2017年9月
株式会社 三井住友銀行
コーポレート・アドバイザリー本部 企業調査部
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目次
1.水産物の需給・価格動向 3 2.国内市場における各事業者の動向 7 3.水産事業者の今後の戦略の方向性 (ご参考資料) 水産物輸出拡大の可能性 13 17国内の水産物消費量は、日本人の肉食化や嗜好の多様化等を背景に01年をピークに減少傾向で推移しています。 一方、世界全体では、新興国における個人所得の増加や健康意識の高まりに加えて、これら地域での流通システム の整備等インフラ面の改善もあって、特に中国やインド、インドネシアを中心に増加傾向にあります。
1.水産物の需給・価格動向~需要面
国内水産物消費量推移 世界水産物消費量推移
出所: 農林水産省「食料需給表」を基に弊行作成 出所: FAO「FAOSTAT (Food Supply - Livestock and Fish Primary Equivalent)」を基に弊行作成 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0 50.0 0 200 400 600 800 1,000 1,200 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 水産物消費量 肉類一人当たり年間消費量 魚介類一人当たり年間消費量 (年度) (万トン) (kg/人) 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 その他 ミャンマー ベトナム バングラデシュ フィリピン ロシア 日本 インド 米国 インドネシア 中国 (万トン) (年) (注)養殖用飼料等の非食用水産物は含まない
世界的な水産物の需要拡大が進む一方、供給面では、主力の漁船漁業では水産資源管理の影響等により生産量は 横ばいとなっており、足元は養殖による生産で需要増を賄う格好となっています。 一方、国内生産は需要低迷に伴って、漁船漁業、養殖共に減少傾向が続いている他、輸入も同様に減少しています。
1.水産物の需給・価格動向~供給面
世界の漁獲・生産量推移 国内の生産量・輸入量推移 出所: 農林水産省「食料需給表」を基に弊行作成 出所: FAO「Global Production Statistics」を基に弊行作成0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 内水面漁船漁業 海面漁船漁業 内水面養殖業 海面養殖業 (万トン) (年) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 生産 輸入 輸入比率 (万トン) (年)
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 マグロ類 カツオ類 ブリ類 タイ類 サケ・マス類 (年) (円/kg) 国内で需要減少が進む中、新興国での需要増や天候不順による供給力不足の影響を受けて、国内水産物価格は年 平均成長率(CAGR)+1.6%と上昇傾向で推移してきました。 品目別にみれば、世界的にも需要の高いマグロやサケ等を中心に価格変動は大きく、水産関連事業者にとっては価 格変動リスクへの対策が重要となっています。
1.水産物の需給・価格動向~国内価格推移
国内水産物価格推移 国内水産物価格推移(主要品目) 0 200 400 600 800 1,000 1,200 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (円/kg) (年) 出所: 東京都中央卸売市場HPを基に弊行作成 出所: 東京都中央卸売市場HPを基に弊行作成 CAGR (02年~16年) +1.6% CAGR (02年~16年) +2.3% CAGR (02年~16年) +6.8%2.国内市場における各事業者の動向~国内流通環境
産地卸売市場
消費者
小売・
外食
消費地卸売市場
海外生産者・
輸出事業
者
輸入事業者
卸売事業者
仲卸事業者
国内
海外
輸入事業者
水産物の流通には「市場内取引」と「市場外取引」があります。このうち市場内取引は、その機能に応じ「産地卸売市場」と 「消費地卸売市場」に大別されます。「産地卸売市場」で水産物を魚種、サイズ、品質等で仕分けされた後、大都市等消費 地に位置する「消費地卸売市場」等に出荷され、最終消費者に供給される仕組みとなっています。市場外卸売事業者
