博士( 工学)岡 和彦 学 位 論文 題 名
OPTICAL HETERODYNE POLARIZATION INTERFEROMETRY FOR DYNA /IIC PRECISION METROLOGY
( 動的高精度計測のため の光ヘテロダイン偏光干渉 法)
学位論文内容の要旨
光ヘテ口ダイン検出を用いた干渉計は,測定対象の変位とビート光電流の位相出カが線形の関 係にあり,また,光源強度の変動や電子回路に起因する雑音の影響を受けにくいなどの優れた特 徴を持っている。特に,直交2周波成分を有するレーザビームを用いた光ヘテ口ダイン偏光干渉 法は,現用の偏光計測法の中で最も高感度であり,物質の光学的異方性などを研究する手段とし てもその有用性が広く認められている。しか.しながら,この偏光干渉計には,直交2周波光源の 偏光軸の調整の繁雑さなど,種々の未解決の問題があり,これらが従来,光ヘテ口ダイン偏光干 渉計測法の応用分野を制約する大きな要因となっていた。この問題を背景として,本論文では新 しい光ヘテ口ダイン偏光干渉計測法を述べるとともに,その偏光計測分野への応用を示す。本論 文は7章で構成されている。以下,各章にっいて概要を述べる。
第1章は序論で,光ヘテロダイン干渉計測法に関する歴史的背景と研究動向を概説し,本研究 の目的にっいて述べている。
第2章では,偏光状態の時空間分布計損lJを実現する目的で開発された光ヘテ口ダイン干渉偏光 計測法と,その手法を空間周波数領域に拡張した干渉偏光計測法にっいて述べている。前者の偏 光計では,被測定楕円偏光は光検出器アレイ上で直交2周波参照光と重畳され,各アレイ素子か らビート光電流が得られる。異なる中心周波数を持つ2っのビート成分は,被測定楕円偏光の互 いに直交する偏光成分の複素振幅の情報を有している。このビート光電流の時間に関するフーリ 工成分から偏光状態の時空間分布の決定に必要なパラメータが抽出される。一方,後者の偏光計 では,偏光方向が互いに直交した2っの参照直線偏光(同一周波数)が用いられる。それぞれの 参照光の波面を被測定光の波面に対して若干傾けておくと,2種類の干渉縞が光検出器アレイ上 に生じ,それぞれの空間周波数スペクトルから偏光状態の分布を決定できる。これらの干渉偏光
計の 特徴は ,光 学系の 回転検 光子な どの機 械的 可動部 を必要 とせず ,か つ,一個の光検出器アレ イの みで偏 光計 を構成 してい る点に ある。 従っ て,時 間的に は検出 器の 時間周波数帯域内で,空 間的 には光 学系 で决ま る空間 周波数 帯域内 での 時空間 偏光計 測が可 能と なる。また,本法を光弾 性効 果を用 いた 応力解 析に適 用すれ ば,主 応力 差のみ ならず ,2っの主 応カの 向き と大き さを独
立 に 決 定 で き る 。
第3章で は,複 屈折の 高精 度測定 を目的 として 開発 された ,光ヘ テロダ イン偏 光干 渉計に っい て 述 べ てい る。本 干渉 計では ,直交2周 波光が 信号光 として 複屈 折サン プルに 入射さ れる 。被測 定 物体 のそれ ぞれの 複屈折 軸を 伝搬し た光波 は,偏 光ビー ムス プリッ タで分 割され,光検出器上 で 第3の 周波数 を持つ 局発光 と重 畳され ,ビー ト光電 流を生 ずる 。光電 流中に 含まれ る直 交偏光 間 のク 口スカ ップリ ングに よる 干渉成 分は, 周波数 フアル タリ ングに より除 去されるので,直交 2周 波 光 源の消 光比の 劣化や ,光 学素子 の偏光 軸のミ スアラ イメ ントな どの影 響を受 けず に複屈 折 計 測 が可 能とな る。 検証実 験によ り,信 号光の 消光 比が20 dB以上 で, 偏光ク ロスカ ップリ ン グ 誘 起 過 剰 誤 差 を 位 相 角 で1度 以 下 に 抑 え ら れ る こ と が 示 さ れ て い る 。 第4章で は,光 ヘテ口 ダイ ン偏光 干渉計 から得 られ るビー ト光電 流の位 相を広 帯域 ,かっ ,広 ダ イナ ミック レンジ で復調 する ための2種 類の位 相復調 法が述べ、られている。第一の方法では,
光 ヘ テ 口ダ イン干 渉計 から得 られた 信号ビ ート光 電流 と参照 ビート 光電流 をそ れぞれ2値 化し,
周 波 数 逓 倍 回 路(PLL)か ら 得 ら れ るパ ル ス を 用 い て両者 の立ち 上がり 時間差 から 位相復 調が ナ よさ れる。 この方 法を用 いる と,約20 kHz程度 までの 位相変 動を 実時間 で復調できる。試作さ れ た 位 相復 調回路 では ,ダイ ナミッ クレン ジ32汀 ,最小 検出可 能位相27t/128が得ら れて いる。
