卒業研究論文
視野に注目した
狭小地域の歩行者シミュレーション
学籍番号 11D8102013K 佐藤 景太
中央大学理工学部情報工学科 田口研究室
2015
年3
月i 概要
本研究は,歩行者が駅構内を歩くときにスマートフォンを操作しながら歩くとどのくら い衝突するのかを表現する歩行シミュレーションモデルを構築することを目的とする.
個人単位の人の動きと障害物を避けるといった群集としての人の動きを構築する.
本研究では,視界に注目して歩行者の動きをシミュレーションして評価を行う.
キーワード:スマートフォン,スマホ,駅構内,混雑
ii
目次
第1章 序論 ...1
1.1 研究動機...1
第2章 検証方法 ...4
2.1 目的地 ...4
2.2 視界の設定 ...5
2.3 障害物の回避 ...5
2.3.1 動かない障害物 ...5
2.3.2 動く障害物 ...6
2.4 追従 ...6
2.4.1 歩行流 ...7
2.4.2 追従ベクトル ...7
2.5 人の移動...7
2.5.1 次の位置の決定方法 ...7
2.5.2 移動と衝突 ...8
2.6 まとめ ...9
第3章 検証内容 ... 11
3.1 プログラムの構成 ... 11
3.2 スマートフォンを持ってない人との比較 ... 11
3.3 比較対象... 11
3.4 仮想空間の設定...12
第4章 検証内容 ...13
4.1 衝突しそうになった回数 ...13
4.2 考察 ...22
第5章 結論 ...24
5.1 まとめ ...24
5.2 今後の課題 ...24
謝辞 ...26
参考文献 ...27
1
第1章 序論
1.1 研究動機
今や我々の生活に必要不可欠な携帯電話であるが,その中でスマートフォンを使用 する人の割合は今や50%を超え,我々の生活に大きな変化をもたらしている.普段 の生活で電車に乗ったときにあたりを見渡すと,かなり多くの人がスマートフォンを 操作していて,またスマートフォンを操作しながら乗り降りしたりホームを歩いたり する人が非常に多く見られる.
図1.1を見ると,平成22年から平成25年まで,スマートフォンの普及率は増加し,
平成25年にはついに50%を超えている.また,図1.2から救急搬送人員も年々増加 していることがわかる.また図1.3に示すように事故別に救急搬送人員を見てみると,
ぶつかることによる事故が1番多く,次いで転ぶ,落ちると続いていきこの3種類の 事故が全体の98%を占めている.
図1.4の場所別の救急搬送人員を見ると,「道路・交通施設」が全体の80%を占め ており,その中でも駅が全体の24%である.また図1.5から事故発生時「操作しなが ら」事故に遭う人が30%と1番高くなっていることがわかる.
以上のことから事故を減らす1番の近道は,スマートフォンを操作しながら歩く(以 下,歩きスマホとする)人を減らせばいいのではないか,と考えた.そのためにシミ ュレーションを実際に行い,どのくらい危険なのか,ということを知るために本研究 を行った.
図1.1スマートフォン普及率
0 10 20 30 40 50 60 70
平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 ス
マ ー ト フ ォ ン 普 及 率
(
%
)
2
図1.2 年別の救急搬送人員
図1.3 事故種別ごとの救急搬送人員
図1.4 場所別の救急搬送人員
0 5 10 15 20 25 30 35 40
平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 救
急 搬 送 人 員
( 人
)
ぶつかる 51人
42%
転ぶ 38人 31%
落ちる 30人
25%
その他 3人 2%
98人 80%
7人 6%
7人 6%
6人
5% 4人
3%
道路・交通施設 店舗・遊戯施設 等 会社・公共施設 等 住宅等居住場所 その他
うち「駅」での発生が30人
で全体の24.6%
3
図1.5 発生時の動作別の救急搬送人員 操作し
ながら 40人
33%
画面を見なが ら 30人
25%
通話しながら 25人
20%
電話を取ろう として・見よ うとして
14人 11%
使用しながら 8人
7%
その他 5人
4%
4
第2章 検証方法
本章では人が目的地へ向かって歩くときに,ただ歩くのではなく追従したり,柱や反対方 向から歩いてくる人を避けたりして歩く.その動きのシミュレーションモデルを構築し,そ れを行うことでスマートフォンを操作しながら歩く人の動きを検証する.
