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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

新規抗癌剤スクリーニングシステムの開発およびヒ ト胎盤抽出物の癌細胞増殖抑制効果に関する研究

山口, 慶枝

https://doi.org/10.15017/1500795

(2)

新規抗癌剤スクリーニングシステムの開発および ヒト胎盤抽出物の癌細胞増殖抑制効果に関する研究

山 口 慶 枝

2015

(3)

目次

緒言 1

第1章 Silica Fibers (SFs) を用いた3次元 (3D) 培養系の構築とそれを 用いた抗癌剤スクリーニングシステムの開発

第1節 緒言 3 第2節 実験材料 6 第3節 実験方法 8 第1項 2次元 (2D) 培養系における抗癌剤の80%阻害濃度 (IC80)

の決定

第2項 SFsを用いた癌細胞3D培養系の構築 第3項 3D培養系を用いた抗癌剤の評価

第4項 3D培養系における細胞の形態学的解析 第5項 3D培養系における抗癌剤浸透性の解析 第6項 3D培養系における解糖系の解析

第7項 抗癌剤抵抗性に係る遺伝子の発現解析

第4節 実験結果 14 第1項 2D培養系における抗癌剤のIC80の決定

(4)

第5節 考察 23 第6節 要約 28

第2章 ヒト胎盤抽出物の癌細胞増殖抑制効果に関する研究

第1節 緒言 29 第2節 実験材料 31 第3節 実験方法 32 第1項 ヒト胎盤抽出物からの癌細胞増殖抑制物質の単離および同定

第2項 癌細胞増殖抑制物質(EDSCA;グルタミン酸、アスパラギ ン酸、ナトリウム、カルシウム)の組み合わせと活性の相関 第3項 ヒト肝癌細胞株に対するEDSCAの細胞増殖抑制試験 第4項 ヒト肝癌細胞に対するEDSCAの細胞増殖抑制試験 第5項 ヒト癌細胞株に対するEDSCAの細胞増殖抑制試験 第6項 3D肝癌細胞系を用いたEDSCAの増殖抑制試験

第7項 大腸癌皮下担癌マウスを用いたEDSCAの抗癌試験 (Winn assay) 第8項 VX2肝臓担癌家兎を用いたグルタミン酸、アスパラギン酸

(ED) の抗癌試験

第9項 EDの癌細胞死メカニズムの解析

第4節 実験結果 46 第1項 ヒト胎盤抽出物からの癌細胞増殖抑制物質の単離・同定およ

び組み合わせと活性の相関

第2項 EDSCAと既存抗癌剤の活性の比較

(5)

第3項 ヒト肝癌細胞および他の株化癌細胞に対するEDSCAの 増殖抑制効果

第4項 3D培養系におけるEDSCAの癌細胞増殖抑制効果 第5項 大腸癌皮下担癌マウスを用いたEDSCAの抗癌効果の検討 第6項 VX2肝臓担癌家兎を用いたEDの抗癌効果の検討

第7項 EDSCAおよびEDによる癌細胞死のメカニズムの解析

第5節 考察 71

第6節 要約 76

Summary 77

参考文献 79

謝辞 92

(6)

略語

ACT-D: アクチノマイシンD

ADM: ドキソルビシン

Ala: アラニン

Asp: アスパラギン酸 BCL2: B Cell Lymphoma 2 COX-2: Cyclooxygenase 2

CPT: カンプトテシン

CDDP: シスプラチン 3D: Three-dimensional 2D: Two-dimensional ECM: Extracellular matrix ETP: エトポシド

FBS: Fetal Bovine Serum

FACS: Fluorescence activated cell sorting Gly: グリシン

Glu: グルタミン酸

HPLC: 高速液体クロマトグラフィー

IC80: 80% inhibitory concentration MMC: マイトマイシンC

NF-κB: Nuclear Factor kappa B PBS(-): Phosphate Buffered Saline (-)

(7)

SAS: Statistical Analysis System SEM: Scanning Electron Microscope Ser: セリン

SFs: Silica Fibers

SRB: スルホローダミンB

STS: スタウロスポリン

Thr: スレオニン

VEGF: Vascular Endothelial Growth Factor

VBL: ビンブラスチン

(8)

緒言

我が国における男性の58%、女性の43%、すなわち約2人に1人は癌に羅 患することがコホート研究により予測されている (1)。また、癌による死亡率は、

男性26%、女性16%と報告されている (1)。このように、高い羅患率と死亡率か ら、癌はアンメットメディカルニーズの極めて高い疾患の1つである。癌の3 大治療法は、手術療法、放射線療法、薬物療法であり、手術および放射線療法 による治療が困難な場合は、薬物療法が主な治療法となる。薬物療法としては、

乳癌や前立腺癌に有効なホルモン療法、癌細胞の細胞分裂の過程に直接作用す る化学療法が主流であった。しかし、1990年代以降は、リッキサン(B細胞性 腫瘍を標的とした抗CD20抗体)やハーセプチン(HER陽性乳癌を標的とした 抗HER2抗体)を皮切りとし、現在では約30種を超える分子標的薬が承認され ている (2)。

肝細胞癌は原発性肝癌の大部分を占める肝細胞に由来する多様性の悪性腫 瘍であり、癌のなかでは世界的に6番目に発生頻度が高く、死亡率は世界第3 位である (3)。さらに手術による根治的肝切除後も3年以内の再発率および転移 率は60%以上であり (4, 5)、5年生存率は40~50%と予後不良である (6, 7)。手 術不可能な肝細胞癌患者には、全身性の化学療法が施されるが、約20%の割合 で化学療法抵抗性が生じる (8)。肝細胞癌早期においては、根治的肝切除、経皮 的局所療法、肝動脈塞栓術などにより比較的高い5年生存率 (60~70%) が得ら れるようになってきた (9, 10)。しかし既存の治療が奏功しない進行例も認めら れ、この場合の予後は極めて不良である (11)。

(9)

本研究の対象となるヒト胎盤抽出物には、前立腺癌細胞の増殖抑制作用

(12) が報告されている。さらに肝再生及び肝機能改善 (13)、抗酸化作用 (14)、

アンジオテンシンⅠ変換酵素阻害 (15)、キサンチンオキシダーゼ阻害 (16)、シ クロオキシゲナーゼ-2阻害 (17) などの多種多様の生理活性が認められている。

そのためヒト胎盤抽出物は、癌を含む種々の疾患治療薬としての可能性を有す ると考えられる。実際に、ヒト胎盤抽出物(医薬品名:ラエンネック)は、肝 機能改善剤・肝予備能賦活剤として特定生物由来の処方箋医薬品として認可さ れている。

そこで本研究では、ヒト胎盤抽出物を材料とし、副作用の出来る限り少な い抗癌剤の開発を試みた。また、それに先立ち、in vivo試験系に限りなく近い

in vitro 3次元 (3D) 培養評価系を構築した。

本論文の第1章では、新規抗癌剤スクリーニングシステムの開発、第2章 では、ヒト胎盤抽出物による癌細胞増殖抑制効果に関する研究について論述す る。

(10)

1Silica Fibers (SFs) を用いた3D培養系における抗癌剤スクリーニング システムの開発

1節 緒言

抗癌剤の開発において、初期スクリーニングの多くは、癌細胞の単層培養 系(2D培養系)を用いて行われる。しかし、2D培養系は生体内における癌の 生理学的特性を正確には反映していないことが多く (18, 19)、2D培養系による スクリーニングから選択された多くの抗癌剤候補物質の薬効をin vivoで実証す ることは難しいとされる (20)。しかしながら、創薬の初期スクリーニングにお いては、膨大な数の化合物を試験する必要があるために、ハイスループットの 2D培養系に依存せざるを得ない (21, 22)。薬物スクリーニングの正確性を向上 させるためには、可能な限り生体を模倣し、しかもハイスループットなin vitro モデル系の開発が求められている。

生体内においては、細胞-細胞および細胞-細胞外マトリックス

(Extracellular matrix, ECM) の相互作用により、癌細胞は複雑な生化学的および機 械的シグナルのネットワークを形成している。3D培養系は、2D培養系に比べ て癌組織をより生理的に模倣すると考えられており (23)、現在多くのin vitro培 養系において利用可能である (24)。3D構造は、細胞の成長およびネットワーク 形成に必要なECM基板(スキャホールド細胞の足場)を構築するために極めて 重要である。3D培養系のためのスキャホールドの基材としては、例えばコラー ゲン、ヒアルロン酸のような天然物 (25, 26)、poly (lactide-coglycolide) のような

(11)

