岡 監 第 1 5 4 号 平 成 1 6 年 6 月 4 日
請 求 人 氏 名 省 略
岡山市監査委員 服 部 輝 正
同 松 井 健 二
同 髙 月 由起枝
同 安 井 聰
住民監査請求に係る監査の結果について(通知)
平成16年4月13日付けで,地方自治法(昭和22年法律第67号)第242 条第1項の規定に基づき提出された岡山市職員措置請求書について,監査した結果 を同条第4項の規定により下記のとおり通知する。
記 第1 請求の受付
1 請求人の住所・氏名 省略 2 請求書の提出日
平成16年4月13日 3 請求の要件審査
本件請求は,地方自治法第242条所要の形式的要件を満たしているものと 認め,監査を行うものとした。
第2 請求の要旨
請求人が提出した岡山市職員措置請求書,補正書及び陳述による請求の要旨 は,次のとおりである。
1 駐車場の看板を撤去すること(別添図③部分) 2 駐車場の使用許可を出さぬこと(別添図③部分) 3 畑を耕作しないこと(別添図④部分)
これらは,本件市道敷が,道路法(昭和27年法律第180号)第32条第 1項に基づく道路の占用許可(以下「占用許可」という。)を受けずに,不法 に駐車場,駐車場看板用地,畑として占用されており,市道管理者である岡山 市長(以下「市道管理者」という。)により駐車場看板の撤去を当該看板所有 者に対し請求すること,占用許可を受けないまま使用されている駐車場部分に ついては,何人に対しても今後も占用許可しないこと,畑の耕作を禁止するこ とを措置請求するというものである。
なお,畑の部分については,既に耕作はなされていない。
4 公の場所を迷惑も考えず容易に許可しないこと(別添図①部分)
5 県からの借用地は南側花壇から喫茶店の場所まででバラック小屋なら可であ った。それを無断で拡げ,二階建てに建て替えたので明らかに違法建築であっ て,直ちに撤去させるべきである。(別添図①部分)
6 違法建築であるため,基礎工事の不備で用水側のコンクリート壁部分に亀裂 が入り,危険な状態である。何らかの被害を受けたときは,市当局に十分な補 償をお願いしたい。(別添図①部分)
7 全面撤去またはもとのバラック小屋に戻すこと。戻した後は出入り道をやり 直すこと。(別添図①,②部分)
これらは,市道管理者により本件市道敷に存する二階建て建物(以下「当該 建物」という。)の占用を目的としてなされた占用許可(許可年月日平成14 年4月1日,許可番号第4140903号,以下「本件占用許可」という。) について,当該建物が当初県から占用許可されたバラック小屋とは相違してお り,建築基準法(昭和25年法律第201号)第6条第1項に基づく確認(以 下「建築確認」という。)のない違法な建築物であって,本件市道敷を当該建 物の敷地として占用許可をすることは違法若しくは不当であり,本件占用許可 を取消して,当該建物の撤去を所有者に請求しバラック小屋に戻させること及 び請求人宅地への出入り道をやり直すこと,当該建物又は土留工作物が倒壊等 して請求人が被害を被ったときは,十分な補償の措置を請求するというもので ある。
8 以上の請求が不可能な場合は請求人宅の移転を希望する。 第3 監査対象部局
第4 陳述の聴取
1 請求人への証拠の提出及び陳述の機会の付与
地方自治法第242条第6項の規定に基づき,平成16年4月28日,請求 人に対して新たな証拠の提出及び陳述の機会を与えたところ,請求人から陳述 に関して代理人に委任する旨の書面の提出があり,これを認めた。
請求人の代理人が主として請求に関する陳述を行った。また,新たな証拠と して,市道管理者が本件市道敷を出入り道として占用許可した許可書の写が提 出された。(別添図②部分)
2 関係職員の陳述の聴取
地方自治法第242条第7項の規定に基づき,平成16年4月28日,関係 職員の陳述の聴取を行ったところ,本課は以下のように述べた。
本件占用許可は,当初,昭和53年1月に当時の県道岡山玉野線の県道管理 者である岡山県岡山地方振興局長が,既存の当該建物の占用を目的として占用 許可し,その後,県道から市道へ引継いだ際に市道管理者が引き続き占用許可 して,現在まで継続更新しているものである。
