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(1)

1. はじめに

情報システム工学分野において、物理や数学の基礎 教養知識は必要不可欠である。しかし、情報システム 工学分野に進学する学生達の多くは、ロボット工学 やパソコンの技術向上に興味を持つ一方で、物理や数 学を勉強する必要性を認識しておらず、物理に対する 関心も希薄である (高校で物理学を学んでいない学生 も存在する)。そのため、一般の理学部、工学部向け の学生に実施されているいわゆる物理学実験を行って も、学生は嫌々実験に取り組むことになり、その有効 性は低い。こうした状況を改善するためにも、情報シ ステム工学分野においては、情報工学と結びついた物 理教育を実践することで、学生に物理の大切さを理解 してもらい、自発的に学習に取り組むことが出来る環 境を構築することが期待されている。実際、このよう な試みの一環として、動画像処理を用いた教育法が研 究されている

[1-5]。

福岡工業大学情報システム工学科でも、高校物理を 未履修であったり、物理学を敬遠したりする学生層の モチベーションを底上げする事を目的とし、動画像解 析を用いた物理学実験を開講している。ロボット工学 などの情報システム工学において、物理学の知識は必 要不可欠であり、物理観測の測定手法として画像処理

工学の手法を用いることで、物理学に関する関心や基 礎学力の必要性を認識させることを目的としている。

特に、次の

2

a .教科書で習った物理の実験を実際に体験し、物理

の楽しさや物理を通して数学の必要性を感じてもら うための教材開発

b

.画像処理などを用いた「画像処理工学」への予備 知識に繋がる実験教育の確立

を念頭に置き、教育方法について研究を重ね、その成 果を「情報物理実験」の一部として、運用している。

実験では、力学で知られる典型的な物体の運動を

web

カメラで観測し、パソコンに画像データとして取 り込み、テンプレートマッチングの手法を用いて、物 体の位置を座標データに変換し、解析を行う。平成

29

年度は、斜面を転がる物体の運動、Borda振り子の 周期の測定を扱った。

本論文では、特に

Borda

振り子の周期の測定につい て、実験精度を確認し、安価で容易に実現可能な動画 像処理を用いた実験の有効性について検討する。

2. 情報システム工学科向け物理計測実験 情報物理実験に使用した主な機材は以下の通りであ る。

Abstract

  In the field of information system engineering, it is necessary to practice education of physics

linked to information engineering. We try to construct physics experiments using image processing technology. We check the experimental accuracy from the measurement of the period of the Borda pendulum and examine the effectiveness of image processing technology in physics experiments.

1福岡大学理学部物理科学科、〒814-0180 福岡市城南区七隈8-19-1 Department of Applied Physics, Faculty of Science, Fukuoka University 8-19-1, Nanakuma, Jonan-ku, Fukuoka 814-0180, Japan

2福岡工業大学情報工学科情報システム工学科、〒811-0295 福岡市東区和白東3-30-1 Department of Information and Systems Engineering Faculty of Information Engineering, Fukuoka Institute of Technology 3-30-1 Wajiro-higashi, Higashi-ku, Fukuoka 811-0295, Japan

宮原  慎

1)

・中野 萌士

2)

・中川 朋奈

2)

・丸山 勲

2)

動画像処理を活用した力学分野の実験指導法に関する研究

(平成

30

5

31

日受理)

S

hin

M

iYAhARA1)

, Kizashi N

AKAnO2)

, Tomona N

AKAGAWA2)

and Isao M

ARUYAMA2)

Application of Image Processing Technology in Dynamics

Received 31 May, 2018

― 49 ― 福岡大学理学集報 48(2) 49 〜 52(2018)

(2)

・データ取得・解析用ノートパソコン:Lenovo B50

59426338

・データ取得用

web

カメラ:ロジクール

HD

プロ

C920T

・カメラ用三脚

・ボルダ振り子

・ノギス、メジャー

・斜面用の木片、板

・力学台車(ケニス株式会社)

このように、標準的なパソコンと安価な

Web

カメ ラを用いて、実験環境を構築することによって、誰で も手軽に動画像解析を行なうことができる環境の確立 を目指している。

実験で使用する動画像解析ソフトウェアは、総合開 発環境

Visual Studio2013、使用言語 C++

を用いて作成 しており、動画像解析ライブラリとして

OpenCV ver

2.4.9

を使用している。これらの動画像処理ソフトは、

福岡工業大学四年生が卒業研究の一環として作成した プログラムである。プログラムコードは初心者でも理 解できるよう単純な構造に限定し、オンライン(GIT

HUB

)上にソースコードを公開することで、誰でも 開発に参加できるよう工夫している。また、解析デー タは、CSV形式で管理しており、前期授業科目「情 報リテラシー」や「物理学