以下に本モデルの流れを述べる.まず歩行者から目的地に向かい,すべての障害物を無視 して方向ベクトルを作成する.そしてそのベクトルが向いている方向を,視界として設定す る.
その視界に入る他の歩行者や柱などを避けて歩くために,反対側から歩いてくる人に対し ては反発力を仮定し,また,追従するときは,その人から引力を受けると仮定して,計算を 行う.
最後に全ての力を合成して,次のステップの歩行者の位置を決定する.それを繰り返しど のような動きを行うかシミュレーションする.
また本研究では引力,反発力といった力の計算に,クーロンの法則から倣った式
𝐹 = 𝑎 𝑟2
を使用する.このときのrは,歩行者と対象物の距離,aは視野の範囲や人の人数によって 適切なものを使用する.
2.1 目的地
先行研究より,人は目的地へ向かって歩くときに,ある一点を目指して歩くのではなくあ る領域に向かって歩いていると考えられる.本研究でも目的地を点ではなく線分で表す.歩 行者はその線分に達したとき,目的地に到達したとする.
まず初めにこの目的地へと向かって最短の距離となるように方向ベクトル𝑉1を決定する.
このとき,全ての障害物を無視し,現在地と目的地のみを考え,最短経路とする.
その後,式(2.1)を利用してモデル化を行う.ここでは異符号の電荷を目的地,それに向 かって歩く歩行者に与えることで歩行者が目的地に引っ張られることになる.
5 図2.1 目的地
2.2 視界の設定
まず人がいる位置と目的地を全ての障害物を除いた状態で考える.その状態で人が目的地 に対して進むベクトル𝑉1を求める.その後,時計回り,反時計周りにそれぞれ 15°ずつ,
半径が 2m の扇形を作り,その扇形を視界とし,図 2.2 に示す通り,歩行者が見えているの はその扇形の内部,および線上にあるものとする.
15°
図 2.2 視界の範囲 𝑉1
2.3 障害物の回避
障害物は大きく分けて 2 つに分類される.柱などの動かない障害物と他の歩行者といった 動く障害物である.その 2 つに対してそれぞれどのように動くかを述べる.
2.3.1 動かない障害物
柱などの動かない障害物に対して,人はそれを避けて歩く以外に方法はない.本研究で は柱を全て円として扱う.
まず歩行者から柱に向かって 2 本の接戦ベクトルを引く.𝑉1と接線ベクトルのなす角をそ れぞれ𝜃1,𝜃2とする.そしてそれらの大小を比較し,小さいほうへ𝑉1を回転させ,回転さ
6 せたものを新しく𝑉1として更新する.
𝜃1
𝑉1
𝜃2 𝑉1
図 2.3 動かない障害物
2.3.2 動く障害物
人は反対方向から向かって歩いてくる人を避けるように歩く.しかし前述の動かない障害 物のように避けてもその障害物が動くため,同じようにすることはできない.したがってこ こでは同じ符号をもつ電荷を与えたとして,クーロンの法則に倣った式を利用して,反発力 𝐹を算出する.
この演算が行われる他の歩行者は,視野内で自分の方向ベクトルと対象の歩行者の方向ベ クトルのなす角を𝜃1とすると,
cos𝜃1≦ 0
を満たす歩行者全員とする.そしてこの反発力𝐹の和を𝐹1とする.
𝜃1
図 2.4 動く障害物
2.4 追従
追従は視界の範囲内の自分の進みたい方向と近い方向に進む他の歩行者を追いかけるよ うに進むものである.「追いかける」というように,本研究ではこの追従を引力にして表現 する.