ただし,当時の占用許可関係書類は既に廃棄処分されて現存せず,昭和53 年1月以前の許可状況の詳細は不明である。
本件市道敷の不法占用部分は,舗装がされていない市道の法面部分で,道路 交通上かつ道路管理上にも特に著しい支障は認められないが,道路構造上必要 な部分である。不法占用の事実については,以前から問題として認識しており, 不法占用者に対し,何度も口頭による駐車禁止や駐車場看板撤去を求める行政 指導を行い,現地にロープを張って閉鎖を試みるなどの措置を講じてきてはい るが,未だに効果があがっていない。
不法占用の状態を放置している訳ではなく,今後も実効ある措置を検討し, 対応していきたい。
畑の部分は,現在耕作はなされていない。
なお,不法占用部分の占用許可については,今後もするつもりはない。 また,都市整備局都市建築部建築指導課は,以下のように述べた。
平成15年9月に当該建物について,建築確認がなされていないことが判明 し,現在,当該建物所有者に対し,是正に向けて行政指導中である。
土留工作物についての構造上の危険性については,建造当時の図面もないた め不明である。
第5 監査の実施
畑が本件市道敷か否か,当該建物が本件占用許可部分に存するか否かを確認し たところ,すべて該当することが認められたので,合議により監査した。 第6 監査の対象となる請求
請求書,事実を証する書面及び請求人の陳述並びに関係職員の陳述及び提出 された関係書類から総合的に判断し,監査対象となる請求は次のとおりである。 1 駐車場の看板を撤去すること
この請求は,看板設置行為を放置することにより,本件市道敷が取得時効さ れるおそれがあるにもかかわらず,看板撤去請求をしないことは,財産の管理 を怠る事実の問題となり監査の対象となる。
2 駐車場の使用許可を出さぬこと
① この請求のうち,駐車場として付近住民が使用していることは不法占用で あり,何らかの措置を講じないことにより取得時効されるおそれがあるとい う意味において,財産の管理を怠る事実として監査の対象となる。
② しかしながら,駐車場として占用許可をするかしないかは,将来の同権限 行使の問題も含めて財務会計行為ではないため,監査の対象とはならない。 3 畑を耕作しないこと
この請求については,過去においては耕作されていたこともあるが,現在は 畑として利用されていないと請求人も述べており,本課もその事実を確認して いるため,財産の管理を怠る事実に該当しない。
4 公の場所を迷惑も考えず容易に許可しないこと
この請求にいう「許可」とは,占用許可のことであり,その取消を求めるも のであるが,行政処分の取消を求めるには行政事件訴訟によるべきものであっ て,例えば,許可を受けた者が使用料を納付していないという状態が継続し, 消滅時効にかかりそうであるにもかかわらず放置しているというような事実で もあれば,その債権放置が財産の管理を怠る事実として監査の対象となるべき ことはあるものの,占用許可をすること又はその取消をすることは財務会計行 為ではないため,監査の対象とはならない。
5 県からの借用地は南側花壇から喫茶店の場所まででバラック小屋なら可であ った。それを無断で拡げ,二階建てに建て替えたので明らかに違法建築であっ て直ちに撤去させるべきである。
この請求は,第三者が占用許可を受けた土地に建築された建物について,違 法建築物であることを理由に除却命令を発することを求めているものであるが, 財務会計行為とは何らの関係もないことであり,監査の対象とはならない。 6 違法建築であるため,基礎工事の不備で用水側のコンクリート壁部分に亀裂
償をお願いしたい。
この請求は,規制権限の適正な行使を求め,それがなされないときは,損害 賠償の予約を求めるものであるが,そもそも住民監査請求は,客観争訟の一種 として認められたものであり,請求人の主観的権利・利益の保護を目的とした ものではないので監査の対象とはならない。
7 全面撤去またはもとのバラック小屋に戻すこと。戻した後は出入り道をやり なおすこと
この請求も請求人の主観的権利・利益の保護を求めたものであり,監査の対 象とはならない。
8 以上の請求が不可能な場合は請求人宅の移転を希望する。