第 二の 方法て は,コ ンピュ ータ による デジタ ル信号 処理を 用い て位相 復調が なされる。光ヘテ口 ダ イン 干渉計 から得 られる 信号 ビート 光電流 をコン ピュ一 夕に 取り込 み,高 速フーリ工変換を用 い てフ ーリ工 変換す る。得 られ るフー リエス ペクト ルは低 周波成分と2っのビート成分を有する。
こ の う ち, ビート 周波 数を中 心とす る1っの成 分のみ を取り 出し ,逆フ ―リ工 変換す るこ とによ り ,ビ ート成 分の複 素振幅 の時 間変動 を求め ている 。参照 ビー ト光電 流にっ いても同様の処理を 施 し, その複 素振幅 変動を 求め る。両 者の偏 角の差 から, 信号 ビート 光電流 の位相の時間変化が 求 めら れる。 この手 法では ,実 時間で の位相 復調は 不可能 であ るが, ビート 位相の復調が比較的 広 帯 域 で 実 現 され る 。 実 験 によ り , 約4 MHzの 帯域 を 持つ位 相変動 が復 調され ること が示さ れ て いる 。
第5章で は,複 屈折フ ァイ バ伝搬 光波の 相関処 理シ ステム にっい て述べ られて いる 。この シス テ ム で は , 高 速で 変 動 す る 位相 変 動 の 相 関を 求 め る ため,PLLを 用いた 位相復 調器 が用い られ
ている 。ま た,局 発光を 用いた 光ヘテ 口ダ イン偏 光干渉 法によ り, ファイ バ伝搬光波の励起モー ド成分 のみ ならず 結合モ ード成 分(漏 洩成 分)に っいて も,そ の相 関処理 を可能としている。本 方式で は, 干渉計 の光路 差を無 くすこ とに より, 光源自 身のゆ らぎ が相殺 され,かっ,干渉計の 光路差 を可 変とせ ずに電 子的に 相関処 理が なされ るとい う特徴 を有 するの で,ファイバによる伝 搬光波 のゆ らぎの みにっ いて統 計処理 がな される 。また ,自己 相関 のみな らず,相互相関や伝達 関数も 求め られる 機能を 有して いる。 この ファイ バ伝搬 光波相 関処 理シス テムを用いると,従来 ほとん ど成 されて いなか った音 波や振 動な どの動 的環境 変動に 対す るファ イバ伝搬光波の応答特 性を調 べる ことも 可能と なる。 ファイ バの 長手方 向と横 手方向 に加 えられ た振動に対する応答特 性が調 べら れてい る。
第6章 で は, 機 械 的 変 位と温 度変化 の同 時測定 のため に開発 され た2重 ファ イバコ イルセ ンサ に っ い て 述 べ ら れ て い る 。2本 の 平 形PANDAフ ァイ バ を , 両 者の 主 軸 方 向 が 直交 す る 配 置 で コイル 状に 巻くと ,コイ ルの曲 率の変化に伴い,それぞれのりタデーションか逆符号で変化する。
このり タデ ―ショ ンの差 から機 械的変 位と 温度変 化が独 立に求 めら れる。 センサの感度はファイ バコイ ルの 巻き数 にほぼ 比例す る。検 証実 験によ り,感 度なら びに 外的擾 乱除去性能が確認され るとと もに ,振動 に対す る周波 数応答 特性 も調べ られて いる。
第7章 で は , 本 論 文 で 得 ら れ た 結 果 が 総 括 さ れ , 結 論 が 述 べ ら れ て い る 。
学位論文審査の要旨
直交2周波 成分を 有する レーザ ―ビ ームを 用いた 光ヘテ 口ダ イン検 出は, 信号光 波と局 部発振 光 波が 共通光 路を伝 搬する ため ,光学 系に起 因する 擾乱等 が相 殺され ,高安定かつ高感度偏光計 測 法と して, その有 用性が 広く 認めら れてい る。し かしな がら ,この 偏光干渉計測法には,直交 2周波 成分間 で生 ずるク ロスト ークや 繁雑 な光学 系の調 整など ,種々 ,未 解決の 問題が あり, 従 来 ,こ れらが 光ヘテ 口ダイ ン偏 光干渉 計測法 の利用 分野を 制約 する大 きな要因となっていた。本
弘 光
次 司
喜
利
良
啓
塚
倉
塲
中
大
朝
大
田
授
授
授
授
教
教
教
教
査
査
査
査
主
副
副
副
論文 は,こ れらの 諸問題 を解決 する ための 新しい 光ヘテ 口ダ イン偏 光干渉 計測法 の開発 研究を行 い, その偏 光計測 分野へ の多面 的な 適用を 示した もので ある 。
第1章 で 弦 ,光 ヘテ口 ダイン 偏光干 渉計測 法に 関する 研究の 歴史的 背景 と研究 動向を 概説す る とと もに, 本研究 の目的 と意義 を明 らかに してい る。