合成ポリマー、またpoly (D,L-lactic-co-glycolic) やポリ乳酸から作られるポリマ ー微粒子が開発されている (27, 28)。これらの基材で構築された3Dモデルは非 常に有用であるが、3D構造のサイズおよび形態のコントロールが難しく (29)、 その用途は限定される。また、ECMは、疎水性素材へ付着する性質を有するこ とから、培養基板の疎水性の制御は、細胞接着および増殖をコントロールする ために重要である。

最近、エレクトロスピニング法によるナノファイバー作製技術により製造

されたSilica Fibers (SFs) が、生体組織工学のためのスキャホールドとして開発

されている (30-32)。ゾル-ゲル法を用いたエレクトロスピニング法は、径が数µm

から100 nmまでの繊維の製造が可能であるため、本法で作製されたSFsは非常

に利便性が高い。SFsは、体積比に対して表面積が広く、小さな孔径と高い空隙 率を持っている。製造過程で500°Cの熱処理が施されるため、ヒドロキシル基 含有量は1%以下に低下し、SFs表面は疎水性を示す (32)。また、SFsはサイズ および形態のコントロールが容易であることに加えて、3D構造をin vitroで模倣 出来ることから、生体組織工学の基材として広く利用されている。筆者は、SFs をスキャホールド基盤とした3D癌モデル培養系は、生体内状況をシミュレーシ ョン出来る可能性があり、抗癌剤候補薬を有効にスクリーニングする方法とし て従来の2D培養系よりも優れているのではないかと考え、本研究に着手した。

本研究では、様々なヒト由来癌細胞株を使用し、SFsをスキャホールドとし

(12)

lymphoma 2(BCL2;抗アポトーシス指標)、Cyclooxygenase 2(COX-2;発癌に 関与し、抗癌剤の標的)、およびVascular Endothelial Growth Factor(VEGF;癌 の血管増殖、転移に関与し、抗癌剤の標的)の発現量の差異を調べた。さらに、

両培養系における抗癌剤の取り込みを評価した。

(13)

2節 実験材料

癌細胞株

A549 (IFO50513)、HeLa (RCB0007)、DLD-1 (JCRB9094)、Huh-7 (JCRB0403)、 HLE (JCRB0404)、SUIT-2 (JCRB1094) およびMIA PaCa-2 (JCRB0070) は、独立 行政法人 医薬基盤研究所JCRB細胞バンクより購入した。MCF-7 (RCB1904)、 NIH:OVCAR-3 (RCB2135)、DU-145 (RCB2143)、HepG2 (RCB1886) は、独立行政 法人理化学研究所 バイオリソースセンターより購入した。また、MDB-MB-453 (ATCC HTB-131)、HT-29 (ATCC HTB-38) は、American Type Culture Collection (ATCC) より購入した。

試薬及びキット類

抗癌剤として、Etoposide (VP-16) (Sigma Aldrich,Tokyo, Japan)、Mitomycin C (MMC) (Nacalai Tesque, Kyoto Japan)、Actinomycin D (ACT-D) (Wako, Osaka, Japan)、Vinblastine Sulfate (VBL) (Wako, Osaka, Japan)、Camptothecin (CPT) (Wako, Osaka, Japan)、Sorafenib (TRC Inc, Toronto, Canada)、Cisplatine (CDDP)(Wako, Osaka, Japan) およびDoxorubicin (ADM) (Wako, Osaka, Japan) を使用した。

細胞増殖の測定には、3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-

diphenyltetrazolium Bromide (MTT) およびSulforhodamine B (SRB) (Nacalai

(14)

Silica Fibers (SFs)

SFsは、日本バイリーン株式会社より提供された。SFsは加圧滅菌 (121℃、

20分) 後、実験に使用した。

(15)

3節 実験方法

第1項 二次元 (2D) 培養系における抗癌剤の80%阻害濃度 (IC80) の決定 12種の癌細胞株を、10% FBS (Fetal Bovine Serum)、2 mM L-glutamine、100 units/mL penicillinおよび100 μg/ mL streptomycinを含む各々の培地(表1)100 μL に播種後、37℃、5% CO2存在下で24時間培養した。種々の濃度に調製した抗 癌剤 (ETP、MMC、ACT-D、VBL、CPT) を含む培養液 (100 μL/well) に交換後、

同条件下で72時間培養した。SRB法にて (33, 34) 生細胞数を測定し、各細胞株 における抗癌剤のIC80を決定した。

第2項 SFsを用いた3D培養系の構築

24穴プレートに10% FBSを含む各々の培地を入れ、次いでSFsを加えた後 に、表1に示す癌細胞株を播種し、1日置きに培地交換を行いながら、37℃、5%

CO2条件下にて培養した。7日間培養後、2D培養系にて設定したIC80濃度の抗 癌剤を添加した培地に交換し、毎日新鮮な同培地に交換しながら、11日目まで 培養を継続した。

(16)

1 癌細胞株の2Dおよび3D細胞培養条件 由来

組織 細胞株 培地名 細胞播種数cells/well

2D 3D

肺 A549 DMEM/Ham’s F12K 2 x 103 2.5 x 105

乳房 MCF-7 RPMI1640 2 x 103 5 x 105

MDA-MB-453 DMEM 5 x 103 5 x 105

子宮 HeLa DMEM 2 x 103 2.5 x 105

卵巣 NIH:OVCAR-3 RPMI1640 4 x 103 5 x 105

大腸 HT-29 RPMI1640 2 x 103 5 x 105

DLD-1 RPMI1640 2 x 103 2.5 x 105

前立腺 DU145 RPMI1640 2 x 103 2.5 x 105

肝臓 HepG2 DMEM (2D)

William’s E (3D) 2.5 x 103 5 x 105

Huh-7 DMEM 3 x 103 1 x 106

膵臓 SUIT-2 RPMI1640 2 x 103 2.5 x 105

MIA-PaCa-2 DMEM 2 x 103 5 x 105

第3項 3D培養系における抗癌剤の評価

培養11日目のSFsの培養液を除去し、PBS(-)で1回洗浄した。24穴プレー

ト1穴あたり0.5 mLのDNA定量キット付属の緩衝液を1 mL添加し、氷上にて

冷却しながら超音波破砕機 (TAITEC, Saitama, Japan) で破砕した(Sonication条 件:パルス強度:5、時間:10秒)。破砕後、溶液を遠心 (Kubota5922, Tokyo, Japan) (1000 rpm、20分、4℃) し、上清を回収した。回収した上清のDNA量をキット の説明書に従って測定した。蛍光強度は、FP-8300蛍光分光光度計 (JASCO, Easton, MD, USA) を用いて励起波長356 nm、蛍光波長458 nmを測定した。

(17)

第4項 3D培養系における細胞の形態学的解析 SEM (Scanning Electron Microscope) の前処理

培養11日目のSFsを10%ホルマリン溶液にて固定後、2%グルタルアルデ ヒド/10%ホルマリン (1 mL/well) に置換した。続いて、HEPES buffer (20 mM、 pH 7.4) に置換し、残存ホルマリンを除去した (15分x 2回)。10、50、60% EtOH (1 mL/well) に段階的に置換(各15分)後、引き続き70、80% EtOH (1 mL/well) に置換した(各15分x 2回)。次いで、90% EtOH (1 mL/well) に置換 (30分) 後、

100% EtOH (500 μL/well) に置換 (30分) した。さらにt-BuOH (500 μL/well) を 追加後、静置 (20分) した。その後100% t-BuOH (1 mL/well) に置換 (20分x 2 回) した。-20℃で凍結後、日立フリーズドライヤーES-2030 (HITACHI, Tokyo,

Japan) を用いて凍結乾燥した。

SEM観察

凍結乾燥したスパッタコーティングフリーのSFs試料を、Miniscope® TM1000 (HITACHI, Tokyo, Japan)(加速電圧15kV、標準撮影モード、オートフォ ーカス、オート照度)を用いて観察した。

第5項 3D培養系における抗癌剤浸透性の解析

(18)

に取り込まれなかったADMを除去するためにPBS (-) で2回洗浄し、蛍光顕微 鏡下で細胞に取り込まれたADMを観察した(励起波長534 nm、蛍光波長602 nm)。 細胞の薬物取り込み量を測定するために、HT-29細胞を24穴プレートに播 種 (5.0 x 105 cells/well) し、37℃、5% CO2条件下で培養した。培養7日後、ADM (10 μM) を添加した。37℃で各時間インキュベーション (3、6および24時間) 後、