この請求は,監査請求が認容されなければ,市の費用負担により移転をした いという様に解されるが,監査の対象とはならない。
第7 監査の結果及び判断 1 結果
監査の結果は,次のとおりである。
第 6 − 2 − ② , 第 6 − 3 , 第 6 − 4 , 第 6 − 5 , 第 6 − 6 , 第 6 − 7 , 第6−8については,請求を却下する。
第6−1,第6−2−①については,請求を棄却する。 2 理由
(1)却下について
住民監査請求は,公の利益としての地方財務行政の適正な運営を確保する ことを目的とし,個人的権利・利益を保護することを目的とはしていない。 そして,その対象となる事項は,普通地方公共団体の執行機関又は職員に よる違法又は不当な①公金の支出,②財産の取得・管理・処分,③契約の締 結・履行,④債務その他の義務の負担,⑤公金の賦課・徴収を怠る事実,⑥ 財産の管理を怠る事実に限られており,財務会計上の行為又は事実としての 性質を有するものである。
また,住民監査請求は,地方自治法の中でも財務の章に規定されているこ とからも,普通地方公共団体における行政一般が公正に行われることを図る ためのものではなく,普通地方公共団体における財務会計上の非違を是正す る制度であることは明らかである。
って普通地方公共団体の有する財産である道路敷地の財産的価値が何らかの 影響を受ける場合であり,財産的価値に何の影響も生じないものは,住民監 査請求の対象とはならないものと解するべきである。
以上の理由により,財務会計上の行為又は事実と解されない請求第6−2 −②,第6−3,第6−4,第6−5,第6−6,第6−7,第6−8につ いては,請求を却下する。
(2)棄却について
公共用財産に関しては,公共用財産が,①長年の間事実上公の目的に供用 されることなく放置され,②公共用財産としての形態,機能を全く喪失し, ③その物の上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが,そのため実際上公 の目的が害されるようなこともなく,④もはやその物が公共用財産として維 持すべき理由がなくなったという条件がすべて満たされた場合には,黙示的 に公用が廃止されたものとして取得時効の成立を妨げないものと解するのが 相当とする最高裁判所昭和51年12月24日第二小法廷判決があるが,本 件においても黙示の公用廃止が問題になると考えられる。
本件不法占用部分については,本課は何らの措置も講ぜず放置しているわ けではなく,不法占用者に対し,駐車禁止,看板撤去の行政指導を行ってき ており,平成4年には杭打ちをしてロープによる閉鎖の措置を講じたにもか かわらず,不法占用者により取り壊されたという経過もあり,不法占用の状 態が長年の間放置され,占有が平穏に継続されているとは言えない。
また,本件不法占用部分は,道路の法面部分で,直接通行される路面部分 を支える道路の物理的構成部分であり,一般交通の用に供するという市道本 来の機能を発揮するためには,他の道路構造物と切り離されることなく一体 となることが必要不可欠であり,道路の形態を保全するために構造上重要な 機能を有しているのであるから,公共用財産としての形態,機能を全く喪失 しているとも言えない。
したがって,本件不法占用部分は,公共用財産として維持すべき理由があ り,黙示の公用廃止の要件には該当しない。
加えて,本年3月には不法占用者の妻及び子が来庁し,不法占用部分を岡 山市が所有することを前提に「車の台数を減らし,自宅敷地内に駐車しよう と思っている。」と述べており,以上のことから,現時点で時効取得される おそれはなく,違法又は不当な財産の管理を怠る事実があるとまでは言えな いので,第6−1,第6−2−①についての請求は認められない。
3 監査委員の意見
廃止,道路の維持,修繕,道路占用の許可,通行の禁止,監督処分など道路の 管理に関して権能と義務を有し,供用中の道路などに対しては,道路本来の機 能を発揮させるために,障害の防止,除去その他の規制等を行い,道路の保全 に努めて円滑な道路交通を確保するなど,道路行政上の責務を負っている。