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建築平面図の図形的特徴に関する研究-雑誌「新建築」における1988年から2008年の事例を対象として- [ PDF

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(1)建築平面図の図形的特徴に関する研究 - 雑誌「新建築」における 1988 年から 2008 年の事例を対象として -. 深田 享佑 1. はじめに. 表 1.研究対象の概要 主な機能 1988 1993 1998 2003 2008 合計. 1-1. 研究の背景と目的. 長方形や正方形といった単純な図形を平面図の要素. 医療. 3. 業務. 29. 交流. 住宅. 教育. として建築を構成する方法は、古くから設計の基本と. 芸能. なっている。そうした建築は施工性が高く経済的にも. 5. 7. 4. 21. 31. 28. 29. 25. 142. 16. 18. 17. 13. 5. 69. 8. 4. 3. 3. 築が常に存在する。本論では、こうした建築を平面図 の外形のみで単純化してみた場合、どのような傾向が. その他. 見えるのかを明らかにすることを目的とする。また、. 1. 8. 商業. 図書館. 4. 8. 宿泊. 部が曲線となっている建築や、壁が鋭角に交差する建. 10. 5. 集合住宅. 有利であると見なされている。その一方で、壁面の一. 2. 2. 4. 3. 9. 4. 9. 8. 6. 2. 2. 1. 4. 展示. 14. 11. 10. 合計. 107. 96. 95. 3. 3. 3. 5. 1. 3. 5. 15. 24. 3. 0. 13. 5. 2. 1. 1. 4. 4. 3. 3. 91. 87. 統計学の助けを借りデータ同士の相関関係を追うこと. 22. 20. 57. 31. 23. 23. 10. 43. 15. 476. 図 1.研究対象の主な用途 頂点. 軸(4). で、図形的特徴が思いもしなかったデータと結びつく こと、もしくは建築意匠の統計分析という手法を確立. 建築面積. させることも目的のひとつである。今回は特に、平面. 周囲長. 形を数値化したものと建物の定性、用途、時代の変遷 との関係について考察した。. 図 2.アウトライン化とパラメータの定義 3). 1-2. 研究の対象と方法. 表 2.各パラメータの定義. 雑誌「新建築」の 1988 年から 2008 年にかけて 5 年. おきに5年分の事例(476件)を対象とする。特殊事例 1) を除いて、掲載されてある建築を全て扱っている。図 1、表 1 では、対象事例を 11 の主な用途に分類し、そ の概要を表している 。まず建築平面図を CAD 上で 2). トレースしアウトライン化を行う。トレースするライ. になるものとして考えている。このアウトライン化し. として定義している。主に、図形としての特徴を数値. A. 扱い. 2 定量 章. 定質. 3 章. 4,5 章. A・spread. C. B・BULDING K. 60   50  . に掲載されてある基本情報として、建物の高さ、建築. B. D. C ・青山 OM-SQUARE. 40  . 面積、建ぺい率、竣工年、用途の5つを「事例のパラメー. 30  . タ」として定義した。これらのパラメータを掛け合わ せ統計処理を行うとで、建築平面図の図形的特徴を分. 囲長]と[頂点数]である。周囲長は建築面積を 100㎡. グリッドのくずし方で分類. 性質. 70  . 化、類型化したものである。そして、雑誌「新建築」. め、形の情報をパラメータを使って示す。それは、 [周. 形態区分. 周囲長 (m) 周囲長. 頂点数、形態区分(後述)の3つで「形のパラメータ」. 本研究では、多種多様な図形の複雑さを分析するた. 建物の階数により定義 建築面積/敷地面積* 100 11 の用途に分類 1). 80  . た図形をもとに数値化等を行う。具体的には、周囲長、. 2-1. パラメータの定義. 事例の パラメータ. 建物の高さ 建築面積 建ぺい率 竣工年 用途. アウトライン化した周囲の長さ 頂点、角の数. 90  . ある。つまり、面上の凹凸は無視されシングルライン. 2. 図形の複雑さ. 語句 周囲長 頂点数. 形の パラメータ. ンの定義は、 「内部と外部を隔てている面の通り芯」で. 析していく。. 分類 形の パラメータ. 0  . 10  . 20  . 30  . 40  . 頂点数 頂点数 ( 点 ). 50  . 60   ・まなびの館ローズコム D. 図 3.周囲長と頂点数の関係. にしたときの図面を考えており 4)、そうすることです べての事例を規模に関係なく等価に扱っている。周囲 長はそのときの値を示す。また、頂点数は、壁面のベ クトルが変わる点の個数を示している。曲線の場合は、 その始点と終点をカウントしている。周囲長は値が大 きくなるにつれて複雑な形を示すが、図3-A のよう 28-1 .