漁業事業者
出所: 農林水産省資料を基に弊行作成加工事業者
市 場 内 取 引
市 場 外 取 引
仲卸事業者
卸売事業者
従来は市場内取引が中心でしたが、大手小売・外食企業等、大口需要家の増加により、卸売市場を介さず、直接調 達する「市場外取引」が拡大しています(市場経由率<数量ベース>00年:66%→14年:52%)。 市場内取引の縮小を受け、卸売市場内の卸売事業者数は減少基調にあります。こうしたなか、各事業者では、市場 外取引の強化等、収益構造を変化させつつ事業に取組む動きもみられます。
2.国内市場における各事業者の動向~卸売事業者の動向
卸売市場における水産物の取扱金額と事業者数の推移 出所: 農林水産省「卸売市場データ集」を基に弊行作成 出所: 農林水産省「卸売市場データ集」を基に弊行作成 出所: 農林水産省「卸売市場データ集」を基に弊行作成 水産卸売事業者の売上総利益の内訳推移 水産卸売事業者(中央卸売市場)の業績推移(1社当たり平均) -1% 0% 1% 2% 3% 4% 5% 6% 0 50 100 150 200 250 300 350 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 1事業者当たり売上高 売上総利益率 営業利益率 (年度) (億円) 33% 17% 54% 60% 12% 23% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 00 14 委託手数料 買付収益 兼業収益 (年度) 0 100 200 300 400 500 600 700 800 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 中央卸売市場 地方卸売市場 中央卸売市場事業者 地方卸売事業者 (億円) (事業者数) (年度)卸売市場
(ご参考)水産物輸出拡大の可能性~卸売事業者の取組み
卸売市場法により市場外への販売が原則禁止されている卸売事業者の中には、市場外に卸売事業者や加工事業 者を設置することによって、自ら輸出販売先を獲得できるようにする他、消費ニーズをより肌理細かく把握し調達や加 工を行う等、輸出促進に向けた体制を強化する例もみられます。 また、羽田空港に近い大田市場を輸出拠点とする卸売事業者が増加する等、卸売市場の特徴を活かし輸出に取り 組む企業もみられます。 卸売市場を活用した事例 卸売市場 生産者等 A社 市場外 卸売事業者 国内小売/外食 輸出 生産者等 築地市場 豊洲市場 羽田空港 大田市場 仲卸事業者 仲卸事業者 大田市場は、水産取 扱額が築地市場の 2%程度にとどまるも のの、築地市場の豊 洲市場への移転を巡 る混乱がある中、 羽田空港に近く輸出 拠点として利便性が 高いことが注目され、 利用事業者が増えて おり、満室状態に近づ いています。 加工事業者 A社 A社グループ 加工事業者 調達先 の強化 顧客ニーズの把握販売先の獲得 商品単価の引上げ A社グループ 市場外 卸売事業者 国内小売/外食 輸出 市場外取引を活用した事例)水産物加工業界については、従業者数30人以下の小規模事業者が主体です。事業者数は小規模事業者を中心に減 少傾向にある一方、水産加工業の出荷額は横ばいに推移しています。 近年、「食の安全」という観点から、厚生労働省主導による全食品事業者へのHACCP(注)取得の促進が行われてお り、各社はHACCP認定施設を増やしています。
2.国内市場における各事業者の動向~水産加工事業者の動向
水産加工業の出荷額の推移と事業者数の推移 HACCP(注)認定施設数の推移 出所: 農林水産省「漁業センサス」を基に弊行作成 出所:水産庁資料を基に弊行作成 出所: 経済産業省「工業統計表」を基に弊行作成 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 水産缶詰/瓶詰 海藻加工品 水産練製品 塩干/塩蔵品 冷凍水産物 冷凍水産食品 その他 事業所数 (億円) (事業所数) (年) 4,295 6,120 2,668 3,412 1,242 1,551 277 346 32 36 0% 20% 40% 60% 80% 100% 2013年 2003年 1~9 10~29 30~99 100~299 300人以上 規模別工場数の比率の推移 192 217 228 244 260 268 253 254 252 262 284 17 19 21 21 21 23 27 28 29 35 42 0 50 100 150 200 250 300 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 対米国 対EU (工場数) (年) (注)Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。食品製造時に工程上の危害を起こす要因(Hazard)を分析しそれを最も効率よく管理できる部分(CCP)を連続的に管理して安全を 確保する管理手法。