上清を除去し、細胞を2 mM EDTAを含む氷冷PBS(-) で洗浄し、超音波破砕し た。細胞破砕物中のADM量は、FP-8300分光蛍光光度計を用いて測定 (励起波

長480 nm、蛍光波長560 nm) した。細胞またはSFsへの非特異的結合のバック

グラウンド蛍光を差し引くために、細胞破砕液またはSFs懸濁液を用いてADM の標準曲線を作成した。タンパク質濃度は、BCAアッセイキット (Pierce, Rockford, IL, USA) により測定した。

第6項 3D培養系における解糖系の解析

2Dおよび3D培養系における解糖系の活性化を比較するため、乳酸産生量 を測定した。2D培養系ではコンフルエントになるまで、3D培養系では3D構造 を形成するまで培養した。その後、抗癌剤を含むHanks' Balanced Salt Solution (HBSS) で37℃、5% CO2条件下で培養し、各培養液中の乳酸量をEnzy Chrom Lactate Assay Kit (BioAssay Systems, Hayward, CA, USA) により測定した。

第7項 抗癌剤抵抗性に係る遺伝子の発現解析 Total RNA抽出および逆転写 (RT)

(19)

2Dおよび3D培養した3種類のヒト癌細胞のTotal RNA は、ISOGEN RNA 抽出キットを用いて抽出した。RNAの純度は、OD 260/OD 280 nmの吸光度比に よって確認した。Total RNA (0.5 μg) を用いて、50 pM Random 6 mers (Takara) お よびPrimeScript RTase (Takara) を使用して、cDNAを合成した。

定量的リアルタイムPCR

ライトサイクラー反応に用いたマスターミックスは以下のように調製した

(数値は終濃度):3 μL H2O (PCR grade)、1 μL forward primer (10 μM)、1 μL reverse primer (10 μM) および10 μL LightCyler FastStart Essential DNA Green Master (Roche, Tokyo, Japan)。5 μLのcDNAを鋳型としてLightCycler Nano (Roche) と FastStart Essential DNA Green Master kit (Roche) を用い、標準化された定量的リア ルタイムPCR反応条件により増幅した。特異的PCR産物を同定するためにライ トサイクラーのメルティングカーブ分析プログラムを使用し、それらの発現レ ベルを内部標準遺伝子28S ribosormal RNA (RN28S1) によって標準化した。PCR 反応は表2に示す条件で行い、Primerは表3のものを使用した。定量的リアル タイムPCR反応後、予想されるPCR産物(表3)をアガロースゲル電気泳動に より確認した(データ未表示)。

(20)

2 Real-time PCRの反応条件

Program cycle Temp. (℃) Time (sec)

Hold 1 95 600

3-step amplification 45

95 10 58 (COX-2)

60 (BCL2, VEGF, RN28S1) 10

72 15

3 Real-time PCR primerの配列およびPCR産物の増幅サイズ

Gene Primer PCR products

BCL2F 5'-GGCTGGGATGCCTTTGTG-3'

64 bp BCL2R 5'-GCCAGGAGAAATCAAACAGAGG-3'

COX-2F 5'-CTTCACGCATCAGTTTTTCAAG-3'

96 bp COX-2R 5'-TCACCGTAAATATGATTTAAGTCCAC-3'

VEGFF 5'-CCGCAGACGTGTAAATGTTCCT-3'

95 bp VEGFR 5'-CGGCTTGTCACATCTGCAAGTA-3'

RN28S1F 5'-CCGCTGCGGTGAGCCTTGAA-3'

312 bp RN28S1R 5'-TCTCCGGGATCGGTCGCGTT-3'

統計学的解析

全てのデータにおいて、試験は少なくとも3回以上実施し、有意差はStudent-t testで検定した。

(21)

4節 実験結果

第1項 2D培養系における抗癌剤のIC80の決定

12種のヒト癌細胞株の2D培養系における80%増殖抑制を示す抗癌剤濃度 (IC80) を表4のように決定した。

4 2D培養系でIC80を示す抗癌剤濃度 由来

組織 細胞株 ETP (μM)

MMC (μg/mL)

ACT-D (μM)

VBL (μM)

CPT (μM)

肺 A549 25 0.5 0.013 12.5 0.25

乳房 MCF-7 3 0.5 0.005 0.05 0.5

MDA-MB-453 25 1 0.02 25 0.5

子宮 HeLa 12.5 1 0.005 0.002 0.4

卵巣 NIH:OVCAR-3 100 2 0.025 50 1

大腸 HT-29 50 1 0.02 0.01 0.5

DLD-1 12.5 1 0.005 0.05 0.5

前立腺 DU-145 3 0.5 0.005 0.003 0.02

肝臓 HepG2 30 1 0.025 0.03 0.5

Huh-7 50 1 0.02 3 2

膵臓 SUIT-2 3 0.5 0.025 5 0.0125

MIA PaCa-2 20 0.5 0.01 30 0.3

ETP, Etoposide; MMC, Mitomycin C; ACT-D; Actinomycin D; VBL, Vinblastine Sulfate; CPT, Camptothecin

(22)

観察では、SFs上の細胞数は培養日数とともに増加し、培養10日後(図1、A) においては、ほとんど隙間のないシート状の形態となった。また、HT-29細胞 を培養したSFsのSEM断面は、細胞が密に凝集していることを示している(図 1、B)。細胞数と相関すると考えられるDNA量を調べたところ、3D培養構造 の形成に相関して増加が認められ、8日後でプラトーに達した(図1、C)。

1 SFs上におけるHT-29細胞の3D構造の形成

A, SFs上に増殖しているHT-29細胞の経時変化を示すSEM像 (x 500) ; B, SFs上で3D 造を形成したHT-29細胞のSEM断面図(培養7日目)(x 500) ; C, DNA量の経時変化

12種の癌細胞株は、SFs上で表5に示すように独自の3D構造を形成した。

それらの3D構造をLoose aggregate(緩い凝集体)、Rod aggregate(棒状の密集

(23)

体)、Tight aggregate(密な凝集体)、およびLoose small spheroidal aggregate(緩 い小さな球状の密集体)の4つのカテゴリーに分類した(表5)。それらの代表 的な4つの細胞形態を図2に示す。卵巣癌 (NIH:OVCAR-3)、前立腺癌 (DU-145)、 肺癌 (A549) および肝臓癌 (HepG2、Huh-7) 細胞(図2、B)においては、細胞 間の隙間が認められたのに対し、乳癌 (MCF-7)、大腸癌 (HT-29、DLD-1) 細胞

(図2、A)では、細胞間の隙間が認められず、シート状に凝集していた。膵臓 癌 (SUIT-2、MIA PaCa-2) 細胞(図2、C)は、緩い小さな球状凝集体

(MDA-MB-453、HeLa)(図2、D)が棒状に凝集体を形成した。

大腸癌 (HT-29) や肝癌 (HepG2) 細胞のSFs断面は、完全なシート状もしく は隙間のない凝集体を形成した(図2、EおよびF)。それに対し、膵臓癌 (SUIT-2)

や乳癌 (MDA-MB-453) 細胞では、小さな球状の集合体が垂直方向に直線状に配

列していた(図2、GおよびH)。

5 SFs上で3D培養した癌細胞の形態

Tissue Cell line Morphology

Lung A549 Loose aggregate

Breast MCF-7 Tight aggregate

MDA-MD-453 Loose small spheroidal aggregate Cervix HeLa Loose small spheroidal aggregate

Ovarian NIH:OVCAR-3 Loose aggregate

Colon HT-29, DLD-1 Tight aggregate

(24)

2 3D培養した癌細胞株の代表的な細胞形態

HT-29、HepG2、MDA-MB-453細胞 (5.0 x 105) およびSUIT-2細胞 (2.5 x 10 5) SFs 7日間培養し、SEMで観察した。3D培養のSEM図 (x 500) :HT-29 (A)、HepG2 (B)、

SUIT-2 (C) およびMDA-MB-453 (D)。3D SEM断面図 (x 1000) :HT-29 (E)、HepG2 (F)、

SUIT-2 (G) およびMDA-MB-453 (H)

(25)

第3項 3D培養系と2D培養系との抗癌剤感受性の比較

HT-29、HepG2、SUIT-2およびMDA-MB-453細胞のマイトマイシンC (MMC) に対する感受性を2Dおよび3D培養系において評価した。2D培養系で決定し たIC80濃度の抗癌剤を3D培養系に適用したが、殺細胞効果は認められなかっ た(薬剤を添加して96時間培養、データ未表示)。また、他の抗癌剤におい ても同様の結果が得られた(CPT、ADM、VBLおよびETPのデータ未表示)。

