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富士山御殿場口から幕岩付近の地層観察 : 溶岩を 中心として

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中心として

著者 山本 玄珠

雑誌名 静岡地学 

巻 106

ページ 1‑6

発行年 2012‑11‑23

出版者 静岡県地学会 

URL http://doi.org/10.14945/00024698

(2)

静岡地学 第 1 0 6 号( 2 0 1 2 )

富士山御殿場口から幕岩付近の地層観察

(溶岩を中心として)

山 本 玄 珠

富士市元町 7‑21 1 .はじめに

 本調査地域は富士山西麓に位置している(図 1).富士火山は西側には溶岩が多く分布し,東側 にはテフラが多く分布するため,両者の関係は 不明なことが多い.御殿場市富士山太郎坊から幕 岩にかけての地域(図 2)には,富士山の溶岩と テフラの両者が分布しており,その代表的な場所 として IGC の巡検コースや一般向けのフィール ドガイドにも紹介されている(Miyaji  ., 1992; 

宮地 ,    1988).しかし,残念ながら一連の宮地氏 の研究は溶岩の詳細を示さなかったため,混乱を 招いていた.また,近年ハザードマップの関係や 産総研の地質図幅作成などから,この地域もふく めて,多くの研究が行われてきている.しかし,

テフラによる調査研究が主体のためか溶岩に関し ては,その詳細は示されなかった.また従前の研 究をあまり参考にしなかったためか,調査対象が 異なるためか研究者ごと独自の溶岩名を示した め,混乱をまねいていた.ここではそれを修正し た山本ほか(2010,  2012)に従ってもう一度整理 し,太郎坊から二つ塚,幕岩,須山胎内を通る地 学見学コースとして紹介したい.なおこのコース は本会(静岡地学会)の 2009 年の東部支部の巡 検コースでもある.

2 .富士山御殿場登山口周辺の露頭(図 2A 地点)

 本露頭は富士山のテフラの露頭としては有名で,宮地(1996)によって日本のテフラ露頭の一つと して記載されている.この露頭では宝永のテフラから旧期のものまで観察できる.ただし現在はかな りの堆積が進んでいて下部は観察できない.以前には最下部に旧期の溶岩が分布しているとされ,こ

図 1.調査位置図

国土地理院 2 万 5 千分の 1 地形図を基本に 作成.

図 2.調査地域の詳細位置図

国土地理院 2 万 5 千分の 1 地形図を基本に 作成.

(3)

三島溶岩)は分布的には最も高い場所にあり,三島溶岩流動の推定の根拠となっている.しかし御殿 場口の三島溶岩は山本ほか(2010)によって,鉱物組み合わせの違いを主な根拠として,三島溶岩と 区別し,旧期の太郎坊溶岩と命名された.この溶岩は,パホイホイ溶岩で,やや粗粒な斜長石がめだ つかんらん石玄武岩である.テフラについては,宮地(1996),上杉・大下(2003)などを参照して 頂きたいが,この宝永スコリアの下部には,軽石部と安山岩質部が縞状となったものやスコリア中に は,白色をしたハンレイ岩が含まれており,宝永噴火時の地下のマグマについての情報を与えてくれ る(黒田 , 1976; 中村ほか , 1986; 安井ほか , 1998; 藤林ほか , 1999).また,宝永スコリア上部はスラッ シュ雪崩など現世の災害の地層が観察される.

3 .双子山から幕岩までの露頭(図 2B 地点)

 この地域の溶岩は,Tsuya(1935)によって初めて記載されて,その後,沢山の研究者のテフラや 溶岩の論文に登場するが研究対象が異なるためか,研究者ごとかなり異なっており,それらを整理し た山本・北垣(2012)が示す層序を図 3 に,この地域周辺の沢筋を表した図を図 4 に示し,幕岩から 須山胎内付近の地表付近の溶岩分布図(山本・北垣 , 2012)を示す(図 5).

図 3.研究者別,幕岩付近の溶岩層序

山本・北垣(2012)に基づき作成.○:対比あり.△:明確でないが対比あり.

*:対比記載なし.

(4)

静岡地学 第 1 0 6 号( 2 0 1 2 )

 双子山は二つの噴石丘からなるが,南東側の噴石丘は,宝永のスコリアに覆われているが,噴火口 の凹地が観察される(テフラは図 2A 地点で,最上部の宝永スコリアの下位として観察できる).次 に双子山を西登山道を進み,図 4 の D 沢を幕岩方面に下っていくと沢沿いに宮地ほか(1985)が記 載した宝永テフラによって焼かれた無数の炭化木を観察することができる.現在観察できるのは数 cm のものが多い.この炭化木の露頭を見ながら幕岩に近づくと斜長石のこまかな斑晶で一見すると 無斑晶的に見える山本・北垣(2012)が言う砂沢溶岩Ⅳ(アア溶岩,複輝石かんらん石玄武岩)が観 察される.なおこの溶岩は層序的には宮地ほか(1985)の幕岩溶岩Ⅰまたは幕岩溶岩Ⅱにあたると思 われるが岩質が異なり,高田ほか(2007)は二ツ塚の溶岩としたものである.図 4 のア〜エ沢を中心 に調査したが二ツ塚からの分布は確認できなかった.

 幕岩では,この砂沢溶岩Ⅳが左岸を作っており,右岸はアア溶岩でやや斜長石が目立つ,普通輝 石かんらん石玄武岩の幕岩溶岩Ⅴが観察される.この溶岩は Tsuya(1935)の F-67-d 溶岩にあたる.