(2) 60  . その一方で、頂点数も値が大きくなるにつれて複雑な. 80  . 50  . 形を示すが、図3-B のように単にヒダ状になってい. 70  . 40  . るだけということもありえる。また、図 3-C 付近には 直感的に複雑であると感じたものが分布し、逆に、図 3-D 付近では限りなく矩形に近い図形が分布する。2. 頂点数 ( 点 ). 90  . 周囲長 (m). に単純に細長い図形になるだけということもありえる。. 60   50   40  . つのパラメータを使うことで、多種多様な複雑さを客. 20   10  . 30  . 観的に示すことができる。. 30  . 0  . 10  . 20  . 30  . 階数 ( 階 ). 0  . 40  . 0  . 10  . 20  . 30  . 階数 ( 階 ). 40  . 図 4.周囲長(左)、頂点数(右)と建築の高さの関係. 図 4 では周囲長、頂点数と階数の関係性を表してい. る。周囲長と頂点数ともに低層の建物では、低い値や 周囲長 (m). 高い値を示しているが、高層になるにつれだんだん値 が低くなり周囲長は 40 〜 50m、頂点数 4 〜 10 点付 近に分布することが分かる。一番シンプルな図形を正. 90  . 60  . 80  . 50  . 70  . 40  . 頂点数 ( 点 ). 2-3. 建築の高さと図形の複雑さ. 60  . 50  . 方形とするとその周囲長は 40m、そして頂点数は 4 点. 40  . なので、建築の高さが高くなればなるほどシンプルな. 30  . 30  . 20  . 10  . 0  . 10  . 図形に近づくといえる。. 100  . 1000  . 10000  . 建築面積 (㎡ ). 10  . 100  . 1000  . 10000  . 建築面積 (㎡ ). 図 5.周囲長(左)、頂点数(右)と建築面積の関係. 2-4. 建築面積と図形の複雑さ. 図 5 では周囲長、頂点数と建築面積の関係性を表し. 80  . 50  . ている。データのばらつき具合をならした近似線を挿. 70  . 40  . 入させると、建築面積が大きくなるにつれて周囲長、 頂点数も増加することが分かる。建築の規模が大きく なると、図形も複雑になるといえる。. 頂点数 ( 点 ). 60  . 周囲長 (m). 90  . 60  . 50  . 40  . 2-5. 建ぺい率と図形の複雑さ. 30  . 図 6 では周囲長、頂点数と建ぺい率の関係性を表し. 30  . 20  . 10  . 0.0  . 20.0  . 40.0  . 60.0  . 建ぺい率 (%). 80.0  . 0  . 100.0  . 0.0  . 20.0  . 40.0  . 60.0  . 建ぺい率 (%). 80.0  . 100.0  . 図 6.周囲長(左)、頂点数(右)と建ぺい率の関係. ている。同じく近似線を挿入させると、建ぺい率が大. 表 3.形のパラメータと事例のパラメータの相関係数と強弱の目安. きくなるにつれて、周囲長、頂点数は減少することが 分かる。建ぺい率が低い建築は、図形が複雑になる傾. 階高 建築の高さ 建築面積. 向がある。. 周囲長. 頂点数. 0.10. 0.20. 建ぺい率. 2-6. 小結. 0.50 0.27. 0.52 0.22. 表 4.直交グリッド型のくずしかたによる形態区分. 表3では3つの事例のパラメータと形のパラメータの. 関係性の強さについて相関係数(r)を使い表している 5)。 rの値を参照すると3つの事例のパラメータの中で「建. 型 略. 物の高さ」が一番形のパラメータに依存していること が分かった。. ①基本直交 グリッド型 SG 型. (Standard Grid). 直交グリッド型 + α ②軸付加型 ③曲線付加型 AA 型. AC 型. (Additional Axes) (Additional Curves). ④非直交 グリッド型 NG 型 (Non-Grid). モ デ ル. 3. 形態区分. 3-1. 