次に同濃度の抗癌剤を、3D培養系においては、24時間ごとに添加した(図3、 A)。抗癌剤で処理した2Dおよび3D培養系の細胞生存率を抗癌剤未処理対照

群 (Ctr) と比較すると、3D培養系の生存率が有意に高いことが分った(図3、

B)。MDA-MD-453細胞の3D培養系において、MMC添加により、コントロー

ルと比較すると3D構造の若干の崩壊が認められた(図3、C)。3D培養系に おけるMMCに対する薬剤耐性は、2D培養系と比較するとHT-29では1.8倍、

HepG2では2.2倍、SUIT-2では4.1倍、MDA-MB-453では4.5倍に上昇した(図 3、B)。CPTに対する同細胞の薬剤耐性も同様に上昇し、また、Huh-7細胞の 3D培養系においてはソラフェニブに対しても薬剤耐性の上昇が認められた(デ ータ未表示)。

(26)

3 HT-29、HepG2、SUIT-2およびMDA-MB-453細胞の3D培養系における 抗癌剤MMC添加後の生存率 (B) と形態 (C)

A, 3D培養系のための抗癌剤投与プロトコル、▲は抗癌剤投与の時間を示す。B, 2Dおよ

3D培養系でのMMC投与後の細胞生存率、** p<0.001。C, 3D培養系におけるHT-29 (a)(e)、

HepG2 (b)(f)、SUIT-2 (c)(g)、MDA-MB-453 (d)(h) 細胞の形態 (x 500)。

第4項 3D癌細胞培養系における抗癌剤耐性メカニズムの解析

ヒト結腸腺癌細胞HT-29細胞によるドキソルビシン (ADM) の取り込み

SFs上に形成された3D培養系特有の形態が、癌細胞への薬剤浸透を制限す る可能性がある。そこで、3D培養系の癌細胞に対する蛍光性抗癌剤ドキソルビ

(27)

シン (ADM) の浸透性について調べた。SFs上の細胞へのADMの取り込みは、

薬剤暴露の3、6および24時間後の蛍光強度を測定することによって評価した。

培養時間の経過とともに、細胞に取り込まれたADM由来の蛍光強度は増加し、

最大蛍光値は24時間後に認められた(図4、A)。ADM添加24時間後でも細 胞は生存していた(データ未表示)。添加したADM量 (10 M) の7.5%がHT-29 細胞内に取り込まれていた(図4、B)。

4 3D培養系のHT-29細胞におけるADMの取り込み

A, SFs上で増殖するHT-29細胞のADM取り込みを示す蛍光顕微鏡像 (x 100)、画像は

ADM添加3、6および24時間後に撮影、B, HT-29細胞へのADM取り込みの時間経過

(28)

2D培養系と3D培養系における解糖系の活性化

一般に癌細胞は、嫌気条件下のみならず好気条件下でも解糖系によって ATPを産生する。この現象はワールブルク効果として知られている (35)。癌細 胞では、ミトコンドリア呼吸障害あるいは低酸素状態により、解糖系が亢進す ることが知られており、そのことが抗癌剤に対する耐性を惹起すると考えられ

ている (36, 37)。そこで、2Dおよび3D培養系における癌細胞の解糖系の活性化

を乳酸産生量によって評価した。予想通り、2D培養系と比較すると、3D培養 系での乳酸産生量は有意に増加していた(図5)。この結果は、3D培養系の癌 細胞の解糖系が、2D培養系と比較してより亢進していることを示している。

5 2D培養系および3D培養系における各癌細胞の乳酸産生量の比較

2Dおよび3D癌培養系の細胞によって産生される乳酸量を測定した。実験データは、3 つの独立した試験の平均値±SDであり、細胞のDNA量で標準化した。* p<0.005、** p<0.001

(29)

転写因子NF-κBにより活性化される遺伝子の発現解析

NF-κBは、発癌、アポトーシスおよび抗癌剤感受性に影響を与える転写因

子の1つであり、複数の腫瘍型において細胞の生存、増殖、および血管新生に 関与している (38, 39)。3D培養系における抗癌剤耐性の分子機構を調べる端緒

として、NF-κBによって活性化される遺伝子の発現を調べた。BCL2、COX-2、

およびVEGFの発現は、2D培養系と比較すると3D培養系において有意に高い ことが明らかになった(図6)。

6 2Dおよび3D培養系におけるNF-κB関連遺伝子の発現

2Dおよび3D培養系におけるNF-κB関連遺伝子、BCL2、COX-2、VEGF遺伝子の相対的 発現率を示す。データはすべて28S RNAにより標準化した。n = 4-6 * p<0.005、** p<0.001

(30)

5節 考察

3D培養系と2D培養系を比較すると、細胞の形態および挙動は異なること が知られている (18, 20, 40, 41)。本研究では、SFsを利用した新しい3D培養モ デル系を構築した。この3D培養系は、様々なタイプの癌細胞に対する抗癌剤ス クリーニングに適応可能と考えられる。3D培養系は、無限増殖、成長シグナル の自給自足、抗増殖シグナルに対する抵抗性、抗アポトーシス、浸潤、および 血管新生のような癌細胞特有の性質を再現可能である (29, 42)。

従来の3D培養システムでは、天然物由来のコラーゲン、ヒアルロン酸、poly (lactide-coglycolide)、poly (D, L-lactic-co-glycolic) やポリ乳酸から形成される合成 ポリマーがスキャホールドとして使用されてきた (25-28)。SFsを使用した無機 的スキャホールドは、3D培養系に適することが見出され、MG63、CHO-K1お

よびHepG2など数種の癌細胞株の3D培養に使用されていた (30-32)。本研究で

は、少なくとも12種のヒト由来癌細胞が、SFsスキャホールドを使用した3D 培養が可能であることが示された。これらの癌細胞の3D構造の形成は、疎水性 を示すSFsの機能に大きく依存していると推察された。従来の研究でも、スキ ャホールド表面に対する細胞の親和性が、3D構造の形成に寄与することが示唆 されている。特に、スキャホールドの疎水性が、細胞外マトリックス (ECM) の 付着を促進することが報告されている (43, 44)。本研究では、3D培養によって 癌細胞の種類によって少なくとも4つのカテゴリーに分類される3D構造が形成 されることを見出したが、細胞の種類によって何故このように異なる3D構造が 形成されるのか、その理由は現在のところ明らかではない。例えば、結腸癌、

(31)

肝臓癌および膵臓癌細胞の3D構造には明確な差異が認められなかったが、乳癌 細胞株は、完全に異なる3D構造を形成していた(図3、C、d)。今後は、これ らの差異が、各癌細胞株の個々の特性を反映ているのかを詳細に検証する必要 がある。

ヒト乳癌細胞株MCF-7はSFs上では隙間のない凝集体を形成するが、マト リゲル上ではスフェロイドを形成することが報告されている (45)。スフェロイ ドを形成した培養細胞は、3D培養系として繁用されているが、抗癌剤の浸透評 価においては、スフェロイドサイズのコントロールおよび環流試験の適応など に制限がある。SFsの使用は、スフェロイドを用いた3D培養系の欠点を解決す ることができ、新しいバイオリアクターシステムの開発を可能にするかもしれ ない。ヒト結腸腺癌HT-29およびDLD-1細胞もSFsをスキャホールドとした3D 培養系において、隙間のない凝集体の3D構造を形成する(表5、図2、A)。

多くの固形癌は、正常組織と比較すると、毛細血管間の距離が遠く、抗癌 剤の浸透性に問題がある。脈管系から遠く離れている癌細胞へ抗癌剤を効果的 にデリバリーすることは、固形癌に対する化学療法の有効性を決定する大きな 要因の1つである。最近、固形癌に対する抗癌剤の浸透性を直接定量できるin

vitroモデルが開発された (46, 47)。SFs上のHT-29およびDLD-1細胞の3D培養

系は、抗癌剤の浸透性の定量評価法に適応可能であり、新しい抗癌剤浸透評価 系を構築できる可能性がある。SFs上のHT-29およびDLD-1細胞の3D構造は、

(32)

等の抗癌剤スクリーニングシステムの開発を可能にするだろう。さらに、in vivo 試験と比べると、薬剤開発のコストと時間を削減できるメリットがある。

今回、3D培養系における抗癌剤の応答性は、2D培養系と大きく異なるこ とが示された。そこで、3D培養系において有効な薬物投与量を調べるとともに、

2Dおよび3D培養系における薬物の取り込みおよび薬物に応答する遺伝子の発 現を比較した。まず、SFsを用いた3D培養系におけるドキソルビシンの浸透効 率を検討した。その結果、3D培養した細胞では約7.5%の浸透が認められ、それ は一般的な3D癌モデルにおける薬剤浸透性とほぼ一致していた (29, 46, 51)。こ

