音楽情報に基づく自動作詞プログラムの制作
Production of the Automatic Lyric Writing Program based on Musical Information
1W110500-6 湊谷 陸 指導教員 菅野 由弘 教授
MINATOYA Riku Prof. KANNO Yoshihiro
概要: 音楽制作の自動化は昨今盛んに研究されているテーマのひとつであり,中でも東京大学で制作された『Orpheus』
をはじめとする自動作曲の分野は,近年目覚ましい進歩を遂げている.しかしその研究のほとんどで『詞→曲』という言 葉(入力)からメロディ(出力)を生み出すという手順が採用されており,その反対の方法論,つまり『曲→詞』という 流れは半ば公然と無視され続けてきた.そこで本研究では,メロディ(入力)から言葉(出力)を生み出すという従来と は正反対の流れを搭載した自動作詞プログラムを作成する事を目的とする.具体的にはMATLABと内装のGUIを用い て,入力されたmidiファイルのメロディ情報に相応しい歌詞を任意の数だけ出力・保存出来るプログラムを目指してい る.また出力される歌詞については,言葉の持つモーラ数・音節数が,音楽情報と連動する事に主眼を置いている.
キーワード:自動作詞,MATLAB,モーラ,音節
Keywords:automatic lyric writing, MATLAB, mora, syllable
1.はじめに
従来の自動音楽制作は,言葉の持つアクセント(高低)
からメロディを出力する「詞先型」がほとんどであったが,
本論文ではメロディの持つ情報から歌詞を出力する「曲先 型」の制作を目指している.制作環境はMATLAB,入力 するデータはmidiファイルとした.
2.モーラと音節
杉藤(1989)によれば,モーラとは仮名文字1文字(「き ゃ」など拗音の場合は2文字)に対応しており,音節はよ り西洋的なリズム(音の強弱・高低など)に対応している.
両者は必ずしも一致せず,例えば「新聞紙」の場合は 5 モーラ(「し・ん・ぶ・ん・し」)3 音節(「しん・ぶん・
し」)となり,同様に「絶好調」は6モーラ3音節となる.
これと良く似た考え方が「口唱歌(くちしょうが)」で ある.例えば我々がベートーベン『交響曲第五番』の出だ しを「ジャジャジャジャーン」と形容するのと類似の方法
であるが,五線譜によらない,かなり精度の高い演奏法の 伝達のしかたとして,今なお世界中の民族楽器でこの手法 が用いられている.
本論文では『曲→詞』という流れを生むための経由地点 として,口唱歌に着目した.入力されたメロディから口唱 歌を生成し,そのモーラと音節数に合致する日本語文を出 力する,という手法を用いている.
3.プログラムの概説
まず,入力されたメロディの解析を行う.長さや休符の 位置に合わせて,音符を以下の3パターンに分類する.
① 短音 … 1モーラ1音節
② 長音 … 2モーラ1音節
短音+「い」「ん」「ー」のいずれか
③ 跳音 … 2モーラ1音節 短音+「っ」
続いてメロディをいくつかのブロックに分け,各ブロッ クで歌詞の生成を行う.例えば「短」「跳」「長」という3 音を含むブロックであれば「た・たっ・たー」という唱歌 と連動し,そのリズムに合う言葉を excite 英和辞書のワ イルドカード検索を用いて出力する(図1).
またこの際,あらかじめ助詞・助動詞を生成しておく事 もある.動詞の場合は「~った」→「~る」など原型に戻 して検索する.
図1 ワイルドカード検索
また,ひらがなのマルコフモデルを用いたランダムな文 字列を出力する事も出来る.その割合はユーザーに委ねる 事とする.以下の図2,図3は同じメロディに対してワイ ルドカード検索を用いた場合と,マルコフモデルを用いた 場合の出力例である.
図2 ワイルドカード検索の場合
図3 マルコフモデルの場合
以上のプログラムを内包したGUIプログラムの外観を 図4に示す.右下のスライダーで出力方法の割合を,右上 の入力スペースで作成するサンプル数を決める.
それぞれの出力スペースの横にはボタンがあり,ユーザ ーが選んだものだけをテキストファイルに保存する事が 出来る.
図4 GUIの外観
4.まとめ
音楽情報と歌詞が連動する歌詞という意味では,概ね期 待した通りの出力が得られたと言える.また,従来の創作 ではありえなかった新たなオノマトペを作り出す可能性 は十分に示せたが,一方歌詞全体で意味の通る文章になる 出力は極めて少なかった.
今後はモーラ数・音節数に応じた辞書のようなものを作 成し,より正確で時間のかからない出力に努めたい.また
現状では MATLAB が使用できる環境でないと作動しな
いため,何らかの方法でアプリケーション化を図りたい.
参考文献
[1] 杉藤美代子(1989)「音節か拍か ‒長音・撥音・促音-」
『講座 日本語と日本語教育2 日本語の音声・音韻(上)』
明治書院,154-177
[2] Matlab and MIDI - Ken Schutte http://www.kenschutte.com/midi
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