形態区分の定義. 軸が直交してい 直交グリッド型 直交グリッド型 直交グリッド型が の一部分に新た の一部分に新た みられず、曲線や 定 る図形 な軸が付加され に曲線が付加さ 多くの軸から形成 義 た図形 れた図形 された図形. 得られた図形の多くは、2つの軸が垂直に交わる直. 交グリッドをもとに形成されている。これを基本とし て直交グリッドをどのようにくずしているかという点 に注目することで図形を分類することができる(表 4)。 まず、直交グリッドに新たな軸を付加させグリッドを くずしている軸付加型が存在する(表 4- ②、以下 AA 型)。それらは、基本的な図形の組み合わせからでき ており、表 4 の参照ではひとつの直方体に、少し傾け. ・橋の博物館. ・高田デンタルクリニック. ・新井クリニック. ・江戸崎カントリークラブ. ・福井県立図書館. ・五箇村農村センター. ・ベルリン日独センター. ・Bubbletecture. ・BULDING K. ・イマーブル・ダビタシオン. ・一宮市博物館. ・大倉山の集合住宅. 参 照. た直方体を組み合わせることで、矩形としての性質を できるだけ損なわないように直行グリッドをくずして いることが分かる。その一方で、一部分に曲線を付加 させて直交グリッドをくずしている曲線付加型もある. %. 28-2 . 39%. 31%. 19%. 11%.

(3) 50  . 40  . (表 4- ③、以下 AC 型)。曲線の部分には円弧が用いら. 60   30   1988 2003. れることが多いが、自由曲線が使われることもある。 グリッド型(表 4- ④、以下 NG 型)があり、その多く が円形や多角形、自由曲線で構成されている。SG 型、. 0.67. -0.47. 2.02 -1.56 -0.59. 住宅. 2008 60  . 50  . 30   0   40  . られることが分かる。. 0  . 30  . 図 7、8は SG 型において建ぺい率と周囲長もしく 似線 を竣工年別に抽出している。図7をみると建ぺ. 40  . 1.36. 商業. -0.80. 1.86 -1.20 -0.13. 図書館. -1.38. 0.87. 0.97 -0.17. -0.03 -0.50. 1.44 -1.07. 建ぺい率 (%). 8. 分散(V). 0   10   10   2003. い率が高くなるごとに周囲長も少しづつ減少している 特徴は無いといえる。その一方で、図8において頂点. 0.48. 1.07 70   -0.52 80   -0.02 90   -1.21 100  . ①. ②. ③. ④. 0.58. 0.65. 0.77. 0.87. 教育. 0.58. 0.64. 0.77. 0.87. 50   業務 60  . 0.43 70  . 0.48 80  . 0.57 90   0.64 100  . 20  . 30  . 芸能. 0.58. 0.65. 0.78. 0.87. 交流. 0.51. 0.57. 0.69. 0.77. 集合住宅. 0.54. 0.60. 0.72. 0.80. 建ぺい率住宅 (%). 0.57. 0.63. 0.76. 0.85. 宿泊. 0.58. 0.64. 0.77. 0.86. 商業. 0.58 0.77 :実測度 fij 0.64. 0.87. 図書館. tij 0.66 :期待度 0.59 0.79 (1). 0.89. 40  . 2008. 0  . 1.03. 医療. 1998. 0  . が、どの年も 40 〜 60 mを推移しており竣工年別の. 1.94 -0.97 -1.19 -0.49 -2.18. 50  その他 60  . 1993. 20  . 頂点数( 点()点 ). 6). 30  . 198. 10  . は頂点数の関係を示しており、その散布図にひいた近. 20  . 1.55. 図 7.SG 型における周囲長と建ぺい率の関係(竣工時期別). 20  . 3-2. 基本直交グリッド型(SG 型)について. 10  . 0.67. 宿泊. 