のようなin vitroでの抗癌剤の浸透不良は、臨床的に起こる抗癌剤耐性の一部を

説明し得る (52)。薬剤の低浸透性は、抗癌剤を高doseに投与することを余儀な くしている。2D培養モデルを利用したスクリーニングによって得られた抗癌剤

候補がin vivo試験または臨床試験で効果がないとされる理由の1つは、薬物の

低浸透性を反映しているのであろうと推測される。今回開発した3D培養系は、

2D培養系と比較してin vitro系をより良く再現しているので、抗癌剤の低浸透性 についても効率的なスクリーニングが可能である。3D培養系において抗癌剤耐 性を示す別の要因は、解糖系の亢進と考えられる。永続的な解糖系の亢進は、

癌細胞、特に進行癌、の特徴である。乳酸産生量は癌の進行に相関しており (53)、 癌細胞の乳酸蓄積量は、癌転移率および生存率の低下に相関している (54, 55)。 本研究では、乳酸の蓄積が、2D培養系よりも3D培養系において、より高いこ とを見出した。その結果、2D培養系と比較して3D培養系では、より早く培地 の酸性化が認められた。3D培養系における迅速な培地の酸性化は、乳酸分泌の 結果に依るものと推測され、乳酸産生と癌の進行との相関を想起させる (45)。

(33)

これらの知見は、SFsによる3D培養系が、in vivoでの癌の生育環境をより正確 に再現している証左といえる。

2Dと3D培養系における抗癌剤感受性の相違は、遺伝子発現の差異に関係 しているかもしれない。本研究では、NF-κBによって発現が制御されることが 知られているBCL2、COX-2およびVEGF遺伝子の発現 (38, 39) が、2Dより3D 培養系においてより亢進していることを見出した。今回、SFsによる3D培養系 においては、抗アポトーシスマーカー遺伝子であるBCL2の発現も上昇してい た。他の3D培養系においてもBCL2遺伝子発現の亢進とアポトーシスの減少が 報告されている (56, 57)。またCOX-2遺伝子発現の亢進も観察されたが、結腸 直腸腺腫および結腸直腸癌においても同様の結果が報告されている (58, 59)。

COX-2インヒビターがアポトーシスを誘発し、抗癌剤の効果を増強する (60) こ

とを考慮すると、COX-2は結腸直腸癌の増悪化の一翼を担っているのかも知れ ない。また、COX-2過剰発現は、BCL2発現を亢進させ癌細胞のアポトーシス耐 性を増強することが報告されている (61, 62)。また、VEGFは、NF-κBにより発 現が調節されるが、VEGFがCOX-2発現を亢進することも報告されている (63)。 さらに、VEGFはBCL2を亢進し、ヒト癌細胞のアポトーシスを阻害することで (64)、抗癌剤耐性を誘導する。

本研究では、ゾル-ゲル法を用いたエレクトロスピニング技術により作製し たSFsスキャホールドを利用し、in vitro 3D癌培養モデル系を構築した。そして

(34)

クリーニングにも使用することができる。また、SFsスキャホールド上での3D 培養において、それぞれの癌細胞に特徴的な3D構造が形成されることを示した。

この結果は、それぞれの癌に特有な3D構造の構築の生理的な意義を解明し、癌 細胞の形態学的な理解を深めることに役立つと考えられる。

(35)

6節 要約

2D培養系と比較して、3D培養系はin vivoの微小環境を再現することが可 能である。3D培養技術は、in vivo環境を反映した、迅速な抗癌剤スクリーニン グ法の開発のために必要とされている。

SFsスキャホールド上において、12種のヒト癌細胞株が特徴的な3D構造を 形成することを見出した。3D培養系の細胞は2D培養系の細胞と比較して高い 薬剤耐性を示した。NF-κBによって調節され細胞の癌化に密接な関係がある、

BCL2、COX-2、VEGFの遺伝子発現は、2D培養系よりも3D培養系において高

いことが分かった。

我々が構築したSFsをスキャホールドとして使用した3D培養系は、それぞ れの癌細胞特有なin vivoの性質を模倣しており、抗癌剤評価を行う上で適切な

in vitroモデル系になりうることが明らかになった (65)。

(36)

2章 ヒト胎盤抽出物の癌細胞増殖抑制効果に関する研究

1節 緒言

肝臓癌に対する全身化学療法(抗癌剤の点滴や経口投与)の効果は低く、

有用な抗癌剤治療薬は現時点では存在しないと言っても過言ではない。既存の 抗癌剤の多くは副作用として慢性肝炎を惹起し、肝硬変を増悪させる。また、

消化管の粘膜障害を起こすことも知られている。2007年国内基盤技術調査報告

書 (66) によると、医師および医療関連企業を対象に実施した「治療の満足度」、

「薬剤の貢献度」調査では、肝癌に対する抗癌剤の薬剤の貢献度は約20%にも 満たず、さらに治療の満足度は40%程度と非常に低い。肝癌はアンメットメデ ィカルニーズの高い疾患であり、肝癌に対する新規治療薬の開発は急務である。

現在、肝癌の化学療法に用いられる抗癌剤は、肝癌細胞の増殖を抑制する ものが主流であり、アルキル化剤のシクロホスファミド、代謝拮抗剤のフルオ ロウラシル、抗生物質のドキソルビシン、プラチナ製剤のシスプラチンなどが ある。また最近ではソラフェニブを初めとする分子標的剤が注目されている。

従来のアルキル化剤を初めとする化合物は、細胞毒性を利用するものであり、

少なからぬ副作用のために使用がかなり限定されていた。また、癌細胞の持つ 特異的な性質を分子レベルで扱え、それを標的として創られたイマチニヴ、イ レッサやソラフェニブなどの分子標的薬は、副作用を抑えながら治療効果を高 めることができると期待されている。しかしながら、最近、これらの分子標的 薬も正常細胞に全く作用しないわけではなく、一部の分子標的薬は重い副作用

(37)

を引き起こすことが明らかとなった。例えば、「イレッサ事件」は記憶に新し い。一方、トラスツズマブなどの抗体医薬は、その高い薬効と限定された副作 用のため、多くの癌治療に利用されている (67)。しかし、抗体医薬は他の医薬 と比べて非常に高価であることが患者の負担になっている。例えば、乳癌手術 後、再発予防の治療費の大まかな比較では、従来の化学療法剤による治療では 50~60万円程度であるが、トラスツズマブによる治療は300万円を超える (68)。 また、これら薬剤を併用するケースも多いので、その場合はさらに高額となり 患者の負担は著しく大きい。

近年、肝性脳症や低アルブミン血症の改善に用いられてきた分岐鎖アミノ 酸(BCAA;ロイシン、イソロイシン、バリン)が、肝癌抑制作用を有する可能 性が報告された (69, 70)。アミノ酸の単独投与が抗癌活性を示した例としては、

アルギニン (71)、イソロイシン (72) の例が報告されている。

我々は、ヒト胎盤抽出物の有効成分を探索する過程で、特定のアミノ酸お よびミネラル類の混合物が癌細胞増殖抑制作用を有することを見出した。本章 では、ヒト胎盤抽出物中の癌細胞増殖抑制因子の単離・同定およびその作用機 序について論述する。

(38)

2節 実験材料 試薬類

ヒト胎盤抽出物は、株式会社日本生物製剤 久留米工場より提供された。

アミノ酸類は、L-Glutamic acid、L-Aspartic acid、L-Alanine、L-Glycine、L-Serine、 L-Threonine、Cisplatine (CDDP) (Wako, Osaka, Japan) を購入した。NaCl、ZnCl2、 CaCl2、FeCl2・4H2O、3-(4, 5-Dimethyl thial-2-yl)- 2, 5-Diphenyltetrazalium Bromide (MTT)、Crystal Violet (CV)、Mitomycine C (MMC)、5-Fluorouracil (5FU)、Tween20、 Ribonuclease A (RNase) (Nacalai Tesque, Kyoto, Japan) を使用した。Lipiodol 480 注10 mL (Lipiodol) (TERUMO, Tokyo, Japan)、Saline (Otsuka, Tokushima, Japan)、 注射用水 (Otsuka, Tokushima, Japan)、TACS Annexin V Kits (TREVIGEN, Gaithersburg, USA)、Propidium iodide (PI) (DOJINDO, Kumamoto, Japan)、 Caspase-GloTM3/7 Assay (Promega, Tokyo, Japan)、Staurosporine (Wako, Osaka, Japan)、SepaGene核酸抽出キット (EIDIA, Tokyo, Japan)、Akt (pan)(C67E7) Rabbit mAb、Phospho-Akt (Ser473) (D9E) XP® Rabbit mAb (Cell signaling, Tokyo, Japan)、Anti-rabbit IgG, HRP-linked Antibody、p44/42 MAPK (ERK1/2) (137F5) Rabbit mAb (HRP Conjugate)、Phospho-p44/42 MAPK (ERK1/2) (Thr202/Tyr204) (D13.14.4E) XP® Rabbit mAb (HRP Conjugate) (Cell signaling, Tokyo, Japan)、TMB Stabilized Substrate for Horseradish Peroxidase (Promega, Wisconsin, USA) を使用 した。