第2章 で は ,偏 光状態 の時空 間分布 計測を 実現 する目 的で開 発され た光 ヘテ口 ダイン 干渉計 測 法 が述 べ ら れ て い る。 直 交2周 波成 分 を 有 す るレ ー ザ ー ビ ームと ,これ ら2周波数 と異な る第3 の周 波数を 有する 可干渉 ナょレ ーザ ービー ムをア レイ型 テレ ビカメラ上で重畳し,3周波数成分の 光ヘ テ口ダ イン検 出を行 ってい る。 各アレ イ素子から得られるビ―ト光電流を計算機に取り込み,
時間 に関す るフー リ工成 分から ,偏 光状態 の時空間分布の決定に必要なパラメ一夕が算出される。
回転 検光子 等の機 械的可 動部を 必要 とせず ,かっ ,一個 のア レイ型 光検出 器を用 いてい るため,
時間 的には 検出器 の時間 周波数 帯域 内で, 空間的 には光 学系 で决ま る空間 周波数 帯域内 での時空 間偏 光計測 が可能 なこと が示さ れて いる。 また, 本光ヘ テ口 ダイン 干渉偏 光計測 法を光 弾性応力 解 析に 適 用 す れぱ ,応力 状態に ある光 弾性 材料の 主応力 差のみ ならず ,2っの主 応カ の向き と大 きさ を独立 に決定 できる ことを 示す ととも に,現 用の偏 光計 ではこ の決定 が困難 なこと が述べら れて いる。
第3章 で は ,複 屈折の 高精度 測定を 目的と して 開発さ れた光 ヘテ口 ダイ ン偏光 干渉計 が述べ ら れて いる。 本干渉 計では ,ビー ト光 電流中 に含ま れる直 交偏 光間の タロス トーク による 干渉成分 が ,第3の 周 波数 を持つ 局部 発振光 の導入 と周波 数フ アルタ リング により 除去さ れる ため, 直交 2周波 光 源 の 消光 比の劣 化や ,光学 素子の 偏光軸 のミ スアラ イメン トなど の影響 を受 けずに ,高 精 度複 屈 折 測 定 が 可能 で あ る 。 直交2周 波 成 分を 持 つ 信 号 光の消 光比が20dB以上 で,上 述の ク 口 ス ト ー ク が 位 相 角 で1度 以 下 に 抑 え ら れ る こ と が 実 証 実 験 で 明 ら か に さ れ て い る 。 第4章 で は ,光 ヘテ口 ダイン 偏光干 渉計か ら得 られる ビート 光電流 の位 相を広 帯域, かつ, 広 ダ イナ ミ ッ ク レン ジで復 調する ための2種 類の位 相復 調法が 開発さ れ,そ の動作 特性 が述べ られ てい る。こ れらの 位相復 調法を 振動 計測な どに用いると,沮lJ定対象の動的応答特性は従来の偏光 干 渉 計 よ り も 広 帯 域 , か っ , 高 精 度 に 調 べ ら れ る こ と が 示 さ れ て い る 。 第5章 で は ,複 屈折フ ァイバ 伝搬光 波の相 関処 理シス テムが 述べら れて いる。 このシ ステム で は, 干渉計 の光路 差を可 変とせ ずに 電子的 に遅延 時間を 作り ,自己 相関の みなら ず,相 互相関や 伝達 関数も 求めら れる。 このシ ステ ムを用 いて, ファイ バの 動的変 形によ る伝搬 光波の ゆらぎに 関す る統計 処理が 可能と なり, 従来 ,困難 だった 音波や 振動 などの 環境変 動に対 するフ ァイバ伝 搬光 波の統 計的応 答特性 が明ら かに された ことが 述べら れて いる。
第6章 で は , 機械 的 変 位と温 度変化 の同 時測定 が可能 な2重ファ イバコ イルセ ンサ の開発 につ いて 述べら れてい る。 実証実 験により,高感度測定及び外的擾乱除去性能が確認されるとともに,
振動 に対す る周波 数応 答特性 も調べ られる ことが 示さ れてい る。
第7章tま, 本論文 の総括 である 。新 しい開 発され た光ヘ テロ ダイン 偏光干渉計測法が偏光状態 の高 精度時 空間応 答特 性の研 究を可 能とす るとと もに ,偏光 計測の 分野ヘ 大きく貢献するもので ある ことが 結論づ けら れてい る。
これ を要す るに ,著者 は新し く開発 され た光ヘ テロダ イン偏 光干渉 計測 法の諸特性を明らかに する ととも に,そ の有 用性を 光弾性 解析, 反射鏡 の振 動測定 ,なら びに, 光ファイバの外的擾乱 に対 する伝 搬光波 の動 特性測 定によ って実 証した もの であり ,応用 物理学 及び偏光計測法の分野 に貢 献する ところ 大な るもの がある 。
よ っ て , 著 者 は 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。