I」で扱う形式と統一する

ことで、異なる科目間の密接な科目間連携が進むよう 促している。

本情報システム実験は、次のような点を目的として、

開発に取り組んでいる。

◆容易な測定

パソコンと

web

カメラがあれば実行可能な環境の 確立を目指す。

◆物体の運動のグラフ化

教科書の知識(落下運動は時間の

2

次関数、単振動 は時間の正弦関数)と物体の運動との関連性をグラフ 化することで確認する。

◆学生主体の動画像処理ソフトの開発

先輩にあたる学科四年生が作成したプログラムソー スである事を説明し、また実験時にプログラムコード を配布することで、一年生のうちからプログラムや画 像処理、卒業研究に興味をもたせるよう試みる。

CSV

形式による解析データ出力

CSV

形式を用いることで、一年生が前期授業で行っ たエクセルによるグラフ作成や

Mathematica による

フィッティングを可能にし、学生の情報処理能力の更 なる向上を目指す。

◆情報、数学科目との密接な科目間連携

数式と物理現象を結び付けて考えることで、物理学 や数学といった基礎科目の必要性を学生に認識させる ことで、科目間連携の鎹となりうる科目の確立を目指 す。

3.テンプレートマッチング

本実験で使用する動画像処理では、テンプレート マッチングを用いた。ある画像中でテンプレートと呼 ばれるパターン(図

1

挿入図)を指定し、同じパター ンが他の画像中のどの部分に存在するかを対応付ける パターンマッチングを行う。時々刻々の画像について マッチングを行う事で物体の運動を捉えられる。

カメラ位置を固定し、測定する物体の静止画を撮影 する。図

1

挿入図のように、四角形の枠で物体(図で は台車)を囲み、テンプレートを作成する。動画を撮

図1:テンプレートマッチングの処理画像例。左上の数値は経過時刻[s](類似度[%])であり、右上挿入図はテンプレー ト画像の例。

― 50 ―

(3)

影し、パターンマッチングを行う。本ソフトウェアで は、撮影画像中で、テンプレート画像が一致したと判 断した位置を青枠で囲み処理画像として出力している

(図

1)。パターンマッチの結果、類似度の高い画像に

ついて、テンプレートの枠の中心点を物体の位置とし、

経過時間とともに

CSV

形式でファイルに出力する。

4.Borda 振り子実験への動画像処理の活用

4.1

 測定手順

実験装置の配置例を図

2

に示す。実験で使用する機 材は、解析用ノートパソコン(VAIO Z VJZ13B1)、パ ソコン内蔵カメラ、Borda振り子、メジャー、ノギス である。容易に実現可能な環境でも、十分な精度が出 ることを実証するため、今回の測定では、パソコン内 蔵カメラを用いた。実験の手順は以下の通りである。

a .較正用画像撮影

 カメラを固定し、較正用画像を撮影する。錘の中 心が枠の中心になるようテンプレート画像を作成す る。

b .針金の長さ

Lの測定

 三角刃先から錘の上端までの針金の長さLを巻 尺で

7

回測定し、その平均値を求める。

c

.錘の半径r の測定

 球形の錘の直径

2 r

を、ノギスで

7

回測定し、錘 の半径rおよび、三角刃先から錘の中心までの長さ hrLを求める。

d .動画像処理

 錘を静止位置から

1cm

程度動かし、そっと手を 放す。錘をテンプレートとしたテンプレートマッチ ングを行い、運動を観測する。錘の中心を枠の中心 とすると、錘の中心の運動データを得たことになる。

e . 動画像解析

 動画像処理で得られた位置データの時間依存性を プロットし、単振動の運動が観測されたことを確認 する。グラフより、周期Tを測定し、重力加速度g を見積もる。

4.2.

測定結果

測定結果は以下の通りである。

針金の長さ L の測定(

7

回測定)

L

1.0157

±

0.0001m

球の半径 r (直径 d)の測定 (7回測定)

r

0.019836

±

0.000004 m

動画像処理による振り子の周期

T

の測定(

7

回測定)

T

2.043

±

0.0001s

各測定結果を表

1

に示す。周期Tは、

50

秒間のデー タ点(時刻t 、変位y )を減衰振動の式

A,ξ

, T,

θ0をパラメータとして、フィッティング した結果からから見積もった。動画像解析で得られた グラフ例を図

3

に示す。振り子の慣性モーメントによ る補正を加えた式

を用いて、重力加速度gを見積もると、重力加速度 g =9.793±

0.002m/s

2を得た。この結果は、福岡市の 実測値g =9.7963 m/s2

[6] と比較してほぼ一致した値と

図2:実験装置の配置例

g = 

4

   π2

(L+r) ﹇ 1+

      

5

(L+r)

2r

2 2

)]

