化しなかった。

最後に分類学習の確実さの指標として、 8/8の学習基準に達してから+ 16の過剰訓練中の誤 反応の有無を用い、それとカテゴリー化様式との関係を調べた。過剰訓練中に誤反応がなかった 者は49名であり、そのうち分析的様式者は).9%、全体的様式者は1 90/、不定者は2.0%であっ た。誤反応をした者は61名であり、そのうち分析的様式者は9.7%、全体的様式者は69.0%、不

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128 杉 村   健・清 水 益 治

走者は21.3%であった。 2 (誤反応の有無) ×3 (様式)のx2検定を行ったところ、 r (2)

‑56.01、 ♪く.01となり、誤反応なしの者には分析的様式者が多く、誤反応ありの者には全体 的様式者が多かった。 8/8の基準で分析的様式者は52名、全体的様式者は43名、不走者は15名で あり、そのうち過剰訓練中に誤反応をしなかった者の割合は上の順に59.6%、 25.6%、 13.3%で あった。

ET3

本実験の主な関心であった保存児と非保存児のカテゴリー化様式には、強族類似課題でも弱族 類似課題でもあまり違いは見られなかった。一般に、保存性は事物の見えが変化してもその本質 は不変であると判断できるかどうかを査定している。本実験の保存児は、おはじきの配列が変化 しても数そのものは変化しないと判断できた者であり、非保存児は数そのものも変化すると判断 した者である。そこで、分類学習においても保存児は全ての学習事例が共有している基準次元価 に気づきやすいと予想される。また、従来の研究(Kemler, 1983;KemlerNelson, 1984)で兄いだ されているカテゴリー化様式の発達(年齢)的変化が、保存性で査定した認知発達の水準にもあ てはまるならば、保存児は非保存児よりも分析的様式を用いる者が多いと予想される。

Table 3を詳しくみると、標本値では保存児よりも非保存児の方が分析的様式を用いた者が多 いところもあり、上の予想は支持されなかった。その理由として次の3つを考えることができる。

先ず、本実験で保存性の査定には数の保存課題を用いたが、学習に用いた刺激の変化する次元は すべて形の次元であった。数の次元に注E]することと形の次元に注目し、共通する単一次元価を 発見することでは、その認知過程が異なるのではないかと考えられる。次に、分類学習における カテゴリー化様式には、杉村・井上1987b)やWard&Scott (1987)が報告しているように、

発達(年齢)による変化がなく、従って認知発達の水準である保存性によってもカテゴリー化様 式が影響されないのではないかと考えられる。また、保存児の方が次元価を容易に発見できると

しても、標本事例と学習事例の複数次元の同一性による分類をしていれば、知覚的類似性による 分類と同じく全体的様式として判定される。以上の理由は推論の城をでないが、本実験とは異な る保存課題や分類学習課題を用いてさらに検討する必要がある。

強族類似課題では、保存児も非保存児も訓練量によるカテゴリー化様式の変化はほとんどなく、

+16の学習基準でも標本値では全体的様式者が多かった。弱族類似課題では、分類訓練により分 析的様式者が増加し、全体的様式者が減少するが、この傾向は特に保存児で顕著であった。しか し、この課題の+16の基準では保存児と非保存児の分析的様式者の割合はほぼ同じであるので、

保存児における有意な増加は、 4/4の基準で分析的様式者が少なかったことによるものである。

この原因が何かは明らかでないが、保存児では4/4から8/8の基準で全体的様式者が分析的様式 者に変わっており、知覚的類似性や複数次元価の同一性に基づく分類から単一次元価の同一性に 基づく分類へと移行したことが示唆される。

学習が進むにつれて、分析的様式者は増加し、全体的様式者は減少するという傾向は Sugimura&Inoue (1988)や杉村・東畑・森田(1988)と一致する。このような様式の変化は次 のように考えることができる。全体的様式は標本事例と各学習事例の知覚的類似性に基づく分類、

または複数次元価の同一性に基づく分類であり、分析的様式は標本事例と全学習事例の単一次元 価の同一性に基づく分類である。知覚的類似性による分類から単一次元価の同一性による分類へ

の移行は、学習の初期では、いわば第一印象による漠然とした知覚的類似性にもとづいて分類し ていたが、学習が進むにつれて1つの解決ルールを探すという意図が強く作用するようになった

(8)

ことによるものであろう。これに関連してKemlerNelson (1984)は学習‑の意図が分析的様式 を導くことを示唆している。複数次元価の同一性から単一次元価の同一性による分類への移行に ついては、次のように考えることができる。複数次元価の同一性を兄いだそうとする方略は、単 一次元価の同一性を兄いだそうとする方略よりもより複雑であり、多くの心的努力を必要とする。