(39)

3節 実験方法

第1項 ヒト胎盤抽出物からの癌細胞増殖抑制物質の単離および同定 分子量による分画

Tangential Flow Filtration System (Merk Millipore, Darmstadt, Germany) を用い てヒト胎盤抽出物を分子量によって分画した。ヒト胎盤抽出物を10 kD膜にア プライし、膜を通過しない分画を分子量10,000以上画分 (10K<)とした。通過し た画分を5 kD膜にアプライし、膜を通過しない画分を分子量5,000~10,000以

下 (5-10K) 画分とした。通過した画分をさらに1 kD膜 にアプライし、膜を通

過しない画分を分子量1,000~5,000 (1-5K) 画分、通過した画分を分子量1,000 以下 (1K>) 画分とした。

強陽イオン交換クロマトグラフィー (SP) による精製

上記で得られた画分はSP Sepharoseカラム (2.5 x 10 cm、20 mL)(GE

Healthcare, New York, USA) を用いて精製した。流速は4 mL/min、溶出は、①1 M 酢酸、②2 Mピリジン、③2 Mピリジン-酢酸 (pH 5.0) の3段階で行った。

高速液体クロマトグラフィー (HPLC) による精製

上記で得られた画分は、μRPC C2/C18 ST4.6/100カラム (GE Healthcare, New York, USA) を装着したHPLC AKTA explorer 10S (GE Healthcare, New York,

(40)

mL/min、検出波長は215 nm、溶離液はメタノール/5 mM臭化テトラ-n-ブチルア ンモニウムを含む20 mMリン酸バッファー (pH 7.5, 20:80) で行った。

アミノ酸分析

試料50 μLを6 N HClにて110℃で24時間加水分解後、過剰のHClを窒素 ガスにより除去した。アミノ酸分析は、株式会社日本生物製剤久留米工場・品 質管理グループに依頼した。

細胞増殖抑制試験

ヒト肝癌由来細胞株HepG2 (1.5 x 103 cells/90 μL/well) を10% FBS含有 DMEM培地に播種して24時間培養後、ヒト胎盤由来の試料を10%になるよう に添加し、48時間作用させた。細胞数を測定するため、MTT標識試薬を添加し (10 μL/well)、CO2インキュベーターにて37℃で4時間培養した。テトラゾリウ ム塩の分解により生じたフォルマザン色素を可溶化し、マルチウェル分光光度 計 (μQuant, BIO TEK, Japan) で570 nmの吸光度を測定した (72)。ポジティブコ ントロールにはMMCを終濃度0.5 μg/mLで使用した。

第2項 癌細胞増殖抑制物質 (EDSCA;グルタミン酸、アスパラギン酸、ナト リウム、カルシウム) の組み合わせと活性の相関

HepG2細胞 (1.5 x 103cells/90 μL/well) を96穴プレートに播種し、10% FBS 含有DMEM培地で24時間培養後、10 x ED33 (30 mM Glu、30 mM Asp) および ミネラル類 (NaCl、ZnSO4・7H2O、CaCl2、FeCl2) を10%添加し、48時間作用さ

(41)

せた後、MTTアッセイにより細胞数を測定した。ポジティブコントロールには MMCを終濃度0.5 μg/mLで使用した。

ラット正常肝細胞の単離はin situコラーゲナーゼ法 (74) により行った。単 離した細胞を96穴コラーゲンコートプレート (5 x 104cells/100 μL/well) に播種

し、5% FBSを含むWilliam’s E培地で一晩培養後、癌細胞のコントロールとし

て使用した。

第3項 ヒト肝癌細胞株に対するEDSCAの細胞増殖抑制試験

HepG2細胞 (1.5 x 103cells/90 μL/well) を96穴プレートに播種し、10%FBS 含有DMEM培地で24時間培養した。10 x EDSCA(表6参照)および抗癌剤 (MMC、5FU、CDDP) を10%添加し(終濃度;EDSCA: 3 mM Glu、3 mM Asp、 12 mM NaCl、3 mM CaCl2、MMC: 0.5 μg/mL、5FU: 100 μM、CDDP: 75 μM)、48 時間作用させた後、MTTアッセイにより細胞数を測定した。

第4項 ヒト肝癌細胞に対するEDSCAの細胞増殖抑制試験

ヒト肝癌由来細胞株HepG2 (1.5 x 103 cells/90 μL/well)、Huh-7 (4.5 x 103 cells/90 μL/well)、HLE (1.0 x 103cells/90 μL/well) を96穴プレートに播種し、10%

FBSを含む培地 (HepG2、HLE;DMEM、Huh-7;RPMI1640) にて24時間培養 した。10 x EDSCAを10%添加し(終濃度;EDSCA: 3 mM Glu、3 mM Asp、12 mM

(42)

第5項 ヒト癌細胞株に対するEDSCAの細胞増殖抑制試験

ヒト乳癌由来細胞株MCF-7 (1.8 x 103cells/90 μL/well)、ヒト白血病由来細胞 株HL-60 (5.0 x 103cells/90 μL/well)、ヒト肺癌由来細胞株A549 (1.0 x 103cells/90 μL/well) を96穴プレートに播種し、24時間培養した。10 x EDSCAを終濃度で 10%添加し(終濃度;3 mM Glu、3 mM Asp、12 mM NaCl、3 mM CaCl2)、48 時間作用(HL-60のみ96時間)させ、MTTアッセイにて細胞増殖抑制効果を評 価した。ヒト大腸癌由来細胞株DLD-1 (2.0 x 103cells/100 μL/well)、ヒト膵臓癌由 来細胞株MIA PaCa-2 (2.0 x 103cells/100 μL/well)、マウスメラノーマ由来細胞株 B16F1 (1.5 x 103cells/100 μL/well) は96穴プレートに播種し、同様に10 x EDSCA を10%作用させた後、スルホローダミンB (SRB) アッセイにて細胞数を測定し た。具体的には、50%TCA溶液を25 μL/well添加し、4℃で1時間インキュベー ト後、MilliQ水で洗浄・乾燥した。その後、0.4% SRB (50 μL/well) にて20分間 染色し、1%酢酸溶液にて洗浄後、10 mM Tris-HCl緩衝液 (pH7.4) に溶解し、

マルチウェル分光光度計 (μQuant, BIO TEK, Japan) で565 nmの吸光度を測定し た。

第6項 3D肝癌細胞系を用いたEDSCAの増殖抑制試験 肝癌細胞の3D培養

加圧滅菌済み1 cm2角のSFsを、24穴プレートに入れ、そのシート上に10%

FBS含有William’s E培地に懸濁させたHepG2細胞 (5 x 105cells/ mL/well)を播 種し、1日おきに新鮮培地に交換しながら7日間培養を行った。培養8日目よ

り10 x EDSCAを10%添加し、毎日新鮮な薬剤を含んだ培地に交換しながら96

(43)

時間培養を継続した。ポジティブコントロールにはMMCを終濃度0.5 μg/mL で使用した。培養後、ホルマリン液にSFsを浸漬し、サンプルとして保管した。

クリスタルバイオレット (CV) による細胞数の算出

ホルマリン固定したSFsをポリトロンホモジナイザーで破砕 (15000 rpm、

3min)し、0.1% CV/0.1 Mクエン酸溶液中で一晩インキュベート後、光学顕微鏡

下で染色された核をカウントし、細胞数を算出した。

走査型電子顕微鏡による観察と撮影

福岡県工業技術センター 生物食品研究所のSEM (HITACHI S-4500, HITACHI, Tokyo, Japan) にて観察、撮影を行った。

第7項 大腸癌皮下担癌マウスを用いたEDSCAの抗癌試験 (Winn assay) 細胞の調整

CT-26のフリーズストック細胞を、10% FBS含有RPMI1640培地で2日間 培養した。その後、新鮮培地に継代し、3日間培養後、2.5 x 105cells/0.1 mLの細 胞密度で被験物質1 x~10 x EDSCA(表6)を作用させた。