T2

y = Ae-t/ξ

cos ( 2

T   πt

+

θ0

有益なコメントをいただきました。記して 御礼申し上げます。

参考文献

[1]

中川玄、高田直照、松下潤、中島伸明、

藤井研一、「コンピュータビジョンを用いた 運動のリアルタイム解析と物理教育への応 用 」、 日 本 物 理 学 会

2012

年 次 大 会

26pCG-2

、関西学院大学

[2]

加藤徹也、本田敦也、「低解像度高速カ メラを用いた身近な運動の教材化の課題」、

千葉大学教育学部研究紀要、

58

p.387-395 (2010)

[3]

藤井研一、「体験から数理へ、アニメー ション作成を通じて学ぶ物理教育システム の構築」、基盤研究(C)

2009~2011

、科研 費成果報告書(大阪工業大学)

[4]

末谷健志、「

運動解析システム

を利用 した物理学の学習」、日本科学教育学会年会 論文集

34

p.283-284, (2010)

[5]

末谷健志、運動アナライザ

https://yufy0607.wixsite.com/physics-for- all

[6]

国立天文台編「理科年表」

(2018)

丸善 出版

計測回数

1 2 3 4 5 6 7

平均値

L(cm) 101.53 101.60 101.55 101.62 101.62 101.52 101.55 101.57 2r(cm) 3.965 3.965 3.970 3.965 3.970 3.970 3.9655 3.9671 T(s) 2.04329 2.04309 2.04358 2.04320 2.04375 2.04337 2.04303 2.043

1

:測定結果

表 1:測定結果

動画像処理を活用した力学分野の実験指導法に関する研究(宮原・他) ― 51 ―

(4)

さ測定法の確立や、テンプレートマッチングの精度向 上について、改善する必要がある。また、近年では、

スマートフォンの性能が向上しており、パソコンの変 わりにスマートフォンを活用することが期待される。

今後は、スマートフォンの活用法についても模索する 予定である。

動画像処理技術と物理学実験を結び付けることが、

情報システム工学に適した物理学実験法の構築につな がると期待される。また、こうした物理学実験科目を 実施することで、情報や数学と物理の間の密接な科目 間連携につながることが期待される。今後は、物理学 実験のみならず、動画像処理を活用した物理学一般の 教育法やシステムの開発にも発展させる予定である。

謝辞

 物理計測実験の運営に協力頂いた、福岡工業大学 四宮丈生氏に感謝する。福岡大学 林壮一准教授には 査読をしていただき、有益なコメントをいただきまし た。記して御礼申し上げます。

参考文献

[ 1 ]

中川玄、高田直照、松下潤、中島伸明、藤井研一、「コ

ンピュータビジョンを用いた運動のリアルタイム 解析と物理教育への応用」、日本物理学会

2012

年 次大会 26pCG-2、関西学院大学

[ 2 ]

加藤徹也、本田敦也、「低解像度高速カメラを用

いた身近な運動の教材化の課題」、千葉大学教育 学部研究紀要、58、

p.387-395

2010

[ 3 ]

藤井研一、「体験から数理へ、アニメーション作

成を通じて学ぶ物理教育システムの構築」、基盤 研究(C)2009~

2011、科研費成果報告書(大

阪工業大学)

[ 4 ]

末谷健志、「"運動解析システム ” を利用した物

理学の学習」、日本科学教育学会年会論文集34、

p.283-284,

(2010)

[ 5 ]

末谷健志、運動アナライザ

https://yufy0607.wixsite.com/physics-for-all [ 6 ]

国立天文台編「理科年表」(

2018

)丸善出版 なっており、物理学実験として、十分な精度が得られ

たと考えられる。また、誤差も通常の物理学実験で行 われる

100

周期をストップウォッチで測定する手法と 比べて遜色ない値が得られた。実際、動画像処理と同 条件下で観測したところ、g=

9.797

±

0.003m/s

2とな り、ほぼ同じオーダーの誤差を得た。画像解析では、

10

周期程度の観測を行うだけで、通常の観測方法と 同程度の誤差結果が得られており、測定の簡略化にも 有効であることが分かる。

5.まとめ

動画像処理を活用した物理学実験の確立を目指し、

その教育方法について研究を行っている。今回は、

Borda

振り子の実験において、動画像処理を活用し、

その有効性を示した。その結果、動画像処理の利点と して

コスト的にも時間的にも容易に運用ができる。

物体の運動をグラフ化することで、学生が、物体の 運動と運動を表す式の関連を理解する手助けとな る。

Borda

振り子の実験から重力加速度を見積もるのに

十分な時間的分解能がある。

といった点があることが分かった。現システムでは、

位置の分解能が十分とは言えず、画像上での正確な長 図3:動画像処理で得た振り子の振幅の時間依存性。フィッ

ティング結果も併せて示してある。

― 52 ―

参照

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