一般に、学習が進むにつれて、より効率のよい方略、すなわち単純で心的努力の少ない方略を用 いるようになる。分類学習が進むにつれて、全体的様式が減少し分析的様式が増加するのは、こ のようなより効率的な方略への変化によるものと考えられる。

学習の深さはカテゴリー化様式に関係し、過剰訓練中に誤反応がない者は分析的様式を用いや すく、分析的様式者は過剰訓練中に誤反応しない者が多かった。このことから、学習が深くなる と学習事例間に共通する単一の次元価が発見しやすくなること、また、単一次元価の同一性の方 略によるカテゴリー化は深い学習に導くことが示唆される。

全体的様式者は強族類似課題でより多く、分析的様式者は弱族類似課題でより多かったことも、

杉村・東畑・森田(1988)やSugimura&Inoue (1988)と一致する。このような族類似性効果 については次のように考えることができる。強族類似課題は弱族類似課題に比べて学習事例と標 本事例の類似性が高いので、知覚的類似性による方略が用いられやすかったのであろう。また、

強族類似課題では学習事例は5次元中4つの次元で標本事例と同じ価を持っているので、強族類 似課題では複数次元価の同一性に基づく方略が用いやすかったのであろう。逆に弱族類似課題は 強族類似課題よりも学習事例と標本事例の類似性は低いので、知覚的類似性による方略は用いら れにくい。さらに、弱族類似課題の学習事例は標本事例と5次元中3つの次元でしか同じ価を持 っていないので、学習事例に共通する単一一次元価を発見しやすかったのであろう。

mm

実験1の保存性はカテゴリー化様式に顕著な影響を及ぼさないことがわかったが、被験者のも う1つの変数として本実験では知能の要因を取り上げる。従来の研究では、精神遅滞児は健常児 と比べて適切次元に対して注意することが困難であるとされている(Kemler, 1982; Zeaman &

House, 1967)。このことが健常児の範囲での知能の高低にもあてはまるならば、カテゴリー化様 式が知能によって異なるかも知れない。本実験では、健常児の中で精神年齢が高い者と低い者に ついて、カテゴリー化様式を比較する。

方法

実験計画 2×2×3の要因計画が用いられた。最初の要因は知能(高、低)、第2の要因は 課題(強族類似、弱族類似)、第3の要因は学習の程度(4/4、 8/8、 8/8+16)であった。学習の 程度のみ被験者内要因である。

被験者 幼稚園年長児120名に以下に述べる知能検査を実施し、精神年齢の高い子供から40名 (男児20名、女児20名)を高知能群とし、低い子供から40名(男児27名、女児13名)を低知能群 とした。高知能群の精神年齢の平均は7:01 (範囲7:5‑6:7)であり、低知能群では5:1 (範囲4:01‑5:08)であった。

知能検査 EIS就学児用知能検査(日本心理適性研究所、 1967)を用いた。この検査は数の問 題4間、異物弁別4間、絵の記憶4問、同位置発見5問、同図形発見4間、反対語4問の計25間 からなり、その合計点によって精神年齢を査定する個別式検査である0

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130 杉 村   健・清 水 益 治

刺激とカテゴリー構造 実験1と同じであった(Fig. 1とTable 2参照)。

手続き 実験に先立って知能検査を実施し、あらかじめ被験者を割り当てた。分類学習課題の 手続きは実験1と同じであった。

結果

学習 4/4の学習基準達成までに要した試行数について、 V′前言変換を行い、重みをかけ ない平均法を用いて2(知能) ×2(課題)の分散分析を行った。その結果、課題の主効果がF (1,76) ‑3.83、 ♪<.10で有意であり、弱族類似課題(平均7.6)の方が強族類似課題(平均 4.5)よりも多くの試行を要した。 8/8の学習基準までに要した試行数について同様の分析を行っ

たところ、知能の主効果がF (1,76) ‑6.21、 p<.05で有意であり、低知能児(平均18.5)の 方が高知能児(平均11.7)よりも多くの試行を要した。課題の主効果もF (1,76) ‑3.25、p<

.10で有意であり、弱族類似課題(平均18.2)の方が強族類似課題(平均12.0)よりも多くの試 行を要した +16の過剰訓練中のエラー数について同様の分析を行ったところ、いずれの主効果、

交互作用も有意ではなかった。全体の平均エラー数は1.2であった。

様式 Table 4は群ごとに分析的様式者、全体的様式者、不走者の割合を示したものである。

高知能児について、学習基準ごとに2(課題) ×3(様式)のx2の検定を行ったところ、いずれ も有意ではなかった。低知能児について同様の分析を行ったところ、 8/8の学習基準ではx2 (2) ‑5.11、 p<.10、 8/8+16の学習基準ではx (2) ‑5.28、 p<.10であり、分析的様式者 は弱族類似課題でより多く、全体的様式者は強族類似課題でより多かった。