このまま登山道を西に進むとすぐに西二ツ塚方面からくる図 4 のオ沢と出会う.この沢の沢底で,ア ア溶岩でやや粗い斜長石を主体とする複輝石かんらん石玄武岩の砂沢溶岩Ⅵが見られる.この溶岩は,

Tsuya(1935)の F-67-e 溶岩にあたる.この溶岩は Tsuya(1935)が示すように幕岩の段をオーバラッ プして下っている.なお,オ沢の西二ツ塚方面では観察されない.この沢をわたって,須山下山道を 下るとすぐに,幕岩下部へおり道の分岐となる.幕岩下部に下りると幕岩下部の崖が観察できる.こ の崖は Tuya(1935)の Fa-01 溶岩または津屋(1971)の砂沢溶岩で,これを山本・北垣(2012)が 改名して砂沢溶岩Ⅰとした.この溶岩は袋状のパホイホイ溶岩で粗粒ない斜長石がかなり目立つ,い わゆる麦飯タイプの玄武岩である.幕岩中央には,それをオーバラップして下ってきた幕岩溶岩Ⅵの 岩塊が観察される.本来幕岩は 2 段になっており,下段は今説明したとおり,砂沢溶岩Ⅰとオーバ ラップした砂沢溶岩Ⅵからなる.なおこの砂沢溶岩Ⅵは,ここから砂沢を下り,富士山スカイライン を横切ってそれより南まで分布している.小川(1986),篠ヶ瀬ほか(1999, 2000),山本ほか(2003)

など富士市域の砂沢溶岩はこの溶岩を誤って対比している.なお,一連の宮地の研究(Miyaji  .,  図 4.調査地域の沢筋の図

国土地理院 2 万 5 千分の 1 地形図を基本に 作成.

図 5.幕岩から須山胎内付近の地表付近の溶岩分布 山本・北垣(2012)に基づき作成.砂沢溶岩Ⅱ,

Ⅲ,Ⅴは分布が小さいため記載されていない.

(5)

岩Ⅲ,Ⅱ,Ⅰが観察さできるとされているが,山本・北垣(2012)によって,Tuya(1935)や高田・

小林(2007)・高田ほか(2007)を総合的に検討し,岩石学的な詳細を明らかにし,層序的な矛盾点 などや化学組成や鉱物組み合わせなどを利用した対比をした結果,それぞれ日本ランド溶岩は砂沢溶 岩Ⅱに,幕岩溶岩Ⅲは砂沢溶岩Ⅲに,幕岩溶岩Ⅱは砂沢溶岩Ⅳに,幕岩溶岩Ⅰは砂沢溶岩Ⅴに改名変 更された.ここでは宮地(1998)が述べるように砂沢溶岩Ⅱとその上位のⅢ,Ⅳ,Ⅴとはスパッター コーンの半分の岩塊を挟んで接しており,砂沢溶岩Ⅲの上位に砂沢溶岩Ⅳがオーバラップしていくの が観察される.なお,砂沢溶岩Ⅱは,アア溶岩でガラス質の普通輝石かんらん石玄武岩で,砂沢溶岩

Ⅲは,アア溶岩で暗灰色のかんらん石玄武岩で,砂沢溶岩Ⅴは,アア溶岩で 10%前後の斜長石を含 む普通輝石かんらん石玄武岩である.

 なお,幕岩から太郎坊に戻る登山道の砂沢の崖や谷筋でも同様な溶岩や宝永のテフラが観察され,

炭化木も観察される.

4 .幕岩西部から須山胎内にかけての露頭

 幕岩の西側には,アザミ塚があり,高田・小林(2007)によって旧期の墳石丘とされている(図 2).

そしてその谷沿いにスポット的(図 2 の E 地点)に溶岩が分布しており,この溶岩をアザミ塚から 流出した溶岩とした.アザミ塚の溶岩の記載は小山(2003)もあるが,小山(2003)は西臼塚をアザ ミ塚として記載しており,記載ミスである.また,その下流部(図 2 の E 地点)にも同じ岩質の溶 岩があり高田ほか(2007)は須山胎内洞穴を作っている溶岩で,非常に新しい噴火としている.山本・

北垣(2012)は詳細な分布とその連続性および岩質を調査し,これらは同類の溶岩で,アザミ塚火山 活動とは直接関係のないアザミ塚・須山胎内溶岩と命名した.図 6 に山本・北垣(2012)の溶岩対比 表を示す.本溶岩は,新期の溶岩で比較的粗粒

な斜長石が目立つ,パホイホイ溶岩である.こ の溶岩には多くの溶岩こぶが見られる.また高 田ほか(2007)が須山胎内の溶岩の噴火口とし た須山胎内北側(図 2E 地点)では通常溶岩下 流部などに多い,溶岩樹型が数個確認できる.

本溶岩は津屋(1968)の砂沢溶岩の分布域であ り,岩質・産状とも類似傾向があるため,津屋

(1968)では同類とした可能性が高い.

 以上から本地域には三島溶岩はこの地域には存在せず,多くの三島溶岩の流動の根拠は書き換えが 必要となる.また,富士山南西麓の一連の小川(1986),山本ほか(2003),篠ヶ瀬ほか(1999,2000)

の砂沢溶岩は,砂沢溶岩Ⅵを砂沢溶岩として誤って認識し,それに対比したものであり,これらに関 しては再考が必要となる.

図 6.研究者別,須山胎内周辺の溶岩層序

山本・北垣(2012)に基づき作成.△:明確で ないが対比あり.*:対比記載なし.

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静岡地学 第 1 0 6 号( 2 0 1 2 )

5 .おわりに

 本稿は,富士山の研究を地道に行われてきた先達の成果の上に成立してものである.ここで,富士 山の研究にご尽力され道半ばで逝かれた宮地直道氏に紙面を持って弔意を表する.

引用文献

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参照

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