展示. ら、多くの事例で少なくとも1組の直交グリッドがみ. 0  . 10  . 20  . 30  . 40  . 50  . 60  . 70  . 80  . 90  . 100  . 図 8.SG 型における頂点数と建ぺい率の関係(竣工時期別). 数を見ると 88 年は建ぺい率が高くなるごとに減少し ているが 08 年に近づくにつれ、近似線の勾配が緩や. 2. かになっている。SG 型においてヒダ状のデザインが. =. X X (fij i. j. 年の経過とともに減少していくのが分かる。. tij )2 tij. 展示. 0.55. その他. 0.59. :分散0.74 0.83 0.61 :調整化残差 0.65 0.78 0.88. 図 9.カイ 2 乗値と調整化残差の公式. 4. 形態区分と事例のパラメータの関係. 表 6.用途別の調整化残差. 表 5.用途別の実測値 7). を行い事例の相対的頻度の関わりを調べた。カイ2乗 値を求めることにより、用途を形態区分別にみたとき 明確な「差」があらわれるかどうかを判別することが できる。カイ2乗値は図 9 の式から求めることができ、 その値が基準値を超えるとき2つのパラメータに「差」 があるとみなすことができる。また「差」があるとみ. 実測値(N) 医療 学校 教育 業務 芸能 交流 集合住宅 住宅 宿泊 商業 図書館 展示 その他. 期待値(T). なされたとき、調整化残差 8) を求めることで各項目の. 医療. どこに「差」が生まれたのかを分析することができる。 調整化残差は分散や偏差を考慮しており、事例数の偏 りを無視することができる。このとき調整化残差の絶 対値が 2 を超える場合、その項目に「差」があるとみ. 教育 形態区分の特性. 形態区分と用途の関係性を示すため、カイ 2 乗検定. -1.82. 40   10  . AA 型が比較的多く、NG 型が約 11% と少ないことか. 4-1. 分析の手法. 交流 集合住宅. 50   1998 20  . 周囲長(m)(m). そして、直交グリッドがみられない図形である非直交. 1993. 業務 芸能 交流. 集合住宅. なせる 。. 住宅. 9). 4-2. 用途別にみたときの形態区分. 4-1. の結果、集合住宅と商業施設では AA 型の割合. ところに分布しているという共通の特徴がある。つま. 事例数の割合(%). この3つの用途は図 11 に示すように、建ぺい率が高い. とができるかという問題が共通している。このことか ら、狭く不整形な敷地に対して、集合住宅と商業施設 し、できるだけ敷地の形状をオフセットさせたような 図形を作っている。その一方で、業務施設は敷地形状 に合わせるため直交グリッドをさらにヒダ状にしてい るとい違いがみられた(図 12) 。内部での機能的な違い がこうした差を生み出したのではないかを推察できる。. 3 2 30 6 17 6 3 7 2 4 13 3. ④ 調整化残差(d) ① 医療 0.59 3 教育 -1.34 6 業務 3.65 10 芸能 -0.58 2 交流 -2.53 11 集合住宅 -0.64 4 2 住宅 2.57 3 宿泊 -2.88 2 商業 -1.05 1 図書館 -1.80 2 展示 -0.04 0 その他 1.40. ①. ②. ③. ④. 8.67. 7.14. 4.18. 2.00. 9.06. 7.47. 4.37. 2.10. ② -0.53 0.70 -3.41 -0.39 0.88 2.62 -1.21 1.70 2.33 1.07 -0.64 -0.65. その他. ③ -0.66 -1.29 0.42 1.14 0.81 -1.84 -1.37 1.18 -1.37 1.09 1.68 -0.03. ④ 0.75 2.90 -1.21 0.07 1.76 -0.66 -0.53 0.52 -0.14 -0.18 -1.18 -1.29. 58.71 48.39 28.32 13.57 3.99. 1.91. 29.95 24.68 14.45. 8.28. 6.82. 6.92. 