7 2.4.1 歩行流
二方向の歩行流(対抗流)は以下のように変化する.初めに,歩行者は自分の目的地へ向 かってまっすぐ歩く.このとき,歩行速度の速い人が集団の先頭となり,三角形の流れが双 方向にできる.両方の先頭がぶつかると,先頭にいる人は互いに回避し,後ろに続く人達は 先頭にいる人の後ろについて矢尻のような隊形をとる.少し進むと流れはいくつかの帯状に 変化し,互いに行き違いスムーズに交差する.歩行者が厳守すると前方の歩行可能領域が広 くなり,それぞれの目的地へ向かって各々進んでいく.
図 2.5 歩行流
2.4.2 追従ベクトル
追従を表現するため,追従ベクトルを導入する.これは視野内の自分の進みたい方向と 近い方向へ進む人を追いかけるベクトルである.視野内の同じ方向へ進む 1 番近い他の歩行 者に対してクーロンの法則から倣った式を用いて,引力𝐸1の計算を行う. 図 2.6 の赤い矢 印が追従ベクトルである.
図 2.6 追従ベクトル
2.5 人の移動
2.5.1 次の位置の決定方法
最後に 2.1 節から 2.4 節までに述べた引力および反発力を合成する.
𝑉 = 𝑉1+ 𝐹1+ 𝐸1
とする.Vの進む方向をθとして,以下のように次のステップの位置を決定する.
8
0°≦θ≦22° 右 22°<θ≦67° 右上
67°<θ<113° 上 113°≦θ<158° 左上
158°≦θ<202° 左 202°≦θ≦248° 左下
248°<θ<292° 下 292°≦θ<338° 右下
338°≦θ<360° 右
このθを求めるにあたって sinθおよび cosθの値は小数点以下第4位まで計算を行う.
2.5.2 移動と衝突
本モデルでは,第nステップ目に移動しようとした場所に第(n − 1)ステップ目のとき人が いた場合,その場所には移動できないことにする.
また,第 n ステップ目で同じ場所に複数の人が移動しようとした場合,1 番最初に計算が 行われた人のみ移動し,他の人は,第(n − 1)ステップ目にいた場所に留まるものとする.
そしてこの場合,目的地が違うならばその人達が衝突したとみなし,第(n + 3)ステップ目 までその場所から動かないとする.
第(n-1)ステップ目 第 n ステップ目 図 2.6 移動の可否
9
第(n-1)ステップ目 第 n ステップ目
図 2.7 移動と計算順序について
2.6 まとめ
2.5 節までで述べた視界の判定,方向ベクトルの生成や更新,及び追従による引力や他の 歩行者から受ける反発力の計算によって歩行者を移動させ,目的地に到達するまでの流れを フローチャートにまとめ,以下の図 2.8 に示す.
1番目
2番目
3番目
計算順序
10
前処理(データ読み込み,目的地へのベクトル生成)
視野の方向判定
障害物の有無の判定 Yes 方向ベクトルの更新 No
追従する人の有無の判定 Yes
引力の計算 No Yes
反対側へ向かって歩く歩行者の判定 Yes
反発力の計算 No
ベクトルの合成
No どの方向へ進むか
目的地に到達 Yes
終了
図 2.8 フローチャート
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第3章 検証内容
本章では第2章で示した検証方法の下でシミュレーションを行ったものの検証を行う.ま た,プログラムの構成についても述べる.
3.1 プログラムの構成
今回作成したプログラムは,2 次元配列を用いて,縦 30×横 60 の格子状になっている数 字を変化させていくことによってシミュレーションを行うものである.歩行者は目的地Aと 目的地Bに向かって歩く人の 2 つのグループに分けられる.
まず初めに,動かない障害物を設置し,その次に人を配置する.その時,図 3.1 に示すよ うに一定の範囲に列を作り,そこに人をランダムで配置する.そしてその人達を第 2 章で述 べた方法で動かす.