国内大手水産3社は、「水産卸」と「加工食品」の2つを事業の柱としています。「水産卸」では、安定的な供給を狙 い、生産量の管理が相対的に容易な養殖事業の強化を、「加工食品」では、食の簡便化ニーズへの対応等から惣 菜や冷凍食品の強化を中期経営計画で掲げる等、主力事業の更なる拡大を狙っています。 また、更なる拡大が見込まれている海外市場の需要を取り込むべく、各社とも海外事業を強化しています。
(ご参考)国内市場における各事業者の動向~水産大手各社の動向
大手3社合算売上高(セグメント別)と海外売上高比率(注) 出所: 各社有価証券報告書を基に弊行作成 出所: 各社有価証券報告書を基に弊行作成 (注)マルハニチロ、日本水産、極洋の3社 極洋の海外売上高は非開示(現状、国内売上高が90%超を占める)。 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 その他 水産卸等 加工食品 日本水産 マルハニチロ (年) (億円) 大手水産企業の経営戦略 国 内 完全養殖等、養殖事業の強化 惣菜等のロングライフチルド製品や加工食品の 機能性表示食品等、加工食品の高付加価値化 海外生産拠点の分散と拡大 養殖事業者の買収等 人気の高まる「日本食」としての ブランディング戦略 海 外同 業 者 ・ 仕 入 先 ・ 販 売 先 と の ア ラ イ ア ン ス 海外進出の加速
3.水産関連事業者の今後の戦略の方向性
水産卸売事業と水産加工事業は何れも需要の減少や不安定な供給という共通の課題を抱えています。こうしたな か、売上高増加、供給の安定化等を図っていく上では、それぞれの事業において、取扱商品の拡充や高付加価値 商品による単価の引上げを行う他、より川上(生産)・川下(小売)に事業範囲を拡大することも選択肢として考えら れます。 利益率改善の施策 売上高増加の施策 調達価格の変動 リスク低減の施策 輸入国の拡大 調達の安定化(養殖による調達等) 機能性食品 (EPA, DHA等)、 食の簡便化ニーズに 対応した 高付加価値商品 取扱商品の拡充等による国内シェアの拡大 生産工場のHACCP 認定取得 卸売事業 加工事業 調達の多様化 販売量増加 商品単価の 引上げ コスト削減 戦略の方向性 具体的なアクション 流通・加工等の業務効率化 仕 入 面 販 売 面 ブランディングに よる高付加価値化 加工事業 への参入 調達の多様化 販売量増加 商品単価の 引上げ3.水産関連事業者の今後の戦略の方向性~アライアンスの動向①
出所: レコフM&Aデータベースより弊行作成 目的 企業名 (業種) 相手企業名 (業種) 時期 概要 グローバル・オーシャン・ ワークス(GOW) International Marine Products(IMP) (食品) (食品卸〈米国〉) 那覇魚類 西崎食品、世界冷凍 (食品) (食品) アライアンスシーフーズ(ASF) Hofseth International AS (食品卸) (食品〈ノルウェー〉) 神戸物産 ほくと食品 (食品卸) (食品) マルイチ産商 信田缶詰 (食品卸) (食品) アライアンスシーフーズ (ASF) Hofseth Biocare ASA(HBC) (食品卸) (食品〈ノルウェー〉) 12/12月 横浜冷凍は全額出資子会社の水産卸会社ASFを通し て、ノルウェーの水産加工会社に資本参加。 事業の継続が難しくなった水産加工のほくと食品を買 収。三陸で水揚げされた魚を加工食品として自社の業務 用スーパーで販売。 養殖ブリ等の加工販売を行うGOW社は、米国への販売 強化を目的に水産物卸の米IMP社を買収。 15/11月 16/11月 水産缶詰を製造・販売する信田缶詰を買収。 横浜冷凍は全額子会社である水産卸売のASFを通じて、 サーモンの頭、皮、骨等の端材を原料としたサプリメント やフィッシュミールの製造販売のHBCに資本参加。 取扱商品の拡充 取扱商品の拡充 商品単価の引上げ 16/08月 15/07月 海外進出の加速 10/11月 冷凍カツオ、マグロを主に取り扱う那覇魚類がモズクや 惣菜を取り扱う西崎食品と冷凍水産物加工販売の世界 冷凍を吸収合併。