強族類似課題、弱族類似課題ともに、学習基準ごとに行った2(知能) ×3(様式)のx2の検 定の結果は、いずれも有意でなかった。

課題の要因をこみにした2(知能) ×3(様式)のx2の検定では、 8/8の学習基準でr (2)

‑5.36、 ♪<.10であり、分析的様式者は弱族類似課題でより多く、全体的様式者は強族類似課 題でより多かった。

3回のテストで一貫して分析的様式を用いた者の割合について、角変換法による2(知能) × 3(様式)の分散分析を行った。その結果、いずれの主効果、交互作用も有意ではなかった。全 体の平均は30.0%であった。一貫して全体的様式を用いた者の割合について同様の分析を行った ところ、課題の主効果がr (i) ‑3.< 、 p<.10で有意であり、強族類似課題(平均32.5%;

の方が弱族類似課題(平均15.0%)よりも全体的様式者が多かった。

学習によるカテゴリー化様式の変化の検定を行ったところ、低知能児の弱族類似課題でのみ、

4/4から8/8の学習基準にかけて、分析的様式者は :d ‑3.20、 p<.10で有意に増加し、

全体的様式者は !l) ‑5.14、 p<.05で有意に減少した。

8/8の学習基準に達してから過剰訓練中に誤反応をしなかった者は、 44名であり、そのうち分 析的様式者は70.5%、全体的様式者は25.0%、不定者は4.5%であった。誤反応をした者は36名 であり、そのうち分析的様式者は27.8%、全体的様式者は44.4%、不定者は27.8%であった。 2 (誤反応の有無) ×3(様式)のx2検定を行ったところ、 '2 (2) ‑16.38、 p<.01で有意差が あった。誤反応なしの者には分析的様式者が多く、ありの者には全体的様式者が多かった。 8/8 の基準での分析的様式者は43名、全体的様式者は30名、不走者は7名であった。このうち過剰訓 練中に誤反応をしなかった者は、同じ順に67.4%、 40.0%、 42.9%であった。

33

弱族類似課題の方が強族類似課題よりも学習が困難であり、分析的様式者は弱族類似課題でよ

(10)

Table 4

Categorization modes as a function of mental ages and family‑resemblance structures

Family resemblance structure

High

Learning criterion

4/4 8/8 8/8十16 Analytic   45.0 50.0  45.0 Strong     20   Holistic   50.0 50.  40.0 Undeterm.  5.0  0.  15.0

Weak      20

Analytic   60.0 60.0  55.0 Holistic    30,0 30.0   25.0 Undeterm. 10.0 10.0   20.0

Strong     20

Low

Analytic   40.0 35.0  35.0 Holistic    50.0 50.0   45.0 Undeterm. 10.0 15.0   20.0 Analytic   45.0 70.0  70.0 Weak      20   Holistic    55.0 20,  25.0 Undeterm,  0.0 10.0   5.0

り多く、全体的様式者は強族類似課題でより多いという結果は、実験1や従来の研究と一致する ものであり、分類学習及びカテゴリー化様式に及ぼす族類似性の効果が確証された。

本実験の主な関心であった知能の影響については、幼児の知能をEIS就学児用知能検査で測定 し、精神年齢が上位から約33%の者と下位から約33%の者を選んで比較した。分類学習では高知 能児の方が低知能児よりも学習基準に速く達成した。これは従来の学習研究の結果と一致するし、

また常識的にも納得できるものである。しかし、カテゴリー化様式については学習基準ごとの分 析でも3回のテストをこみにした分析でも、知能の有意な効果はなかった。従って、少なくとも

この知能検査で測定した知能は、カテゴリー化様式を規定する要因ではないといえる。

この知能検査は6つの下位検査からなっているが、各検査の問題数が少なく、本実験では下位 検査ごとの得点とカテゴリー化様式の関係を比較することはできなかった。しかし、ただ単に知 能とか精神年齢というのではなく、知能の中のどの要因がカテゴリー化様式と関係があるか、ど れが関係がないかといったアプローチも必要である。そのためには、下位検査で測定される能力 が明確であり、しかも得点がかなり分布するような知能検査を用いなくてはならない。

高知能児では課題による有意差がなく、低知能児では、弱族類似課題では分析的様式、強族類 似課題では全体的様式を用いた者が多かった。また低知能児の弱族類似課題においてのみ、学習 によるカテゴリー化様式の有意な変化がみられた Table 4を詳しく見ると、高知能児は低知能 児よりも、強族類似課題ではいずれの学習基準でも分析的様式者が多い。高知能児は、弱族類似 課題では4/4の学習基準において、すでに分析的様式者が多く、全体的様式者が少ない。以上の ことから、高知能児は全体的な類似性が目立ちやすい強族類似課題においても分析的様式を用い やすく、また、学習事例間に共通する価が目立ちやすい弱族類似課題では、学習の初期から分析 的様式を用いやすいといえる。課題の族類似性や学習の程度によってカテゴリー化様式が変化す るのは、精神発達の面からみれば、より低い段階であることが示唆される。