3.2 スマートフォンを持ってない人との比較
本節ではスマートフォンを持っている人と持っていない人の違いについて述べる.本研究 ではスマートフォンを持っている人と持ってない人の違いを視野の広さで表す.スマートフ ォンを持っていない場合,視野を広くなることでより早い時間で対向者を認識し,避けよう とすることができる.
図 3.1 のようにそれぞれ視野を設定する.このときスマートフォンを持っている時の視野 は中心角 30°,半径 2m の扇形,持っていないときは中心角 120°,半径 7.5m の扇形とする.
図 3.1 視野の比較
3.3 比較対象
本研究では,シミュレーションを行い,全員が目的地に到達するまでの時間,そして衝突 した回数のデータを取る.その際,歩行者はスマートフォンを全員持っている場面,全員持 っていない場面,ある目的地に向かう人達は全員スマートフォンを持ち,別の目的地に向か
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う人達は全員スマートフォンを持っていない場面の3通りで行う.また,人数も30人,40 人の2パターンで検証する.
3.4 仮想空間の設定
今回シミュレーション行う空間は,図 3.2 に示す仮想上の空間とする.対応する色は
・赤・・・柱
・青の四角・・・目的地Aへ向かう人
・青の線分・・・目的地A
・緑の四角・・・目的地Bへ向かう人
・緑の線分・・・目的地B
となっている.また,ここで柱は四角になっているが,計算上は円として扱われている.
図 3.2 仮想空間
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第4章 検証内容
3.2 節で述べた方法でデータを採取し,それについて述べる.
4.1 衝突しそうになった回数
衝突した回数のデータはスマートフォンを持っている場合,持っていない場合,片方のグ ループが全員スマートフォンを持ち,もう片方のグループが全員もっていない場合の 3 通り で,それぞれ歩行者の初期位置を変えて5回シミュレーションを行い,その平均を求める.
目的地Aに向かって歩く人と目的地Bに向かって歩く人の人数はいずれも等しくなってい る.また表の人数は歩行者全体の数である.
まず 30 人と 40 人の場合を見てみる.このとき,初期位置は図 4.1 と図 4.2 の様に縦に列 を作ってその列の上に人を 5 人ずつランダム配置し,シミュレーションを行う.
次に,図 4.3,図 4.4 の様に列の長さを拡張し,人数を増やしてシミュレーションを行う.
今回は 50 人と 60 人とし,50 人のときは,前の 2 列に 10 人,後ろの 1 列に 5 人配置し,60 人の時は 3 列に 10 人ずつ配置する.
14
図 4.1 30 人の場合の初期位置の例
図 4.2 40 人の場合の初期位置の例
15
図 4.3 50 人の場合の初期位置の例
図 4.4 60 人の場合の初期位置の例
16
表 4.1 スマートフォンを持っている場合(30 人) 時間
(ステップ数) 衝突回数
1 回目 67 23
2 回目 80 13
3 回目 82 20
4 回目 68 10
5 回目 68 14
平均 73 16
表 4.2 スマートフォンを持っている場合(40 人)
表 4.3 スマートフォンを持っていない場合(30 人) 時間
(ステップ数) 衝突回数
1 回目 80 35
2 回目 79 11
3 回目 66 20
4 回目 78 18
5 回目 80 17
平均 76.6 20.2
時間
(ステップ数) 衝突回数
1 回目 53 0
2 回目 58 1
3 回目 62 0
4 回目 56 0
5 回目 59 1
平均 57.6 0.4
17
表 4.4 スマートフォンを持っていない場合(40 人) 時間
(ステップ数) 衝突回数
1 回目 75 2
2 回目 68 4
3 回目 61 0
4 回目 66 1
5 回目 73 2
平均 68.6 1.8
表 4.5 片方のグループのみがスマートフォンを持っている場合(30 人)
表 4.6 片方のグループのみがスマートフォンを持っている場合(40 人) 時間
(ステップ数) 衝突回数
1 回目 62 0
2 回目 62 2
3 回目 61 1
