企業再生税制 の研究 一債務 の株式化 と債務免 除益課税 ―
成嘆大学大学院
経済経営研究科 博士後期課程
経営学専攻
D132101
柳綾
子
現在 景気 は回復傾 向にあ るが、経 営危機 状態 に陥 る大企業 も少 な くない。 その よ うな企 業 は、増資 、債務 の株 式化 (Debt Equity Swap:DES、 現物 出資型 の債務 の株 式化
)や
債務免 除等 の様 々な手法 を用 いて財務 内容 の改善 を図 り、企業 を再生・存続 させ よ うとす る。
その際 に問題 となるのは、多額 の債務免除益等が計上 され た場合 、法人税 が課 され る と企 業再 生 を阻害す るおそれ があ るこ とであ る。 この問題 点 を解決す るために、法的整理手続 や一定の私的整 理手続 に よ り債務免 除益等 が計上 され た場合 に、期限切れ欠損金 の損金算 入 お よび資産 の評価損益 の計上 が認 め られ 、 さらに一定の場合 においては青色欠損金 の繰 越控 除限度額 が適用除外 とな り、通常の企業 に比べて多額 の租税負担が免 除 され る等 の優 遇措置 (企業再生税制
)が
講 じられ てい る。しか し、 この企業再生税制 は、政策的 な意味合 いが強 く、税法 の基本原則 である租税法 律 主義・ 租税公 平主義 、お よび所得計算原理 、 さらには企業経営 に対す る税制 中立性 の視 点か らす る と望 ま しくない面 もある。す なわち、企業再生税制 は、上記 の よ うな優遇措置 に よ り再生時 に租税負担 を軽減 ない し排 除できること等か ら、同一産業 にお ける企業 の市 場競争 に も歪みが生 じる可能性 もあ る。
本研 究は、上述 した研 究課題 の下で、 これ まであま り議論 され て こなか った租税 の公 平 性 。中立性 の視 点 か ら、企業再生税制、特 に
DESと
債務免 除益課税 について分析・検討 を 試 み、 さらにア メ リカお よび ドイ ツの企 業再生税制 と比較考察す ることに よ り、新 たな問 題 の発 見 と解決策 を検討 し、理論 と実践 において整合性 の とれ た新たな企業再生税制 の構 築 を試 み た ものであ る。まず 、
DESに
ついては、東京地方裁判所平成21午
4月 28日判決 の検討 を通 じて、法 的性格 お よび適正 な税法上の課税 関係 を検討 し、私法上 は1つの取引であるが、資本等取 引の要素 と損益取 引 (債務免 除)の
要素 の2つが混在 してい る取 引である と解 した。 した が つて、税法上、債務 の額面額 と現物出資 され た債権 の時価 の差額部分 は、債務 を免 除 し た こ とと同様 の効果があ り、債務免 除益 として法人税法第22条 2項
の 「その他 の取引」1‐
として益金概念 に該 当す る とい う結論 に至った。 また、
DESと
擬 似DESの
課税 につ いて も検討 を加 え、本来 は同様 の課税 関係 とみ るべ きであ る と した。さらに、欠損金 の繰越控除制度お よび事例 について、租税 の公 平性 。中立性 の視点等 か ら論究 した。特 に、繰越控除制度 にお ける期 間制 限については、期限切れ欠損金 とい う概 念 が導入 され てい る。企業再生税制 においては、要件 を満 たせ ば債務免 除益相 当額分 の期 限切れ欠損金 を優 先的 に損金算入 で きる点 について、課税 関係 が終了 した損金 につ いて遡 及 して適用す るこ とは望 ま しい こ とではな く、また期限切れ欠損金 の正確 な把握 もできず、
適 正 な課税所得計算 を歪 めてい るこ とか ら、税法理論 か ら逸脱 してい る と考 え られ る。
また、アメ リカお よび ドイ ツの債務免 除益課税 の法務 。税務 について も比較検討 を行 つ た。アメ リカにおいては、Chapterll適用会社 は、債務免 除益が総所得不算入 とな るかわ りに、将来の所得 を減額 させ る恩恵項 目である租税属性 (Tax attributes)を 減額す る とい った処理方法が とられてい るが、租税属性 を超 える債務免 除益 については総所得不算入 と な るため、再生会社 ではない会社 との租税 の公平性 。中立性 は図 られ ていない とも考 え ら れ 問題 が あ る。 そ して、
ドイ ツにおいては、税法上原則 として、欠損金 は無期 限に繰 り越 す こ とがで きるが、控除制 限措置 が導入 され てい る。なお、再生利 益(Sanierungsgewinn) 課税 につ いては、
2008年
法人税 法8c条
が新 たに設 け られ 、5年
以 内に直接 的 あるい は間 接 的 に出資者 の権利や議決権 に変更が生 じた場合 、繰越欠損金 はその持分割合 だけ しか再 生利益 と相殺 できず 、残余分 はそのまま とす ることと変更 され た。 この よ うに、公正 な市 場競争 を維持す るため、税法上 において も詳細 な処置が講 じられ てい る点については評価 で きる。以上 の よ うな内容 で考察 した結果 、企 業再生時での期 限切れ欠損金 の適用 を廃止 し、青 色欠損金 を超 える債務免 除益 に対 しては課税 を繰延べ ることを提 唱 した。企業再生税制 は、
会社 更生法 。民事再 生法 。私的整理 ガイ ドライ ン等 の他 の法律や規定 と密接 に関わつてお り、それ らの要請 。目的 に対 して税制 が阻害 させ るよ うな取扱 いがな され るよ うであれ ば、
一定の配慮 が必要である。 しか し、その税法 による配慮 はあ くまで、他 の法律 の 目的 を達 成す る こ とを援助す るまでであ り、税法上公 平性 。中立性 が保 たれ ないのであれ ば問題 で あ り、 目的達成以上の配慮 は過度 な優遇 にあた るため適 当 とはい えない。今後、経済 の状 況 に よ り企 業再生税制 の必要性 。重要性 は高ま る こ とも踏 まえて、租税 の公平性 。中立性 の観 点、市場競争 に影響 を与 えない よ うな法整備 。税制措置 を講ず ることが必要である。
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