(11)

13^ 杉 村   健・清 水 益 治

要約

分類学習課題における幼児のカテゴリー化様式に及ぼす保存性(実験日、知能(実験2)、族 類似性の効果を2つの実験で調べた。刺激は5次元2価で変化する図式的な少女の全身図形を用 い、課題は強族類似構造と弱族類似構造の2つを用いた。被験者はどちらかの構造の課題を遂行 し、 4/4、 8/8、 8/8十16の学習基準に達したときにカテゴリー化様式(全体的様式か分析的様 式)をテストされた。

実験1 被験者は5項目からなる保存課題を行い、その結果に基づいて保存児(平均CA5:

10)と非保存児(平均CA5:8)に分けられた。その後、分類学習課題が与えられ、カテゴ リー化様式が査定された。結果は以下のとおりであった。 (*)分析的様式者は弱族類似構造でよ り多く、全体的様式者は強族類似構造でより多かった。 (b)弱族類似構造では、学習が進むにつ れて分析的様式者が増加し、全体的様式者が減少した。 (C)保存段階はカテゴリー化様式にあま

り影響を及ぼさなかった。

実験2 被験者はEIS就学児用知能検査を行い、その結果に基づいて高MA児(平均MA7 : 1)と低MA児(平均MA5:1)に分けられた。その後、分類学習課題が与えられ、カテゴ

リー化様式が査定されたO結果は以下のとおりであった(a)高MA児は低MA児よりも学習が 速かった(b)低MA児は分析的様式を強族類似構造よりも弱族類似構造でより多く用いた。 (C) 低MA児では弱族類似構造で、学習が進むにつれて分析的様式を用いる者が増加した。

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(13)

134

Effects of Conservation, Intelligence, and Family Resemblance Structure on Young Children's Categorization

Takeshi SUGIMURA and Masuharu SHIMIZU

(Department of Psychology, Nara University of Education. Nara 630, Japan )

(Received April, 26, 1989)

Two Experiments were performed to examine the effects of conservation (Exp. 1) , intelli‑

gence (Exp. 2), and familyてesemblance structure on young children's categorization modes in a 2‑category classification task. The exemlars used in this study were schematic girls varying with two values in each of five dimensions (Fig. 1). Two types of tasks were provided: the one with strong family‑resemblance structure and the other with weak family‑resemblance structure (Table 2). The subjects were given one of the tasks and assessed the categorization modes (holistic vs.

analytic) after reaching each of the three learning criteria (4/4, 8/8, 8/8 + 16).

Experiment 1 The subjects were given the number conservation test with five items. On the basis of the test scores the conservers (mean CA ‑ 5 I 10) and the nonconservers (mean CA ‑ 5 : 8 ) were selected and then they were assessed the categorization modes. The results showed that (a) the analytic mode was used more frequently for the weak family‑resemblance task than for the strong one, (b) for the weak family‑resemblance task the percentages of the subjects who used the analytic mode increased with incereasing criteria of learning while those who used the holistic mode decreased, and (c) the conservational level had little effect on the categorization mode.

Experiment 2 The subjects were given the EIS intelligence test. On the basis of the mental ages the subjects with higher MA (mean MA ‑ 7 : 1 ) and the subjects with lower MA (mean MA ‑ 5 : i ) were selected and then they were assessed the categorization modes. The results showed that (a) the higher MA subjects learned the classification task faster than the lower MA subjects, (b) for the lower MA subjects the analytic mode was used on the weak family‑

resemblance task more frequently than on the strong one, and (c) the percentages of the lower

MA subjects who used the analytic mode increased with increasing criteria of learning for the

weak family‑resemblance task while those who used the holistic mode decreased.

Fig. 1 Examples of schematic girls used in this study を持っている 00000と示された 少女はカテゴリー0の典型事例であり、四角形の頭、逆半円の上半身、四 角形の腕、三角形の下半身、四角形の脚を持っている。次元の目立ち易さを統制するために、 5つのセットを作った。後に述べる基準次元(a次元)はセット1では頭、セット2では脚、セット3では腕、セット4では下半身、セット5では上半身である。分類課環 Table 2に示したように、各課題は標本事例2事例、学習
Table 4 Categorization modes as a function of mental ages and family‑resemblance structures Family resemblance structure High Learning criterion 4/4 8/8 8/8十16Analytic   45.0 50.0  45.0Strong     20   Holistic   50.0 50.  40.0Undeterm.  5.0  0.  15.0 Weak 

参照

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