(44)

6 In vivo試験 (Winn assay) に用いる被験物質の組成

CT26 担癌細胞 薬剤

陰性対照 2.5 x 105 PBS (-) (pH5.0)

1 x EDSCA 2.5 x 105 1 x EDSCA (3 mM Glu + 3 mM Asp + 12 mM NaCl + 3 mM CaCl2)

5 x EDSCA 2.5 x 105 5 x EDSCA (15 mM Glu + 15 mM Asp + 60 mM NaCl + 15 mM CaCl2)

10 x EDSCA 2.5 x 105 10 x EDSCA (30 mM Glu + 30 mM Asp + 120 mM NaCl + 30 mM CaCl2)

Balb/cマウスへの担癌

実験動物は5日間の馴化を行ったBalb/c(5週齢、♀)を用いた。供試細胞 に各種薬剤、①PBS (-) (pH5.0)、②1 x EDSCA (pH5.0)、③5 x EDSCA (pH5.0)、④ 10 x EDSCA (pH5.0) を2.5 x 105 cells/0.1 mL(一匹あたり)濃度になるように添

加し(表6)、剃毛したマウスの腹側面に0.1 mLずつ皮下接種した。癌のサイ

ズは1週間に2回、縦と横の長さをノギスで20日まで測定した。癌の体積 (cm3) は、(癌の短径 x 癌の短径 x 癌の長径)x 0.5という式にて算出した (4群、

n=5、計3回試験を行いn=15として統計処理した)。

(45)

第8項 VX2肝臓担癌家兎を用いたグルタミン酸、アスパラギン酸 (ED) の抗 癌試験

日本エスエルシー株式会社 (SLC) に委託し実施した。

被験物質

被験物質は、グルタミン酸、アスパラギン酸の2種のアミノ酸を用い、混 合促進剤として、ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル (リピオドール480注 10 mL, TERUMO, Tokyo, Japan) を用いた。

各5群の被験物質(表7)は、Vortex mixer (VTX-3000L, LMS, Tokyo, Japan) による1分の撹拌および超音波洗浄機 (1510J-MT, YAMATO Scientific co., Tokyo, Japan) による5分の処理を2回繰り返すことにより混合調製した。6群のLipiodol 群は、投与直前にVortex mixerにて30秒撹拌後、投与した。

7 In vivo試験に用いる被験物質の組成

群 2.5 M

Glu

9 M

Asp H2O Lipiodol 注射用水 1 陰性対照 - - - - 1015 μL 2 10 x ED + Lipiodol 145 μL 40 μL - 1015 μL - 3 5 x ED + Lipiodol 72.5 μL 20 μL 92.5 μL 1015 μL -

4 10 x ED + 注射用水 145 μL 40 μL - - 1015 μL

5 5 x ED + 注射用水 72.5 μL 20 μL 92.5 μL - 1015 μL

(46)

使用動物

Slc:JW/CSKウサギ (SPF) の雌36羽を14週齢で入荷し、7日間馴化し た。15週齢で異常のないことを確認した36羽をVX2癌細胞の移植に供した。

入荷時の体重は2321~2777 g、癌細胞移植時の体重は2590~3064 gであり、

この間に体重の減少は認められなかった。癌細胞移植時から2週間後、一般 状態に異常がなく体重の減少がみられない35羽を、群分けに供した。群分け 時の体重は2665~3254 gであった。

飼育条件

動物は換気回数が1時間当たり15~20回、照明時間が12時間(7~19時点 灯)に設定されたバリア施設内の飼育室で飼育した。飼育室の温度は24℃(実 測値:23.0~24.5℃)、湿度は50%(実測値:50.0~79.1%)に設定した。動物 はアルミニウム製底網ケージ (W46 x D62 x H44 cm) に1羽ずつ収容し、3週間 に1回、オートクレーブ滅菌したケージと交換した。

VX2肝臓担癌家兎の作製

VX2大腿部担癌家兎(ドナー)の大腿部から腫瘍を摘出し、小剪刀を用い て細切し懸濁した細胞を、36羽に移植した。ケタラール®筋注用 (Daiichi Sankyo Propharma, Tokyo, Japan) 1.1 mL/kgおよびセラクタール®2%注射液 (Bayer, Osaka,

Japan) 0.4 mL/kgの混合液を動物の大腿筋肉内に投与して麻酔を施し、バリカン

(6000AD;Natsume, Tokyo, Japan) を用いて動物の腹部の被毛を刈り、腹部をヨ ードチンキで消毒後、開腹を行って肝臓の内側左葉に1 mLディスポーザブル注

(47)

射筒 (JMS, Tokyo, Japan) および26 Gディスポーザブル注射針 (NIPRO, Osaka,

Japan) を用いて細胞懸濁液を0.02 mL投与した。投与後、閉腹し、創傷部位に

ガーゼをあて、粘着包帯で固定した。なお、移植用の細胞は3羽のドナーから 採取し、ドナー1羽について12羽の家兎に癌を移植した。

被験物質の投与法および投与量

群分け後、30 Gディスポーザブル注射針 (TERUMO, Tokyo, Japan)、ルア ーロック式ガラス注射筒 (1 mL) およびアトム延長用チューブ (4Fr、内径:1.35 mm、長さ:60 cm;ATOM, Tokyo, Japan) を用いて肝動脈内に、各投与液を0.1 mL/

匹投与した。投与は1回実施した。投与後、閉腹し、創傷部位にガーゼをあて、

粘着包帯で固定した。アトム延長用チューブに30 G注射針の針部分を接続し、

滅菌済みの糸で固定したものを肝動注材器として使用した。

体重測定

入荷時、癌移植時、投与時(群分け時)および解剖時に電子天秤 (FP-12K;

A and D, Tokyo, Japan) を用いて体重を測定した。投与時から解剖時までの体重

増加量から体重変化量および体重変化率を求めた。

体重変化率 (%)=((解剖時体重-投与時体重)÷ 投与時体重)x 100

(48)

の混合液を動物の大腿筋肉内に投与して麻酔を施し、頚動脈切断による放血致 死により安楽死させ、解剖した。肝臓を摘出して癌径を測定し、下記の(式1) から癌体積を算出した。さらに、求めた癌体積を基に癌増殖率(式2)および癌 増殖抑制率(式3)を算出した。測定後、正常組織を除去した。摘出した癌は 10%中性緩衝ホルマリン液で固定し、定法に従ってヘマトキシリン-エオジン染 色標本を作製後、病理組織学的検査を行った。また、他臓器への転移および胸 水・腹水の貯留の有無を確認した。

(1) 癌体積 (cm3)=(癌の短径x癌の短径 x 癌の長径)x 0.5

(2) 癌増殖率 (%)=(解剖時癌体積-投与時癌体積)÷ 投与時癌体積)x 100 (3) 癌増殖抑制率 (%)=((陰性対照の平均癌増殖率-投与群の平均癌増殖率)

÷ 陰性対照の平均癌増殖率)x 100

統計

体重変化率および腫瘍増殖率についてDunnettの多重比較により有意差を検 定した。

第9項 EDの癌細胞死メカニズムの解析

ヒト肝癌細胞株Huh-7、HepG2を各々10% FBS含有DMEM培地、0.1 mM Non-Essential Amino Acids Solution (NEAA)、10% FBS含有DMEM培地に播種 (4.5 x 106 cells/φ100 mm/10 mL、2.25 x 106 cells/φ100 mm/10 mL) し、一晩培養後、

Ctr 1(ca.0.007 N HCl)、Ctr 2 (pH5.8 PBS (-);20%)、Ctr 3 (DMSO;0.2%)、ソラフ ェニブ (5 μM)、MMC (0.5 μg/mL)、1 x EDSCA (3 mM Asp + 3 mM Glu + 12 mM

(49)

NaCl + 3 mM CaCl2)、2 x EDSCA (6 mM Asp + 6 mM Glu + 24 mM NaCl + 6 mM CaCl2) 調製培地と交換した。薬剤添加後48時間培養し、0.1% trypsinにて剥離 (37℃、2分) し、各々の培地で中和後、遠心 (1200 rpm、4℃、5分) し、上清を 除去して、3% FBS含有PBS (-) (staining buffer) 3 mLに懸濁した。細胞数は Cellometer AutoT4 (Nexcelom Bioscience, Massachusetts, USA) にて測定した。