4 回目 62 3
5 回目 64 0
平均 62.2 1.2
時間
(ステップ数) 衝突回数
1 回目 69 0
2 回目 74 2
3 回目 65 0
4 回目 67 0
5 回目 66 0
平均 68.2 0.4
18
表 4.7 スマートフォンを持っている場合(50 人)
表 4.8 スマートフォンを持っている場合(60 人)
表 4.9 スマートフォンを持っていない場合(50 人) 時間
(ステップ数) 衝突回数
1 回目 71 0
2 回目 63 2
3 回目 64 1
4 回目 80 1
5 回目 62 1
平均 68 1
時間
(ステップ数) 衝突回数
1 回目 84 23
2 回目 81 17
3 回目 79 19
4 回目 88 23
5 回目 80 25
平均 82.4 21.4
時間
(ステップ数) 衝突回数
1 回目 83 13
2 回目 82 29
3 回目 79 18
4 回目 91 23
5 回目 89 27
平均 84.8 22
19
表 4.10 スマートフォンを持っていない場合(60 人) 時間
(ステップ数) 衝突回数
1 回目 72 1
2 回目 72 1
3 回目 73 1
4 回目 76 0
5 回目 76 2
平均 73.8 1
表 4.11 片方のグループのみがスマートフォンを持っている場合(50 人) 時間
(ステップ数) 衝突回数
1 回目 75 2
2 回目 69 5
3 回目 66 1
4 回目 70 0
5 回目 72 5
平均 70.4 2.6
表 4.12 片方のグループのみがスマートフォンを持っている場合(60 人) 時間
(ステップ数) 衝突回数
1 回目 78 0
2 回目 74 2
3 回目 77 0
4 回目 76 0
5 回目 78 0
平均 76.6 0.4
20
図 4.5 平均ステップ数(30 人, 40 人)
図 4.6 平均衝突回数(30 人,40 人) 0
10 20 30 40 50 60 70 80 90
持っている 持っていない 半分 平
均 ス テ ッ プ 数
30人 40人
0 5 10 15 20 25
持っている 持っていない 半分 平
均 衝 突 回 数
30人 40人
21
図 4.7 平均ステップ数(50 人, 60 人)
図 4.8 平均衝突回数(50 人,60 人) 0
10 20 30 40 50 60 70 80 90
持っている 持っていない 半分 平
均 ス テ ッ プ 数
50人 60人
0 5 10 15 20 25
持っている 持っていない 半分 平
均 衝 突 回 数
50人 60人
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4.2 考察
データから,スマートフォンを持っているときの方が平均ステップ数,平均衝突回数のど ちらも持っていないとき,半分だけ持っているときを 60 人の場合を除いて上回った.また,
平均衝突回数のところで全員持っている場合のみ,非常に多くなっている.このデータから 視野が狭くなり,反応が遅れることによって衝突しやすくなる,という結果が得られた.ま たスマートフォンを持っている状態で人数が増えると衝突回数も多くなり,より危険度が増 していることもわかる.
また,半分の人だけが持っている場合と全員持っていない場合を比べると,衝突回数とス テップ数のどちらも大きな差が出ていないこともわかる.そこで半分だけ持っている場面を 可視化して見てみる.
図 4.9 から図 4.11 では青い部分がスマートフォンを持っている人,緑のところがスマー トフォンを持っていない人である.スマートフォンを持っている人たちは前にいる歩行者が 見えていないため,目的地に対して直線に近い形で進んでいるのに対して,持っていない人 達がその人達を避けるようにして進んでいる.これより,スマートフォンを持っていない人 達が避けているおかげで,衝突もせず,大きな時間もかからなくなっていると考えられる.
また,図 4.11 を見るとスマートフォンを持っていない緑の人がまだ半分まで進んでいな いのに対して,スマートフォンを持っている人は全員が半分以上進んでいる.これより,歩 行速度が全員一定だとすると,スマートフォンを持っている人が持っていない人より早く目 的地に到達することになる.