23.25 19.16 11.22. 5.37. 12.22 10.07. 5.89. 2.82. 4.75. 2.28. 9.85. 5.12. 8.12. 4.22. 2.47. 1.18. 18.13 14.94. 8.74. 4.19. 3.04. 1.46. 6.30. 5.20. その他. 医療. ①. ②. ③. ④. 0.20. 0.18. 0.33. 0.50. 教育. 1.04. 0.31. 1.29. 7.28. 業務. 5.69. 5.55. 0.10. 0.94. 芸能. 0.20 0.10 1.01 0.00 建ぺい率(%) 3.30図0.45 0.45 2.40 11.用途別にみる建ぺい率の事例数. 交流. では直交グリッドを新しい軸を付加させることでくず. ③. 9.46図7.79 4.56 2.19 10.調整後の用途と形態区分の関係. 統計量の計算. り、法規内で狭い敷地に如何にめいいっぱい建てるこ. 6 9 32 6 28 28 7 12 13 6 13 4. 宿泊. 展示. 型の割合が多く AA 型の割合が少ないことが分かった。. ②. 商業 図書館. が多く同じ位相を示している一方で、業務施設は SG. ① 10 6 77 7 20 21 19 3 7 2 18 9. 集合住宅. 0.22. 4.08. 2.43. 0.35. 住宅. 3.77. 0.93. 1.42. 0.24. 宿泊. 4.77. 1.86. 1.06. 0.23. 商業. 0.64. 3.48. 1.44. 0.02. 0.95 0.03 集合住宅 2.07 1.14 商業施設. 図書館. 1.90. 0.75. 展示. 0.00. 0.25. 業務施設. その他 1.15 0.28 0.00 1.46 図 12.狭い敷地に対する直行グリッドのくずしかたの違い(例). 28-3 カイ2乗値. 68.23. 自由度. 33.00. 有意水準. 0.05.

(4) 5. 竣工年別にみる形態区分. 図 13 は竣工年別に形態区分の割合を示している。. SG 型はどの年も 40% 付近にありその存在は一番多い。 その次に、AA 型と AC 型が 20 〜 40% 付近に推移し ている。AC 型の曲線を含む直交グリッド型は 93 年の. 形態区分の割合 (%). 5-1. 各年の形態区分の割合. SG 型 AA 型 AC 型 NG 型. 極値以降 00 年代では約 20% も減少している。その一 方で、SG 型と AA 型の値が 00 年代では比較的多くなっ ていることが分かる。また、NG 型は割合の変化が特 にないことが分かる。. 図 13.竣工年別にみる形態区分の割合. (AC 型)は、88、93 年に割合が高くなることが分かっ た。この頃、日本では、バブル景気という資産価格が 上昇し好景気にわいていた時期である 10)。図 14 の黒 線は、延べ床面積あたりの建築物工事予定額を年別に 事額も他年と比較して高い数値を示していることが分. AC 型の割合. →. 竣工時. 表したものである。この好景気に便乗するように、工. 工事費. AC 型の割合 (%). 前節において直交グリッドに曲線を付加した図形. 着工時. 延べ床面積あたりの工事費 ( 万円/㎡ ). 5-2. バブル期における図形の特徴. かる。ここで、着工から竣工までを約一年間と想定す 図 14.工事費と AC 型の割合の関係. ると図 14 の点線で表すことができる。さらに AC 型の. 内部での機能的な違いがこうした差を生み出した. グラフを重ねあわせると工事費と図形の関係について. のではないかを推察できる。. 経年変化を追うことができる。この比較において、工 事費は極値が 1993 年にありその後一気に下降してい. 3. 経済の動きと図形の変化について関連性があると. る一方で、AC 型も 1993 年にピークを示すが、1998. 推察でき、とくにバブル期では、AC 型つまり直交. 年まで緩やかに下降し、その後一気に低い値を指して. グリッドを円形でくずした図形が流行していたと. いる。