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プローブ車を用いた吹雪による視程障害の検知可能性

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北海道の雪氷 No. 27(2008)

-107-

Copyright © 2008 (社)日本雪氷学会

プローブ車を用いた吹雪による視程障害の検知可能性

松澤勝, 加治屋安彦(寒地土木研究所), 西田尚司(富士重工業), 永田泰浩((財)日本気象協会北海道支社)

1.はじめに

プローブカーは,走行中に車両から得られるデータ,例えば位置,速度,ABS の作動 などを収集して,道路交通調査,および道路交通管理や道路交通情報提供等のコンテ ンツとして利用するものである.走行速度から渋滞情報を収集しドライバーに提供す るサービスは既に実用化されている 1 ).また,ワイパーの作動状況から降雨を検知した り2 ),ABS の作動状況から路面の滑りを把握したりする研究が行われている3 ).しかし,

プローブカーを使って吹雪の強さを把握する研究は行われていない.そこで,本研究 では,ワイパーと前照灯や車幅灯の使用状況から吹雪の強さを把握する可能性を把握 するため 2 つの調査を行った結果を報告する.

2.調査1(被験者実験)の概要 調査 1 で用いたプロ

ーブカーで計測したデ ータの概要を表1に示 す.計測項目は,時刻,

車両位置,走行速度,

ワイパーの作動状況,

灯火器の使用状況であ る.サンプリング間隔 は,GPS で記録してい

る車両位置は 1 秒,それ以外は 0.1 秒である.データは車載したロガーの CF カードに 記録されるほか,スバル技術研究所のサーバに携帯電話回線を通じて格納される.な お,後者の場合,データのサンプリング間隔は 2 秒であり 120 秒毎に送信される.

被験者は 50 代の女性で,2007 年 2 月 2~20 日の通勤時にプローブ車を運転しても らった.札幌市北区の自宅と同中央区内にある職場は約 20 km 離れており,通勤時間 帯は概ね朝は 8:30 から 9:30 で,夕方は 17:00 から 18:00 である.なお,被験者は,

実験目的を知らされていない.また,プローブカーの助手席には,ビデオカメラを設 置し吹雪の発生状況を記録した.今回の実験において,夕方の帰宅時については,周 囲が暗いため視程レベルに関わらずライトを使用していた.

解析においては,まず,ビデオから目視で視程を6段階に分類し,全部で 22 回の走 行の中から視程が 1000 m 未満に低下した7事例を抽出した.そして,車両データに視 程階級をマッチングさせて,両者の関係を分析した.

3 被験者実験の結果

計測項目 情報内容 サ ン プ リ

ング間隔

時刻 年月日 時分秒 0.1秒

車両位置 緯度、経度 1秒

走行速度 左前輪、右前輪、左後輪、右後輪 0.1秒

ワイパーの作動 作動/停止 0.1秒

灯火器使用状況 車幅灯・Lowビーム・Hiビーム:

各々(点灯/消灯)

0.1秒

表1.車両データの概要

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図 1 は 2007 年 2 月 7 日の 朝 の 事 例 で あ る . 内 側 の 線 が ワ イ パ ー の 使 用 を 示 し て お り , 太 線 が

「 間 欠 」 で あ る . 外 側 の 線 が 灯 火 器 の 使 用 状 況 で , 灰 色 の 太 い 線 が 車 幅 灯 で あ る . 出 発 時 は 視 程 レ ベ ル が 500 m ~ 1000 m で あ っ た が , ワ イ パ ー を 作 動 さ せ る と 共 に , 車 幅 灯 を 点 灯 さ せ て い る . 図の A 地点以 降 は 視 程 の 改 善 と と も に ワ イ パ ー の 使 用 頻 度 は 低 下 し て い る . そ し て,B 地点で降 雪 が 止 む と と も に ワ イ パ ー の 使 用 を 停 止

した.しかし,C 地点付近では,視程が改善されているのにもかかわらず車幅灯が点灯 しているのが分かる.これは消し忘れの可能性が大きい.その後,D 地点で,降雪が始 まるとすぐにワイパーの使用が始まった.そして,E 地点で視程が 100 m 未満に低下 した際に,車幅灯を再点灯した.