この点から,スマートフォンを持ちながら歩くということは,自分の身が危険になるだけ ではなく,スマートフォンを持たずに前を向いて歩いている歩行者に迷惑をかけている,と いうことが考えられる.
23
図 4.9 半分の人がスマートフォンを持っている場面 1
図 4.10 半分の人がスマートフォンを持っている場面 2
図 4.11 半分の人がスマートフォンを持っている場面 3
24
第5章 結論
5.1 まとめ
今回行った研究では,実際にスマートフォンを操作しながら歩くと,操作していない状態 で歩く場合に比べて衝突が起こりやすいという結果が得られた.また半分の人にスマートフ ォンを持たせたと仮定した場合,全体としての目的地まで到達する時間や衝突回数に大きな 変化はなかったが,スマートフォンを持っていない他の歩行者に避ける動作をさせ,更に持 っていない人の方が目的地まで早く到達していることから,持っていない人は大きな迷惑に なるということがわかった.
今回はスマートフォンに焦点を当てたが,今までの携帯電話の機能に加えて,SNSなど のインターネットの利用がより便利になったり,ゲームをしたりすることもできるなど今や 生活の必需品となってきている.また駅も首都圏の人であれば通勤通学のため,ほぼ毎日利 用することになる.
しかし,その駅でスマートフォンを利用することは危険度が増え,また利用する人数が多 くなるほどより危険なものとなる.また事故が起こってしまうと電車のダイヤに乱れが生じ ること,またその場所が通行止めになることも考えられる.もし事故発生が通勤通学のラッ シュ時であれば,数億円規模の大きな経済的損失を伴うことになるだろう.
その損失を少しでも減らすこと,他人への迷惑を考えて緊急のときを除いてスマートフォ ンを操作しながら歩くことをやめるべきだ.
5.2 今後の課題
今後の課題として,以下の項目が挙げられる.
・目的地の増加
今回は目的地が 2 つでシミュレーションを行ったが,実際には電車の車両へ乗る人もいる のでその人のモデル化
・衝突したときの反応
ぶつかったときに,止まる,転ぶ,スマートフォンを落とすなどの反応
・人の密度による歩行速度の変化
・実際の駅をフィールドとしたシミュレーションモデルの作成
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・グループ歩行
・群集としての認識
本研究では,ホームを想定してシミュレーションを行ったが,車両へ乗り込む人,改札の 待ち行列など駅にはいろいろな要素がある.実際の路線の駅に基づいてシミュレーションを 行うこと,また車両の混雑も考慮していくことが必要である.
また,目的地に向かうとき,最短経路で向かっていったが,実際には人の少ないところを 迂回して目的地へと向かうこともあり,結果として迂回したほうが先に目的地へと到達する ことも考えられる.
そして,人が歩くとき,個別に歩く人だけでなく,ベビーカーを押す人,手を繋いで歩く 人,また体の不自由な人など他の歩行者が来るとわかっていても避けきれない人もいる.ま た人や混雑度によって歩行速度も変化する.その人達を含めたシミュレーションを行い,衝 突がどのくらい増減するのかを調べる必要がある.
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謝辞
本研究を進めるにあたって,大変多くのご指導,ご助言を頂いた中央大学理工学部情報工 学科の田口東教授に心から感謝いたします.
また多くのご助言,ご協力を頂いた田口研究室の皆様には大変お世話になりました.深く 感謝いたします.
27
参考文献
[1] 阿久澤あずみ,駅構内における群集歩行シミュレーションモデルの研究,中央大学大学 院理工学研究科情報工学専攻修士論文,2006.
[2] 総務省,情報通信白書(オンライン)
<http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper>,アクセス日2015年1月10
日.
[3] cos,sin,tanの値の対応表(オンライン)
<http://www24.atpages.jp/venvenkazuya/math1/trigonometric_ratio6_table1.php>,
アクセス日 2015年1月12日.
[4] 東京消防庁,歩きスマホ等に係る事故に注意!!(オンライン)
<http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/topics/201403/mobile.html>,アクセス日 2015年
1月12日.