つまり、バブル崩壊後も工事費に関わらず約5. いえる。. 年間「流行」として直交グリッドに曲線を付加した図. 7. おわりに. 図形と事例のパラメータを追いかけることで、おお. 形が比較的多く存在していた。 6. まとめ. まかなではあるが、図形の発生要因やその特徴を見い. 1. 建物の高さ、建築面積、建ぺい率と図形の複雑さ. 済、法規といった解決しなければならない問題がたく. 本論では以下の 3 点を明らかにした。. だすことができた。建築を設計する際、敷地状況、経. については関係性が認められた。特にその中でも、. さんあるが、そうした問題に対して設計者が立ち向か. 建物の高さと図形への依存度が強かった。. い、そこでの試行錯誤の結果が「図形」として現れて. 2. 狭く不整形な敷地に対して、 「集合住宅」と「商業施. いるのかもしれない。今回の分析結果では感覚として. 設」はできるだけ敷地の形状をオフセットさせた. 理解していた部分が多かったが、統計処理によって、. ような図形であるのに対して、業務施設はヒダ状. 何が何倍大きくなったのか、というように具体的な数. にして敷地に合わせているという違いがみられた。. 字として表すことができた。. 【注釈】. 1) 特殊事例とは、仮設建築、分棟、フォリー/東屋、インテリアデザイン、 改修の場合を総称したもので、対象から外している。 2) 参考文献Bをもとに11に分類した。そのうち、 「居住」 は 「住宅」 と 「集合住宅」 に細分化することがでる。さらに 「商業」 を追加した。 「医療」 には、 「クリニッ ク」 や「福祉」 が含まれている。 3) 図2に掲載されてある図面は1988年4月号p.290を参照 4) 算定用建築面積を100㎡にするためにCAD上でトレースした図面をx、y 両軸10/√S倍させた。このときのSはトレースした図面の建築面積をさす。 5) 相関係数は、2つの変数間の相関関係を数値的に判断するときに使われる 指標である。相関係数は、通常rという記号で表され、-1から1までの値 をとる。相関係数の符号は、正(+)のときには、正の相関関係があること を、負(−) のときには、負の相関関係があることを示す 6) 回帰直線は、傾きがx,yの標準偏差によって決定されそのばらつき具合を 把握する手段として用いられるが、ばらつき方が明らかに異なっていても 同じ回帰直線となることもあるので注意が必要である。しかし、今回はお おまかにそのばらつき具合を把握するためなのでこの手段を使った。 7) カイ2乗検定は「観察された事象の相対的頻度がある頻度分布に従う」とい う帰無仮説を検定するものである。この値が、基準値(棄却値)を超えれば. 帰無仮説が棄却されることになる。つまり、関係があるといえる。 8) 調整化残差(d)は実測値と期待値の差を示しさらに平均0,標準偏差1の正 規分布に近似的に従う値のことである。dの絶対値が2以上のものは、特 徴的な分布を示しているということができる。 9) 参考文献F参照 10) バブル景気は1986年12月から1991年2月までの51 ヶ月に日本で起こっ た資産価格の上昇と好景気、及びそれに付随して起こった社会現象である。 ただし、多くの人が好景気の雰囲気を感じ始めたのは1988年からで、崩 壊後1992年末頃までバブルの余韻が色濃く残っていた。 11) 図15,16は参考資料Aの1988年11月号p243,247を参照した。 【参考文献】. A) 新建築社「新建築」1988,1993,1998,2003,2008年(計60冊) B) 日本建築学会「コンパクト建築設計資料集成」 丸善株式会社2005年 C) 建設物価調査会「建築統計年報」2012年 D) 平見真一「バブル経済はなぜ発生し、崩壊後日本経済はどう変化したか」 E) 国土交通省資料「地価公示の推移」 F) 内田治「EXCELによる統計解析」2000年9月東京図書株式会社 G) 上田太一郎「Excelで学ぶ回帰分析入門」2004年オーム社 開発局. 28-4 .

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