FACS試料の調整と解析

TACS Annexin V kits (TREVIGEN) を使用した。細胞 (2.5 x 105cells) を1.5 mL遠心管に移し、遠心 (300 xg、4℃、5分) し、上清を除去した。10 x binding buffer 10 μL(終濃度1 x)、50 μg/mL Propidium Iodide (PI) 10 μL(終濃度5 μg/mL)、

Annexin V-FITC 3 μL(終濃度3%)、MilliQ水77 μL (total 100 μL) を加え、室温 で3分静置後、3% FBS含有PBS (-) を400 μL添加し、FACS解析用サンプルと した。FACS解析は、iCyt EC800 cell analyser (SONY, Tokyo, Japan) を用いて行っ た。Total count 10,000、Run Volume 200で測定した。Voltageとcompensationの 調整は解析サンプル毎に行った。尚、試験は各群n=1で2回繰り返し実施した。

細胞周期解析

HepG2細胞 (2 x 106 cells/10 mL/dish) を、φ90 mm dishに播種し、24時間培

養後、EDSCAを終濃度10%含む培養培地に交換した。24、48時間培養後、細胞

(50)

(BECKMANCOULTER EPICS XL SystemⅡ, USA) にて解析した。FACSでは、2 x 105 cells/群をフロー解析した。

カスパーゼ3/7の測定

HepG2細胞 (1.5 x 103cells/90 μL/well)を96穴プレートに播種し、37℃で24 時間インキュベーション後、10 x EDSCAを終濃度10%になるように添加した。

さらに、37℃で24時間インキュベート後、Caspase-GloTM 3/7Assay (Promega, Tokyo, Japan) 試薬を添加 (100 μL/well) し、30分間反応後、発光をARVO MX–fla

(PerkinElmer, USA) で測定した。ポジティブコントロールにはスタウロスポリン

(STS) を終濃度0.25 μMで用いた。

DNAラダーの検出

HLE細胞を2.0 x 106cells/φ90 mm dishとなるよう播種し、一晩培養した。培 養後、EDを終濃度3 mM、4 mMおよび5 mM添加し、24時間後にセルスクレ ーパーにて細胞を回収した。回収した細胞より、SepaGene核酸抽出キット (EIDIA, Tokyo, Japan) を用い、取扱い説明書に準じてDNAを抽出し、各サンプ ルの吸光度を測定した。その後、各サンプルを一定濃度に調整し、1.5%アガロ ース電気泳動によってDNAラダーを解析した。

細胞内シグナルの解析

Huh-7細胞は、10% FBSを含むDMEM培地で培養した。φ60 mm dishを用 いて6 x 105cells/dishになるよう細胞を播種し、2日間培養後、DMSO、50 μM

(51)

LY294002 (Cell signaling, Tokyo, Japan)、10 μM Sorafenib、1 x ED、1 x 溶解液を 含む培地を加え、3時間培養した。培地を除去し、氷冷したPBS (-)を加えて5 分間静置した後、細胞を回収した。PBS (-)で洗浄後に細胞をカウントし、Lysis bufferを2 x 106 cells/mLの細胞密度になるように加えた後、20分間氷上で静置 した。遠心(13000 rpm、10分、4℃)して上清を回収後、Sample buffer (Bio-Rad, Tokyo, Japan) を加え97℃で5分間、加熱した。氷冷後、10 μLをサンプルとし て使用した。SDS-PAGEは10%アクリルアミドゲルを用いて行い、ブロットは セミドライブロッティング (SB-160, BIO RAD, USA) で行った。ERK1/2および リン酸化ERK1/2に対する抗体は、p44/42 MAPK (ERK1/2) (137F5) Rabbit mAb (HRP Conjugate) およびPhospho-p44/42 MAPK (ERK1/2) (Thr202/Tyr204)

(D13.14.4E) XP® Rabbit mAb (HRP Conjugate) を用いた。また、Aktおよびリン 酸化Aktに対する抗体は、Akt (pan) (C67E7) Rabbit mAbおよびPhospho-Akt (Ser473) (D9E) XP® Rabbit mAbを用いた。また二次抗体として、Anti-rabbit IgG, HRP-linked Antibodyを用いた。検出には、TMB Stabilized Substrate for Horseradish Peroxidaseを用いた。

ネクローシス阻害剤 (IM-54)、カスパーゼ阻害剤 (Z-VAD-FMK) およびネクロ トーシス阻害剤 (Necrostatin-1) の併用試験

Huh-7細胞を3.0 x 103cells/wellとなるよう96穴プレートに播種し、一晩培

(52)

率を測定した。生細胞数の測定はSRBアッセイ法で行い、quadruplicateで実施 した。

(53)

4節 実験結果

第1項 ヒト胎盤抽出物からの癌細胞増殖抑制物質の単離・同定および組み合 わせと活性の相関

分子量による分画によりヒト胎盤抽出物を4分画し (10K<、5-10K、1-5K、 1K>)、HepG2細胞に対する増殖抑制効果を検討した結果、1K>(分子量1,000 以下)に最も強い活性が得られた(図7、A)。次いで1K>画分をSP Sepharose カラムに負荷したところ、1 M酢酸で溶出される画分 (SP1) に強い活性が回収 された(図7、B)。

7 分子量・強陽イオン交換分画のHepG2細胞増殖抑制活性

A, 分子量分画; B, イオン交換分画; PE, 10% Placental Extract; MMC, Mitomycin C (0.5 μg/mL)

SP-1画分を更にμRPC C2/C18 ST4.6/100カラムを用いたHPLCで精製した。

(54)

~Dに分画した(図8、C)。細胞増殖抑制活性を測定した結果、分画Aに最 も強い活性が見られた(図8、D)。そこで、分画AをさらにHPLCによりA1

~A6に分画した。その結果、A1画分とA4画分がそれぞれ60%、30%の増殖 抑制活性を示した(図8、E、F)。

8 各分画のHPLCプロファイルとHepG2細胞増殖抑制活性

A、C、E: HPLCプロファイル; B、D、F: HepG2 細胞増殖抑制活性; PE, 10% Placental Extract;

MMC, Mitomycin C (0.5 μg/mL)

(55)

最も強い抑制活性を示したA1画分をさらにμRPC C2/C18 ST4.6/100カラム にて精製した結果、215 nmの波長においてシングルピークとなった(図9、A)。

9 A1画分の特徴

A, 画分A1μRPC C2/C18 ST4.6/100カラムにより精製; B, 画分A1のイオンペア試薬を

用いたHPLC(矢印はクロマトピークを指す)

このA1精製画分は、①215 nmに強い紫外吸収を示し、その値は254および

280 nmの吸収値に比べて著しく高く(図9、A)、②逆相カラムに吸着されず、

③イオンペア試薬、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムを用いたHPLC分析にお いて6つのピークを示した(図9、B)。以上の実験結果は、A1画分がアミノ酸 を主成分とすることを強く示唆する。A1画分のアミノ酸を分析した結果、アラ

(56)

8 A1画分のアミノ酸分析 Amino acid Conc. (mM)

Ala 13.2 Gly 19.2 Glu 5.6 Ser 8.4 Thr 5.6 Asp 19.0

また、A1画分の非加水分解産物と加水分解産物のアミノ酸含量比が一致し たことから(データ未表示)、A1画分にタンパク質やペプチドは含まれず、各 種アミノ酸の混合物であることが推測された。そこで、市販のアミノ酸を用い てA1画分と同一組成のアミノ酸混合液 (Master) を調製し、細胞増殖抑制試験 を行った。その結果、Masterは細胞増殖抑制活性を示した(図10)ことから、

確かにこれらのアミノ酸混合物はHepG2細胞の増殖抑制活性を有することが明 らかになった。さらに、これらのアミノ酸混合物において、活性に必須なアミ ノ酸を決定するために各アミノ酸を欠如した溶液を調製し、細胞増殖抑制試験 を行った。その結果、GluとAspが欠如した場合、抑制活性の減弱が見られ、特 にAspが欠如した場合において著しく活性が低下した(50%減少)。これらの

結果よりMasterの細胞増殖抑制活性は主としてGluとAspに起因していること

が分った。また、これらの阻害活性は単独でも濃度依存的に観察されることか

ら(図11)、HepG2細胞の増殖抑制活性の有効成分はGluおよびAspであると

結論した。

(57)

10 Masterおよびアミノ酸1種の欠損シリーズのHepG2細胞増殖抑制活性

PE, 10% Placental Extract; M, Master (A1と同じアミノ酸濃度); A, Ala欠損; G, Gly欠損;

S, Ser欠損; T, Thr欠損; D, Asp欠損

参照

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