3.水産関連事業者の今後の戦略の方向性~アライアンスの動向②
出所: レコフM&Aデータベースより弊行作成 目的 企業名 (業種) 相手企業名 (業種) 時期 概要 中央魚類 東京北魚 (食品卸) (食品卸) ニチモウ San Arawa (食品卸) (農林水産〈アルゼンチン〉) 魚力、松下水産、 木村水産、坂本水産 ヨンキュウ (その他小売) (食品卸) アライアンスシーフーズ(ASF) Fjordlaks Aqua AS (食品卸) (農林水産〈ノルウェー〉) 輸入国の拡大
養殖による調達
横浜冷凍の全額子会社であるASFとノルウェーの水産加 工会社のHofseth International ASが共同でノルウェー のサーモン養殖会社を買収。 鮮魚小売りの魚力、養殖事業の松下水産、木村水産、 坂本水産の4社が水産卸のヨンキュウに資本参加(ヨン キュウは養殖魚の確保を目的とした提携)。 12/02月 16/06月 10/03月 アルゼンチンの漁業会社であるSan Arawaに資本参加。 同社が生産する冷凍すり身の独占販売権を取得。 同業者の東京北魚に出資し、関連会社とする。足立市場 での事業を統合し、適正規模に集約化。 業務効率化 11/11月
0 10 20 30 40 50 60 70 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 輸出量 輸出金額 (万トン) (億円) (年) 日本国内からの水産物輸出は、2011年の福島第一原子力発電所の事故による各国の輸入規制の影響等により一時的 に落ち込んだものの、世界的な魚価の上昇が続いたことも影響して金額ベースでは増加傾向で推移しています。 政府の取組では農林水産業を成長産業にしていくため拡大し続けるグローバルマーケットに向けた輸出強化の取組を 行っており、2019年に農林水産物の輸出額を1兆円にする目標を立て、様々な施策を行っています。
水産物輸出拡大の可能性~輸出量・金額の推移と政府施策の概要
輸出量・輸出金額の変化 農林水産物の輸出額推移と目標額 ①国内生産体制の整備 ・養殖生産の拡大 ・高品質な冷凍製品の生産、低コスト生産モデルの構築 ②市場の拡大 ・水産物のブランディング化 - JETROや業界団体による各国での商談会 ③輸出先国・地域の規制・ニーズに応じた輸出環境の整備 ・水産加工施設のHACCP対応推進 ・輸出に係る規制の緩和、手続きの簡素化 ・卸売市場法の改訂により、輸出に係る卸売業者の第三者販売可能化 出所: 財務省「貿易統計」を基に弊行作成 CAGR (11年~16年) +8.7% 政府が取り組む主な施策 CAGR (16年~19年) +9.9% 出所: 農林水産省資料を基に弊行作成水産物輸出拡大の可能性~輸出先シェアと輸出品目
輸出国別にみると香港が安定して伸びている他、中国向けが大きく伸びています。品目別に見ると、真珠やホタテ貝 が変わらず輸出の上位を占める中、近年では政府やJETROのブランディング強化によりブリが上位に入っています。 輸出のターゲットとなる水産物の特徴として、①希少性がある、②安定して均一な品質を確保できる、③ブランド力が ある、が挙げられ、これらに当てはまる水産物の輸出は今後も拡大していくとみられます。 輸出のターゲットとなる水産物 出荷国別・品目別水産物輸出金額の推移 希少性があるもの 安定して均一な品 質を確保できるもの ブランド力 のあるもの ●国内の成功例 <ブリ(欧米向け)> ・欧米近海で取れない水産物 ・脂の乗った特別な味が人気となっ ている。 ・日本食レストラン以外にもフィレで 供給が行われている。 ●他国成功例 <ノルウェー産サケ> ・日本近海でもとることが出来るが、加 工食品を製造するに当たり安定して 均一な品質が求められ、人工種苗等 を活用したノルウェー産養殖鮭が輸入 されている。 ●国内成功例 <ナマコ、ホタテ(中国向け)> ・中国で非常に高い人気を有しており、 日本産ではなく北海道産という地域ブ ランドが確立されている。 ・帆立等の貝類は近年寿司ネタとして 消費が開始されつつあり、衛生面で生 食に適する処理がなされていることも 優位性がある 出所: 財務省「貿易統計」を基に弊行作成市場 空港