次に解析結果を示す.図 2 は,視程とワイパー使用との関係である.朝の時間帯に ついては,視程レベルが 200 m 未満に低下するとほとんどの時間帯でワイパーが「間 欠」となっている.また,視程低下とともにワイパーを使用する割合が増加すること が分かる.つまり,視程障害の発生だけでなく,視程障害の程度も把握できる可能性 があると考えられる.一方,夕方の時間帯については,視程が 500 m 未満においてワ イパーを使用する割合が高くなっており,視程 500 m 程度の吹雪発生を検知する可能

1

2007 年 2 月 7 日の朝の事例

出発地

目的地

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性は高いと言える.

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

50 -100 m 10 0- 200 m 20 0- 500 m 50 0- 999 m 1000 m -

ワイパ ーの使 用割合

視程

Off 間欠

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

50 -1 00 m 10 0- 20 0m 20 0- 50 0m 50 0- 99 9m 10 00 m -

ワイパー の使用割 合

視程

Off 間欠 連続(Low) 図 2 視程とワイパーの使用との関係.(左図:朝,右図:夕方)

図 3 は,朝の時間帯における,視程と車 幅灯の使用との関係を調べたものである.

視程 500 m 未満では,車幅灯を使用する割 合が,30~45%程度であった.

調査 1 の結果から,プローブデータから 吹雪による視程障害の発生を検知する可能 性があることが示された.しかし,わずか 1名の被験者に対しての調査であり,個人 差が含まれることは否めない.従って,デ ータを補完するため次の調査 2 を実施した.

4.調査 2 の概要

2007 年 2~3 月に,北海道スバル(株)

の社員が営業で 4 台のプローブ車を運転し た.計測項目は,調査 1 と同じであるがビ デオ撮影は行っていない.本研究では,ス

バル技術研究所のサーバに蓄積されたデータを用いて解析を行った.

札幌圏で降雪のあった 2007 年 2 月 12~14 日,3 月 12~14 日を解析対象とした.気 象データについては,日本気象協会提供の 1 km メッシュの時間降雪量と風速から推定 した 1 時間平均視程を用いた.車両の走行位置に該当するメッシュの視程データと車 両データのマッチングを取った.

ところで 2 秒ごとのサンプリング時点で,ワイパーが動いていないと停止の信号が 0

0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

50-100m 100-200m 200-500m 500-999m 1000m-

車幅灯の使用割合

視程 Off 車幅灯

図 3 視程と車幅灯使用との関係

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出力される.そこで,解析に際しては以下の作動率を定義した.同様に,車幅灯に関 しても同様に点灯率を定義して解析を行った.

気象条件 A における ON のデータの数

作動率・点灯率 = ×100(%) 気象条件 A に該当する全データ数

5.調査 2 の結果

図 4 は,視程とワイパー作動率との関係である.視程が低下するに従い,作動率が 増加している.すなわち,ワイパーの作動状況により,視程障害の程度も把握できる 可能性があることが分かる.図 5 は視程と車幅灯の点灯率との関係である.図より,

視程が 500 m 未満の場合に車幅灯の点灯率が急増していることがわかる.

4.2%

2.5%

0.7%

0%

1%

2%

3%

4%

5%

-500m 500-999m 1000m-

ワイパー作動率

視程

62.1%

14.0%

6.3%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

-500m 500-999m 1000m-

車幅灯点灯率

視程

図 4 視程とワイパーの作動率 図 5 視程と車幅灯の点灯率

6.まとめ

日中は,車幅灯の点灯状態のデータでは視程障害の検知が可能であり,ワイパーの 作動データを用いることで視程障害の程度の把握も可能であることが示された.一方,

夜間は,ワイパーのデータによる,視程障害の検知可能性が示された.

今後の課題としては,被験者数やプローブ車の数を増やすこと.視程 500 m 未満の 吹雪時のデータを増やすこと.さらに,視程障害発生や,視程障害の程度を判断する 基準を求めることが挙げられる.

参考文献

1) ホンダ・インターナビ・プレミアムクラブ,http://www.premium-club.jp/.

2) Petty R. and W. Mahoney, “Enhancing Road Weather Information through Vehic le Infrastructure Integration (VII)”, 86t h TRB Annual Meeting, Jan. 21-25, 2007.

3) Nakatsuji T. et al., “On-line Estimation of Friction Coefficients of Winter Road Surfaces Using Unscented Kalman Filter”, 86t h TRB Annual Meeting, Jan. 21-25, 2007.

参照

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